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貴方の見たい夢は何ですか?


ストーリー Story

 放課後、魔法学園フトゥールム・スクエア、正面玄関。
「授業、お疲れ様です。この後、お忙しいでしょうが、少しよろしいでしょうか。わたくしは、【ウォルラ・ミズリー】。見ての通りローレライです」
 授業を終え、いざ放課後を楽しもうとする学生達に声を掛ける25歳の人種の女性ローレライがいた。濡れても大丈夫な衣装を着て水分放出を髪の毛に集中させている。
「おふざけで毎日を笑って楽しいものにしようという御巫山戯クラブに所属する者です。相手に怪我をさせなければ、何をしても構わないクラブで、部室は第八校舎にかまえています」
 温和な笑みを口元に、自身が所属するクラブの紹介をする。
「季節も秋になって涼しくなり、眠りに最適な日が増える中お願いしたい事があります」
 初対面の挨拶の類が終わると、ウォルラは見た目可愛らしい布袋を取り出した。
「この匂い袋を夜眠る時に揉んでから枕元に置いて欲しいのです。そうすれば、貴方の見たい夢を見る事が出来ます。その名も『夢見香』(ゆめみこう)です。揉む事で匂いを放出し夜明けと共に、匂いと見たい夢を見させる効力が消えます。匂いは、数多の花を調合した少し甘いものです」
 丁寧な解説を始めた。
「……ただ、悪戯が好きなフェアリーの部員が刺激がないとつまらないといって、一工夫してしまい、見たいと思う素敵な夢だけを見るはずが、時に怖い夢を見てしまう物になってしまいました」
 ウォルラは、相手が体験を断るのではと少し危惧しながら、負の部分を説明した。
「どんな夢が見られるかというと、空を飛んだり、大人になったり子供になったり、動物や植物や無機物になったり、行きたい場所に行ったり、天地が逆さになったり、会いたい人に会ったり食べたい物を食べたり実力以上の戦いが出来たり海中にいたと思ったら空の上だったり場面転換も自由自在です。時には、好きな人にふられたり授業に失敗したり苦手なものが出て来たり匂い袋を使用している同士であれば互いの夢を行き来する事も出来ます。そのおかげで、悪戯好きの部員に自分の夢をめちゃくちゃにされて……」
 基本的な説明が終わるとウォルラは、相手が少しでも惹かれたらと、見る事が出来るだろう夢の内容を次々と列挙をした末に溜息を吐き出した。
「……試作段階の物を使用した時、わたくしは今まで出会いもう会えなくなった人達とお茶会をする夢を見ました。お話が弾みとても嬉しかったです……こう見えてもおばあちゃんですから、会えなくなった人も多くて」
 ウォルラは過去を思い出してか、遠い目で話していた。
「……以上で説明は終わりです。どうでしょうか? わたくしも夢見香でまたお茶会を行う予定です。良ければどうぞ遊びに来て下さい」
 何とか、夢見香の説明が終わった。
「素敵な夢が見られるなら一つ貰おうかな」
「怖い夢を見るならいらないよ」
「明日、実技の課題があるから予習に使わせて貰うよ」
 足を止めて耳を傾けていた学生達は、様々な反応を見せた。
 今夜は、一際賑やかな夜となるだろう。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-10-05

