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始まりの道標


ストーリー Story

 春。
 それは新たな門出の季節。
 満開の桜、あるいは葉桜に見送られ、新しい一歩を踏み出す季節。
 そんな季節が到来したここ、『フトゥールム・スクエア』では――、
「相手の胃袋に致命的な一撃を! 『暗黒格闘料理研究会』に興味はないか!?」
「グリフォンに乗って自在に空を駆ける、『鷲獅子乗り隊』は楽しいぞー!!」
「どこぞのゲテモノ食い合う奴らとは違う、誠心誠意の『お料理クラブ』にどうぞー!!」
「一にマッスル二にマッスル!! 三四に筋トレ五にマッスルの『マッスル野郎Aチーム』で共に高め合おうぞ!!」
 群雄割拠のクラブ勧誘が行われていた。
 そもそも膨大な生徒と先生とが存在するこの学園において、公式非公式問わず様々なクラブが存在しているわけであるが、その何処もが、新入生の加入を心待ちにしているのである。
 ……まだ学園のイロハも知らない新入生達。
 そんな新入生が入りたいと思うクラブは、果たして何処になるのだろうか……。


「と、言うわけであまりにも多すぎるクラブを選んでいただくために、各クラブプレゼンを行っていただきます。プレゼン内容は自由。活動の内容を紹介するも良し、活動で作った物を発表するも良し、食べ物を作っているところならばそれを食べさせる、というのも有りです」
 一人で放送クラブを立ち上げ、勝手に学園内に放送を垂れ流している【ダヴィヤ・スカーレット】が今回のプレゼンを行うクラブの皆に説明する。
 あまりにも多すぎるクラブの数は、正門を封鎖するのが容易なほどであり。
 普通に邪魔だし危険と判断した先生達は、放課後、数週間かけてほとんどのクラブ活動に宣伝の場を設けた。
 ――先生の独断で宣伝の許可すら得られなかったクラブもあったりするが、それはまた別の話。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2020-04-07

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-04-17

登場人物 5/8 Characters
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《ゆうがく2年生》蓮花寺・六道丸
 リバイバル Lv13 / 芸能・芸術 Rank 1
名前の読みは『れんげじ・りくどうまる』。 一人称は『拙僧』。ヒューマン時代は生まれ故郷である東の国で琵琶法師をしていた。今でもよく琵琶を背負っているが、今のところまだ戦闘には使っていない。 一人称が示す通り修行僧でもあったのだが、学園の教祖・聖職コースとは宗派が異なっていたため、芸能・芸術コースに属している。 本来は「六道丸」だけが名前であり、「蓮花寺」は育ててもらった寺の名前を苗字の代わりに名乗っている。 若い見た目に不釣り合いな古めかしい話し方をするのは、彼の親代わりでもある和尚の話し方が移ったため。基本的な呼び方は「其方」「〜どの」だが、家族同然に気心が知れた相手、あるいは敵は「お主」と呼んで、名前も呼び捨てにする。 長い黒髪を揺らめかせたミステリアスな出で立ちをしているがその性格は極めて温厚で純真。生前は盲目であったため、死んで初めて出会えた『色のある』世界が新鮮で仕方がない様子。 ベジタリアンであり自分から肉や魚は食べないが、あまり厳密でもなく、『出されたものは残さず食べる』ことの方が優先される。 好きなもの:音楽、良い香りの花、外で体を動かすこと、ちょっとした悪戯、霜柱を踏むこと、手触りのいい陶器、親切な人、物語、小さな生き物、etc... 嫌いなもの:大雨や雷の音

解説 Explan

 自分の入っている、または、これから作る予定のクラブを紹介するエピソードになります。
 新入生も入ってくる事ですし、今まで影の薄かったクラブ棟にスポットを当ててみてください。
 プランの内容はオールフリー。やりたいこと、言いたいこと、好きなことをしてクラブをアピールしてください。


作者コメント Comment
 どんなとは言いませんけどゲームでクラブや部活って重要じゃないですか? こう、ステータスとか、好感度とか。
 なので、今回はそこに注目してみようかと思った次第。
 解説にもありますけど、好き勝手面白おかしくやっていただいて大丈夫です。
 書くときの駄馬がきっと何とかすると思うので。


個人成績表 Report
タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
エリカ部長の名代として
秘密情報部を宣伝

