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へぼあざらし GM 

はじめまして! へぼあざらしと申します! 最近は『海(かい) 豹吉(ひょうきち)』と名乗っています。

GMの経歴はありませんが、今までweb小説で培ってきた力で頑張っていきたいと思い
ます!!
(ファンタジーからギャグ、恋愛、シリアス、なんでもドンと来いです)

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皆様からのご要望に応えられるように頑張っていきたいと思いますので、何卒、宜しくお願いいたします。

担当NPC


メッセージ


作品一覧


死闘?!ケルベロスのおひっこし (ショート)
へぼあざらし GM
 それは早朝の出来事だった。  学園の掲示板前に人だかりができて、生徒たちは掲示板を指差してざわついている。普段、こんなに人が注目するようなことは滅多にない。  この掲示板で通達される内容は、基本的に学園の生徒に対するアルバイトに関する内容だ。将来、勇者は各国からの要請を受けて課題をこなしていくことになる。つまりは事前の経験として、そのタマゴにあたる学園の生徒でも達成できる簡単な任務を、生徒は受注することができるのだ。  ただ、例外だってある。 「みなさんみなさん! なにとぞっ、なにとぞ参加をおねがいしますっ!」  そうやって、必死に声を張り上げるのは、見た目が明らかに十歳くらいにしか見えない子供のような教師、エリアル族(フェアリー)の【ラクス・アイラ】先生だった。誰が見てもこの人を教師だと思うのは難しいだろうが、エリアル族の伸長が小さいのは特徴のひとつなので仕方がないことだ。アイラ先生は玉虫色の透明な羽根をぱたぱたさせて、その場でぴょんぴょん跳ねながら、さらさらの暖色の髪の毛を揺らしている。かわいい。  一部のマニアックな生徒たちによって、ファンクラブが結成されているとかないとか。それはさておき、どうやらアイラ先生は早朝から掲示板の前に立って必死に呼びかけているらしい。道理で人だかりができる訳だ。しかしまた、先生が直々になって呼びかけを行うとは珍しい。 「一体、何があったんですか?」  ある生徒がアイラ先生に声を掛ける。 「よくぞ、きーてくれましたっ!」  するとアイラ先生は目をキラキラと輝かせてその生徒に食い入り、前のめりになった。 「あのですね、あのですね。結論から言いますとぉ……魔獣棟で管理している『魔獣ケルベロス』を、新しい檻へ移し替える作業を手伝って欲しいのですねぇ……へへ……」  話を聞いた生徒たちはぎょっとした。そしてアイラ先生は申し訳なさそうに視線を横に向けている。  『魔獣ケルベロス』。三つの頭を持ち、獰猛で、口からは猛毒を吐く。更には、元々は魔王のペットだったなんて噂もある。聞くからにヤバい奴なのだから、そんなものを目の当たりにすれば誰もがションベンをちびるであろう。  そしてそれを聞いた生徒が口を挟む。 「アイラ先生。そんなとんでもない化け物を生徒が取り扱って良いものなのでしょうか? 第一、それを管理する担当者がやる事では?」  全く以ってその通りだ。しかしアイラ先生はまた調子悪そうに、歯切れが悪く、小さな声で答える。 「いやぁ、その……実は今日が檻に掛かっている結界魔法が切れるので、どうしても今日中にやらないといけないんですけどぉ……担当者する魔導士さん達が数日前から原因不明の病で入院してしまって。学内の運営陣も困り果て、これがその結論だったんですよぉ……。いや、決して魔導士さん達は仮病とかじゃあないと思いますよ? ケルベロスが怖いとか、前回ちょっと失敗して担当の一人が半年入院することになったのが怖くなったとか、そういう事じゃないんだと思いますよ?」  そういう事だと思います。生徒全員は心の中でそう呟いた。生徒全員の表情が曇り出す。 「で、でもですねぇ、報酬は出るんですよ! そこそこですが……」  アイラ先生は必死にフォローするが、そんな中途半端なフォローでは生徒の下がったモチベーションは帰ってこない。 「そ、それに! 今回の任務は特例で私が非常時に備えてサポートを行います! ひゃくにんりきってやつですね!」  非常に心もとない。そもそも、このロリ教師が真っ先にケルベロスに襲われる気がしてならない。