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ゆうしゃのがっこ~!とは

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第4回全校集会「聖夜に集う願いの調べ」 エピローグ!


(ご制作 : やぎさん IL

エピローグ「願いの調べが集う先」


●過去を刻むキャンバス

 魔法学園、フトゥールム・スクエア。
 ここは明日の勇者を育成する、魔法教育の最先端を行く機関である。
 その広大すぎる土地には、学園の所有する様々な設備が、有り余るほどにいくつもある。
 日々学園生達が技能の修得に励む校庭もあれば、昨年の出来事の結果、巨大な桜の木が生えた校庭。
 そしてこの場所では。
 20mを超える火柱がその紅を、風の流れに合わせてゆらゆらと……いや。メラメラと揺らしていた。
「う~ん。よく燃えてるメェ~」
 豪快に燃える様を見つめるのは、着火の張本人である【メッチェ・スピッティ】。
 額から垂れる汗の雫は、彼女が普段ないほどに働いたことを示しているのか。
 それともこの火柱の礎となっている巨大雪だるまが、瞬く間に溶けていくほどの熱さを示しているのか。
 真実は定かではないが、普段の彼女が中々見せないような、達成感のある表情であったことには違いない。
『ヒトの子よ。我は問いたい』
 見上げる彼女の視線を遮るようにして、突如手のひらサイズのクッキー人形が出現した。
「ふメェ!? って、よく見たら精霊様だメェ。急だったからビックリしたメェ~」
 そう。見た目はまるでお菓子そのもの。
 ジンジャーブレッドマンと呼ばれるそれにしか見えないが、こう見えても『トリミニ』と呼ばれる時を司る精霊で、名を【アヴェク】という。
 トリミニは通常3体で1組となって活動をする精霊であるが、中でも彼は過去に関する力を持つのだという。
『其方は、雪像に過去を刻ませた。だが完成したこれを炎を持って無に帰そうとしている。それは何故か』
 その問いに彼女は、普段から眠たげに垂れているその瞼を、もう少しだけ細めてこう答えた。
「どんなに魔法が使えるようになっても、どんなに治す事ができるようになっても……傷ついたり、壊れてしまった過去を、失ってしまった事実を消すことはできないメェ」
 でも――それだけじゃない。
「過去があったから成長できたことも、とっても楽しかった思い出があるから今を頑張れる……そういうこともあると思うメェ?」
 アヴェクは、彼女の問いかけるような瞳を、ただ見つめる。
 それは否定でも肯定でもない。だが、1つの答えをありのままに受け止めてくれる。
 そう思わせた。
「……どうせ消えないなら、その人がしたいようにすれば良いメェ。嫌なら忘れて、気が向いたら思い出せば良いメェ」
 ……ただ!
 ……ただ?
「どうせなら、思い出は楽しく残した方が、きっと皆幸せでそうろう~だメェ!」
 メッチェが杖を掲げると、雪だるまの燃えている場所からほど近い地面に、巨大な魔法陣が出現した。
「さぁ、フィリン殿。出番だメェ~」
「くふふっ。言われずとも分かっておるぞよ、メッチェ先生」
 魔法陣の中心からは、水の精霊に愛された種族、ローレライの【フィリン・アクアバイア】の声が返ってくる。
「わざわざ夜なべして造った雪だるまじゃ。このままただ溶かすだけでは面白みに欠けるからのう!」
 フィリンは、優雅に踊るようにして、体から零れ落ちる水滴を周囲にまき散らす。
 袖振る舞は縁の標(しるべ)。氷と水はお手の物。
 水滴が落ちた場所が淡い水色に発光しだすと、雪だるまから溶け出した水は、まるで吸い寄せられるようにして、徐々に魔法陣の中へと吸い込まれていく。
(これは……ヒトの子の作品に込められた想いが。魔力となって水に溶け、吸収されているのか)
「世界のありとあらゆる『もの』には、魔力が宿るメェ。中でも芸術は、想いの魔力が残るから……きっと素敵なんだメェ」
 それまでは、薪の燃える音と香ばしい香り、少し怖く感じる程の炎の勢いにあっけにとられていた学園生達であったが、今は先輩生徒と先生が見せるこの芸術に、文字通り魅せられていた。
「そーらっ、こんなところか……のう!」
 フィリンが踊りを終えた時。
 火炎を纏った雪だるまは、燃えさかる炎も学園生達の沢山の想いも一緒くたに、魔法陣へと吸収されたのであった。
 そしてメッチェが掲げていた杖を一振りすると、魔法陣は小さく収縮し地面から浮かび上がる。
 魔法陣は、ふわりとフィリンの手の上で静止すると、こちらまで歩いてきた彼女によって精霊へと差し出された。
「どうじゃ、精霊様よ?」
「これが、今のあっち達が抱く過去への想いだメェ」
 魔法陣の中では、止まることなく魔力の流れが躍動する。
 その流れは時に乱れ、交わる異属性魔力のコントラストもまた、決して洗練されたものとはいえない。
 だが、どこか見つめていたくなった。

