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【新歓】幕間:君がための、プレリュード


ストーリー Story

●幕間
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』。
 今ではエイーア大陸の者なら誰もが知っているその学園は、『次代の勇者』育成を掲げる、巨大教育機関である。
 昨今では、時世の流れもあり。勇者としての教育以外にも、この世界で快適に生き抜けるような技術(魔法や知識、芸能など)をカリキュラムに組んでいたりもするのだが。
 それこそ魔王が封じられた直後、『フトゥールム・スクエア』という機関が創立されたばかりの時は、魔王が封じられた後に残った『魔物』という脅威に立ち向かうべくして集まった、有志による『ギルド』という体裁であり、規模も今ほど大きいものではなかったらしい。
 それが今や、都市1つを丸ごと内包したり、ここならあらゆる知識が揃うと言われれる程の大図書館を持つようになったのだから、ヒトの力……特に『団結力』というものは、侮れないものだ。
 だから、なのかもしれない。フトゥールム・スクエアでは、種族、身分、性別、年齢……いかなる理由でもっても優遇や差別をされることはなく、ある意味では、実力主義の成果主義ともいえるのかもしれない。
 とはいえ、その中立さは、門戸の広さにも影響を与えている。
 いったいどんな魔法を使っているのか。学園に興味を持つ者の前に、どこからともなく表れるという『入学願書』にサインし、提出さえすれば、――『きみ』はすぐに、この学園の生徒のひとりとなるのだ。 

●Prelude
 そんな『きみ』が。この学園に入学してから、どれほどの月日が経っただろう?
 二期生であるならば、まだまだ入学したばかりのこの学園の広大さに、慣れない日々が続いているのかもしれない。
 一期生であるのなら、少しずつ自分の中に蓄えられていく力に喜んだり、逆に自分の不得手を発見したりして、悔しい思いをしているのかもしれない。
 いずれにしても、『きみ』はこの学園に辿り着き、それぞれの人生……自分だけの物語を紡いでいる最中だ。
 ならば今日は、『Magic of Delight(マジック・オブ・ディライト)』の喧騒に乗じて、少しばかり後ろをふり返ってもいいだろう。
 ――『きみ』はどうして、どうやって。この学園にやってきたのだろうか。
 叶えたい夢があったから? 果たしたい思いが、野望、決意が、胸にくすぶっていたから?
 そして『きみ』は。この学園に来たばかりの時、まず何を思い、何を為したのだろう。
 これは、『あなたのための物語』。その前奏曲を、今日は少しだけ、聞かせて欲しい。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2020-05-11

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-05-21

登場人物 8/8 Characters
《今を駆ける者》ダケン・ヴァルガー
 ルネサンス Lv15 / 魔王・覇王 Rank 1
「姓はヴァルガー、名はダケン。故郷は知れず、世間が呼ぶには流しの無頼。ま、よろしく頼むぜ」 「……って、駄犬じゃねぇ!?」 #####  狼系ルネサンス。  若い頃から正々堂々、スジを通して道理を通さぬ荒くれ者として世間様に迷惑をかけてきた年季の入った無頼。  本人は割とイケていたつもりだったが、ある時襲った貴族の娘から 『獣臭い』『薄汚い』『さっさと死んでくれないかな?』  と容赦ない口撃を浴びて脱落(リタイア)  一念発起して系統立った悪の道を修めるべく、学園の門を叩く。 ◆性格・趣味嗜好  一言で言って『アホの二枚目半』  前提知識が足りない系アホの子で脳筋単細胞。悪人ではないが、パワーオブジャスティス。  ひらめきや発想は普通にあり社交性も悪くないため、決められる場面では最高に二枚目。  いざという時以外は基本三枚目。足して二で割って二枚目半。  脱ダサ悪党を目指して清潔感は増したが、服装センスが致命的でやっぱりダサ悪党。   ◆外見補足  顔立ちは濃いが造りは悪くなく、黙って無難な服を着ればワイルド系イケメンおっちゃん。  服装センスの悪さは『イモっぽい』『田舎もの』といった類。  気合が入ると脱いじゃう系の人。
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。
《新入生》レナード・アドクリス
 ドラゴニア Lv12 / 武神・無双 Rank 1
「オレはレナード、よろしくな!」 「このアンクレットは特別らしーんだけど、オレにはよくわかんねーよ」 血の繋がらない兄弟たちと共に育ったドラゴニアの少年 冒険家の両親から託された謎のアンクレットを手に、彼は学園へ 容姿 ・青みがかった銀髪、活発な光を灯す藍色の瞳 ・左目の下に小さく三角のフェイスペイント ・角は黒、翼は銀色 ・右足に水晶のアンクレットをつけている 性格 ・真っ直ぐで前向き、熱くなりやすいのが長点で欠点 ・幼い頃から様々な種族の人に囲まれて育っており、人懐っこい ・おいしいご飯を食べるのが好き、仲間たちと食べるのはもっと好き ・強くなりたい。自分に課せられた使命の為に、兄弟の為に 好きなもの おいしいごはん、皆で雑魚寝 苦手なもの 苦い薬、長時間のお説教
《2期生》シルワ・カルブクルス
 ドラゴニア Lv15 / 村人・従者 Rank 1
細い三つ編みツインテールとルビーのような紅い目が特徴のドラゴニア 元々彼女が住む村には、大人や数人ぐらいの小さい子供たちしかおらず同い年程度の友達がいないことを心配した両親にこの学校を薦められて今に至る 一見クールに見えるが実際は温厚な性格であり、目的である世界の平和を守ることはいわば結果論、彼女の真の目的は至って単純でただの村人として平穏に暮らしたいようである しかし自分に害をなすとなれば話は別で、ドラゴニアらしく勇猛果敢に戦う 一期生にはたとえ年下だとしても「先輩」呼びをするそうだ 「私はただの村人、できる限りのことをしただけです」 「だれであろうと私の平穏を乱す者はすべて叩き伏せます」 ※口調詳細(親しくなったひとに対して) 年下:~くん、~ちゃん 同い年あるいは年上:~さん ※戦闘スタイル 盾で受け流すか止めるかでダメージを軽減しつつ、斧で反撃するという、いわゆる「肉を切らせて骨を断つ」戦法を得意とする
《ゆうがく2年生》ナツメ・律華
 ローレライ Lv13 / 賢者・導師 Rank 1
※アレンジ 他の人の絡み歓迎 名前:ナツメ(名前)・リッカ(名字) 目指せ大魔法使い! 追求せよ世界の真理! 【外見】 実年齢:14歳 外見年齢:10歳程度(つるぺた) ……まだ成長期は終わってませんわ! きっとあと数年のうちに素敵なレディにっ! 髪:三つ編み(しないと髪が爆発する…) 【中身】 明るく元気な性格 (よく言えば素直、悪く言えば分かりやすい) 探究心が強く、新たな知識を得るのは大好き 勉強したり本を読むのは大好き 田舎な実家では農作業や牛の世話をしていた。 大魔法使いになって世界の不思議を理解して その力で実家の畑の収穫を楽にするの! という大きいのか小さいのか分からない野望を持つ 田舎から出てきたので、お嬢様キャラで学校デビューを計ろうとするがすすぐにボロが…… 【口調】人と話す時はお嬢様(~ですわ、~かしら) 心の内や慌てたりすると素に戻る(~よ、~ね)
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《1期生》スナ・リーエ
 アークライト Lv4 / 魔王・覇王 Rank 1
 青緑色の透き通るようなボブウェーブの髪。 ルビーのような赤の双眸に白磁の肌。  彼女は『スナ・リーエ』 記憶はないけどのんびりマイペースをモットーに生きるアークライトの娘。  穏やか且つ儚げで繊細な雰囲気とは裏腹に、現在の自身の状況「アークライト化、魔王・覇王コース在籍」を内心かなり楽しんでいる。 楽しいことが大好き。 一人称は基本「わたし」たまに「すーちゃん」とも言う。
《ゆうがく2年生》空蝉・一季
 ドラゴニア Lv10 / 魔王・覇王 Rank 1
「空蝉 一季(うつせみ ひとつき)」 【外見】 黒髪短髪 ややつり目 トレードマークは白いマフラー 【性格】 クールで慎重 正義の味方に憧れを抱いている 人と違う部分が嫌いで鱗が見えてる部分は隠そうとする 【入学理由】 本当は英雄になりたかったが、自分がなれはしないと思っていた。 力はコントロールしてるもののいつ傷つける側になるか分からない為、入学を志願する。 ※アドリブ大歓迎!