そもそもアイラ先生は芸術の専攻で、歌ったり、料理ができても戦闘には不向きだ。  アイラ先生は必死にお願いをするものの、徐々に生徒も踵を返して離れて行ってしまう。仕舞にはアイラ先生も涙目になってしまう状況であった。 「誰かぁ……誰かお願いしますよぉ……」  そんな中のことだった。少なくなってきた人垣の中から、自分が手伝います、と手を挙げる者が現れ始める。どうやら先生の様子を見かねたようだ。困った人を見捨てられないのは勇者の本質らしい。それを見たアイラ先生は悲しそうな表情を一変させ、目を輝かせる。 「ありがとうぅ……うぅぅ……グスッ……」  アイラ先生は感動のあまり、そのまま泣きだしてしまった。感受性が豊か過ぎる。本当に子供みたいだ。 「オイオイオイ」 「死ぬぜアイツ」  一方で茶化す生徒もいる。  しかしある生徒は課題内容をまじまじと見て、「ほう、減額処理抜きクエスト(課題)ですか」と口にする者がいた。 「教師同伴でのアルバイトクエストは報酬が条件に応じて変動することが多い。その中で教師の行動に縛られず報酬が一定とは、効率がきわめて高い」 「なんでもいいけどよォ、相手はあのケルベロスだぜ? いくら先生がいたとしても……」  生徒はアイラ先生を横目で見てから、すぐに視線を戻す。それを見たアイラ先生は頬を膨らませて、おこり始めた。 「あーっ! 今ばかにしましたよね! 心の中で、こんなちっちゃい先生じゃなー、とか思っていたんですよねっ!」  ぴょんぴょん跳ねながらそんなことを言うので、おこっているのに何だかほほえましい。ただ、言われてみれば本当に大丈夫なのか、いささか不安ではある。  だがしかし、そんなことなど、この学校の生徒からすれば些細なことだった。集まったメンバーは既に臨戦態勢になっている。それを見てアイラ先生は安心したようだ。さっきとは打って変わってテンションが高くなっている。 「さてさてでは参加いただいた皆さん! 放課後に魔獣棟の正面に集合してくださいね! はりきっていきましょー! おー!」  しかし、アイラ先生の笑顔を見ると、思わずつられて見ているこっちも笑顔になってしまう。その魔法ような魅力にかけられて、生徒たちはつい参加してしまったのかもしれない。  そして、ケルベロスにも恐れぬ心を持つ勇者のタマゴたちが、アイラ先生の為に立ち上がる。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-02-01
完成 2019-02-18
人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて…? (ショート)
へぼあざらし GM
 ――本当に、私は幸せ者です。  教師、【フェレ・ディア】は今年、結婚することになった。新入生がやって来て、学園がにぎやかになり始めたこの時期、幸せな出来事がかさなるように、その知らせはやってきた。  ディア先生が選んだ式場は、魔法学園フトゥールム・スクエアの北西部に位置する、もゆる煙と極楽の街【トルミン】にあった。ここはいわゆる温泉街のような場所で、観光地として人気である。 「せっかくだから、幸せな気持ちが集まっている場所で式を行いたかったの」  ディア先生は自身の水色の髪をいじりながら、そんな乙女チックなことを口にしていた。そんな話を聞くと、こっちまでときめいてしまう。だから学園の生徒たちもディア先生に幸せになってもらえるように、結婚式の準備を手伝おうと意気込むのであった。ディア先生もはじめのうちは遠慮していたが、生徒の熱意に押されてしまう。 「本当にうれしいわ。……でも手伝ってくれるなら、課題(クエスト)にしてあげなきゃね!」  ディア先生のはからいで、お手伝いはちょっとしたアルバイトになった。そして、結婚式も間近になってきたころ、ディア先生と生徒たちは荷馬車に乗って森の中を移動していた。 「これだけの貴重なぶどう酒。あの人も喜ぶと思うわ」  荷馬車に積んでいたのは学園から贈られた、最高級のぶどう酒であった。これは滅多に手に入らないものだが、人の高さほどある大きな酒だるが荷馬車に乗せられている。これは、【コルネ・ワルフルド】先生が学園に贈り物として掛け合ってくれたものだ。ダンナさんが喜ぶだろうとのことだったが、結婚式で自分が飲みまくりたいだけであろう。