 破壊と創造。
 その全てを見届けた精霊は、こくりと一度、頭を垂れた。


●未来が信じる決意

『皆、とっても素敵!』
 未来に希望を抱くため、聖夜に賑やかな宴が開かれたファンタ・ブルーム大講堂。
 その会場にいた学園生達の頭の中に、可愛らしい少女のようなソプラノが響く。
 見上げれば、精霊のためにと会場内ステージ上部に設置されていた星のオブジェが、まばゆい光を放っていた。
 星ならそりゃあ光るでしょ、と思うなかれ。
 先程までこのような発光現象は確認できておらず、星の上にお菓子のクッキー人形にしか見えない、輝く動体も視認できなかったはずだ。
 そして脳内に響くこの声とくれば、誰しも同じ結論に辿りつく。
「あっ、精霊様! 良かった~! 元気になってくれたんだね♪」
 今回のパーティーを指揮していた【エミリー・ルイーズム】が嬉しそうな声をあげた。
『うむ! 我、とっても元気になれたのだ♪』
 【デェル】という名を持つこの精霊こそ、今回最も力を失っていた精霊トリミニの一体である。
 だが、今の彼女にはとても弱っていたようには見えない程に活発で、心なしか口調までもエミリー達に感化されているようであった。
『ヒトの子の感じる未来、怖かったり、熱かったり、嫌だったり、嬉しかったり! でも、どこか楽しいを信じてた! この世界で過ごす明日を信じてた!』
 デェルは、星のオブジェから飛び立つと、光の粒子をその軌跡に残しながら、会場中の学園生の側を飛びまわる。
 音楽や踊りを嗜む者、料理に勤しむ者、お二人様の交流を深める者……。
 それは色とりどりに輝く勇者の原石。
 そこに微かに注がれる、淡く美しい未来の輝き。
『皆、キラキラしてる! 明るいキラキラ、昏いキラキラ、でもキラキラ! だからきっと大丈夫!』
 そしてデェルは、テーブル上に残されたお菓子の海に飛び込んだ。
 カシャン、と柔らかな音が鳴る。
 精霊と言えども、力を取り戻したデェルには実体を維持する力がある。
 丁度飛び込んだ皿の上に広がる大海を泳ぐ様は、端から見れば実にベストマッチだ。

『だから、デェルも頑張る! どんな未来が引き寄せられても、きっとヒトの子は未来を掴むのだ♪』

 バリバリバリ、ガシャン!
 デェルがその輝きをより一層強めた時、巨大なガラスが割れるかのような、騒音が轟いた。


●今に訪れる未知(EXTRA-ルート3)

 白み始めた昏い空。勇者暦2019年の聖夜が幕を閉じようとしている。
 今しかないこの一瞬。
 ある者は、子供達の願いを叶える事で、『明日への希望を抱く今』を深めていこうと提案した。
 それに賛同した学園生達は、時に過去を感じながら、時に未来への希望を紡ぎながら……。
 勇者候補生ならぬサンタ候補生として、各々の定めた役目を果たし帰還する。

