;
な~にがでるかな な~にがでるかな


ストーリー Story

 その日は雲1つないような晴天で、とても気持ちのいい夏の日だった。

 最近雨の日が多くてなかなか外に出られなかったということもあり、彼女たちは中庭にブルーシートを広げてお弁当を食べる。
 春になれば桜が咲いてとても綺麗な景色になるのだが、たまには深緑色に染まった桜を眺めるのも悪くない。特にここの桜は毛虫が寄り付かないように対策されているのでお昼ごはんを食べるには最適だ。
 彼女たちはお弁当のおかずを見せ合ったり交換したりしながらのどかな時間を共有し、お腹が膨れるとそのまま食後の散歩をすることにした。

「暑いねぇ……」
「うん、暑いねぇ……」
 1度教室へと戻ってお弁当箱をカバンの中へとしまい、校庭を歩き始めてからおよそ5分。彼女たちは迂闊な判断で散歩を始めてしまったことを後悔していた。
 お昼ご飯を食べている時は木陰に入っていたのであまり気にしていなかったが、いざ歩き始めてみるととにかく暑い。
 なるべく日に当たらないようにと陰を選びながら歩いているが、足を踏み出すたびに首からはすーっと汗がしたたり落ちる。
 水分は十分に取っているはずなので熱中症になる可能性はないだろうが、時間が経つにつれて2人の口数は徐々に減っていった。
「ストーップ!! 2人とも、ストーーップ!!」
 彼女たちの頭の中から暑い以外の情報が全てシャットダウンされ始めた時、元気な声が頭の中に割って入ってくる。
 なんでこんな暑い日にそこまで元気なのだろうかと不思議に思いながらも顔を上げてみると、そこには同級生の【冬空・コタツ】が立っていた。
「あっ、コタツちゃん……。こんなところで、何してるの……?」
 手には杖のように長い木の枝を持ち、小麦色に焼けた腕で汗をぬぐいながらコタツは満足気な笑みを浮かべている。
 やけに手が泥だらけになっていたので気になってコタツの持っている枝の先に視線を向けてみると、地面をえぐって書いたのであろう黒い線が先へ先へと続いていた。
「なにってすごろくに決まってるじゃん! だからそこのマスは踏まないでね。そこを踏んだら秋刀魚の香りに誘われて2進まないといけなくなるから!!」
 一体なんのことだろうかと首をかしげながらも足元を確認してみると、2人の目の前には『2↑』と書かれたマスがある。どうやらこれはすごろくの一部らしく、このマスに止まれば2マス進むことが出来るらしい。
 マスの隣には大きな文字で「1」と書かれており、「2」「3」「4」と続いてる。スタート地点がドッジボール並みの広さなのには少し違和感を覚えるが、思っていたよりも本格的なすごろくだった。
「あぁ、すごろく作ってたのね。邪魔してごめん。…………あともう1つだけ聞かせて。これはなに?」
「えっ、サイコロだよ? すごろくするならサイコロも必要でしょ?」
「いやいや、そうじゃなくてね。なんでこんなに大きなサイコロがあるのかなって思ったの。いくら何でも大きすぎじゃない!?」
 コタツの傍に置かれているのは、1辺が1mあるのではないかと疑うほど大きなサイコロ。見たところサイコロの出目は一般的なもののようだが、なによりサイズが規格外すぎる。
 何でここまで大きなサイコロを作ったのかとコタツに聞いてみても、返ってくるのは大きいサイコロの方がいい数字が出そうだからというよく分からない答えだけ。終いには、このサイコロはものすごく軽いんだよという謎の自慢をし始めた。
 もはや話の方向性が迷子になっているような気もするが、コタツが楽しそうに話を進めているのでよしである。
「ぐぅぅぅ……」
 話はさらに盛り上がっていき、なぜ秋刀魚は美味しいのかという話になり始めた時、コタツのお腹からぐぅっと可愛い音が鳴る。
 どうやらコタツはまだお昼ごはんを食べていなかったらしく、朝からずっとここですごろくを作っていたらしい。道理で先ほどから食べ物の話しかしていなかったわけである。
「うぅ、お腹減った……。ちょっとお昼ごはん食べてくるね!」
「うん、分かった。……えっ、ちょっと!? まさかのこの流れで!!?」
「秋刀魚がボクを呼んでいる気がする! それじゃあねー!!」
 今は夏真っ盛りなんですけど!? と心の中で突っ込みをいれている間に、コタツは校舎の方へと走り去っていく。入学当初からあんな感じだったのでもう慣れたが、相変わらずの気まぐれっぷりだ。
「えっと……、これどうする?」
「どうするって……、せっかくだしやってみる? あー、けど私たちはそろそろ教室に戻らないといけないか。誰か代わりにやってくれないかな」
 疾風の速さで駆けていったので、コタツ特製の巨大サイコロはその場に転がったまま。すごろくにはまだなにも書かれていないマスが目立つが、適当につけ足せば十分に遊べるだろう。
 幸いにも、すごろくが描かれているのはとても心地の好い木陰で暑さの心配もない。さっきまで外で遊んでいた人にとって、ちょうどいい休憩となるだろう。
 2人はすごろくをやる参加者を集めるため、近くにいる生徒たちに声をかけ始めた。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 5日 出発日 2019-08-10

