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海無鈴河 GM 

剣と魔法のファンタジー!
皆さんに楽しんでいただけるような課題を探せるように頑張ります!

ラブコメやコメディ、人情話など日常系が得意です!

担当NPC


《学園教師》コルネ・ワルフルド
  Lv85 / Rank 1
学園の主任教師。新入生への対応や広報も担当しており、なにかとハメを外しがちな学園長の面倒も見るというマルチな活躍をしているお姉さん。  狼のルネサンスで、怒ると吠える。がおーっ。  父親の顔は知らない。生い立ちも恵まれているとはいいがたく、本人いわく「グレていた」。家出同然の体で故郷を飛び出している。  フトゥールム・スクエアには窃盗のために忍び込んだのだが、メメル学園長に見つかり説得されて学園生となる。  数年の学園生活で大きく成長、ついには教師となり学園に恩返しする進路を選んだ。  趣味はスポーツ全般で、とりわけクロスカントリーが好み。  干しブドウに目がない。  干しブドウがからむと人格が変わることも……。  恋愛に関しては奥手。メメルによれば「コルネたんはなぁ、そういうの自分には縁のないものと決めてかかっているからなぁ~」とのことである。  なにかとデタラメなメメルには手を焼いているが、心の底では彼女のことを深く尊敬している。

メッセージ


村人になったら、ひたすら「ここは○○の村だよ!」って言いたい。

作品一覧


土産物屋の苦悩 (ショート)
海無鈴河 GM
 アルチェの街。  様々な店が軒を連ねる、フィオレモールの一角に人だかりができていた。  店の名前は『フォルテ』。最近できた土産物屋だった。  通りを歩き、何気なくその店に近づいた男性観光客2人組は、人だかりの熱量に思わずぎょっとして後ずさった。 「すげぇ……キラキラしてる……」 「俺には眩しいよ……」  人だかりは全て女性で構成されていた。  まだ10歳にもならないような小さな女の子から、腰の曲がったおばあ様まで。ありとあらゆる世代の女性が揃っている。  彼女たちはうっとりとした表情を浮かべ、店内を一心に見つめていた。  その視線の先には。 「いらっしゃいませ、お嬢様」  そう笑顔で言い、女性客をエスコートする見目麗しい店員。 「とてもお似合いです、お嬢様」  女性客に髪飾りをつけてやりつつ、優しく褒める見目麗しい店員。  そう。『フォルテ』はイケメン店員による丁寧な接客で、女性客のハートをつかんでいたのだった。  そんなきらびやかな店内の様子を、静かに見つめる男が居た。 「はぁ。相変わらずお向いさんは盛況なことで」  男の名前は【リンツ・シュライデン】。  サビアビーチに昔からある土産物屋『海猫』の3代目の店主だった。  『フォルテ』ができてからというものの、向かいに位置する彼の店は閑古鳥が鳴きっぱなしだ。  今も店内には1人の客も居ず、彼はこうして店の扉の隙間から向かいのライバル店ウォッチングにいそしんでいたのだった。 「しっかし、眩しいな……ウチとは大違いだ」  彼は棚の商品にハタキをかけつつ、ちらりちらりと向かいの様子を盗み見る。  丁度、店員がお土産を購入した女性客を見送りに出てきたところだった。 「またいらしてくださいね、お待ちしております」  青年の優雅な一礼にきゃあ、と黄色い声があがる。  リンツのところにまでその声は聞こえてきて、彼はうーんと唸った。 「……ウチも『いらっしゃいませ、お嬢様』って接客すればいいのか?」  その問いかけに答える声は当然無い。 「俺イケメンじゃないし無理か」  リンツは自分でそうオチをつけると、ふと棚の商品を手に取った。 「ウチの商品も悪いわけじゃないんだよなぁ」  リンツは『珍味・ジェムフィッシュの干物』と書かれた袋を見つつ、つぶやいた。ジェムフィッシュの干物は見た目こそアレだが、美容に良い成分がふんだんに含まれているという。  他にも店内には、海産物の加工品や工芸品など様々な商品が並んでいる。