「新入生の皆さん
ご入学おめでとうございます

世界に謎は多く
学園生活も同様
ささいな疑問から大きな不安まで
知りたいことが山ほど出てくるはず

そんなときは
フトゥールム秘密情報部の扉を叩いてみてください
僕たちは秘密を解き明かすために情報を集め共有する部です
世界の謎、課題解決のコツなど真面目な問題から
美味しいお店、こだわりやマイブームなど楽しい話題まで
僕たちと一緒に解き明かしてみませんか?」

自分の原稿は完成したので
学園紹介パンフレットを手伝った縁がある新聞部と
いつも事前調査でお世話になる図書委員会に
決定戦に参加した厨2部
仲間の属する部に顔を出し
宣伝の手伝いを申し出る

ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
武術同好会を紹介する

■行動
日々のクラブ活動の光景を見せながら紹介するよ。
第三校舎所属の武術同好会だよ。第七校舎じゃないから注意してね。
ここでは剣や槍などの種別や流派問わず、様々な武術を通じて己を鍛えるを目的としているよ。
…と言うと堅苦しくなるけれど、実際は結構ゆるい感じだよ。

あそこの先輩達のように本格的な修練を積んだりする人もいるけれど、
あっちの部員達のようにフィットネス感覚で楽しくトレーニングしたり、
向こうの人達のように武術をネタに駄弁るゲフンゲフン知識を高め合ったり、
鍛え方は人それぞれ。自由にやってるよ。

目的や経験の有無は問わないから、気になった人は体験でもいいから気軽に来てね。

アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
見聞を広めるため、全部の部を見て回る。疑問に思えば質問したり、活動の意義を問うたりする。感想等を手帳につぶさに記録しておく。

『暗黒格闘料理研究会』
料理はおなかも心も満たして、人を幸せにするもの。胃袋に痛撃を与えるなど邪道もいいところね

『鷲獅子乗り隊』
確かに楽しいけど、グリフォンは、個人の資格で所有出来無いっぽいから、飛行能力とか、箒の操縦技術を磨いた方が有用

『お料理クラブ』
安定の普通ね。珍妙なクラブが多い中では、かえって変に思えるぐらいね

『マッスル野郎Aチーム』
戦うのに腕力は必要だけど、武術とか運動で、同時に他の能力も鍛えた方が効率的な気がするわね。あと、暑苦しい

アドリブ、アレンジ歓迎


仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
クラブ紹介か・・・
普段幽霊部員しているし少しは貢献?するとしよう

まぁ、部のエースでもあるタスクくんもいるし基本任せておけば間違いではないが・・・こっちはこっちで宣伝しておこうか

「フトゥールム秘密情報部では部員も募集中だが部員にならなくても遊びにくるだけでも大歓迎だ
購買部で販売されているアイテムの情報や学園の噂などためになったりならなかったりする情報も目白押しだ
興味が出たなら一回、足を向けてくれると嬉しい」

・・・こんなものか

一応、ビラでも用意しておいた方が良いだろうか?
後は、他のクラブさん方とも協力出来ることがあれば協力して宣伝していきたいところだな

アドリブ大歓迎だ

蓮花寺・六道丸 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
いい機会なので、作ってみたかったけど実現が難しそうな部活を作ってみる
茶道部を作り、客人を招いて体験してもらう

畳敷きの和室に花を飾り、床の間には水墨画の掛け軸
気軽に会話しながら見学者を精一杯持て成す
「やあ、ようこそ茶道部へ。どうぞ寛いでくれ
「作法?フフフ、それって相手を喜ばせるためのものであろう?其方と時間を共にするだけで拙僧は笑顔になれるのだから、そう気を使わんでもよいぞ
「茶は良い。些細なことが会話の糸口になり、相手をもっとよく知ることができる。拙僧はここを最終的に、生徒同士の社交の場にしたいと思うておる
「…おや、まだ話し足りぬのに無くなってしもうた。代わりを用意してこよう、しばし待っておれ

リザルト Result

「さて、時間でございますね」
 屈伸をし、ストレッチを行って。発声練習も終えた上で、【ダヴィヤ・スカーレット】は歩を進める。
 果たしてどれ程の生徒が見ているのか分からないが、それでも彼女に緊張は無い。
 学園長である【メメ・メメル】お手製の投影魔法により、これから彼女が向かう壇上は学園内のどこにいても見ることが出来るよう中継をされている。
 そんな中で、果たしてどれ程の生徒が普段通りに、自分の行いたいようにプレゼン出来るのだろうか……。