難易度 簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-08-20

登場人物 2/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け

解説 Explan

 校庭に描かれたすごろくをみんなで楽しみましょう!

 既にコタツちゃんが1マス目に『2進む』と書いていますが、他のマスにはまだなにも書かれていません。
 これから書き込む予定のアクションマスは、ゴールまであと26マス、22マス、19マス、15マス、12マス、8マス、6マス、2マス地点にあります。
 例)・干しぶどうを食べて謎のブーストがかかった、3進む。
   ・食あたりにあってしまい、お腹が痛くて前に進むことができない。1回休む

 アクション内容を書けるのは1人につき1つですが、誰がどこのアクションマスを書くかはランダムとなります。
 また、参加人数が8人に満たなかった場合は公平性を期すために、校庭で遊んでいる生徒に残りのアクション内容を考えてもらいます。
 みんなですごろくを自由にアレンジしちゃいましょう!


特別ルール
・ゲームを始める際、サイコロを振って出目の数が大きい人からスタートする。勝敗が決まらなかった場合は出目が同じ人同士でサイコロを振り、出目が大きい方が先行となる。(初めの1回のみ)
・アクション実行後、止まったマスがアクションマスだった場合、効果は発動しない。
・プレイヤーがゴールをした際、ゲーム終了となる。順位はゴールから近い順に決める。


作者コメント Comment
 こんにちはこんばんわ、桜花です。

 今回はみんなですごろくを作って遊ぶというお話ですが、みなさんはどのような幼少期を過ごされたのでしょうか。
 私は外で走り回るタイプの子供だったのですごろくのような大人しい遊びはしていませんでしたが、ノートの端っこにすごろくを書いて遊んでいる友達は居ました。
 サイコロの目に10とか書かれてあったり、あと1歩でゴールなのにふりだしに戻されたりととんでもルールばかりでしたが、みんなで楽しそうに遊んでました。紙とペンだけであそこまで盛り上がれる子供たちって、やっぱり遊びの天才ですね(*´ω`*)

 それでは、みんななかよくプレイしましょう。ではでは……。


個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:720 = 600全体 + 120個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
暑くて眠いから涼しいとこ来たんだけどな、ザコちゃん。っても先約がいちゃったらしゃーなし。

すごろく。なんだっけ、東の国のおもちゃだっけ。
サイコロひとつへ仮想人物の架空人生を結末まで委ねるなんて。身勝手な遊び。ふふ。

無理して競うつもりも、勝ちを貪欲我欲に欲しがりもしないけど。
色々あるんだったら覗き拝見したいし。自分とは違い異なる考え、興味がふくふくにぽわぽわじゃん?

そーいやこれ優勝者には何か貰えたりすんの?
この木陰を何となく何にもしたくない授業中に丸1日借りられる権利?

で、なんも書いてないとこ書き足していーの?
ならせっかくだしどっかに書こ。決めつけはムカつくからー、自分のやり方で選択肢見える系で。

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:720 = 600全体 + 120個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
暇つぶしに校庭に出てみたけど、うん。
丁度いいから参加しよう。

「自分の必殺技名(予定)を全力で叫ぶ。叫べたら3マス進み、叫べなかったら3マス戻る。」

外野含むエンタメ性って大事じゃない?
因みに俺は
「長距離教会破壊魔法…バーニング・イノセンスッッ!」
って叫ぶよ。うん、いい感じに技名っぽい。
まあ実際は普通にペッて放つぐらいの気軽さで教会破壊したいけどな~。

基本、そのマスに書いてある内容はノリで実行しようと思うけど…。
他人の目もあるし、やっぱ技名以外は修道士ムーヴそれなりキメとこ。

一応儚い修道士で売ってるので~~!

