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【優灯】名人の記憶を取り戻して!


ストーリー Story

「うわあああああああ!?」
 フトゥールム・スクエアの教員である【コルネ・ワルフルド】は叫びながら飛び起きた。跳ね飛ばされた布団が床に落ちる。心臓はバクバクと早いリズムを刻み、全身にはびっしょりと汗をかいていた。
「い、嫌な夢だったよ……」
 まさにコルネ先生にとっては悪夢だったろう。世界から干しブドウが一粒残らず無くなるなどという夢は。
「ま、まさか正夢になるわけないよね!」
 彼女はそう自分を納得させると、夢のことは忘れて身支度を始めるのだった。

「プレグさん、今日も精がでるねえ」
 ここは学園の近くにあるフリセッキ村。この村は水はけのよい土で覆われ、日当たり良好なため、農作物を育てるのに非常に適していた。ここで育てられた良質の作物の一部は学園にも運ばれている。
 その村で働く一人の老人に、通りがかりの男が話しかけていた。
「おう、今日もいい天気じゃからな。この天気を逃す手はないってもんじゃ」
 【プレグ・イーラッド】は話しかけてきた住民に上機嫌で答える。彼の仕事は干しブドウづくりだ。しかも彼はただの干しブドウ職人ではない。干しブドウづくりの名人として知られていた。
「干しブドウづくりにはお日さまの光が欠かせないからのう。この天気ならいい干しブドウができるってもんじゃ」
 彼の言う通り、ここ数日のフリセッキ村は雲一つなくカラッと晴れた日が続いている。この天気なら文句なし、最上級の干しブドウが作れることだろう。
「プレグさんの干しブドウは絶品だからなあ。期待してるぜ!」
 そういうと男は用を足しに村の外へと出て行った。

 その日の夜。プレグはいつものとおり、天日干ししていたブドウを屋内に取り込んでいた。干しブドウに夜露は天敵だ。最悪カビが生えてしまうことになる。日が落ちたらこの作業は干しブドウづくりに欠かせなかった。
「ん、何じゃ?」
 外で物音がしたような気がして、プレグは作業の手を止める。幸い、取り込んだブドウはこれが最後だ。これを室内の風通しのいい場所に置いたら、少し外の様子を見に行ってみようか……。
 そんなことを考えながらプレグは家の扉を開けた。

 翌日。
 用を足して戻ってきた男は、村の様子を目にして呆然としていた。
「なんだこりゃあ……一体、どうなっちまったって言うんだ……?」
 あちらこちらで家が焼けこげ、村人たちの自慢である畑も踏み荒らされたりとひどいありさまである。
 そんな中、奇跡的にほぼ無傷の家から村人が出てきた。
「プレグさん! 無事だったか!?」
 男が駆け寄ると、プレグは頭を振りながらこう言った。
「ああ、わしは無事なんじゃが……家の中によくわからんものが山のように置いてあるんじゃ。これは一体、何じゃったかのう……?」
 男が家の中を見ると、そこには見事に出来あがった干しブドウがざるに並べられているのだった。

「みんな、大変なんだよ!」
 コルネ先生によって集められた生徒は、みな神妙な面持ちで話を聞いている。
 被害が出た村のことや、記憶を失った人のこと。とても心配だ。だが、それとは別の心配事もあった。
「このおじいさんの記憶を何とかして取り戻してあげてね! でないと……」
 干しブドウが切れたコルネ先生がどうなるか……そちらも心配だ。
 学園の生徒たちは大慌てで記憶を取り戻すすべを探し始めるのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-10-17

難易度 簡単 報酬 通常 完成予定 2019-10-27

登場人物 4/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。

解説 Explan

●成功条件
干しブドウづくりの達人であるプレグ・イーラッドさんの記憶を取り戻すことが成功条件となります。

●プレグについて
村を襲われたときに記憶の一部を失っています。
具体的には自分の仕事についての記憶をすべて失っています。干しブドウを見てもそれが何かわからないし、その使い道も忘れているようです。

●記憶を取り戻す方法について
干しブドウを使ったおいしい料理を食べさせてあげると、味覚によって記憶を取り戻すことができるでしょう。
また、彼の家には干しブドウを作るための道具が残っていますので、それを使って干しブドウづくりを実演するのもよいでしょう。


作者コメント Comment
はまなたくみです。名人は道具もその使い道も忘れる……とどこかの作家さんが書いておられたので、こんなシナリオをご用意してみました。
よほどのことがない限りプレグさんは記憶を取り戻すので、気楽な気持ちで参加してみてください。


個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:65 = 65全体 + 0個別
獲得報酬:2000 = 2000全体 + 0個別
獲得友情:1
獲得努力:1
獲得希望:1

獲得単位:0
獲得称号:---

仁和・貴人 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:180 = 65全体 + 115個別
獲得報酬:5250 = 2000全体 + 3250個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
イーラッドさんに干しぶどう食べてもらおうと思う
出来の悪いものとイーラッドさんの作ったものと二種類
体が覚えてるなら何か反応あるんじゃないか?

