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闇鍋と 煮詰めて怪し 南瓜宴


ストーリー Story

 フルトゥーム・スクエアにはさまざまなカリキュラムが組まれている。
 古い生活様式や信仰を学び、現在に役立てる民俗学もその一つだ。

●教室内

「魔王出現以前には精霊と共に行う祭事も存在した、と前回の授業でザックリ教えたと思うが……」
 民俗学の教師である【ヤテラ・ヌイ】は自前のノートを捲りながら生徒たちに講義をしている。
 今も昔も差異はあれども精霊への信仰が主流となっている。
 現在でこそ半ばお伽噺に近しい存在となってしまった精霊だが、確実に存在するモノだ。
「残念なことにほとんどの記録が魔王の出現による混乱で消失してしまっている……」
 ヌイは悲しそうな表情を浮かべる。
「まぁ当然だな。ただでさえ古い記録だ、仕方ないとしか言いようがない」
 一拍おくとヌイはまたいつもの表情に戻る。
「しかしな、先生はこの前面白い資料を見つけたんだ」
 ノートの隙間から取り出した一枚のボロボロな紙を生徒に見せながらヌイは続ける。
「これは遥か昔、それこそ勇者暦の始まる前。魔王出現以前に行われていた、とあるルネサンス族の祭事について書かれた作法書の写本だ」
 生徒の反応は興味半分、疑い半分の懐疑的な態度だが、ヌイは気にも留めず話を続ける。
「この写本の内容は『恵みの多い月に特別な料理を集落一丸で作り、精霊に感謝しつつそれを頂く』という簡単なものだが……。ここからが面白いんだ、これを行うと土の精霊の一種、クシュクシュという精霊が現れることが多いと記述されている」
 精霊という単語が出てきたあたりで生徒たちがわずかにざわめく。
「ただ、精霊たちだって暇しているわけじゃない。おそらく現れるというのは眷属、精霊の分身体のことだろう……」
 ヌイはさらに一拍おいて次回民俗学の授業で行う内容を告げる。
「次の授業ではこの祭事の再現を行う。民間伝承の類は非常にあいまいなものが多い、本当か嘘かわからないものを調べるのもまた民俗学だ」
 ヌイは言い終わると生徒たちにメモ用紙を配り始める。
 そこには祭事に必要な料理『豊穣汁』の材料が書かれている。
「ここに書いてある内の、大釜、大量の南瓜スープは俺の方で用意しておく、君たちはそれぞれが思う『今年一番思い入れのある食材』を次の授業では忘れずに持ってくるように。あ、あと次は屋外訓練場で授業するからそのつもりで、以上」
 渡されたメモには『※料理ができる子は手伝ってね』と一言文末に添えられていた。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-10-18

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-10-28

登場人物 3/8 Characters
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《新入生》白峰・雪菜
 ルネサンス Lv10 / 勇者・英雄 Rank 1
「…ここは、どこ?」 「ユキには…あった…大事な思い出が…」 【読み方】シラミネ ユキナ 【愛称】ユキ 【種族】 ルネサンス(ホッキョクオオカミ) 【口調補正】 一人称;ユキ 大事なことをいうときは、倒置法を使う 文節ごとに止まる癖がある 【容姿】 ・色白の肌に白のロングヘアに赤色の瞳 ・狼のルネサンスのため、狼の耳と尻尾がある ・やや身長は小さめ ・常に布を身につけている ・常にアザラシのぬいぐるみを持ち歩いている ・腕に星のような痣がある 【性格】 ・とてもおとなしい ・若干おバカ、時折的はずれな返答をする ・手が届く範囲は守りたい ・甘いもので簡単に釣れる 【好きな物】 ・小動物 ・甘いもの ・ゲーム(チェス等) 【苦手な物】 ・苦いもの
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。

