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憧れの先輩から、未来の後輩へ


ストーリー Story

 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の職員室――その一角で非常勤の魔法講師、【ガルベス・ユークリッド】は、自身の手元に目を落として独りごちる。
「……貴学園の生徒を私の息子に会わせてあげてください、か」
 ふぅむと唸り、豊かに蓄えた真っ白な顎髭を撫でる。薄紫の花が描かれた便箋には、『ユニの村』と【フィオナ・ジュミナ】と書かれている。宛先も講師個人でなく学園名だった。この手の手紙は大抵は依頼の類だが、今回も案の定だった。
 依頼内容は差出人の息子、ヴァルナが「勇者に憧れ奇行に走るようになった」とのことであり、ガルベスは顎髭を弄って息をつく。
「むぅ……いったいどこに人様に迷惑をかける勇者がいるのだと……」
 悪戯目当ての手紙が届くことも少なからずあるため、やや斜に構えた気分で読んでいくと、衝撃の行動にガルベスは思わず目を丸くした。
 家のタンスや戸棚を勝手に漁る、壺や花瓶を割って中身を奪う、近場に居もしない魔物と棒切れで戦いたがる――ヴァルナが取っていた行動は、模範的な勇者の行動理念からは到底かけ離れていたものだった。
 誰から吹き込まれたのかと呆れ半ばに読み進めていくと、原因はどうにもヴァルナの近所に住む酔っぱらいの中年らしい。飲んだくれのサガなのか、大人でも子供でも何かと話したくなるのか。偶然居合わせたヴァルナに勇者の話をしたところ、思いの外食いついて気をよくしたのだろう。調子に乗ってあることないことを吹聴したそうだ。
「四歳の少年に大の大人が……まったく」
 話を聞いたヴァルナに悪意が無いのが余計に質が悪く、間違った知識のせいで近所では厄介がられているらしく、母親も「勇者を目指す息子の意思は尊重したい」と強く怒れていないようだ。
「正義感に満ち溢れているのは良いことだが……。まあ、これもいい機会だろう」
 偽りの情報で誤った方向に正義感を向けている点に目を瞑るとして、勇者志望ならいずれ魔法学園に入学するだろう。彼にはそれまでに勇者の手本を見せてやらなければならない。
「息子に生徒を会わせてあげてほしい、か」
 指に豊かな顎髭を巻きつけて呟く。学園に入学してからはおそらく講師よりも同じ学園に在籍する生徒との時間が増える。互いに研鑽し合い、高みを目指していく存在になる生徒が会うことは、ヴァルナに良い影響を与えるだろう。「見習い」と言えど、うちの生徒は「勇者」なのだから。
 それにこの依頼はヴァルナと生徒双方に大きな経験になるだろう。ヴァルナは何年もしない内にフトゥールム・スクエアの生徒として入学し、自分の理想像を追求していくはずだ。この課題を受けてユニの村に行く生徒がどのコースに属していようと、各々が確固たる意志や思いをもって入学してきたのだ。勇者を目指す者の姿も、魔王を目指す者の姿も、学園に憧れを持つヴァルナには輝いて見えるだろう。それに「後輩が自分に憧れている」と知れば、授業や課題のやる気も大いに増す。どちらにも損が無い、こちらとしても願ったり叶ったりな依頼だ。
「――よし」
 一瞬の逡巡の後、ガルベスはこの一件を生徒たちの課題として、正式にまとめることにした。

 課題名はこうだ――憧れの先輩から、未来の後輩へ。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-02-25

