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サラシナ・マイ


ストーリー Story

 【サラシナ・マイ】、この学園で彼女の存在を知る者は多い。
 オレと名乗る人物だが、彼女は立派な女性である。
 ボーイッシュで、胸も少々少ないが、彼女を慕うファンも多い。
 本人には知らされていないが、影では姉御だの姉貴だの、姉さんだのお姉様だのと呼ばれて慕われている。
 ここにも一人、彼女に恋心を寄せる人物が存在している。
 その名を、【カール・ジューサー】。
 彼はヒューマンの男性だ。
 切っ掛けは、泣いている彼に彼女が話しかけたことだった。
「……どうした。そんな腫れた目をして? ……オレは気が済むまでここでいる。お前がここで何を言おうが言うまいが、お前の勝手だ。別に敢えて聞くつもりは無いが、もし何かを聞いちまったなら……どうするかは、オレの勝手だろ?」
 課題が上手くいかない事を告白し、マイはカールに少しのコツを教えたという。
 カールはマイと何度も話し、マイを見る度に恋心が芽生えて行く。
 マイを女性として意識し、姿を追うようにしているうちに、彼は思った。
 もし、マイがスカートを履いたらどうなるだろうと。
 可愛い服を着たらどうなるのだろうかと。
 恥ずかしがって顔を赤らめるマイを見れたらどんなに嬉しいだろうと。
 だから願った。
 カールは願った。
 迅速に行動するカールが、三十分かけて、『サラシナ・マイに、女性らしい格好をしてくれるように説得してくれる人、または一緒に説得しに行ってくれる人募集』と書かれた依頼書を作り出した。
 そうとう熱い想いが込められた太い字の依頼書は、たった一人の目にしか触れる事はなかった。
 最初の一人が当の本人だったからである。
 依頼内容を知られて本人が来てしまったのは想定外だったが、彼女に会えたことで喜んだカールは、自分自身の口からお願いしたのだった。
「お願いしますマイ姉さん! 僕の為に女装してください!」
 言い方が不味かったのだろう。
「はぁ?! 何言ってるんだ。そういうのは似合わないから他でやれ」
 しつこく食い下がり、足にしがみ付くカールに、怒ったマイは拳をくらわせた。
 それでもカールは諦めなかった。
「僕はマイさんにお願いしたいんです! お願いしますうううううううう!」
「こら、そろそろ離れろ。足にしがみ付くな!」
「おねがいしますうううううううううう!」
 必至にしがみ付く純粋とは程遠い形相としつこさの為に、マイはつい言ってしまったのだ。
「ああもう……しつこいな! だったらオレに勝てるのなら考えてやってもいいけどな!」
「やらせていただきます!」
「お前本気でやるつもりか? だったらオレも本気でやらせてもらうからな。全力全開でいくから覚悟しとけよ!」
「分かりました。でも、絶対約束を守ってくださいね!」
「いい度胸だ。オレに勝てたらだけどな!」
「でも僕は弱いですから、代わりに戦ってくれる人を募集をさせていただきます!」
「はぁ? そんなの来る訳が無いだろう。人なんて来ないから無駄なことはやめとけよ」
「フッ、言いましたね……」
 そして、次の依頼書が貼り出される。
 『サラシナ・マイに勝利して、彼女を立派に女性らしくしてあげよう』と。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2019-08-27

難易度 とても難しい 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-09-06

登場人物 3/8 Characters
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)
《ゆうがく2年生》マル=ファス・ヴェルガウス
 ドラゴニア Lv10 / 村人・従者 Rank 1
「皆さんおはようございます。マル=ファス・ヴェルガウス、ドラゴニアです。これまで長く生きてきましたが、お恥ずかしながらお友達は出来たことがありませんでしてこの学園にはお友達作りもそうですがここでしかできない出来事を体験しに来ました。皆さんともぜひお友達になりたいと思っています。よろしくお願いしますね。」
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。