 *

「では最後に『筋肉野郎Aチーム』の皆様、一言お願い致します」
 まさか最初から、こんな暑苦しい筋肉だるまを見ることになろうとは……。
 一体どんなクラブの紹介があるのだろうと、学園の上空に映し出される映像を凝視していた新入生は、やってきた筋骨隆々の野郎共を視界に入れると、直ぐさま視線を外した。
 ――何名かはうっとりして眺めていたり、中には自分の方が、と服を脱ぎ捨て筋肉をアピールする者も居たが、その生徒達は例外。
 大半の生徒が早く終われ、と思う中、出てきた『筋肉野郎Aチーム』の筋肉だるま達は、自分の推す筋肉をアピールするポーズを取り。
 散々どの部分がキレがいいか、や、どの場所がストロングかについて講釈を垂れた。
 そんな時間が少し続くと、ダヴィヤから持ち時間が迫っていることを告げられて、先ほどの場面に戻る。
 つまりは、時間切れだから言い残すことは? とダヴィヤに聞かれた場面に。
「これから我らが『筋肉野郎Aチーム』に入る新入生諸君!! 共にバック・ダブル・バイセップスを行ったときのように、背中に鬼を背負おうぞ!!」
「モスト・マスキュラーの時のようにたくましい肉体を!!」
「どんな女性も持ち上げられる、太ましい上腕二頭筋を育もうではないか!!」
 それぞれがやっぱりポージングをキメながら、勧誘文句を口にするが、正直なところ何人に伝わるだろうか……。
「思った通り、暑苦しい……。大体、筋肉を部位で鍛えても、装備や戦い方で必要な筋肉なんて変わっちゃうじゃない」
 そんな映像を見上げ、誰にも聞かれない声量で独り言を呟いたのは【アルフィオーネ・ブランエトワル】。
 自身に課した、五つの誓いにより、果たしてどれ程あるかも分からないクラブを回ろうとしていたとき、クラブ紹介が行われることを耳にした。
 これなら回る必要がなくなる、と意気揚々と映し出される映像を見ていれば、初っぱなからボディーブローを打ち込まれたような感覚に陥ってしまった。
 せめて次に紹介されるクラブはまともでありますように。
 そう切に願うアルフィオーネの祈りが通じたかは分からないが、次に映像によって映し出されたのは――、畳。
 始めは畳しか映し出されなかったが、徐々に映像は引いていき。
 次に映像に入ってきたのはスイセンの花。
 白い花の一輪が、侘しく花瓶から顔を覗かせていた。
 そんな花のすぐ傍に、薄茶色の茶器が一つ。
 白い湯気を揺らがせて、中に入った深緑がコンニチハ。
 畳より緑のその液体が入った茶器がアップで写されたかと思えば……。
 そんな茶器へと伸びてくる、一本の腕が横切って。
「暦は春でもまだまだ寒い。拙僧と一緒に、『茶道部』で熱い茶など共にどうだ? 茶菓子もあるぞ?」
 と、朗らかな笑みを映像越しに向けてくる生徒が一人。
 琵琶を背負い、独特の服装のそのリバイバルは【蓮花寺・六道丸】。
 現在のところ、彼のクラブは立ち上げには至っていないが、人が集まれば……との事で今回のクラブ紹介の参加に手を上げたらしい。
「茶室にて心を落ち着け」
 ギュム。
「季節の花を静かに愛でて」
 ギュム。
「時には水墨画を見て和み」
 ギュム。
「会話を弾ませ茶を楽しむ」
 ギュム――カチッ。
 部屋にある飾りを紹介しながら、何やら怪しい手つきで畳を押していたかと思えば、妙な音が映像に入ってきて。
「最終的には、ここが生徒らの社交の場になれば、と思うておる――では、これにて!」
 急に映像が茶室の天井を写したかと思えば、すぐに元の視点に戻り……。
 戻りはしたが、その映像の中には、六道丸の姿は……どこにもなかった。
(ふふ、うまくいったようだ。これで少しは、興味を引けるとよいが……)
 隠し通路である水墨画の裏側で、笑いを押し殺しながら、六道丸は無邪気な笑顔を隠すのだった。