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-03-07

登場人物 6/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《ゆうがく2年生》空蝉・一季
 ドラゴニア Lv10 / 魔王・覇王 Rank 1
「空蝉 一季(うつせみ ひとつき)」 【外見】 黒髪短髪 ややつり目 トレードマークは白いマフラー 【性格】 クールで慎重 正義の味方に憧れを抱いている 人と違う部分が嫌いで鱗が見えてる部分は隠そうとする 【入学理由】 本当は英雄になりたかったが、自分がなれはしないと思っていた。 力はコントロールしてるもののいつ傷つける側になるか分からない為、入学を志願する。 ※アドリブ大歓迎!
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《甲冑マラソン覇者》ビアンデ・ムート
 ヒューマン Lv20 / 勇者・英雄 Rank 1
●身長 148センチ ●体重 50キロ ●頭 髪型はボブカット。瞳は垂れ目で気弱な印象 顔立ちは少し丸みを帯びている ●体型 胸はCカップ 腰も程よくくびれており女性的なラインが出ている ●口調 です、ます調。基本的に他人であれば年齢関係なく敬語 ●性格 印象に違わず大人しく、前に出る事が苦手 臆病でもあるため、大概の事には真っ先に驚く 誰かと争う事を嫌い、大抵の場合は自分から引き下がったり譲歩したり、とにかく波風を立てないように立ち振舞う 誰にでも優しく接したり気を遣ったり、自分より他者を立てる事になんの躊躇いも見せない 反面、自分の夢や目標のために必要な事など絶対に譲れない事があれば一歩も引かずに立ち向かう 特に自分の後ろに守るべき人がいる場合は自分を犠牲にしてでも守る事になんの躊躇いも見せない その自己犠牲の精神は人助けを生業とする者にとっては尊いものではあるが、一瞬で自分を破滅させる程の狂気も孕んでいる ●服装 肌を多く晒す服はあまり着たがらないため、普段着は長袖やロングスカートである事が多い しかし戦闘などがある依頼をする際は動きやすさを考えて布面積が少ない服を選ぶ傾向にある それでも下着を見せない事にはかなり気を使っており、外で活動する際は確実にスパッツは着用している ●セリフ 「私の力が皆のために……そう思ってるけどやっぱり怖いですよぉ~!」 「ここからは、一歩も、下がりませんから!」

解説 Explan

●目的
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』への入学を憧れている少年【ヴァルナ・ジュミナ】君が住むユニの村へと赴き、あなた流の勇者指南(魔王コース、村人コースなど別コースの方はそれぞれの専攻としての指南になります)をしてあげてください。

 現状は勇者に憧れていますが、あなたの熱烈な愛の推しによって、他のコースへの憧れも芽生えることでしょう。
 またヴァルナ君はまだ子供なので、叱ったり説得するよりも自分が所属しているコースのカッコよさを語る、あるいは技能・コースの特色など実際に見せてあげることが有効です。
 また、同じコースに所属している場合は合同で指南することも可能です(必ずしも組む必要はありません)。


●NPC
 ユニの村に赴きヴァルナ君に出会った時点から始まります(ガルベスは同行しますが直接は関与しません)が、登場するNPCの扱いは皆様の裁量に任せます。ほら吹きおじさんをむしろ叱ったりしても……。

・ヴァルナ・ジュミナ
 勇者を目指し『フトゥールム・スクエア』に入学することを夢見る4歳の少年。元気いっぱいなガキ大将。

・イゴール・ベント
 間違った勇者像を植え付けた張本人のおじさん。酔っぱらってあることないことを吹聴する癖があり、老若男女問わず話を聞いてくれる人が好き。


作者コメント Comment
 どうも皆さまはじめまして。伊弉諾神琴(いざなぎみこと)です。
 GM初のエピソードは『ゆうしゃのがっこ~!』ということで、勇者的行動を念頭に置いたものにしてみました。
またこのエピソードを通してPLの皆様のPCがどんな道を歩むか、思いのたけを表現していただければ幸いです。そして私はそんな皆様の思いをしっかりと表現していきたい所存です。

 ちなみに着想はドラ○エよりも勇者ヨ○ヒコの方だったり。



個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
理想を語る会にしれっと混ざってるモブするねぇ?

っても、お手紙依頼文からじゃ、あんまり勇者志望少年の考え本心が見えない不明瞭じゃん?
他のゆーしゃ様と少年の会話を拝聴拝見する中で【精神分析】して彼のお心推察。ほら、お酒好き村人様の語りによって本気でゆーしゃ様になりたくなったのか、或いは流されやすい質で他のゆーしゃ様の語りにも秒で流されちゃうのか、ってねぇ?

ぶっちゃけザコちゃん、お手紙にある変わったゆーしゃ様を目指すってのも別に良き良きだと思ってんじゃん?成りたいなら成ればいい。それも生きる上の選択肢。むしろ独自性って素晴らし良好。

何より大事なのは本当にそれを『自分がやりたいのか』…に、尽きるから。

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
■目標
悪臭は元から断とう
■行動
ああ、なんと不憫なラム肉…いえ、子羊なのでしょう。
彼の行いを改めさせなければ嘘に振り回される者が再び出るだけでなく、彼自身をより孤立へと向かわせてしまう。

