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【夏コレ!】マグロの食感イカの味


ストーリー Story

「青く輝く海ー!」
「うみー!!」
「白い入道雲の浮かぶ青い空ー!」
「そらー!!」
「背後を見れば青々と緑が眩しい山―!」
「やまー!」
「そしてそしてー?」
「そしてー?」
 ばっちりと決めた勝負水着。
 ウォータープルーフの日焼け止めも塗って、日焼け対策ばっちり。
 お気に入りの麦わら帽子も引っ張り出して、凍った飲み物も常備してきた。
 ビーチパラソルだって、持っていないから、持っている先輩に借りてきた。
 バーベキューの道具だって、レンタルしてきた。
 完全に海で遊ぶ気満々だった生徒たちは死んだ目で海を見る。
 ひとりは獣もかくやと咆哮した。
「どうして! こんな時に限って魔物なんて出てくるのお!」
 ざっぱーん。
 水平線に、大きな魚影の波が立つ。

 事の発端は、二日前。
「臨海学校の下見、ですか?」
「そうなのですよぉ。今年は私が担当になりましてねぇ」
 おっとりと間延びした声は、教師【アキ・リムレット】。
 彼女は授業の準備を頼んだ生徒たちに、『お願い』をする。
 曰く、下見に行くのはいいのだが、ひとりだとどうも寂しいとは彼女の言。
 そのため、生徒たちに共に来てほしいと言う。
「下見とは言っても海だけですのでぇ、みなさんで水着着てぇ、ビーチバレーをしたりぃ、ダイビングをしたりぃ、お昼はバーベキューでご飯にしましょうぅ」
 お金は学園持ちですのでぇ。
 アキの付け足した言葉に、決断は早かった。
「ぜひ。行かせてください」
 人の金で遊ぶ遊びほど、楽しい物はない。
 それに、昼食一食分の金が浮くだけ、助かるというものだ。
 学生は、案外金策にあえいでいる。
 
 そうしてやって来た、海。
 しかしそこには先客がいた。
 自分たちの何倍もでかい、巨大なマグロ。
 そう、マグロ。
 何度だって言おう、マグロがいた。
 マグロは我が物顔で海の中を泳いでいる。
 一緒に泳ぐとしても、あの巨体で立つ波は大波。飲まれてしまう。
 尾びれに当たりでもしたら、いったーい! で済みそうもない。
 ざっぱーん。
 まるでイルカのように波から跳ねたマグロの横腹。
 そこにはでかでかと、模様として書かれていた。
 『クラーケン』と。
「マグロじゃねえのかよ!!」
 がくー、と脱力する生徒のひとり。
 アキは、あらあら、といつも通りの笑顔で頬に手を当てている。
 落ち込んだ生徒は嘆く。
「マグロでもクラーケンでもさ、いたら泳げないよー」
「まあ、こう考えればいいよ」
 生徒のひとりはぽん、と落ち込む生徒の肩を叩く。
「バーベキューの具材に、マグロが一匹増えるだけだ。って」
 生徒たちはざ、っと雰囲気を変える。
 その目は、まるで。
「刺身だー!」
「大トロ! 大トロ!」
 哀れなマグロを捕食しようとする、捕食者の目だった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-06-27

難易度 普通 報酬 少し 完成予定 2019-07-07

登場人物 3/8 Characters
《新入生》ケイ・アカツキ
 ヒューマン Lv5 / 勇者・英雄 Rank 1
母に薦められるがままに学園へ入学する事になった少年。 根は真面目であり、人並みの正義感と良識を持つ。つまりどこにでもいるような比較的平凡な少年。 周囲で困り事があればつい首を突っ込み、頼まれ事をすれば断れない性格な為、必要以上に頭を悩ませる事がある苦労人気質な面もある。 言動に関しては自身を下に見がちな根っからの「後輩キャラ」 学園生活の中でも上級生はともかく同学年に対しても「先輩」呼びで接する事が多い。 学園に入るに至って明確な目標はなく、とりあえず入学させられたという認識もあって行先に不安を感じている。 とりあえず母に薦められたし頑張ってみるかで当面はその時その時の行動で目標を決めている様だ。 母親似の為か年齢の割に幼く見える外見と中性的な顔立ちをしている。 平均よりも低めの身長と相まって男扱いよりも女扱いされる事もあったが本人はあまり気にしていない。 むしろ状況次第ではそんな自分の容貌もとことん利用する強かな一面もある。 上記にある「先輩」呼びが多いのも後輩から年上として見られた事が滅多にない環境故の処世術の一つでもあった。 「容姿とは一生の付き合いであり、持って生まれるものなのでケイさんはそんな自分を卑下する事はないのだよ」とは本人談。 ただしあんまりしつこいと流石にキレるので程々に。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。

