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トロメイア大劇場の大変な一日


ストーリー Story

 午後、『八色の街』トロメイア、オクトー広場。

 地元民や巡礼客や観光客など、人で溢れかえり賑やかな空気に包まれている中、相反する空気を纏った人達がいた。
「少しいいですか? 私はトロメイア大劇場で働いている者なんですが、力を貸して貰えませんか?」
 作業服を着た女性ヒューマンが焦った調子で、観光客に申し訳なさそうな調子で声を掛けていた。
「実は、出演予定だった旅の楽団であるアレグリ楽団が食べ物にあたって寝込んでしまい空きが出てしまって困っています。その楽団は素敵なのですが、不運の楽団とも言われて事故や災害に遭ったり病気や怪我を負ったり、とにかく不運にとりつかれているらしく、なかなか公演に出会えないんです。今回も……」
 挨拶の次に続けるのは、女性ヒューマンが抱く困った事情についてだ。
「それで、音楽や演劇や芸の披露をお願いしたいんです。心当たりのある楽団には声を掛けたのですが、都合が付かなかった上にアレグリ楽団にあてがわれた持ち時間が多くて、困っているんです。楽器とか衣装とか役者とか必要な物はお貸ししますので、どうか、力を貸して下さい。出演までもうすぐなんです」
 事情を話し終えると、女性ヒューマンは再度出演を請うた。
「いや、無理だよ……。他をあたってくれ」
 話を聞いていた観光客は、申し訳なさそうに去った。
 残された女性ヒューマンは諦めず、別の訪問客に声を掛けに行った。
 よく見れば、女性ヒューマン以外にもあちらこちらで、トロメイア大劇場の関係者と思われる者達が必死に手助けを求めている姿が見られた。

 助けを探しに行っている間、トロメイア大劇場では、滞りなくプログラムが遂行されていた。
「まだ助けは来ないのか」
「このまま穴空いちゃ、来た人をがっかりさせてしまう。それだけは嫌だ」
「お客様を楽しませてこその劇場なのに」
 プログラムが一つ終わる度に関係者達は、冷や汗を流しながら助けは今かとそわそわしていた。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-04-30

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-05-10

登場人物 5/8 Characters
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《不屈愛の雅竜天子》ミサオ・ミサオ
 ドラゴニア Lv18 / 魔王・覇王 Rank 1
「ミサオ・ミサオ。変な名前だろう。 この名前は誰よりも大切なあの子からもらったんだ。」 名前はミサオ・ミサオ。無論本名なわけがない。 外見年齢は20代、本年齢は不明。 本人曰く100越えてんじゃないの、だとか。 職業はギャンブラー。 学園に入る前は彫刻師、薬売りなどいくつか手に職を持っていた。 魔王コースを選んだのは、ここが楽だと思ったからだそうだ。 遠慮なくしごいてくれ。 性格はマイペースで掴み所がなく飄々としており、基本滅多に怒ることがない。 面白そうなことや仲の良い友人が居れば面白そうだとついて行き、 好きな人や大切な人にはドロドロに甘やかし、自身の存在を深く刻み付け、 飽きてしまえば存在を忘れて平然と見捨てる外道丸。 いい子には悪いことを教えたり賭け事で金を巻き上げ、 そして悪友のオズワルドや先輩先生にこってり絞られる。 恋愛したい恋人欲しいと言っているが、一途で誰も恋人を作ろうとしない。 たくさん養ってくれる人大好き。 趣味は煙草と賭け事。 特技は煙草芸、飲み比べ、彫刻。
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《新入生》ウェルカ・ラティエンヌ
 アークライト Lv15 / 王様・貴族 Rank 1
■身長:152cm ■実年齢:14歳 ■髪形:腰までのストレートロング ■容貌:ややたれ目気味の目元の、大人しそうな容貌の美少女 ■体型:身長は小柄ながら、バストやヒップはかなり大きく、非常に発育は良いが、ウェストや手足等は細めの、極端な体型 ■性格:基本的には内向的で大人しく、穏やかな性格だが、金銭面には非常に厳しく、利害が絡むと冷酷になる面も ■コンプレックス:桁違いに豊満な上、未だに発育途上の胸/[誕生日]の時点で、既に120cmに届くとのこと ■体質:体重が増えるときは、その殆どが胸に集まり、痩せるときは他から痩せるタイプ ■服装:背中の開いたドレス/色は特に決まっておらず、気分次第で変えている ■特技:経営・商売に関連する豊富な知識/一通りの礼儀作法/実は家事全般
《勇往邁進》アレックス・ジェット
 アークライト Lv7 / 芸能・芸術 Rank 1
本名:アレクサンドラ・ジェット 年齢:17歳(覚醒時の年齢は16歳) 身長:165cm 体型:スラりとしたモデル体型 髪型:剃り込みを入れたアシンメトリーのボブ。ベースはグレーでインナーカラーは赤。青や黄色のメッシュを入れている。 服装:パンクファッション。制服は改造してある。 性格:ロックな見た目とは裏腹に、普段の性格は落ち着いている。真面目にコツコツと物事に臨む。ややクール系。 音楽の事になると一転スイッチが入りテンションがぐーんと上がる。バーニンッ! 好き:音楽を響かせる事。相棒(ギター)の手入れ。 苦手:緊張する場面(何時か克服!)。マナーの悪い客。 ★口調(通常) 二人称:アンタ、名前+さん、くん ~だよ。~だね。 「アタシはアレクサンドラ・ジェット。アレックスって呼んで。よろしくね。」 ★口調(ロック) 二人称:名前のアニキ、名前のアネゴ ~だぜ!~だろ! 「〇〇のアニキも!○○のアネゴも!サイッコーに燃えてるぜぇ!」