そんな彼を優しく導くのが修道士の役目。

ヴァルナ君を仲間達が導いている間、俺はイゴールさんの寝室で【心理学】【人心掌握学】【演技】を駆使し、彼の話に耳を傾け彼の望む反応をする事で心を開かせます。
次第に彼のありのままの姿を曝け出させた所で、俺の【説得】で今後の大人の男としての在り方を説き更生を促します。

そして、更生し立派な大人になったイゴールさんの姿をヴァルナ君に見せることで、勇者の在り方の一つを示そうと思います。

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
主にヴァルナへの指導担当。
指導は複数人一緒でも可能

自分も助けられた憧れが始まりだけに親身。
『勇者原則I』など派手な技能で興味を引きつつ、基礎鍛錬から教える。

退屈そうだったり訓練に疑問を持った様子なら
昔、自分もヴァルナと同じことをやったと暴露。
(元盗賊奴隷のガチ犯罪稼業で、ですが…そこは伏せて)
ただ勇者(真フィリン)と出会って、そうじゃないと気づいたと。
「あの人はいつも誰かのためだった…バカだな、とも思ったけど…自然体で勇者だったの」
行動はなんでもよくて、ただ他人のために何かをできる…それが勇者で、その為の地道な努力なのだと説明。
「お手伝いだって、お使いだって…誰かのためなら勇者的行動かもね」

空蝉・一季 個人成績:

獲得経験:20 = 13全体 + 7個別
獲得報酬:540 = 360全体 + 180個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
魔王・覇者コースの専攻者として何を求めて勇者になりたいかを問う

【行動・心情】
…力を持つと言うことには責任が伴って来る
強い力を手に入れたならそれ相応の責任が伴う

例えば、君は包丁やナイフを手にした事はあるだろうか
その刃物は使い方を間違わなければ料理ができる、ロープを切ることができる

ただ、ひとたびそれが人に向かえばどうなると思う?

そう、怪我をする
人を殺せる道具になる

だから、どうか間違うな

お前が今憧れて今夢見ている力は、人を殺せる物だ
使うお前がちゃんとしなければ、それは勇者とは言えないんだ

俺は、力を使いこなせないからこの学校に来た

お前は何を求めてこの学校に来たんだ?
(凄みを効かせ鎌を構えて)


ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
ヴァルナくんに剣の扱い方を教えるよ。

まずは、お手本として魔物と戦っているような感じの演武を披露するよ。
・剣を鞘から抜き放って構え、基本の振り下ろし切り返し薙ぎ払い。
・流水の構えで受け流しの体制、それから反撃の二連斬り。
・最後は勇者之斬でトドメの一撃!
・剣を振って回して鞘に収める。
…ふぅ。おしまい。どうだったかな?

その後は、ヴァルナくんに剣の使い方をちょっとだけ教えるよ。
その辺の木の棒を剣に見立てて持ってもらうよ。
構えはこんな感じで、方の力は抜いて必要なときに入れて、
振るうときは腕だけじゃなく全身を使って…うん、そんな感じ。

剣の道も、魔法の道も、勇者への道も長い。
目指すなら日々精進しなきゃだよ。

ビアンデ・ムート 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●目的
ヴァルナ君に、私なりの勇者の在り方を教えます

●行動
男の子のヴァルナ君には私の勇者の教えはきっとつまらないと思いますが、参考程度にお聞かせします

私が勇者として学んでる事は盾を使って誰かを守る技術
戦う事は他の人に任せてただひたすらに皆を守るんです

何から守るかと言われれば一般的にはモンスター
それと……イゴールさんが言っていたような人ですね

私個人の考えですが、勇者になった人の中にはそういう迷惑行為をする人は少なからずいると思うんです
誰かを助けるために得た力がなにかのきっかけで歪むというのは決してありえない話ではないですから

そういう人達から人々を守り続ける。そのために私は学園で色々学んでるんです

リザルト Result

 ユニの村の勇者志望の少年、ヴァルナの元へと学生六名を引率したガルベスは、それでは任せたぞ。と、丸投げに近い形で学生に託し、箒に乗って学園の方角へ飛んで行った。
「今日はよろしくお願いします!」
 満点の挨拶と笑顔で、ヴァルナは勇者たちを出迎えた。