 *
(ちょ、あんな一瞬であの人は何処に行っちゃったのよ!)
 映像を見ていたアルフィオーネは一瞬テンパる……が、
(でも、確かにお茶はいいかもしれない。お茶菓子もあるって言ってたわよね? おまんじゅうはあるのかしら?)
 と思考をチェンジ。大好物の饅頭の事を思えば、涎がとまらない様子。
(って、違う違う。今は食べ物じゃなくて、クラブの事を考えなきゃ)
 首を左右に振り、一旦好物の誘惑を振り払う。
 次なるクラブへと目を向ければ、そこにはちょこんとドラゴニアの少女が立っていて。
 白い羽と白い角が特徴的なその少女は、
「『武術同好会』所属の【ビャッカ・リョウラン】です! よろしくお願いします!」
 と、彼女の性格なのだろう、真面目に元気に挨拶をすると、
『押忍!!』
 彼女の後ろで様々な武器を携えていた生徒達が続く。
「あはは……、今はこんな感じだけど、実際の活動はもう少し緩いよ! 各々が得物にしてる武器、流派関係無しに、色んな武術を通じて鍛えていこうって考えだね。場所は第三校舎。第七校舎じゃないから注意。具体的な活動内容は……」
 ある程度『武術同好会』の説明を終え、具体的な内容に入ろうとするが……。
 ビャッカの視線の先で行われているのは、本当に様々で。
 素手で槍と組み手をしている者も居れば、棍(こん)を利用したフィットネスのようなものをやっているもの。
 果てには座り込んで、何やら雑談をしている者まで。
 緩い、という説明がこれ以上ないくらい当てはまる活動風景だった。
「こんな感じだから、まずは体験でも、気軽に来てくれると嬉しいかな!」
 そう締めくくったビャッカは、
「それじゃあ、後は会長に任せます」
 と、後ろで腕を組んで頷くだけだった後ろのモブへとバトンタッチ。
 映像を見ていた誰しもが、
(あんたが会長じゃないのかよ!!)
 と突っ込んだのは言うまでもない。

 *
(まさか、会長でもないのにクラブ紹介のプレゼンをしているだなんて思わなかった)
 例に漏れず心の中でツッコミを入れたアルフィオーネ。
 しかし、それにしても『武術同好会』か、と先ほどのプレゼンを反芻する。
 紹介をしていたのは自分ほどではないが小柄な女性だった。
 制服の上からでは分かりづらかったが、腕なんかはしっかりと締まり、筋肉もついていた。日々の鍛錬がそうさせているのだと、アルフィオーネは理解する。
(出来れば手合わせを申し込んでみたいところね……。道場破りならぬ、クラブ破りなんてあるのかしら?)
 と、何やら物騒な事を考え始めたが、あくまで考えるだけ。
 実行には移さない。――多分、きっと、恐らく。
(第三校舎で活動してるって言ってたわね。近い内に覗いてみようかしら)
 と、興味が出てきたところで映像が切り替わり次のクラブへ。
 すると、映像に映し出されたのは――空。
 その空を、巨大な何かが横切った。
 大きな羽根が特徴で、下半身は獅子。
それは、学園周辺の定期便を運行してくれているグリフォンに間違い無かった。
「俺らは『鷲獅子乗り隊』! その名前通り、グリフォンに乗っかって、空を飛びてぇってクラブだ!」
 古来より、空を飛ぶ事を夢見るのは飛べない者達の宿命で。
 どうしても飛びたいならば、飛べる奴に掴まればいい! と考えた結果、グリフォンに跨がっていた……らしい。
「気性が荒いとか、そもそも餌をやらなきゃ乗せてくれないとかあるが、ご機嫌なときの乗り心地は最高の一言だ!」
「もちろん乗るだけじゃなく、餌やりや身体洗ったり、小屋の掃除をしたりもする」
 風から目を守るためのゴーグルを上にずらし、自分の周囲を漂う魔力の水をはためかせ、ローレライの男子生徒は目を輝かせて話す。
「もうすぐグリフォンをどれだけ操って速く飛ばすかってのを競うレースもある。絶対活躍してみせるから、クラブに興味は無くても応援してくれよな!」
 と、言うだけ言って、グリフォンの背を軽く叩くと……。
 グリフォンは一度だけ大きく、強く、羽ばたいて。
 あっという間に、その姿が点になった。
(楽しそうではあるけど、グリフォンって個人での所有って難しいと聞くわ。あのグリフォンだって学園所有だろうし……)
 確かに空を飛べるのは魅力である。
 高速で風を切るのは気持ちがいいだろう。
 ……が、
(だったら私は箒の操縦技術を磨くわ。あれこそ自分で飛ぶってものじゃない)
 というのが、アルフィオーネの考えらしい。
(楽しそうではあるけれど……ね)
 結構後ろ髪引かれる想いなようだ。
 