解説 Explan

 キャンセルとなった楽団の代わりに音楽や演劇、芸など何でも構いませんので観客を満足させる出し物を披露して下さい。
 楽器や衣装など出し物に必要な道具は、大劇場から借りて下さい。
 出演だけでなく観客として、出し物を見学したり声援を送ったりする事も可能です。


作者コメント Comment
 今回の舞台は、トロメイア大劇場になります。
 出演者として活動したり観客として出し物を楽しんだりと、ひとときを過ごして下さい。


個人成績表 Report
シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
勉強になるかなって思って鑑賞しにきたけど…
まさか出演することになるなんてね

事前準備
・靴の用意(鉄の板が底に貼り付けてあるもの)
→無ければ今履いてるブーツの底に硬貨を貼り付ける

技能「音楽」「踊り」

自分の出番が始まる前に観客へ声をかける
「今から俺が行う演目はダンスであり、演奏です
もし、見て、聞いて、楽しいと感じたなら…
どうぞ手拍子を。皆様と音楽を楽しめることが、俺にとって一番ですから」

言い終わった瞬間、劇場に響くように床を踏み音を鳴らす
リズムを作るようにまずは一定の間隔で
徐々に床を踏む回数を増やし、テンポと音を増やしていく
最終的には舞台全てを駆け回るように踊り奏で

ミサオ・ミサオ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:195 = 65全体 + 130個別
獲得報酬:6000 = 2000全体 + 4000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【心情】
人が足りないのかぁ。
こういうのはミサオにお任せを。
とはいっても、火吹き芸と煙草芸、手品くらいだけどなぁ。

【事前準備】
所持品に入ってる度がかなり高めの酒、
劇場から借りたたいまつ、煙管を持ち込み。
何かがあった時の対策に水を用意し、舞台の隅に置きます。
手品用に大量のトランプを。

【芸】
出だしが肝心だ。
最初は気を引かせるために、派手に火吹き芸でもやりましょか。
その後は少し煙草芸を、
そんで【挑発】や【威圧感】で注意を引かせながらトランプの手品を行おうか。
2回目はわざと失敗して笑いを寄せつつ、それを複線にして成功につなげて見せよう。
最後はたくさんのトランプを上にばら撒いて紛れる様に姿を消そうかな。


朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
私に出来そうな事は拳法の型の演武くらいなのでそれを行いますわ。一応チャイナドレスは公演用の華麗な物をお借りし着替えますわね

演じる順番は何番目でも。舞台に上がったら笑顔で観客に一礼

「これから拳法の型を演じさせていただきますわ」

と挨拶し、構えを取ると龍、虎、豹、蛇、鶴の五つの獣の名を関した拳法の型を次々演じて参りますわ。演じ終わったら再び笑顔で観客に一礼

「では次に分厚い板を拳で割りますわね」

と劇団員様に用意していただいた分厚い板を前に呼吸を整え、気合いを入れると

「破!」

真中正拳突きを一発、真っ二つに割ってみますわ。済んだら

「お粗末様でした」

と一礼し退場。観客の皆さま喜んで下さいましたでしょうか?