解説 Explan

・勝利条件
 マイを戦闘不能にしたら勝利。
 PC達が全員戦闘不能になるか、もしくは十分以上経過すると敗北。

・舞台
 校庭に作る試合場にて戦闘が始まる。
 作られるのは最長十五mの八角形のリング。
 角にはポールがあり、ロープが張られる。
 作製に関わるのも有り。

・マイの状態
 興奮状態で冷静さを欠く。

・特徴
 両手拳を使い、体術を使った攻撃をする。
 スピードがあり、捕まえるのは困難。
 体力は相当ある。

・装備
 甲に鉄を仕込んだグローブ。
 武器を弾いたり、魔力が続く限り魔法も打ち消す。
 服装は何時もの格好。

・技
『正拳(通常攻撃)』
 基本的な通常打撃攻撃。
 直撃で煉瓦くらいなら破壊できる威力。

『即興コンビネーション(技1)』
 利き手から始まる三連撃。
 回避するのは難しいが、発動前に上半身を逸らし、力を溜める癖がある。
 威力高め。

『速撃(技2)』
 気力を込めて放つ、正拳ぐらいの威力がある高速ジャブ。
 腕の可動域までなので、範囲は広くない。

『包囲蹴撃(技3)』
 回し蹴り。
 小さく飛び上がり、周囲を勢いよく蹴り飛ばす。
 着地時は僅かに隙がある。

『組み落とし(技4)』
 いわゆるチョークスリーパー。
 技が決まると三秒ほどで「状態異常:気絶」が付与される。
 あばらが当たるので、ある意味御褒美?

『流水無影(技5)』
 エピソード中一度だけ使用。
 気力と魔力を多く消費する。
 体から青いオーラが立ち昇り、無の極致となる。
 全体的に能力が向上する他、二十秒程度、
 全方位からの攻撃にカウンター攻撃を行う事ができるようになる。

・苦手な物
 ハーブティーとニンニク類。
 片手で鼻を塞ぐぐらいには苦手。

 蛇。
 一瞬の硬直の後、逃げ回る。

・その他
 勝利すれば彼女のスカート姿が見れます。

 マイは強く、単純な正面戦闘だけでは勝利は難しい。
 あくまで模擬戦ですので、命の危機に陥る事はないです。
 一度倒れたとしても、マイのスカート姿が見たいという熱い想いがあれば、もしかしたら再び気力が湧き上がるかも!


作者コメント Comment
学生の一人が助けを求めている。
彼の欲求入力賛同する者は手を貸して欲しい。
相手は強大だ。
勝ち目は少ないかもしれない。
でも、諦めたらそこで試合終了だ。
マイのスカート姿が見たいのなら、見事打ち倒してください。
(画像はありません)


個人成績表 Report
ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:99 = 33全体 + 66個別
獲得報酬:2250 = 750全体 + 1500個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
目標】
野次馬根性で来てみたものの、これは文字通り骨が折れそうですね。
もちろん。タダでヤラれるつもりはないですケド。
【行動】
リング製作から携わる。自陣側のロープの片面を緑と黒で塗装した『蛇ロープ』を張る。相手はリング内から見た場合は白に見える、はず。ポールは自分がポール上を本気のジャンプで跳び移れる間隔でペグを刺す。サラシナの機動力を落とす工作として、柔らかい土を敷く。もしくは、前日に水を撒いて土に含ませる。戦闘時はビャッカの応援や野次を飛ばしつつ、こっそりと土を踏み荒らして行く。
蛇ロープを剣で切断し放るor足元に忍ばせる。足で泥を掬い上げて視界を潰す、ピンチ時はポールを跳び伝って逃げる。

マル=ファス・ヴェルガウス 個人成績:

獲得経験:39 = 33全体 + 6個別
獲得報酬:900 = 750全体 + 150個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
仲間と協力して課題解決の為全力を尽くす。
集まった時にしっかりと挨拶をし依頼主に改めて経緯の確認をする。
女性相手に女装女装というのは失礼であることとあまりしつこくすると問題になりかねないことを言い含め試合前に謝罪します。
戦闘では種族特性や技能を最大限に使い仲間をかばったり上空からの攻撃などで自分に敵意を向けさせることを中心に行動します。
戦闘の基本スタイルは盾を両手で正面に構えピ-カブースタイルの様に構えた盾の上から覗き見る防御主体の構えを取り真っ向から攻撃を受けた場合は相手の攻撃に逆らわず勢いそのまま後方に飛び下がります。
まずは部分硬質化を使用し、攻撃は龍爪撃を使用した全力の一撃を行う。

ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:39 = 33全体 + 6個別
獲得報酬:900 = 750全体 + 150個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
マイに勝利する!

