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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド
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秀典
タケル
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狼煙
悪魔のきの
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水無
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不知火氷雨
水樹らな
根来言
Motoki
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樹 志岐
るう
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白兎
泥舟
じょーしゃ
革酎
間代 空
江戸崎竜胆
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みかろっと
ウケッキ
すぺぱー
ユウキ
K
毛布32
帯坂湊
夏樹
村雨
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海太郎
ひたて
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佐渡れむ
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ミラちゃん家――嘘かまことか
K GM
ジャンル
推理
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2021-01-26
予約期間
開始 2021-01-27 00:00
締切 2021-01-28 23:59
出発日
2021-02-04
完成予定
2021-02-14
参加人数
0 / 8
●ウソも方便 シュターニャ。 ビジネスタウンの一角にある高層建築――各地で観光業を展開している『ホテル・ボルジア』の本社。その社長室。 「新年の浮かれた気分も一段落ね。で、【赤猫】をサーブル城から排除する算段は出来た?」 身をぴったり寄せて聞く【ラインフラウ】に【セム・ボルジア】が答える。 「一応。これまでに得た情報からするに赤猫は、【黒犬】同様自分にかけられた呪いに反発を抱いてます。まずはその感情を利用して、こちらに対する警戒心を低下させようかと」 「ということは、呪いの解除を手伝ってあげるわけね。学園の子たちが今、黒犬に対してやってるみたいに。もっともあなたのは、手伝ってあげる『ふり』でしかないんだろうけど」 「ええ。いずれ始末するにしても、最初から敵対的な姿勢で臨むのは下手なやり方です――ことに桁違いな力をもつ相手には。ある程度信頼関係を築かない限り、策を弄することも出来ませんしね」 「わー、悪人。そういうとこ本当に好きよセム。やっぱり結婚しない? 私はいつでもそうしていいわよ?」 「ご冗談を」 「冗談じゃないんだけどなー。あなたったらいつもそういう反応。つれないわー……まあでもそういうことなら私、交渉役を務めてあげていいわよ?」 ●赤猫だけが知っている グラヌーゼ、サーブル城。 少女の姿をした赤猫は、『わーお』と鳴き声を上げた。 緑の目を底光りさせ、眼前に広がる豪奢な地下通路――彼女にとって、不愉快千万な思い出と強く結び付いた場所――を見やる。 「いつの間に、ここ、水がなくなった?」 道そのものに問いかけるように一人ごち、足音も立てず進む。鼻をひくつかせながら。 「人間の匂い、残ってる。古臭くなってるけど」 赤猫は知っている。この通路がとある部屋に通じていることを。その部屋に、ノアの呪いについて記された本が保管されていることを。 しかし今に至るまでの長い年月、彼女は、その本を捜し出そうとしなかった。 第一には、『グラヌーゼの悲劇』が起きた頃、ノアが通路を水没させてしまったから(水の中をくぐって行くなんて、赤猫にとっては全く、身震いするほどいやなことなのだ)。 第二には、ノアが本に『持ち主以外の者が触れたら発動する呪い』をかけているだろうと確信していたから。 赤猫は黒犬と異なりノアと居住空間を同じくしていた。それゆえ、黒犬よりもなお彼らのやり方を熟知している。 