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駒米たも GM 

こんにちは、駒米たもと申します。
皆さまの楽しい学園生活を
影ながらお手伝いできましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

キャラ設定は後から生えるもの。

描写としてはアドリブ多め。
頂いたプランやセリフを改変することがあります。ご了承ください。
得意ジャンルはコメディとホラー。
推理ものや怪奇事件等のミステリー的な雰囲気を好むため
不用意にそういった不穏な要素が投入される事もございます。
お気をつけください。

担当NPC


メッセージ


【保健室 雑用募集】
 ご参加ありがとうございました!
 広すぎるけれど、保健「室」です。
 お世話にならない方がいいけれど、学園にいる以上お世話にならざるを得ない。
 これからも関わっていくことが多いかと思います。
 地味だけど大変な仕事が多い場所でもありますね。

 
追伸)ピンナップ、ありがとうございました!
   自分の書いた一シーンがイラストになる喜び、破壊力たるや。

作品一覧


デッドリー・ライブラリー・ツアー (ショート)
駒米たも GM
「もしかして新入生の方ですか?」  その場に居たのは偶然だったのか。必然だったのか。  第一校舎の廊下を歩いていると突然声をかけられた。  見れば、線の細い、というか薄い青年が立っている。眼鏡奥のツリ目がキラリと輝いていた。 「良かったらどうぞっ!」  そう言って押しつけ、もとい手渡されたチラシには『図書委員主催☆大図書館ガイドツアー』の文字。  どうやら新入生を対象にした施設のガイドツアー案内らしい。  膨大な数の本が放課後の優しい光に照らされている。  豪奢な扉を開けた先に待っているのは巨大な本棚の迷宮だ。 「来てくれたんですね!」  木目美しいカウンター前で手を振る男子生徒。よく見ればチラシを手渡して来た青年だ。  制服には『図書委員』と書かれた腕章がついている。『ライブラリー・ツアー』と書かれた小さな三角旗を振りながら、にこやかに透けていた。  入り口近くにはツアーの参加者と思わしき生徒たちが集まっている。  チラシを手に目を輝かせている者、目が死んでいる者、断りきれなかったのかオロオロしている者、明らかに興味が無さそうな者。様々だ。 「皆様。この度は図書委員主催大図書館ガイドツアーにご参加頂き、誠にありがとうございます。わたし、ガイド役を務めさせて頂く【オズマー・クレイトン】と申します。それでは改めまして」  こほん、と咳払いの音。 「知恵の源泉、探求の坑道、テスト前の駆け込み寺。ようこそ、大図書館『ワイズ・クレバー』へ!」  見渡す限りの背表紙。確かに大図書館の名に恥じぬ驚くべき蔵書数だ。オズマーと名乗った男子生徒を先頭に一行は歩きだす。 「ご存じの通り『魔法学園フトゥールム・スクエア』には先輩たちの活躍によって世界中から様々な資料や文献が集められています。それを適切に管理し、保管する。そして時には勇者を目指す皆さんの助けとなる。それが大図書館ワイズ・クレバーの役割です」  三角旗が案内板と書かれた巨大な地図の前で止まった。 「我々図書委員はワイズ・クレバーをもっと身近に、安全に利用して欲しいという思いから今年もそれぞれ好き勝手に様々な企画を行うことにしました。増やせ利用者減らせ重傷者」  早口の中に図書館にあるまじき単語が混じった気もするが、それもフトゥールム・スクエアでは仕方ない。何故ならフトゥールム・スクエアなので。 「今日は皆さんの興味がある棚にお連れします。今から紙をお配りしますので、お名前と読んでみたい本のジャンルを書いてください。思いつかなければ興味のあること、悩んでいることでも構いません。参考にしてご案内します」  紙を配り終えたところで「そうだ」とオズマーは手を叩く。  ふと、後ろから視線を感じた。振り向くが、柱が一本あるだけで誰も居ない。疑問符を浮かべながら説明に戻る。 「案内の前に注意事項を。図書館内では勉強をしている方が大勢います。『大声は出さないように』気をつけてください」  はい、と数人が素直に頷く。 「それから『本は勝手に持ち出さないこと』『汚さないこと』。