解説 Explan

・時刻/場所
 思い出の範囲内でしたら、自由に設定が可能。

・プランにてお書き頂きたいこと
 以下の内容から1つお選びください。

 A:入学直前の『あなた』の一幕
  あなたが学園の招待状を受け取った経緯や理由、入学しようと思った瞬間の出来事など。
  入学を控えたあなたに関する思い出をお書きください。
  家族や恩師、友人など、個人NPCの登場も可能です。
  その場合はプラン/ウィッシュ/プロフのどこかに個人NPCの情報をお願い致します。

 B:入学直後の『あなた』の一幕
  たとえば、今も愛用する武器や防具を街で見つけた、寮の自室を自分好みにアレンジした。
  自分用の制服を調達しに行ったなど(参考:ozGM、『新品の制服はいかがでしょうか?』)。
  入学したばかりのあなたが、授業が始まるまでにとった行動や、体験したことをお書きください。
  その時は名前も知らなかったが、実は現在の友人とすれ違った(話した)ことがある、などの既知設定的な思い出も可能です。
  その場合はお相手様と一緒にご参加の上、それぞれ【●●さんと一緒】等のタグをご記載ください。
  (二人以上のグループ参加も可)

・できないこと
 時間を超越したり等、『この世界の常識で不可能とされること』については不可。
 世界観や種族設定的に不可能な内容についてもそのまま描写されませんので、ご理解ください。
 また、学園に生徒として登録されているPCを、個人NPCとして登場させることは出来ません。
 たとえば、学園に通っている血縁者との思い出を表したい場合は、必ず双方のご参加をお願い致します。

・その他補足
 参考:同GMの過去リザルト「ゆうしゃのふゆやすみ。」
 過去を振り返る形でなく、現在進行形/三人称視点による描写になります。
 公認/個人NPCと既知設定を結ぶことは出来ませんが、例えば『学園の前に倒れていて、職員に拾われた』など、どうしても『誰か』が必要な場合は、白兎の担当する範囲で指名が可能です。


作者コメント Comment
 エピソードの閲覧をありがとうございます、GMの白兎(シロ・ウサギ)と申します。
 本エピソードは、授業でも課題でもない、何気ない日常のお話です。
 
 今回のテーマは『前奏曲』、皆さんが学園での生活を本格的に始める、少し前です。
 皆様はいったいどんな経緯で、フトゥールム・スクエアの招待状を手にし、通うことを決めたのでしょうか。
 その際、家族は、友人は、あなたを応援してくれましたか? 
 それとは逆に、過去と決別し、『今』を生きるために、この地を踏んだかたもいらっしゃるでしょうか。
 そんなあなたは、この地に来て、まず何をしたでしょう?
 入学手続きを終え、新しい自分を、生活を作るために、街を散策しましたか?
 もしかしたらその間に、かけがえのない友人とすれ違った方もいらっしゃるのかもしれませんね。

 こちらの文章としましては、プロローグや既出リザルトをご参考ください。
 それでは、皆様のご参加を、心よりお待ちしております。


個人成績表 Report
ダケン・ヴァルガー 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●思い出
入学直前の『あなた』の一幕

●行動
「あー、うん…まだ1年だっけか」

同じルネサンスのはぐれもの仲間と徒党を組んで無頼…ならずものをしてた頃、
貧乏貴族からの借金の取り立てで、脅しとして娘を攫った時の話。

当時、イケてる悪党のつもりだったダケンは面白半分で貴族の娘を口説いたのですが
(といっても『売り飛ばされたら俺様が面倒見てやるぜ』『上客になってやるからな』みたいな、どこかズレたもの)

世間知らずで怯えた娘から

『獣臭い』
『薄汚い』
『さっさと○ねケダモノ』

と散々に罵られKO…男を磨き直すと徒党を外れ、ふらふらと学園へ。
(自己紹介参照)

…結果として割とイケメンにはなったのですが、それでいいのか

パーシア・セントレジャー 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【A】
私は気がついたら、廃墟の中の聖堂跡に居たらしい
たまに来る冒険者から、そう聞いたわ

外は様々な不死の者達が闊歩する、不死者の城とも呼ばれる廃墟らしい
だって、私はここから出られないから確かめようがない

だけど、出られない代わりに、この聖堂には悪しき不死者は入れないらしい
たまに外から
「ナンデ オマエダケ ソコニイル」
「ニクイ クルシイ」

とか呪詛が聞こえるけど

ある日、学園の研究者という人達が来た
ここの結界が、もう持たないらしい

その研究者は、転移の魔法が込められた巻物を使い……私をある部屋
学長室へ転移させた

いきなり、
「これが歴史に残るお姫様のおみ足か~」
とか言ってスカート捲る変態が居たけど
こいつ蹴っていい?

レナード・アドクリス 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
A 入学前、とある宿屋にて
初めて来る土地なので旅慣れしている義姉に着いてきてもらい

夜、明日の為に早く寝る…ね…
寝れねーー!!!緊張して目がばっちり
ばーちゃん家に初めて来た時ですらこんな緊張してなかった!

騒いでいれば義姉が苦笑しながらやってきて
「もー、レナードってば。寝れないの?」
寝れない!すげぇドキドキしてきた!
だってだって色んな人が来るんだろ?
オレ、トモダチできるかなぁ
「だいじょーぶ!レナードはいい子だから、きっとできるよ!」
…だよな!よし、寝る!

