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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



憧れの先輩から、未来の後輩へ

担当 伊弉諾神琴 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

出発日 2019-02-25

完成予定 2019-03-07

参加人数 2 / 8
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の職員室――その一角で非常勤の魔法講師、【ガルベス・ユークリッド】は、自身の手元に目を落として独りごちる。 「……貴学園の生徒を私の息子に会わせてあげてください、か」  ふぅむと唸り、豊かに蓄えた真っ白な顎髭を撫でる。薄紫の花が描かれた便箋には、『ユニの村』と【フィオナ・ジュミナ】と書かれている。宛先も講師個人でなく学園名だった。この手の手紙は大抵は依頼の類だが、今回も案の定だった。  依頼内容は差出人の息子、ヴァルナが「勇者に憧れ奇行に走るようになった」とのことであり、ガルベスは顎髭を弄って息をつく。 「むぅ……いったいどこに人様に迷惑をかける勇者がいるのだと……」  悪戯目当ての手紙が届くことも少なからずあるため、やや斜に構えた気分で読んでいくと、衝撃の行動にガルベスは思わず目を丸くした。  家のタンスや戸棚を勝手に漁る、壺や花瓶を割って中身を奪う、近場に居もしない魔物と棒切れで戦いたがる――ヴァルナが取っていた行動は、模範的な勇者の行動理念からは到底かけ離れていたものだった。  誰から吹き込まれたのかと呆れ半ばに読み進めていくと、原因はどうにもヴァルナの近所に住む酔っぱらいの中年らしい。飲んだくれのサガなのか、大人でも子供でも何かと話したくなるのか。偶然居合わせたヴァルナに勇者の話をしたところ、思いの外食いついて気をよくしたのだろう。調子に乗ってあることないことを吹聴したそうだ。 「四歳の少年に大の大人が……まったく」  話を聞いたヴァルナに悪意が無いのが余計に質が悪く、間違った知識のせいで近所では厄介がられているらしく、母親も「勇者を目指す息子の意思は尊重したい」と強く怒れていないようだ。 「正義感に満ち溢れているのは良いことだが……。まあ、これもいい機会だろう」  偽りの情報で誤った方向に正義感を向けている点に目を瞑るとして、勇者志望ならいずれ魔法学園に入学するだろう。彼にはそれまでに勇者の手本を見せてやらなければならない。 「息子に生徒を会わせてあげてほしい、か」  指に豊かな顎髭を巻きつけて呟く。学園に入学してからはおそらく講師よりも同じ学園に在籍する生徒との時間が増える。互いに研鑽し合い、高みを目指していく存在になる生徒が会うことは、ヴァルナに良い影響を与えるだろう。「見習い」と言えど、うちの生徒は「勇者」なのだから。  それにこの依頼はヴァルナと生徒双方に大きな経験になるだろう。ヴァルナは何年もしない内にフトゥールム・スクエアの生徒として入学し、自分の理想像を追求していくはずだ。この課題を受けてユニの村に行く生徒がどのコースに属していようと、各々が確固たる意志や思いをもって入学してきたのだ。勇者を目指す者の姿も、魔王を目指す者の姿も、学園に憧れを持つヴァルナには輝いて見えるだろう。それに「後輩が自分に憧れている」と知れば、授業や課題のやる気も大いに増す。どちらにも損が無い、こちらとしても願ったり叶ったりな依頼だ。 「――よし」  一瞬の逡巡の後、ガルベスはこの一件を生徒たちの課題として、正式にまとめることにした。  課題名はこうだ――憧れの先輩から、未来の後輩へ。
ピクシーの妨害を乗り越えて

担当 天野 奈々 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

出発日 2019-02-24

完成予定 2019-03-06

参加人数 2 / 8
 魔法学園フトゥールム・スクエアに属する居住区域レゼント。その郊外に住む老人から学園へと一つの手紙が届いた。その内容はこうだ。 『ワシは偉大なる発明家である。今制作している自動薪割り機の完成には丈夫で切れない立派な蔓が必要じゃ。ワシが指定する場所へ行けば間違いなく上物の蔓があるのじゃが、どうにもこうにもその周辺にあのにっくき邪魔者のピクシーが住み着きおった! ワシは他にも色々と忙しい。そこで、ピクシーをたしなめるなりこらしめるなりして蔓を探してくるというのは学園のひよっこどもには丁度良い依頼じゃろうから、お主らに頼むことにした。もちろん蔓を持ってきた分だけ報酬は払ってやるからに、頑張ってくるんじゃぞ』  学園としては依頼という形であることに加え、今回はピクシーが出現するポイントということで、これをモンスター生態のカリキュラムの一つとして扱うことになった。また、丈夫な蔓というのはどのような物なのか把握しておくということも生徒たちの今後のためになるだろうという判断でもある。  蔓が採取できる場所は学園から徒歩で簡単に日帰りできる位置にあるちょっとした森の中。道中はほとんど安全な草原や街道であり、天気も晴れとくれば、道中は少し寒いがちょっとしたピクニック気分といった様子だ。  ピクシーという生き物は大変イタズラ好きな生き物だ。縄張りに訪れる者を転ばせたり、ちょっと目を回したり、果実や石、小枝などを投げつけてきたりといった物理的なイタズラを仕掛けてくる。これがなかなかに採取の邪魔になるレベルであることは言うまでもない。  とはいえ行動自体は本当にイタズラの範疇であるために、今回は討伐までは行わない。蔓を採取している間他の人が気を引いたり、あるいは何か物などでピクシーの興味を引き、懐柔したりする必要があるだろう。もちろん強行的に一時捕縛などをしても構わないが、失敗した後の抵抗は予想だにしないほどの事となるだろう。  生徒諸君が無事にピクシーの障害を乗り越え、老人に必要な蔓を納品できることを期待している。
忍べ!隠密訓練!