図書館は皆が共同で使う場所です。お互い気持ちよく使うのが一番。もし違反した場合は防犯魔法が発動してしまいますからね。気をつけて下さい」  また数人が頷く。 「あと大図書館はとても広いので闇雲に歩くと遭難します。旗を見失わないで下さいね」  早口で軽く言ったけれど、今のはすっごく重要な注意事項では無いのか。何かがおかしい。説明の雲行きが怪しくなってきた。 「今日は人気のあるスポットをご紹介したいと思います! えっと。今日は無断の風神、汚濁の水神、咆哮の雷神の三名が来る日ですね。彼らは俗に違反四天王と呼ばれていて『受付カウンター』『飲食スペース』『閲覧室』で見ることができます。『禁書棚』にも一人いるんですがレベルが低いと近づくだけで死ぬので今回禁書棚は見送りましょう」  遭難って何だ。人気スポットが人なのはどうしてだ。ってか四天王って何だ。禁書って何だ。死って物理的に? それとも精神的に?  気づけば図書館の説明が魔窟やダンジョンと同じものになっている。何故なのか。しかし仕方ない。ここはフトゥールム・スクエアだ。図書館が迷宮や樹海と同レベルの非常に危険な場所だというのは常識なのかもしれない。多分。 「ところで避けたり防御したりするのは得意ですか? 苦手な方はわたしの近くにいるか、得意な方に守ってもらってくださいね! では出発ー!」  新入生たちは互いに目配せをし、想いを伝えあう。これ、たぶん、普通のガイドツアーじゃないぞ、と。  一方その頃。不敵に笑う三つの影が柱の陰から一行の後ろ姿を見ていた。 「ふふふ、どう思う?」 「ふふふ、何の準備も無しに大図書館にやってくるなんて。とんだオバカさんね」 「ふふふ、何も知らぬヒヨッコ共に、身をもって思い知らせてあげるよ」  黒い影が両手を突き上げる。 「ワイズ・クレバーの真の恐ろしさ、思い知るがいい!!」 「先輩ってところを見せつけちゃうんだからっ、ちょっとはりきっていくよー!!」 「ところで早く追いかけないと見失うんじゃないかなぁ!?」  フハハハハと高笑いが三重。何あれ、と来館者は足早に通り過ぎる。違反を察知した大図書館の警報魔法が低い音を立てて発動した。 『大声は出さないように!』 「「「ぴぎゃーっ!!」」」  雷鳴の後に残るは丸焦げ三体。大図書館の違反四天王(本日一名欠席)と呼ばれる彼らの魔の手が、新入生に迫りつつあった……!
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-01-31
完成 2019-02-17
保健室 雑用募集 (ショート)
駒米たも GM
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の保健室は『室』というにはあまりに広すぎる。  例えるなら、街の病院がそのまますっぽりと、城のなかに仕舞われているようなものだ。 学園の生徒数や授業の危険度、先生たちのチャレンジ精神を考えれば、それなりの医療施設があっても不思議ではないのだが……それにしたって『立派な保健室』であるのは確かだ。  保健室には担当の治療師が常駐しており、授業中の怪我や軽い体調不良はここで治療される。もしかすると既にお世話になった者もいるかもしれない。  そんな保健室にちょっとした危機が訪れていた。  常駐する治療師たちが揃って流行病に臥せったのだ。  幸いにも、感染した治療師たちは即座に隔離状態となったため学園内での感染拡大は免れた。  しかし怪我人や病人は待ってくれない。毎日、様々な学科、種族、生徒、先生が重傷軽傷まとめてやってくる。  腕の良い治療師は重傷者が運ばれる集中治療室にこもりきり。保健室は最低限の人数で業務をこなしている。おかげで保健室はここ一週間、慢性的な人手不足に陥っていた。  何事にも限界はある。集中力だってきれる。ハイにだってなる。だってここは戦場だもの。そうだ新兵募集しよう。そう思う程度には、みんな疲れていた。  学園の掲示板にこんな張り紙が出されたとしても誰も止める者はいなかったのだ。 『保健室 雑用募集』  詳細はない。潔く、縦書き七文字。ダイイングメッセージのように語尾が紙外にはみ出している。ように、ではなく本当にダイイングメッセージなのかもしれない。 「よくきてくれた新兵、もとい新入生諸君! 