「もうすぐ第一校舎ですね。どうやら今年のクリスマスも平和な1日で終わりそうだ」
 道すがら合流しつつあった学園生達に向かって、【アルマ・クレーティス】が優しく告げた。
 中世的な顔立ちの彼女が背負うは、まるで天使を彷彿させるような、羽根と光の輪。
 それは天に遣わされた種族の異名を持つ、アークライトの特徴である。
 だが今はその力を発揮されておらず、半透明の状態となって、ちらちらと雪舞う冬空の景色に溶け込んでいた。
「アルマさまもオリヴァーさまもお疲れ様、なのよ。子供達が喜んでくれて良かったわ」
 アルマの声に応えたのは、同じ名を持ちながら、全く異なるドラゴンの翼を持つ【アルマ・アルダマン】。
 一緒になって帰路を歩む【オリヴァー・アンダーソン】も、視線は合わせようとはしなかったが、言葉を続ける。
「学園からのオーダーだ。仕方なくの参加ではあったが、これでプレゼントがない事に泣き喚くうるさいチビ共が減ったと思えば、せいせいする」
「あーんっと、そいつは『プレゼントを配れてよかった』ってことか?」
 気怠そうな金狼のルネサンス、【レアン・フレイン】のその言葉に、オリヴァーは異様な早さで振り向くと、彼との距離を詰める。
「誰が一体いつそんな事を言った? 俺はただ――!」
「けんか、よくない。まま、言ってた」
 オリヴァーの過剰な食いつきをそう判断したのだろう。
 2人の間に割り込むようにして入った【だすく・じむ】が立ち塞がる。
 筋骨隆々な見た目も相まって、長身のオリヴァーから見ても、彼には壁のような存在感があった。
「ふふっ。大丈夫よダスクさん。お姉さんの勘だけれど、きっとこれは喧嘩じゃないと思うわ♪」
「そうそう。男の子には譲れないものがあるってことよ」
 おしとやかで、お姉さんの貫禄を感じさせる2人のローレライ、【櫻井・桜花(さくらい・おうか)】と【シィーラ・ネルエス】が告げると、だすくはそうなのか、と言ってあっさりと引き下がった。
 まだ何か言いたげな様子のオリヴァーだったが、ごほんと咳払いを残し、再び前を向いて歩き出す。
 そんなオリヴァーの様子に、レアンは軽く頭をかいた。
「わりぃわりぃ。別に怒らせるつもりはなくてよ。にしてもなんかこう締まらねぇつーか……終わっちまうのもあっけないな」
 両腕を上げるようにして体を伸ばすと、彼は首の骨をパキパキと鳴らす。
 基本的には、サンタやトナカイの格好に扮してプレゼント配りに徹する学園生達がほとんどだった。
 だが子供達の待つ各地へ向かう道中、魔物の出現地域なども通過するため、そういう場所での襲撃を想定して、護衛役を買って出た者達も中にはいたのだ。
 元々興味のほとんどが『強敵との戦い』に注がれているレアンにとっては、少しでも戦える可能性のあるこの役割を選んだが、どうやら空振りだったらしい。
 そんな彼の肩に手を置きつつ、同じルネサンスの【御影・シュン(みかげ・しゅん)】は励ますように声をかけた。
「まぁ良いではござらんか。理由はどうあれ、拙者達はこの学園にて勇者として戦う定めを選んだ身。いずれ来るその時のために、今はこの平和を楽しむのもきっと一興にござるよ」
 レアンの隣にいた【ビアンデ・ムート】も、シュンの言葉に頷く。
「そうですね。この学園に来て1年。……色々ありましたけど、明日からも、もっともっと色々な事があるんだと思いますから」
 過去を見返し、未来を思い、今へ馳せる少女の呟きを、柔らかく降り注ぐ雪が包み込んだ。
 平和で、静かで、穏やかな時間が暫し流れる。
 そうして学園の敷地内を進むこと数分。
 第一校舎近くの開けた広場では、一足先に戻り一行の帰りを待っていた、【ランド・パトリシオス】が出迎えてくれた。
「おかえりなさい。皆さん無事なようでなによりです。良かったら暖かい紅茶は如何ですか?」
「わざわざ気遣ってくれて感謝するわ、ランド先輩。でも結構よ」
 差し出された木製のコップを手で制して、【リベール・ド・ヴァンセ】は逆に問いかけた。
「それより、学園長はどこにいるかしら?」
「どうかしましたか?」
「これだけの人数がランダムにプレゼント配りへ向かったのに、誰も魔物に襲われなかったの。それが少し気になって」
「なんじゃ、何やら考え込むような表情に見えておったが、汝はさっきからそれを気にしていたのか」
 横からふわりと現れたのは【アウレリア・ダウストリア】。
 エリアルという種族には、耳の長いエルフタイプと、背中に羽が生えているが背の小さなエリアルタイプがいる。
 そのうち後者である彼女は、ヒューマンであるリベールから見れば、文字通りふわり突然に視界へ入ってきたのだ。
 だがリベールは驚きを見せる事無く淡々と続ける。
「ええ。よく言うでしょう? 嵐の前の静けさ、って」
「ふぅむ。なら、一丁占ってみるとするかのう!」
 そういうと、アウレリアはまたふわりと飛んで、その手を天高く突き上げた。
 彼女の足と手のひらに、魔法陣が浮かび上がる。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦、全ては吉兆運任せ。自然友愛(エレメンタリーコール)!」
 それは賢者・導師を目指す者が学び得る業。
 吉か凶か、二分の一の確立で、術者の呼びかけに自然に宿る幼い精霊が応えて顕現してくれる。
「さぁ、今宵の妾の運勢はどっちじゃ?」

 バリバリバリ、ガシャン!