難易度 とても簡単 報酬 少し 完成予定 2019-10-15

登場人物 3/8 Characters
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《勇往邁進》リズリット・ソーラ
 カルマ Lv17 / 魔王・覇王 Rank 1
ぼんやりとした表情の記憶喪失のカルマ 男の子なのか女の子なのか自分でもわかってない 口調がとても特徴的 外見 ・黒色の髪に金の釣り目 ・短髪だが、横髪だけ長くそこだけウェーブ ・基本的に無表情 ・魔法陣は右手の甲と左足の太ももの内側 性格 ・基本的にぼんやりとしている ・自分が色々と物を知らないことは何となくわかっているので、色々と勉強したい。最近はとある演劇の課題を通じて物語作りに少し興味を持ち出している ・独特な口調の持ち主(所謂関西弁) ・時折「雑音がする」と元気がない時がある 好きなもの ともだち、きれいな音 嫌いなモノ 人形扱い、雑音、■■■■ 一人称「うち」時々、戦闘中気分が昂ると「ウチ」 二人称「きみ」 名前の呼び捨て
《勇往邁進》ツヴァイ・リデル
 カルマ Lv11 / 教祖・聖職 Rank 1
「このコースに来た理由?回復って使えると便利だよ…えっ?うん、それだけ」 「僕は僕のやりたいようにやるだけさ」 容姿 ・黄色のメッシュをいれているショートウェーブ ・釣り目、少しまつげあり ・眼鏡着用、度が入ってるのか入ってないのかは不明 ・魔法陣は右手、もう一つは胸の中央 性格 ・のらりくらりのマイペース、基本的にのほほんとしてる ・穏やかであろうと努めているが、仲間が傷つけられると口調が荒れる傾向がある ・宗教に興味はあまりなく、蘇生の技術に関心を持ってコースを選択している ・ある目的を以て造られたカルマ、使命と願いを守るつもりではいるが、縛られたくはない模様。というより反抗心バリバリ ・一方的に知っている子どもたちがいるらしいが…? 好きなもの 物語、魔術本、こどもたち 趣味 おやつの食べ歩き 一人称:僕、お兄さん 二人称:きみ、激昂時:お前

解説 Explan

 夢見香を使って見たい夢や怖い夢を満喫して下さい。
 活動場所は夢になりますので、公序良俗に反しなければどんな姿になろうと、どんな事をしようと自由です。

【御巫山戯クラブについて】
 おふざけをして、毎日笑って楽しく過ごす事を目的に活動しているクラブです。目的のためであれば、怪我などしない限り何をしても構わないと考えています。
 魔法を使うため部室は第八校舎内の一角にあります。

【NPCの行動について】
・ウォルラ・ミズリー
穏やかな人種のローレライです。外見は25歳ですが、中身はかなりのおばあちゃんです。
人との交流が好きなため、夢見香使用で見る夢はこれまで交流し、亡くした者達との茶会になります。訪問者は歓迎されます。

 上記の人物やこういう人物と交流したいなどがありましたらプランに記載をお願いします。ただし、『ゆうしゃのがっこ~!』における公式のNPCとは交流出来ません。


作者コメント Comment
 プロローグを見て頂き、大変ありがとうございます。
 本日の舞台は、夢となります。
 現実には不可能な事を思いっきり楽しんでみて下さい。


個人成績表 Report
朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
眠りに入ってふと気づけば生まれ育った拝一族の集落。そして目の前には懐かしい兄様の姿。思わず駆け寄ろうとしたら

「朱璃、俺が居なくなってからお前がどれだけ成長したか見せてくれ。まさか育ったのは胸だけとは言うまい?」

と兄様は構えを取り戦闘態勢に。その言葉にツッコミつつ私も構えを取り試合を始めますわ

兄様の攻撃をなんとか見切りながら拳を繰り出し蹴りを撃ち込む。けれどどれも寸前で躱されてしまいますわ。その際の兄様の言葉に一瞬迷うも自分のスタイルを崩さず戦い、ついに兄様に一撃をいれますわ

そして兄様はよくやったという風に笑い

「お前が世界一になる姿を空から見ているぞ」

そう言って姿を消し、私も夢から覚めますわ

リズリット・ソーラ 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
夢を見たのは覚えてるんやけど、大概わすれてしまうから
覚えてられるなら、ちょっと楽しみやね

・夢
学園によく似た風景をひたすら歩く
目的地があるわけでもなく、ただ歩みを進める
その隣には、自分にそっくりどころか瓜二つの「少女」がいる
その少女と会話…というより、少女が一方的にリズリットに話しかけているに近い

「まぁた面白そうなことやっとるやん、ええなあ」
「ダンマリ?嫌やわぁ、聞こえてる癖に、見えてる癖に」
「なぁお前、お話作ったんやって?」
「滑稽やわぁ!ウチと同じで、どうせ壊すしかできない癖に」
…そういえば、悪夢も見るかもしれないと言ってた
せやな、悪夢やわ

…あれ…?なんで、きみがうちの夢に…?