はぁ、暑い。この暑さで教会という教会が溶ければいいのに…。

■アドリブ度:A

リザルト Result

「はぁ、暑い。この暑さで教会という教会が溶けてしまえばいいのに……」
 本日の最高気温37度。空から降り注がれる容赦ない暑さの猛攻に【プラム・アーヴィング】は思わず教会を溶かしにかかる。
 プラムが校庭に出た時にたまたますごろくをやっていたので参加する流れとなったのだが、いくら神父とはいえこの暑さだけはどうすることもできない。何故この暑さの中、好き好んで外に出たがる生徒がいるのか不思議なくらいだ。
 すでにプラムの額にはうっすらと汗が浮かび上がっており、木陰に入ってもなお、身体の底からあふれ出てくる汗は留まることを知らなかった。
「よしっ、これでザコちゃんの指令は完璧だね。……それじゃあ、そろそろゲームを始めていこうか。ヒールの神父様?」
 そして、このゲームに参加するのはプラムの他にもう1人。ヒューマンで自称モブ中のモブを謳っている【チョウザ・コナミ】だ。
 チョウザは教室の暑さに耐えきれず校庭の木陰に座ってのんびりと涼むつもりだったのだが、既に先客がいたので予定を改めてプラムと一緒にすごろくを楽しむことにする。
 プラムとチョウザの2つの指令に加え、足りないアクションマスは校庭で遊んでいた生徒に書いてもらったのであとはゲームをスタートするだけなのだが、すごろくを始めるにあたって1つだけ問題があった。
「そもそも、すごろくってなんだっけ。東の国のおもちゃー?」
「すごろくはー……、あれですよあれ。サイコロを投げた後に出た目だけ進んで、止まったマスに何か指令が書いていればその指令に従ってゴールを目指すゲーム。ほら、あそこに大きなサイコロが転がってるじゃないですか」
「えー、サイコロひとつで仮装人間の架空人生を結末まで委ねるなんて、身勝手な遊びだねー。サイコロの指示に従うとか、ザコちゃんやだなー。それってホントーにサイコロ振らなきゃダメー?」
「……それは振ってほしいかな。サイコロのルール廃止にしたらゴールまで位置についてよーいドンになるじゃないですか。先にサイコロ振っちゃっていいので、せっかくだしやりましょう」
「おぉ、ザコちゃんに先手を譲ってくれるなんて、ヒールの神父様は余裕だねー。それじゃ、お言葉に甘えてザコちゃんから振らせてもらうよぉ」
 本来ならばサイコロを振って出た目が大きい方が先行となるルールだったのだが、特に勝ちにこだわりのないプラムはチョウザに先行を譲り、両者了解の元ゲームがスタートとなる。
 既に2人は気づいているが、この勝負は特に勝ったところで優勝賞品がもらえるというわけではない。つまりこのゲーム、楽しんだ者勝ちである。
 チョウザは気だるそうに近くに転がっている特大級サイコロの元へと近づき、それを天に向かってひょいと放り投げた。
「……んー、せっかくサイコロ振ったのに1マスしか進めないのかー。ザコちゃん、残念。やっぱりザコちゃんには1番が似合っているのかな」
 力任せに投げられたサイコロは宙を舞い、ゆらゆらと揺れた後に赤い点を上にして動きを止める。
 チョウザはサイコロの指示通りに1マスほど歩みを進めるが、忘れてはいけないのはアクションマスの存在。すごろくが始まって1番最初に実行されようとしているアクションマスには『秋刀魚の香りに誘われて2進む』とだけ書かれていた。
「そっかぁ、ここに止まったってことはザコちゃんはあと2マス進むことができるのねー。それじゃあ、あと1マスだけ進もっと」
「……えっ? ザコちゃん、1マスだけでいいの? まだ進めますよ」
「えー、だってこのマスって秋刀魚の香りに誘われてーって意味なんでしょー? 確かにザコちゃんお魚は好きだけど、2マスも進む気持ちじゃないんだよねー。それじゃ、次はヒールの神父様の番ってことでがんばってー」
 初めの宣言通り、どうやらチョウザはすごろくのルールに従うつもりは微塵もないらしく2マス目から先に進もうとはしない。
 すごろくの駒を自分が担っている以上、すごろくの指示に従うかどうかも自分の判断なのだろうかとプラムは考えつつ、本来進めるはずのマスより進んでいないので今回はよしとする。
 よくよく考えたらこのすごろくを作った人から伝えられたルールにも絶対にアクションマスの指示に従わなければならないとは書かれていないので、ルール違反にはならない。ゲームに参加しているチョウザとプラム、この2人が納得すれば何も問題はないのである。
「さて、次は俺の番ですね。なんの目が出るのでしょうか」
 チョウザが天高くサイコロを放り投げていたので、それに負けじとプラムも頭上に向かってサイコロを放り投げる。
 見た目はとても大きなサイコロだったのである程度重量があるのは覚悟していたのだが、そこまで特段に重いわけでもなく、むしろ風に吹かれても動じないぐらいのちょうどよい重さだったのでサイコロを投げる身としてはとても投げやすかった。
「おー、思ったよりも高く上がったねぇ。でも、ザコちゃんには1歩及ばないかなー」
「もう少し高く上げるつもりだったんですけど、しくじりましたねぇ……。あっ、そういえば出た目確認するの忘れてました。ちょっと確認してきますね」
 いつの間にかどちらがより高くサイコロを放り投げられるかの勝負に代わっていたが、プラムは思い出したかのようにサイコロの元へと歩みより出た目を確認する。
 天を向いているサイコロの面には4つの黒い斑点が規則正しく並べられており、サイコロの指示通りに進むとそこには新たな指令が書かれていた。
『どこからか音楽が流れてきて踊りながら2マス進む。音楽に乗れなかった場合はその場に留まる』
「あー、これは俺でもザコちゃんでもない人が書いてくれた指令っぽいですね。踊りながら2マス進むですかー……、なんだか変わった指令ですね」
「なんだか楽しそうな指令ではあるけどねー。それじゃ、ザコちゃんがなんか適当に合いの手入れてあげるからヒールの神父様は踊ってねー」
 そう言ってチョウザがリズムを作ってくれる中、プラムはその場のノリで適当にダンスを踊りながらマスを進める。
 すごろくを初めてまだ1巡しか回っていないが、すでに波乱状態だった。