担当 宇波 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

出発日 2019-02-25

完成予定 2019-03-07

参加人数 2 / 8
「はぁい、では、本日の授業はぁ、『かくれんぼ』をしてもらいたいと思いまぁす」  ふわっとした口調で告げられた言葉に、生徒たちは首を傾げる。  その首を傾げる動作に、教師である【アキ・リムレット】はピンときた顔で手を一つ叩く。 「かくれんぼについて説明を忘れてましたぁ。かくれんぼは、まず隠れる人と、探す人に分かれますぅ。そしてぇ、隠れる人は色々なところに隠れて、探す人は隠れる人を探すゲームですぅ」 「あの、かくれんぼの遊び方が分からないのではないです。……なぜそれを授業で?」  アキはんー、と少し考えた後、にぱっと笑う。 「隠密行動の訓練ですぅ」 「さて、それではぁ、授業を始めますねぇ」  校庭にて、ほんわかと両手を合わせるアキの両隣には、4人の真っ黒な者たちがいる。  比喩ではなく、足のつま先から頭の先まで黒い装束に身を包んでいる。  例えるのならば、忍者。  口は鼻までマスクに覆われ、見えている部分は目くらいしかない。 「その人たちは?」 「はい、みなさんの先輩方になりますぅ。ここにいる方々は匿名希望のため、このような格好をしていただいておりますぅ」  質問に笑顔で答えるアキ。  その背後にはホワイトボードが鎮座している。 「ではぁ、ルールのおさらいですぅ」  ホワイトボードに黒い文字でルールが書かれる。 「まずはぁ、みなさんに隠れていただきますぅ。隠れたみなさんを先輩方が探しますぅ。これが基本になりますねぇ」  アキがその下にも文字を書く。 「本来であれば見つかったらそれまでですぅ。ですが、今回に限っては先輩方に体のどこかをタッチされない限りは見つかったことになりません。つまりはぁ、みなさんは見つかっても全力で逃げてもいいのですぅ」  アキは見取り図のような図と、そのさらに下に1の字を大きく書く。 「時間制限は1時間、この授業が終わるまでですぅ。使ってもいい範囲はこの地図の中までですぅ。5分後に先輩方はみなさんを探し始めますぅ。ではぁ、みなさん頑張ってくださいねぇ」
喋る(?)スライムを捕獲せよ

担当 くそざこあざらし GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

出発日 2019-02-23

完成予定 2019-03-05

参加人数 8 / 8
 学園内のとある一角、暗くて寒い寒い森の中。  カラスの鳴き声に怯えながら、チーズのようなコケの匂いにえずきながら、ヒューマンの男は森を進んでいた。  男は森に来たかったわけではなく、ただ近道をしようと思っただけだ。  地図を見れば、その気味の悪い場所に10分ほど耐えるだけで、30分以上早く目的地にたどり着ける。森と言っても、森の切れ端のような小ささ。真っ直ぐ進めば、迷うことはない。  そう判断した5分前の自分を、男はぶん殴りたかった。 「引き返す……いや、ここまで来たら、進むのも戻るのも同じだし……。でも、これ以上は……」  迷うような男の足取りが、足元の小枝を何度も踏みつけ、パキパキという軽い音を鳴らす。  男が進むのをためらっていたのは、その先に魔物が出るかもしれないとか、そういうことではない。  ただただ単純に、『道』が怖いのだ。  男が進もうとしている道には、背のように高いゼンマイのような植物がこれでもかと生えており、男を手招きするように揺れている。  コケの匂いにえずきながら、パキパキと音を立てながら、男はしばし考え、引き返すことに決めた。  これ以上進む勇気は、男にはなかったのだ。  今しがた通ってきた道だ、引き返すだけなら、何も問題はない。  そんな男の判断は間違っていなかったが。  ただ、男は時間をかけすぎた。  迷うような男の足取りが、小枝を踏みしめる音が、客を引き寄せてしまっていた。  引き返すために振り返った男の目の前にいたのは、1匹の――。 「やぁ! ぼくは『わるいスライム』だよ!」  学園の職員室。  弁当を食っていた男教師は『その話』を聞いて、ポカンとした表情で言った。 「『喋るスライム』が出たぁ?」  その話を切り出したもう1人の男教師は、小さく頷いた。 「ええ。東の森の方で、外から来た客人が目撃されたようです。幸い、怪我はなかったようですが……ひどく動揺しているらしく。スライムが『僕は悪いスライムだ』とか言ってたとかなんとか」 「喋るスライムなんているわけねーだろ。しかもなんで、自分から『悪い』とか言ってんだよ」 「僕もそう思いますし、悪いスライムなら、さっさと倒してしまえばと思うんですが……。どこで聞いたのやら、学園長が興味津々でして」 「あー……それ以上は聞きたくない」 「『捕獲せよ』とのことです」 「……違うな。『学生に捕獲させろ』だろ?」 「流石は先輩。……僕の方で、依頼として教室に張り出すことになりました。あの森に関して何か注意事項があれば、ご教示いただきたいのですが」 「ねぇよ。真っ直ぐ進めばどこからでもすぐ出られっし、魔物も出なっ……いや、出たのか。スライムがいるってことは……。『スライムナイト』にだけ気をつけるよう言っとけ。もしかしたら出るかもしれねぇからな。変な植物に化けてる可能性もある」 「ありがとうございます」  話を切り出した男教師はぺこりと頭を下げて、職員室から出て行く。  その姿を見送りながら、もう1人の男教師は思い出したかのように呟いた。 「……そういや、あそこには変な草がやたらと生えてたな。……まぁ大丈夫か。どうせスライムだし」
暗号……解いてほしいなぁ