【行動】
私はあえて真正面から挑むよ。

回避より防御をの重視して受けつつ、隙あらば斬る!
動作察知で出す技を予想して、部分硬質化で頑丈さを高めて、流水の構えで受け流してダメージを軽減。
その攻撃の合間合間の隙を狙っては剣を振るって斬りつけるよ。
マイは冷静さを欠いている…それを取り戻さないように、攻めの手は緩めない。

気を付けるべきは組み落としだ。
この技をモロに食らうと拙い。通常反撃を仕掛けて強引に振り解くよ。
手か足か翼か尻尾、何でもいいから叩いて藻掻いて暴れてやる。

そしてマイの動きが鈍ったら、勇者之斬だ。
これが、私の、私達の、全力全開、だぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!

リザルト Result

 【サラシナ・マイ】ちゃん大好き隊と、デカデカと書かれた学園の一室。
 本人に見つかったらどんな目に遭うのか分からないが、この依頼を出した【カール・ジューサー】は気にしていない。
「さて、集まってくれてありがとうございます。この戦い、絶対に負ける訳にはいかないんです! 皆さんの力でマイさんを女装させてあげてください!」
 カールは力強く拳を握り、魂の籠ったような言葉で三人に語り掛けた。
「カールさん、まあ僕達に任せてください。受けたからにはそれなりに頑張りますよ、うん」
 【ヒューズ・トゥエルプ】は野次馬根性でこの依頼を受けていた。
 マイとの試合で何かを掴めるかもと思っていたが、これ勝っても負けても後々恨まれるんじゃないかと心配している。
「これはマイへの挑戦だから、私は挑むよ」
 この依頼を受ける前、【ビャッカ・リョウラン】はマイが『オレとわざわざ……戦いたいやつなんていないだろうに』という言葉を聞いていた。
 マイが女装するかどうかはさておき、先輩と腕比べができる絶好の機会を逃すビャッカではない。
「もう一度確認しますけど、衣装を着せることが目的なのですね?」
 【マル=ファス・ヴェルガウス】のメガネが光り、カールに聞き返している。
「それはもちろんです!」
 カールは力強くうなずいた。
「それを聞けて安心しました。……それでは、私が選び出した衣装の数々をご覧にいれましょう!」
 マル=ファスは持って来ていた衣装ケースからブリッブリの可愛らしい服をこんもりと取り出した。
 それを手に持ち、カールの前に突き出す。
「うおおおお、これは素晴らしい! 勝てる! このメンバーであるならば絶対勝てる! 待っていてくださいマイさん、直ぐに美しくしてあげますからね。ファーハッハッハ!」
 カールの大きな声が、学園に響いた。


 校庭では準備として、カールと有志の人達の手により、リングが制作されていた。
 その中にはヒューズの姿も見える。
 自分達の有利に戦えるようにと、自陣営の白いロープの半分を、緑と黒で蛇柄を塗装し、蛇ロープを張り巡らせた。
 更にポールは本気のジャンプで跳び移れる間隔で造っていく。
 マイの機動力を落とす工作として、柔らかい土を撒き、その上から水を撒いて土に含ませた。
「これで準備万端だね。あとは時間を待つばかりだよ」
ヒューズはやれることはやったと頷き、戦闘の時間がやって来る。