ああ、干しぶどうは買って持っていく
出来が悪いものはコルネ先生に聞けば嫌々でも教えてもらえるだろ
なんだったらコルネ先生も一緒に来れないか誘ってみるか?
十中八九来れないだろうが

それはそうとイーラッドさんの記憶が戻ったら干しぶどうを売ってくくれないかたのんでみよう
記憶が戻る前に頼んでもいいんだがフェアじゃないしな
上物の干しぶどうを生産者から直接購入できるいい機会だしな
コルネ先生が一緒に来てなかったらお土産としてコルネ先生の分も買っておかないと・・・後が怖いな

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
美味しい料理を食べさせて上げるのがなんとなく効果的な気がするけど、私には無理っぽいわね。だから干しぶどうづくりの実演に賭けてみるわ。

といっても作ったことないから、まずは図書館で手順を勉強しておくわ。

実演だけどただ実演するんじゃなくて、わざと間違ったり手順変えたりしてプレグさんの反応を見ながらやるつもりよ。

レダ・ハイエルラーク 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
・調理

◆プレイング
・活性化中技能と料理Lv3を使用し料理を作る
・調理予定のレシピはウィッシュプランに記載
・味見という名のつまみ食い発生
・泡立て器は使えるなら使う
・使えないなら像と化してもらう
・干しぶどう造りの道具を使用できるなら使用する
・調理後食事会とする(可能ならば)
・できるなら村の片付けや復興を手伝う

◆備考
・アドリブ大歓迎
・絡み大歓迎
・泡立て器大歓迎

リザルト Result


 フリセッキ村は今日も晴れていた。その日差しのまぶしさに、派手な外見をしたヒューマンの少女、【チョウザ・コナミ】が目を細める。
「いいお天気ですわね。これなら干しブドウづくりの実演もうまくいきそうね!」
 黒髪のアークライトの少女、【ニムファー・ノワール】が嬉しそうに言う。彼女の気持ちを表すかのように、黒い瞳が陽光を反射してきらきらと光った。
(本当は美味しい料理を食べさせてあげたいのですけれど、わたくしにはうまく作れる自信がありませんし……)
 無理に背伸びをせず、自分のできることをやろうと決めたのだ。
「オレは干しブドウを持ってきた。これを名人の作ったものと食べ比べてもらおうと思っている」
 黒ずくめのヒューマン、【仁和・貴人】が言う。持ってきた干しブドウはコルネ先生に聞いて用意した、あまり出来のよくないものだ。この干しブドウを手に入れるまでに起きた様々な苦労を思い出し、はあ、と一つため息をついた。仮面に隠れてそれに気づくものはいなかったが。
「私は干しブドウを使った料理を作るつもりだ」
 こちらも黒ずくめの【レダ・ハイエルラーク】が落ち着いた口調で言う。彼の相棒である泡だて器ももちろん一緒だ。
「レダさんの荷物、ずいぶん多くないかしら?」
 ニムファーが言う。その通り、今回のレダはさまざまな荷物を持参していた。料理に使う食材や、調理器具の一式などなど。
「半分持つよ。オレの荷物はこのとおり、干しブドウだけだし」
 貴人が手を差し出し、食材のほうを受け持つ。
「すまないな。助かる」
 そんな話をしながら、復興が進んでいる村の中を歩き、彼らは【プレグ・イーラッド】の家にたどり着いた。