ツヴァイ・リデル 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
お兄さん見たい夢あるあるー
悪い夢?悪夢?えぇー、いつかお腹壊した時とか見ちゃうのかな
ははは、まぁたのしみにしておくね

夢の世界
・沢山の露店が並ぶお祭り…のような場所で遊ぶ

夢の中で意識があるっていうのも不思議だね?
折角だから楽しもうっと!
色んなものを食べ歩き、おかしは元々好きなのでいくら食べても飽きない
味覚があるっていいよねぇ、不味いものは嫌だけど
それ以上に「美味しい」っていいよね
…オリジナルは甘いもの好きだったっけ?まぁいいや、僕には関係ない

あれ、こんなところにこれ見よがしな穴が
これ知ってる、不思議の国のなんたらだよね
…えーい!(突撃

リザルト Result

●1章 懐かしき邂逅
「……見たい夢を見られるというのは凄いですわね。なら私は……」
 【朱璃・拝】(しゅり おがみ)は、手にある【ウォルラ・ミズリー】から貰った夢見香を見た後、夢見香を揉み枕の下に入れ、望む夢を思い浮かべながら眠りに就いた。
 甘い香りと共に朱璃の元に、夢が訪れた。

「……ここは」
 眠りに就き、すぐに夢の訪れに気付いて見回す朱璃の目に映るのは、狼のルネサンスが住まう集落。
「……懐かしいですわ」
 ただの集落ではなく、朱璃が生まれ育った拝一族の集落だ。
「……何もかも同じですわ」
 建物も住民も空気もあらゆる物が現実と違える事無く存在していた。
「朱璃」
 景色を眺める朱璃の耳に懐かしい男性の声が入って来た。
「……!!」
 気付いた朱璃は、視線を景色から眼前に向けた。
「……兄様」
 途端、胸にこみ上げる思いから朱璃の目から涙がこぼれた。何もかもが同じ。自分を護り亡くなったあの時と変わりない。
「兄様!!」
 朱璃は、懐かしさから堪らず駆け寄ろうとする。
「朱璃、俺が居なくなってからお前がどれだけ成長したか見せてくれ」
 兄は構えを取り、戦闘態勢に。
「……兄様」
 朱璃は足を止めた。
「……まさか育ったのは胸だけとは言うまい?」
 兄はにやりと余計な事を口走った。
「何処を見ていますの!?」
 朱璃は、勢いよくツッコミを入れた。兄妹のじゃれあいだ。
「……」
 そして、朱璃は残る涙を拭き、呼吸を整えた。
「いいですわ、久しぶりの兄様と手合わせ。思った再会の形とは違いますが望む所ですわ!」
 表情を凛々しくさせ、構えて戦闘態勢。
 手合わせ開始だ。
「……」
 朱璃と兄は互いに睨み合い、出方を窺う。
「はぁぁぁあ」
 数秒後には、瞬時に間合いを詰め、兄は様子見もあるのか拳を繰り出した。
「!!」
 朱璃は直感が働き、紙一重で見切りつつ拳を突き出し、蹴りを撃ち込む。
「くっ!」
 だが、直撃する寸前で、拳は流され蹴りはかわされてしまう。
「ならば……」
 諦めずに朱璃は、兄に向かってたえずあの手この手で攻撃を続ける。
「むっ!!」
 しかし、そのどれもが兄にかわされてしまう朱璃。技術だけでなく、兄妹共に格闘術を学んだため、朱璃の動きを知っているという事も見事な回避に繋がっているのかもしれない。
「はぁぁ!」
 朱璃の動きは拝一族の荒っぽい格闘ではなく、トロメイア大劇場にて見せた魅せる演武のように洗練され美しく、貴族の娘の踊りのようだ。
「たぁあぁぁ!!」
 兄は、容赦なく攻めたてる。
(私の攻撃はどれも……)
 朱璃は何とか回避しつつ、仕掛ける攻撃は決め手に欠け、次第に劣勢に。
「はぁぁっ!」
 繰り出した朱璃の拳もまた回避されるかと思いきや、そうではなかった。
「朱璃」
 兄は朱璃の拳を掴む。
「お前は律儀にあの貴族の友達の言葉を実践してるのか」
 そのまま何やら言い出した。
「……何が言いたいんですの」
 朱璃は、怪訝な顔色で聞き返した。
「本来のお前の姿を見せなければ俺には勝てんぞ」
 朱璃本来の荒々しさを知る兄は口元を歪めて言ってから、掴んでいた朱璃の手を離すと同時に二撃目を放つ。
「!!」
 兄の言葉にはっとなった朱璃は、来る二撃目を野性の勘より閃いた対策にて回避し、間合いをとった。
「……兄様」
 朱璃は対峙する兄を真っ直ぐに見る。その顔に一瞬、迷いがよぎった。劣勢の今兄の言っている事も分かるが。
「女性はエレガントに。それを実践しつつ勝利できなくては世界一の格闘家にはなれませんわ」
 朱璃はスタイルを崩さず構えた。貴族の友達との約束を貫く意志を見せた。
「……朱璃」
 兄はそれ以上言わず、構えて迎え撃つ様子。
「兄様、行きますわよ!」
 朱璃は、先程よりも増した気迫を共に拳を繰り出し、蹴りを放つも悉くよけられる。
「はっ!!」
 ついに朱璃が放った狙いを済ました一撃が兄に入った。
「朱璃」
 すると、兄はよくやったと笑った。
「お前が世界一になる姿を空から見ているぞ」
 そして、手合わせの時とは違う表情で言った。
「……兄様」
 朱璃の目の前で、兄の姿は次第に薄くなり消えていった。
「これは……私も夢から覚めますのね」
 同時に朱璃の姿も薄くなりこの世界から消え、夜明けを迎えた。