解説 Explan

現代に蘇る古の闇鍋。
このシナリオは廃れてしまった風習である「南瓜宴」を再現することが目的です。
南瓜宴に必要となる『豊穣汁』の作り方と食べ方。
・南瓜スープ たくさん
・参加者が今年最も思い入れがある食材 それなりの量
・これらを大きな釜を使い、焚火で長時間煮る
・今年の恵みに感謝して『楽しんで』食べる
この祭りが成功すれば、土の精霊クシュクシュの分身体が遊びに来てくれるかもしれません。

授業内で再現する小さい祭事といっても『祭り』ですので、例えばにぎやかな衣装を着てみたり、料理の味をさまざまな形で表現しつつ楽しむことこそが本質です。
『楽しむ』ことに成功すればそれだけ精霊も面白そうだから覗いてみたいな!と思ってくれることでしょう。

この豊穣汁の美味しさ度は2D6で出目が大きいほどおいしく出来上がる予定です。
(プランによる補正値は掛けます)

読み方は『かぼちゃえん』『ほうじょうじる』となっています。


作者コメント Comment
こんにちわ、むたさんGMです。
秋が始まりましたね、そんなわけで今回のシナリオは少し変わった闇鍋シナリオです。

闇鍋といえば靴下が定番ですかね……?
僕は闇鍋に飴玉30こを持って行ったことがあります。

奇跡的に美味しい豊穣汁ができあがることを、一緒に賽の目にお祈りしましょうっ!


個人成績表 Report
朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
私は食材として「羊」を用意しましたわ。実家の集落でお祭りの時よく食べていたのですが今年は帰れませんでしたので。ある意味今年一番食べたいと思った思い入れのある食材ですわね

調理道具を取り出し、羊を解体。お肉、モツ、そしてこれがキモの脳みそに分け、それぞれを食べやすい大きさにカットしたらお鍋に投入させていただきますわね。ガラも入れたら南瓜スープにコクがでますかしら?

皆様の食材も楽しみですわ。きっと美味しい筈、ですわ。ただ食べられる物であればどんな食材であれ

「素晴らしい味ですわ」

と笑顔で(引きつっているかもですが)食べきりますわね

精励様が現れたら

「本当に現れましたわ」

と感激しつつ、一緒に踊りましょう


白峰・雪菜 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■好きなもの…いれるの…?
好きなものをいっぱい入れていいと聞き、喜ぶ
はじめて食べておいしかった大好きな綿あめを大量に持っていく
ただ、入れた瞬間に溶けてショックを受ける
仕方ないので、おやつで食べようとしていた白玉団子を投入していいか聞く

■いただきます…
おいしいものだと思っているので喜んで食べる
例え変なものが入っていても、気にせず食べる
ただ、無意識に【ル2/緊急回避/嗅覚強化Ⅰ/危険察知Ⅰ】で危ないものはよけていきそう
周りが悶絶することがあれば、心配する
しなければ、一緒に喜んで食べる

■くしゅ…?
クシュクシュが現れたときは、少し驚くが、鍋を進める

アドリブA


ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:36 = 12全体 + 24個別
獲得報酬:630 = 210全体 + 420個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
南瓜宴を楽しめ!

■行動
あちきは料理の手伝いをするのじゃ。
自前の調理道具一式を使って皆が持ち寄った材料を切ったりして、大釜の中に投入。
そして、焦げ付かないようにかき混ぜつつ、じっくりコトコトと煮込むのじゃ。
どんな材料だったとしても、煮込みは焦げたら台無しじゃ。出来上がるまで絶えずかき混ぜるのじゃ。

とは言え、完成まで無言では楽しんでる感じが出ないから、
ちょくちょく皆と会話しながら楽しみつつ調理をすることにするのじゃよ。
あちきは皆が持ち寄った材料について、何故それを選んだかを聞いておきたいのじゃ。