姉に教えられた言葉を胸に
足につけられたアンクレットをそっとなぞり
親父、かーちゃん
オレ強くなるよ
そしたら オレも冒険に連れてってくれるよな

シルワ・カルブクルス 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【B:入学した翌日の出来事】
制服を自分用に改造してもらったが、肝心なところを悩みこむシルワ
それは自身の戦闘スタイルとそのための装備だ
そもそも、元々シルワは山間部の村娘であり、戦闘経験などは無いに等しいのである
そんなこんなで制服姿で街を歩きながら悩んでいると目を惹いたのは瞳と同じくルビーのような紅い盾と斧。それらは、セットで売られていたのだ
木こりの娘でもあるシルワは親近感がわいわけだが、それを使うとして当てれるかどうか…でふと思いつく
それは、敵の攻撃の隙を突いて反撃をするというスタイルである

ということがあり、その斧と盾は今でも愛用しているのである

ナツメ・律華 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---

校内では「おほほほ」と平気な顔をしてる

でも、部屋に戻ると
お”う”ち”か”え”り”た”い”いいい(ベッドで号泣)
家族と離れるのは初めてで家が恋しい。

……そういえば、兄達が持たせてくれた謎の小包
どうしようも無くなったら開けろと言われたやけに思い荷物

開けてみると、中には家族からの手紙+さらに小包
頑張れとかお前ならできるとか前向きな言葉ばかり(犬の肉球スタンプまで)


「追伸:何度淋しくなっても大丈夫なように、あと30回分は手紙を中に入れてるぞ」
…つまりこの小包にはさらに家族の手紙が…マトリョーシカかっ!

ほんとうに……普段手紙など書き慣れていないはずなのに、こんなにたくさん。

うん、私も頑張るわ

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
入学の経緯、ねぇ。
ザコちゃんあれ、知り合いに学園についてきーてさ。
直後に願書飛んできてて。どーいう仕組みなんだか。
…そんときは持って帰…れなかったけど。
簡単に配っちゃっていーのかな、あれ。この世の全員入学したらどーすんだろ。

――
A
経緯:恩師に学園の話を聞く。多少興味を抱いたので願書は現れるが、屋敷脱走の痕跡を残せないため、持ち帰れず。(…度々手元に現れては隠していた。結局次に手にしたのは逃亡中)

恩師:斑に染った紅色髪の兎ルネサンスの老人。
自称モブ、自称くそじじい(当時の彼女は頑なに呼ばず)。森の荒屋に住む謎の多い元奴隷。
常に億劫そうで、時折皮肉げに擦れるような笑い声を上げ、自由の為に生きる者。

スナ・リーエ 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
まさか入学することになるとは思ってなかったです
けど すーちゃん昔の記憶がないのでずっとくすぶっているなんてもったいない上につまんないですし
いい機会ですよね

…そういえばわたしの制服できたとか
取りに行きますか

 取りに行った制服は特には改造もしていない、ただ自分のからだに合ったサイズ
あら 特に改造してませんけど良いですね すーちゃんこういうの好きです(うきうき)
着てみて良いです?
はい着てみます

空蝉・一季 個人成績:

獲得経験:29 = 24全体 + 5個別
獲得報酬:1224 = 1020全体 + 204個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
俺が入学した理由、か…
対した理由なんかじゃないんだ

いつか本で見たあの勇者のようになりたかった
それだけなんだ

勿論、あんな風になれるとは思ってない
俺は…俺は『化け物』だから…

小さい頃、俺は無知だったから
仲良くなった友達と遊んだんだ
俺は、全然、そんなつもり無かったんだ

でも、俺は相手を傷つけたんだ
ふとした瞬間だった
本当に悪気は…無かったんだ

その時友達と思っていたその子は俺に向かって『化け物』と言っていた
…その通りなんだと思う

化け物だから、人を傷つけるから、触るのが怖くなった

だから、俺は勇者・英雄コースには入れないと思ったんだ
俺は、憧れていたあのマフラーを靡びかせたあの存在にはなれない

…なれないんだ

リザルト Result

●残響
 蝉の声が聞こえる。
 その日はどうしようもなく暑い気温で、いかにも夏らしい気配に満ちていた。
 広がる空は青く、雨上がりを思わせるほどに湿気を含んだ風が、頬を撫でていく。
 けれども、そのどれもが。その日の【空蝉・一季】(うつせみ ひとつき)には然程気にならず、むしろ彼の関心ごとは、自分自身に向けられていた。
(俺はどうして。他のヒトとは、違うのだろう)
 思いながら、自身の手を見る。黒く固い、ブラックダイヤモンドのような鱗に覆われたその指は、どう見たって人間族のものではない。
 もちろん、学園で様々なことを学んだ今の一季ならば、それが種族差によるものだと理解している。
 しかし、この時すでに両親はおらず、天涯孤独と言ってもいい身の上だった一季にとって、自身に流れるドラゴニアの血は奇妙そのものであった。
 自分には何故か、角がある。翼がある。尻尾がある。
(そして、この見た目のせいで。避けられている……気がする)
 正確には見た目ではなく、彼が持っていた『強すぎる力のせい』だったのだろうが。
 この時の一季に正しい知識を与える者は誰一人としておらず、故にそう思い込んでいた青年は、自分の見た目を隠すようにして日々を過ごしていた。
 具体的には、翼をも収納できるほどの大きなマントを身に纏うことで尻尾を隠し。
 それに備えられているフードを被ることで、角が露出しないように気を付ける。
 そして、鱗に覆われた手は。
(子どものころから、何故か身に着けていた。この腕輪を嵌めることで。ヒトの手に『戻す』……)
 事実としては逆なのだろうが、そう思っていた一季は、自分の姿を他人と同じくするその装身具を、大切にしていた。
 それに、もしかしたら。記憶の欠片もない両親への、足がかりになるのかもしれない。
 そんな思いもあって。一季は出来るだけその腕輪を身に着け、外れないよう気を付けて、行動をしていた。
 だから、その日の夜。彼にとって数少ない友人(だと、一季は思っていた)である少女に、『お祭りを見に行こう』と誘われた時も、着用していて。
「一季くん。その腕輪、いつも付けてるよね」
 隣に並ぶ少女が笑う。ほんの少し頬が赤いのは、恐らく夏の、暑さのせい。
「あぁ、これは……大事なものだから」
 微かに微笑んだ一季に、少女は頬を膨らませる。
「ふーん。誰かからの貰い物?」
「……そうかもしれないし、違うかもしれない」
「なにそれぇ……ね、ちょっと見せて?」
「あっ……」
 油断していたのは、『友人とお祭りを回っている』という事実が、嬉しかったからだろうか。
 空いていた一季の手に、少女が両指を伸ばし、止める間もなく腕輪を抜き取る。
 すると、勢いよく。肌を焼くような熱風が、一季を中心に巻き上がった。
「きゃぁ……っ!」
「なんだっ、何が起こった!」
 吹き飛ばされた少女が、尻餅をつく。夏の熱さをも絡めとった風が、周囲の木々を薙ぎ倒しては、屋台を圧し潰していく。
「止めろ……っ!」
 思わず叫んだ一季の声に合わせ、風は止んだ。
 だからこそ、周囲の視線は彼に集まる。巻き上がった風により、マントを失くした、一季に。
「化け物が、どうしてこんなところにいるんだ……っ!」
 始まりは、そんな言葉だった。一季の容姿を見て、誰かが言った。
 けれど、それから、続くように。
 まるで魔物を相手にしているかのような、巣に帰れと罵倒してくる、男の声。
 危ないものから遠ざけようと、子を叱咤しては抱き寄せる母親らしき女の声。
 そして。
「なに。それ……」
 座り込んだままの少女が、一季を見上げる。
 だから助け起こそうと。伸ばされた手は、少女によって振り払われた。
「来ないでっ、『化け物』……っ!」
 鈍い衝撃と共に、ぱっと。赤が散る。
 そこで漸く、青年は気付いた。腕輪を外されたほうの腕が、トカゲのようなモノへと、変容している。
「なにあれ、気持ち悪い」
 誰かがそう言った声が聞こえて。足元に転がっていた腕輪を拾い、着け直す。
 それから、『ごめん』と。少女に背を向けた一季は、走り出した。
 ――蝉の声が聞こえる。
(まるで、ヒトに近付いた化け物を。責め立てている、みたいだ)