解説 Explan

 マグロ料理を作ってください。
 間違えました。海の恵み、トテモ=デカイ=マグロを退治し、海に平穏を取り戻し、みなさんのお腹を満たしてください。
 マグロは浜辺から視認できる範囲の沖で泳いでいます。
 浜辺には、マグロが登場したときに誰かが置いて行ったのか、二人乗りのカヌーが数台、捨てられています。
 また、シュノーケリングをする予定もあったため、人数分シュノーケルと呼ばれる呼吸器の用意があります。
 武器として、普段皆様の使っている武器と、銛と、漁網と、昆布があります。あとわかめ。


作者コメント Comment
 大トロ!∈( ºωº )∋
 失礼、大トロと出てしまいました。
 今回はマグロげふんげふん、イカを食べる依頼となります(?)
 マグロの魔物を倒した後は皆さま、どうぞ海を楽しみ尽くしてください。
 海を楽しむのがメインです!


個人成績表 Report
ケイ・アカツキ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【準備】
漁網をロープ等で強く結び、そのロープ浜辺に設置した木の棒、または漁小屋があればそこに固定する。
(漁網を固定する棒に関してはプラム先輩の杖を利用する)
(漁小屋等の建造物に関しては一度浜辺周辺を確認して、それらに類するものがあった場合に利用する)

【役割・行動】
漁網の投網によるマグロの動きの阻害。
カヌーを用いて近づける距離まで接近(プラム先輩かチョウザ先輩か、二人のプラン次第で共にカヌーで近づく)
投擲技術の技能を用いて投網を行う。
成功後はマグロへ飛び乗り、投擲されて刺さった銛を更に強く刺し込むといったマグロの動き、または仕留める作業に協力する。

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
①複数の魚網を結んで繋ぎ合わせ、広範囲を覆える魚網を作る。
②マグロが暴れ倒している付近の砂浜に【スコップ】で深く穴を掘り、丈夫な棒(なければ俺の杖とその辺の棒)(高かったから丈夫な筈)を埋めて杭にし、魚網を結ぶ。
③タイミングよく魚網を投げて捕まえ動きを封じる。
④銛で襲い掛かる。
⇒【集中】【精密行動】で飛び掛かって一度くらいはグッサーて出来るといいんだけど。ほら、夏だしワイルドにね?
⑤弱ってきたら、魚網を陸から引っ張りマグロを水揚げする。


あ、魔法攻撃する時は埋まった杖に触れて【プチラド】砲台としてガンガンマグロを攻撃しよう。
身が固くならないといいけど…。


まあ焼くなら一緒か。(雑)

■アドリブ度:A

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
謎生物の生態調査しに来ただけ。
見た目通通りの内蔵配置だったりするのか、中身はイカみたいに墨汁嚢あったりなのかとか。
味はどーせイカかマグロだろーし、そんなに興味湧かなみ。お魚好きだから食べっけど。

最初はマグロの動きを網で封じ拘束の流れっぽいから、借りれるだけ網借りて端の糸解いて、お【裁縫】の要領でマグロの動き止めれるくらいに繋げ広げとく。
で、持ってきた【ロープ】括りつけといて、引っ張り込む用に。ロープの端は地面に突き刺したなんがしかか、浜辺に建物あるんなら柱にでも固定系。

マグロが届く所まで近寄ってきたらぶん投げ拘束して、弱らせにかかる感じかな。
ってもザコちゃん魔法使わないからなぁ。なんか投げる?