呪いをかけるときは簡単に効果が破られないよう、何重にも鍵をかける。あるいは破るという行為自体が落命のトリガーになるよう仕組む。そういう事例が実に多くあったのを、彼女はよく覚えている。 (だから呪いを完成させる前にあいつらを殺さなきゃならなかったというのに、黒犬のバカがしくじったせいで……いつまでも荒れ地をうろついていればいいものを、城に入り込んでくる。本当に余計なこと) 酔いで濁った目を据え彼女は、電流を走らせた。そして、ドーム型の天井がある小空間に入った。 じめついた床の上に魔王像が倒れ、焦げた革表紙と羊革紙の切れ端が散乱している。 赤猫はすぐさま悟る。ここに匂いを残している人間の手ですでに、本が開かれたということを。その人間が、以前黒犬とつるんでいたカサンドラなる者であるということを。 「ということは、呪いは発動済みということね。なるほど。それで黒犬とつるんでた人間、消え損ないになったんだ」 少し前人間から聞いた話によれば、黒犬は解除方法をまだ聞き出せていないらしい。 赤猫としては、そのままであり続けるほうがいいと考える。先にも言ったように、ノア一族の呪いは多重構造なのだ。下手に解除を試みた結果状況を悪化させるという可能性も、十分考えられる。 赤猫は魔王の像の台座に座り込み、もしゃくれた赤毛を神経質に撫でる。 「ポンコツの様子、探った方が、いいかな」 と、彼女は、唐突に顔を持ち上げた。城に住まう取り巻き猫たちの鳴き声が聞こえてきたのだ。 「誰か、来た?」 ●酒の肴はなんじゃいな 夜のサーブル城。 城壁の上に立っているのはラインフラウ。 周囲には大勢の猫が集まり、うさん臭そうに彼女を見ている。 そこへ相変わらず泥酔している赤猫がやってくる。 「こんばんは、初めまして赤猫さん。私はラインフラウという者なんだけど」 挨拶するラインフラウに赤猫は、鼻をひこつかせた。やや前のめりな姿勢を取っているのは、攻撃するかしないかの線上に気持ちがあることを指す。 「お前、前に見たことがある。ほかの人間と一緒に、ここへ入ってきたことあるわよね?」 ここで背を向けたら、間違いなく襲ってくる。そう心得てラインフラウは、なるべく相手と目線を交錯させないようにしつつ答える。 「あらあ、覚えてもらっていたのね。うれしいわ。そうよ、私、ここに来たことがあるの――あ、よかったらこれをどうぞ」 彼女は高級酒がぎっしり詰まった紙袋を、相手に渡す。 「おー、酒」 赤猫は愉快そうに手を打った。遠慮会釈なく酒瓶を手に取り、がぶ飲みし始める。ではあっても、ラインフラウから気をそらしたわけではない。一挙手一投足の動きを探っている。 そのことを意識しながらラインフラウは、話し始める。 「赤猫さん、黒犬さんとの呪いについてなんだけど、もしかしたら私、それを解消出来るかも知れないわよ」 赤猫は『へー』と白けた声を出した。 「お前、ノアの呪いを解けると思ってるの?」 ラインフラウはふふっと笑う。 「いいえ、そんなこと全然。でも、呪いをよそに移し替えることなら確実に出来ると思うわ」 赤猫は瞳孔を丸くし聞き返す。 「移し替える?」 「ええ。黒犬とあなたにかかっている『命を繋ぐ』と言う呪いを、誰かに肩代わりしてもらうの」 ●情報の限られた共有 フトゥールム・スクエア。 居住区域『レゼント』にある学生に人気のカレー食堂『おいらのカレー』。 「――ということで、ラインフラウが赤猫から色々話を聞き出してきてくれました」 生徒達を前にして、セムはそう言った。タバコを携帯灰皿でもみ消しながら。 「それについて知りたいことがあれば、なんなりと聞いてください。その代わりあなたがたからは、呪いについて今知っているところを私に教えてほしい。情報共有しましょう。お互いの今後のために」
Mid Winter Fes!
SIGINT GM
1500
ジャンル
日常
タイプ
EX
難易度
簡単
報酬
通常
公開日
2021-01-20
予約期間
開始 2021-01-21 00:00
締切 2021-01-22 23:59
出発日
2021-01-30
完成予定
2021-02-09
参加人数
2 / 8