 そんな事件が起きた後も、一季の中にあった憧れは、消えなかった。
 『いつか。あの本に書いてあった、勇者のようになりたい』。
 そう思った青年は。まずは自分の力を制御できるようになりたいと、フトゥルーム・スクエアの門を叩く――。

●再構
 走る。走る。【〇〇】――後に、【チョウザ・コナミ】と名乗るようになった、娘だ――は、走っていた。
 黒の髪を振り乱し、白で纏められた婚礼衣装を土や泥で汚しながら、彼女はひたすらに。
 走る。
 何処へ行く宛がある訳でも、何処かへ行く目的があった訳でもなく、ただ走って。
 そして思いきり、足を滑らせた。
「――……ぅっ!!」
 咄嗟に抱きかかえていた物を庇うと、全身を強い衝撃が襲う。
 痛みに歯を食いしばり、うつ伏せた状態で後ろを振り向けば、ヒビの入った硝子の靴だけが見えた。
「はぁ……っ」
 だから漸く、肺が求めるままに息をして、荒い呼吸を整える。
 過ぎ行く風から緑の匂いを感じて、今いる場所が屋敷から離れた森であることを知る。
(……きもちわるい)
 走り通しで汗ばんだ肌に、泥汚れで斑になったドレスが貼り付いて、脱ぎ捨てたい衝動に駆られる。
 しかし、その気持ちをどうにか収め切った娘は、ゆっくりと身を起こしてから、息を吐いた。
『預けとく。好きに生きろよぉ』
 そんな言葉と共に手渡された水煙草の瓶を、抱きしめ直す。
(……生きる)
 足を止めれば、目的が決まった。生きる。好きに。
(どうやって)
 目的が決まれば、手段を探した。情動から思考へと頭が切り替わり、それから。
(……『フトゥールム・スクエア』)
 思い出した。
 


 どんな成り行きで、その学園の話になったのかは、よく覚えていない。
 けれど、あの日聞いた。楽しげな彼の声だけは、耳に残っている。
「多少でも気になり興味なら、現れるんだとよぉ。それ……『フトゥールム・スクエアへの入学願書』、がなぁ」
 からからと笑う老翁が、私の手の中にあるモノを指さす。
 どこからともなく現れたその封筒には、見たことのないシーリングスタンプや、フトゥールム・スクエアという文字が見えた。
「……貴方も、在学経験があるのですか?」
 尋ねつつ、手近な廃材の下へと、それを押し込んでみる。
 すると封筒は、まるで意志を持っているかのように、私の指の中に戻ってきた。
 困惑する私を見て、彼は薄らとした笑みを浮かべる。
「俺ぁねぇよ。ただ生徒だった奴を知り覚えてんだ。個性と多様性の塊のような場所だと……そいつにとっちゃ、だが」
 答えながら、彼は薪木を火にくべる。
 乾いた音と共に放り投げられ、火の粉を爆ぜさせたそれを見た私は、倣うように封筒を投げ入れた。
 瞬間、『入学願書』であると彼が教えてくれたものは、炎に包まれて跡形もなく消える。
 だから、ほっと。息をついた私の上から、ひらりと。……また。
「だから言ったろ? 『多少でも気になり興味なら、現れる』ってな」
「……困りました。こんなものが屋敷で見つかれば、『都合の悪い』知識を与えた犯人を、どんな目に遭わせるか」
 そんなことになれば、森が燃えてしまいます。呟く私に、彼はつまらなそうに欠伸をしてから、
「なんだぁ嬢ちゃん、話しバラしちまうか。ここを、俺を」
「いいえ。屋敷が盛大に燃えれば、きっとこの森も無事では済まないでしょう?」
「……こんの雑魚ちゃんがよぉ」
 擦れるような笑い声を前に、封筒を握りつぶす。
 くしゃりと歪んだ紙の感触でさえ、煩わしいと思った。



 ふわり。
 思い出を巻き戻していた〇〇の頭上に、『それ』が現れる。
 あの日から、姿を見せる度に処分されていた封筒が、娘の指の隙間へと滑り込んだ。
「……ほんと、厄介」
(でも、屋敷を脱走した痕跡や、『あの人』との時間の残滓を残せなかったから。今まで破棄していたけれど)
 今は隠す必要もないんだろう。もう私は、あの場所に戻ることもないのだから。
 ――本当に? 『確かめに』行かなくて、良いの?
 思い浮かんだ問いかけは、少し前に見た映像と共に、現れる。
 騒がしい人だかり。甲高い声を上げる馬。
 車輪の外れた馬車。人形の名を叫ぶ従者。
 そして。横倒れになる、兎のルネサンスの老翁。
「――……はっ」
 途端に息が詰まって、うずくまる。
 指に挟まった封筒ごと、水煙草の瓶を、抱きしめた。
 金色の外装に、娘の顔が映りこむ。眉をしかめた、しかし唇だけは笑んだ、不格好な表情だった。
 けれど、それから。ゆっくりと立ち上がった娘は、
「すきに、生きる……、好きに」
 呟きながら、歩き出す。まるで中身を探している、抜け殻のような足取りで。
 拾われなかったガラスの靴が、笑うように、月の光を反射した。