そのどれもが、リンツが店を継ぐ前から扱われていた物だ。 「いい加減古くさいのか……? 新しい商品も開発しないと……」  今度は『海猫のランプ』を磨きながらぼやいた。色ガラスが使われているランプを慎重に手に取り、柔らかな布で磨いていく。  このランプも先代が開発した商品だった。  リンツはここで、今まで考えていた内容を指折り数えて、頭を抱えた。 「無理! やることが多すぎる!」  もともと身内だけで経営していた店のため、リンツの他には時々手伝いに来てくれる近所のおばさまくらいしか店員はいない。  作業を行おうにも、手が足りないのは当たり前だった。 「……一旦落ち着こう」  はあ、と息を吐いたリンツはそう言うと、店の奥に引っ込んだ。  店の奥は居住スペースになっている。  キッチンでお茶を淹れ、お茶請けに余り物のクッキーを用意しようとして、リンツは手を止めた。 「皿、洗ってないなあ」  キッチンには朝食の皿がそのままの状態で置かれている。今朝は寝坊をしてしまい、片付ける間もなかったのだ。  仕方なく、リンツは海で拾ってきた『鳥貝』という貝殻を皿代わりにして、クッキーを載せた。  そしてリンツは店のカウンターの中へと戻って行く。相変わらず、店内には誰の姿も見えなかった。 「……何とかしないとだよなぁ。店の存続がかかってるんだ」  リンツはポリポリとクッキーをかじりながらつぶやいた。  このまま何もしないでいれば、いずれ店はつぶれてしまう。  先祖代々続いてきた、歴史のある店だ。なんとなく継いだ店だが、リンツにも思い入れはあった。  リンツは覚悟を決めると、店の一大改革に乗り出すことにした。    手始めに彼は、手伝ってくれる人材を募集することにした。  最近よく噂を聞く、魔法学園の生徒達。 「若者の意見も取り入れたいしなぁ、一回尋ねてみるか」  こうしてリンツは学園へ相談を持ちかけたのだった。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-09-08
完成 2019-09-22
なんでもない貴重な休日 (EX)
海無鈴河 GM
 その日の朝は、普段よりも冷え込みが激しかった。  今日は休日。学園の授業もお休みだ。  いつもの制服ではなく私服のセーターを着こみ、とある男子生徒は寮の自室の扉を開けた。   すると、向かいの部屋の扉も同じように開く。髪に寝ぐせを付けたままの同級生が姿を現した。 「おはよう。今日は冷えるね」 「ああ……。おかげでいつもより早く目が覚めちまったよ」 「寝坊しなくてよかったじゃない」  そんな軽口をたたきながら、二人は廊下を並んで歩く。同じように、朝食をとろうと部屋を出てきた生徒たちで廊下は混雑していた。  ふと、寝ぐせのついた生徒が隣を歩く彼を肘でつついた。 「おい、見ろよ。どうりで寒いわけだ」  窓の方を顎で指す。つられて視線を向け、彼は驚いて窓に駆け寄った。 「わあ……!」  窓越しに見えるのは、白く染まった街並み。見慣れたパン屋の赤い屋根、広場の噴水、公園の木々。すべてが真っ白に染められていた。  わずかに雲間から覗く太陽の光を受け、白い粒はキラキラと輝く。彼の目はその景色にくぎ付けだった。 「雪が降ったんだ……!」 ●  学園中がどこかキラキラしていた。生徒も先生も関係なく、みんながこの貴重な休日を満喫しようと心躍らせていた。  雪の積もったグラウンドでは、雪合戦をしようと生徒たちが雪壁を作っている。片隅では雪遊びに興じる女子生徒の姿も見える。  一方で、スコップを持った先生があわただしく正門の前を走り抜けていった。なにかあるのだろうか。  寒さの苦手な者は、校舎の中で銀世界を楽しんでいるようだ。ほかほかと紅茶の湯気が立ち、教室の窓を曇らせていた。  湖には氷がはり、レゼントの街からスケート靴片手に子供たちがやってきていた。  夜にはグラウンドにかまくらを作り、鍋なんかもするらしい。    このなんでもない貴重な休日。君たちはどう過ごすだろうか?