「はぁ……さむっ」 それは誰の声だったのか? フトゥールム・スクエアには多くの学生が在籍しているが、その多くが特に寒さを感じる今年の気候に、体をぶるぶると震わせている。外で授業を受けていた学生は、授業が終わると駆け足で校舎や寮へと戻っていく。移動教室をしている学生は手袋を着用してなお、手をこすり合わながら吐息で暖を取ろうとしている。中には上着の下に何枚も着込み、だるまのようになっている学生もいた。その学生に雪が積もればそれこそ雪だるまというのだろうか? そんな、せっかくの快晴なのに、どんよりとした曇りのように感じる寒空の下。一人の女性が呟いた。 「ふぅ~……。こんな寒いんだからアガってかないと、やってらんないよ」 彼女の名前は【ディージェイ・アンネリネ】。芸能・芸術コースの教官だ。噂によると、彼女の名前は本名ではなく自称らしい。おおよそ聞いたことのない言葉ではあるが……アンネリネはまだしもディージェイとはいったい何の意味があって自称しているのだろうか? 閑話休題。 確かにこんな寒い日がずっと続いていると皆から熱気が、やる気が失われていくのも頷ける。 こういう時に自然界の動物たちはどうやって寒さを凌いでいるのだろうか? 例えば冬眠というものが真っ先に挙げられる。体力を温存するためにじっと動かず、なるべく暖かいところで丸まって過ごす。もしくは地中であったり水中で過ごす。どれも厳しい自然を生き抜くためにそれぞれに適した方法なのだろう。 しかし、この方法を学園生がとるわけにはいかない。そんなことをしようものならば、もれなく留年という恐ろしい言葉を聞く羽目になってしまうのだ。 では他を考えてみよう。それは密集して、お互いの体温を使って寒さを凌ぐというものだ。なるほど、これならば一理あるかもしれない。そこに運動による熱が加われば……屋外だとしても寒さを忘れられるかもしれない! さて、こんなまどろっこしいことをつらつらと理屈をこねくり回して考えていたアンネリネであったが、ようはやりたいことは最初の一言に集約されていたのであった。 『アガってく』。この場合ではテンションがアガってくるととらえるのが正しいだろう。即ちこういうことだ。 (クラブイベント。やってきますか!) M.W.F.……ミッドウィンターフェス。またの名を真冬の音楽祭。これはアンネリネが勝手にフェスを作りだし、勝手に準備を進めて、勝手に設営をし始めたイベント。 もちろん開催の建前は決まっている。学生に舞台経験を積ませるということだ。つまり立派な実践的授業だ。なにも、問題ない。絶対面白くなるし、謎の力が働いて開催にこぎつける自身もあった。だからあとは――。 「ディージェ……もとい学生たちを集めないとね!」
これが俺たちの生き様だ!
海無鈴河 GM
1000
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
とても簡単
報酬
少し
公開日
2021-01-19
予約期間
開始 2021-01-20 00:00
締切 2021-01-21 23:59
出発日
2021-01-27
完成予定
2021-02-06
参加人数
2 / 4
「村人とはどうあるべきか」 男がそんな哲学めいた問いを発した。 冬めいたフトゥールム・スクエア。その本校舎のとある教室からである。 「我々村人は生産、流通、娯楽……様々な側面から、勇者や魔王をはじめとした他の人々の生活を支える使命がある」 声の主は【ダミアン・オットー】。村人・従者コースの教官をしている。昔は勇者だったが、今は学園で教鞭をとる傍ら、村人(トマト農家)人生を謳歌しているという異例の経歴の持ち主だ。 きっちり着込んだスーツの上からでもわかるぱっつんぱっつんの胸筋が、彼の武勇伝を物語っている。 「しかし、我々は力を持たない。武器を持たない」 (これほど説得力皆無の言葉も他にないですねぇ……) などと授業のサポートに入っていた考古学教師【エヴァン・テール】は思った。 「しかし、魔物や天変地異の脅威は常に迫っている。そこで我々はそれらの事態に遭遇した際、『村人として』どう行動すべきか、反応すべきか。それをこの授業を通して実践してもらう」 題して『村人実践学』である。 ダミアンはバン、と大きな手のひらで黒板を叩いて示した。 「本日行うのは『魔物が村を襲った際の村人らしい対処法』の実践だ。4人以内のグループに分かれ、学園で用意した模擬村を使用して魔物の襲撃から村の制圧までの一連の流れをシュミレーションする」 エヴァンは横から補足をした。 「村の状況は、穏やかな春の気候で、晴天です。時刻は昼。授業開始の合図とともに、魔物――私が作成した授業用のものですが――が、村の門を破壊しようと攻撃を始めます」 その後15分をかけて、門を破壊。10体の魔物が村に侵入してくる。 「なにごともなく村に侵入した魔物は45分で村を制圧したとして、撤収します」 「つまり諸君らには、この計60分の間、どんな行動・反応が村人らしいのか、を考えて過ごしてもらう」 と言われた物の、具体的には……? 