え、違う? 「……こんなにみんな祝福してくれて……私にはもったいないくらいだわ」  ディア先生はぽつりとつぶやいた。ローレライの血を引く彼女の肌は、透きとおるように白いので、よく顔が赤らんでいるのが分かる。生徒たちもそれを見て、ついはにかんでしまう。ここまで応援した甲斐があったものだ。生徒たちはそんなことを思っていたのだが――その馬車を狙う二つの影があった。それは遠くからものすごい速さでこっちに向かってくる。 「あれだよ、兄さん。うわさに聞いた極上のぶどう酒だ。フトゥールム・スクエアの学園長でもなかなか飲めないだとか」 「あぁ、弟よ。あれをいただかずには帰れないな」  そんなことを口にする彼らは、金髪で、顔立ちが整っていて、筋肉質な身体を持ち、そして何より下半身が馬のすがたをしていた。 「…………ケンタウロス! な、なんでこんな時に?」  ディア先生は悲鳴に近い声を出す。それもそのはずでケンタウロスは魔物の中でも上位クラスの存在である。それが同時に二体出現したのだから、ディア先生が焦らないわけが無い。  そして、こんな噂を聞いたことがある。 『気性の荒い双子のケンタウロスがいるらしい』  彼らは、弓の名手である兄のペネと、こん棒使いの弟ペレ。一見、美形でおとなしそうな彼らは、喧嘩をすると感情がむき出しになると聞く。加えてケンタウロスはそもそも好色酒好き暴れ者。出会ったらただでは済まないと思った方が良い。  しかし、そんなことで心が折れる学園生徒ではない。勇敢な彼らは武器を持ち、立ち向かおうとしているではないか。ディア先生はそのたくましい生徒たちのすがたを見て、改めて勇気づけられる。そして、幸せを感じていた。自分の教え子たちが、自分を守ろうと奮起しているのだから。また、ディア先生はあることに気が付く。 「……そうよ、彼らは人が多くいるトルミンの街近くまでくれば追ってこれないはずだわ。そこまでたどり着ければ……」  そう、トルミンまでの道のりはあと少しだ。これを乗り切れば難を逃れられる。ディア先生は自分の杖を取り出して、戦闘に備える。彼女は戦闘に不向きではあるが、相手を惑わす幻術は一級品だ。 「ケンタウロスは女好きだから、それに効果的な幻術を使うわ。……けど、ちなみに案があったら教えて欲しいの。私、あまり男の子が好きな……そ、その喜びそうなのってイメージわかないから」  ディア先生は生徒たちにそう言いながら顔を真っ赤にしている。ちなみに、過激な事だけは彼女に吹き込んではならない。そんなことをすればダンナさんからの鉄拳制裁が下るだろう。俺のウブな嫁になにしてくれとんじゃ、と。 ちなみに、ケンタウロスは女好きとは言えども、未成年や成人したての人には興味を持たないらしい。彼らだって、一応は紳士だ。ロリコンではない。決して。  と、考えている間にもケンタウロスは距離を詰め始めているではないか。ただ、生徒たちにも策はある。  そして、暴れ馬たちとの攻防戦が幕を開けた。ディア先生の結婚式をジャマさせることだけは生徒たちも許さない。それと、こんな時に襲ってくるのが馬というのも変な話だ。なにせ、昔からこういうではないか。人の恋路をジャマする奴は、馬に蹴られてなんとやら、って。今回はどうやら、その馬の方をどうにかしなければならないらしい。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-06-07
完成 2019-06-24
捜索!城に潜む者 (ショート)
へぼあざらし GM
 ――繁栄と存亡の交わる村【グラヌーゼ】。その北西部にある【サーブル城】であるウワサが立っていた。 「城に近づいた人が正体不明の魔物に襲われたらしい」  サーブル城は元々、魔族の【ノアー族】が拠点としていた城なので、魔物が出てきて人を襲っただなんてウワサなど別におかしな話ではない。ただ、今回はその襲われ方に問題があった。 「なんたって、全員不意打ちでやられているらしい。だから、その魔物の目撃者がほとんどいないんだって言うんだから困ったものだ。何にやられたかもわからず、犠牲者がどんどん出てきている」  とある老人はそう告げた。彼は今回の依頼者である。この土地に昔から住んでいて、小さな麦畑を懸命に耕す農家だ。顔には深いしわが刻まれ、普段の生活の苦労がうかがえる。  