薬の材料となる薬草をもらいに『植物園(リリー・ミーツ・ローズ)』へお使いを頼む!」 「いえ、溜まっていたシーツやタオルの洗濯物をお願いしては?」 「人手が来たぞ逃すな囲め仕留めろ!」 「足りない備品を補充してもらいましょう」 「脱走兵だ、脱走兵がでたぞー!」 「ねぇ、患者さんの付き添いをお願いできない?」  扉を開けた瞬間待っていました! とばかりに押し寄せる要望。  張り紙には放課後だけと書いてあったが……。 「放課後か。つまり日が暮れるまで使っていいってことだな。よし、ミッチリ付き合え新兵ども!」  みんな、顔は笑っているのに目が血走っている。  叩かれた肩からギリギリと音が鳴る。  ど、どこから手をつけようか。
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-03-09
完成 2019-03-26
初夏に肝試し! (EX)
駒米たも GM
「肝試しって、知ってるか?」  湿った風が教室へと吹きこむ或る生暖かい日のこと。  教室の中は午後の気だるげな空気で満ちていた。欠伸混じりに呟かれた単語を、同じように微睡んでいた隣の耳が拾う。 「何だぁ、それ?」 「恐怖によって己の忍耐を鍛える訓練、らしい」 「らしいって……」  提案した方も明確な肝試し像が想像できないのだろう。顎を擦りながら他人事のように答える。 「恐怖かぁ」 「恐怖なぁ」  思考する時間。 「近々、全クラス一斉テストがあるらしい」 「怖い。が、怖さの種類が違う」  一刀両断である。 「コルネ先生の干しブドウを全部盗む」 「既にやった猛者がいると聞く」 「ゴドリー先生と一緒にハイキング」 「開催済みだ」 「嘘だろ」  二人は顔を見合わせた。  ――参加者ゆうしゃかよ。  ――ゆうしゃの卵だなぁ。 「分かってるよ。後輩の武勇伝に焦る気持ちぐらい」  負けていられねぇよ、という呟きはどちらのものだったのか。  焦っている、というよりも新たな好敵手の存在に胸を弾ませている顔だ。 「でも、何をやったらいいんだろうな」 「そこで肝試しの出番だ」 「そのようだな」  競争心、好奇心、向上心。いずれに火がついたのかは分からない。 「俺だってッ……、俺だって! 可愛い後輩に『キャーセンパイカッコイー!』とか言われたい!」 「不純すぎる動機だが、痛いほど気持ちが分かってしまう自分が悲しい!」  バンバンと音を立てて叩かれる机に視線が集まるが、不幸なことに、二人を止める者はいなかった。  へぇ、がんばれよ、と。ぜったいに巻き込むなよ、と。  外の空気に負けず劣らず、生暖かい眼差しが二人を包みこんでいる。 「聞いた話によると、肝試しっつーのはオカルト的な恐怖でゾッとするのが伝統なんだと」 「オカルトなぁ。『勇者の穴』にある、お化け屋敷みたいなもんか?」  居住区域『レゼント』に存在する遊戯施設には大抵の娯楽が揃っている。ただし勇者としての訓練を積むことを目的としているため、ただ純粋に遊べるだけではない。 「壁から手が生える」 「魂霊族の壁抜けを初めて見た時はびっくりしたな」 「それから墓場を彷徨う死神」 「グレイブスナッチは強いからな。不意打ちをされたら苦戦する」  二人は顔を見合わせた。 「ぞっとするか?」 「だから。オカルトには、詳しくないんだって」 「いや、待って。一つ思い出した!」  一人が手を突き出した。  額に指を当て、目蓋を閉じるとムムッと唸る。  ――フトゥールム・スクエアには、勇者暦以前に建てられた旧校舎があるって噂だ。  ――そこを訪れようとした生徒は、みんな、姿を消すんだと。 「噂じゃ樹海に囲まれているらしい」 「樹海、は知っているぞ。位置もわかる」 「そこに怖い仕掛けがあったら怖くないか? 奥に宝箱置いて、中身を取って戻るとか」 「いいな、それ。どうせなら肝試し大会を企画しようぜ!」 「そうと決まれば、さっそく二人で準備だ! コンニャク、って何だ。どこで買える?」 「さぁ?」  事件というものは、大抵些細なきっかけから始まるものだ。  昨晩から、生徒二名の所在が分からない。  学園内から出た形跡もなく、両名とも実力のある生徒であることから丸一日放っておかれた。  しかし流石にご飯の時間になっても帰ってこないのは心配だというクラスメイトの訴えにより、有志による捜索隊が結成されることになった。 