そして完成したら、皆で食べるのじゃ
どんな味か、いざ実食。パクッとな♪

リザルト Result

●授業開始――屋外訓練場にて
「それじゃあ、授業を始める」
 民俗学の教師である【ヤテラ・ヌイ】の発言に生徒たちが気を引き締める。
 授業に参加している生徒たちは一様に、他の生徒がどんな食材を持ってきたのか気になっている様子だ。
 現在屋外訓練場には、身の丈ほどもある大きな寸胴鍋と調理スペースとなるテーブルがいくつか設置されている。
 ヌイが用意した寸胴鍋の中からは、濃厚な甘みを連想させる南瓜の香りが漂っている。
「先生は、この授業の様子を詳しく記録するから、調理に関しては彼女に……」
 ヌイは【ラピャタミャク・タラタタララタ】の方を見ながら小さな間を挟む。
「ラピャタミャクさんを中心に協力して調理を行うようにしてくれ。食材の下ごしらえができない者は、彼女や調理の心得がある人に頼みつつ、南瓜宴を盛り上げる為の楽器や飾りの用意をするように」
 生徒たちが理解を示す反応を見せると、ヌイは次にいくつか並んだテーブルを指さす。
「鍋の横はラピャタミャクさんに使ってもらうが、その他のテーブルは自分で食材の下ごしらえができる者は自由に使って貰ってかまわない」
 ヌイは自身のメモ用ノートを開きつつ一言。
「さぁ、南瓜宴の準備に取り掛かってくれ」
 生徒たちは準備に取り掛かるべく、各テーブルへと散っていった。

●調理開始――食材が……消えた?
 生徒から頼まれた食材を自前の調理道具を使い、手際よく下ごしらえしていくラピャタミャクの元にまた一人生徒が訪れる……。
【白峰・雪菜】はとろけるように幸せそうな笑顔で持ち込んだ食材を運んでいる。
 雪菜が手にしているのは大きな『わたあめ』だ。
 いつも手に持っているアザラシのぬいぐるみ、ナナシよりも大きなサイズの特別仕様だ。
「雪菜、汝はまた面白いものを持ってきたようじゃな?」
「これ……いれるの……」
 雪菜はラピャタミャクにわたあめを渡す。
「雪菜はわたあめにどんな思い入れがあるのじゃ? せっかくだから聞かせるのじゃ」
「初めて食べた時……感動したの……すごい! って」
 雪菜は抱えたナナシをラピャタミャクへ見せつけるように掲げる。
「それに……ふわふわ……ナナシみたい」
 とても幸せそうな表情の雪菜に、ラピャタミャクもつられて笑みがこぼれる。
「それじゃ、雪菜待望のわたあめをいれるのじゃ!!」
 わたあめはその姿を黄金色のポタージュに沈め、溶けていく。
「きえちゃった……ユキのわたあめ……」
 尻尾は垂れ下がり、口はあんぐりと開かれ、ガーーーンという文字が背景に幻視できる程の表情。
 わかりやすいまでに絶望。
 あまりに急激な落差、ラピャタミャクには何故雪菜が突然萎れたのか理解が追い付かない。 
「どうしよう……他になにか……」
 雪菜は急いだ様子で、その場から駆け出した。
 心配になり追いかけたいが、持ち場を離れるわけにもいかない。
 ラピャタミャクはソワソワと調理しつつも雪菜が戻ってくるのを待った。
 数分。
 トテトテと急いだ様子の雪菜は戻ってくる。
 その手には小さな包み。
「これ……いれてもいい……?」
 ラピャタミャクが受け取ると、中には『白玉団子』。
「わたあめ消えちゃって……ユキかなしい……。たぶんくしゅ? ……もわたあめ食べれなくて残念に思ってる……」
 ここでラピャタミャクは理解が追い付く。
「お団子……ユキのおやつなの……これも好きだから……」
「入れても大丈夫じゃ」
 トプン……。
 南瓜スープに白玉団子が投入される。
「雪菜、わたあめは消えてなくなったわけじゃないのじゃ、わたあめに汝が抱いている幸せな思いと一緒にスープに溶け込んでいるはずじゃ。それに加えておやつまで添えられたんじゃ、あちきが精霊なら『ここまでされて出てこないわけにはいかない!』って思うのじゃ」
 雪菜の不安を振り払うようにラピャタミャクの笑顔が照らす。
「大丈夫じゃ、その幸せな気持ちは絶対に精霊に届いているのじゃ!」
「ん、ありがとう……。楽しみにしてるね? ……スープ」
「きっと美味しくなるのじゃ、任せるのじゃ」
 雪菜はトテトテっとその場を離れる。
 その後ろ姿はなんだか嬉しそう。
 ……わかりやすいほど、尻尾が揺れていた。
 