ウェルカ・ラティエンヌ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
状況は了解致しましたわ。
それでは、[掌編]乃至[短編]の小説の書かれた[本]を幾つか、ご用意いただけますでしょうか?

私の[演目]は、[本の朗読]になりますわね。
【人心掌握術】を応用して[お客様の様子]を見つつ、【会話術】で緩急をつけて、少しでも楽しんでいただける様、お話させていただきますわ。

この形でしたら、選ぶ[本]を変える事で、[時間の調整]はし易いですから、他の皆様の演目を拝見して、[残り時間]をきっちりと埋められるような[お話]を選択しますわね。
方向性としては、物珍しさも考えて、出来るだけ[あまりこの辺りでは知られていないお話]が宜しいでしょうか。

出来る限りの協力はさせていただきますわ。

アレックス・ジェット 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
・目的
観客を楽しませ、熱くさせる

・心情
何時か舞台へ、と思っていたけれど…こんな早くに機会が来るなんてね
緊張でちょっと震えてくる。でも…でも!折角の舞台なんだ!
目標は高く!楽しませる以上に…アタシの音楽を好きになって貰おうじゃないか!

・演目
アタシの相棒『ソウル・オブ・ギター』の熱い演奏と、アタシの歌でノッて貰うぜ!
…とはいえ、観客はアレグリ楽団の演奏を待ってたんだ
行き成り激しく行ったって熱は伝わらねぇよな
楽曲の始まりは静かに、クールに…でも熱いビートを内に秘めて!
弱い火がだんだんと燃え盛る!そんなナンバーで挑むぜ!
一人でも多く、この熱が届く様に!

皆の演目は舞台袖でしっかり見届け、大きな拍手を贈る

リザルト Result

●1章 そろそろ開演
 午後、『八色の街』トロメイア、オクトー広場の一角に佇むトロメイア大劇場。

 劇場の責任者が舞台に立ち、アレグリ楽団についてお詫びを述べ観客達をがっかりさせている間、楽屋で衣装替えを終えた助っ人達が舞台袖に集結していた。
「勉強になるかなって思って鑑賞しにきたけど……まさか出演することになるなんてね」
 【シキア・エラルド】は、まさかの展開に苦い笑いを浮かべる。
「……無ければ、底に硬貨でも貼り付けようと思ったけど、さすが大劇場だね。この衣装も希望通りシンプルだし」
 そして、シキアはおもむろに履いている靴の裏を見て感心した。靴の底には、鉄板が貼り付けてある上に演目に集中して貰うためと、シンプルながらも格好いい衣装である。
「アタシも何時か舞台へ、と思っていたけれど……こんな早くに機会が来るなんて……みんなの演目は楽しみだけど」
 舞台用の映える衣装を借り、見事なメイクを施して貰った【アレックス・ジェット】が言葉を挟んだ。
「確かに、みんなの演目も楽しみだよね」
 楽しい事が好きなシキアは、笑顔で同意を示した。
「まあ、これも義を見てせざるは勇無きなり! 困っている人を助けるのも武人の務めですわ。皆さん、頑張りましょう! 私もまだ未熟者ですが精いっぱい務めさせていただきますわ♪」
 借りた公演用の派手やかなチャイナドレスを纏う【朱璃・拝】(しゅり おがみ)が言葉を挟む。劇場の困っている様子から協力を決めたのだ。
「……人が足りないなら、お任せをと来たものの、出来るのは火吹き芸と煙草芸、手品くらいなんだよなぁ」
 【ミサオ・ミサオ】が演目の道具を確認しつつ言った。
「私も出来そうなのは、拳法の型の演武と板を割るくらいですわ」
 朱璃は、用意して貰った分厚い板を見ながら言った。
「……私も出来る限りの協力をと、掌編ないし短編が書かれた本を幾つかと思いましたが、これだけ用意して頂けるなんて……方向性としては、物珍しさも考えて、出来るだけあまりこの辺りでは知られていないお話を……」
 【ウェルカ・ラティエンヌ】は、話に加わりながら用意して貰った本の確認をしていた。
「学園生によるパフォーマンスということで……」
 ウェルカが決めたのは、纏う『魔法学園制服:赤』に相応しい物だった。
(……楽しいという感情を引き出し易いコメディ要素の強いものを軸に、客層を見て活劇要素や恋愛要素等に切り替えて、話を選択して行きましょう)
 ウェルカは、本の選択の次は読む物語に頭を巡らせた。
「出だしが肝心だ。一番はオレに行かせて貰おうか」
「私は最後だと有り難いですわ……時間を埋める為と客層を見て話を選択するので」
 ミサオとウェルカの希望を取り入れた出演順で、劇場責任者の挨拶終了後、演者として観客としての舞台が始まった。