「センキュー、カミング。生徒、のようなものたち」  深い樹木と水の匂い。  鏃(やじり)のような黒の梢がざわめき、ぬばたまの闇と不快な湿度が体に纏わりつく。 「ここ。樹海イズ、おそらく現場」  集まった顔ぶれを確認した女性教師が樹海を親指で示した。  仕事の出来る麗人といった整った風貌。  しかし喋ることが不得意で有名な、サバイバル教師の【ヴィアーレ・ロクスウェル】だ。彼女のとんがり帽子の上でバランスをとっているフクロウが同意するように鳴く。 「あの二人はサバイバルの達人だから。普通の遭難なら帰って来るよ」 「消える直前、樹海や肝試しについて話していたから心配なんだ」  消えた二人が事前に話していた情報をまとめると、恐らく旧校舎付近に広がる樹海に向かったのだろうと捜索隊は見当をつけていた。  旧校舎『アリエ・アガルペリア』。姿を見た者はほぼ居らず、存在すら疑わしいとされている建物だ。  しかし、その周辺に樹海が広がっているという噂は有名である。  夜空の下で、羽音もなく数羽のフクロウが旋回している。  内部は通信魔法石(テール)による通信ができず、他チームへの連絡や救助方法はフクロウによる連絡便しかない。 「樹海、魔物いない。けれど迷いやすい。バラバラになるのは、ノー」  ヴィアーレ教諭は胸の前でバツ印を作った。  あまり人数を分散させずにチームごとに捜索しろという意味なのか。  肉体的にバラバラになったら復活に時間がかかるから止めてほしいという意味なのか。 「準備する。情報を得る。みんな協力。とても重要。なぜなら」  彼女の視線からは何も読み取れない。 「森が敵だとデンジャラス」  樹海の地面を、重苦しい霞が覆いはじめていた。 「では。皆様、ごー」
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-05-27
完成 2019-06-13
ホンテッド/ハンテッド (ショート)
駒米たも GM
『緊急 アルバイト募集。興味のある方は大図書館受付まで』  眼鏡の青年がポスターを貼っている。  図書委員と書かれた腕章を目で追ってしまったのが運の尽き。 「おや! 興味がおありですか!?」  もの凄い勢いで距離を詰められた。  脳裏に過るロックオンの文字。  ちょっとした恐怖を感じる距離の詰め方だ。 「はいっ、どうぞ! 放課後に説明会があるのでよかったら来てください!」  高いテンションでチラシを押し付けられた。  裏返してみるが、肝心の仕事内容が書かれていない。  書き忘れだろうか? 「ようこそ長口上は以下省略っ、知識の宝庫『大図書館(ワイズ・クレバー)』へ!」  単純に図書館のアルバイトに興味があった者。  困っているならとお人好しを発揮してしまった者。  本を返しに来たら『君は選ばれし勇者ですさぁさぁ今こそ勤労タイムナウ』と問答無用で扉の裏へと引きずりこまれてしまった者。  様々な理由を持つ者が一同に会した。   「八色の街『トロメイア』はご存じですか? 大陸一大きなアルマレス山のふもとにある、多種族がたくさん集まっている町なんですが」  【オズマー・クレイトン】と名乗った図書委員が街の地図を取り出すと、机の上に広げた。 「この街の東側に『百神殿街』という遺跡群がありましてね。今回、その内の一つにお使いに行ってほしいのです」  百神殿街とはアルマレス山に集った百の精霊を祀る神殿が建ち並んでいる区画だ。  神殿として機能しているのは半分ほどで、残り半分は商会などが買い取って観光施設として運営している。  地図の横には一枚の朽ち果てた風景画が置かれている。  白いチェス盤を思わせる床に崩れた円柱。  中心には地下へと繋がるであろう階段の入り口が見えていた。 「ここは、かつて神殿書庫として使われていた建物のうちの一つです。ありがたいことに、保存されている魔導書の一部を学園に貸してくれるとお申し出がありました。皆さんには現地に向かってもらって可能な限り沢山の魔導書を狩ってきてもらいたいのです」  やけに早口の説明だ。   ニュアンスのおかしい部分も聞こえたが『借りてきてもらいたい』と言い違えたのだろうと聞き流すことにした。 「装備は戦闘用を持って行って下さいね、お願いします。あ、これ、お小遣いと檻です。