「……ん」
 目を覚ました朱璃は、懐かしさとの邂逅の余韻に浸った。
「ウォルラ様に感謝ですわね」
 落ち着いた所で、上半身を起こして呟いた。

●2章 悪夢と友達
「お兄さん見たい夢あるあるー」
 ウォルラの説明を受けた【ツヴァイ・リデル】は、嬉々と夢見香を受け取った。
「悪い夢? 悪夢? えぇー、いつかお腹壊した時とか見ちゃうのかな」
 悪夢を見る可能性に関しては、深刻さはなく持ち前ののんびりさだ。
「ははは、まぁたのしみにしておくね」
 ツヴァイは、何より楽しむつもりだ。
 待ちに待った夜が訪れ、ツヴァイは夢見香を揉んで枕元に置いて眠りに就いた。
 花の甘い匂いと共にツヴァイはゆるりと夢へ。

「へぇ、これが僕の夢かー」
 ツヴァイは周囲をきょろきょろ。
「沢山の露店が並んでいて、まるでお祭りのようだね」
 ツヴァイを迎えた世界は、賑やかな祭り囃子と屋台で溢れていた。
「というか、夢の中で意識があるっていうのも不思議だね?」
 ツヴァイは景色だけでなく、手の感覚や意識でさえも、現実と何も変わらない事に気付いた。
「折角だから楽しもうっと!」
 このまま突っ立っている訳にもいかないと、ツヴァイは祭りに繰り出した。
 最初を飾る屋台は決まっている。
「あのお菓子、どんな味かな? 向こうのお菓子も美味しそう」
 お菓子を扱う屋台だ。選択理由はお菓子が好きだからに他ならない。
 その後もお菓子以外も含んだ色んな物を食べ歩きする。
「お菓子はいくら食べても飽きないね」
 ツヴァイが口にするのはお菓子が一番多いが、飽きた様子は無い。
「何より、味覚があるっていいよねぇ、不味いものは嫌だけど」
 ふと、ツヴァイは手にある食べかけのお菓子を見下ろし、舌に感じる甘さにしんみり。
「それ以上に美味しいっていいなぁ」
 さらに、食べる事の至福を夢の中ながら心底満喫した。
「次はあの屋台を覗いてみようかな」
 手にあるお菓子を平らげツヴァイは、別の屋台に向かって歩いた。
「……オリジナルは甘いもの好きだったっけ? まぁいいや、僕には関係ない」
 その際、自分を生み出した青年が頭によぎるが、自分として生きたいと思うツヴァイにとって一瞬の事だった。
「あれ、こんなところにこれ見よがしな穴が」
 それ以上に気になるものがツヴァイの眼前に現れた。
「これ知ってる、不思議の国のなんたらだよね」
 物語が好きで神話の知識もあるツヴァイは、知っているお話に似ているのか楽しくなる。
「……えーい!」
 結果、穴に突撃した。
 そして、ツヴァイは思い浮かべた物語の通り別世界に足を踏み入れた。