「話は聞いとるぞ。あんたらが学園の生徒さんたちかい」
 生徒たちが玄関の前に立つと、タイミングを計ったように家の扉が開き、中から老人が顔を出した。穏やかそうな笑顔を浮かべた、気持ちのいい老人だ。
「はい、プレグさんの記憶を取り戻すお手伝いをしに来ました」
 四人を代表してレダが訪問の目的を告げる。
「ワシの記憶か……本当に戻るんかのう」
 プレグは不安そうだ。
「わたくしたちにお任せください! きっと記憶を取り戻して差し上げますわ!」
 ニムファーが満面の笑みを浮かべながら言う。その自信ありげな態度に、プレグの不安も和らいだようだ。
「まあ、よろしくお願いするわい」
「助かります。早速ですが、台所をお借りしてもよろしいですか?」
「ああ、家の中のモンは好きに使って構わんし、やりたいことは自由にやってええよ」
 家主のお墨付きを得た四人は、それぞれのやり方でプレグの記憶を取り戻すべく行動を始めるのだった。


「どんな道具があるのかしら?」
 ニムファーは実演の準備をするため、プレグの使っていた道具を調べていた。手持ち無沙汰な貴人もそれについていく。事件があった日から道具はそのままになっているらしく、目につく場所に置かれたままになっていた。
「これは……ざる、のようね」
 おそらく干しブドウを干すのに使っていたであろう、木のざるだ。その上には事件の日から並べられたままの干しブドウがある。
「どれどれ、少し味見」
 横から貴人が手を出して、干しブドウをぱくつく。
「まあ、お行儀があまりよくないわ」
「干しブドウを食べ比べてもらう準備だよ……ふむ」
 貴人は持ってきた干しブドウの味を思い出しながらうなずく。やはりプレグの作ったものと自分が持ってきた干しブドウでは味に大きな違いがある。
「これなら名人も何か思い出してくれると思う」
 貴人は一人うなずいた。
 一方ニムファーである。ほかの道具もあさってみたが、めぼしいものは特になかった。
「このざるだけで干しブドウを作っていた、ってことかしら……?」
 それから、あらかじめ図書室で読んできた本の内容を思い出す。
「えーっと、まずは……」
 といっても、特に難しいことはないので思い出すまでのことはなかった。何しろその本には『ブドウを洗って干す』としか書かれていなかったのだから。
「干し具合とか、いろいろ書くことがあるでしょう!? なんでこんなに薄い情報しかないのかしら?」
 ニムファーは一人ぼやくが、それに答えるものはない。
「こんなに簡単に干しブドウは作れるらしいのに、そんなに違いが出るのかしら……?」
 プレグの反応を見ようとわざと間違えるつもりだったニムファーだが、これでは間違えようがない。
「でも、これならわたくしなりに普通にやってみたら、プレグさんと違いが出るのかもしれないわね。やるだけやってみましょうか」
 何事も挑戦あるのみ。ニムファーは自分なりに、干しブドウづくりの実演を披露すると決めた。
 一生懸命な姿を見れば、プレグにも何か伝わるはずだ、と信じて。


 一方そのころ。レダは台所で料理にとりかかっていた。さほど広くはないが片付いた台所だ。……というか、調理器具がぜんぜんない。この家の主は料理にこだわりがないタイプらしい。必要な調理器具一式を学園から持ってきて正解だった。
 まずは……。
「煮込み料理の下ごしらえ、からだろうな」
 レダはつぶやいて調理にとりかかる。なお今回、相棒の泡だて器は出番がないため台所の片隅で見守っていてもらうことにした。
 豚肉を一口大に切って下味をつける。鍋ににんにくと玉ねぎを入れて炒める。キッチン中にいい香りが漂い始めた。
「うん、こんなものだろう」
 きつね色になるまでゆっくりと炒めたら、下味をつけた豚肉を入れて炒め、トマトと水を入れる。
「よし、煮込んでいる間にほかの料理も作ろうか」


「では、今からわたくしが干しブドウづくりの実演をお見せしますわ!」
 プレグの前に戻ったニムファーと貴人。ニムファーがプレグの使っていたざるを片手に、力強く宣言した。
「ほう。どんなもんか、楽しみじゃのう」
「最後まで見ていただけたら、何か思い出せると思いますわ!」
 そう力強く宣言しながら、ニムファーはブドウを取り出す。
「まずはブドウを水で洗いますわ!」
 ざるに入れたブドウをつぶさないように優しく洗う……つもりなのだが。
「やってしまいましたわ……」
 力加減を間違えてしまったのか、何粒か潰れてしまった。
「ま、まあ気を取り直して次の工程に移りますわ! 次はこのブドウをざるに並べて干すんですの!」
 ニムファーは無事だったブドウを手に取り、ざるに並べていく。途中何粒か転がり落ちて、洗いなおす羽目になったりしたが……それはともかく。
「これをお日さまの下で干しますわ!」
「ほぉー。簡単にできるもんなんじゃのう」
 まるで他人事のような口調で言うプレグに、
(えぇ……)
 と思ったものもいるとかいないとか。
 それはさておき。
(このまま干すだけでは時間がかかりすぎますわ……そうだわ!)
 ニムファーは何かを思いついたようだ。プレグに声をかける。
「プレグさん、キッチンを少しお借りしていいですか?」