「さて、次は俺の番でいいんですよね。それじゃあ行きますねー」
 時は過ぎ、ゲームもそろそろ終盤戦。プラムは先を行くチョウザになんとか追いつくため、高く高くサイコロを放り投げる。
 プラムが現在立っているのはゴールまであと10マス地点であり、先を行くチョウザとは3マスの差しかない。ここで4以上の数字が出れば逆転となるのだが、サイコロが示した数字は2。ことごとく運がない。
 だが、サイコロの指示通りに進んだマスにはある1つの指令が書かれていた。
「……あれ、これは俺の指令だね。まさか俺が踏むとは思ってなかったよ。必殺技ねぇ、やりたいことは決まってるんだけどなぁ……」
『自分の必殺技名(予定)を全力で叫ぶ。叫べたら3マス進み、叫べなかったら3マス戻る』
 これがプラムの書いた指令であり、今現在取り組もうとしている指令でもある。
 エンタメ性を追求している指令が有っても面白いかなと思って書いた指令だったのだが、まさか自分が踏むことになるとは思ってもいなかった。
「んー、ならそのやりたいことを技名にしてしまえばいいんじゃなーい? 今かっこいいと思った言葉を叫んだらそれでいいっしょ」
「うん、確かにそうかも。なら……長距離教会破壊魔法、バーニング・イノセンス!!」
 すごろくに書かれた指示の元、プラムは校庭から見える山の向こう側に向かってこれから習得するであろう技名を全力で叫ぶ。
 この技であの教会を破壊出来たらどれだけいいだろうか、なんなら今からでも壊しに行ってやろうかと考えていると、隣でチョウザが苦笑いを浮かべながらプラムの方を見ていた。
「ふふ、とても修道士が口にする言葉じゃないよねー。ザコちゃんそういうの嫌いじゃないよ」
「おっと失礼、つい本音が。本当はもっと気軽に破壊できればいいのですけどねー。早く必殺技を習得してみたいところです」
 空想上ではあるが、無事に教会を破壊することができたプラムはすごろくの指示通りに3マスほど進む。
 技名については今適当に思いついた言葉なのでもしかしたら変更はあるかもしれないが、いつかあの教会だけは絶対に破壊してやりたいところである。
「さて、次はザコちゃんの番だねー。なにがでるかなーっと」
 段々サイコロを投げるのに飽き始めたのか、チョウザは1m大のサイコロを足で軽く蹴る。
 サイコロはしばらくの間コロコロと転がっていき、動きが止まるころには4の数字を上に向けて止まっていた。
「4ねー、おけまるちゃーん。それじゃ、1、2、3、4っと。……あれ、これはザコちゃんが書いた指令だねぇ。おっとこれは大波乱?」
『空腹に襲われた。今すぐに何かを食べないと、きっと無事ではいられない。あなたは食物を求め歩き出した……』
 チョウザは悪い笑みを浮かべながらポケットにしまっていた白い紙きれを取り出し、プラムに見せてこう言った。
「それじゃ、ザコちゃんが優勝するためのお祝いとして焼肉でも食べに行こうか」