●Side:【フィリン・スタンテッド】
「まずは私から。勇者・英雄コースのフィリン・スタンテッドよ。よろしくね」
「よろしくね、ねーちゃん!」
 元気に挨拶を返す間も手に持った木の棒を放す様子は無い。聞いた通りのやんちゃ盛りといったところか。
「えっと、何を教えれるかな」
「なんか勇者っぽいこと!」
「抽象的だなぁ。それじゃあ――」
 注文に応えるべくフィリンはクリスタルブレイブを抜き放つと、胸の前にかざして力強く宣言する。
「スタンテッド家の名にかけて、使命を遂行する! ……どう、かな?」
「すっげぇ! ねーちゃんすっげぇかっちょいい! 本に書いてる勇者みたい!」
「そ、そう? えへへ……」
 目を煌かせるヴァルナに多少面食らうもフィリンは照れくさそうに剣を収める。
 所謂口上の一種である『勇者原則Ⅰ』は、その名の通り勇者の代名詞といえるものだ。早速真似するヴァルナだが、フィリンは釘をさすよう付け加える。
「あ、でもね。戦うだけが勇者的行動じゃないんだよ。例えば、お母さんのお手伝いとか、お使いに行ったりとか。怪我した友達を助けてあげるとか」
 その言葉にヴァルナは不思議そうに首を傾げる。一方フィリンの脳裏には、語りながら彼女自身が目指す勇者像、『真のフィリン』がよぎっていた。
「君は勇者のことを知り合いのおじさんから聞いたんだよね?」
「そうだよ!」
「……実は私も、昔似たようなことをしたことがあるんだよね」
「ホント!?」
 同じ穴の狢が居たと言わんばかりに食いつくヴァルナに、やや苦笑しながら胸の内に秘めた過去の事や憧れの勇者を思い出す。
「うん。けど、私が憧れる勇者と出会ってから少しずつ変わったの。あの人の行動はいつも誰かのためだった。バカだなって思った時もあったけど……あの人は自然体のままで勇者だったな」
「しぜん?」
「ちょっと難しいかな? その人が起こす行動が全部他人のためで……そうね。きっと、誰かのためにした行動ならそれは勇者的行動なのかもしれないね」
「その人、なんて人なの?」
「……どこの誰でもないわ。『フィリン』よ。私と一緒」
 物憂げに同じ名を語ったフィリンの横顔に、幼いながらも何かひっかかるものがあったが、その違和感の正体を掴むことはできなかった。

●Side【ビャッカ・リョウラン】
「んーごっほん!」
 シリアスな雰囲気が漂いはじめた教導の場にビャッカは、些かやりにくくなったのか仕切り直しのように空咳をして二人の間に割って入る。
「ひと段落ついたかな? 私はビャッカ・リョウラン。同じ勇者コースに所属してるんだ!」
「よろしく! ねーちゃん、ドラゴニアってやつだよね? はじめて見た!」
「こらこら。お触り禁止。噛んじゃうぞー」
 無遠慮に尖った耳やら露出した皮膚の鱗を触ってくるヴァルナへ軽く威嚇してみせる。年上のはずだがどこか年が近いように見えるのは、無邪気さ故か見た目故か。
「私は演武を通して剣技を教えるよ。あれこれ話すより実演した方が良いと思うしね!」
 ビャッカは青銅の剣を鞘から抜いて中段に構える。
 まずは素早く隙の少ない動作で剣を振り下ろし、切り返し、薙ぎ払った。三連撃の後、流水の構えで受け流しの態勢を取る。攻撃を受け流す態勢からすかさず二連斬りを放った後、大きく最上段に剣を構えて振り下ろす『勇者之斬』が空を切り裂いた。
圧力で巻き起こる砂煙を剣の切っ先で払いのけ、そのまま鞘に収める。
「……ふぅ。おしまい。どうだったかな?」
「うぉっすげぇ! どーやったらあんなに速くぶん回せるの!?」
 洗練された剣技の連携に、ヴァルナの興奮も最高潮に達する。負けじと木の棒を振り回すヴァルナ。型も構えもなっていないが、頑張ってビャッカの真似をしようとしていた。
「おっと待った! 力は程よく抜いて、剣を振る時は腕だけじゃなく全身を使ってね」
「こうかな。おりゃっ!」
 ビャッカの指導の下、幾分様になった構えで振り抜かれた一撃は、見違えるように鋭い軌跡を描く。ご機嫌なヴァルナに、ビャッカはふと手紙の内容を思い出す。彼がどんな勇者像を思い描いているのかを聞いてみたくなった。
「君はどんな勇者になりたいの?」
「どんな勇者って……そんなのつよい勇者に決まってんじゃん! 魔王も倒せるような勇者!」
 少年が抱いた勇者像は安直でありどこまでも幼い。それでもビャッカは否定しない。突き詰めれば勇者にはシンプルな実力が必要とされるのに変わりないのだ。
「なら、剣の道も、魔法の道も訓練しなきゃね。勇者の道を歩むのなら日々精進しなきゃだよ」
「大丈夫! 僕はぜーったいくじけないもんね! 勇者になるまでぜったいに!」
「そっか。なら、君がなりたい勇者の姿を、憧れの人の雄姿を、ずっと忘れないでね。そして目指し続けてね。いつかその姿が自分の姿に、最高の勇者になるその時まで!」
 快活な笑みと共にヴァルナの頭を撫でる。憧れの勇者からの激励に、ヴァルナは満面の笑顔を返し――。
「わかったよ! 小っちゃい竜のねーちゃん!」
「小っちゃいは余計だーっ!」
 言い放たれた子供ながらの無邪気な悪態がビャッカの心にグサリと刺さった。