担当 くそざこあざらし GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

出発日 2019-02-19

完成予定 2019-03-01

参加人数 7 / 8
 新入生諸君。  これは諸君らより少しばかり早く、この摩訶不思議な学園に足を踏み入れた私達からの挑戦状である。  ※追記。と見せかけた『部活紹介』だから気軽に参加してね!  ヒドロエルカリアの名の下に、満月が照らす夜、私達は「3→3」「7→3」「8←6」「1←3」「2→4」にて君達を待つ。  言うまでもないかもしれないが、上記は暗号である。  繰り返すが、これは諸君らへの挑戦状である。当然ながら、ヒントなど存在しない。  ※追記。ヒントだけど、数字の組み合わせが文字になってるよ! 「マ」は「1→4」か「6→3」。「ス」は「5→5」か「5←1」。「カ」は「6←3」みたいな感じで!  私達は諸君らを見ている。諸君らが明確な理由を持って『答え』に足を踏み入れれば、私達は諸君らの前に現れるだろう。  そして見事、現れた私達を打ち倒すことが出来れば、私達は諸君らに報酬を与えるつもりだ。  ※追記。参加してくれた新入生のみんなには、ちょっとだけ報酬をあげちゃうよ! だからぜったい! 参加してね!  私達は3名。剣を得意とする私。弓を得意とするヒューマン。そして、水の魔法を得意とするローレライだ。私達と諸君らのどちらか、最後まで立っていた方が勝者となる。  ※追記。職員室に行って『暗号クラブのイベントに参加します』って言ってくれれば、怪我をしないやわらかい武器と、紙風船の付いた帽子を貸してもらえるから、それを持って来てね! その紙風船の帽子を被って戦って、自分の紙風船を割られる前に、相手の……私達の紙風船を割れば勝ちだよ!  それでは、諸君らの健闘を祈る。  《主催》暗号クラブ  《作成》暗号クラブ部長:【クロス・ワード】  《校正・校閲》暗号クラブ:【セキュア・カルティエ】
私たちの仇をとってきて!

担当 はまなたくみ GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

出発日 2019-02-19

完成予定 2019-03-01

参加人数 8 / 8
「うう、ひどい目にあったよ……」  生徒たちは放課後の教室に集められていた。彼らの前に立って話すのは一人の少女だ。 「みんな、集まってくれてありがとう。私は【コリーン】って言うんだ。今日はみんなにお願いがあるんだけど……」  コリーンは2本の角が生えた頭や、魔力の籠った腕輪のはめられた腕を包帯でぐるぐる巻きにしていた。一体何があったのだろうか。 「簡単な依頼があるって聞いたから、仲間に声をかけて行ったんだけどね……私たちのパンチやキックが効かなくて、やられちゃったんだ……」  モンスターにやられて命からがら逃げ帰ってきたのであろう。頭に巻かれた包帯からにじみ出る血が痛々しい。  教室に集められた生徒たちはドラゴニアの少女の話に聞き入っていた。きちんと対策しないと目の前の少女のように怪我をする羽目になる、と思えば真剣にならざるを得ない。 「私たちは依頼を受けて、草原にスライムナイトって言うモンスターを討伐しに行ったんだけど……そいつら、私たちの真似をしてきたんだ」  真似? どういうこと? と集められた生徒の一人が問う。 「そのまんまだよ。擬態能力……っていうのかな? 相手の苦手な形になったり、相手の姿の真似をしてくるの。私たちは武神・無双コースの仲間と一緒に行ったから、相手も私たちと同じ姿になって、拳で攻撃してきたの。それで、相手には私たちの拳があんまり効かなくて、やられちゃったってわけ」  拳が効かない? それはどうしてだろう? 別の生徒が首をかしげた。コリーンはその疑問に答える。 「うん、私たちの攻撃の威力が吸収されるって言うのかな……柔らかくてあんまり効いてる気がしなかったんだ。あと水っぽかったから水の魔法もあんまり効かないと思う。ローレライの仲間が水の魔法を撃ってみたんだけど、だめだった。私も炎の魔法を撃ってみたけど、あんまり効いてないみたいだったなあ……」  耐性は多いが弱点も多く、情報を集めて行けばさほど怖い相手ではなさそうだ……そう考えた生徒たちに、コリーンがさらなる情報をもたらす。 「あとね、相手の中にボスっぽいのがいたんだけど、そいつが私たちをしびれさせてきたんだ……長い触手で私たちの動きを止めてきたから、気を付けてね。お願い、私たちの仇をとってきて!」
魔法学園を回ってみよう