かつて、グラヌーゼの土地には畑があたり一面に広がっていて、特に麦の産地として有名だった。しかし魔王の出現からは、たび重なる悲劇に巻き込まれ、最終的に豊かな土地は焼かれて失われてしまっている。  結果として人離れがはげしくなり、今や麦を十分に育てるだけの人手が足りなくなっていた。 「……周辺住民は不安でいっぱいだ。これ以上、人が寄りつきにくい街になってしまっては困ってしまう。だから、申し訳ないが城の周囲を調査してきて欲しい」  そんな理由で、魔法学園フトゥールム・スクエアへ依頼が来たのである。正体不明の魔物が出没するとなれば、そんな危険なところに近寄る人もいなくなってしまうだろう。もちろん前に手は打っていて、過去に調査のために手練れのゆうしゃを現地に向かわせたこともあった。ただ、どうにも今回の問題の内容と一致するような魔物は見当たらないとのことだった。 「どうにも妙な話でねぇ。ゆうしゃ様はいくら探してもゴブリンくらいしか見当たらなかったと話していた。それ以外の報告はなくてねぇ。でも、ゴブリンは誰にも気が付かれないほどの不意打ちを仕掛けられる頭はないはず。それに、見かければ逃げるのは訳ないはずなんだが……」  さらに依頼主は次のように詳細を話してくれた。  外から眺めた限りでは怪しいところは見当たらない。城は立派な外観をしていて、入り口には身の丈の倍以上はある立派な門があり、その両脇には羽の生えた化け物の薄気味悪い彫刻がある。ただ、管理が悪いのか、その外見はボロボロになって羽根は一部欠けている。庭周りにはぼうぼう雑草が生い茂り、いかに普段は人が寄り付かず、管理されていないかがよくわかる。城の周りには堀もあり、そこは水が流れている。入ればかなり深いであろう。 「前に来たゆうしゃ様は勇敢で力強そうな方だったが、魔物には精通していないようだったなぁ。もしかしたら、見逃している何かがこの城に住みついているのかもしれない。もしくは余りに強い相手には手を出さないのだろうか」  結局、肝になる情報はつかめずじまいだった。とりあえずはしらみつぶしに調べてみるしかないのだろう。  そして、困っているのは依頼主だけではない。この村の住人が皆、毎日辛い思いをしているのだ。これ以上は彼らが悲しむ顔は見たくないと、この街の復興のためにも協力したいと願う、ゆうしゃのたまご達がいざ立ち上がったのであった。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-05-03
完成 2019-05-21
!船・戦!海嵐の歌姫 (ショート)
へぼあざらし GM
 ――なぁ、おめェさんは聞いたかい? またアイツが出てきたらしいぜ。  はて、何の事だろう。 「ん? 何の話かって? そりゃあ、ここ最近、漁師の間で噂になってる例の話さ」  アタシはその話を聞いて首を傾げた。 「…………なんだぁ、おめェさん、ホントに知らないのかい。なら教えてやるよ。この、海と潮風の街『アルチェ』で起きている怪事件をよォ」  ここはさびれた漁師小屋。夜更けと言う事もあるが室内は薄暗い。周囲はほこりっぽく、床の木はところどころ古くなって腐っているようだ。目の前には恰幅の良い漁師。彼は酒のグラスを脇に置き、無精に生やした髭を撫でながら、アタシに語り掛ける。 「前にもあった話さ。『イルフィナ海』の沖合付近で『セインディーネ』が出るようになっちまった。あの、人魚の魔物さ。アイツら、特殊な歌声で海水を操りやがる。おかげさまで仲間の船が何隻も沈んじまっている」  彼はため息を吐き酒を口に運ぶ。机に置かれたランプのなかで弱々しくゆれる焔は、まるでこの漁師とこの街の不安を指し示しているかの様だった。 「腕っぷしで何とかなるならとうの昔に何とかしているさ。けどよぉ、魔法となっちゃあ俺たちには手も足も出ねぇ。だからこそゆうしゃのアンタにこうして頭を下げている訳だ」  彼はグラスの酒が無くなったので、ウイスキーボトルを掴むと、乱暴に目の前に置かれた自分のグラスにソレを注いだ。やたら酒が進んでいるようにうかがえるのは、心底では怪物に怯えているからだろうか。恐怖をアルコールで紛らわすために。 「……なぁ、アンタ程の先生なら何とかできるハズだろう」  そうして、彼は弱々しい声で、それでも確かな信頼を持って、対面にいるアタシの名前を呼ぶ。 