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捜索!城に潜む者


ストーリー Story

 ――繁栄と存亡の交わる村【グラヌーゼ】。その北西部にある【サーブル城】であるウワサが立っていた。
「城に近づいた人が正体不明の魔物に襲われたらしい」
 サーブル城は元々、魔族の【ノアー族】が拠点としていた城なので、魔物が出てきて人を襲っただなんてウワサなど別におかしな話ではない。ただ、今回はその襲われ方に問題があった。
「なんたって、全員不意打ちでやられているらしい。だから、その魔物の目撃者がほとんどいないんだって言うんだから困ったものだ。何にやられたかもわからず、犠牲者がどんどん出てきている」
 とある老人はそう告げた。彼は今回の依頼者である。この土地に昔から住んでいて、小さな麦畑を懸命に耕す農家だ。顔には深いしわが刻まれ、普段の生活の苦労がうかがえる。
 かつて、グラヌーゼの土地には畑があたり一面に広がっていて、特に麦の産地として有名だった。しかし魔王の出現からは、たび重なる悲劇に巻き込まれ、最終的に豊かな土地は焼かれて失われてしまっている。
 結果として人離れがはげしくなり、今や麦を十分に育てるだけの人手が足りなくなっていた。
「……周辺住民は不安でいっぱいだ。これ以上、人が寄りつきにくい街になってしまっては困ってしまう。だから、申し訳ないが城の周囲を調査してきて欲しい」
 そんな理由で、魔法学園フトゥールム・スクエアへ依頼が来たのである。正体不明の魔物が出没するとなれば、そんな危険なところに近寄る人もいなくなってしまうだろう。もちろん前に手は打っていて、過去に調査のために手練れのゆうしゃを現地に向かわせたこともあった。ただ、どうにも今回の問題の内容と一致するような魔物は見当たらないとのことだった。
「どうにも妙な話でねぇ。ゆうしゃ様はいくら探してもゴブリンくらいしか見当たらなかったと話していた。それ以外の報告はなくてねぇ。でも、ゴブリンは誰にも気が付かれないほどの不意打ちを仕掛けられる頭はないはず。それに、見かければ逃げるのは訳ないはずなんだが……」
 さらに依頼主は次のように詳細を話してくれた。
 外から眺めた限りでは怪しいところは見当たらない。城は立派な外観をしていて、入り口には身の丈の倍以上はある立派な門があり、その両脇には羽の生えた化け物の薄気味悪い彫刻がある。ただ、管理が悪いのか、その外見はボロボロになって羽根は一部欠けている。庭周りにはぼうぼう雑草が生い茂り、いかに普段は人が寄り付かず、管理されていないかがよくわかる。城の周りには堀もあり、そこは水が流れている。入ればかなり深いであろう。
「前に来たゆうしゃ様は勇敢で力強そうな方だったが、魔物には精通していないようだったなぁ。もしかしたら、見逃している何かがこの城に住みついているのかもしれない。もしくは余りに強い相手には手を出さないのだろうか」
 結局、肝になる情報はつかめずじまいだった。とりあえずはしらみつぶしに調べてみるしかないのだろう。
 そして、困っているのは依頼主だけではない。この村の住人が皆、毎日辛い思いをしているのだ。これ以上は彼らが悲しむ顔は見たくないと、この街の復興のためにも協力したいと願う、ゆうしゃのたまご達がいざ立ち上がったのであった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-05-11