担当 春夏秋冬 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

出発日 2019-02-17

完成予定 2019-02-27

参加人数 8 / 8
 魔法学園フトゥールム・スクエア。  言わずと知れた勇者の育成を掲げる教育機関だ。  特徴といえば、広い。とにかく広い。  なにしろ1000平方キロメートル以上。  ひとつの街が入って余りあるほどの大きさだ。  なので、いくつか町が学園の中に入っていたり、さまざまな施設がごちゃまんとあったりしてる。  それほど大きい学園なので、迷子になっちゃう者も。  そうしたことを避けるためにも、ちょっとしたオリエンテーションといった感じに、学園を見て回ることが勧められている。  特に、新入生には学園に慣れて貰うためにも、こういったことは必要なのだ。  という訳で、見て回ることに。  今回見て回る場所は、次の通り。  超大型商店「クイドクアム」は、文字通りの大型商店だ。  食べ物に衣料品、小物に雑貨と数多く、疲れたら小休憩でフードコートにレストラン、カフェなんかもあったりする。  ここに訪れるのなら、これからの生活で必要なものがあるかないかを探してみるのも良いだろう。  休日の憩いの場になるかどうかの下調べをしてみても良いかもしれない。  情報酒場「スタリウム」は、世界各地から卒業生が戻ってきて交流を行なう場所だ。  雑多で騒がしく賑やかな酒盛りをしている者も居れば、静かに密談めいたものをしている者も見ることができるだろう。  卒業生に声を掛けてみるのも良いし、ベテランめいたふりをして、自分の世界に浸ってみるのも一興だ。  もっとも、ここに居るのはクセのある卒業生たち。  どんな反応が返って来るかは、分からない。  体験型レジャー施設「勇者の穴」は、勇者の能力を使えるアミューズメントパークだ。  今だと『かかって来い勇者達!』とかいうイベントがあるらしい。  着ぐるみを着た卒業生が、魔物に扮して模擬試合をしてくれるとか。  胸を借りるつもりで、突貫してみるのも良いだろう。  そんな話が出ている中、アナタ達は――?
ゆうしゃのじゅぎょ~!★新入生、荒ぶる!

担当 桂木京介 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

出発日 2019-02-17

完成予定 2019-02-27

参加人数 8 / 8
 金属と金属が擦れ合う耳障りな音。  そして、冷ややかに鉄の扉がきしむ音。 「入れ」  奥から声が聞こえた。若い女性の声だ。  どこか、くぐもった声だった。  館内は真っ暗だった。  だが唐突に、ぱっと白みを帯びた明かりが灯った。  新入生たち――つまり君たちだ――は、驚いて周囲を見回す。  広い。  体育館と聞いていたからそれなりのものをイメージしていたのだが明らかに違っていた。室内型陸上競技場といったほうがいいかもしれない。もっといえばコロッセウムか。  アリーナ席に囲まれた中央に、砂が敷かれた広いグランドがある。  ドーム状で、天井や柱には無数の明かりが吊されている。魔法で一斉に点火したものらしい。  普段、このグランドあるいはアリーナは球技や陸上競技に使われるのだろうと想像できた。けれども今日は無人だ。趣(おもむき)がちがうようだ。  アリーナに金属製の箱のようなものがいくつも、うず高く積み上げられていた。  塗装が施されていたり編み目が細かかったりして、いずれも外から内部は見えない。  ひとつひとつが住居にできるほど大きい。それがピラミッドみたいにいくつも積み上げられていた。頂点に位置する鉄の箱は、天井すれすれの位置にある。  しかし君たちの視線を釘付けにしたのは、『体育館』の広大さでもなく、客席やアリーナという設備でもなく、積み上げられた金属製の箱ですらなかった。  ピラミッド状の構造物の前でただ一人、すっくと立つ甲冑の人物に異様な存在感があるのだった。  殺意というのか。  端的にいえば、凄みだ。  下手に近づけば、一刀のもとに叩き切られそうな気迫が伝わってくる。  白い。  白いとしか言いようがない。  その人物は白金(プラチナ)の甲冑を着込み、白いマントを肩から提げていた。  甲冑の表面に彫り込まれた金飾りの意匠が、美しくも好戦的な印象を与えていた。  フルフェイスのヘルメットゆえ顔は見えない。  もちろん年格好すらわかりようがない。  このときふたたび、尖塔型のヘルメットの奥から声が轟いた。 「教師の【ネビュラロン・アーミット】だ」  無人の客席に名乗りが反響する。女の声だ。 「幸運と思うがいいぞ、諸君。このネビュラロンの授業に参加できるとはな!」  ヘルメットはすっぽりと頭部を覆っており、目の部分が格子状になっているだけなので彼女の表情をうかがい知ることはできない。 「座学は好かん。私の授業は常にジッセンだ」  実践、と聞こえたのだがもしかしたら『実戦』かもしれない。  彼女はこう告げたからである。 「これは、私が『檻』と呼んでいる訓練設備だ。今日の授業ではこの『檻』に入り、内部を探索してもらう」  物騒な名前だ。  彼女は続けた。 「それぞれの『檻』は接続してあり、内部に梯子や階段も用意している。といっても、複数のルートから選択する場面も多かろう。上下のみならず左右の移動も、行き止まりもある。立体型のダンジョンだと思えばいい。ゴールは頂点だ」  ネビュラロンは腰からロングソードを鞘ごと外した。  間髪入れず左手で、これを手近なコンテナに叩きつける。強く。   すると『檻』のほうぼうから、低く唸るような声が聞こえたのである。 「気付いたようだな。ただのアスレチックではないぞ。いくつかの檻には『アーラブル』が収めてある。倒すかかわすかして進んでいかねばなるまい」  少し沈黙すると、そうか、とネビュラロンは察したように言う。 「アーラブルを実際に見た者はおらんか。獣型の魔物だ。角の生えた牛に似ているが、『猛牛』と呼ばれるたぐいの牛より、もっと気性が激しく凶暴だ。この学校でも訓練用に飼っている。野生のものよりはずっとマシだろうが、毎年アーラブルによる生徒の事故は絶えんな」  アーラブルを怒らせるなよ、と彼女は続けた。 「毒のたぐいはないとはいえ、角で腹部を貫かれようものなら痛いではすまんだろう。連中は大きな音が嫌いだ」  するとネビュラロンはこともあろうに、 「特に、こういう音がな!」  両手でソードを握るやガンガンと力任せに『檻』を連打したのである。  またたくまにあちこちから、アーラブルの咆える声が聞こえてきた。先ほどより激しいし数も多い! あきらかに怒っているではないか。  サディスト――! と君が思ったとしたら、たぶんそれは間違いではない。 「規定時間より早く終われば報奨金も出してやる。ほら、ここが入り口だ」  と言って否応なく、ネビュラロンは君たちを『檻』のひとつに向かわせた。口ごたえでもしようものなら剣の鞘でひっぱたかれるのではないか、と思った君たちは牧羊犬に追われる山羊のように従う。 「言うのを忘れていたが、ところどころ戯れで罠をしかけてあるから気をつけるように」  どんな罠かは教える気がないらしい。やっぱりサディストなのだろう。 「ギブアップしたいなら火の手を上げろ。……まあ、私が救いに行くより先に、アーラブルが突進してくるかもしれんが」  などと物騒な言葉とともに、ネビュラロンは『檻』の出入り口を閉めてしまったのである。  閂(かんぬき)の下りる冷たく重い音が響いた。  檻の内部は広い。三人くらいなら並んで歩けそうである。薄明かりも用意されている。錆混じりの鉄の匂いが鼻をついた。  さっそく行く手に二つの梯子が見えた。  奥か手前か、登る梯子を選ぶがいい。  授業開始だ。    荒ぶるのはアーラブルか。  それとも君たち新入生か。
”ヤツ”を追え!