 ニムファーがブドウの一部を持ってキッチンを訪れると、レダが料理の仕込みを続けていた。
「レダさん、お疲れ様です」
「ニムファーか。どうした?」
 レダが声をかけると、ニムファーはワクワクしながら答える。
「オーブンで焼いたら手っ取り早く干しブドウが作れるのではないかと思ったのですわ!」
「そうか。オーブンは使っていないから好きに使うといい。私は他の料理を仕上げておこう」
 レダの許可も得て、さっそく天板に並べたレーズンをオーブンに入れる。
「火加減はよくわかりませんけど……弱火でじっくり焼いてみるといいんじゃないかしら?」
 ニムファーがオーブンの前に陣取っているころ、レダは次の料理にとりかかっていた。小麦粉を練って生地を作り、中に餡を詰めて閉じる。それを蒸籠に並べて火にかける。
「あら、美味しそうね? 中身は何かしら?」
「食べてみてのお楽しみだ」
「まあ、楽しみね」
 そんな会話をしながらも、レダの手は止まらない。
 アボカドを縦に切って種を取り除き、食べやすく角切りにしていく。熟したアボカドは柔らかく、下手に切ると潰れてしまいそうだが、手先の器用なレダにとっては造作もないことだ。
 続いてドレッシングを作る。ヨーグルトに塩と砂糖を加えて味付けする。ペロリ、と小指の先にドレッシングを取って舐めてみる。
「うん、美味いな」
 そしていよいよ主役のレーズンの登場だ。アボカドとレーズンをドレッシングで和える。
「よし、完成だ」
「こちらも完成しましたわ……あっ!」
「どうした?」
 料理が完成し、手の空いたレダがのぞき込むと……。
「また失敗してしまいましたわ……」
 そこには真っ黒に焦げたブドウがあったのだった。
「なに、気にすることはない。ニムファーは一生懸命やったんだ。きっとプレグさんにも何か伝わったものがあると思うぞ」
「そこの青年の言う通りじゃよ」
 声がした。二人が顔を上げると、台所の入り口にプレグが立っていた。
「お嬢ちゃんが一生懸命やってくれたのは伝わっとるし、それにうっすら思い出してきた気がするんじゃ。ワシは昔、確かに嬢ちゃんがやったようなことをやっていた……とな」
 そう言ってプレグはにっこりと笑った。
「美味そうな料理もできとるみたいだし、食事にせんか?」


「ほぉ~、豪勢なもんじゃのう。これ全部、あんたが作ったんか?」
 プレグはレダが作った料理の数々を見て感嘆の声を上げた。
「ええ、まあ」
「とっても美味しそうですわ!」
「冷めないうちに早く食べよう」
 ニムファーと貴人も口々に言う。皆で手を合わせ、楽しい食事会が始まった。
「この中華まん、中身は芋なんだな」
 スイートポテトまんを手に取り、中を割ってみた貴人が言う。
「芋の甘さとは違う甘いものが入ってるのう」
「なるほど、干しブドウが入ってますのね! 美味しいですわ!」
「ほー、この甘いのが干しブドウなんか。美味しいもんじゃなあ」
 プレグも美味しそうにほおばる。
「こちらのカレーも絶品ですわ!」
 ニムファーがスプーンですくって口に入れ、満面の笑みを浮かべる。先ほどレダが煮込んでいたのはこれだったようだ。
「カレーと干しブドウって合うよな」
「辛いのと甘いのがよう合うんじゃなあ」
「この料理はポークビンダルーという名が……まあいいか」
 レダは気にしないことにした。料理の名前より、みなが美味しく食べてくれることがもっとも大事なのだから。
「あら? サラダだけなんだか少ないような気がしますわ?」
「そ、そうか? 気のせいだろう」
 レダは平静を装って答える。言えない。味見したらことのほか美味しかったので、ついついつまみ食いしすぎてしまったなんて。
「それよりプレグさん。記憶のほうはどうでしょうか?」
「うーむ……たしかに干しブドウを毎日食べていたし、作っていたような気もするんじゃが……まだはっきりとは思い出せんのう……」
 煮え切らない返事をするプレグの前に、今度は貴人が進み出る。
「じゃあ、次はオレの番だな、プレグさん、この干しブドウを食べてみてくれないか?」
 貴人は持ってきた干しブドウを差し出す。
「どれどれ……」
 一口食べたプレグの顔が険しくなった。
(コルネ先生お墨付きの干しブドウだ。記憶がなくても名人には違いがわかるみたいだな)
 貴人はこの干しブドウを手に入れた時のことを思い返していた。