リザルト Result

 海と言えば何を思い浮かべるだろう。
 白い砂浜? 青い空?
 思いっきり泳ぐ海水浴? 世に数多とあるマリンスポーツの数々?
 海に来た人々がそれぞれ思い浮かべるものは違う。
 それだけの可能性が海にはある。
 その中のひとり、【プラム・アーヴィング】が思い浮かべるものと言えば。
「日焼け」
 彼は手を組み頭の後ろに当てる。
「褐色白髪男子って一定の需要あるじゃん。なんで俺は夏らしく焼きに来たんだけど、おかしいなマグロが居るな」
 新手のマリンスポーツ?
 首を傾げるプラムの隣では、【チョウザ・コナミ】が海に入る前の準備運動をしている。
「謎生物がいるって聞いたから生態調査しよっかな」
見た目通りの内蔵配置だったりするのか、中身はイカみたいに墨汁嚢あったりなのかとか。
「味はどーせイカかマグロだろーし、そんなに興味湧かなみ。お魚好きだから食べっけど」
 あのマグロを倒し……釣りあげて、ぼこして捌いてバーベキューだ。
 砂浜ではビーチパラソルの傍で、【アキ・リムレット】がバーベキューの準備をしている。
 のんびりと火を熾しているところを見る限り、ここにいるメンバーがマグロ如きにやられるわけがないと謎の余裕が見える。
 既にマグロを食べる気満々でいるようだ。
 そんな一連の流れに、【ケイ・アカツキ】はトテモ=デカイ=マグロを見て、そして学友たちを見る。
「馬鹿みたいにデカイけれど……あれを食べようって流れな事に周囲の食べ物への執念的なものを感じている」
 それがデフォ。
 ある種の悟りを開き、ケイは漁網を手に取る。
(実際問題、どうしてあんなのがこの辺りに現れてしまったのか、勇者的には調べないといけないかもしれないんだけど……)
 生憎周囲を含めて今日はOFFな気分。
「マグロ狩って、早いとこ昼食にしよう」
 マグロは赤身が好みです。
「刺身もいいけどカマ焼きもいいよね」

「あ、ザコちゃん、そっちの網持って」
「はいよ。あ、ヒールの神父様? あっちに網が絡んでいるゆーしゃさまがいるんだけど」
「ちょ、足が取られて……!」
 巨大マグロの捕獲のため、漁網をあるだけ繋ぎ合わせる三人。
 プチハプニングが起こってはいるようだが、それさえも楽しんでいるようだ。
「あ、これよいではないかーごっこできないかな?」
「いーね、両端持ってくるくるー、と」
「先輩? それ俺でやるつもりじゃないですよね? ねえ先輩方?」
 そーれ、よいではないかー、とはしゃぐプラムの声と、追従するチョウザの声。
 あーれー、とやや気の抜けた悲鳴を零すケイの声は、一見普通の高校生の青春を彷彿とさせる。
「あれ? 予想ではくるくるーって直立状態で回るはずだったのに」
「ザコちゃんも予想外」
「あの、俺なんか納豆っぽくないですか? 藁に包まれた、あれ……」
 納豆、マグロに合うかなー。とチョウザは飄々と言い、プラムは大爆笑をしている。
 ぶらーん、と水戸納豆のように網に包まれぶら下がったケイは、うなだれた。
「マグロ、早く倒しましょうよー……」
 ケイは哀愁漂わせながらぶらんと揺れた。