お土産よろしく」  当然のように渡された檻が重い。  何故檻が必要なのだろう。  ノンストップ・ザ・不吉な予感。  空が青い。本日は雲一つない快晴。  遠くに見えるアルマレス山の稜線がくっきりと鮮やかに見えていた。  活気あるトロメイアの街中を抜け、百神殿街に近づくほど神秘的な空気が色濃くなる。  神職めいたローブを纏うアークライトもいれば、観光目当てでやってきたのか、はしゃぐルネサンスの家族もいる。 『歓迎、ようこそフトゥールム・スクエアの皆さん』  そして静かな百神殿街の入り口にヒューマンの女性がガイド用三角フラッグを持って立っていた。  案内役として来た垂れ目の彼女曰く。 「好きな魔導書を持ち出して構いません。ただし、日が沈むまでに神殿書庫から持ち出せた本に限りますが」  階段の下は暗くて見えない。  地下から流れ出る冷たい空気がひやりと足元を覆う。 「地下にはゴーレムが配置してあります。飾りではなく本物です。『きりょく』『たいりょく』『まりょく』の高い方が近づくとうっかり稼働しますので気をつけてくださいね。もっとも、奥に行かない限りは会わないでしょうけど。ふひゃははは」  笑いごとではない。  よく見れば説明する目が死んでいる。  何があった。 「魔導書には保存魔法がかけられておりますので、多少乱暴な扱いでも平気です。それと、ここが一番大切なことなのですが。魔導書の所有権を神殿書庫から学園へと移さない限り、本は書庫の外に出すことができません。所有権の譲渡方法は簡単です。魔導書に力を認めてもらうだけ。つまり」  スッと人差し指が立てられた。 「魔導書と戦って勝てば、めでたく貸し出しができるという訳です。ふひゃはははは」  重ねて言うが笑いごとでは無い。 「しかし簡単に持ちだせるとは思わないことですよ! 暗くて無音の神殿書庫! どこを見ても本棚ばかりで気が狂いそうな閉鎖空間! 闇の中からゴーレムに襲われるんじゃないかとビクビクしてたら同僚の悪戯でした~、から始まる微妙な空気の悪さ! どうですか。貴方たちはこの恐怖に勝てますか!? さぁ、狩るのです。狩って狩って持ってってー!!」  何かトラウマでも刺激してしまったのだろうか。  悲壮感とやけっぱち感に満ち満ちた女性に見送られ、一行は地下へと向かった。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-08-17
完成 2019-09-03
さよならを告げた手紙 (ショート)
駒米たも GM
● 「ねぇ、エウミル。やっぱり危ないよ」 「心配性ね」  荷物を背負いながら彼女は笑った。 「ちゃんと帰ってくるわ。貴方の作った旅守りだって持ったし」  でも、と僕は言う。 「僕の作るアイテムは呪われてるって」 「どうせサジノが言ったんでしょ。あのバカ、あなたの才能に嫉妬してるのよ」  両頬が暖かな感触に包まれる。  空色の瞳と蜂蜜色の髪。  生まれた時から『覚醒』が使える特別な子。  間近で見る彼女は天使のように綺麗だった。 「ねえ、コルトラ。あなたは世界で一番の道具師よ。私が保証する。この勇者……の卵【エウミル・ガーモット】がね」  ぱちりと不格好なウィンクを見せられて、ようやく僕は笑うことができた。 「シュターニャについたら手紙を送るね!」 「楽しみにしてるよ。エウミルの字は癖があるから直ぐに分かるし」 「丁寧に書くってば」  そうして彼女は旅立ち、二度と戻ってはこなかった。 ● 「うーん」  大図書館『ワイズ・クレバー』地下。  図書委員【オズマー・クレイトン】は本の隙間から出てきた一通の封筒を手に固まっていた。 「オズマっちゃん、どったの?」  隣で書架整理をしていたエリアルの図書委員が手を止めた。 「『旅守りの作り方』に手紙が挟まっていましてねえ」 「マズくない? その本が最後に貸し出されたの五年前でしょ。差出人は誰?」 「それが書いていないんですよ。でも宛先に【コルトラ・ナーラーヤン】と書いてあります」  重い沈黙が流れた。 「……コルトラって『レゼント』の隅っこに住んでる、道具師コルトラ?」 「貸出記録では、そうです」 「天才道具師だったのに、呪いのアイテムを使って幼馴染を殺したっていう、あの?」 「無理無理無理無理!!」 「あの人、大のフトゥールム・スクエア嫌いじゃん!!」 