●自認
 まるで海の底に、空の青さが差し込んでいるかのように。窓から降り注ぐ月明かりが、『彼女』を包みこむ。
 大気中の塵や埃をくっきりと浮かび上がらせるその光は、色のついた硝子板を通ったからだろう、鮮やかなブルーに染まっていて。
(こんな場所でなければ。『綺麗ね』って……笑えているのかしら)
 形の良い唇が、苦笑する。彼女は今、既に廃墟となっている『らしい』建物……その中でも、比較的まだ崩壊が進んでいない場所に、存在していた。
 『らしい』と言うのは、それが彼女自身の知識ではなく。
 この場所でぼんやりと立っていた彼女を、初めて見つけ、声をかけ、意識を『こちら側』に戻させた冒険者から聞いた話であるからだ。
(私には、過去の記憶がない。名前すらも、覚えてはいない)
 だが、わかることもある。持ち上げた自分の両手が、透けている。
(ならば私は、魂霊族……『リバイバル』であり、既に死んでいると、いうこと?)
 思いながら、上……光の発生源である、ステンドグラスを見上げる。
 色ガラスを使い、長い黒髪の女性が描かれているその窓は、時間と共に朽ち始めた祭壇の後ろに掲げられていた。
 まるで祈りを捧げるかのように。両の指を交差する形で手を合わせている女の姿に、眉を顰める。
 久方ぶりの来訪者がやってきたのは、そんな時だ。
「ようやく、お会いできましたね」
 穏やかな声が聞こえて、振り返る。
 金の大杖を持ち、同じく金色の髪をした男に、微笑まれた。
「初めまして、古国の姫君」
「……私を、知っているの? 生前の、知り合い?」
 思わず返した言葉に、男は首を振る。
「いえ、私はこの場所……アンデッド達の巣窟となり、『不死者の城』と呼ばれているこの遺跡を研究している者達から、話を聞いているだけです」
「そう……」
 微かな落胆を見せる彼女に、男は微笑みかける。『あまり時間はありませんが』と前置いてから、語り始めた。
 かつて此処には、富栄えた国があったが、その国は既に滅んでいるということ。
 この遺跡は、その国の第十三王女であり、とある理由で処刑された娘のために建てられた聖堂であること。
 男はこの遺跡を研究している者達に依頼され、遺跡内を彷徨っていると噂されている存在の確認をしに来たこと。
「そして恐らく、その存在とは、あなたのことなのでしょう。故にあなたには、私と一緒に来て頂きます」
「私を、研究材料にするつもり?」
「いえ、そうではなく……ここはもう危険でして。『不死者の城』の中であなたが無事だったのは、この区画のみ結界が張られているからのようですが」
 それもそろそろ、限界に感じられますので。
 告げると同時に、男は手を差し出した。
「ですから、一緒に来て頂けますか? 【パーシア・セントレジャー】さん。私と共に、学園へ」



 男の手を取った瞬間、彼女……パーシアは、声を聞いた気がした。
『ナンデ、オマエダケ』、『ニクイ、クルシイ』。
 そんな怨嗟の叫びは、男が杖で地を叩き、視界が文字通り『入れ替わった』ことで、途切れる。
(ここは……『学園』という場所の、門?)
「おー……これが、古の国のお姫様の御身足か~☆」
「ハァ?」
 状況を確認する間もなく、初対面の少女(に見えるだけで、実際はその容姿以上に生きているらしいと後から知った)にスカートを捲られて、足が出る。
「おっと。うむうむ、思ったより元気のようだなっ! メメたんは安心したゾ☆」
 素早くスカートから手を放し、蹴りを躱したメメたんと名乗る少女は、頷きながら腕を組んだ。
 そんな少女に、隣の男は苦笑して、
「学園長。彼女もここに来たばかりで、困惑しておりますので」
「うむ、そうだな! じゃ、あとはシトりんに任せた☆」
 告げると同時に姿を消した少女に、パーシアは瞳を瞬かせる。
 それから、男に視線を移すと、彼は困ったように笑ってから、
「何から話したものか、迷ってしまう状況ですが……そうですね、まずはこれを」
 差し出された物を受け取る。螺鈿細工があしらわれたそれは、コンパクトミラーのようだった。
「今日の記念に、私から、ささやかなプレゼントです。開けてみてください」
 促されるままに開いてみる。丸い鏡に自分が映り、パーシアは目を瞠った。
 ――その姿は。ステンドグラスに描かれていた女と、同じだった。

●洋洋
 時刻は【レナード・アドクリス】がフトゥールム・スクエアに入学する日の前夜、場所はとある宿屋の廊下にて。
「そんじゃ、おやすみっ! オレ、明日のためにも早寝すっからさ!」
「うん、それが良いよ。おやすみ、レナード」
 そう言って、優しく微笑む義理の姉が。扉を閉めたのをしっかりと確認してから、レナードも宛がわれた部屋に入る。
 それから、明日提出する予定の入学願書が、ちゃんと鞄の中に入っているのを確認して。
 いつも右足に着けている、水晶のアンクレットにキズがないかを、念入りにチェックして。
 それから、それから。思いつくままに室内をうろついた後、ようやくベッドに体を横たえたレナードは、羽毛布団を口元まで引き寄せてから。
 静かに目を閉じ。
 ……目を閉じ。
 ……目を、閉じ……、
「ね、寝れねぇーーーーーっっっ!!!!!」
 ガバッ。勢いよく身を起こしたレナードは、青銀色の髪に両指を差し入れ、ぐしゃぐしゃと掻き乱す。
 カイヤナイトのような青の両目は煌々とした真ん丸で、それこそブルームーンを嵌め込んだかのようだ。
 が。レナードの心はそんな穏やかなものでは全くなく、むしろ太陽のようにぎらぎらとしていた。
(いやだって、明日だぜっ!? 明日、オレは、『勇者の学校』の生徒になるんだぜっ!?)
 考えるだけで、胸の熱さは増していく。この万感を敢えて言葉にするなら、興奮に期待、それから『緊張』だろうか。
(いやでも、ばーちゃん家に初めて行った時ですら、こんなじゃなかったなっ!?)
「うー……っ!!」
 胸を抑えつつ呻いていると、ふっと室内が明るくなった。
 思わず顔を上げたレナードに、いつのまにやってきたのだろう、義妹……【ヴァネッサ・ステライト】が苦笑する。
「もー、レナードってば……眠れないの?」
 私の部屋まで聞こえて来たよ。笑いながら近づいてくるヴァネッサに、レナードは頷く。
「全っ然、寝れないっ!! むしろなんか、ドキドキしてきた! だってさ、色んな人が来る所なんだろっ?」
 言葉通りにキラキラとした表情で問われたヴァネッサは、『そうだね』と微笑み、レナードの頭を撫でる。
 慈しみを帯びたその顔に、レナードの心はだんだんと、落ち着きを取り戻していく。
「……オレ、トモダチできるかなぁ」
 胸のドキドキが速度を落とせば、次に浮かぶのは小さな不安だ。
 独り言つように呟いたレナードに、ヴァネッサは頭を撫でる手を止めると、
「だいじょーぶ! レナードはいい子だから、きっとできるよ!」
「……だよなっ!! よし、寝る!」
 おやすみっ! ガバッ。再び羽毛布団に潜り込んだレナードに、ヴァネッサはくすくすと笑みを零す。
 レナ―ドとは違う、プラチナ色の狼の尾――ヴァネッサは、レナードと同じ古龍族ではなく、銀狼のルネサンスなのだ――が、ゆらりと揺れて。
 それから、『おやすみなさい』と声をかけた彼女は、電気を消し、自分の部屋へと帰っていった。
 次第に遠ざかっていく足音を聞いていたレナードは、羽毛布団の中でふと、思う。
(ねーちゃんには、オレ、世話になりっぱなしだな)
 考えてみれば、義妹が旅慣れているからとはいえ。こんな遠い所まで一緒に来て貰っているのだって、頼りすぎと言えばそうだ。
(いや、ねーちゃんが言い出してくれたことだし。オレも、一緒に出掛けられるのがスゲェ嬉しくて、何も考えずに頷いちゃったけど……)
 甘えすぎだよなぁ。
 考えながら、あっちへこっちへ、ごろごろごろ。
 布団の中を転がったレナードは、ぽつりとまた、呟いた。
「強くなりたい、なぁ」
 そうすれば、大切なものを、きっと全部守れるだろう。
 そも、両親が世界のあちこちを飛び回る冒険家であり、知り合いの家に預けられて育ったレナードには、血の繋がりのない家族がたくさんいるのだ。
 ゆえに、失いたくないものは人一倍にたくさんあって、けれどその全てを、守りたいと思う。
 だから。
「……うしっ!」
 そのためには。明日から学園で、いっぱい頑張ろう。
 決意を新たにしたレナードは、旅の間にヴァネッサが教えてくれた言葉をふり返る。
『いい? レナ―ド。これだけは絶対に忘れちゃダメよ。1つ! 辛い時ほど、前を向け!』
(そして2つ! 『絶望したって、お腹はふくれない!』)
 うんうん。なんて大事なことなんだ。大好きな姉から貰った教えを噛み締めたレナードは、そっと足首に着けたアンクレットに触れながら、
「親父、かーちゃん。オレ、強くなるよ」
 笑った。