「【コルネ・ワルフルド】先生よ」 「……こんな形で再履修になるとはね~」  つい、苦笑いをしてしまう。しかしながら、この人に先生と呼ばれるのはなんだかむずかゆい。だって、アタシはこの街で、この依頼人から、最初の課題を受けることになったのだから。 「引き受けてくれるのかい?」 「あたりまえですよ~!」  元気よく返事をすると、彼は少し安心したように見えた。そうだ、こんな依頼を断る理由がない。困った人を見捨てない。それがゆうしゃの鉄則だから。  依頼の概要はこうだった。 「目的はヤツらの棲み処である岩礁の破壊だ。そうすればここにはしばらく棲みつかなくなるだろう。俺の船にはしこたま爆弾を積んでおく。岩礁にたどり着くまで俺をセインディーネから守ってくれさえすればいい。ちなみに、沖合から岩礁まではそう遠くないから安心しろ」  彼は続けて作戦について話す。 「セインディーネの歌声をより大きな音でかき消す。爆弾でも太鼓でも何でもいい。ただし、中途半端な音じゃあダメだから注意しろ。嵐にならなくても、船ぐらいは転覆させられちまうからな。そんで、目撃されているセインディーネは一体だけだ。岩礁付近で数が増えない事を祈るが、どうだか。ちなみに交渉なんて一切受け付けねえから野暮な事ぁ考えんなよ。……って、先生のおめェさんに言うまでもないかもしれないが」  その言葉を聞いてアタシはつい笑みがこぼれた。そうだ、私は今、先生なんだ。そう考えると何だか不思議な気持になる。 「夜明けとともに海に出る。おめェさんが選んだ生徒さんの数に応じて船は貸してやる。何隻でも貸せるが定員は三人ずつだ」  アタシは一通り彼の話を聞いて、どんと自分の胸を叩く。 「任せてください!! さぁて、今度は先生の立場としていっちょ頑張りますか~!」  アタシが受けた最初の課題。さぁ、生徒たちはどう立ち向かうのか。アタシはそんな事を考えて、何だかワクワクしていた。
参加人数
6 / 8 名
公開 2020-01-07
完成 2020-01-26
波乱!! シュターニャ旅行記!! (ショート)
へぼあざらし GM
 西部への玄関口『シュターニャ』。この街に数人の生徒が招かれ、この街で名の通る二人からある依頼を受けることになった。  ちょっとその前に、この街についていきなりいろいろと言われてもピンとこないだろうから改めて説明しよう。  まず、皆が通う魔法学園『フトゥールム・スクエア』がある『エイーア大陸』は、雄大な『ノルド川』により東西に分断されていて、その東西をつなぐ架け橋はたった一つしかない。そのもとに位置する街が『シュターニャ』だ。  シュターニャはノルド川の東側に隣接していて、橋を越えた先には、東側よりも強力な魔物もいる。だからシュターニャは西部への玄関口と呼ばれていて、また西へ向かう人々を護衛したり案内することを生業(なりわい)としている人々が集まっている。  活気あふれる商売の街。シュターニャを一言で表すのであればこれに尽きる。町民は活気に溢れ、路地は市や露店で埋め尽くされ、いつも陽気な掛け声が飛び交い、毎日とても賑やかだ。 「ようこそ『シュターニャ』へ。わたしはこの街で旅の案内務め――いわゆる観光案内業を営む【マチルダ・アベーユ】よ」  そう、皆へ微笑みを向ける彼女は観光組合『アイネ・フォーリチェ』の代表者だ。  まっすぐに伸びた長い金髪が彼女のしぐさ一つ一つでしなやかに揺れる。きっちりと純白の制服を着こなし、身なりは清潔に整えている。なのに自然と近寄りがたさはなくて、温和な優しい雰囲気は、さながら近所に住んでいるお姉さんと言ったところか、身近に感じる親しさがあった。  観光案内人は西部へ向かう旅人に安全で快適なサポートを行う。温泉街へ行くための馬車、現地での宿泊施設、魔物から護衛してくれる傭兵まで、必要なものは全て手配してくれる。よって組合所属の観光案内人は知識豊富でサービス精神旺盛、有事の際にも機転が利く上に器量良しと評判がいい。もちろんマチルダも例にならってしっかり者で、その代表というだけあってその資質も飛びぬけている。 「私は【ニキータ・キャンベル】だ。傭兵組合で長を務めている。よろしく頼む」  一方、落ち着いた口調で簡潔に挨拶をした彼女も、この街では有名人だ。どんな人かというならば、この街の屈強な傭兵を束ねる女組長、となれば言わずもがなどんな人物か分かるだろう。  