 その時、まるで図ったかのようなタイミングで……『空が割れた』。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ※ここからも凄く真面目なお話ですし、ゆうがく側では史実(公式で起きた出来事)です。
  ですが、今回登場するグロリアスドライヴ様側の皆様はあくまで『IF』となっております。
  そういった、コラボという奇跡の中で生まれる壮大な大人の事情などもあり、
  『全力で熱いゆるふわ時空』が展開されますので、そのあたりもお含み置きの上、
  一時(ひととき)の奇跡をお楽しみ下さい。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「おいおいおい! 何だよこれ!? 空が割れやがったぞ!!!」
 【ダケン・ヴァルガー】が大きな声を上げた。
 その声は、まるで狼が同族に危険を知らせる遠吠えかのように、学園生達の間を駆け巡った。
 一行の視線の先、割れた空の中には、何とも形容しがたい空間が広がっている。
 漆黒の闇。
 その中を駆け巡る赤や青、様々な色の光線。
 割れたガラスのような空の欠片は、シャラシャラと音を立てながら、光の粒子となって消えていく。
 圧倒的な違和感。
 例えそれが何かは理解できなくとも、これが異常な状態であることは、誰しもが理解できた。
「皆さん、今すぐ下がって下さい!」
 ランドのかけ声に、一行は空の割れ目から距離を取る。
「……来る!」

 ドシンと地面が揺れた。

 振り返ったアルマが見たもの。
 どうにか何かに例えようとするならば、虫が近いだろうか。
 だが、およそ10mはあるかと思われるこのサイズ感は一般的な虫のそれを遙かに凌駕していた。
 周囲の状況を探っているのか、何度も左右に振っている部分を頭と仮定するならば。
 ムカデのように細長い体らしい部分からは、これまた足と思わしきものが6本。
 その内頭に近い側の2本は巨大に発達しており、まるで鎌を彷彿とさせる形状だ。
 人間の頭ならば、いわゆる顔が存在する訳だが、この謎の動体には、歯や牙のような鋭利な部分だけが見受けられる。
 この生物(そもそも生物と称する事が正しいかは分からないが)。
 誰がどう見ても、学園生でも理解に苦しむような生命が多様に息づくこの世界においても――。
 目を見張るような異形であった。

