家族想いで理知的な反面、好奇心に従順すぎる女性。 子供の頃から仕事に明け暮れていて友達がほとんどいない。
母国に残してきた家族と、お世話になった図書館司書のエルフには、18歳の頃の未熟な魔法で作った伝書箱をつなげてあるので時々手紙を送っている。 魔法陣を描いた木箱に手紙を入れると、早ければ3分、遅いと一週間かかって手紙が相手の木箱に転送される。 ……だいたい細切れの紙片となって。
「改良が必要だが、まあ読めんこともないしいいだろう」
放浪中は得意なカクテル作りでバーでバイトをしつつ、その町の図書館や資料館を巡るスタイルで知識を得ていた。 見た目は酒場に出入りしている派手めなお姉さんなので、めちゃくちゃ喧嘩に強そうだと思われがちだがその実そうでもない。
「意外か?ひ弱な乙女だ、手荒なことはしないでくれ」
自己流の魔法はあんまりひ弱じゃない。 しつこいナンパやセクハラは積極的に魔法で撃退するし、客の女の子が絡まれていれば必ず助ける。
「すまんな、他人の体に許可なく触れる奴は嫌いなんだ」
学園では興味のある物事に心置きなくのめり込み、今まで自己流でやってきた魔法を極め、同志を得て横の繋がりを深めたいと考えている。
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西方の国の王都にある、小さいが活気のあるバーで生まれ育つ。
8歳 母が病死。この頃から4つ上の兄と共にバーの手伝いをして育つ。 家族仲はよく、平和な毎日を過ごす。
12歳 買い出しの帰りに同年代の子供に声をかけられて遊びに誘われる。 しかし、子供のいたずらに使う魔法も、流行りの読み物も知らずに馬鹿にされる。 これを機に、買い物帰りに図書館に通うようになる。 顔見知りになった司書の勧めでさまざまな本を読み漁り、独学で魔法の訓練も始めた。
家族もバーも好きだが、店の外に広がる世界を思って空想に耽る日々が続く。
17歳 兄が年上の彼女と結婚。 心からの祝福を贈りつつ、人手も足りるようになったので家を出ること望むようになる。
18歳の夏。 忘れもしない誕生日。閉店後、父に呼び出される。 「すまない。お前をとうとう大人になるまで縛り付けてしまった。何でも望みを言ってくれ。それが俺からのプレゼントだ」 彼女は答える。 「私はもっと知りたい。何って、何もかもだ」 父は涙を堪えて微笑んだ。 「ならば行くといい。母さんも、きっとそうしろと言うだろう」 旅支度は済んでいた。 お守り代わりの図書館の利用証をポケットに、バックパック一つで彼女は旅に出る。
何年も色々な国をさまよった。 知りたいことだらけだった。 好奇心だけが行動原理の彼女が、ようやく辿り着いたのがここだった。
何もかもがきっとここにある。
ヴィオレッタは確信を深めるべく、学園の扉を叩く。
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