難易度 普通 報酬 少し 完成予定 2019-05-21

登場人物 3/8 Characters
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《新入生》リア・カレット
 ヒューマン Lv4 / 勇者・英雄 Rank 1
リア・カレットといいます。 幼いころは孤児院で生活していました。 実は、とある絵本の物語に興味を持っているんです。 その登場人物に憧れ、冒険家になることが私の夢です。 勇者や英雄なんて私には恐れ多いですから(汗 お掃除やお洗濯は任せてください!大の得意なので!! ==========以下プロフィール詳細========= 身長:154cm 体型:細身でややある(C) 髪:焦茶色のミディアム 前髪の左目上の部分に髪留めをしている 性格:優しく真面目だが初対面相手だとよくテンパる (自分1人の時は必ずと言っていい程) 趣味:家事全般(特に掃除と洗濯が大得意) 好物:ホットミルク 寝る前によく飲んでいる 苦手なもの:虫全般 ハチに襲われたことが原因 見たり聞いたりするだけで動転し、特徴を事細かに説明する 装飾:鳥の片翼の形をした銀の髪留めをしている 物心ついた時からつけていたらしい 服装:授業時は基本制服 戦闘が発生しない授業や放課後は私服を着用 出生:物心ついた時から孤児院で生活。捨て子か孤児かは不明。孤児院は年若いシスターが院長を務め、幼児から青年までの男女が共同で生活していた。学園に入学すると決めた時は皆が応援してくれた 口調:年齢差関係なく「~です」「~ですね」の丁寧口調 二人称:英名の場合はファーストネーム、 和名の場合は名前 年齢差関係なく、どちらも「さん」を付ける

解説 Explan

1)目的
 サーブル城に潜む魔物を見つけ出し、討伐すればクリアです。敗北条件は、魔物を発見できないこと、若しくはパーティの全滅です。
2)問題の魔物について
 ・モンスターの強さ:撃破には多少の経験値が必要。PC推奨レベル3以上。
  (最近立ち始めたウワサなので魔物はまだ成長過程ではないかとの見解もある。
   通常の個体よりも弱い個体かもしれないが、地はヤッカイな魔物かも……?)
 ・本能:狡猾なので挑発には乗らないが、臆病なので脅しには屈するタイプ。自身にとって利があれば攻撃を仕掛けてくる。
 ・戦闘スタイル:知性はそれ程高くはないが、相手の出方を見るだけの知能はある。人語は話せないが理解はできる。回避能力も高いが、失敗することも多々ある。
 ・出現数:?体
3)ステージについて
 ・サーブル城の周辺。(城内は現在は入れません)
 ・城の周囲:2km以内程度。
4)補足&ヒント
 ・『城の正面』『城内の草むら』『城内の堀のまわり』を捜索することになります。
 ・捜索場所に目的の魔物がいない場合にはそこにゴブリンが潜んでいるかもしれません。
 ・多くの人(3人以上)が集まっていると、目的の魔物は姿を現し辛いかもしれません。見つけ次第、駆け付けてあげてください。(遠くにいる人に声が届ける工夫が必要かもしれません)
 ・【魔物学】を身に付けていれば魔物が気が付く前にその正体を見破り、見つけられるかもしれません。場合によっては先制攻撃を仕掛けられます。間違えた場合には別のイベントが発生する可能性があります。


作者コメント Comment
 はじめましての方ははじめまして! またの方はお世話になっております。へぼあざらしです。
 本課題は捜索系の課題です! 簡単なように見えて、意外と考えることが多かったり? 生徒のみなさんのコミュニケーションが大切になります。色々なところに注意して、よく作戦を練ってみてください。(案外あっさりと見つけられてしまうかもしれませんが……)
 ドキドキしながら捜索を楽しんでもらえると私としても嬉しいです! それでは皆様、どうぞよろしくお願いいたします!!



個人成績表 Report
タスク・ジム 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:144 = 48全体 + 96個別
獲得報酬:3600 = 1200全体 + 2400個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【事前調査】で城周辺の様子や石像の形を文献から調べる。【事前調査】【魔物学】で、ガーゴイルの姿と石像の形を比較し、他にも草や背景に偽装する習性のあるもの、非実体の魔物を重点的に調べて当たりをつける
現地についたら、調査内容と現場の様子を突き合わせ、まず石像がガーゴイルか確認
違ったら、草むら、偽装しやすい背景を見て回って【推測】、敵の不意打ちも警戒しながら捜索
先に見つけたら仲間と連携して不意打ち
【勇者之斬】【精密行動】で攻撃
戦闘しながら、相手の習性を【推測】し、情報として頭に叩き込む
討伐もしくは撤退後、カバンに用意していた「危険!」の看板を、【設計】で上手に設置し、そこに魔物の特徴を書き込んでおく

エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:57 = 48全体 + 9個別
獲得報酬:1440 = 1200全体 + 240個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●目的
・グラヌーゼに活気を取り戻す
・魔物の正体を突き止め、被害を止める
・魔物出現の原因を調査

●対策
【魔物学】活用
【事前調査】村人や先行のゆうしゃに正体不明の魔物の出現以外に異変はなかったか等聞き込み

・個人的推測
ガーゴイルが石像のフリをしているのでは

●現場での行動
【気配察知 第六感 魔法感知】
石像が魔物だと仮定
警戒されない様に気が付いていないフリをして石像に接近
相手を油断させる為に不慣れで臆病な演技をしつつ不意打ち
ガーゴイルの苦手な風属性のプチフドで攻撃

なぜ最近になってこのような事が起きたのか
誰かが魔物を新たに呼んだか作ったか?
良くない予感がする
周辺に手掛かりがないか調査。城内へ入れないのはなぜ?

リア・カレット 個人成績:

獲得経験:57 = 48全体 + 9個別
獲得報酬:1440 = 1200全体 + 240個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
正体不明の魔物を見つけ出し、退治します。

【行動】
・捜索
他の参加者と一緒に行動します。
「気配察知Ⅰ」と「危険察知Ⅰ」使用して不意打ちに備えます。

・戦闘
敵への攻撃は「通常攻撃」を使います。
敵からの攻撃は回避優先で「基本回避Ⅰ」や「ランスステップ」で避けます


【その他】
誰かがケガをした場合は、「簡易救急箱」で応急処置を行います。
依頼完了後は、村の風評被害を回復するために、村の麦で作ったクッキーを学園の食堂に持ち込み、生徒や先生たちに配ってみます。

リザルト Result

 『グラヌーゼ』の北西部にある『サーブル城』に皆は集結していた。彼らは城を目前にして息をのむ。
 空が曇っていることもあるが、まだ昼だと言うのに周囲は薄暗く、城が際立って不気味に見えてしまう。それだけではない、荒れた庭、ところどころ崩れた城壁、人の気配など感じさせないこの城から、耳をすませばどこからかヒソヒソ声が聞こえてくる。
 普通の人であれば引き返したくもなるような状況だが、ゆうしゃのたまごにあたる生徒の彼らは違う。この依頼はグラヌーゼ復興のためにも、無下にはできない仕事だ。その使命に責任を感じた彼らはぐっと恐怖を飲み込んで、サーブル城の方へ歩を進めてゆく。
 彼らの作戦は大方まとまっていた。
「やっぱり、あの石像にガーゴイルが化けているんですよ」
 【タスク・ジム】はそう口にする。その言葉に異議を唱える者など誰もいない。この結果に至った経緯は数日前に行った事前調査の成果によるものだった。