 *
「新入生の皆さ~ん!! ご入学おめでとうございま~す!!」
 先ほどまでのプレゼンを行った者達より、一回りほど大きい声量で。
 気合いを入れまくっていることが伝わる【タスク・ジム】の声が響く。
「世界に謎は多く、学園生活も同様に、ささいな疑問から大きな不安まで、知りたいことが山ほど出てくるはず」
 広大すぎる学園の敷地内では、不思議の数は七つ以上が確認されている。
「そ、そんなときは、『フトゥールム秘密情報部』の扉を叩いてみてくれ」
 一方こちらは仮面を装着し、むしろ本人の方が秘密情報を持っていそうな【仁和・貴人】が慣れないように語りかける。
「僕たちは秘密を解き明かすために情報を集め共有する部です」
「世界の謎、課題解決のコツなど真面目な問題から」
「美味しいお店、こだわりやマイブームなど楽しい話題まで」
 余程練習をしてきたのか、二人は息ピッタリに、交互に紹介を行っていく。
『僕たちと一緒に解き明かしてみませんか?』
 最後はしっかり呼吸も合わせ。締めの台詞は二人で一緒にハモってフィニッシュ。
(本番で完璧に出来ましたね!)
(原稿作ってくれて助かった。これは手応えあるな)
 映像に乗らない程度の小さな声で、タスクと貴人は満足げ。
(後は細かな紹介ですね。任せましたよ)
(任された。……さて)
「『フトゥールム秘密情報部』では部員も募集中だが部員にならなくても遊びにくるだけでも大歓迎だ」
 タスクが一歩引き、貴人を前に押し出すと、押し出された貴人は、今度は自分の作った原稿を読み上げる。
「購買部で販売されているアイテムの情報や学園の噂など、ためになったりならなかったりする情報も目白押しだ」
 足を運ぶ度に品揃えが増える……とまではいかないまでも、頻繁に商品が追加される購買部の情報は需要はある。
 学園の噂も、魔法薬学では惚れ薬が作れる、と言った根も葉もない噂から、干しぶどうを摂取していない某先生には近付いてはならない、というような関わる噂まで流れてくる。
 そう言えば最近になって、学園近くの大衆食堂で、夜な夜な爆音が響いているという噂もあった。大規模改修でもやるのでは? なんて囁かれているらしい。
「興味が出たなら一回、足を向けてくれると嬉しい。推奨はしないが、オレみたいな幽霊部員も、まぁ……ありっちゃありだ」
 サラッと変なことを口走った気もするが、そもそも幽霊部員ならばわざわざクラブ紹介のプレゼンなんて参加しない。
 というか、リバイバルなんて種族が居る以上、文字通りの幽霊部員すら居るわけで。
 この映像を見ていたごく少数の生徒の間で、
「あの仮面の人は近々リバイバルになる」
 なんて噂が流れたとか流れなかったとか。
「ビラは各掲示物展示場所に貼りだしてあります! 来たれ! 『フトゥールム秘密情報部』!!」
 貴人が原稿を読み終えた後、タップリと間を取った後にタスクが締め、彼らのプレゼンは終了。
 それを見ていたアルフィオーネは、
(一体どんな秘密を握っているのかしら……。気になるわね)
 古今東西重要さ、強さの変わらない武器がある。
 それは情報。情報を制するものが勝つ、と言うのが世の通説である。
 ならば、それらが集まりそうなあのクラブは一度顔を出してみる価値があるのではないか?
 そう考えた後、空を見ればもう夕暮れ。
 元々お昼から始まったこのクラブ紹介も、随分と長くやったものだ。
 あと何日続くのだろうかと、アルフィオーネが自分の寮の部屋へと帰ろうとしたとき。
「では本日最後に、僭越ながらこの私が」
 このクラブ紹介の司会を務めていたダヴィヤが、映像に映し出された。
 夕暮れよりもなお朱く。紅い髪と眼が特徴のダヴィヤは、果たして何を喋るのか。
「自己紹介をしておきます。私はダヴィヤ・スカーレット。以後お見知りおきを。さて、この映像を見ている皆さん。本日のクラブ紹介は如何だったでしょうか? 個性的なクラブばかりだったかと思います」
 流暢に。慣れた様子で。
 スラスラと、ハキハキと喋るダヴィヤも、ひょっとすると自分のクラブを紹介するのか?
 と見ている生徒が思う中、
「本日上空に映し出されている皆様が見ております映像は、この学園の長にして天才美少女魔法使いこと、メメル学園長のすぺしゃるでぱ~ふぇくとな魔法の賜(たまもの)でございます」
 まるで自分の意思ではないことを示すように、わざとハッキリとカンペを映像で見える位置まで持ち上げながらダヴィヤは続ける。
「その寛大な御心と生徒思いの優しさを噛み締めながら明日のクラブ紹介を待つように、とのことです」
 よりにもよって大トリに。何事かと思って見ていた生徒達は、そんなことか、と自室へ向かう足を進み始めた。
「なお、今この瞬間に感謝の意がない生徒は、今夜メメル先生が全力を持っておねしょさせるとの事なので、寝る前のトイレはしっかりと済ませておいて下さい」
 心の中で、メメル様万歳! や、さっすがメメたん。そこに痺れる憧れる~! と自分の思う精一杯の感謝を思いながら。