参加人数
5 / 8 名
公開 2019-12-17
完成 2020-01-04
【新歓】最後のコンサート (ショート)
海無鈴河 GM
「今日の~ティータイムは~♪ ミラクル・マジカル・ホシブドウパフェ~♪」  鼻歌に合わせて茶色の尻尾がるんるんと揺れる。  【コルネ・ワルフルド】はスキップでレゼントの街を闊歩していた。  本来なら彼女は学園内で新入生歓迎のため走り回っている頃だったのだが、学園長からこんなお達しが。 『コルネたん、ちょっとお使い行ってきて~。ついでに2時間休憩してきていいから! 頼んだゾ☆』  どういう風の吹き回しだろう……。若干訝しみながらも、コルネの足取りは軽い。  両手には魔法道具が色々と詰まった紙袋。お使いはしっかりと済ませた。  ついでに前から気になっていた新メニュー、試しに行っちゃおうかなぁ~。……なんて、ことを思って頭の中は干しブドウ一色だ。  が、『コルネも歩けば棒に当たる』……もとい、『勇者も歩けば事件に当たる』とは誰が言ったか。 「んん……?」  足を止め、コルネは首を傾げた。  黒い服を着た男が前を歩いていた。それはいい。  問題は男の足取りである。  右へふらふら、左へふらふら。足元が覚束ないというか……見るからに危ない。  それになんだか、魔力の気配が薄いような気もする。  声をかけた方がいいかなぁ。なんてコルネが考えていた矢先。  バターン、と大きな音を立てて男が倒れた。 「わあああああっ!?」 ● 「助けていただいて、本当にありがとうございました……なんてお礼を言えばいいのか」 「いえいえ~。教師として当然のことをしたまでですから。もう体調は大丈夫ですか?」  落ち着いたジャズの流れる喫茶店。コルネはパフェをつつきながら、目の前に座るカルマの男にそう声をかけた。 「はい。お茶をいただいて、少し落ち着くことができました」  紅茶のカップを置き、男は穏やかにほほ笑む。  右頬に刻まれた、カルマの命の源である魔法陣は半分消えかけていた。魔力の気配が薄いのはこのせいか、とコルネは結論付ける。  彼は白い手袋の右手を胸に置くと、優雅に一礼した。 「私は【セイレン・ローダン】と申します。街のはずれの屋敷で執事をしております」 「ひつじ……じゃなくて、執事さん!」  めずらし~。と興奮気味につぶやくコルネだったが、ふと気がついて首を傾げた。 「ん? でも、街はずれのお屋敷って、もう長い間人が住んでないって……」  前に学園長から聞いたことがある。  コルネが尋ねると、セイレンはうなずいた。 「ええ。主人がこの世を去ってから、もう三百年ほどになります。ですが、私は主亡き後もずっと屋敷の管理を担っておりました」  カルマは忠誠心の強い種族である。彼はきっと、この長い時を、主に与えられた役割を忠実にこなして生きてきたのだろう。 「ところで……さきほど『教師』とおっしゃっていましたが、コルネ様はもしや魔法学園の先生でいらっしゃるのですか?」 「あ、はい。いちおーそうです」 「そうでしたか……」  セイレンは自分の執事服の黒をしばらく見つめていた。なにかを伝えようと、顔を上げかけて、下ろす。  それを何度か繰り返し――覚悟を決めたようにコルネを見つめた。 「あの、魔法学園の皆さんにご依頼をさせていただけないでしょうか。……コンサートの準備を手伝っていただきたいのです」 ●  セイレンの亡くなった主は、屋敷の温室でサロンコンサートを開くことが好きだった。  お気に入りの音楽と、おいしいお茶菓子。綺麗な花と、たくさんの友人。  それらに囲まれて過ごすときが一番幸せそうだった、とセイレンは話した。 「もう一度、主人の好きだったコンサートを行いたいのです。ですが、先ほどコルネ様もご覧になったとおり、私は体が弱く、一人ではとても実現できそうにない」  セイレンは白い手袋に包まれた右手をぎゅっと握りこむ。 「……ずうずうしいお願いだとは思います。ですが、これが最後の機会になるかもしれないのです」  だから、完璧なコンサートを。  コルネはセイレンの右手――手袋の下を想像して、予感を抱く。 「もしかして、セイレンさんは、もう」  セイレンは弱弱しく微笑みを返す。コルネはそれ以上の言葉を封じると、しっかりとうなずいた。 「分かりました。セイレンさんの依頼、アタシたちで引き受けます。