◆ ◆ ◆

 【エリカ・エルオンタリエ】はあらかじめ村の住人および、先行して調査を行った勇者に聞き込みを行っていた。まず、エリカは以前調査を行った勇者から聞き込みを行うことにする。その人物は見るからに怖そうな人物で、ガタイがよく、何より強面だった。
「なんだぁ? 学園のガキが俺に何の用だ」
 彼はギロリとエリカを睨め付ける。情報を話してもらうように説得するのは難しそうではあるが、エリカは物怖じしない。あくまで平和的に彼と接しようとする。
「あなたの関わったグラヌーゼでの仕事について、学園で依頼が張り出されていたからぜひ話を伺いたかったのよ」
「俺がヘマしたのを笑いに来たってのか?」
「いえいえまさか、笑うなんてとんでもない! むしろお会いしてみて驚いたわ。あなたのような経験豊富そうな方が失敗するなんて考えられないと思って」
 すると彼は、ふぅんと口にしてから、ぶっきらぼうに話をしてくれた。
「もちろん、一人での調査と言えど万全の装備で調査に臨んださ。でもよ、相手が見つからないんじゃあ話にならねぇ。それに、俺は普段、傭兵として護衛任務などを請け負うことがもっぱらで、魔物はあまり詳しくないんだ」
 とのことだった。
「ただ、城の入口付近で妙に視線を感じたがな」
 と彼は更に話をこぼす。それを聞いて、これ以上収穫はなさそうだとエリカは判断し、彼に礼を告げて引き上げた。聞き込みは引き際も肝心である。
 また、村のある住人は『サーブル城へ向かっても被害に遭う人とそうでない人がいる』と口にしていたとも話を聞くことができた。
 一方で、タスクの提案により【リア・カレット】も同行して、二人は学園内にある大図書館『ワイズ・クレバー』で情報収集を行っていた。すると到着するや否や、リアは迷いなく本棚の方へ向かい、ひょいひょいといくつか本を取り上げた。
「きっと、これとこれと……あとこの本ですね!」
「リアさん、かなり本に詳しいですね。僕も図書館は利用するけど、そんなにすぐには見つけられないですよ」
 それを聞いて、何冊か本を抱えたリアはタスクを見て嬉しそうに微笑んだ。リアは読書好きで、沢山の書を読んでいる。ある程度であれば目的の本を見つけ出すくらい容易いものだ。タスクはちょっと驚きつつ、リアと調査を進めていくのであった。