「準備はいーい? ゆーしゃさまたち」
 チョウザが片手をす、と挙げる。
「いつでもおっけー」
 プラムが手に持った縄をさらに握りしめる。
「先輩方が大丈夫なら」
 ケイはちらりと、遠くに見える砂浜に埋まったプラムの杖を見る。
 だれからともなく頷く。
 マグロがすぅいと泳ぐ。
 優雅に泳ぐマグロは彼らの乗るカヌーに近付く。
 タイミングを見計らい、力の限り網を投擲した。
「よっし、捕獲!」
 ケイがガッツポーズをする。
「お魚はさっさと仕留めないと味落ちるから、なるべく早く引き込んだほーがいーね」
 揺れるカヌーの上で、チョウザは陸に繋がる縄を掴み身体を支える。
 次の一手を考える二人の横で、プラムは海に飛び込んだ。
「喰らえ! トライデント!」
 かっこよく言っているがそれはただの銛だ。
「グングニルー!」
 最早形状が違っている。
 普段の蠱惑プラムは一体何処へ。
 まるで年頃の男子高校生のようなふざけ方ではないか。
 プラムの楽しげな様子に感化されたのか、うずうずとしていたチョウザが手を大きく振りかぶる。
「ザコちゃんも投げよ」
 その手に持っているのは、シュノーケル!
 おい待てザコちゃん、それは違う、使い方が違う。
 それは投擲道具じゃな、あー!
 躊躇なく放り投げられたシュノーケル。
 それはマグロの横っ腹、『クラーケン』の模様にクリーンヒットする。
「うわっ!」
「このマグロ、すごい暴れてんじゃん」
 マグロが必死に暴れ、カヌーが大きく揺れる。
 プラムはその尾に当たりそうなところ、寸でのところで回避した。
「ザコちゃんわかった。クラーケンが本体だ」
 クラーケンが本体だ(復唱)。
 チョウザが言い放った内容にはいささかツッコミどころが多かったが、クラーケンが本体らしい。
 クラーケンが本体らしい。
「クラーケンを集中的に攻撃しよっかー」
「あれ? 倒そうとしていたのマグロだったはずじゃ」
 チョウザの音頭にケイが首を傾げるも、空いていたカヌーに乗り込んだプラムが攻撃だー! と叫んだことによりどうでもよくなったらしい。
「適当に弱らせて、陸に持って行きましょう!」
「りょーかい、もっかい投げるよー」
 チョウザは今度はひのきの棒を構える。
 周りに銛を何本か括りつけた、殺傷能力抜群のひのきの棒だ。
「そーれっ」
 投げられたひのきの棒は、クラーケン(模様)に突き刺さる。
「いくら巨大膨大なお魚っても、ある程度は痛いでしょ。たぶん」
 言葉の通り、深々と突き刺さったひのきの棒に痛がるマグロ。
 マグロは暴れ出す。
 びったんびったんびちびちびち。
 水中にいるはずが、水揚げされた哀れなマグロのように跳ねまわる。
 一見、暴れて手が付けられないように見えるが、随分と隙だらけだ。
 隙だらけのマグロの背に、ケイは飛び乗った。
「ザコちゃん先輩、銛を借ります!」
 クラーケンに深々と刺さったひのきの棒付き銛。
 ケイはそれをさらに押し込む。
 マグロは天高く顔を上げ、声にならない悲鳴を上げているようだ。
 マグロと根競べをしているとやがて、暴れて立てる波の勢いが弱くなっていく。
「ザコちゃん先輩!」
「運転はザコちゃんがやるよー」
 カヌーに飛び移ってきたケイはチョウザに呼び掛ける。
 チョウザは頷き、網に繋がるロープを手に取る。
 それをケイが受け取り、チョウザはカヌーの舵を構えた。
「面舵いっぱーい」
 そんな掛け声を掛けながら、チョウザはマグロの立てる波に負けじと舵を動かす。
 ケイはその後ろで、できるだけチョウザの負担にならないようにロープを引っ張り、マグロを誘導する。
 目指すは砂浜。
 砂浜に埋まる、ロープを固定した杖。
 そこにはその持ち主、プラムが不敵な笑みを湛え腕を組んで待っていた。
「来たね。この、『プチラド砲台』の的にしてあげようじゃないか」
 プラムは杖に手を触れる。
 力の許す限り放たれる魔力の球は、がんがんマグロにぶち当たる。
「うーん……。攻撃しすぎて身が固くならないといいけど……」
 思考している間も攻撃はやめない。
 プラムがひとつの結論に達したのは、マグロがぴく……ぴく……と弱く痙攣するまで弱ってから。
 陸に水揚げし、解体の準備を進めながらプラムは呟いた。
「まあ、焼くなら一緒か」
 雑ぅ!