「へぇ、これが夢見香」
 【リズリット・ソーラ】は貰った夢見香をまじまじと見た後、揉んで枕元に置いた。
「夢を見たのは覚えてるんやけど、大概わすれてしまうから、覚えてられるなら、ちょっと楽しみやね」
 わくわくと楽しみに思いながら眠りに就き、甘い匂いの案内で夢の世界へ。

「……学園によく似てるなー」
 リズリットは、きょろきょろして見覚えのある景色を確認。
「ま、歩いてみよか」
 そして、歩き出した。
「まぁた面白そうなことやっとるやん、ええなあ」
 途端、隣から女の子の声がリズリットに向けられた。
「……」
 しかし、リズリットは振り向かず、ただひたすら目的地もなく、歩みを進めるのみ。
「もしもーし」
 隣の少女は見も聞きもしないリズリットに向かって、小馬鹿にした調子で言った。
「……」
 リズリットはなおもダンマリ。
 よく見れば、少女の容姿はリズリットと瓜二つで愛らしい。違うのはショートではなくツインテールの部分のみ。
「ダンマリ? 嫌やわぁ、聞こえてる癖に、見えてる癖に」
 少女は肩を竦めて、嫌らしく言う。
「……」
 リズリットは一切振り向かず、ただ歩くだけ。学園ならば、学生や教師がいてもおかしくないのに、その姿は一切無くリズリットと少女のみ。
「なぁ、お前、お話作ったんやって?」
 少女は一方的となれど、気にせずに話し掛け続ける。
(……お話……実際にあった事を題材にしたんやけど、創作話も混ぜたから、作ったにカウントという事やろか)
 リズリットは少女の言から、とある劇場にて最後の演劇の台本を作った事を思い出していた。
「滑稽やわぁ! ウチと同じで、どうせ壊すしかできない癖に」
 少女がころころ笑いながら吐く言葉には、無邪気な悪意に満ちていた。
(……そういえば、悪夢も見るかもしれないとか……せや、これは悪夢やわ)
 リズリットは、隣から聞こえる自分と同じ顔から出て来る悪意を聞きながら、夢見香を貰った時にウォルラから受けた説明を思い出し、得心した。

「ありゃ、ここは学園?」
 その時、前方に所在地を確かめるように周囲を見回す青年が現れた。
「ん、あれは……ツヴァイ?」
 何の前触れも無く現れた顔にリズリットは、不思議そうに小首を傾げてから青年に近付いた。
「……なんで、きみがうちの夢に……? うちが見る夢じゃないよな?」
 リズリットが訊ねた。夢の中なので、隣の少女のように人だって創り出す事が出来るから。
「違うよ。あの穴を通って来たんだよ。まさかまさかのお邪魔しちゃうとは」
 ツヴァイは、自分が通って来た穴を指し示しながら言った。
「……それって、迷子や、あかんよ、ここは悪夢や、うちの隣に……」
 そう言って、リズリットは悪夢の証拠たる少女の事を紹介しようと、ここで初めて隣に顔を向けた。
「……あれ、おらん」
 いなかった。あれほど執拗にリズリットに悪意を向けていた存在が欠片もない。
「……なんか邪魔したみたいでゴメンね?」
 ツヴァイはそろりと謝った。
「邪魔ちゃうよ、寧ろ助かった」
 リズリットは、無表情ながらも言葉には安堵が感じられた。
「じゃぁ、きみさえ良ければ僕の世界に来ない?」
 ツヴァイは、おもむろに誘った。
「ツヴァイの夢やて?」
 リズリットが穴を見つめながら訊ねた。
「うん、僕の夢はお祭りなんだよ! 多分そこの穴からいけるからさ、どう?」
 ツヴァイは、夢の内容を教えてから、再度誘った。
「いいの? 行く」
 リズリットは誘いに乗り、ツヴァイと共に穴をくぐった。