担当 土斑猫 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

出発日 2019-02-14

完成予定 2019-02-24

参加人数 8 / 8
「頼むよ! 何とか手を貸しておくれ!」  地面に深々と平伏して願う級友に、あなた達は大きな溜息をついた。  ここは、『魔法学園フトゥールム・スクエア』。そこの一角で、ちょっとした騒動が起ころうとしていた。  事の起こりは、数刻前まで遡る。  この学園の生徒、【アルフィー・アバネシ―】は、とある施設のバックヤードを一人歩いていた。  フトゥールム・スクエアには様々な施設がある。生物園、『アニパーク』もその中の一つだった。件の施設、簡単に言うと動物園。凶暴性の少ない様々な生物を飼育・展示していて、その役目を『生物委員会』の学生達が請け負っている。アルフィーは、その生物委員会のメンバー。生来の生き物好きである彼にとっては天職に等しい役目であり、毎日充実した日々を送っていた。  しかし、多くを得ると、さらに多くを欲してしまうのは人の性。実は、彼には一つの秘密があった。とてもとても、いけない秘密が。それは、生物好きの彼にとってはまさに禁断の果実。その果実との蜜月の時を夢想して、アルフィーは一人ほくそ笑んでいた。  向かう先は、飼育用の器具が収納される準備室。  彼がニタニタしながら部屋のドアを開けようとした、その時――  バターン!  突然中からドアが開き、アルフィーの顔面を強打した。 「ギャフッ!」  ひっくり返る彼の視界に、部室から飛び出してくる何者かの姿が映る。  パタパタと羽ばたく玉虫色の羽根に、小さな身体。  『エリアル』。それも、フェアリータイプ。  知った顔だった。同級生の【チェリー・エイベル】。校内でも名の知れた悪戯者である。 「ご、ごめんねー!」  チェリーは尻餅をついているアルフィーに向かって両手を合わせて謝ると、そのまま一目散に逃げて行った。  ああ、あの調子だと何処かで力尽きてひっくり返るな。などと呆けた頭で考えていたアルフィー。ハッと我に返り、青くなって飛び起きる。 「まさか!」  慌てて覗き込んだ部室。そこにあったのは、ロッカーから落ちてひっくり返った水槽と、窓ガラスに空いた大きな穴。  ロッカーの鍵を、かけ忘れていたのだ。  それを見つけたチェリーが、好奇心から開けてしまったのだろう。  窓ガラスの穴から吹き込む風の中、アルフィーは茫然と佇んでいた。 「……で、モノは何?」  あなた達に訊かれたアルフィーは、しばし躊躇った後、ボソリと呟く様に言った。 「……『タッツェルブルム』……」 「タ……タッツェルブルムゥ!」  ――「タッツェルブルム」――。原生生物の一種で、魔物の様な敵対的存在ではない。とは言うものの、気が荒くてすぐに噛みかかってくる。その上、牙には毒を持っていて、噛まれれば死にこそしないものの、一週間は麻痺してうなされる。そんな訳で世間では危険物扱いされている生物だ。  別段校則などで飼育が禁止されている訳ではないが、流石に危険生物をペットにしてたとなると体裁が悪い。と言うか、間違って誰かが噛まれたりしたら非常にまずい。 「お前なぁ……。いくら生き物好きだからって……」 「頼むよぉ! 誰かが噛まれたりしたら、流石に『プリズン・スクエア』送りになっちゃう! 目玉焼きにソイソースしかかける事を許されない生活なんて、耐えられない! 被害が出る前に、一緒に探しておくれよ!」  そう嘆いてもう一度地面にオデコを擦り付ける、アルフィー。  あなた達がやれやれと、二度(にたび)の溜息を吐いた時―― 「キャアアアアアアアッ!」  青天の下に響き渡る、絹を裂く様な女性の悲鳴。 「…………」  場の皆が、ギギギギッと首を巡らす。  向けた視線の先にあったのは―― 「……にゅふふふふ。なるほどなるほど~。あのタッツェルブルム、『リリー・ミーツ・ローズ』に逃げ込んだか~」  妙に楽しげな声が、部屋の中に響いた。  そこに立っていたのは、いかにも魔法使いと言った格好をした(見た目は)若い女性。彼女は部屋の中心で、ニヤニヤしながら何やら覗き込んでいる。見れば、それは大きな水晶を思わせる透明な球体。それを見つめ、女性はうむうむと頷く。 「タッツェルブルムは土属性の生き物だからな~。土の肥えたそこでは、なかなかに手強いぞ~。さてさて、どうする~? 生徒諸君」  光る玉を愛しげに撫でながら、彼女は言う。 「いい機会だ。これは課題扱いにしよう。上手く捌けば、評価してあげる。だからせいぜい、頑張りたまえ~」  共鳴魔法石(ウーツル)の大玉に映るあなた達の姿を眺めながら、フトゥールム・スクエア学園長、メメたんこと【メメ・メメル】は楽しそうにほくそ笑んだ。
オーロラを見に行こう!!