 カールがセコンドに付き、ロープ際で三人が待ち構えていると、校舎の入り口からマイの姿が見え始める。
 そのままこちらに向かって走り、空中できりもみしながらリングの上に着地した。
「い、意外と居るな。よくもまぁ集まったもんだが……それでも、オレは絶対にしねぇからな」
 マイは三人が来たことに困惑し、少しだけ照れ臭くなっている。
 それでも服を着ることは嫌がった。
「フハハハハハハ! マイさん、三人を相手にどこまでやれるか。もう諦めて女装してください!」
 カールが勝機を得たと、マイを挑発している。
「オレは女だこの野郎!」
 カールの言葉に怒り、やる気を見せるマイ。
「マイ、よろしくね。私は全力で挑ませてもらうから、絶対負けないよ」
 ビャッカは大剣のルーンソードを構え、戦闘体勢を整えている。
「そっちについたからには手加減はしてやらない。覚悟するんだな!」
 マイは両拳を打合せ、この戦いに集中していた。
「経緯は兎も角、依頼を受けたからには全力でやらせてもらいます」
 ヒューズは、双剣フギン・ムニンを両手に構える。
「女性相手に女装とは、カールさんには反省をして欲しいですね。こういう場合は美しく飾り立てるというのですよ。さあマイさん、選べる衣装が多い方が良いかとこんなものを用意しました。どれでも好きな物を選んでください」
 マル=ファスは、この時のために持って来た衣装を手に持ち、マイに選ばせようとしている。
「そんなもんは要らんわ!」
 しかし即座に拒否されてしまった。
 マル=ファスは仕方ないからと、ボクシンググローブのノックアウト装着し構えている。
「学園の鐘がなるまでおよそ十分。さあ皆さん、やーっちゃってください! では、せええええのおおおお!」
 カールは悪の大幹部のような感じで三人に指示を出し、始まりの鐘をカァーンと鳴らす。
『おおおおおおおおお!』
 三人は雄叫びを上げながらマイに突っ込み。
「どっからでもかかって来いよ!」
 戦いが始まった。