「なんでレゼントに住んでるんだろう?」 「『スタリウム』の【サジノ・レグオ】が見張ってるからって聞いたよ」 「あの屋敷に近づいたら呪われるってもっぱらの噂だよね」 「ねぇねぇ、どうやって渡すの?」 「みなさん、図書委員の仕事はどうしたんですか!?」  喧噪の中でオズマーは考える。  道具師コルトラの悪評を信じる生徒は多い。  何よりコルトラ自身が魔法学園やその生徒を嫌っているのだ。直接手渡すのは難しいかもしれない。  しかし、この癖のある筆跡には見覚えがある。  オズマーは目を眇めた。  この筆跡の持ち主が手紙を書いたのならば――……コルトラはこの手紙を読むべきだ。 「どこかにコルトラさんに先入観が無く、呪いを恐れず、依頼を達成するだけの知恵者で、根性がある生徒さんはいませんかね」 「そんな生徒いるかな」 「いないと思うけど」 「……あ!」  いた。  この学園には存在しているのだ。  不思議と『あの子たちなら事態を善くしてくれるはず』と希望を抱かせてくれる、そんな生徒たちが。 「遺失物の配達として課外活動の申請をしてきまーす!」  厄介な案件だ。  いつものように押しつけるわけにはいかない。  祈るような気持ちで、オズマーは足早に図書館を後にした。
参加人数
2 / 8 名
公開 2020-02-19
完成 2020-03-05
俺たちギルッチ団!! (ショート)
駒米たも GM
◆  温泉街トルミンの名物。  温泉、火山、そして――。 「財布を取り返してくれてありがとう!」 「いいって事ヨ。何故なら俺たち……」 「ギルッチ団!」  勝利の雄叫びが『大温泉郷ギンザーン』に響いた。 「トルミンを楽しんで!」  揉め事を解決した彼らは一般人へと戻り、再び活気に満ちた温泉街の景観へと溶け込んでいく。  ――『ギルッチ団』。  トルミンを仕切る【馬場・カチョリーヌ】の息子の一人【馬場・スカットン】が団長を務める、トルミン限定の自警団だ。  魔物、チンピラ、災害。  ギルッチ団に所属する者は『揺るぎないトルミン愛』を合言葉に、今日もならず者達からトルミンを守る。  一人見かけたら近くに三人は潜んでいると思え。  それが『ギルッチ団』である。 「トルミン花湯が近いせいか、最近観光客狙いのチンピラが多いナ」 「万引き、スリ、いちゃもん、食い逃げ」 「忙しいよお」  その言葉が終わらない内に、一件の茶屋から破壊音が轟いた。 「ほえわわわ」  一人の店員がガラの悪い四人組に囲まれている。  中でもひと際目立つ巨体が咆哮をあげ、木造の茶屋全体がビリビリと震えた。 「こんな不味いもん、食ってやっただけでも有り難く思え。この下等生物」  耳の後ろから伸びる黒色の曲がった角。鋭い黄金の瞳。  振り上げた太い腕には赤銅色の鱗が輝いている。 「ドラゴニア種……」  珍しい存在に、駆け付けた一人が目を開く。 「あわわわ、不味いってお客さん。おかわりまでしっかり食べたじゃないですかあ」 「何だって?」 「ひええ!! なんでもないですう!!」  ドラゴニアに付き添っていた女が椅子を蹴り飛ばした。  巻きこまれた茶椀が次々と床へ落ちていく。客は逃げ出し、店員は半泣きだ。 「待て待て、この無銭飲食犯め!!」 「私達の目が黒いうちは、トルミンの平和を乱すような真似は許しません!」 「誰だァ、てめえら」 「俺たちは!」 「私たちは!」 「ギルッチだ――ぶほぉ!?」  ポーズと台詞を決める間も無く、赤い無情の拳が一人の頬にめりこんだ。 「決め台詞の途中で殴るとか、貴様、心が無いのカ!」 「弱えクソどもが、うるせえんだよ」 「存在がうざい」 「あらら、図々しくしゃしゃり出てきて弱いとか。救いようが無いグズ。ほんとグズ」 「うげっ!?」  仰向けになった腹部にブーツの靴底が深く喰い込む。 「あわ、あわわわわ」  そう、ギルッチ団はあくまで自警団。戦闘能力を持たない一般人も多い。 「……聞け、いい遊びを思いついた」  竜の口元がニヤリと裂け、伝播するように悪意がさざめいた。 ◆ 「『ギルッチ団』狩り?」 「そうだ。トルミン商店街でわざと騒ぎを起こし、出てきたパトロール中の自警団……もといギルッチ団に暴行を加える。そんな悪趣味な事件が報告されている」  傭兵や、ギルッチ団の腕利きが魔物退治や観光客の救出に向かう隙をついた卑劣な犯行だという。  相手も腕が立つのか、それとも力をもたない民間人だけを狙っているのか。  普段なら、敵わないとみるとピューンと逃げるギルッチ団員の中にもかなりの怪我人が出ているそうだ。 「課外活動だ。至急現場に向かい事件を解決しろ。あ? 相手の名前? そんなもんチンピラAからDで充分だ」  教師は笑顔で親指を下に向ける。 「一般人相手にイキがってるアホどもに、世間の厳しさを教えてこい」  目が笑っていなかった。