生徒の表情はぴんと来ていないようだ。 ダミアンはそうだなぁ、と腕を組んで考え込み、ぽん、と手を叩いた。 「たとえば、魔物に果敢に挑んで、綺麗な死にざまを見せてもいいぞ。勇敢な村の青年の最後、のような感じで」 まあその後ずっと地面で転がっているのは辛いかもしれんけどなぁ、あっはっは。 軽い調子で言われ、生徒たちの表情がドン引きのそれに変化した。 「まあ、偽物の魔物なので実際に死にはしませんから……そこは安心してください」 エヴァンのフォローはフォローじゃない。 「他にも、自分たちの村や大切な人を守るために防御を固めようと奔走するのもまた一つの行動ですね」 「あとは、ひたすら『今日はいい天気だなぁ』と言いつづけたりするのもいいかもしれないな。危機にも動じず、普段通りの言動を心がけるのも村人としての在り方の一つだろう」 「ダミアン先生は出す例が極端ですよね……」 呆れ気味のエヴァンは、こほんと一つ咳ばらいをして、 「注意事項等は配布した紙にまとめていますから、しっかり読んで準備を整えてくださいね」
ミラちゃん家――幻惑の森探検隊
K GM
ジャンル
冒険
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2021-01-12
予約期間
開始 2021-01-13 00:00
締切 2021-01-14 23:59
出発日
2021-01-21
完成予定
2021-01-31
参加人数
6 / 8
●虫食いだらけの初夢 私はランプを手にして暗い廊下を歩いていた。 柱にも壁にも華麗な装飾が施されている廊下には、窓が一つもない。外からの明かりは入ってこない。 足を進めるたび起こる細かな波音。 廊下は一面水で覆われているのだ。深さは膝下くらいまで。だが、もともとはもっと深くまで水没していたはずだ。天井近くまで浸っていた形跡がそこかしこに残っているのだから。 どうして急に水がここまで引いてしまったかについては、思い当たるふしがある。グラヌーゼ南部における新規貯水池の掘削だ。あれでここに注がれていた地下水の流れが変わったのだ。 ランプに閉じ込められた魔法石の輝きが床に反射し、細切れとなってたゆたう。 進んで行った先は行き止まりだ。ドーム型の天井がある小空間。礼拝室のような趣がある。正面にある壁の窪みに、魔王を象徴する像が安置されている。 そこに『あの』本が置いてあった。 私はランプを像の脇に置き、その本を手に取った。開こうとした。 その瞬間本が燃え上がった。後から思えば、第三者が触れた時点で消滅するような仕掛けが施されていたのだろう。 私は思わず本を水の中にほうり込んだ。激しい蒸気が上がる。 はたと我に返り、震える手で本を取り上げた。分厚い表紙がぼろっと崩れ落ちた。 でも、大丈夫、中身が全て焼けているわけではない。読めるところもある。 ランプの光でバラバラになった頁を読みふける。呪い、呪い、呪いに関係する記述はどこだろう。 ああ、あった。ここに。 ――ああ、そうなのか。呪いにはそういう作用も含まれていたのか。 やっぱり彼は私に嘘をついていたのだ。そうなんじゃないかとは薄々感じていたけれど。 もし呪いを解いたら、彼は、そして赤猫は××××××××。 それは人間全体にとって危険なことではないだろうか。 だけど私は彼に約束した。呪いを解くと。その約束を反故にしていいものだろうか。私の身に危険が及ぶことについては、もちろん覚悟している。最初から想定してもいる。 だけどもし家族に、あるいはこの地に住む人々に、彼が怒りの矛先を向けるようなことでもあれば。 ……決められない。私だけでは手に余る問題だ。 とにかく、少なくとも、これは彼には見せられない。 ××××に×××××て××××隠す×××幻惑の森××××××××××××。 「!?」 【カサンドラ】は跳ね起きた。 数秒間はあはあ息を荒げ両手を握り締め、自分がどこにいるのか思い出す。 窺うように窓へ視線を向ける。夜明け前だというのに、やけに明るい。雪が積もっているのだ。 「夢……」 呟いて自分で否定する。いいや今のは夢ではない。夢にしては生々しすぎる。あれは実際に起きたことなのだ。でなければこんなに冷や汗が出るものか、胸が苦しくなるものか。 ●夢の続きの現実 新年早々カサンドラは言った。ひどく張り詰めた顔で。 「あの本をどこで見たのか、思い出しました。地下通路の中です」 その言葉を聞いた【アマル・カネグラ】が思い浮かべたのは、『果て無き井戸』の一つ――【赤猫】とその仲間が通用口として使っているもの――だった。 そこからはすでにノアの遺物が複数発見されている。