 マル=ファスは右へ、ビャッカ正面から、待ち受けるマイに接近して行く。
 そして自分の力量がどれ程なのかと、マル=ファスは思い切って龍爪を繰り出した。
「ハァッ!」
 だがその一撃も。
「そのぐらいで」
 マイには避けられてしまう。
「くッ!」
 そしてビャッカによる大剣の攻撃も、手甲で受け止められていた。
「ここからはオレの反撃でいいんだよな?」
 速射されたマイの拳が、マル=ファスの顔面へ向けられる。
「ぐはぁッ!」
 直撃した拳の威力に、マル=ファスは吹き飛ばされた。
 マイはビャッカにも反撃しようとするが、ヒューズの存在には気付いていないようだ。
「そーれ!」
 コッソリと蛇ロープを切断し、マイの前に投げつけている。
 蛇と見紛うその物体に、マイの攻撃の手が止まった。
「!? ……うわあああああ!?」
 マイは狼狽え、対戦相手も忘れて後ろへピョンと飛び退いた。 
「ここだああああああ!」
 ビャッカは勝機を得て大剣を振り下ろす。
「クッ!?」
 剣はマイに直撃し、後方へ吹き飛ばしたが、両腕でガードされていた。
 リングに背中をぶつけて倒れるも、即座に立ち上がって距離をとっている。
 マイは落ちた蛇ロープを見るが、偽物だと気付いてもあんまり近づきたくはないようだ。
 そのまま胸をなでおろし。
 『あれは蛇じゃない、蛇じゃない、蛇じゃない』と念じている。
 混乱しているマイにも、三人は攻めを緩めなかった。
「はああああああああ!」
 正面から挑むビャッカと。
「まだまだ終わらないですよ」
 立ち上がったマル=ファスは、ビャッカの隣に並びマイに攻撃を仕掛けた。
 その手には、先ほど持っていた衣装の一着が握られている。
「マイさん、この衣装なんて似合うと思いますよ?」
 そしてマル=ファスは、その衣装をマイに見せびらかす。
「要らないっつってんだろ!」
 そんな状態でも、ビャッカの大剣は避けられてしまう。
 しかし反撃をさせまいと、再びヒューズの蛇ロープが空を舞った。
「ちょっ!」
 それを見て硬直するマイに。
「とりゃああああ!」
 ビャッカは全力で剣を振り下ろし。
「ハァッ!」
 マル=ファスも、打撃を与えた。
 初めて真面に入った攻撃も。
「いてぇ……」
 マイに痛みを与えているが、倒すには足りなかったようだ。
 即座に立ち上がったマイは。
「お前からやらなきゃいけないようだな」
 ヒューズに狙いを定めている。
「うおっ、こっちに来ましたか。でもまだ手持ちの蛇ロープが……もう無かったあああ!?」
 懐を漁るヒューズだが、そこには蛇ロープは残っていなかった。
 これはピンチだと、リングのポールに上がって飛び移りながら逃げて行くが。
「待てええええええええええ!」
 当然マイも追って来た。
 ロープ上を走り、バランスを崩すことなくヒューズを追い掛けている。
 だがそこをチャンスと狙うのは、翼を持つドラゴニアの二人だ。
 行先が分かっているから狙うのも容易いのである。
『おおおおおおお!』
 翼を使い空を滑空し、マイの動きに合わせて強襲した。
 しかしマイに逃げ場などどこにもなかったはずなのに、二人の攻撃をかすり傷程度で躱し続けている。
「くっ、どうして当たらないの……!?」
 ビャッカはリングに下りてフゥと息を吐く。
「ヒューズさん、ロープを切るのです!」
 マル=ファスはヒューズに指示を出し。
「!? ああ、わかったよ!」
 ヒューズはポールに乗った瞬間、マイが乗った後ろのロープを切断した。
 突如バランスを崩したマイは、リングの内へ倒れこむ。
 それでも体勢を立て直して両足で着地したのだが。
「チィ、泥が!」
 丁度設置していた泥で、マイは足を滑らせた。
 咄嗟に受け身を取ったのだが。
「クッ」
 泥が跳ねて片目に食らってしまった。
「今度こそ決めるよ!」
 ビャッカと。
「卑怯だとは言わないでくださいね?」
 マル=ファスがそれを見てマイに迫る。
 更に背後からは。
「とりゃああああ!」
 ヒューズも好機と見て攻撃を仕掛けた。
「ふぅぅぅぅ……」
 マイは倒れたままで息を吐き出している。
 その体からは青いオーラが立ち昇っていく。
「何か不味い!?」
 ビャッカは身の危険を感じて攻撃を中止する。
 そのまま空中で待機したが、他の二人は変化に気付いていなかった。
 二人の動きに合わせマイは拳でリングを叩き、一瞬でその体を起こしてしまう。
 マル=ファスの拳はマイに片手でそらされ、そのまま流れるままの肘の一撃をうける。
 そして逆方向からヒューズが双剣を薙ぎ払うも、マイの体はそこにはなかった。
 肘打ちの勢いを殺さず体を捻り、双剣の更に上に蹴りを放たれた。
『ぐはああああ!?』
 マル=ファスとヒューズ共に、強烈なダメージを受けて倒れてしまう。
 マイは動かず、同時に吹き飛ばされる二人に両腕を合わせ、視線はビャッカへ向けている。
「ぐお! カールさんの為にも、マイさんには服を着てもらいたい。ぐぬッ!」
 マル=ファスは、力を振り絞った。
 もう一人のヒューズはリングに拳を打ち付け悔しがっている。
「くぅぅ、この程度で負けてたまるか! 勝利のためにも、カールさんのためにも、可愛らしい格好が見たいんだあああああ!」
 二人の気合が爆発し、ハァハァ言いながら立ち上がった。
 その間にも、マイの青色のオーラは薄らいでいる。
 マイにも多少の疲れがあったのか、体が崩れて片膝をついた。
 直ぐに立ち直ると判断したビャッカは。
「これが、私の、私達の、全力全開、だぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!」
 今度こそと空中から大剣を振り下ろす。
 それでもマイは両の手甲を上にあげ、ガッチリと受け止めてしまった。
「まだだあああああ!」
「クッ」
 グッと力を込めるビャッカに、マイの膝が再び地面に押し付けられた。
「おおおおお!」
 両の腕を防御に回したマイに、ヒューズの双剣が直撃し。
「ここだッ!」
 立ち直ったマル=ファスの拳が襲いかかる。
「ガッ……!」
 防御も出来ず、真面に当てられた攻撃によりマイはダメージを受けるが。
 その痛みを無視してビャッカの剣を弾き飛ばした。
「調子にのるなよ!」
 更に三人に強烈な回し蹴りが直撃し。
『がはあああッ!』
 ロープ際にまで吹き飛ばされた。
 そしてマイは、一番厄介なヒューズを最初に打ち倒す相手と見て、高速で接近して行く。
 腕を引き体をそらし、右の拳を打ち出した。
「それは、させません!」
 マル=ファスは即座に移動し、防御の構えでマイの前に立ちはだかる。
 しかし、強烈な拳の一撃で腕に打撃を与えられ、二発目の蹴り上げで腕を弾き飛ばされ、三撃目の正拳が胸元へ打ち込まれた。
「ぐっは……! ぐふぅ、耐えきりましたよ!」
 倒れそうになったマル=ファスだが、自身の体を硬質化させてその一撃を耐え切っていた。
「これを耐えるとは、やるな」
 マイは拳を引き後ろに下がって行く。
「たあああああ!」
 そこをビャッカと。
「てええええええい!」
 ヒューズが狙ったのだが。
「……楽しかったけど、これで時間だ」
 マイは二人の攻撃を躱し、ポールの上に飛び乗った。
 その瞬間、学園の鐘がゴーンと鳴り響く。
「マイさん、今から再戦を要求します! 僕達はまだ負けていません!」
 カールが負け惜しみを言っているが。
「確かに、時間制限が無かったらどうなってたか分からないな。それでも勝ちは勝ちだ。でも三人の頑張りに免じて……ふ、服を着てやるよ」
 マイは顔を背けている。
「いやったあああああああああああああ!」
 大喜びするカールだが。
「当然、お前の居ないところでな!」
 マイはカールを指さしてそう言った。
「ぐふああああああああああ……」
 カールは天国から一気に地獄に突き落とされ、気を失ってしまったようだ。