担当 桜花 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

出発日 2019-02-13

完成予定 2019-02-23

参加人数 8 / 8
 魔法学園フトゥールム・スクエアに入学することになった君達は、同じ新入生である他の学生たちと親睦を深めるため、綺麗なオーロラが見えるというとあるコテージへと合宿に来ていた。 「うぅ~~、寒い……。死にそう……。もう帰りたい……」 「なんでこういう時に限ってこんなに寒いのかしらね。外の冷気が部屋の中まで入ってきて、ものすごく寒いのだけど」 「全くもう、だらしないよ~? 新入生たち。これぐらいの寒さで弱音を吐いてちゃこれからやっていけないよ♪ これからもっともっと寒くなるんだから、がまんがまん♪」  食後の運動として腕のストレッチをしている彼女は、この合宿に引率者として同行している武神・無双コースの【コルネ・ワルフルド】先生。  幼い頃からこの学園にいるコルネ先生の話によると、この時期に雪が吹雪いているのはよくあることのようで、寒いときにはマイナス15度を下回ることもあるらしい。  それと比べたら今日は雪も降っていないしまだ暖かい方なのかもしれないが、コルネ先生のようにもふもふの尻尾を持っていない私たちにとって氷点下の寒さというのはとても厳しい寒さだった。 「さてと。お夕飯も食べ終わったことだし、簡単に今からの流れについて説明するね♪  えっと今は夜の10時だから……、だいたい1時間か2時間ぐらいかな。今日はお外も寒いし、綺麗なオーロラが見えるはずだよ♪ 運がよかったら流星群も見れるかもしれないね」 「えっ、ここって流星群も見られるんですか? オーロラだけかと思ってました」 「確かにオーロラもよく見えるけど、この天気ならたぶん流星群も見れると思うよ。まっ、オーロラも流星群も見れるかはどうかは運次第なんだけどね~~。じゃ、なにかあったら呼んでね。私は部屋でゆっくりしてるから」 「えっ、コルネ先生はオーロラ見ないんですか? せっかくだし一緒に見ましょうよ」 「んー、私は遠慮しとくよ。今日はきみたち新入生の親睦を深めることが目的なんだし、私がいたら邪魔になっちゃうだろうしね。部屋で干しぶどうでも食べながらゆっくりしてるよ。それじゃあね~♪」  夕食のときにも食後のデザートと言って干しぶどうを食べていたような気がするが、どうやらあれぐらいの量ではもの足りなかったらしい。さすが干しぶどうは飲み物だと豪語するだけのことはある。  コルネ先生はふさふさの尻尾を左右へと揺らしながら階段を上っていき、自分の部屋へと帰ってしまった。 「コルネ先生とも色々とお話ししてみたかったんだけど、それはまた今度になりそうだね。ちょっと残念かも」 「まぁこれから学園でお世話になる先生なんだし、またいつか話す機会があるでしょ。さっ、オーロラが出るまでまだ時間はあるだろうし、なにから始めていこうか」
魔法学園の歓迎会