●2章 一番手
「皆々様、ようこそおいでくださりました! 私はミサオ・ミサオ。本日はどうぞ、ゆるりとご堪能くださぁい!」
 劇場責任者のお詫びで盛り下がった空気の中、登場したミサオは劇場の隅々まで挨拶を響かせる。
(気を引くために、まずは派手に火吹き芸でもやろう。その後は少し煙草芸をして……)
 手にある松明に点火し、口にお酒を含む。舞台の隅には万が一に備えて水も用意されてある。
「……!!」
 ミサオは点火した松明に向かってお酒を霧状に吹きかけ、巨大な炎に変化させる。
「楽団が来なくて帰ろうと思ったけど」
「期待してもいいかな」
 観客達の気分は上がり、ミサオの思惑は成功する。
(よし、お次は煙草芸だ)
 ミサオは頃合いだと口を濯いでから、高級煙管を取り出した。
「とざい! とぉーざぁい! 今から披露するは、流れては消える煙の遊戯! ご覧あれ!」
 ミサオは煙管に火をつけ口にくわえ、煙を吐き出し、特技の煙芸を始める。
「ふぅぅ」
 輪の形をした煙やその輪に煙をくぐらせたり、作った煙玉を跳ねさせたり手で空気を流すように遊んだりと煙を手足の如く操る。
「すげぇ」
「手慣れてるな」
 観客達は瞬き一つせず、ミサオの煙草芸をわくわくと見守る。
 一通り、煙芸を見せた後ミサオが取り出したのはトランプだ。
「さあさあさ、我が演目の最後を飾るは手品でござい!」
 始まるのは、観客に選んで貰ったカードを当てるという定番の手品だ。
 1回目は、普通に成功させ観客から歓声を貰う。
「お次は、そこのお兄さん、どどんと、選んでくださぁい!」
 2回目は手品に乗らない客を相手に笑顔と巧みな言葉で挑発し、カードを選ばせ先と同じ手順でカードを引き当てる。
「違うぞ」
 しかし客は首を横に振った。
(続けて成功するよりも、失敗して笑いを寄せつつ、それを伏線にして成功につなげて見せたらもっと、盛り上がるはずだ。さて……)
 失敗はわざとである。一層盛り上げるための布石だ。
「ううっ……」
 突然、ミサオが苦しそうに口元を隠したと思ったら、手元に隠した裏面のトランプを1枚口から吐き出した。見せかけだが、精緻な技故観客達は皆錯覚してしまう。
「お兄さんが選んだカードはこれだぁ!」
 ミサオは魔王のオーラを纏いつつ堂々と吐き出したカードを表面にし、客を驚かせた。
(そろそろだ)
 頃合いだと読んだミサオは、舞台後方に下がった。
「火吹き芸に煙草芸と、見事でしたわね。次は私の番ですわ」
 すると、朱璃が速やかに準備に入った。
「最後にこの身を消してみせましょう!」
 ミサオは沢山のトランプを上にばらき、客の注意がそちらに向いている隙にトランプに紛れて舞台裏へ移動した。
 同時に舞台装置が起動し、次の演目へ。