●Side【ビアンデ・ムート】
 苦笑しつつビアンデがヴァルナの前に出る。目線を合わせるようにしゃがみこんで話しかける。
「私はビアンデ・ムート。主に盾を用いた守る技術を教えようかと」
「盾って……テキトーに構えてりゃいいんじゃないの? 攻撃されなきゃいいんだし」
「ところがそうではないんですよ。これもまた、実演した方が分かり易いでしょうね」
「ねーちゃん、僕強いよ! 村じゃさいきょーなんだから、ケガしないでよ!」
「ふふ、お手柔らかにお願いしますね」
 少年の威勢をやんわり受けながら、ビアンデは盾――のような大鍋だが――を構えた。盾術を得意とするだけあって構えには一分の隙も無い。
「やぁっ!」
 ビアンデに向かってヴァルナは最上段から棒切れを振り下ろす。ビャッカの剣技を模倣しているようだが、なんてことない大振りだ。本来ならば受けるまでもない攻撃だがあえて『盾』で受けた。
 渾身の一撃を難なく防いだビアンデは、微笑みかけながら大鍋を再び構える。
「さあ、どんどん来てください」
「おりゃぁ!」
 それから一分間、ヴァルナは絶えず動き、攻撃し続けた。たった一分だが、がむしゃらに攻撃していれば体力をみるみる消耗していくのは当然だろう。
「はぁ、はぁ……」
「どうでした?」
 そしてついにヴァルナの動きが止まった。荒い呼吸で地面に寝転がったヴァルナの元に歩み寄るビアンデに疲れている様子は見えない。
「すっげぇ……! 全然当んなかった……!」
 村では最強と公言した彼にとって、本来ならば歯噛みする結果のはずだ。それでもヴァルナは晴れ晴れとした表情だった。
 強い攻撃は盾の正面でまともに受けるのではなく、力の方向を受け流すようにいなし、弱い攻撃は反発するように押しながら受けて体勢を崩す。たった一分間の攻防だったが、戦いにおける防御の重要性を伝える点において、ヴァルナには有意義な体験だっただろう。
「守りの技術の大切さ、伝わったでしょうか?」
「これがてっぺきの守りっていうやつか……勉強になった!」
 空を見上げて若干舌足らずに難しい単語を連ねる。これも本やお話で学んだのだろうか。寝転がったヴァルナの元にビアンデはしゃがみこむ。
「いいですか。あなたが聞いた勇者のお話もあながち嘘でもありません。力の使い方を誤り、道を違えた人はいずれ、人々の平和を脅かしますから。そんな人から皆を守るためにも、いつか学園に来て皆と正しい道を学んでくださいね」
 真剣な眼差しで説くと、こくこくと無言で首肯する。
「そしてもう一つ。勇者になって人を守る時に、決して自分が犠牲になってでも……自己犠牲で守り抜くことを考えてはいけませんよ」
「うん、わかった! みんな助けて自分も助かる! それが一番いいもんね!」
 何の疑問も抱かずに返事をしたことに、ビアンデは心中で安堵する――言うなればこの言葉は鏡写しのようなものだから。気付いているのかどうかは本人すらも分からないが、無垢な少年が向かうべき道を違えないためには正しい方便なのだろう。