●無頼
「姓はヴァルガー! 名はダケン! 故郷は知れず、世間が呼ぶには流しの無頼! 見参! 見参! 大見参ッ!」
 愛用の斧を、それはもう大ぶりで振り回した【ダケン・ヴァルガー】は、その切っ先を目の前の男へと向ける。
 黒の眼光で睨まれた男は、『ヒッ!』と声を上げ、縮こまった。
 ――これはダケンが、フトゥールム・スクエアに入学する前の話。
 灰の毛並みを持つ狼系のルネサンスであるダケンは、学園に来るまでは、いわゆる『ならず者』と呼ばれる部類に属していた。
 と言っても、『スジを通して、道理を通さぬ』が信条であったダケンは、確かに世間様に迷惑をかけるような生き方をしてはいたが。
 持たぬ弱者を獲物として選び、女子供を欲するままに扱うような、大悪党ではなかった。
(ま、ワルには変わりねぇがな。しいて言えば、イケてる悪党って感じか?)
 思いつつ、ダケンは口火を切る。
「おいテメェ。テメェがこさえた借金の返済日、いつだったか覚えてっか?」
「そ、それは……」
「先月だ、せ・ん・げ・つッ!」
「ヒィィッ! すみません~っ!」
「謝って済む問題なら、俺達は雇われねぇっつーの! 金あんのは上にバレてんだ、さっさと返しな!」
「それが、あの、先日賭け事で大敗してしまい……」
「はぁ? 借金こさえるくらいの貧乏貴族様が、賭け事だぁ? そういうモンはもっと金が有り余ってからにしなァ!」
「は、はいぃぃ……っ!! あの、来月までには、必ずっ!!」
 土下座をしては平謝り状態の男に、ダケンは溜め息をつく。
(こういうヤツは、大体同じコト繰り返すんだよなァ……おっ、そーだ)
「言ったな? そんじゃ担保として、お前んトコのお嬢サマ、預かっとくぜぇっ!」
「きゃぁっ!!」
 父親とウィンドウショッピングを楽しんだ帰り道、突然のハプニングに襲われて呆然としていた、娘の腕を引く。
 『いやっ!』と暴れ出した娘の体は震えていたが、ダケンは離すことなく、男に視線を戻す。
「良いか? 期限は一週間だ。もう一度言う、『金があんのは上にバレてん』だよ。さっさとやることやんねぇと……」
 ――次は屋敷中の人間が、焼け死ぬぞ?
 静かな言葉で突き出された『未来予知』に、男は震えあがる。
 それから足早に、屋敷へと戻っていった。



「恨むんなら親父さんを恨みな、お嬢サマ」
 仲間と共にアジトに戻ったダケンは、無言で蹲る件の娘に、声をかける。
「……お父様は。私は、どうなるの?」
「言ったとおりだ。さっさと返さないと、次は『屋敷中の人間が、焼け死ぬ』。アンタの場合は『花売り』にでもなるんじゃねぇ?」
 答えるダケンに、娘は押し黙ってしまった。
(無理もねぇか。あの様子だと、何も知らなかったみたいだしよ)
 だからと言って、逃がしてやるつもりは、毛頭ない。
 ……とはいえ。
(売りつける場所くらいなら、俺が決めても良いのかねぇ)
 思いながら、ダケンは娘に近付く。気の強い眼差しを向けられて、喉の奥で笑った。
「ま、そんときゃ安心しろや。俺様が面倒見てやる、上客になってやるよ」
 目線を合わせるようにして、しゃがみ込む。すると彼女は、思い切り顔をしかめた。
「あ? なんだその顔」
「――クサイ」
「は?」
「クサイって言ってるのよ、この駄犬ッ! アンタちゃんと、お風呂入ってるのっ!?」
「……ぁ?」
 思わぬ言葉を浴びせられて、固まるダケン。
 それにカチンと来たのか、それとも此処までに溜まった鬱憤が爆発したのか、娘の言葉は止まらなかった。
「獣クサイのよ、アンタ! どれだけカッコつけてても、汚いってだけでもう、サイッテーっ!」
「ぅぐっ……!」
 グサッ。容赦ない娘の言葉が、ダケンの心に突き刺さる。
「良い? 男の価値はね、女が決めるのよ! アンタみたいな相手、頼まれたってお断りだわっ!!」
 グサッ、グサッ。
「さっさと『ピー』なさいっ! この、ケダモノ!!」
「……えぇ、そこまで言う……?」



 ……とまぁ。その後二転三転、すったもんだとあった末に。
 ダケンは『男を磨き直す』という強い決意と共に、フトゥールム・スクエアの門をくぐった。
 ちなみにだが、今のダケンは毎日きちんと風呂に入るようになり(以前は週一、水浴びだけなんて日も当たり前だった)。
 女性相手に下ネタトークもしなければ、ベタベタと触ることもなくなったため(以前は男と同じ距離感で話し、接していた)。
 着々と男を上げていることも、此処に記しておく。