生徒のみんなもきっと、協力してくれるはず」 「ありがとうございます……! みなさまにお願いしたいのは主に3つです」  まず1つは、郊外の森に行って、花を調達してくること。屋敷の主人の好きな花だったらしい。 「最近は魔物の出現が多く、群生地に近づくことすら難しくなってしまい……」 「それならアタシたちが行った方が安心ですね。魔物にも慣れてますし」 「はい、ぜひ。そしてもう1つは、コンサートの出演者を務めていただける方がいれば、お願いしたいのです。主人は若い演奏家の演奏を聴くことも好きでした。魔法学園には芸術に長けている方もいらっしゃるとお聞きします。歌でも、楽器でも……なんなら、踊りを組み合わせていただいても。種類は問いません」 「音楽かぁ。アタシはそっちではお手伝いできそうにないかも……」 「私も楽器をたしなんでおりますので、いざとなったらお手伝いさせていただきますよ」  最後にもう一つ、とセイレンは指をすっと立てる。 「ぜひ、コンサートを楽しんでいってください。お忙しい方もいらっしゃいますから、無理に出席してほしいとは申しません。ですが、にぎやかな方が主人も喜びますから……」  コルネは任せてください、とうなずいた。  学園にはちょうど多くの生徒が集っている。きっと協力してくれる子がいるはずだ。  残りのパフェを掻き込み、コルネはダッシュで学園へと戻るのだった。
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-04-24
完成 2020-05-10
我が故郷は水面(みなも)の下に (ショート)
海無鈴河 GM
◆  その昔、伝説の魔王の脅威にこの世界が脅かされていた頃。  八種族はそれぞれの方法で脅威へと立ち向かったのだという。  たとえば、ドラゴニアは果敢に魔物討伐へ乗り出し、ヒューマンは勇者として立ち上がる……といった具合に。  その中でローレライは、多くの者が海の底へと身を隠した。自分たちを守るために。  僕はその頃生まれていなかったけど、近所に住むじい様から話をよく聞いたものだ。  ここは当時のローレライが築いた海底の街なのだ、と。  海の底から天を見上げると、水面が揺れ、陽光は帯となって差し込んでいた。  泡沫に反射したその美しさは、今でも時々夢に見る。   ◆ 「遺跡の調査、ですか?」  フトゥールム・スクエア、廊下にて。考古学の教師である【エヴァン・テール】は、自分の胸くらいの位置にあるとんがり帽子に首を傾げた。 「そーそー。なんでも最近、遺跡周辺の精霊の元気がないみたいでね。ちょっくら行って解決してきてほしいのだよ」  帽子の主は【メメ・メメル】。彼女にしてはいくらか真面目な口調だった。  エヴァンは少し皴の寄った目元に苦笑を浮かべた。 「この老体になかなか酷なことを言いますね」  思わずメメルは彼の体を上から下までじっと眺めてしまった。  少し年の行った印象はあるものの、彼の風体は30代後半のそれである。 「その見た目でなにを言っとるか」 「いやあ、メメル先生には負けますよ」  永遠の14歳と永遠の30代が顔を見合わせる。  ははは……。  廊下に乾いた笑いが響いた。事実には触れない方が幸せだと二人は察した。 「で、その遺跡はどこに?」 「んー。エヴァたん向きの場所だぞ☆ ちょっと待ってー……」  メメルはどこからともなく写法筆を取りだすと、空中に大陸地図を描き始めた。  中心にはフトゥールム・スクエア。  筆をとん、と学園の位置に置くと、メメルはそのまま真下に線を引っ張る。 「学園から真南にずーっと、ずーっと……」  いくつかの街を越え、川を越えてもなお線は伸び続ける。 「あの、そのまま行くと――」 「ここだ!」  筆が止まったのは、大陸の端を少し飛び出たところ。エヴァンが察した通り海の上だった。  エヴァンのハシバミ色の瞳がわずかに揺れた。 「そこは……」 「な。エヴァたん向きの場所だろ?」 「ええ……よく知ってます。それに、精霊の元気がない原因も覚えがあります」  だってそこにあるのは。 「僕の故郷ですから。よく、知っています」  メメルはそうだった、と笑うと、ぽんとエヴァンの背中を叩いた。 「久しぶりの里帰りだと思って、満喫してきたまえ☆」   ◆  その翌日、エヴァンは考古学の授業で生徒たちに呼びかけた。  フィールドワークとして、海底に沈む遺跡の調査へ向かうこと。  そこで課題を1つこなしてもらいたいこと。 「向かう遺跡は、かつてローレライのとある部族が住んでいた集落です。