●Side【チョウザ・コナミ】
 パチパチパチ、と乾いた拍手が響き渡る。
 指導していた学生含めた全員が振り返ると、一度見ると忘れられないであろう奇抜な姿をした村人コースの学生が目に入る。
「おつかれちゃん。さっすがゆーしゃの学校の花形コースの学生、教鞭を振るうのが似合うねぇ」
「……ねーちゃんは勇者を目指してないの?」
 種族的な身体特徴を度外視しても一際目立つ村人コースの学生、チョウザは飄々と答える。
「村人・従者コースに所属してるチョウザ・コナミってぇモブよぉ。ザコちゃんって呼んでねぇ」
「なんか弱そう」
「そりゃあモブだしぃ?」
「もぶ?」
「そそ。学園であーしが目指すものってワ、ケ」
 目の前でおどけている『もぶ』ことチョウザに目を白黒ていると、矢継早にヴァルナへと問いかけ始める。
「聞いたところパワーこそ正義だーってゆーしゃ様に憧れてるようだけどさぁ。ぶっちゃけザコちゃん、お手紙で聞いた変わったゆーしゃ様を目指すってのも別に良き良きだと思ってんのよねぇ」
「え?」
「ま、予想通りっちゃ予想通りな反応かねぇ」
 最初に勇者・英雄コースの学生三名が彼の勇者像を聞き出している間に、チョウザはある程度アタリをつけていた。彼の勇者像の流動性――良く言えば人の行動や言動に感化されやすく、悪く言えばやわな意思であり、流されやすい傾向があることに。
「成りたいなら成ればいい。それも生きる上の選択肢。むしろ独自性って素晴らし良好だーってねぇ」
「え……?」
「少年の未来は自由、周りの強制規制もなしなし。そもそもあーなれこーなれせっつく方がおかしい千万」
 独特な言葉の使い回しに当然四歳児がついていけるはずもなく、流されるままに自称モブの会話術に聞き入っていた。
「むしろザコちゃんは少年達のような自由でか弱いモブになることをお望み希望なんだし、逆に少年が唯我独尊、パワーこそ正義なゆーしゃ様を目指すもそれまた自由」
 チョウザの語ることは本人の自由意思を尊重してどこまでも肯定的だった。
「生温い道を歩むも修羅の道を歩むも選択したのは自分自身。選んだ当人の口から文句を垂れることは下の下。ぶれぶっれな軸を他人のあーだこーだに振り回されるようなことじゃ、悔いの残らない『本当にやりたいこと』は見つかんないかんねぇ?」
 ポカンと立ちすくんでいたヴァルナに、チョウザはにへらと笑う。
「四歳のゆーしゃ見習い君には、ちょこーっと難しかったかなぁ?」
 どこまでも奇抜で自由なモブ志望の学園生の言葉を、ヴァルナは飲み込めきれずにいた。

●Side【空蝉・一季】(うつせみ・ひとつき)
「アイツはアイツなりに『力の在り方』を説いた。分かり辛いだろうがな」
 無言を貫いていたドラゴニアの男子生徒が歩み寄りながら後方で呟く。
「俺は魔王・覇王コースの空蝉・一季だ」
「よ、よろしく。にーちゃんもドラゴニア、だよね?」
 鋭く光る赤い双眸で見据えられ、ただならぬ威圧感にヴァルナも少し後ずさる。まだ四歳の少年には耐えきれない程の威圧感に、つい逃げ出しそうになった瞬間、一季は自身の双翼を解き放つ。『龍の翼』の羽ばたきによって巻き起こる風圧は、一季の体を強く空へと押し上げる。
「力を持つことには責任が伴う」
「え――」
 あまりに強大な力に、ヴァルナは最早逃げることも忘れていた。
「お前はナイフを握ったことはあるか?」
 一瞬で目の前から消えた一季を見つけようと、慌てて辺りを見回すと、首筋にひやりとした感覚が走る。
「ひっ!?」
「使い方を間違えなければナイフは便利な道具となる。使い手次第では万別に化けるこの上なく便利な代物だ。しかし、ひとたび使い方を間違えればどうなるか。例えば――人に対して振るえば」
 鈍く輝く湾曲する刃が背後から首筋へと掛かっていた。一季の獲物の青銅の鎌だ。とはいえ青銅製であり、切れ味は鈍いため、押し当てるくらいでは皮膚一枚切れる事はない。
それでもドラゴニアの膂力を持ってすれば、子供の首を断ち切るくらいはわけないだろう。
「け、ケガする……」
「そうだ、怪我をする。人を殺せる道具となる。力を使う自分自身を律することを怠れば、その力は限りなく人を不幸にさせる。ひいてはお前を勇者から限りなく遠ざけるものとなる」
 ドラゴニアの自分に秘められた力は、種族の概念で見れば特筆に値するものだ。だからこそ、常人よりも力の律し方を考える必要性は理解している。
「だから、どうか間違うな。お前が憧れる者が持つ力は、容易く人を殺し、壊せる力を持っている。故に改めて問おう。ヴァルナ――力を持つ者になるお前の『勇者としての在り方』とはなんだ?」
 ヴァルナの首に掛かる青銅の鎌に込められた力が少しずつ強くなる。
「僕は――守りたい。強くなって、守りたい!」
「誰をだ」
「みんな! 母さんも、村の人も、世界も守れるような! 魔王のにーちゃんも、勇者のねーちゃんたちも!」
 一季を見据える曇りない瞳に偽りはない。心の底からの発言だと読み取れる。
 すると、一季の瞳から威圧感がはたと消える。
「守るための強い力、か。力の使い方を間違えるなよ。さもなくば、また怖い魔王がやってくるぞ」
「うぅ……もうしないよぉ」
「フフ、いい子だ」
 弟に接するような年相応の柔らかい微笑みをたたえ、優しくヴァルナの頭を撫でた。