 三人は空き教室に呼び出されている。
 そこで綺麗に飾り立てられたマイのフリフリの姿を見せられていた。
「……ど、どうだ、このやろう! お前達の頑張りに免じて、仕方なくだからな! 依頼を達成させる為だからな!」
 マイは白い帽子やピンクを起点とした白いフリフリがついた衣装を着飾り、長めのスカートを履いている。
 そんなロリータ服の恰好で顔を赤くしているから。
『おおおおおおおおお!』
 三人にどよめきが起こっている。
「マイさん、是非これも着てください。きっと似合うと思いますよ」
 マル=ファスは持って来た衣装を手渡すが。
「調子に乗るなよこの野郎」
 マイに怒られそうだったので、マル=ファスは郵便で送ることに決めた。


 自室に戻っていたカールは、思いっきり悔しがっていた。
 カールは残念ながらマイの姿を見られなかったが、一応服を着せるということには成功しているのだ。
「くそおおおおおおおお、今回は負けてしまったが、必ずこの目に! この目にいいいい!」
 だからこそ、カールの野望はこれからも続くのだろう。



課題評価
課題経験:33
課題報酬:750
サラシナ・マイ
執筆:秀典 GM


《サラシナ・マイ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 1) 2019-08-24 21:04:20
隠密特化で撤退主義者の僕だが、リングというフィールドは実に相性が悪いな。
サラシナさんにはタイマン用の技能に加えて速度もある。
どこまで時間稼ぎ出来るか。

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 2) 2019-08-24 21:14:08
タイムアップでもこちら側の負けだったな。10分持ち堪えられるかは別にして、だけど。
リングは最長15mまで可能か…。広すぎるな。だが、狭すぎるのも考えものだな。素早さで弱点とは言い難いけど、リーチは短いんだ。
考慮に入れて塩梅をしっかり見極める必要があるな。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 3) 2019-08-25 03:30:27
勇者・英雄専攻のビャッカ・リョウランだよ。

強敵が相手だけど…私はあえて真正面から行くつもりだよ。
前衛として切り込んでいくよ。どれだけ持つか分からないけど、剣士としては引けない。
先輩の全力全開。私の全力全開がどこまで通じるか、試させてもらうよ。

と言う訳で、策とかは皆に任せるよ。

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 4) 2019-08-25 06:39:56
やぁ。こっちは黒幕・暗躍コースのヒューズ・トゥエルプ。
実に有難い提案です。
ならば、僕は搦手を攻めることに専念しますね。

《ゆうがく2年生》 マル=ファス・ヴェルガウス (No 5) 2019-08-26 19:31:35
出遅れてしまいました…。村人従者コース、マルファス・ヴェルガウスです。
盾役と上空からの攻撃で気を散らせましょう。