「へー。墨汁嚢は付いていない……。構造は完全にマグロかぁ。味もマグロ。なのに食感はイカ……。ううん、不思議なこともあるもんだねー」
 マグロの腹から切り取った身を刺身として食べるチョウザ。
 彼女はマグロの構造について考察をしている。
「不思議な感覚……。俺が食べているのはマグロだったはず……」
 不思議そうな何とも言えない表情を浮かべ、ケイは赤身部分を咀嚼する。
「あんまり脂が乗りすぎてもね……。あ、プラム先輩、お醤油取ってください」
 プラムに醤油を求めるケイ。
「ん、はいよ」
 プラムは手元にあった醤油をケイに渡す。
「あ、俺わさびと醤油で食べたい。アキ先生、そのわさび下さい」
 プラムは向かい側で、マグロを丼に大盛りにしながら頬張っているアキにわさびを要求する。
「はぁい。どうぞぉ」
 アキはわさびを丸ごと手渡す。
 いつぞやの調理実習で使ったわびさび社のわさび。
 あのときのように丸かじりすることは、多分、しない。
「はぁい、ではぁ、お肉焼きましょう」
 アキはごそごそと籠から肉を取り出す。
 さしがしっかりと入っている。
「アキ先生、これ高級な肉じゃないですか?」
 ケイはおそるおそる指をさす。
 アキは悪い笑みを浮かべた。
「学園のお金ですからねぇ。ちょっとくらい贅沢しても許されるでしょう」
 ちゃっかりしている。
 アキに釣られるように、三人も悪戯をたくらむ子供のように笑みを浮かべる。
「なら、ちょっとくらいハメ外しても許されオールオッケーなかんじぃ?」
 チョウザが取りだしたのは、発泡する麦茶に泡を浮かべたものを詰めた缶(ノンアルコール)。
 そんなチョウザに悪ノリするように、プラムはカシスジュースにオレンジジュースを混ぜたもの(ノンアルコール)を作る。
「お酒は駄目ですよ?!」
 びっくりするケイには、アキがお手製の梅シロップを炭酸水で割ったもの(ノンアルコール)を渡した。
「えー、ではみなさん、もう食べちゃっていますが、乾杯しましょうぅ。かんぱぁい」
 かんぱーい。
 三人はそれぞれ自分たちが選んだ(作ってもらった)ノンアルコールカクテルやノンアルコールジュースで喉を潤す。
 砂浜で飲むカクテル(ノンアルコール)はどうしてこうも美味しいのだろう。
 ちょっとした背徳感を抱えながら、飲み物と肉とマグロを順々に口に入れていく。
 海、最高。
 学園の金で食べるバーベキュー、美味しい。
「アキ先生、何飲んでるんですか?」
 雰囲気でテンションが上がり始めたケイが透明な液体(有アルコール)を飲んでいるアキに声を掛けると、アキは何でもないことのように紙コップを掲げる。
「蒸留酒ですぅ。お酒なのでぇ、分けてはあげられませんがぁ」
「へ、へぇ。蒸留酒……。度数、強そうですね」
 ケイ、引き気味になるの巻。
 ロックでも何でもない、ストレートで飲んでいるアキは首を傾げた。