 団円を迎えた雰囲気の中、ふと誰か、学生が一人足りないことに気付く。この場に居るのはいつの間にか『ヴァルナ含めて六人』になっていたのだ。
「おまたせ」
 学生たちが聞きなれている声に反応して振り返ると、変わった修道服に身を包む白髪の男性と、酒の臭いが酷いやや頬を紅潮させた中年が立っていた。
「あれ、イゴールのおっちゃん。それにこの人も学校の人?」
「そうだよ。そして――」
「ヴァルナ……すまなかった! 俺は……酔っ払ってお前に嘘を教えてしまったんだ……!」
 突如として土下座して謝罪するイゴール。
「え、えぇ!?」
 困惑するヴァルナに、妖艶な雰囲気を漂わせる学生は口元に手を当て微笑みかける。
「大人も嘘を吐くし、酒に呑まれればそれも助長される。少し落ち着いた場所で大人としての正しい在り方について語り合っただけさ」
 子供には聴こえない様に、彼は他の生徒たちに事の顛末を語る。

●Side【プラム・アーヴィング】
 ユニの村の一角。わずかに点在する商店の中でも一際大きい酒場は、ユニの村人たちの憩いの場だ。
「ここだね。迷える子羊が寂しく自分を慰めている場所は」
 村人たちの話では、ヴァルナに嘘を教えたイゴールは、根っからの嘘吐きではないようだ。どうやら仕事での失敗が原因で自信を喪失し、酒浸りになっているという。
 ――子供より哀愁漂う中年の方が型に嵌め易い。
 程なくすると、酒盛りを終えたであろうイゴールが酒の臭気を漂わせながら酒場を出た。重度の酩酊状態で人目も気にならないのだろう。千鳥足で家に着くや、鍵もかけずに寝室のベッドへ横たわる。普段なら、誰もいないハズの寝室でくだを巻き、気を失うまで恨み言を吐くだけだ。
「ちぐじょぉ、どいつもこいつもバカにしやがってぇ……」
「いいえ。最も自分を蔑ろにしているのは貴方自身ですよ」
 本来なら独白に返事は無い――が、今回だけは別だ。想定外の反応にイゴールはよろよろと起き上がった。
「こんにちは。昼間から酒盛りは感心しませんが、話相手を望んでいるのなら酒場に出向くのも道理。であらばどうでしょうか? 『私』と語らおうというのは」
「あ、アンタに?」
「ええ。心配には及びませんよ。口外もしません。これは二人だけの秘め事です。お好きなように、心を曝け出して――」
 本来なら起こり得ない出来事だ。いつ出会い、いつ家に入ったのかも知れない謎の人物に、己の全てを曝け出して語り合うなど――それでも二人の対話は殊の外弾んだ。
 仕事での失敗を慰めるために酒に走り、働くことから逃げたこと。
 人肌寂しくなるも、堕落した自分の周りから人は消えていったこと。
 悪循環が続いたある日、ヴァルナが自分の口をついて出たホラ話に食いついたこと。
 酔いも醒めぬ今、謎の人物の正体はどうでもよかった。話しているだけで心地よく、溜まった鬱憤が晴れていくのが実感できるのだから。
「迷える子羊よ。見境なく虚構を吐く必要も、酒に溺れる必要もないのです。まだやり直しはきくのですから」
「うぐぅっ……おれは……なんでこんな無駄な時間を……」
 無駄にした時間を後悔し、慙愧の念に駆られてむせび泣くイゴールを見たプラムの表情が妖しく歪む。
 ――もう一押しだね。
 そっと首元へ腕を回し、甘く、小さく、耳元で囁いた。
「さあ、君のありのままの姿を『俺』に曝け出してくれよ。くだらない今の時間を二人で、綿密にして濃密な時間にしようじゃないか……フフフッ」
それから二人は非常に『綿密』に語り合った。自信と大人としての在り方を取り戻せば、二度と酒に溺れることもなくなる。地道に働き虚言癖も無くなるだろう。