●3章 二番手
(さあ、出番ですわ。今回は実戦ではなく舞台、魅せる事とお子様もいらっしゃるので、なるべく扇情的にならないように気を付けましょう)
 朱璃がトランプの雨の中、迫り出し装置で舞台に上がる。
「さっきのお兄さんはどこに行ったの?」
「これも手品?」
 現れた朱璃の姿に観客達は驚き、中には手品が続いていると思う者もいる。
「皆様こんにちは。拝朱璃と申します。どうぞお見知りおきを」
 朱璃は笑顔で一礼する。
(ふふふ、驚いていますわね)
 その心中では、観客席の様子を楽しでいた。
「これから拳法の型を演じさせていただきますわ」
 続いて、朱璃は構えを取り演目に移る。
「龍!」
 観客席からでも動きが見えるよう大きく派手に魅せる。
「虎!」
 動きだけでなくスピード感も失わない限界の速度を心掛け、持ち前の素晴らしい運動能力を発揮させる。
「豹!」
 衣装が衣装だけに一挙手一投足ごとに豊満な胸が揺れ、服の裾が翻り、肌が見え隠れと色気をはらむ。ただし、小さな観客に気を遣い健康的なものだ。
 この後、残りの2つの型である蛇と鶴を華麗にかつ鋭く披露する。
(皆様、楽しんで下さいましたでしょうか……気にはなりますが、一番大切なのは、自身が心から楽しむ事。自分が楽しくないのに見ている人が楽しめる筈ありませんもの)
 型が終わり笑顔で一礼する朱璃は観客の反応が気になるが、舞台に集中する。
 続いて出て来るのは、劇場に用意して貰った分厚い板。
「次にこの分厚い板を拳で割りますわ」
 朱璃は板の前に立ち、変わらぬ笑顔を観客に向ける。
 観客席から仕掛けを疑う声がちらほら。
「仕掛けも何も無いご覧の通り、ただの板ですわよ」
 朱璃は板を軽く叩いて訴え、観客達を説得し大人しくさせた。
「……」
 気合を込めて狙いすまし、板の中心目がけて振り下ろす。
「破!」
 『真中正拳突き』を受けた板は見事に真っ二つに割れた。
「お粗末様でした」
 朱璃は拍手がわき起こる中、一礼し退場する。
(やはり体を動かすのは楽しいですわ♪)
 やり切ったと満足げな笑顔を浮かべながら。

●4章 三番手
「今から俺が行う演目はダンスであり、演奏です。もし、見て、聞いて、楽しいと感じたなら……どうぞ手拍子を。皆様と音楽を楽しめることが、俺にとって一番ですから」
 三番手として登場したシキアは、舞台の中央に立った。
 挨拶が終わると同時に会場の照明が一斉に消えた。
(かっこつけたはいいけどタップダンスを人前で、しかもこんな舞台でやるのは初めてなんだよな……あぁ、緊張してきた……でも、なんだろう、すっごく楽しみだ)
 暗闇の中、シキアは心地よい緊張とわくわく感で高揚し始めていた。
「……」
 そして、シキアは上半身を動かさず小気味よく床を踏みならす。
 劇場に響き渡るシキアの奏でる踊りは、観客達の興味を湧かせる。
(よし、次はリズムを作るように)
 一定の間隔で、自身の両の足という楽器でステップという巧みな演奏を披露する。
 ここで、一筋の光がシキアを照らす。
(……明かりがついたところで……)
 自身の姿が見えるようになった所でシキアは、くるりと一回転し、カツン。目に見えるからこその動きを加えていく。
「……♪♪」
 音楽やダンスが好きなシキアの動きには自然と楽しい空気が発せられ、観客にも伝わり自然と手拍子が生まれる。
(もっと軽やかに)
 シキアは薄茶色の髪を揺らし飛ぶが如く軽やかに床を鳴らし、時に力強く生み出す音に緩急をつける。
(徐々に速く、激しく)
 手拍子に一層気持ちが盛り上がり、次第に床を踏む回数と共にテンポと音を増やす。
(もっと、もっと)
 持てる音楽の技術が活かされてか、どんな小刻みで速くとも足がもつれたり音が乱れる事はなく、ひたすらに観客を魅了する。
(あぁ、楽しいな)
 上りつめる気持ちはシキアの動きにも現れ、ついに照明を引き連れ舞台全てを駆け回る。
(本当に音楽は楽しい)
 小刻みに音を踏み、腕を振りと下半身だけではなく、上半身も使い体全体で踊るが如くだ。
 そうして、最後のステップを打ち鳴らし
(……そろそろ、次の準備をしてくれ)
 演目を終いとしつつ舞台袖に合図を送った。
(……出番……あぁあ、緊張してきた……こんなに楽しいタップダンスの後かぁ)
 手拍子をしていたアレックスの両手が緊張から少し震える。何せ、こういう緊張する場面は苦手だから。
「……」
 そんな中、演目を終えたシキアは丁寧に一礼し、一緒に踊った光は消え、会場に再び暗闇が訪れた。
(来てくれた人は楽しんでもらえたかな)
 拍手が響く闇の中、シキアはやり遂げたという満足感と共に、静かに舞台袖に引っ込んだ。
 会場はなおも闇のまま。