◆ ◆ ◆

「エリカ部長すごいですね……! 一人でここまで情報を集めてくるだなんて」
 タスクは的確に必要な情報を集めたエリカを素直に褒める。ちなみに、エリカとタスクは同じクラブに所属しており、エリカはその部長だ。
「いやいや、大したことないわよ」
 エリカはタスクの言葉に謙遜しつつも、どこか嬉しそうだ。
 そして、エリカの情報と、タスク&リア組の情報を合わせた結果、考えられる推測はこうだった。
『ガーゴイルは自分より強い相手は襲わない。よって、以前この城に来た勇者はガーゴイルから強そうな印象をもたれたのか、襲いにかかろうとしなかった。更に、勇者は魔物に関する知識がなかったこともあり、ガーゴイルの擬態に気が付くことができなかった』
 そして、それは現場に到着してから確信に変わる。タスクは事前調査で羊皮紙にまとめた内容と、城門の両脇にある『羽の生えた化け物の薄気味悪い石像』を見比べる。魔物学を履修していたこともあり、その化け物の石像はガーゴイルと判別することができた。ガーゴイルは石像に擬態する能力と丈夫な石の体を持っており、自分より弱い相手には攻撃を仕掛けてくる性格なので、ここまで情報と一致すればほぼ間違いないだろう。
「しかし、どうやってガーゴイルに攻撃を仕掛けましょうか?」
 リアは疑問を口にすると、『わたしにいい考えがあるわよ』とエリカが答える。
 その内容は、まず警戒されない様に気が付いていないフリをして石像に接近する。次に、相手を油断させる為に不慣れで臆病な演技をする。そして、タスクとリアたちは少し離れたところで待機して、エリカを襲おうとしたところに不意打ちを仕掛けるというものであった。ガーゴイルは憶病なので、大勢で向かえばガーゴイルは石化したまま動かないだろう。それを見越しての作戦だった。
「……さて、まずはわたしがどうにかするしかないわね」
 エリカはそう口にするといつもの凛々しい表情が消え、か弱そうな少女へと様子が変わる。それは、不安そうにあたりを見回し、心細そうにする、そこをたまたま通りかかった少女の様に見える。エリカはうまく演技をすることで素性を隠すことができた。相手が疑り深ければ隠し通せないだろうが、ガーゴイルは知性がさほど高くないのでバレそうにないだろう。
 そして、エリカが城門を通り抜けようとしたその時に、両脇にある石像の全身の色が灰色からサァっと黒色に変わっていく。やはり全員の推測は当たっていて、ガーゴイルが潜んでいた。ガーゴイルたちは一斉にエリカに飛びかかる。しかし、その変化に気が付いたエリカはすかさず振り向いて杖を構える。
「『プチフド』ッ!」
 その掛け声とともに、エリカの握る『眠れる者の杖:レプリカ』の先端が風を纏い、そして直ぐに風の球が射出された。ガーゴイルたちはエリカの攻撃を突然受けて、びっくりしたのか頓狂な声を上げて地面に落ちてひるんでしまう。なおかつ、距離も近かったので片方は突然の出来事でのけぞり怯んだ。
 その様子をタスクが見逃すはずがなかった。タスクは一気にガーゴイルとの距離を詰めると、仕込み刀の『番傘「桜舞」』を両手で振りかぶり、
「 『勇者之斬』 !」
 と叫びながら、思いっきり振り下ろした。それは二体のうち一体に当たり、食らったガーゴイルは悲鳴を上げ、その場で倒れて動かなくなってしまった。
 一方、残されたガーゴイルは倒された仲間の恨みか、タスクに飛びかかる。突然の攻撃にタスクはその攻撃を受けてしまいそうになるが、
「タスクさん危ないですっ!」
 間一髪。リアはガーゴイルに『青銅の槍』で攻撃を仕掛け、それはガーゴイルに直撃して悲鳴が上がった。おかげでガーゴイルの攻撃は阻止され、タスクは難を逃れる。
「あ、ありがとうリアさん!」
「大丈夫です! 私だって戦えます……!」
 ただ、それもガーゴイルの脇腹にヒットしたものの致命傷には至らなかった。舐めたつもりはなかったが、されどガーゴイルである。十二分に強力な魔物だ。
 すると今度は、ガーゴイルがリアの突き刺した槍を握って引っ張ってきた。ガーゴイルの力は思いの外強く、リアはそれを奪い取られてしまう。そして、ガーゴイルはリアをギロリと睨め付けて槍を構えるのであった。
 したり顔をするガーゴイル。その様子を見てリアは危険を察知した。そのまま奪い取った槍でリアにガーゴイルは攻撃を仕掛けるが、リアはなんとか紙一重でその攻撃をかわすことができた。
「危なかったです……」
 ただ、ガーゴイルは攻撃を外したことで、槍を握り締めながら憎そうにリアを睨み付けている。リアはその表情を見て顔を青くしたが、
「そうはさせないわ!」
 エリカはガーゴイルへ『プチフド』を放つ。ガーゴイルはリアしか見ていなかったので、完全に油断していたようだ。その攻撃を受けたガーゴイルはよろけ、片膝をついた。そのエリカが作った絶好の機会で、ガーゴイルの後ろから声がする。
「これで最後です!!」
 それはタスクの声で、彼は剣をガーゴイル目がけて振りかぶっている。それに気が付いたガーゴイルは反撃もできず慌てて後ろの方へ飛んで逃げた。ただ、ガーゴイルの羽根は元々『ボロボロになって一部欠けて』いるのであった。ガーゴイルは長く飛ぶこともできず、すぐ後ろで着地してしまう。そして、リアの攻撃した傷もうずいたのか、ガーゴイルはその場で少し固まってしまった。その動きをタスクは見逃さない。
「『ゆうしゃ』とは何か……」
 タスクは自分に問い掛ける様に呟く。その問いは、今までいろんな人たちに掛けてきたものだった。その答えは皆それぞれ異なっていたし、タスク自身もはっきりとした答えが未だに分からない。しかしこの時、『ゆうしゃ』としてとるべき行動は理解できていた。
「今は、仲間を守るために必死に戦うことが……『ゆうしゃ』としてするべきことなんだっ!」
 だから、今この攻撃を必ず当てなければならない。外す訳にはいけない。タスクはガーゴイルをしっかりと見据え、ガーゴイルの着地点まで接近し、一気に両手で刀を振り下ろした。
 あと少しでもタスクの剣筋がずれていたらガーゴイルは倒せなかっただろう。傷が浅ければ、ガーゴイルは攻撃を回避するためにまた遠くへ逃げていただろう。しかし、タスクの刀はガーゴイルの身体を正確にとらえていて、ガーゴイルは攻撃を受けて倒れたのであった。タスクは『精密行動』を習熟している。外さずに当てられたのはそのおかげもあっただろう。
「終わった……」
 タスクは思わずつぶやいた。その場に横たわる二体のガーゴイルを見て全員安堵する。そして、彼らはガーゴイルを討伐し、もう同じ被害が出ない様にタスクお手製の『危険!』と書かれた看板を立てることにした。後始末も忘れないのが勇者の心得である。
 結果、色々あったものの、無事目標の敵は討伐することができた。直後は実感が湧かなかったが、徐々にこみ上げてくる嬉しさが彼らの胸をじんわりと温めた。そして、誰一人ケガすることなく無事で済んだことが何より彼らにとって嬉しい事だった。
 