●注目の的――食材解体!
 調理作業も中盤、会場の飾り付けも順調。
 そんな屋外訓練場の一角、鍋の周り以外にも人が多く集まるテーブルが存在した。
「おいおい、すごい本格的じゃねぇか……!」
 集まっている生徒たちは驚きの声を漏らす。
 【朱璃・拝】。
 それがこの人だかりの震源地となっている生徒の名前だ。
 朱璃は大きなテーブルにドンと『羊』を置くと一言。
「食材に感謝を」
 目を瞑り祈りを捧げる。
 ある種の静謐さを感じさせること一瞬、調理道具のセットから取り出した大きめの包丁を羊に入れていく。
 朱璃による羊の解体は意図せずショーとして成立する。
 見慣れない光景は多少衝撃的だが、そのインパクトは生徒たちに『食材に対する感謝』を強く意識させる。
 『今年の恵みに感謝し、次の年の豊穣を願う』。
 この南瓜宴という祭事の本質を体現しながらも、朱璃は手際よく解体を進める。
 そして、肉やモツなどのように部位ごとに分けていると……。
「拝さん……? そこって食べられるの……?」
 周囲で見ていた生徒が朱璃に話しかける。
 指をさす先には羊の脳みそが……。
「あら? 食べられますわよ?」
 質問した生徒は口元が引きつり恐ろし気な表情だが、同時に興味や好奇心を瞳の奥に見せていた。
「とっても濃厚な風味があって美味しいんですのよ」
 朱璃は楽しそうに語りながらも手早く片づけを済ませる。
「それでは、私はラピャタミャク様に渡しに行ってきますわ」
 朱璃は解体した羊を台車に乗せ、ラピャタミャクの元へ向かう……。

●最後の一押し――斬新なグルメを求めて
 準備も大詰め、残す食材はあと少し。
 生徒と談笑しつつもテキパキと調理を進めるラピャタミャクの元に朱璃が台車を引いて訪れる。
「ラピャタミャク様、私も食材を持ってきましたわ」
「おぉ! 朱璃が何を持ってきたのか楽しみなのじゃ!」
「まるまる羊一頭をもってきましたの、大まかにお肉、モツ、脳みそでわけてありますの」
「脳みそじゃと!?」
「大丈夫ですわ、濃厚できっと南瓜スープにも合いますわよ」
「珍しい食材じゃな……。食べるのが待ちきれないのじゃ!」
 ワクワクした様子でラピャタミャクは受け取った羊食材を鍋へと投入していく。
「そうそう、皆にも聞いたんじゃが、朱璃はなんで羊をチョイスしたのじゃ?」
「実家の集落ではお祭りの時によく羊を食べてましたの。今年は帰れませんでしたので……」
 朱璃は故郷の情景を思い浮かべながら思い入れを語る……。
「お祭りと言ったら羊、ある意味私が今年一番食べたかった食材ですわね」
「あぁ~! 聞いてたら早く食べたくなってきたのじゃ!」
「もう皆様の食材は投入済みみたいですね? それならもうちょっとの辛抱ですわ」
 最初は食材の大洪水だったテーブルの上も綺麗に片付いており、あとは豊穣汁が煮詰まるのを待つだけの様子。
「ところでラピャタミャク様はどんな食材を入れたんですの?」
「最後の仕上げにこれから入れるところなのじゃ」
 ラピャタミャクは調理セットのカバンから大きめの瓶を取り出す。
「これなのじゃ!」
 瓶の中には粘性の高い黄金色の蜜がたっぷりと詰まっている。
「これは……」
「依頼解決のお礼にもらったものなのじゃ、今では有名な産地になった村の由緒ある『ハチミツ』じゃ!」
「そうなんですわね。……とっても美味しそう」
 甘いものが大好きな朱璃は、興味深々でハチミツに見入る……!
「それはもう美味しいのじゃ、その村ではハチミツそうめんとかが食べられている程美味なのじゃ」
 朱璃は口元を引きつらせながらも、『独創的ですわね』となんとか言葉を絞り出す。
「万人受けするかはともかく、斬新で新発見な味だったのじゃ。その新発見の感動がこの鍋でも見つかるようにと、このハチミツを選んだのじゃ」
 ラピャタミャクは最後の仕上げとして、特別なハチミツを投入する。
 黄金のポタージュに混ざり合うもう一つの黄金色に二人は胸を躍らせる。
 そしてあとは完成まで焦がさないように注意するだけだ……!