「これが、ツヴァイの夢か」
 リズリットは、きょろりと祭り囃子と仄かな灯りに包まれた屋台群を見た。
「どう? 見てるだけで楽しいでしょ?」
 ツヴァイはのんびりと言った。
「そやな」
 頷くリズリットの様子は、自分の夢にいた時とは違い楽しげであった。
「んじゃ、僕が案内するよ」
 ツヴァイが案内をと、一歩を歩き出した。
「おいしいおかしの屋台がええな」
 お菓子が好きなリズリットはリクエストを口にしながら、続いた。
「それは任せてよ。美味しい屋台を知ってるから」
 ツヴァイは事も無げに言った。屋台巡りの成果を発揮する気満々だ。
「あっ、今更だけど味覚はある? 僕は勿論あるよ」
 ふと、ツヴァイは思い出したように確認した。
「大丈夫や」
 リズリットは即答した。
「そっか、あるみたいでよかった」
 ツヴァイは、一安心。これからのひとときを過ごすために必要だから。
「だったら、あの屋台はどうかなー?」
 早速とツヴァイは、お菓子を扱う屋台を示した。すでに味は確認済みだ。
「ええよ、美味しそうやね」
 リズリットは、即賛成だ。
 という事で、ツヴァイとリズリットは購入し食べ歩きを始めた。
「んー、美味しいなあ」
「だねー」
 リズリットとツヴァイはお菓子をもごもご。
「次はあの屋台だよ」
「この甘い匂いええなー」
 互いにお菓子が好きとあって、ツヴァイとリズリットが巡る屋台はお菓子ばかりだ。
「ねぇ、きみさえ良ければ……」
 ツヴァイはお菓子を食べるのを止めて、何か大事な事でも話したいのか、傍らに顔を向けた。
「……ん?」
 リズリットは、お菓子を頬張りながら顔を上げ注意を向けた。
「僕と友だちになってくれないかな」
 と、ツヴァイ。すでに端から見たら仲良しさんの食べ歩きに見えるのだが。
「友達?」
 想定外だったのか、リズリットはツヴァイの誘いに少し目をぱちくりさせた。
「どうかな?」
 ツヴァイが再度、返事を求めた。
「……ええよ」
 リズリットは受けた。
「やった! ありがとう!」
 ツヴァイは大層喜び、礼を言った。
「……不思議やね。なんか前にも、そんなこと言われた気がする」
 リズリットは、わき上がる思いにぼそりと呟いた。
「ううん、はじめてだよ。『きみ』とは、はじめてだ」
 リズリットの呟きを聞き逃さなかったツヴァイは、すかさず否定した。二言目の否定には何か事情を感じるものがあったが。
「それより、どうぞー!」
 ツヴァイは気を取り直し、お菓子をお裾分けと差し出した。
「……えと、ありがとさん」
 リズリットは礼を言って受け取り、美味しく頬張った。
 この後、ツヴァイとリズリットは『友達』として、現実に呼び戻されるその瞬間まで、仲良く屋台巡りを楽しんだ。

●3章 夢が終わって
 翌日の放課後、魔法学園フトゥールム・スクエア、正面玄関。
「授業、お疲れ様です。よろしかったら、夢見香の感想を少し教えて頂けたら」
 ウォルラが前日に夢見香を渡した学生を見掛ける度に、声を掛けて感想を求めた。
 声を掛けられた学生達は、思い思いに感想を伝えた。
「……使って頂き、本当にありがとうございました」
 人との交流が好きなウォルラは、熱心に話を聞いた後協力してくれた事への感謝を伝えた。



課題評価
課題経験:36
課題報酬:960
貴方の見たい夢は何ですか?
執筆:夜月天音 GM


《貴方の見たい夢は何ですか?》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2019-09-30 00:01:54
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。