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狼煙 GM 

初めまして、この度新たにGMとして活動させていただけることになった狼煙と言います。主にギャグが好きで、それ以外だと戦闘シーンなどもよく書いています。


Web小説などを通して小説の執筆経験はありますが、PBWに関しては初めて参加しています。ただそうであっても
「どうすれば喜んでもらえるか?」

「どんな風に書けば楽しんでもらえるか?」

ということを信条として書いていき、皆様の心に少しでも届くものが書けるよう努力していく所存です。

それでは何卒よろしくお願いします。

担当NPC


メッセージ


作品一覧


カラスに灸を据える (ショート)
狼煙 GM
 おいしい料理を食べた時、人は幸せになるという。心と体が満たされたことにより、幸福感を抱き、気持ちがあったかくなるからだ。  しかしそれとは逆の料理とは、気持ちを落胆させ、不愉快な感情を呼び起こす。最悪、殺意すら抱かせることがあるという。 (……さすがにそこまでは思われてないだろうけど、似たような思いだったんだろうな)  そんな誰かが偉そうに言った言葉を思い出しながら、魔法学園フトゥールム・スクエアの料理人の一人、【ウトー・サオシ】は魔法学園の料理人休憩室でため息をつきながら、天を仰いだ。  魔法学園にある食堂は数多くの学生達が来てもいいように、広く清潔に作られている。  食事の種類も多様な種族に対応することが可能となるように、各種の野菜や魚介類、多様な肉類が豊富に揃っている。  しかしそんな彼らが、支度やまかない飯を食べるための場所である休憩室は、意外と質素で狭い。精々数人が入れば満員状態になるほどしか面積はなく、設置されたものもいくつかの机と椅子。私物入れ程度である。  そんな場所で彼は、今一度ため息をついた。  と、その休憩室のドアが開いた。 「おや、いたんですか、ウトーさん。お疲れ様です……って、どうかしたんですか?」 「これだよ」  若手の黒髪黒目の人間、【スユウ・ショソミ】が入ると同時に尋ねてきた。その顔は意外さを前面に押し出していたが、ウトーが顎でしゃくったその先にあるものを見たとき、それは苦笑いへと自然に変化した。 「ああ、あれですか、メニュー改善の要望ですね……」 「そうそう、確かに来るだろうとは思っていたが、まさかこんなに早く来るとは思わなかったよ……」  頭をかきながら、休憩室の片隅に山の様に積まれた投書をちらりと目の端で見た。筆跡や文章はそれぞれ違ったが、中身はほぼ同じ。『貧乏村人セットの改善』を望む声だった。  学園内の食事には貧乏村人セットと呼ばれる食事がある。その名称から色々と察することができる様に、値段も無料である。  しかし世の中には『タダより高い物はない』という言葉がある。  無料であればこそ油断してはいけない世の中、この貧乏村人セットもそれと同様、曲者であった。  このメニュー、有体に言ってしまえばてきとーで、微妙。  量だけは多いが、飯の味付けは深く考えて作られていない。食べても一応腹が膨れる、ただそれだけなのである。 「ま、確かに昨日出したようなメニューじゃ、改善を要求したくなる気持ちは分かるけどね」  ウトーはあるものを見やった。  それは自らが書いたものであり、改善要求にもつながったもの。つまり昨日の献立表だ。  上の方にはあるのは有料のメニューで、様々な種族もおいしく食べることができるよう、多種な材料を使った料理が書かれている。  そして一番下に書いてあるのが、貧乏村人セット。その内容は以下の様になっていた。 『料理長のストレス発散にも貢献! マッシュポテト』 『肉の大切さをかみしめよう! ハム2枚』 『フルパワーもやし炒め塩コショウ増量中』  炭水化物、たんぱく質、ビタミン類、と栄養学的に言えば決して不正解ともいえないが、それでもまともな食事とはいいがたいのは否定できない。改善要望がでるのが普通といえよう。 「味は仕方ないとしても量も少ないですね。確か本当は、これにトウモロコシを一本丸ごと焼くかゆでたのをつける予定でしたっけ?」 「そうそう、他の食事と比べてどうしても見劣りするこのセットを、何とか食べる分くらいは多くできないかと思って、トウモロコシをつける予定だったんだけどな……」 「あれが起きましたからねえ……」  2人ほぼ同時に嘆息しながら、つぶやいた。 『カラスがなあ……』  野生生物、その中でも鳥類というものは、果実や蔬菜の旬というものを非常に熟知していることが多い。最もおいしくなった時に食べられてしまうことは珍しくなく、多くの農家を悩ませているものである。それはこの魔法学園も同じであった。  魔法学園の片隅で栽培中だったトウモロコシ畑、収穫を明日に控えた完熟のそれが、カラス達に食い荒らされてしまったのである。 「あんときほど腸が煮えくり返る、って言葉をかみしめた時は無かったぞ。なんだって俺らのところのトウモロコシを食いやがったんだあの野郎は」 「多分いい餌場を見つけたとか、そんなくらいにしか思ってないんじゃないですかね? ほら、野生生物って餌をあげたらまたもらえると思っていつくって聞きますし」  至極まともにカラスの生態を考慮したうえでの解説、しかしそれが憂さを晴らすことにつながるはずもない。ウトーは顔を歪めながら頭をかいた。 「だったらそこら辺にいる昆虫でも食っていろよ。丹精込めたトウモロコシが餌扱いされるなんて、むかつくことこの上ないんだけど」 「飛び立つ姿しか確認できませんでしたけど、ちょっと普通のカラスより大きかったですし、恐らく昆虫程度じゃ栄養が足りないんでしょうね」 「だからって俺らのを食うんじゃないっての。違うものにしろよなー……カスミとかキリとかモヤとか」 「全部栄養になりそうにないものばかりなんですけど」  まるで吐き捨てるかのように語るウトー、そんな彼の心境に理解を示しつつ、その暗雲を何とか払うことができないか、スユウは思案していた。  と、そこである考えに思い至った。 「……どうでしょう、いっそ生徒達にこれを解決させるというのは」  つぶやく様に発したそれに、ウトーはまず無言で見つめて先を促した。 「自分たちが食べる食事ですよ、その分必死になって解決してくれるかもしれないし、『私にいい考えがある』と何かを言ってくる子もいるかもしれませんよ? そうでなくても解決に協力してくれる人が出ても不思議じゃないですよ」 「……悪くない考えかもしれんけど、俺じゃ出せるものも限られてるぞ? 報酬が少ないんじゃ、やる気が出ないんじゃないか?」 「確かにウトーさんの安月給じゃお礼は期待できませんけど、ことは毎日の食事に関わってきます。ここで何とかしないとご飯が貧しくなる。それを避けるためにやってやる! と判断してくれる人もいるかもしれませんよ?」  安月給は余計だ、と口では言いながらも、悪い話ではないかもしれない。ウトーはそう思っていた。  今回の主目的は野菜を守ること。それが叶えばいいのであってカラスを殺さなければならないわけではない。  つまり危険度は低い。戦いが苦手な生徒も関わることができるだろう。敷居が低ければ参加者も増えるかもしれない。  それに相手はカラス。仮に戦闘になったとしても深刻な被害にもならないのではないか。一般人ならともかく、これからの将来を担う彼らならば遅れをとることは万が一にもないだろう。  そういった思考の末に、ある考えにたどり着いたウトーは席を立ちあがって、こう言った。 「頼んでみるとするか」
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-04-10
完成 2019-05-01

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