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-03-18
完成 2020-04-03
【新歓】アライブ・ライブラリー・カフェ (マルチ)
駒米たも GM
●新たにご入学された皆様へ 「新しく入学された方ですか?」  そこに居たのは偶然だったのか。必然だったのか。  歓迎祭『マジック・オブ・ディライト』に盛り上がる第一校舎の廊下を歩いていると突然声をかけられた。  見れば線の細い、というか薄い青年が立っている。眼鏡奥のツリ目がキラリと輝いていた。 「良かったらどうぞ!」  そう言って押しつけ、もとい手渡されたチラシには『大図書館(ワイズ・クレバー)ガイドティーパーティー』の文字。  どうやら大図書館に併設されたカフェの一つで、ガイドツアーを兼ねた懇談会が開かれるようだ。  ――あなたも物語の登場人物になれる!?  いつもとは違う自分で大図書館を楽しみませんか。  物語にちなんだカフェメニューでおもてなしいたします。  本好きな先輩や元気な本とお話しできるチャンス!  ご希望の方には先輩が大図書館内のガイドを行います……。  元気な本とは一体? ●進級された皆様へ  重いチョコレート色の本棚迷宮を抜けると景色は一転、青々とした空と芝生を望む開いた空間へと出る。  噴水の如く茂った鉢植えやゆっくりと動く無人のハシゴやランタン。  大きな切り株のテーブルと大小様々なキノコの椅子が並ぶ風景は、図書館の中というよりも森の中を思わせた。  ふわふわとテーブルの間を蝶のように本が飛んでいるのはさすが魔法学園とも呼ぶべきか。  ここは大図書館に併設されたカフェの一つ『ブックマーク・リーフ』。  珈琲や薬茶、スパイシーな香辛料や甘いフルーツの香りが混ざり合った独特の空気の中で読書をする生徒もいれば、外のオープンテラスで昼食やアフタヌーンティーを取りながらお喋りを楽しむ教師陣の姿も見える。  手にしたチラシをもう一度見る。 『歓迎祭初日・午前中限定イベント。大図書館ガイドツアー&ティーパーティーお手伝い募集のお知らせ』 「こっちですよー!」  窓の向こうのテラス席で誰かが手を振っている。 「今回、こちらのカフェと協力して仮装イベントを開くことになりました。コンセプトは『物語の中』。しかし魔法の鏡を借りたはいいものの人手も時間もアイディアも足りず……そこで皆さんのお力を借りようと声をかけた次第です!」  『魔法の鏡』。  ある道具師から借りたその不思議な鏡は、ある時刻まで自身の見た目を好きに変化させるという。  洋服、種族、はたまた性別まで変えられるが、声や実体は変えられないということだ。  そう話を切り出したのは図書委員と書かれた腕章をつけたリバイバルの青年【オズマー・クレイトン】。筆跡マニアであり直筆の手紙で釣ればそこそこの無理は聞いてくれる先輩だ。 「ガイドツアーは後輩と一緒に大図書館を楽しくお散歩して頂く形ですね。何かあってもこちらの経験豊富な先輩たちがフォローしてくれます」  そう言って傍にある大きな袋から取り出されたのは緑、青、赤、金髪の四人の生徒。全員がフェアリータイプのエリアルであり、焦げている。返事はない。気絶しているようだ。 「次にカフェですが、紅茶、サンドイッチ、スコーン以外のメニューは決まっていません。なので皆さんで提供するメニューや飲み物を考えてみませんか? そうそう、このカフェは『魔導書とふれあえる』を売りにしていますから、そういったイメージの品であればとても嬉しいです。配膳には神殿書庫から来た魔導書の皆さんも協力してくれるそうで」 『よしなに頼む』  周囲を漂っていた本がフワフワと集まり、頭を下げるように上下に動いた。  募集職種は三つ。  大図書館内で本の話をしながらガイドツアーを行うツアーコンダクター。  カフェメニューを考え調理を行うキッチンスタッフ。  そして本の登場人物に扮装し配膳をするホールスタッフ。  魔法の鏡で仮装して作業に当たってもらいたいが、無理にとは言わない。  他にも大図書館を楽しんでもらえる良い案があれば積極的にやって欲しいそうだ。 「一、二時間ほど手伝ってもらったら、あとはカフェで好きに過ごしてください。お昼の12時になったら魔法の鏡の効果がきれますので、そこはご注意を。それでは一緒に目指しましょうね死人ゼロ!」