「ビーチバレーやるってー」
 宴もたけなわ。
 お肉もマグロも食べ尽くした彼らは食後の腹ごなしということでマリンスポーツに興じる。
 お腹がぽんぽこりんになってもおかしくはない量をぺろりと平らげていたが、全然お腹はぽんぽこりんになっていない。
 まったくもって羨ましい。
「アキ先生、頑張りましょう!」
 ケイの意気込みを、アキは微笑ましく眺める。
「ザコちゃんたちに勝つってさ」
「ほう? この俺とザコちゃんの最強コンビに勝てるかな?」
 このプラム、ノリノリである。
 チョウザとの掛け合いは、とても生き生きとしていた。
「アキ先生、パス!」
「はぁい、そぉれぇ」
 高く舞い上がるボールは、チョウザの胸元に吸い込まれる。
「よ、っと、神父サマー、出番ー」
「任せろ。スーパーノヴァ・アタック!」
 ※ただのアタックです。
「えっ」
 びっくりするケイの後ろ、アキがスライディングレシーブを決める。
「グラヴィティ・クイーンと呼ばれた私は、ボールを落とさない……!」
 おい、キャラ。
 アキの普段ののんびりキャラはどこへ消えたのか。
「アキ先生?!」
 え、これ、俺もやるの?! と叫んだケイの正面。
 チョウザが高く飛び上がる。
「ルール・ブレイカー!」
「ルールはブレイクしちゃダメです!」
 弾き返したボールは高く垂直に打ちあがる。
 どちらの陣営に落ちてくるかと身構えた、その瞬間。
 ざっぱーん。
 高波が波打ち際できゃっきゃしていた彼らを頭から濡らす。
 ぽたりぽたり滴る水に、ケイはぼそっと、必殺技の名前を呟いた。
「スカイ・ウェーブ……」
 ボールは波にさらわれて遠くで浮かんでいる。
 だれかが噴き出す。
 噴き出したのは一体だれだったのか、それはもう些細な事。
 海の波が押し寄せるように、そして広がるように、笑い声は広がっていく。
 きらきらと、きらきらと。
 海の飛沫のようにきらきらと、笑い声は四人しかいない砂浜に響き渡った。

 後日、ちょっと焼けたらしいプラムが鏡の前で満足そうにしていたのは、また別のお話。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:2000
【夏コレ!】マグロの食感イカの味
執筆:宇波 GM


《【夏コレ!】マグロの食感イカの味》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《新入生》 ケイ・アカツキ (No 1) 2019-06-22 14:20:20
トロより赤身の方がいいかな…。

っと一応、後続で初見の方が来るかもしれんから言っておく。
勇者・英雄専攻のケイ・アカツキだ。よろしく先輩方。

さてと、この巨大マグロのクラーケンだけれど、海上で戦おうとすると面倒ではあるか。
下手にカヌーなぞ使って海に出ても奴が泳ぐ度に繰り出してくる大波で態勢を崩されたりひっくり返されたりするだろうし

…まあ、泳いでるだけの、単純に大きいだけのマグロならそこまでの驚異でもないか。
身体の構造も普通のマグロと一緒なら、
とりあえず、どうにかして動きを止めてしまえばいい訳だし
そうすれば勝手に窒息して息絶えるだろうからな。

あくまでメインは海とバーベキューだし、ちゃちゃっと終わらせたいね。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 2) 2019-06-23 00:07:40
情報量~~~混乱するんだけど~~

【水泳】と【投擲】の技能があればスムーズに漁ができそうだけどね?

感電…も考えたけど、身が固くなりそうでこれは却下だな。

うーん、漁網と銛を使う感じだねえ。

《新入生》 ケイ・アカツキ (No 3) 2019-06-24 04:49:24
まあ、電気の元用意するのも手間が掛かるかもだしね…。
銛を使うならこちらで投げる役割を持った方がいいかな。投擲の技能も持ってるし。

とりあえず、縄括りつけた銛をぶっ刺して、浜辺まで引っ張り込んだ後に漁網で動きを封じるって感じになるのか?

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 4) 2019-06-24 23:01:10
プチラドや通常攻撃の雷属性はたかが知れているからねー

そう…なるねー
後、俺も船からマグロに飛び移って【集中】【精密行動】でロープ付きの銛をぶっさそうかと思うけど…
力強そうだし、二人で引っ張り上げるには結構知恵がいるなこれ。

海上で殺せるんだったら楽だろうけどォ

…力の法則を使うしかないだろねー

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 5) 2019-06-25 12:33:08
体内器官の構造気になったからちょっかいかけにきた。
マグロの見た目通りに普通のお魚な構造してんのか、イカと同じように墨汁嚢とか貝殻あんのかなって。
味はどーせイカかマグロの二択なんだろーけどさ。お魚わりと好きだから一応は食べっけど。