担当 留菜マナ GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 通常

出発日 2019-02-10

完成予定 2019-02-20

参加人数 8 / 8
「おーい、そこの君!」  帰宅途中、見知らぬ女性が下校してきたあなたを視界に収めて歓喜の声を上げた。  ――先輩だろうか?  泡砂糖でできたお菓子のようにふわふわしたストロベリーブロンドの長い髪に、こぼれ落ちそうなほど大きな瞳はアクアマリンの輝きを放っていた。  そして、何やら大きなゾンビスライムのぬいぐるみを抱いている。 「俺、ですか?」 「そうそう」  驚きをそのまま口にしたあなたに、エリアル――エルフタイプの妖精族の女性は、人懐っこそうな笑みを浮かべて続ける。 「ねえねえ、新入生歓迎イベントに参加しない?」 「新入生歓迎イベント?」  妖精族の女性はそう言うとチラシを差し出してきた。  カラフルで可愛いらしいデザインのチラシを、あなたはじっと見つめる。  どうやら、これは学園都市『レゼント』の新入生歓迎イベントへの招待らしい。  確か、学園全体の歓迎会はこの間、行われたよな。  あなたは周囲の様子を見渡すと、意外そうに話を切り出した。 「あの、あなたは?」 「私? 【ミミル】って言うの。レゼントの新歓企画運営委員長だよ」  あなたの疑問に、ミミル先輩がにこやかに自己紹介する。 「そうなんですね。あの、確か、学園全体の歓迎会は行われたんじゃ……」 「むむっ。これはね、私が考え出した特別な新入生歓迎イベントなの」  あなたから指摘されると、ミミル先輩はそれまでの明るい笑顔から一転して頬をむっと膨らませた。  ゾンビスライムのぬいぐるみを抱きしめたまま、その場で屈みこみ、唇を尖らせるという子供っぽいミミル先輩の仕草に、あなたは困ったように頭を抱える。 「特別な新入生歓迎イベント?」 「そうそう。ゾンビぬいぐるみをコンプリートするための特別な――」 「コンプリート?」  思わぬ言葉を聞いたあなたは、ミミル先輩の顔を見下ろしたまま、瞬きをする。  その瞬間、咄嗟に立ち上がったミミル先輩が焦ったように両手をひらひらさせる。 「わわっ……今のなし! とにかく、新入生歓迎イベント、一緒に楽しまない?」 「まあ、特に予定はないですけれど」  両拳を前に出して言い募るミミル先輩の姿に、あなたはもはや諦めたように答えた。 「なら、決まりだね。よろしくー」 「は、はい。よろしくお願いします」  半ば押されるかたちで、あなたは新入生歓迎イベントに参加することになってしまったのだった。 「……ここか」  新入生歓迎イベントに招待されたあなたは、いろいろな施設が展開する学園都市を歩いていた。  ここは、学園施設に直結している居住区域『レゼント』。  学園が居住と商売を保証している特別区であり、いわゆる学園都市だった。 「おーい! こっちこっち!」 「はい」  招待してくれたミミル先輩に呼ばれて、あなたはカフェに入ると空いた席に腰をおろす。  授業が終わった放課後ともあって、かなりの人が入っており、店内は満席である。  ミミル先輩の話では、新入生歓迎イベントはニヶ所で行われており、訪れたい場所に行ってもいいという。  一つ目の場所、超大型商店『クイドクアム』では、様々な商品を売っているお店が多く並んでいる。  そして、ニつ目は――。 「クレーンゲームで、ゾンビぬいぐるみを取ってほしい?」 「うん」  あなたの言葉に、人差し指を立てたミミル先輩が弾んだ声で続ける。 「体験型レジャー施設『勇者の穴』にあるクレーンゲームで何度もチャレンジしているんだけど、なかなか取れないのよね」 「代わりに取ってほしい……と?」  答えないままじっと見つめてくるミミル先輩に、あなたは厄介事の気配を感じ取った。 「ゾンビぬいぐるみって、別に必要ないんじゃ……」 「お願い! あと少しで、全てのゾンビぬいぐるみをコンプリートできそうなの!」  だが、あっさりと告げられたあなたの言葉に対して、ミミル先輩は懇願するように手を合わせる。  さて、新入生歓迎イベントはどちらに行こうか――。
死闘?!ケルベロスのおひっこし