参加人数
15 / 16 名
公開 2020-04-26
完成 2020-05-16
雪と共に落ちゆく (ショート)
駒米たも GM
 俺たちは息をしながら死んでいる。  誰かがこの状況を絶望だと言った。  絶望?  資材が無い。金が無い。時間が無い。食べ物が無い。  畑を耕す牛馬が無い。病を治す薬が無い。仕事を見つける学が無い。  村を出るだけの勇気も無ければ、助けを呼ぶだけの気力も無い。  何より、生きる意欲が無い。  もう疲れてしまった。  これは絶望なんかじゃない。  ただの、無だ。 「ようこそ、みなのしゅ〜。デスマーチへ」  いつものように微睡みながら保健室に生息している客員教授【メッチェ・スピッティ】が不吉な言葉を口にした。  いつも慌ただしい保健室だが、今日は輪をかけて忙しない。 「グラヌーゼに行ったことはあるかメェ? ぶっちゃけ貧しくてご飯も医療も人手も足りてない。無い無いづくしの寂しい土地だメェ〜」  運ばれていく木箱の山など気にするなと言わんばかりに、メッチェは仮眠室へと生徒たちを誘導した。  部屋の中央に運びこまれた黒板にはどこかの配置図が貼られている。くすんだ紙の上には所々、大きな赤いバツ印が記されていた。  仮眠室はいつの間にか作戦室に衣替えしていたようだ。 「ただでさえ冬は厳しいのに今年は病が流行しているとの報告があったメェ〜。普段ならグラヌーゼ南部に学園から治療士と応援物資を派遣して、栄養をとって温かくして寝てろ、と言って終わるところだが。……昨日、治療院として使っていた建物近くの防護柵が壊され、魔物の襲撃を受けたとの報告があったメェ」  低くなった声に部屋の温度が下がる。 「病人はこれからも南部に集まってくる。しかし現場は怪我人が増え医療崩壊超えて医療アポカリプスな状態。柵は壊れ、襲ってきた魔物は無傷で去り、今は羊の蹄すら借りたいというありさまだメェ〜」  デスマーチの内容がいま、明確な像を結ぼうとしている。 「今回はあっちが引率する。回復魔法が使える生徒は治療院の手伝いを、索敵や攻撃に長けた生徒は魔物の追跡を、交渉が得意な生徒は混乱した民間人を宥めて情報収集に当たってほしいメェ。薬も食料も不足してるけど、そこは自分で何とかするメェ〜」  じゃあ準備よろしくとメッチェは軽く手を上げフラフラとした足取りで去っていった。  部屋に残った生徒は思った。  メッチェ先生、めっちゃ早口できるじゃん……。
参加人数
6 / 8 名
公開 2020-12-21
完成 2021-01-07

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サンプル


コメディ、シリアス共通して神視点(心情含めた三人称)のシンプルな文章を心がけています。
「癖が強い」「好みが分かれる」とも言われているので、そうなのかもしれません。


【日常】
 蜘蛛糸のような雫が若い芝生を濡らしている。
「朝は晴れていたのになぁ。傘、持ってくればよかった」
【オズマー・クレイトン】は落ちこんだ表情のまま空を見上げた。
 渡り廊下の天井に阻まれ、元凶である灰色の雨雲を見る事はできない。
 気分的にそうしたかっただけだ。

【戦闘】
「いく、ぞ!」
 視界に敵を捕らえた【ヴィアーレ・ロクスウェル】が駆け出した。
 けぶる視界のなか、横一閃に払われた軌跡が白く浮かびあがる。
 不規則な動きを繰り返していた触手の内、数本が水へと戻った。
(プラン値0点のシンプル戦闘の場合)


【日常 重め】
 昼過ぎから降り始めた小糠雨が、新緑の上へ細糸の織りを紡ぐ。
 ローレライ種以外の生徒は蔓延する強い水の香に灰色の沈溺思考へと陥った。
 傘を持たぬ罹患者は一様に太陽信奉を口にする。【オズマー・クレイトン】もその一人であった。