カサンドラが探している『本』もまた、そのノアたちが所有していたもの。だからてっきり同じ場所のことを言っているのに違いないと考えたのである。 だがカサンドラは彼の見立てに対し、『いいえ』と首を振った。 「その井戸ではありません――別の井戸です。一応思い出せる限り絵に起こしてみたのですが……こんな感じなんです」 アマルは、カサンドラが広げたスケッチブックをのぞき込む。 それは『地下通路』という単語からイメージされるものとは掛け離れていた。予備知識がないままだったら、宮殿の一角を描いたのかなとしか思えない。浸水してはいるが。 「これが通路の終着点です」 ドーム型の天井がある小部屋についても同様だ。不必要なほどの装飾に満ち満ちている。 「身分の高い者専用の通路、とかだったんですかねえ……これで行き止まりだったんですか?」 「はい。この地下道は、多分、転移魔法によって城への出入りを行うタイプのものなのではないかと。私はここで本を見つけたんです。それから、隠した。幻惑の森のどこかに」 こうまで断定的な言い方をするからには、相当量の記憶が蘇ってきているらしい。 アマルはふと、カサンドラが生前最期にいた場所が、他ならぬ幻惑の森近辺であったことを思い起こした。 (あの森にもそういえば、ノアが呪いをかけていたんだっけ……今も生き続けているほど強力な) すうっとアトリエが薄暗くなった。厚い冬雲が太陽を遮ったのだ。ここのところ雪模様が続いている。 「……私は、今から幻惑の森に行って、その本を探そうと思います」 「えっ、い、今からですか?」 「はい。今でなければ出来ないと思います。これだけ天気が悪いなら、赤猫も容易に城から出てこない。だから、グラヌーゼでもある程度安全に探索が出来るのではないかと……」 それは確かにそうだ、とアマルは納得した。真ん丸い顔をほころばせ、どん、と自分の胸を叩く。 「じゃあ、善は急げだ。僕も一緒に行きますよ。他の皆にも声をかけます。ところでカサンドラさん、【黒犬】にはこのことを知らせますか? 話を聞いたらついてきたがるんじゃないかって思えるんですが」 「……いいえ。探索が終わってから経過を知らせることにします。どの道彼は、まだ満足に動けないでしょうから」 カサンドラがそのように言ったことに、アマルはほっとした。この調査に黒犬が参加してきたら、マイナス要素にしかならない。本には、呪いの解き方が載っているかも知れないのである。黒犬たちの呪いを解くべきか解かざるべきか一致した方針が出ていない段階で、それを相手に見せる形になるのは、さすがに避けた方がいい――そう思ったから。 ●現実の続きの現実 【トーマス・マン】はカサンドラから『幻惑の森』探索に行くこと、並びに自分達が帰ってくるまでそのことを黒犬に知らせないよう言い聞かせられた際、直ちに反論した。 「どうして?」 彼は敏感に察したのだ。カサンドラの黒犬に対する物言いに、これまでになかった微妙な陰りが生じていることに。 だからしつこく食い下がる。 「本が見つかりそうなことは教えてあげてもいいじゃない。森へ一緒に来て欲しくないなら、そのことを手紙で言えばいいじゃない。そしたら黒犬も無理して先生達について来たりしないよ」 カサンドラは笑うとも泣くともつかない微妙な表情を浮かべ、言った。 「……それだと、彼をぬか喜びさせることになるかもしれないから。本がちゃんと見つかるかどうか、分からないのよ」
冬季、雪合戦演習!
SHUKA GM
ジャンル
戦闘
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
通常
公開日
2021-01-09
予約期間
開始 2021-01-10 00:00
締切 2021-01-11 23:59
出発日
2021-01-18
完成予定
2021-01-28
参加人数
3 / 8
季節は冬の真っただ中。 昨日記録的な大雪に見舞われた屋外演習場は未だ雪かきもされておらず、真っ白に染め上げられている。 そんな演習場に生徒たちが集められていた。 生徒たちの前には一人の細身の男が立っている。 「やあ、僕の名前は【ニルバルディ・アロンダマークォル】、ここの卒業生で冒険者として現場でバリバリ働いている超優秀なお兄さんだよ。おっとそこ、おっさんなんて言ったら首と胴体が離れることになるから注意しようね。これでも僕はギリギリ二十代なんだ」 講師の男は朗らかに笑う。 腰に提げた双剣、体のラインが分かる身軽そうな服装。 切れ長の目と整った顔立ち、細身ですらりと背の高い彼は、忍者や暗殺者を思わせる雰囲気を醸し出している。 