●5章 四番手
(……アタシの出番)
 アレックスは、舞台袖からシキアに大きな拍手を送りつつも緊張していた。
(折角の舞台なんだ! 響かせたい音楽となりたいアタシを胸に行くんだ! この衣装とメイクと一緒に舞台に上がる覚悟をするんだ!)
 普通の女の子ではなくなった時の事、そんな自分を救った音楽などを脳裏に、アレックスは自身の姿を見下ろし、心を奮い立たせた。
「緊張で震えても……んなもの、笑い飛ばす! 笑顔で、弱っちい自分を振りきって、歌いきるんだ!」
 アレックスはようやく覚悟を決めた。
「よしっ、この劇場に、アタシの歌を響かせてやる! 行こう、相棒!!」
 そして、相棒の『ソウル・オブ・ギター』のネックをしっかりと握り、堂々と闇に包まれた舞台へ。

 闇に包まれた舞台。
(さあ、目標は高く! 楽しませる以上に……アタシの音楽を好きになって貰おうじゃないか!)
 アレックスは音楽という事でスイッチが入り、舞台袖とは別人のようだ。
(とはいえ、観客はアレグリ楽団の演奏を待ってたんだ。いきなり激しく行ったって熱は伝わらねぇよな)
 同時にカラフルな光がアレックスを照らし出す。観客席は変わらず闇のまま。
(始まりは静かに……クールに……でも熱いビートを内に秘めて!)
 アレックスは熱い思いを込めて、巧みな技術で静かに奏でる。
(……大丈夫だ、震えるな、笑い飛ばせ!)
 ギターのネックを持つ手が僅かに震えるのを見たアレックスは、自身を鼓舞し天使のような笑顔を浮かべ、緊張を吹っ飛ばして観客達の心を虜にする。
(弱い火がだんだんと燃え盛る! そんなナンバーで挑むぜ!)
 ギターを爪弾く指が次第に速くなる。
「さあ、相棒の熱い演奏とアタシの歌でノッて貰うぜ!」
 演奏だけでなく、熱い魂のこもった歌唱も加わる。
 アレックスは張り裂けんばかりの大音量で想いを叫び、時に熱き魂のままに飛んだり跳ねたり舞台を歩き回ったりと情熱的になる。
「うぉおおお!!」
 アレックスの演技、いやライブに飲まれた観客達は次々に腕を高々と振り上げ、歓声を上げた。見ているだけで気分が上がるほどだ。
 ついに、最後の音が訪れる。
(これで終わりだっ!)
 アレックスは額から流れる汗を弾けさせながら、最初と変わらぬ巧みさと熱量で終いを飾った。
(今のアタシができる全力をぶつけきる事が出来たはずだ!)
 そして、アレックスは観客達にしっかりと礼をした。
「次はウェルカ・ラティエンヌの演目だぜ! 楽しんでくれよなッ!」
 最後にアレックスは次の演者を軽く紹介してから舞台袖に引っ込み、幕が下りた。