◆ ◆ ◆

「本当に……本当にありがとう君たち……!」
 依頼主の老人は目に涙を浮かべ、ガーゴイルの討伐を終えた生徒三人に何度も礼を告げる。それを見た彼らは謙遜するばかりで、感謝される事よりもこの村の復興について考えることを優先していた。それは彼ら全員が考えていたことで、タスクとリアは事前調査の際に、併せてグラヌーゼの復興のアイデアをずっと練っていた。
「復興のためにもこの村でとれた名産の麦をアピールしてみます。私たち、それでお菓子を作って学園で多くの人に食べて貰おうと思っているんです!」
 リアは笑顔でそう告げる。一方でタスクはその宣伝記事まで準備している様だった。(豊かな大地がもたらす素朴な甘み。高品質で伝統的なグラヌーゼ産の麦で作り上げたお菓子はいかが? などと記事では謳っている)
「その宣伝ならわたしに任せてくださいね。どんな人だって交渉だったらなんのそのですよ!」
 エリカはどんと胸を張る。説得が得意な彼女であれば宣伝係になれば間違いないだろう。
 そして、彼らの言葉に感動した依頼主や村の人々は、依頼達成のお礼もかねて、できる限りで特産品の麦を分け与えてくれた。もちろん、彼らはそれを学園に持ち帰ったら、当初思い描いていたように復興のために活用するらしい。グラヌーゼの村にまた一面に麦畑が広がることを夢見てのことだ。彼らがいれば、かつての黄金郷が蘇ることは難しくないだろう。村の住人も彼らのことを期待する一方で、復興のための活力を確かに取り戻したのであった。



課題評価
課題経験:48
課題報酬:1200
捜索!城に潜む者
執筆:へぼあざらし GM


《捜索!城に潜む者》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 1) 2019-05-06 07:42:36
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。
皆で村のお困りごと、解決いたしましょう!
よろしくお願いいたします(ぺこり)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 2) 2019-05-07 02:33:02
う~ん、まさかの、ソロ挑戦になりそう?(笑)

多勢に無勢の場合の撤退を視野に入れて、一人用の狩りプラン、
じゃなくて、仮プランを書いてみました。

どなたか仲間が来てくださったら、喜んで修正します。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 3) 2019-05-07 13:44:37
元々は魔族が住んでいた場所というのなら、その辺りの影響が何かあってもおかしくはないわね……
実態のない幽霊や精霊みたいな存在なら、気が付かれずに不意打ちをするのも得意そうに思えるし、
石像などの動くはずのない姿をしたものが、実は魔物だったら
気が付かないで近付いちゃうこともありそうね。
もしかしてゴブリンに入れ知恵している存在が居るとしたら、
ハイゴブリンみたいな格上のリーダーが居る可能性も考えられるわね。

《新入生》 リア・カレット (No 4) 2019-05-07 21:13:14
勇者・英雄コース専攻のリア・カレットです。
エリカさんは初めまして、タスクさんはお久しぶりですね。

相手は不意打ちを得意としているようですから、
戦闘よりも不意打ちへの対策が必要でしょうか。

一か所につき2人1組で調査できればいいのですが、今の人数では厳しいですね。
集まらなかった場合の案も考えておきましょう。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 5) 2019-05-08 06:01:40
エリカ部長さん、リアさん、よろしくお願いします!
一人で心細かったんですよ~(涙目)
来て下さって助かりました!!

