●１章　植物に癒しとわくわくを
　放課後、魔法学園『フトゥールム・スクエア』、第一校舎『フトゥールム・パレス』の植物園『リリー・ミーツ・ローズ』。
「……庭いじりは、まかせて……」
「お花さんたちが栄養不足になって枯れちゃったら可哀想です。すーちゃん、頑張りますね。楽しそうですし、とても」
　【セオ・フォスター】と【スナ・リーエ】が植物委員会の呼び掛けに応じて、手助けに来た。
「お手伝い、ありがとう！！」
「道具はどれでも好きに使ってね！」
　植物委員会の学生達は、大層歓迎した。
　２人は、園芸道具を一式借りてから、それぞれ作業を始めた。

「今日はお花さんのお世話を頑張りますよ」
　園芸道具一式を手にスナは、頑張る気満々で作業場所を探して回る。
「雑草、雑草……綺麗なお花さんが、沢山です」
　ただ雑草を探すのではなく通り過ぎる花々の美しい姿に目を奪われ、足が止まる。
「わぁ、このお花さん、すーちゃんの顔より大きいです」
　大ぶりな花をつけた植物にわくわくして、自分の顔と大きさを比べたりと、モットー通りのんびりマイペースだ。
　そうこう歩き回った末に活動場所を決めた。
「まずはここから始めましょう」
　様々な雑草が好き勝手に生い茂る場所だ。
「……ええと、雑草って、道具で掘ったら良いかしら」
　スナは薄皮の手袋をつけてから、借りた道具で掘り始めた。
「あら、なかなかの防御力ですね、雑草さん」
　土ごと雑草を掘り出そうとするが、あまりの頑丈さに上手くいかない。
「でも、負けません！」
　だが、退く気は全くない。
「ぜったいにあなたたちを抜きますからどうぞ覚悟していてください」
　と言って、スナはアークライトの光の輪と翼から、神々しいオーラを放ち、雑草を抜く気満々だ。
「掘れないなら」
　スナは、園芸道具から花残の斧に持ち替えた。
「やぁぁぁ」
　勇ましい声と共に雑草を狙って花残の斧を振った。
　舞い散る花びらと共に雑草が宙に踊る。
「ふぅ、まだ終わりではありません。刈れたのは葉っぱだけ……根っこを掘らないとまた雑草さん、元気になってしまいます」
　スナは一息入れてから、武器から園芸道具に切り替え、雑草が生えていた場所を掘ろうとする。
「あら、今度は上手くいくのです」
　葉を刈ったおかげか今度は成功し、根っこごと土を掘り起こす事に成功した。
「すーちゃん、もっともっと頑張りますよ！」
　成功した事で気分が上がったのか、スナは雑草との対決に力を入れた。
「……お花さんにお水をあげるのです」
　雑草があらかた片付くと、植物の水やりに精を出した。
　最中。
「あの雑草さん、元気に動いているのです。何か楽しそうです」
　スナは、動き回る雑草に奮闘するセオに気付き、興味津々と見学。
「捕まえるのをお手伝いしに行くのです」
　楽しい事が大好きなスナは、水やりをやめて声を掛けに行った。

●２章　植物のお世話は任せて
「……色艶がいい、栄養をたっぷり……摂っている証拠……」
　ガーデニングが趣味であるセオは、植物の状態を確認しながら、根元の土にたっぷりと水を注いでいく。
「……収穫の頃合いですが、野菜も普通よりもずっと大きいですね……甘味が詰まっていそうです」
　セオは実をつけた植物の収穫をしては、一般的に知られているよりもずっと豊かな実り具合に感心する。
「……このままでは、幹と根の部分のバランスが悪くて……しっかりと根が張るまで倒れやすいですね……添木をしましょう」
　大きく育つだろう樹木には添木をして、生長のサポートを行う。
「……この花にこの色は無かったはず……品種改良をされた物みたいですね……」
　植物に肥料を与えながら、有している植物の知識から発見する事があり、趣味まで満喫している。
「……元気に動き回る雑草、か」
　平和な作業を行いつつもセオは雑草が気になるのか、ちらちらと様子を見る。
「く、くそぉ、雑草に勝ったのに葉で手を切っちまった。布を当ててるのに血が止まらない」
　その時、雑草処理を行う男子学生の悔し気な声が耳に入った。