ザコちゃんも武器投げの…名称忘れたけど技能あるし、ロープもふた巻は持ってけるし。
【ひのきの棒】に持てる程度に銛何本か括りつけてロープ付きのまま投げっかなって。

で、個人的に考え思いみなのは、銛投げの前に投網のが良くない?って。
ほら、銛から伸びたロープ引いて引きずり出そうにも、三人に対してあの大きさのお魚じゃあ、ねぇ?
網で身動き封じ妨害して、その間にできる範囲で攻撃して弱らせてから銛、って感じのがいーんじゃん?たぶん。
銛着いたまま逃げられたー、ならまだいいけど。海の中に引きずり込まれかねないし。
リバイバルに転生する絶好の機会チャンスが欲しい訳でもないじゃん?ふふ。

《新入生》 ケイ・アカツキ (No 6) 2019-06-25 15:48:31
お、チョウザ先輩。ドーモ。

それもそうか。まず人数が人数だものね。
学園生徒になったからって怪力に目覚めた訳でもないしな俺達。

じゃあ、そのまま投網してもそのまま勢いで泳がれ続けるかもしれないし
出来るのなら浜辺にぶっ刺したひのきの棒か何かに結びつけてから行うって感じか。
投網自体はカヌーで近づいてそれを足場にして行えばいいね。

巨大マグロクラーケンに使うくらいだから漁網自体もとんでもなく大きいのを使う感じになりそうだけれど、大きさの描写もないし細かい所は気にしちゃ駄目だな。うんうん。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 7) 2019-06-25 23:01:02
お、ザコちゃんこんばんわ。
ギリギリの挨拶でごめんねー。

なるほどー網を逃走防止に使って、その上で銛で弱らせて最終的に逃走防止の網で引き上げる感じだね。
了解~。

そうすると、網をいくつかつなぎ合わせた方がいいかな…
頑丈さがいりそう。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 8) 2019-06-26 13:56:36
あれ、ザコちゃん的にはこう、ひのきの棒に直接銛いくつか巻き付けて、
装備武器を投げる、って説明な技能が適応するようにかつ威力あげるつもりではいたんだけど。

はねっ毛のゆーしゃ様がいうように地面にぶっ刺しぶん投げの方がいい?
あと、引くのは結局銛に付いたロープなの?網の方な感じ?

網繋ぎ合わせんのはザコちゃんができっかな。たぶん。
お【裁縫】の要領でどうにかなるでしょ。解いて編むだけなら針も糸もいらないだろーし。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 9) 2019-06-26 22:42:58
うん?
俺プラン間違ったかな?
認識が

大きな網を製作し、マグロ(大)の動きを封じる。
強い力で引っ張られ、海に引きずり込まれるのを防止するため、網はあらかじめ砂浜に立てた棒に結び付け、固定する。
その後、戦闘開始。

って感じだったんだけど。
で、杭の役目をする棒は、ザコちゃんのひのきの棒は武器として使うからその辺の棒状のものや、俺の杖(高いから多分折れない)にするつもりだったよ。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 10) 2019-06-26 23:02:30
あー、なるなる。微妙にふわっとわかった、気がする。たぶん。
銛は銛で括りつけてぶん投げしてー、それはそれとして拡大拡張した網にロープ結んどいて、
その端を浜辺にぶっ刺したなんかに固定、ってことでいーのかな。
それこそ小屋とかあるなら手っ取り早いんだけど。さすがにないか。

ギリギリまで見るようにするとはいえ、さすがにそろそろ仕上げ始めっけど、ま、やらかさないよーにだけ?

《新入生》 ケイ・アカツキ (No 11) 2019-06-26 23:16:06
そうだね。銛とはまた別に浜辺に固定した網を投げてマグロの動きを阻害する。
とりあえず投網する役としては投擲の技能もあるから俺がしようかなって感じだった。

浜辺周辺の状況も一応確認してから網の設置をするようにプランでは書いておくか。
実際、建造物的なものがあれば、そっちの方が網とかの固定先として見ても安定感あるしね。