「コルネ先生も一緒に来てくれませんか?」
 出発前、そう問いかけられた【コルネ・ワルフルド】は申し訳なさそうに首を振った。
「ごめんね、アタシは学園の仕事があるから……」
「そうですか……」
 貴人も来られると期待していたわけではないので、あっさりと引き下がる。もう一つ、こちらが本命の質問だ。
「出来の悪い干しブドウの情報を教えてもらいたいんですが」
 質問したとたん、ぶわっ、とコルネの纏う雰囲気が変わった……ような気がした。
「干しブドウに出来の悪いものなんてないんだよ! 干しブドウはみんな違ってみんないいんだよ!」
 コルネはぷんぷん怒りながら言う。このままではまたしても正座からの干しブドウ講座耐久6時間レースが始まってしまいそうだ……そう感じた貴人は慌てて言葉を付け足す。
「いえ、そういうつもりじゃなかったんです。名人と言われるほどの方なら自分が作ったものの味見は欠かさないと思うんです。だから出来の悪いものを食べたら違いがすぐにわかるんじゃないかな、って」
「そうなんだ……」
 コルネは少し考えたのち、仕方がないという表情をして言う。
「じゃあ教えるけど、干しブドウは悪くないんだからね! 悪いのはこの干しブドウを作った人なんだよ!」
 コルネはなんだかよくわからないことを言いながら、自分が食べてあまり美味しくなかった干しブドウを教えてくれたのだった。
 

「こっちの干しブドウも食べてみてください」
 貴人はプレグが作った干しブドウも差し出す。
「ああ、覚えのある味じゃ……うう、うう……」
 プレグは涙を流している。
「だ、大丈夫ですか?」
 ニムファーが思わず問いかける。
「大丈夫じゃ……すべて、すべて思い出すことができた……あんたらのおかげじゃ……ありがとうな……」
 しばらくの間、静かに涙を流すプレグを四人は見守り続けていたのだった。

「こちらの干しブドウを売っていただけませんか?」
 落ち着いたあと、貴人はプレグに頼んでみた。コルネ先生の影響で干しブドウが好きになった貴人としては自分でも食べてみたいし、それに何よりコルネ先生にお土産を持って帰らないと後が怖い。
「ああ、ええよ。学園の生徒さんなら大歓迎じゃ。また、いつでもおいで」
 プレグをはじめとする村の人々の笑顔、そして大量の干しブドウをお土産に、生徒たちは家路につくのだった。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
【優灯】名人の記憶を取り戻して!
執筆:はまなたくみ GM


《【優灯】名人の記憶を取り戻して!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-10-14 00:58:04
干しぶどうの細かな作り方に詳しいわけじゃないけどさ。
ぶどう干すのがお上手ってなら、ほかの物体干すのも上手いんでしょ、たぶん。

そったらさっさと記憶戻して貰ってー、色んなもん干してもらわないとね。おもしろそうだから。
お肉とか、お魚とか、スライムとか。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 2) 2019-10-14 11:28:13
ニムファー・ノワール17才です!(ぉぃぉぃ

おいしい料理!・・・まったく自信はないわね(きっぱり
だから干しぶどうづくりの実演をしようと思うの。
でもただ実演するんじゃなくて、わざと間違ったり手順変えたりしてプレグさんの反応を見ながらやるつもりよ。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 3) 2019-10-16 14:52:12
イーラッドさんに干しぶどう食べてもらおうと思う。
出来の悪いものとイーラッドさんの作ったものと二種類。
体が覚えてるなら何か反応あるんじゃないか?

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 4) 2019-10-16 20:59:36
挨拶を忘れていた。
私は思いつく料理を並べてみよう。