●6章 五番手
 幕が上がり現れたのは、椅子とテーブル、帽子掛けスタンド。テーブルには数冊の本にコップと水差しが置いてある。足りないのは椅子に座る人物だけ。
「さて、参りましょうか」
 その人物たるウェルカは、『魔法学園帽子:赤』を被り、ドアの開く音と一緒に舞台袖から登場し、端に用意された一角へ。
「あの制服って、学園の学生じゃん」
「わぁ、すごい胸が大きい子。あたしなんか絶壁なのに」
「あの子が紹介されてたウェルカって子か」
 その間、観客席から声が上がる。
(……胸……)
 聞こえたウェルカは、コンプレックスの豊満な胸を一瞬見下ろした。
(……時間の調整がし易い本の朗読で、この残り時間をきっちり埋めましょう)
 到着すると、頭の帽子をスタンドに掛け、椅子に座り本を手に取る。
「……これから私が読むのは『過去の学園生の伝説』ですわ」
 ウェルカは観客席に題名を見せてから開いた。
 同時に話の雰囲気を伝えるために学園が魔法で映され、陽気な音楽が流れる。
「学園に通う二人の男子生徒は、いつも昼食を巡ってくだらない決闘を繰り返し……」
 ウェルカは人心を読みつつ、飽きさせないよう緩急をつけ活劇コメディ短編を巧みな会話術で読む。
「水の一気飲み勝負を始め……」
 ウェルカは、水差しで水を満たしたコップを一気に飲み干し、少しでも客を楽しませようと本の世界を再現してみせる。
(次は恋愛要素で、どきどきさせましょう)
 学園コメディ活劇が終わると本を変えて、可愛らしい音楽と共にコメディ恋愛掌編を始める。
「あああ、胸が張り裂けそうだー」
 ウェルカの情熱的な朗読と舞台演出に、観客席は甘酸っぱさに溢れた。
 しばらくして、聞くも見るも楽しい声優の朗読会のようなひとときに終わりが迫る。
(……時間ですわ)
 ウェルカは本を閉じテーブルに置いて、椅子から立ちスタンドに掛けていた帽子を被り舞台袖に向かう。
(少しでも楽しんでいただけたら)
 観客席に笑顔を向けた後、ドアの閉まる音と一緒に舞台袖に引っ込んだ。どこかの店に立ち寄ったように。

 助っ人達は見事に役目を全うした上に、披露された劇場のどの演目よりも評判が良かったという。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
トロメイア大劇場の大変な一日
執筆:夜月天音 GM


《トロメイア大劇場の大変な一日》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《不屈愛の雅竜天子》 ミサオ・ミサオ (No 1) 2019-04-27 01:37:11
魔王・覇王コースのミサオ・ミサオだ。
宜しくしないよォ………って、そういえば、エイプリルフールはとっくに終わっていたんだったねぇ。

さて、出し物か。
ハッタリを利用してマジックなり、お酒を使った火吹き芸でもやろうか迷ってしまうねぇ。
オレぁ…失敗しても、下手くそって笑ってくれればそれでええわ。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2019-04-27 19:08:38
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

そうですわねぇ・・・瓦割りとか、型の演武とか、そういう物でも良いのでしょう?それくらいなら出来そうですけれど。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 3) 2019-04-28 09:33:55
芸能・芸術コースのシキアだよ、よろしくね
俺は折角だからダンスと演奏を披露してみたいな
演目はなんでも構わないみたいだし、自分の自信があるものを披露すればいいんじゃないかな?

《新入生》 ウェルカ・ラティエンヌ (No 4) 2019-04-28 19:06:09
遅れての参加、失礼致しますわ。
初めまして、もしくはご機嫌良う。
王様・貴族コース専攻のウェルカ・ラティエンヌと申します。
宜しくお願い致しますわ。

私は、所謂[弁士]の様なスタイルで、[朗読]を行うつもりですわ。
此方で[本]の内容や方向性は希望するつもりでは有りますが、依頼主の希望が[時間の穴埋め]ですので、『皆様の演目終了後、残りの時間を埋められる話を選ぶ』としておきますわね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2019-04-28 21:38:18
では私は演武や瓦割りのような事をやってみましょうか。皆様の演目も楽しみですわね♪

《不屈愛の雅竜天子》 ミサオ・ミサオ (No 6) 2019-04-28 22:17:50
シキア、ウェルカ、拝はよろしくねぇ。
自分の得意なものを披露する、それがいいんだと思うよぉ。

そうだぁ。
1つ希望なんだが、演目の最初は是非に俺にやらせてくれないかなぁ。
ちょっと、最初をド派手にかましてみたいんだぁ。

《勇往邁進》 アレックス・ジェット (No 7) 2019-04-29 02:13:15
ギリギリの参加になっちまったな。
アタシは芸能・芸術コースのアレックス・ジェット。よろしく。

自分の得意な事…ね。良いと思うぜ。
アタシは相棒…ギターの演奏と歌唱で盛り上げていく予定だ。
アツい演奏、期待してくれよっ!
皆の演目楽しみにしてるぜ!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 8) 2019-04-29 09:05:05
>ミサオ様
私は順番はどこでも構いませんので、最初に演じて下さっても大丈夫ですわ。

《新入生》 ウェルカ・ラティエンヌ (No 9) 2019-04-29 16:19:35
改めまして、宜しくお願い致しますわ。

>ミサオ様
私も大丈夫ですわ。
楽しみにしておりますわね。