課題評価
課題経験:13
課題報酬:360
始まりの道標
執筆:瀧音 静 GM


《始まりの道標》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 1) 2020-04-05 00:42:46
勇者・英雄コース、フトゥールム秘密情報部の(自称)報道官
タスク・ジムです!

エリカ部長さんの名代として、部の宣伝に来たのですが、
今日の校内放送(フロンティア通信)を聞いて、
「もっとクラブ棟を盛り上げたい!」という思いに共感したんです。

そこで、タヴィア先輩に志願して、
アシスタントインタビュアーをさせてもらえるようお願いし、
たくさんの部の魅力を余すことなくお伝え出来たら、と思います。

ビャッカさんも、部を紹介するなら、よかったら、是非協力させてくださいね!

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 2) 2020-04-05 09:03:21
わたしは、アルフィオーネ。アルフィオーネ・ブランエトワル。 教祖・聖職コース。どうぞ、よしなに。

クラブには所属していないし、作る予定もないわ。基本的に全ての部を見て回るつもり。どんなものがあるのか・・・楽しみね

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 3) 2020-04-05 18:18:24
勇者・英雄専攻のビャッカ・リョウランだよ。よろしくね。

私が所属している武術同好会の紹介するよ。
と言っても、勧誘は軽めでありのままの何時もの風景を伝えるって感じかな。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 4) 2020-04-05 22:41:02
アルフィオーネさん、よろしくお願いいたします。
色んな部を見て回って、楽しんでくださいね!

元々、インタビューで魅力を掘り下げる方向で
色んな部に協力するつもりだったので、
その中に「仲間の部」という記載を入れてみました。
もし必要ならご利用いただいたら嬉しいです。

※秘密情報部 貴人さんへ
「自分と貴人さんで部を宣伝」と、ウイッシュに書き込むことが出来ました!
よろしくお願いしますね♪

《ゆうがく2年生》 蓮花寺・六道丸 (No 5) 2020-04-05 23:11:34
拙僧は芸能コースの蓮花寺・六道丸。
作ってみたいが実現は難しいかもしれぬなあ、と思っているクラブがあるので、この依頼の中で試しに作って紹介してみるつもりだ。
えっと、茶道部……をな、うん。(視線が泳いでいる)
(PL情報:表向き『茶道部』に見せかけた『忍道部』を作る予定です。詳細はこれからですが、忍者屋敷みたいな仕掛けとかがあるかもしれません)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2020-04-06 22:40:17
六道丸さん、表向きは格調高く、しかしてその実態はかっこいい、
素敵な部活ですね!
是非、宣伝に協力したいです!

こちらは文字数の関係でプランを動かせそうにないですが、
タスクを使っていただくぶんには大歓迎ですよ~~!


いよいよ出発が近付いてきましたね!
プレゼンに、見学に、皆さんにとって実り多いイベントになりますように。
そして、これを機にクラブ棟がよりいっそう盛り上がってくれますように。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 7) 2020-04-06 22:51:34
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。
普通にビラ配りとかしてクラブの宣伝だな。


タスクくんへ
了解だ。
こちらこそよろしく頼む。