五百年ほど前には住む者も居なくなってしまいましたが、住居や道具などは現存しています。皆さんにとって珍しいものもあるかもしれませんね」  生徒の一人から質問の手があがる。  エヴァンは穏やかな口調で丁寧に答えていった。 「呼吸の心配はいりません。僕の調合した魔法薬を飲めば、陸地と変わらず呼吸ができ、体が浮くことも無く海底を歩くこともできます」  高度な魔法に生徒たちから驚きの声があがる。今の自分たちには到底届かない芸当だ。 「とはいえ水の中なので、体は重たくなりますし、ある程度の制限はありますが……」  さて、とエヴァンは一度言葉を切る。 「みなさんにこなしていただきたい課題は、『水霊の涙(すいれいのなみだ)』という魔法道具の作成です」  水霊の涙は濁ってしまった水を綺麗にすることができる魔法道具なのだという。 「あの遺跡では数百年に一回、水流が滞り水が濁ってしまうことがあるんですよ。水が濁ると精霊も我々も暮らしづらいですからね、早めに解決したいところです」  作り方と材料は紙にまとめました。  エヴァンはそう告げると、生徒たちに羊皮紙を配り始めた。
参加人数
3 / 8 名
公開 2020-09-04
完成 2020-09-22
夏の夜空に悲鳴を響かせ (ショート)
海無鈴河 GM
●夏といえば 肝試し 「お前らが大好きな夏が来たぞ」  開口一番、学園教師の【ジョー・ウォーカー】は楽しげに言い放った。 「夏といえば何だ?」 「海?」 「花火?」 「長期休暇!」  口々に答える生徒に、ジョーは穏やかに首を振る。 「夏といえば、肝試しだ」  ニヤニヤと楽しげなジョーを前に、生徒たちは顔を見合わせる。 「今年はヴェリエーダ街の夏祭りに協力することになってな。他の先公どもにもいろいろとヴェリエーダの夏祭りに協力してるやつもいるんだが、このジョー・ウォーカーの担当はお化け屋敷ってわけだ。それでお前たちの手を借りたい」  この教師の『手を借りたい』が意味するところは『実働はお前らだぞ』だと理解している生徒たちは、あぁまたか。と察しの良い顔をした。 「一等怖い仕掛けや演出を思いついたやつが優勝だ。夏休みどうせ暇してるんなら、ひと夏の思い出作りでも兼ねて俺に手を貸してくれよ」  生徒の一人が手を上げた。 「それってチームでもいいんですか?」 「もちろん」 「なにか条件はありますか?」 「良い質問だ。ヴェリエーダに伝わる悲恋『湖の君』をモチーフにする必要がある」 「どんな話ですか」 「ドラゴニアに恋したローレライの悲恋話だ」  『湖の君』の筋書きはこうだ。  昔々、ヴェリエーダの街で暮らしていた、メリエルという名の美しいローレライが居た。  彼女は知恵も深く魔力も強かった。そして惜しみなく街の発展に深く寄与した。  今も街に残る文化の多くは、彼女が伝え教えたものとされている。  だがある日、彼女は街へやってきた旅人のドラゴニアに恋をした。  長命であるメリエルにとって、ドラゴニアとの確執はそう古い記憶ではなかった。  その葛藤を、恋心が上回ってしまった。 「ドラゴニアの旅人が何者だったか。メリエルをどう思っていたのかはわからない。だが、ドラゴニアに焦がれたメリエルがとうとう、その腕の中で蒸発しちまうのを村人が見た」  ここまでは悲劇だ。  だがそれからが怪談だった。  それからヴェリエーダの街には、雨が降るたび、メリエルの亡霊が出没するようになったという。  誰かを探すようにウロウロとあたりをさまよい、時には人を連れ去ってしまうこともあるとの噂も流れた。  これはいけないと、メリエルが暮らしていた湖のそばに祠を建て、年に一度鎮魂の祭りを開き始めたのが、そもそものこの夏祭りの起源だという。 「皮肉にも、その祭りのやり方も、教えたのはメリエルだって話なんだけどな。とにかく、今度やるお化け屋敷も、その物語をある程度踏襲しなきゃならん。要するにお題付きってわけだ」 「優勝したらなにかいいことあります?」 「俺の担当してる試験を今期分免除してやる」 「それだけですか?」 「それだけ、って何だよ。十分嬉しいだろうが」 「先生がこんなにやる気ってことは、ヴェリエーダ街からなにかもっといい景品がかけられてるんじゃないんですか?」  どこか非難するような口ぶりの生徒たちに、ジョーはチッと舌打ちした。 「お前らもそろそろわかってきてるな」 「何が景品なんです?」 