ニキータはすらりとした体型と、整った顔立ちをしていて、立ち振る舞いは舞台俳優を思わせるほどのオーラがある。これでいて、男性と見間違うほど短くした赤髪をしているのだから、世の女性が黙っていない。  ちなみにマチルダは年に男性から何百通のファン(と言うよりもラブ)レターを貰っている一方で、ニキータは女性からだけでもファン(ラブ)レターを年間何千通も受け取っている。  そして彼女は、大盾を背景に、無骨な姿をした長剣をふたつ交差させて背負っていた。なお、その特徴的な姿は傭兵組合のシンボルマークにも採用されている。  ――さて、説明と紹介が長くなってしまったが、ここからが本題だ。 「今回、キミたちには私たちの訓練を受けてもらう。これは一応本番の意味も兼ねているんだ。我々はキミたちが通う学園殿へ緊急で傭兵や観光案内業を依頼することだってある。今回はその練習だ。内容は……なに、そんな難しいことじゃないさ」 「観光案内業担当と傭兵担当に分かれてわたしとニキータを『シュターニャ橋』を超えて西へ案内してね。そして数日かけて私たちを『トルミン』まで案内して欲しいの。訓練と言ってもこれも大切な課題よ。大変だけど、皆さん頑張っていきましょうね」  トルミンとはもゆる煙と極楽の街。観光客が向かうルートとしては定番中の定番ともいえる。 「しかし、珍しい。トルミンは片道でも一日半はかかる。マチルダにしては長く休暇を取れたものだな」 「そうでしょう? わたし、この日のために頑張って残業して、次々来る仕事をいなし、部下へ引き継いで……ふふふ、どれだけ今日を楽しみにしていたことか……」  そうぶつぶつと呪詛の様な言葉を口にするマチルダの目元にはわずかにクマがあった。その一方で両手には大荷物が準備されている。おい、満喫する気満々か。大切な課題に対する想いはどこ行った。  ニキータはマチルダの話を聞いてふぅんと鼻を鳴らす。 「まぁ、私がわざわざ参加する必要もなかった気もするがな」 「そんなことないわ!!」  すると食い入るようにマチルダが言葉を返す。 「いいかしら。傭兵と観光案内業がいかに大変で大切な仕事なのか、それをあえて経営トップであるわたしたちが教えてあげることで真の想いを皆さんに感じ取ってもらう必要があるのよ! あと、ニキータが頑張っているとことか、ニキータのかっこいいところとか、ニキータは本当は カワ……カワッ……いやっ! それ以上は恥ずかしくて言えないわ!! とととにかく! そういった思いを未来ある生徒たちに教えてあげるべきなのよ!!」  なんか早口で怖い。どうしたマチルダ。というかこの課題はもしや、マチルダの大いなる想いにより組まれたプログラムではないだろうか。  ……というか何を教わるの。一方的で重い愛情かな? もしかして受ける課題を間違えた?  さておいて、ニキータはその言葉を聞いて優しく微笑む。 「そこまで生徒のことを想っているんだな。分かったよ」  マチルダが想っているのはきっとほとんどがニキータのことだけですよ。まあいいや。いずれにせよ、マチルダの話す傭兵と観光案内業についてしっかりと学んでおく必要はありそうだ。 「では皆さん、ちゃんとわたしたちのデー……案内をよろしく頼みますね。案内のルートには魔物がいたり、盗賊も出たりします。わたしたちがいるからと言って油断は大敵ですよ」  ついに本音を口にしかけたマチルダの方が油断している気もする。しかし、彼女が口にすることももっともで、前述の通り、橋を抜けてから街に着くまでには強力な魔物が潜んでいる可能性がある。 「この間も『ゴブリン』が観光客を襲って大変だったわ」  マチルダが話すように細心の注意が必要だ。他にも草原や平野に出没しうる魔物が出るらしい。 「橋を渡ってから草原を抜け、キャンプで一夜を明かしてから今度は少し山地の麓を歩いていくことになるわ。足はこちらから馬車を手配するから安心してね」  もう準備は完璧らしい。流石は観光案内業の長と言うべきか。  さぁ、色々な意味で波乱が起きそうなこの課題。生徒諸君はいかようにして臨むのであろうか。
参加人数
2 / 8 名
公開 2020-03-05
完成 2020-03-22

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