「……これが、アウレリア様の呼び出した精霊様?」
 その光景を見た、【カノエ・鹿野(かのえ・しかの)】が、そうこぼした。
「いやいやいや! いくらなんでも空が割れるわけないじゃろう?!」
 アウレリア必死の否定に、まさかの可能性を考えていたカノエも、『そ、そうですよね』と返す。
 ちなみに、アウレリアの自然友愛、今回は失敗した模様である。
「これは嵐が訪れた事を嘆くべきかしら? それとも予感が的中した事を誇るべきかしら?」
「さぁな。けどよ、俺には今ビンビン来てるぜ……戦いの鼓動ってやつがなあ!!」
 レアンが飛び出すのと、謎の生物が動き出すのは同時だった。
「待って! いきなり攻撃を仕掛けるなんて危険すぎる!」
 アルマの叫び声が響く。
 だが、それよりも勢いよく飛び上がったレアンの方が早かった。
「喰らえっ!」
「グャアアア!」
レアンの拳が、謎の生物の鎌のような足とぶつかり合う……はずであった。
「なにっ!?」
 しかしながら、レアンの攻撃は突如出現した謎の壁に阻まれる。
 そして、勢いを殺されたレアンに、巨大な鎌の魔の手が迫った。
「チィッ!」
 本能的に機転を利かせ、空中で身を翻したレアンの頬を生物の鎌が掠める。
 そして地面に降り立った彼は、連続のバク転で大きく距離を取った。
「大丈夫?」
「ああ。面白くなってきたぜ……!」
 顔を流れる鮮血を拭うと、レアンはニヤリと笑って見せる。
 それを見たリベールは、すぐに意識を目の前の異形に戻した。
 謎の生物は、その勢いを衰えることなく、こちらへ向かってきている。
 どうやら今ので完全に敵対認識を持たれたようだ。
 先程以上に、殺気のようなものを強く発しながら、鎌を振るってきた!
「やらせません!」
「うおぉぉぉ!! 祖流、解放ッ!!!」
 しかしそこにレアン達を守るようにして、巨大な盾を構えたビアンデと己の内にある狼の力を解放したダケンが割って入った。
 だが、2人がかりでも一瞬その勢いを留めるのが精一杯で、振り払われてしまう。
「きゃっ!」
「うぉっ!?」
「おで、まもる!」
 危うく、遠くに吹き飛ばされてしまいそうであったビアンデ達であったが、咄嗟に飛び上がっただすくが体を張って受け止めた。
「ふたりとも、すごい。けが、ないか?」
「は、はい。だすくさん、ありがとうございます」
「助かったぜ」
「だすく殿、ナイスフォローでござるよ! それにしてもあの異形、先程レアン殿の攻撃を弾いたように見受けられ申したが……」
「どうやら、自分の攻撃はそのままこちらに与える事ができるみたいですね」
 シュンの手を借りながら、ビアンデはそう言って立ち上がる。
 ダケンもまた体制を立て直すと、お尻についた雪をパンパンとはらった。
「こっちの攻撃は弾いて向こうの攻撃は通る? だー! 面倒くせぇな!!」
「なら……こういうのはどうかしら!」
 今度はその様子を見ていた桜花が、無数の魔力弾を放つ魔法、『マドガトル』を繰り出した!
 水色に輝くマドの大雨は、確実に何故の生命体の姿を捉えていた。
「ほら、おかわりもあるわよ~!」
 シィーラもまた、『アクラ』の魔法で水流を巻き起こし、追撃する。
「グャアアア?!」
「おおっ、やったかのう!?」

 アウレリアの声の後に暫しの沈黙。
 ……魔力と水の霧が晴れたその向こうには。

「グググググ……」

 異形は未だ健在していた。

「くっ。しつこい虫けらだ。ここは俺が……」
「お待ち下さいオリヴァー様。どうやら、魔法による攻撃は、効果があるみたいです!」
 カノエの言う通り、先程までに比べて謎の生命体の動きは明らかに悪くなっていた。
 しかも、これだけの攻撃を受けているにも関わらず、謎の生物は桜花達に反撃しようとはしなかった。
「あの生き物……きっと遠くを攻撃することができないのね」
「だとしても、桜花さん達の魔力が切れる方が先になってしまうはず。僕がひきつけますから、アルマさん達は、その間に学園長を呼んで来て下さい!」
 そう言うと、アルマはその力を覚醒させた。
 暖かな光が彼女の体から発せられると、羽根と光の輪が、まるで炎を灯したロウソクのようにじんわりと光を帯びていった。
「でも、アルマさま――」
「そう長くはもたないと思から。……だから頼みましたよ、アルマさん」
 ドラゴンのアルマに思いを託し、天使のアルマはその羽尾使って大きく空へ飛び上がる。
 そして勢いよく接近すると、鎌の届かないギリギリの距離を跳び回りながら、弓による攻撃を開始し始めた。
「さぁ、一度学園に避難を! 学園長を呼びにいきますよ!」
 後ろ髪をひかれるような思いを抱きながら、一行はランドの言葉に従い、学園へと避難した。


●G(世界)線上の来訪者(フィッシャー)~異能とロボと純金の彼~

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(※コラボで訪れた皆様は、ここは読み飛ばしても……ここから目を皿にして読んで頂ければ大丈夫です)

 時は勇者暦2019年12月25日明け方!
 かつて魔王と勇者が世界をかけた決戦を繰り広げたこの世界においてー!
 明日の勇者を目指すべく、老若男女、人間、ドラゴン、液体人間、エルフとフェアリー、魔法人形、幽霊、天使的な存在達ー!
 彼らはその垣根を越えて、互いのパトスをぶつけ合いながら、汗と涙の青春ストーリーを謳歌していたー!
 勉強、人助け、恋にグルメツアー?!
 毎日が発見と驚きと自由と趣味嗜好とその他諸々の連続に溢れていた今日この頃ー!
 あ、それからここ最近魔王の手先となる魔族の暗躍が~……う~ん、このあたりは長くなるからボツ!