「賞金あるなら山分けですよ」  矢継ぎ早に言う生徒たちに、ジョーは待て待てと手を広げてみせた。 「お子ちゃまのお前らに言っても仕方ねえんだが……1967年に作られた蒸留酒『エーダ・ガッティ』が上がってる。知ってるやつもいるかも知れねえが、ヴェリエーダは酒の名所でな。いろんな催し物の中で一番集客につながった出店のオーナーに贈呈されることになってる。……まぁそういうことだがお前らにはまだ早いから」 「先生、学生にも成人済みの人はいます。黙っているのはアンフェアだと思います」 「先生、勇者歴1960年ものの『エーダ・ガッティ』ならどの年代のものでも時価総額はかなりのものだと思います。飲めなくても転売できます」 「先生」 「先生」  やんややんやと口にする生徒たちを、ジョーはちっと睨みつけた。 「わかったわかった。いいか。他の出店を差し置いてお化け屋敷に人を誘導することが必須条件だ。お化け屋敷の演出に関して優れたアイディアを出したやつは今期の俺が受け持つ試験を免除してやる」  生徒たちは同意するように頷いた。  ジョーはぐっと腕組みをする。 「いいか。今年のヴェリエーダの夏祭りを絶叫で染め上げるんだぞ」 「おー!」  かくして、最恐のお化け屋敷計画の火蓋は切って落とされたのである。
参加人数
3 / 8 名
公開 2020-07-26
完成 2020-09-15
嘘つきロビン (ショート)
海無鈴河 GM
「どこにいるの! 返事をして!」  昼下がりのとある町。人の多く行き交う大通りで、若い女性が叫んでいた。  その表情は必死で、周囲の目など気にもしていないようだった。  あまりにも切羽詰まったその様子に、花を売る屋台を出していた夫人が彼女に声をかけた。 「あんた、誰か探してるのかい?」  声をかけられた女性は、はっとした表情で屋台の方に視線を移す。そして、こくりとうなずいた。 「ええ。息子が昨晩から見当たらなくて……」 「昨晩から!? そりゃ大変だ。名前は? 年はいくつだい? 服装は?」 「名前は【ロビン・ムーア】。年は6歳です。昨日はお気に入りの青いシャツを着て、膝までのズボンをはいていました」  夫人は周囲の住民たちに声をかけた。 「だれか見かけなかったかい?」  すると、広場で楽器を弾いていた若い男が声をあげた。 「なんかガキが1人で泣いてたから声をかけたんだ。どうしたんだ、って。そうしたら、『お母さんと仲良くなったんだ』って言って走っていっちまった。なんだかあべこべだったが……ありゃ、なんだったんだ?」  男が首をかしげる。それを聞いて母親はそれは、と事情を話し始めた。 「ロビンはちょっと不思議なところがあって……あの子が話すことは全部嘘なんです。例えばあの子が『東に行く』と言ったら本当は西に行く。『おいしい』っていえば、本当は不味いと思っている……という風に」 「ってことは、あれは『お母さんと喧嘩しちゃったんだ』ってことか」  男の解釈に母親が頷いた。 「最近、あの子が言うことを聞かないので叱っちゃって……そうしたら『お母さんなんて大好きだ!』って言って飛び出しちゃったんです……。ああ、何かあったらどうしよう……」  言っていることはあべこべだが、今にも泣きだしそうな母親の表情に、夫人は彼女の肩をそっと抱いて慰めた。 「大丈夫だよ。もう少し町で話を聞いてみたら、何かわかるかもしれないよ」 「はい……」  2人は大通りを中心に聞き込みを続けた。 「その子なら昨日の夜見たわ。重たそうな本を抱えていたけど……」 「今朝早くに走っていくのを見かけたから声をかけたの。そうしたら『北に行くんだ』って言ってたわ」  1人で出歩く小さな子供の姿は目立っていたらしく、いくつか目撃情報が集まった。 「とはいえ決定打に欠けるねえ。もう少し聞いてみようか?」 「そうですね……っ!!」  突然、母親が地面に崩れ落ちた。額から汗が噴き出て、顔は苦痛に歪んでいる。  夫人は慌てて彼女の様子をみて、はっと気がついた。  膨らんだ腹部。 「子供がいるのは分かってたけど、あんた、もしかしてもうすぐ……」  こくこく、と母親は頷いた。 「安静にしてないとだよ」 「でもロビンが!」  母親は這ってでも息子を探しに行きそうな勢いである。夫人は周囲を見回し、最近町でよく目にする制服姿を見つけて声をかけた。 「そこのあんた! 迷子の子供を探してくれないかい!?」
参加人数
2 / 5 名
公開 2020-12-07
完成 2020-12-26