「……大丈夫ですか……すぐに手当てを……」
　気付いたセオは駆け付け、精霊に思いを込めて祈り、癒しの力をおねだりした。
「助かったよ。俺の代わりに向こうにある雑草の処理を頼む」
　血が止まって安堵した男子学生は、セオに残った仕事を託した。
「……あの雑草は……触れた瞬間、状態異常になる雑草、ですね……問題ありません」
　引き受けたセオは、さすが知識を持っているだけあって雑草の性質をすぐに理解し、スコップ（大）を手に持ち、敵の元へ向かった。
「……庭いじりして……」
　セオは、溜息混じりに呟いてから、スコップ（大）を地面に突き立て、土ごと思いっきり掘り起こす。
「……デトル、使うことに……なるとは……」
　同時に麻痺を麻痺を受けるも癒しの魔法で瞬時に治療した。
「……植物の世話はある程度、出来ましたから……このまま雑草の処理を……」
　セオはそのまま、雑草の処理に移った。
　もくもくと手当たり次第、雑草を抜いて回る中。
「……！！」
　種を飛ばして襲って来る雑草に出会い、びっくりする。
「種を飛ばして襲ってくるとは……少し衝撃が……」
　だが、身を守る事は怠らず、セオは手甲の矢弾きで弾いて回避し事なきを得るも、手に残る衝撃に少しやる気が削がれた模様。
「……動いてる……」
　そこに動き回る雑草がセオの前を通り過ぎる。
（……作業をやめて、帰りましょうか……）
　動き回る雑草が追い打ちとなり、かなり心が折れてしまう。
「……いえ、少し頑張りましょう」
　しかし、自ら引き受けた事もあってか、踏み止まり作業を再開させた。
「……動き回る雑草を、何とかしましょう……」
　セオは、スコップ（大）を構え直し動き回る雑草を目で追う。
「……面白い雑草さんですね。罠を利用したらどうですか？」
　そこにセオの様子に目を留めたスナが手伝いに現れ、提案をする。
「……そうですね。設置場所は……多分、あそこがいいかと思います」
　提案に乗ったセオは自信なさげに、庭いじりの知識から導きだした罠の設置場所を指さした。
「……設置しますから、おびき寄せて下さい」
　と言って、スナは罠設置を始めた。
「…………分かりました」
　セオはスコップ（大）を構えたまま待機。
「……出来ましたよ」
　スナの罠設置完了と同時にセオは、突き立てたスコップ（大）を動かし、動き回る雑草を誘導していく。
　結果。
「……罠に嵌まりましたよ。すごいです」
　雑草は、スナが設置した罠に見事に嵌まり、動きを封じられた。
「この学園の……植物……怖いですね……」
　駆けつけたセオは罠にいる雑草を確認しつつ、溜息を洩らした。
「ふふ、そうですね……あれ、近くからお花さんのいい香り」
　楽しそうに返した時に近くから漂って来た甘い匂いにスナは鼻をクンクン、匂いを辿る。
「あら？　これ、は……雑草さん？　他とちょっとズレたところに生えてるので雑草さんです？」
　辿った先は、すぐ側に生える小さな花。
「……この花は、雑草です……」
　セオも来て、実物を確認するなり持てる植物知識から、正体を突き止める。
「雑草ですか。でも、ちいさくて薄い紫色でかわいいのです」
　スナは雑草と知っても、愛らしさに目が離せないでいた。
「何か見つけたー？」
　二人の様子に気付いた植物委員会の女子学生が、心配して様子を見に来た。
「かわいい雑草を見つけたのです。残すの難しいですか？」
　スナはそろりと雑草を示しながら訊ねた。
「あんまり雑草を残すのは遠慮したいけど、これぐらいだったらいいよ。可愛いし」
　女子学生は、雑草とスナの顔を見比べた後、にっこりと笑って返した。
「本当ですか……よかったですね」
　スナは嬉しそうに喜び、雑草に笑んだ。
「……雑草処理に、戻ります……」
　セオは雑草を一瞥してから、作業に戻っていった。
「うん、ありがとう。何かあったらまた呼んでね」
　女子学生も作業に戻った。
　この後、スナは楽しくセオはもくもくと雑草処理や植物の世話を続けた。
　それによって、植物委員会は大変助かり、感謝したという。