●幕間
 コトン。砂時計が引っ繰り返される。
 そうして、さらさらと。零れ始めるのは、彼女たちが学園の門をくぐった後の、始まりの物語。

●奮闘
「まぁ、ナツメ様ったら。本当にユーモアがおありなんですから」
 くすくすと、少女たちが笑う。緩んだ口元を隠すよう、レース扇子を両手で掲げながら。
 そんな彼女たちに囲まれていた【ナツメ・律華】(なつめ りっか)は、どこか引き攣った笑みと共に、
「た、楽しんで頂けたのなら、『ジョーク』というものに挑戦してみた甲斐がありましたわっ! おほっ、おほほほほっ……!」
 開いたてのひらを唇に寄せ、精一杯のお嬢様を演じてみる。
 それから脳内辞書を捲り、『そろそろ宿題をしに、寮へ帰りますね』をお嬢様言葉に翻訳&発声したナツメは、全力の早足でもって自室へと向かい。
 辿り着いたマイルームの扉を開け、後ろ手で鍵を閉めて。
「はぁ……」
 ふかーく息を吐き出したあと、
「う゛ええええんっ! も゛う゛お゛う゛ち゛に゛か゛え゛り゛た゛い゛い゛いぃ……っ!」
 ぼふっ。寝台に飛び込み、ふかふかの羽毛枕に顔を埋めるようにして、声を上げる。
 じわりと涙が浮かんでいるのは、彼女が今日も精一杯、頑張った証だろう。
 『大魔法使い』を目指してフトゥールム・スクエアにやってきたナツメは、現在ちょっとした秘密を抱えていた。
 実は、『お嬢様キャラ』(ナツメは田舎の出身なので、あくまでも彼女が思う『お嬢様』だ)を演じる形で、学園生活をスタートしたのだ。
 おかげでナツメの生活は、がらりと様変わりした。
 まずお嬢様は走らないし、畑仕事なんかもしないので、ナツメがうっかり実家の思い出を口にしたとしても、全く通じない。
 そればかりか、『冗談』として処理されるものだから、ナツメは『ユーモアのあるお嬢様』として、徐々に注目を浴びるようになっていた。
(おかげで、バレずに済んではいるけれど……)
 ぶっちゃけ、キツい。いつボロがでるかと冷や冷やする毎日は、ナツメの精神を必要以上に疲弊させていた。
 もちろん、これは自分が選んだ結果であり、ある程度の覚悟もしていた。だから、これまでも頑張っていくつもりだが。
(……家族との思い出を冗談にされちゃうのは、ちょっと堪えるかも)
「はぁ~……」
 ため息をついたナツメは、思う。
(そう言えば、こんなふうにみんなと離れて過ごすのも、初めてかも)
 自分は恐らく、彼等と血の繋がりのない、有体に言えば『本当の家族』ではないと、ナツメは思っている。
 けれど、そんなことなんか全く気にならないくらいに。愛されて、大事にされて、幸せな思い出と共に育ってきたのだ。
 だから、正直に言えば……とてつもなく、寂しい。家族と離れているこの状況も、まるで遠い世界に迷い込んでしまったような、感覚も。
「……大兄ぃ、中兄ぃ、おかあさーん……」
 ぐすっ。ついには鼻を啜り始めてしまったナツメは、ふいに、思い出す。
(そういえば、『どうしようも無くなったら開けろ』って、兄ぃ達に持たされた荷物があったような……)
 ぐすっ、ぐすっ。目尻を擦りながら、重い足を進める。
(あった。やけに重いけど、何なのかしら、コレ)
 疑問に思いつつも包みを開けたナツメは、しかし更に現れた小包に、思わず声を上げた。
「いや、マトリョーシカかっ!! ……って、あれ?」
 小包の下に挟まっている封筒の数々(ざっとみて、8通はある)に気付き、持ち上げる。
 その全ての宛名には、ナツメの名前が。そして、送り主の部分には、
「兄ぃ! お父さん、おかーさん!」
 逸る気持ちと共に封を解いていけば、懐かしい文字が視界に広がった。
 ――それは、今一番会いたかった人達から、ナツメに宛てた手紙たち。
『頑張れ、ナツメ!』
『兄ちゃん達は、離れていても。ナツメを応援してるぞ!』
『送って欲しいものができたら、手紙で教えてね。母さん、マフラーでも何でも編んであげるわ』
「みんなぁ……っ」
『『『がんばれ、ナツメッ!』』』
 大好きな声が、聞こえてくるような気がして。ナツメの瞳から、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
『追伸:何度淋しくなっても大丈夫なように、あと30回分は手紙を中に入れておくぞ。また寂しくなったら、小包を開けるように』
(もう、普段手紙なんて、全然書かないくせに)
「……書き過ぎよぉ。バカぁ」
 溢れる涙を服の袖で拭ったナツメは、丁寧な手つきで、手紙を封筒へと仕舞っていく。
 そして、それから。しゃんと背筋を伸ばしたナツメは、握りこぶしを作った両手を、天井に掲げた。
「頑張るからね、みんな……っ!」
(だから、また。どうしようもなくなった時は、背中を押してね)

●万華
 トン、タタン、トン――。
 濡れた石畳の上を、硬質な音が滑っていく。
 鳴らしているのは【スナ・リーエ】の足元で、彼女の履いている革靴がステップを踏むたびに、新しい旋律が生み出されて行く。
(いいお天気、なのです)
 トン、トン、タタン――。
 透き通るような青緑色の髪を風に遊ばせて、くるりと一回転。
 つい先ほどまで、雨ざあざあだったからだろう。街中にはスナ以外の姿はなく、けれど彼女には、そんなことも気にならない。
 ただ雨上がりの湿った空気が良い匂いで、残っている水たまりに映っていた青空が、美しかったものだから。
「ふん、ふふん――……♪」
 鼻歌による即興曲を歌いながら、スキップで、前に進んでいく。
 目指すは『アボット』……居住区域『レゼント』内にあるという、制服専門店だ。
 長年の間、フトゥールム・スクエアの学生に愛用されているというそのお店は、『パサージュ・カリダライラ』というアーケード街の一角にある。
 そのうえ、あらゆる専門店が軒を連ねると言われているパサージュには、ついつい寄り道したくなるようなお店が、多く並んでいるものだから。
「わぁ……素敵、なのです」
 気になるお店の前に差し掛かるたびに、スナのルビーレッドの両目が、キラキラと輝く。
 ショーウィンドウに並ぶクマのぬいぐるみ、ひらひらのお洋服。削り立てのように滑らかな魔法のステッキに、陽の光を反射しては光る、ガラスペン。
 その全てが、過去の記憶を失っているスナにとっては、新鮮で、興味深くて、足を止めるのには、十分な理由で。
 だから、スナの前進はとてものんびりで、『アボット』に着くころには、とっぷりと日が暮れていたのだが。
「満足、なのです」
 いっぱいの宝物を胸に詰め込んだスナは、どこかほくほくとした様子――本来の目的は、これからであるというのに――で、店の扉を開いた。
 カラン、カラン。
 来訪者を告げる鐘の音が、スナの耳を優しく包む。
 そうして彼女をお出迎えしたのは、アボットの従業員……ではなく、なぜか宙を浮いている、巻き尺達だった。
 だから、また。スナの瞳に輝きが集って、
「この世界には、すーちゃんの知らない不思議が、いっぱいです」
 言葉通りの嬉しそうな笑みが、花開く。
 ――スナ・リーエは。常に楽しいことを、探している。