これが俺たちの生き様だ! (ショート)
海無鈴河 GM
「村人とはどうあるべきか」  男がそんな哲学めいた問いを発した。  冬めいたフトゥールム・スクエア。その本校舎のとある教室からである。 「我々村人は生産、流通、娯楽……様々な側面から、勇者や魔王をはじめとした他の人々の生活を支える使命がある」  声の主は【ダミアン・オットー】。村人・従者コースの教官をしている。昔は勇者だったが、今は学園で教鞭をとる傍ら、村人(トマト農家)人生を謳歌しているという異例の経歴の持ち主だ。  きっちり着込んだスーツの上からでもわかるぱっつんぱっつんの胸筋が、彼の武勇伝を物語っている。 「しかし、我々は力を持たない。武器を持たない」 (これほど説得力皆無の言葉も他にないですねぇ……)  などと授業のサポートに入っていた考古学教師【エヴァン・テール】は思った。 「しかし、魔物や天変地異の脅威は常に迫っている。そこで我々はそれらの事態に遭遇した際、『村人として』どう行動すべきか、反応すべきか。それをこの授業を通して実践してもらう」  題して『村人実践学』である。  ダミアンはバン、と大きな手のひらで黒板を叩いて示した。 「本日行うのは『魔物が村を襲った際の村人らしい対処法』の実践だ。4人以内のグループに分かれ、学園で用意した模擬村を使用して魔物の襲撃から村の制圧までの一連の流れをシュミレーションする」  エヴァンは横から補足をした。 「村の状況は、穏やかな春の気候で、晴天です。時刻は昼。授業開始の合図とともに、魔物――私が作成した授業用のものですが――が、村の門を破壊しようと攻撃を始めます」  その後15分をかけて、門を破壊。10体の魔物が村に侵入してくる。 「なにごともなく村に侵入した魔物は45分で村を制圧したとして、撤収します」 「つまり諸君らには、この計60分の間、どんな行動・反応が村人らしいのか、を考えて過ごしてもらう」  と言われた物の、具体的には……?  生徒の表情はぴんと来ていないようだ。  ダミアンはそうだなぁ、と腕を組んで考え込み、ぽん、と手を叩いた。 「たとえば、魔物に果敢に挑んで、綺麗な死にざまを見せてもいいぞ。勇敢な村の青年の最後、のような感じで」  まあその後ずっと地面で転がっているのは辛いかもしれんけどなぁ、あっはっは。  軽い調子で言われ、生徒たちの表情がドン引きのそれに変化した。 「まあ、偽物の魔物なので実際に死にはしませんから……そこは安心してください」  エヴァンのフォローはフォローじゃない。 「他にも、自分たちの村や大切な人を守るために防御を固めようと奔走するのもまた一つの行動ですね」 「あとは、ひたすら『今日はいい天気だなぁ』と言いつづけたりするのもいいかもしれないな。危機にも動じず、普段通りの言動を心がけるのも村人としての在り方の一つだろう」 「ダミアン先生は出す例が極端ですよね……」  呆れ気味のエヴァンは、こほんと一つ咳ばらいをして、 「注意事項等は配布した紙にまとめていますから、しっかり読んで準備を整えてくださいね」
参加人数
2 / 4 名
公開 2021-01-19
完成 2021-02-01

リンク


サンプル


 すべてが、荒れ果てていた。
 遠くに大きな風車(ふうしゃ)が一基見える。かつて粉曳きに使われていたそれも、今では黙り込んだままだ。
「ここが……私の故郷……?」
 大きな旅行鞄と真っ白な花束を持った少女――【エリゼ・シュライナー】が、ぽつりとつぶやいた。
 穀物の名産地と呼ばれていたこの村は、12年前の大火ですべてを失った。
 見渡す限りの畑も、集落をも飲み込んだ炎は三日三晩燃え続け、村人のほとんどは命を落とした。
 のだが。
「エリゼは、運よく王国へ向かう商団に保護され、生き延びることができた……んだよね?」
 小さな男子のような声がエリゼに尋ねる。声の主はエリゼの傍らに佇む黒い猫。エリゼは彼を【ミール】と呼んでいた。
 エリゼは小さくうなずくと、かつて集落だったであろう場所に足を踏み入れた。
「本当に小さなころだったから全然覚えていないんだけど……なんとなく懐かしい気がする」
 壁が焼け落ち、骨組みだけになった小さな家。水の枯れた井戸。心の隅の方に、ちくりと反応するものがある。
 エリゼは自分の家はどこだったのだろうか、と考えながらさらに集落の奥へと足を進めた。