 誰のためかと言うならば――ある意味で哀れな子羊に逆戻りしたともいえるのか。

●Finale
 夕刻――指導を終えて学園へと戻る『憧れの先輩』へ、精一杯手を振るヴァルナ。
「じゃあねー! 勇者とモブのねーちゃん! 魔王と修道士のにーちゃん! 今度は『勇者の学校』で会おうね! ぜったい! ぜーったいだからねー!!」

 己の勇者像を見出した『未来の後輩』の元へ、フトゥールム・スクエアへの入学願書が届く時――それはまた別のお話。



課題評価
課題経験:13
課題報酬:360
憧れの先輩から、未来の後輩へ
執筆:伊弉諾神琴 GM


《憧れの先輩から、未来の後輩へ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ゆうがく2年生》 空蝉・一季 (No 1) 2019-02-20 00:14:03
初めましての方は初めまして。
魔王・覇王コース所属、ドラゴニアの空蝉 一季だ。

…俺は、語れるような愛はこの力には無い。
ただ、もし入るなら言わなければいけないと思ったんだ。
力は時として危険が孕むもの。
その力の扱い方次第では毒になる。
…勇者になるなら助ける相手がどう思うかを、教えてやらないといけないと。
…あれ…変だったろうか…?(なんとなく場違いな気がしてきて


《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 2) 2019-02-20 00:28:18
参加するゆーしゃ様達はよろしくよしなにぃ。

今回の課題はあんまりそーだんするよーなもんじゃない感じっぽいかなぁ。
現状は参加するゆーしゃ様のコースも全員バラバラだし。お話語りの内容もバラバラだろーしぃ?

ザコちゃんもモブらしく、モブとしての視点から好き勝手お話語りさせてもらおーじゃん?
ゆーしゃ志望ちゃんのご参考参照になるかどーかは、知らぬ存ぜぬけど、ねぇ?
視点の一つにはなるだろーし、無駄なら無駄で構わない気にしないし。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 3) 2019-02-21 06:33:51
勇者・英雄専攻のフィリンよ、よ…よろしく。

私も、語れるほどではないけど…自分の、出逢えた勇者ならいるから…
自分の、目指した話を中心に話してみたいと思う。

何か合わせておきたい事とか、共通でNG事項の提案とかは、あれば調整するわ。よろしく。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 4) 2019-02-21 22:17:21
やぁ皆。俺は賢者・導師専攻のプラム・アーヴィング。
今回もよろしくね。

俺も今回は修道士らしく、迷えるさもしいラム肉…もといイゴールさんを導いてあげようと思う。
そうして行いを改めたイゴールさんの姿を見せることによって、ヴァルナ君も勇者を目指してくれたらいいかな。
ま、基本的にヴァルナ君は立派な信念を持つ皆に任せるね。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 5) 2019-02-24 13:40:26
こんにちは。勇者・英雄専攻のビャッカ・リョウランだよ。
みんな、よろしく。挨拶遅くなってごめんね。

語るのは皆がやってくれそうだから…
私は剣術を見せてちょっとだけ教えようかと思うよ。
やってることはアレだけど、小さいながら行動力あるみたいだから
本物の剣を振るう様を見たら喜んでくれそうだからね。

《甲冑マラソン覇者》 ビアンデ・ムート (No 6) 2019-02-24 19:43:08
勇者・英雄専攻のビアンデ・ムートです
えっと、最終日になってしまい申し訳ありません

私は盾役としての役割についてお話しようかなと思います。私が人にキチンと語れるものはこれぐらいしかないので……