(それにしても。まさかすーちゃんが、『勇者の学校』に入学することになるなんて、思わなかったのです)
 でも、すーちゃん、昔の記憶がないですし。
(ずっとくすぶっているのも、もったいない上につまんないですから。これも良い機会ですよね)
 思っている間に、スナの身体が、完成したばかりの制服に包まれて行く。
 着せているのはアボットに勤めている女性で、彼女はスナの物思いを邪魔しないように、無言で手を動かしていたのだが、
「どうでしょう? 着ていて窮屈な所など、ございませんか?」
 特に、羽根の部分など。
 尋ねられて、スナは軽く、翼の部分に力を加えてみる。
 バサリ。軽くはためいた白の翼から、はらはらと羽が零れ落ち、光の粒子となって天に登っていく。
(そういえば、わたし、アークライトになっていたのでした)
 正直に言えば、『どうして』なのかは、全く覚えていない。
 けれどスナは、今の自分の状況を悲劇だとも、呪いだとも、思ってはいなかった。
 アークライトは天の祝福を受けると同時に、寿命を削られてしまう、いわば短命種だ。
 だから、そんな状況に置かれたアークライトは。諦観に襲われ、ついには達観してしまう者も多いらしい。
 しかし、スナは……。
(きれー、なのです。嫌いじゃないのですよ)
 にこりと笑ったスナは、質問をしてきた女性に、頷きを返す。
「大丈夫です、ありがとうございます。特に改造はしませんでしたが、素敵なデザインですね」
 すーちゃん、こういうの、好きです。
 告げながら、鏡の前でマントを広げるスナに、女性はにっこりと笑い、
「それは良かったです。では最後に、お帽子を」
「おお……帽子……」
 ごくり。帽子を受け取ったスナは、それがまるで神聖な儀式であるかのように、恐る恐る、ゆっくりと、頭に乗せる。
 けれど、それから。頭にすっぽりと乗った帽子の鍔を両手で引っ張り、鏡を覗き込んだスナは、
「……可愛いのです」
 また、笑った。

●光芒
 スナがアボットで、出来あがったばかりの制服を試着した日から、月日は流れ。
 時刻は2020年の春……【シルワ・カルブクルス】が入学したばかりの、現在へ。
「さて……制服を改造して頂けたのは、良かったのですが」
 同じくアボットで、自分用に誂えて貰った制服に袖を通したシルワもまた、パサージュ・カリダライラの中を歩いていた。
 だが、まだ肝心なものが揃っていない気がする。具体的に言えば、自身の戦闘スタイルと、そのための装備だ。
(勇者のたまごであるからには魔物との対峙は必須。であれば、なにか自分なりの戦闘スタイルを、考えなければいけませんが……)
 しかし、シルワは元々山間部に住んでいた村娘であり、戦闘経験などは無いにも等しい。
 ゆえに、魔物と戦う自分があまり想像できず、どういったものが良いのかも、判断できずにいた。
(やはり、勇者といえば、『剣』なのでしょうか。魔王大戦の折に活躍した、伝説の勇者さまも、持っていたと聞きますし)
 そんなことを思っていたシルワの赤い瞳が、ふと、あるものを捉える。
「これはまた、綺麗な……」
 思わず呟いたシルワの正面……ショーウィンドウの向こう側には、同じく赤い色をした、斧と盾があった。
 照明を浴びて光り輝く盾には、金の縁取りに同色の文様。そしてセットで売られているらしい斧には、これまた金の持ち手。
 しかしそれ以外は、盾の外装から、斧の刃に至るまで。ルビー色で統一されているその二つに、シルワは釘付けになる。
(まるで宝石のようです。武器や防具には、こんなに美しいものも、あるのですね)
 ただ外敵を駆逐するだけの、道具ではないのか。
 新しい価値観を手に入れたシルワは、それも含めて、考えてみる。
 もし自分が、手に持つなら――……。
(実用性も大事ですが、愛着の持てるものが良いですね。木こりだったお父さんだって、『相棒と呼べる斧は、1つだけだ』って言ってましたし)
 それこそ、この斧と盾のような。思っていると、ふわりと浮かんだ、映像がある。
「いや、待ってください。斧と盾……これはなかなか、私と相性の良い組み合わせなのでは……?」
 呟くシルワの頭の中で、想像の中のシルワが、斧を振り被る。
 しかしうまく宛てられなかったシルワ(想像)は、敵の反撃を防ぐべく、盾を構えた。
 衝撃に歯を食いしばるシルワ(想像)。だが、その一点の隙を突き……、
(再び私は、斧を振り被る――っ!)
「……うん。良いっ……!」
 満足のいくイメージが掴めたシルワは、そのまま視線をずらして、値札を確認する。あっ、ちょっと高いですね……。
(いや、でも。仮に反撃が失敗したとしても、ドラゴニアである私なら。多少の軽い攻撃には部分硬質化で耐えられるはずですし)
 試してみる価値は、ありそうですよね。そう思ったシルワは、静かな足取り――ではあるが、少し足早だった――で店の扉を開ける。
 そして、それから。お目当ての斧と盾を購入したシルワは、残ったお金で、防具を選び始める。
(予算的に、少し簡素になってしまいますが、問題ないでしょう。その分私が、鍛錬を積めばいい事です)
 そんな思いと共に手に取ったのは、斧や盾と同じく金の装飾が施された、黒のアーマーだ。
 全身を覆えるようなものではないが、手首や脚、胸やお腹周りをしっかりと隠してくれそうなそれに、シルワは頷く。
「これにしましょう。……初陣が、楽しみですね」
 微笑むシルワの瞳の中で、選ばれた装備たちが光を放つ。

 それから、数日後。
「はぁ……っ!!」
 歌姫の護衛任務についたシルワが、アーラブルに向かって、走り出す。
 ――その手には、燃え盛る炎を刃に映したような、スカーレット色の斧があった。



課題評価
課題経験:24
課題報酬:1020
【新歓】幕間:君がための、プレリュード
執筆:白兎 GM


《【新歓】幕間:君がための、プレリュード》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 1) 2020-05-04 21:28:43
王様・貴族コースのパーシア。よろしくお願いします。
私は多分、入学直前のことを思い出してると思うわ。

《今を駆ける者》 ダケン・ヴァルガー (No 2) 2020-05-05 09:02:36
魔王・覇王コースのダケンだ。一期生になっちまうが、よろしく頼む。
まぁ山賊やってた頃からだと、色々変わったもんだな…

《2期生》 シルワ・カルブクルス (No 3) 2020-05-05 16:49:17
村人・従者コースのシルワ・カルブクルスです
私はそうですね…入学直後のころを思い出しているでしょうね

《ゆうがく2年生》 空蝉・一季 (No 4) 2020-05-09 17:24:11
…魔王・覇王コース所属。
空蝉 一季だ。

…どうして、入学したか、か…。
…いや、本当に、対した理由なんかじゃないんだ。
…本当に…。

《1期生》 スナ・リーエ (No 5) 2020-05-09 23:17:54
どうも。魔王覇王スナ・リーエ、よろしくお願いします。
すーちゃん入学して間もない頃……なにも特別なことはありませんでしたけど、結構いい思い出です。

《ゆうがく2年生》 ナツメ・律華 (No 6) 2020-05-10 12:23:16
賢者・導師コースのナツメ・律華ですわ。よろしくお願いします。

ふと入学直後の事を思い出しましたわ……
な、なにも無かったですわよ。それはもうスムーズに学校に馴染みましたわ、ええ!