 そんな『ゆうしゃのがっこ~!』に、いきなり、見慣れない虫っぽいやつが大量発生!?
 え~! メメたん、うじゃうじゃしてるのは苦手ってカンジ~☆
 こんなのはまるで悪夢……ナイトメア! ってやつだな!
 でもでも、チミ達に溢れるイマジナリーは、この世界のチミ達にも宿っているはずだー!
 もちろん、勇者として二年目の生活を送るチミ達にもな♪

 というわけで、来たれ明日の勇者となる卵達よ~!
 この世界で夢と希望を追いかける次の一歩は、チミ達の活躍が鍵になるぞ~!

(※ご覧の文章は、オレ様の検閲と提供で、お送りしたのだ☆)

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 学園生達は謎の異形に遭遇した。
 だがその異形、実は1体だけではなかったのだ。
 学園にいた教師や上位ランクの学園生達は、様々な場所に散って謎の異形の迎撃に当たるため、出払ってしまっていた。
 そして、異形に遭遇した学園生の1人が学園長室に駆け込むのと、学園長室に誰かが転移してくるのは、ほぼ同時であった。
「学園長、丁度良いところに。実は――」
「おおっ、ランドたん。おっすおっす! 遅くなって悪かったな!」
 特別な転送魔法石を使って、この世界のどこかから自室へと帰ってきた魔法学園フトゥールム・スクエアの学園長【メメ・メメル】。
 歩くトラブルメーカーこと、学園一の問題児とも影で呼ばれる彼女の後ろには、銀髪のダンディーでとてもクールな叔父様が立っていた。
「そ、そのお方は?」
 【ランド・パトリシオス】の問いかけに、その男は髪をかけ上げるようにしながら、白い歯を見せつけるようにしてこう言った。
「良い問いかけだ。この世界において今は意味を持たないこの名を、君は一足先に脳内辞典に刻むことになる。だがこの名が意味を持ち、君がそのバリューに気づけた時、またこの名を呼ぶがいい……」
 ――私の名前は、【レイ・フィッシャー】だ。――
 キラリと光るその目は、チャンスを確かに掴む慧眼であり、多くの人々に愛されるような、43年間の経験を伝えるような目をしていた。
 まぁ要するに、『イケメンだし仕事めっちゃ出来るけど極めてコメディアン』的な輝きも放っていたのだ。
 見慣れない装飾品、尊大なその態度、そして何よりもある程度鍛え上げられた体に張り付くピッチピチな学園の制服が気になったが、ランドはそれを問わないことにした。
「それで、学園長、実は――」
「ああ、ナイトメアの件だな。事態は把握している。ではいこうか、メメル殿、ランド君。時間は有限だ。無駄にはできない」
「おっけ~」
「えっ、あっ……」
 何故かレイを先頭とした一行は、足早に学園長室を去った。


 学園長室のある第一校舎の外に出ると、そこでは【アルマ・クレーティス】という一人称僕系天使型王子様な少女(イケメン)が、謎の異形と戦っていた。
「学園長、あれが報告しようとしていた――」
「ふむ。ナイトメアだな。あれは攻撃型のマンティス。サイズは……ざっと10m。中型クラスか」
「……え?」
 良く分からない単語の羅列にも、メメルに話しかけるよりも早くこちらの聞こうとしている事に答える異常は反応速度にもついていけず、ランドは些か混乱してしまっていた。
「なるほどなぁ~。じゃあ、取りあえずあの虫みたいなやつは悪いヤツなんだな!」
「そういうことだ。だが気を付けてほしい。ナイトメアには『リジェクション・フィールド』がある。通常兵器による撃破はまず不可能だ」
「しかし学園長。先程戦闘を行ったところ、魔法による攻撃には一定の成果を得られていました」
「ほむほむ。ま、取りあえず試してみるのだ!」
 メメルが杖を軽く振りかざすと、先端に巨大な魔力の塊が生成されていく……!
「んじゃまずはこんくらいで。『マド-ガ』!」
 放たれた高圧の魔力弾は、丁度アルマがナイトメアと呼ばれる異形から距離を取っているタイミングで着弾する。
「グググャアアア??!!?!」
 次の瞬間。
 ナイトメアは跡形もなくその場から姿を消していた。
「……マーベラス。やはり私が見込んだだけの事はある」
「ふへへへ~もっと褒めると良いぞ! ランドたん、取りあえず魔法で攻撃マシマシだ! と他の所で戦っている皆に伝えにいってほしいのだ!」
 メメルに頼まれ、ランドは近くにあった魔法の箒へまたがると、空へと飛んでいった。
(眠っていた間に訪れてしまったこの異世界だが、やはり素晴しい技術が眠っているな。良い人材も揃っている。これは何としても全てを研究し、フィッシャー社の技術として持ち帰るとしよう)
「よ~し! 取りあえず他のナイトメア? も、ちゃちゃっと消し炭にしにいくとするかー!」