●開宴――いざ、実食!
 豊穣汁がついに完成した!
 各自スープを口にするが……。
 どうやらよそられた具材によって評価は分かれるようだ。

●実食――雪菜
「おにく……おいしい……!」
 雪菜の木皿にはゴロンと大きな羊肉が入っていた。
 弾力があり噛み応えのある肉が甘じょっぱく煮詰められており、噛めば噛むほどうま味があふれる。
「スープ……結構甘いかも? ……おいしい」
 尻尾が左右に揺れる。
 雪菜にとってはおいしく食べられたようだ……!

●実食――朱璃
「いただきます」
 朱璃は一口目を口に運ぶ。
 スプーンの上には薄黄色の丸い何か。
 噛んでみるともちもち食感とスープの甘さが朱璃の甘味好きを刺激する。
「素晴らしい味ですわ」
 掛け値なしにそう思えた。
 身近な料理に例えると洋風なお汁粉。
「ハチミツが効いているからかしら? スープの奥に強い甘みがありますわ」
 そして最後に木皿に載った茶色い何かを食べる。
「素晴らしい……味……ですわ」
 強い甘みでその身をふやけさせた唐揚げを食べながらも、朱璃は笑顔で称賛した。……その口元は若干引きつってはいたが。

●実食――ラピャタミャク
「うまいのじゃ! しかも斬新、食べるたびに違う美味しさが飛び込んでくるのじゃ!」
 ラピャタミャクの木皿に入っているのは、羊の脳みそ、手のひら程の謎キノコ、半分溶けた海藻類。
 見た目はまるで地獄のような異彩を放っていた……。
「これが朱璃の言ってた羊の脳みそ! 濃厚でうまいのじゃ! 最高なのじゃ!」
 半分溶けた海藻はチュルンとしたのど越しがたまらなくラピャタミャクの舌を楽しませる。
 キノコはスープをよく吸い……。ラピャタミャクだけは美味しく感じたようだ。

●精霊登場――豊穣のクシュクシュ
「おかわりなのじゃ!」
 ラピャタミャクが席を立ち、再び鍋の前へと戻る。
 豊穣汁をよそろうと鍋をのぞき込むと……。
「なんじゃ!?」
 夕日色の毛玉が鍋から飛び出す。
 手のひらほどの毛玉にモミジの葉のような羽が生えたその姿は、一見してデフォルメした蝙蝠にも見える。
 気の抜けるようなモコモコの姿ではあるが、異質な魔力を秘めていることがわかる。
 近くにいるだけで空気が揺れているかのような感覚を受けるのだ。
『精霊クシュクシュ……』
 誰かがその名前をつぶやいた。
 モコモコの精霊はそれに反応するように嬉しそうに空中で飛び跳ねる。
 ひとしきり飛び跳ねるとラピャタミャクの頭に乗っかり、フワフワと揺れ続ける。
「クシュクシュもこれを食べたいのか? 食べさせてやるからついてくるのじゃ!」
 おかわりをよそると、ラピャタミャクは席に戻る。
 クシュクシュはラピャタミャクの頭からテーブルへと着地し、左右に揺れる。
 スプーンでスープをすくい、クシュクシュに差し出す……。