 集落の最奥は広場になっていた。おそらく土地の祭などで使われていたのだろう。灰で煤けた赤い旗が、どこからか飛ばされてきた木材に引っかかっていた。そこだけ時間を止めたかのように、やけに鮮明で目に付く。
 エリゼは旗を木材から外すと綺麗にたたんで抱えた。
 広場の片隅にはこじんまりとした石碑がある。いや、石碑といえるほど立派なものでもない。ただ大きめの石をいくつか並べただけ。
 石には『失われし村に捧ぐ』と文言が刻まれていた。
(誰かが作ったのかな)
 命を落とした村人たちの鎮魂碑。エリゼは先ほどの赤い旗をその前にそっと置き、持参した花束を飾った。
 膝をつき、手を組み、祈りをささげる。
「お父さん、お母さん。私、16歳になったよ。商団の元締めの家でお世話になってて、お手伝いもしてるんだ。……毎日楽しいよ」
 エリゼは一度言葉を切った。エリゼの横で大人しくしていたミールが、ちょんと前足で彼女を突っつく。エリゼはミールに視線を向けると、覚悟を決めたようにうなずいた。
「私、魔法学園に入りたいの。魔法の勉強をして……知りたいことがあるの。あの火事の日、本当はなにがあったのか」
 エリゼの脳裏に浮かんだのは、真っ赤に燃える炎。逃げろ、と叫ぶ父親の声。目の前で倒れた母親。
 そして、母の背中は血に濡れていた。
「あの頃は何も考えられなかったけど、今なら分かる。あの日、火事以外に何かがあったんだって。……魔法学園は色んな人が集まるから、きっと何か分かることがあるはず。だから、お父さんお母さん。私を――」
 見守っていてね、そう続けようとしたエリゼはぴたりと動きを止めた。
「エリゼ!!」
 ちくり、と喉元に違和感がある。視線を下げると、ナイフがわずかに彼女の白い肌に食い込んでいた。
(誰……!?)
 動かなくなったエリゼの耳元に声がささやいた。
「お前、今なんて言った?」
 若い男の声だ。エリゼは慎重に答える。
「魔法学園に行く……」
「その前だ」
「えと……あの火事の日に、本当はなにがあったのか」
 エリゼが答えると、男は尋ねた。
「お前、大火の生き残りか?」
「は、はい」
 ナイフが喉元から離れた。エリゼは慌てて振り返り、男に対峙する。
「エリゼ、大丈夫!?」
「うん。ミール、大丈夫だよ……」
 向き合った男は目深にかぶっていたローブのフードを外した。銀色の髪が風になびき、エリゼは一瞬それに目を奪われた。
(こんな綺麗な髪、街でも見たことない……)
「そういえば大火の生き残りが何人かいる、という噂は聞いていたな。……それがお前だったのか。名前は?」
「エリゼ・シュライナー……です」
 男はそうか、とうなずくと突然エリゼの腕をつかんだ。
「え」
 素早い動きにエリゼは身動き一つ取ることができなかった。
「おい、エリゼに何するんだよ!」
 わあわあと叫ぶミールを一瞥すると、男は少し困ったような表情を浮かべた。
「悪いようにはしない。だから少し落ち着いてくれ」
「あの、本当にどういうことですか」
 困惑したエリゼを見て、男は今度はしまった、と言いたげな表情になる。
「まだ名乗っていなかったか……。すまない。俺は【リヒャルト・レインズワース】。魔法学園に在籍している。そして、お前と同じく12年前の真実を追っている」
「え……!?」
 思いもかけない言葉にエリゼは目を見開いた。腕を掴まれていることも忘れて、ぐいとリヒャルトの方へ身を乗り出す。
「ほ、本当ですか!?」
「あ、ああ……」
 その勢いにリヒャルトは若干圧されながらもうなずいた。掴んでいたエリゼの腕をぱっと話すと、咳ばらいをひとつして表情を真剣なものに切り替えた。
「それで、提案だ。エリゼ・シュライナー、俺と一緒に魔法学園へ行かないか? 『12年前の真実を知る』。俺たちの目的は同じ。ならば手を組むほうがお互いのためになるだろう」
 願ってもない話だった。商団の仕事で旅慣れていたとはいえ、エリゼも初めて向かう土地には不安もある。
(それに、あの日のことに少しでも早く近づけるなら……)
「エリゼ……大丈夫なの?」
 ひょい、と肩に飛び乗ってきたミールが小声でささやく。
「……確信はないけど、彼なら大丈夫な気がする」
「エリゼの勘は当てにならないからなぁ……。まあ、ボクはエリゼについていくよ。なにかあったら守ってあげるし」
「ありがとう、ミール」
 エリゼはミールに微笑むと、リヒャルトに改めて向き直った。
「お願いします。リヒャルトさん。……あの日何があったのか、真実を追いましょう」