担当 へぼあざらし GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

出発日 2019-02-09

完成予定 2019-02-18

参加人数 8 / 8
 それは早朝の出来事だった。  学園の掲示板前に人だかりができて、生徒たちは掲示板を指差してざわついている。普段、こんなに人が注目するようなことは滅多にない。  この掲示板で通達される内容は、基本的に学園の生徒に対するアルバイトに関する内容だ。将来、勇者は各国からの要請を受けて課題をこなしていくことになる。つまりは事前の経験として、そのタマゴにあたる学園の生徒でも達成できる簡単な任務を、生徒は受注することができるのだ。  ただ、例外だってある。 「みなさんみなさん! なにとぞっ、なにとぞ参加をおねがいしますっ!」  そうやって、必死に声を張り上げるのは、見た目が明らかに十歳くらいにしか見えない子供のような教師、エリアル族(フェアリー)の【ラクス・アイラ】先生だった。誰が見てもこの人を教師だと思うのは難しいだろうが、エリアル族の伸長が小さいのは特徴のひとつなので仕方がないことだ。アイラ先生は玉虫色の透明な羽根をぱたぱたさせて、その場でぴょんぴょん跳ねながら、さらさらの暖色の髪の毛を揺らしている。かわいい。  一部のマニアックな生徒たちによって、ファンクラブが結成されているとかないとか。それはさておき、どうやらアイラ先生は早朝から掲示板の前に立って必死に呼びかけているらしい。道理で人だかりができる訳だ。しかしまた、先生が直々になって呼びかけを行うとは珍しい。 「一体、何があったんですか?」  ある生徒がアイラ先生に声を掛ける。 「よくぞ、きーてくれましたっ!」  するとアイラ先生は目をキラキラと輝かせてその生徒に食い入り、前のめりになった。 「あのですね、あのですね。結論から言いますとぉ……魔獣棟で管理している『魔獣ケルベロス』を、新しい檻へ移し替える作業を手伝って欲しいのですねぇ……へへ……」  話を聞いた生徒たちはぎょっとした。そしてアイラ先生は申し訳なさそうに視線を横に向けている。  『魔獣ケルベロス』。三つの頭を持ち、獰猛で、口からは猛毒を吐く。更には、元々は魔王のペットだったなんて噂もある。聞くからにヤバい奴なのだから、そんなものを目の当たりにすれば誰もがションベンをちびるであろう。  そしてそれを聞いた生徒が口を挟む。 「アイラ先生。そんなとんでもない化け物を生徒が取り扱って良いものなのでしょうか? 第一、それを管理する担当者がやる事では?」  全く以ってその通りだ。しかしアイラ先生はまた調子悪そうに、歯切れが悪く、小さな声で答える。 「いやぁ、その……実は今日が檻に掛かっている結界魔法が切れるので、どうしても今日中にやらないといけないんですけどぉ……担当者する魔導士さん達が数日前から原因不明の病で入院してしまって。学内の運営陣も困り果て、これがその結論だったんですよぉ……。いや、決して魔導士さん達は仮病とかじゃあないと思いますよ? ケルベロスが怖いとか、前回ちょっと失敗して担当の一人が半年入院することになったのが怖くなったとか、そういう事じゃないんだと思いますよ?」  そういう事だと思います。生徒全員は心の中でそう呟いた。生徒全員の表情が曇り出す。 「で、でもですねぇ、報酬は出るんですよ! そこそこですが……」  アイラ先生は必死にフォローするが、そんな中途半端なフォローでは生徒の下がったモチベーションは帰ってこない。 「そ、それに! 今回の任務は特例で私が非常時に備えてサポートを行います! ひゃくにんりきってやつですね!」  非常に心もとない。そもそも、このロリ教師が真っ先にケルベロスに襲われる気がしてならない。そもそもアイラ先生は芸術の専攻で、歌ったり、料理ができても戦闘には不向きだ。  アイラ先生は必死にお願いをするものの、徐々に生徒も踵を返して離れて行ってしまう。仕舞にはアイラ先生も涙目になってしまう状況であった。 「誰かぁ……誰かお願いしますよぉ……」  そんな中のことだった。少なくなってきた人垣の中から、自分が手伝います、と手を挙げる者が現れ始める。どうやら先生の様子を見かねたようだ。困った人を見捨てられないのは勇者の本質らしい。それを見たアイラ先生は悲しそうな表情を一変させ、目を輝かせる。 「ありがとうぅ……うぅぅ……グスッ……」  アイラ先生は感動のあまり、そのまま泣きだしてしまった。感受性が豊か過ぎる。本当に子供みたいだ。 「オイオイオイ」 「死ぬぜアイツ」  一方で茶化す生徒もいる。  しかしある生徒は課題内容をまじまじと見て、「ほう、減額処理抜きクエスト(課題)ですか」と口にする者がいた。 「教師同伴でのアルバイトクエストは報酬が条件に応じて変動することが多い。その中で教師の行動に縛られず報酬が一定とは、効率がきわめて高い」 「なんでもいいけどよォ、相手はあのケルベロスだぜ? いくら先生がいたとしても……」  生徒はアイラ先生を横目で見てから、すぐに視線を戻す。それを見たアイラ先生は頬を膨らませて、おこり始めた。 「あーっ! 今ばかにしましたよね! 心の中で、こんなちっちゃい先生じゃなー、とか思っていたんですよねっ!」  ぴょんぴょん跳ねながらそんなことを言うので、おこっているのに何だかほほえましい。ただ、言われてみれば本当に大丈夫なのか、いささか不安ではある。  だがしかし、そんなことなど、この学校の生徒からすれば些細なことだった。集まったメンバーは既に臨戦態勢になっている。それを見てアイラ先生は安心したようだ。さっきとは打って変わってテンションが高くなっている。 「さてさてでは参加いただいた皆さん! 放課後に魔獣棟の正面に集合してくださいね! はりきっていきましょー! おー!」  しかし、アイラ先生の笑顔を見ると、思わずつられて見ているこっちも笑顔になってしまう。その魔法ような魅力にかけられて、生徒たちはつい参加してしまったのかもしれない。  そして、ケルベロスにも恐れぬ心を持つ勇者のタマゴたちが、アイラ先生の為に立ち上がる。