「先輩……いや、今は講師だったね。その人の紹介で今日は遊……ゲフン、特別講師として招待された。今回君たちの実戦演習を担当させてもらうよ」 そのひょうひょうとした態度とは裏腹に、武芸に通じている者であれば油断ならない気配を敏感に察知することだろう。 ここの卒業生で講師の友人、さらには現役の冒険者としても活躍しているのだから、その経験も技能もかなりのものに違いない。 「君たちはとても優秀な学生だと彼女から聞いているよ。今日は存分に君達の実力を……と思ったんだけどね」 そこでニルバルディは周囲を見渡して苦笑を浮かべ両手を広げた。 「こうも雪が降り積もっていては演習どころじゃないね。いやまあ雪の除去を待ってもらうよう頼んだのは僕なんだけど。せっかくだし、今回君たちには特別な演習を用意したかったからね。このままにしておいてもらったよ」 そう言うとニルバルディは一本の大きな旗を用意し、演習場のど真ん中に突き立てた。 軍隊が拠点に立てるような背の高い旗で、そこには学園の校章が描かれている。 「君達にはここで雪合戦をしてもらおう」 ざわりと周囲がざわめいた。 雪が降ったんだからレクリエーションでも行おうというのだろうか? 「まさかとは思うけど、勇者を目指そうという君たちが雪を丸めて投げ合うようなキャッキャムフフな青春の一コマを思い浮かべていたりなんてしないよね?」 圧のあるにこやかな笑みに一部の生徒が目を逸らす。 一方で初めからその意図に気づき、力強く頷き返す生徒もいた。 「君たちはこれまでの学園生活で様々な経験を積み、技能を習得している事だろう。だが時にはその力を万全に振るえない環境だって存在する。状態異常然り、周囲の天候や地形然りだ」 そこでニルバルディは指を立ててくるくると回しながら歩き出した。 「だが考えてもみたまえ。逆にそれらの周囲に存在するものをとことん利用して状況を有利に運べられたらどうだい? どんな状況でも環境を味方につける。それくらいの気概をみんなには見せてほしいと思っているんだ」 唐突にニルバルディはパチンと指を鳴らした。 すると彼の足元に魔法陣が浮かび上がり、そこから一体の雪の人形が姿を現す。 大きさは彼と同じくらい。 粘土細工のようなぐにゃぐにゃとしたもので、両手をぶらんぶらんとさせている。 「こいつの名前はアイスドール。見ての通り雪を人の形に固めて操る簡易の分身魔法だ」 ニルバルディは短剣の一本を引き抜き軽く薙ぐ。 それだけでアイスドールは雪塊となり、ボロボロと崩れ去ってしまった。 「見ての通りアイスドールは脆い。武器で攻撃すれば簡単に崩れ去ってしまうデコイで、主にトラップ探知や偵察に使われるんだ」 今度は二体のアイスドールが呼び出される。 呼び出された二体は壁に向かって走り出した。 見た目に寄らず足は速い。そして壁に到達したアイスドールは丸い手足を壁にくっつけてよじ登り始める。 耐久性こそないものの、身体能力自体はそれなりに高い。 特に速度に関しては格闘家並みの速度を持っているようだ。 「という訳で具体的な話をしよう。君たちにはこの『雪』を使ってこの演習場の防衛を行ってもらう」 戻ってきた二体のアイスドールが手を繋ぎその場でぐるぐるとダンスを踊るように回りだす。 かなりコントロールが効くらしい。 臨機応変な行動をとることも可能だろう。 「僕はこれからこのアイスドールを……そうだな、一人頭50体くらいにするか。勝利条件はこのアイスドールたちから制限時間一杯旗を守ること。もちろん迎撃に際してドールを破壊してもいいし、制限時間内にドールをすべて破壊できれば特別報酬を用意すると約束しよう」 その言葉に生徒たちが囁き合う。 いくら弱いとはいえ、すばしっこいアイスドールの大群に雪崩込まれれば、数の暴力であっという間に押し込まれてしまうだろう。 「もちろん君たちには準備時間を与えるつもりだ。午前中はこの拠点に防衛陣地を作ってもらう。昼食を挟んだ休憩後に演習開始だ。魔法や技能を駆使して頑強な要塞を作ってくれたまえ。ただし、すべては『雪』を加工して使用すること。これはドールへの迎撃にも適応される。今回君たちはドールに対しての武器や魔法、技能の使用は禁止だ。すべては雪を用いて戦うように」 ニルバルディは歩きながら指をふるふると降り始めた。 「火をくべれば溶けて水になる。風に巻けば煙幕になる。土で踏み固めれば何よりも硬い岩になる。やりようはいくらでもある。技術と知恵、チームワークを駆使して最高の要塞と罠を作ってみてくれよ?」
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