一応、ソロ狩りプランの概略をご報告しておきます。
・【事前調査】で偽装する魔物に当たりをつけ、【推測】で探す
・先に見つけ不意打ちで攻撃する【勇者之斬】【精密行動】
・数が多ければ【全力撤退】
・再発防止として村長に周知依頼、(撤退の場合)学園に増援依頼
・風評被害回復として、麦のPR
これをウィッシュ欄まで使って書いてました。

今後の課題として・・・
・捜索を【推測】に頼っているので、該当スキルがあれば捜索を充実させる
・見つけて先手、を前提に書いていたが、不意打ちされる対策も追加する
・手分けして捜索の場合、発見時の連絡手段を用意

また、捜索の方向性として、僕は草に偽装が怪しいと踏んでましたが、
石像や非実態系の可能性も踏まえてプランを調整しますね。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2019-05-09 01:37:59
改めまして、3人パーティーの場合の作戦としては
・2対1に別れて探索
・見付けたら発煙筒で連絡
というのはどうでしょうか?

現状、勇者・勇者・賢者の構成なので、
例えば、エリカ部長さん・リアさん、と、タスク、でどうでしょうか?

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2019-05-09 02:00:00
捜索・発見系の一般技能があると思い込んでいましたが、
ないみたいですね。
【推測】で頑張ってみます。

また、発煙筒を購入して装備してみました。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 8) 2019-05-09 14:54:51
せめてもう1人いて、2:2に別れるならともかく、
1人になる人がいるのは危険過ぎないかしら?
こっちが不意打ちされる可能性は高いし、3人一緒に行動した方が
いざという時の対応も取りやすいと思うのだけど、どうかしら?

わたしの見立てでは今回の敵は『石像の振りをしたガーゴイル』の可能性が高いので、
気が付いていない演技で石像に近づいて、こっちから一気に攻撃を仕掛けて
形勢を有利に持っていけないかなと考えているわ。
なので、地属性のガーゴイルが苦手な風属性のプチフドを持って行くつもりよ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 9) 2019-05-10 00:24:06
それもそうですね。
単独行動で危なくなったら全力撤退でお二人に合流、というのも考えましたが、
かえって危険ですね。
無茶はやめて、3人で行動することにしますね。

ガーゴイル説は、かなり有力そうですね。さすが名探偵!
【魔物学】で、石像かガーゴイルか確実に見分けられる(と、GMが裁定してくれる)なら、なお良いんですけどね~

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 10) 2019-05-10 15:35:50
いよいよ出発ですね!
僕(の中の人)は今夜時間が取れるか微妙なので、以下の内容まで調整して
プラン確定、とさせていただきたいと思います。
この後何かありましたら、出来る限り反映できるよう頑張りますが、できなかったらごめんなさい。

・石像があったらガーゴイルを疑う
・先に見つけたら仲間と連携して不意打ち

という方向でプランを調整しました。
2対1に別れる描写はしていないので、一緒に行動することになります。
また、全力撤退は外しました(ソロ用の安全対策でしたので)

・再発防止として村長に周知依頼、(撤退の場合)学園に増援依頼
・風評被害回復として、麦のPR
これについては、予定通りウィッシュに入れました。
出発に間に合うかどうか分かりませんが、広場にPRの壁新聞を貼ってみようと思っています。

それでは皆様、プランの出し忘れ等にご注意の上、
ともに頑張っていきましょう!


《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 11) 2019-05-10 19:30:38
とりあえずは、魔物は石像に擬態したガーゴイルとの想定でプランを送ったわ。
予想が外れちゃった場合はごめんなさいね。
念のために重傷者が出るなど、危なくなった時の撤退も考えておいたわ。

風評被害の回復については、学園の食堂で作物を定期購入できないか交渉してみるつもりよ。

《新入生》 リア・カレット (No 12) 2019-05-10 23:51:08
なかなか会話にさんできませんでしたが、こちらも魔物の正体はガーゴイルであると想定してプランを送りました。
不意打ちへの対策も書いておきましたので予想が外れても少なからず対処はできるかと。

風評被害の回復については、村の麦を使ったクッキーを、食堂で配ってみようと思います。