●精霊の宴
 ラピャタミャクに差し出されたスープをスプーンごと食べたクシュクシュは再び鍋の中へと戻っていく。
「わけがわからないのじゃ……」
 一拍。
 なぜか生徒たちが持っている木皿全てから小指サイズのクシュクシュがぽんっぽんっと排出される。
「わけがわからないのじゃーー!?」
 小さな精霊クシュクシュは生徒たちとそれぞれ交流を試みているようだった。
 ラピャタミャクの木皿からでてきたクシュクシュは、どこから出したのか極小サイズの木皿に豊穣汁をよそり、『一緒に食べようよ!』といわんばかりに揺れながら食べる。
「本当に謎なのじゃ……。ただ楽しそうに食べているからヨシ! 一緒に食べるのじゃ!」
 ラピャタミャクは満腹になるまで精霊と宴を楽しんだのだった。
 ……雪菜の元に現れたクシュクシュは、雪菜の木皿に入っていたスープ全てを一気に飲み干した……!
「あ……」
 一瞬の出来事に雪菜の目が点になる。
 クシュクシュはくるくると空中で回転すると強い魔力を発する。
 空になった木皿の上に何故か黄金色に輝く大きな『わたあめ』が出現した。
「わぁ……!」
 突然のわたあめに雪菜の目がキラキラと光る。
 『食べて食べて!』クシュクシュは一切言葉を話さないが、そのように伝えたいのだと雪菜には分かった。
「ありがとう……! わたあめの精霊……!」
 嬉しそうに揺れるわたあめの精霊をみながら雪菜は嬉しそうに南瓜味のわたあめを頬張る。
 そして、今日一番の笑顔を見せるのだった。
 ……朱璃の元に現れた精霊はなぜかずっと空中で楽しそうに回ったり跳ねたりしていた。
「本当にあらわれましたわ……」
 感嘆の声を漏らす朱璃の反応に嬉しくなったのかクシュクシュの空中ダンスはより優雅に洗練されていく。
「素敵な踊りですわね、よろしければ一緒に踊りましょう」
 朱璃は手のひらをクシュクシュに差し出すと、その上にクシュクシュは着地。
 手のひらの上で踊るクシュクシュに合わせるように、朱璃は穏やかに揺れる。
 朱璃の耳にはだんだんと木の葉が風に揺れる音、落石のような重低音や川のせせらぎが聞こえてくる。
 他の生徒たちの賑やかな声は遠ざかる……。
 目を閉じて揺れれば、大自然のオーケストラで踊っているかのよう。
 ……音が止み、朱璃が目蓋を開けるとジーっとクシュクシュが朱璃を見ていた。
 『楽しいね!』朱璃にはクシュクシュがそう言っているように感じたのだった。
 ……そうして、南瓜宴は無事に終了した。
 あとはヌイ先生に提出する地獄のような量のレポートを書くだけだ……!



課題評価
課題経験:12
課題報酬:210
闇鍋と 煮詰めて怪し 南瓜宴
執筆:むたさん GM


《闇鍋と 煮詰めて怪し 南瓜宴》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2020-10-14 18:34:46
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 2) 2020-10-16 00:07:12
らぴゃたみゃくたらたたららた!
魔王・覇王コースのラピャタミャク・タラタタララタじゃ。よろしくなのじゃ。

今年一番思い入れのある食材、か…はてさて、何があったかのぉ?

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 3) 2020-10-17 08:52:25
思い入れ食材、PLとPCで違いそうですが今日いっぱいで出発も色々あって中々決まりませんわね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 4) 2020-10-17 13:31:15
ひとまずプランは提出しましたわ。闇鍋とタイトルにあるので食材は明かさない方がいいかもですが、食べられる物ではありますので。

《新入生》 白峰・雪菜 (No 5) 2020-10-17 19:48:29
ユキも…出してきた…
食べられるもの…だよ…?

いいな…辛くないと…

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 6) 2020-10-17 23:21:50
あちきもプラン提出してきたのじゃ。

何かは秘密じゃが…辛くはないものじゃから安心するとよいぞ。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 7) 2020-10-17 23:49:48
ええと、私のも辛くはないですわね。人によっては引くものかもしれませんが。