 こうして、ナイトメアが持つ謎の防壁に苦戦していた学園側であったが、魔法の攻撃が通用するのが判明した事と、メメルの活躍により、この事態は大きな被害を出すことなく沈静化したのであった。



 そして1時間後。
 レイと、メメルに呼び出された一部の者達との間で、今回の事態に対する対策会議が行われた。

「さて。今回の事態だが、恐らく空の割れ目が『インソムニア』のような役割を果たしていると推察される」
「いんそむにあ……?」
 学園内のアイドル少女、【エミリー・ルイーズム】が首をかしげる。
「端的に言えば、ナイトメアの拠点。今回でいえば、異世界転移装置だ。この世界では、異世界に関する来訪者などは存在しないのか?」
「そういえば、最近の新入生の子がそんなようなこと言っていた気がするメェ~」
 羊の角と尻尾を持ち、睡眠と魔法に詳しい学園の先生【メッチェ・スピッティ】が思い出すようにしてそう言った。
「なるほど。前提とするナレッジに一部相違があるようだ。とにかく、あそこから敵が出現すると考えてくれれば良い」
「え~。キキ、敵よりご飯が降ってきてほしいの~。それより、クリスマスのご飯がもっと食べたいの!」
 奴隷服を華麗に着こなす【キキ・モンロ】が相変わらずのテンションでそう答える。
「おーし分かった! じゃあ、取りあえずあの穴を埋め立ててバッチシバッチシ! って感じだな!」
「ふっ。これだけの会話で全てを理解するとは、流石はメメル殿だ」
 およそ120%の確立で理解放棄をしただけなのだが、結果だけ見れば、レイの見解とメメルの判断に相違はなかった。
 一行は、学園の外に出ると、上空に開いた割れ目の前に集まる。
「へぇ~。やっぱり大きいね。この向こうに別な世界? っていうのがあるんだ~」
「あまり実感はわきませんが……。このような異常事態を見せられては、そう納得する他ありませんね」
 学園の新入生担当教師【コルネ・ワルフルド】と、生活委員長も務める【テス・ルベラミエ】を始め、割れた空を見つめながら各々が感想を漏らしていた。
 丁度その時、空の穴からも微かな声のような何かが漏れ聞こえてきた。
『し…………しろ…………ば……つ……ろ……!』
「えっと、なんだか変な声が聞こえてきてる気が……」
「ん~?? どうせ閉じられたくない穴の大いなる意志か何かだろ???」
『い…………だ…………く……す……す……お……な……!』
「それにしても、すっごく心のこもった声のような~……」
「分かった分かった! じゃあレイたん、コルネたんに幻聴が聞こえ始めたようなので、これをぶっ壊そうと思うのだ☆」
「了解した。お手並みを拝見させて頂くとしよう」
「ほいほ~い。そんじゃ、でっかい花火を打ち上げるぞ~!!!!」
 魔力を生成しながら、メメルはふと考えていた。
(そういや、今年はあんまりクリスマス満喫できなかったな~。ま、いっか!)
 そして杖を振るうと、特大の魔力を光線状の帯にして注ぎ込んだのである!
「メメたん☆突貫埋め立て☆マドバースト」
『ぐろwどdrftgyらすきlp!?!?!』
 しかし、今度は幻聴などとは言えないほどに大きな声のような音が、穴の中から響き渡ってきたのだ!
「あの、学園長? なんだかマズいような気が……」
「んー。取りあえず~……えいっ☆」
 メメルはレイを魔力の玉で包み込むと、シャボン玉を弾くように優しくその場から突き放した。
「レイたん! 何かやばそうだからオレ様がいない間は宜しくなのだ☆」
 そしてその言葉を最期に……。
 学園長メメ・メメルを始めとする複数人は、謎の穴から発せられた光に飲み込まれてしまうのであった。



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