「ねぇ、1つだけ聞いていいかな」
「んー、なになにー? ザコちゃんが何でも答えてあげるよーん」
「なんで俺たちこんなところにいるのかな。これってまだすごろく続いてるんだよね?」
『一時的にすごろくを中断し、闇焼きクラブの部室へ向かい扉を開く。その時鉄板の上で焼かれていた物を全て食べる。(なにも焼かれていなかった場合は、部室の冷蔵庫の1番手前にあるものを焼く)全て食べきれた場合は8マス進む。全て食べきれなかった場合は8マス戻る』
 これがすごろくの枠内に全ての指令が入りきらず、わざわざ白い紙に書き写してまで用意したチョウザの指令である。
 この指令を受けた2人は校庭からクラブ棟へと場所を移し、指令の指示に従って闇焼き肉クラブの扉の前に来てみたのはいいものの、これからどうしようかと話し合っていた。
 ちなみに、これまでは他の生徒の目が合ったのでプラムは修道士モードを維持していたが、ここはクラブ棟。昼休みの時間帯ということもあってか、人の気配もなく閑散としている。
 プラムは周りに人がいないことを再度確認すると儚い修道士の仮面をすっかりと脱ぎ捨て、普段の口調へと戻っていた。
「……そもそもこれってどうやって入るつもりなの? 鍵閉まってるけど」
「……これはちょっと想定外だったかもしれないね。まさか開いてないとは思ってなかったよ」
 チョウザが止まったマスはゴールまであと6マスのところだったので、この指令をクリアすればチョウザの勝ちは確定となるのだが、この指令には1つだけ重大な欠点がある。
 鉄板の上で焼かれている食べ物か、冷蔵庫の一番手前にある食材を焼いて食べる事を参考条件とするならば、まず大前提としてこの部屋の中に入る必要性があるのだ。
 鉄板の上で食材が焼かれていたとしても、その食べ物が本当に食べられるか、そもそも実際にそこに食材があるかなんて、実際に部室の中に入ってみなければ分かるはずなどないのである。
 食材を食べられたら8マス進み、食べれなかったら8マス戻る。つまり、食材が食べれるのか食べれないのか判断ができなければ進むことも戻ることもできない。
 まさかこういう結果になるとは思ってもいなかったのか、この状況にはさすがのチョウザも頭を抱えていた。
「あれ、2人ともそんなところでどうしたの? なんだか真剣な顔になってるけど、何かあった?」
 部屋の中に誰もいないことを再度確認し、この扉の向こうにはどうやって侵入すればいいだろうかと2人で話し合っていると、たまたま通りすがった【コルネ・ワルフルド】先生に声をかけられる。
 別に隠す必要性もないし、コルネ先生なら分かってくれるかもしれないという淡い期待も込めて、2人はこれまでの経緯を全て説明した。
「へー、なんだかおもしろそうなことをしてるね。でもなー、部員じゃない人が他の部室に入ることは基本的にダメだしなー。うーん……、まぁ今回は特例ってことで見逃してあげるよ。せっかくの楽しい雰囲気を壊しちゃったら可哀そうだもんね」
 本来ならば部員でない人が他の部室に入るのはあまり好ましくはないことなのだが、すごろくに書かれた指令でどうしても焼肉を食べないといけないことについて話すと、コルネ先生は少し考えながらも闇焼き肉クラブの部室に入る許可をくれた。
 使い終わったら部屋の中をきちんと片付けてから退出すること、用事が終わったら闇焼き肉クラブの人に部室を借りていたことをちゃんと説明することなどを条件にした元だが、なんとか闇焼き肉クラブの合鍵を貸してもらうことに成功する。 
 どうやらコルネ先生も忙しいらしく、そそくさと職員室に帰っていったあと、チョウザはコルネ先生から借りた合い鍵を使い、闇焼き肉クラブの扉を開けた。
「うーん、残念ながら鉄板の上には何もないし冷蔵庫漁りますかねー。鉄板の上に何もなかった場合は冷蔵庫の1番手前にあるものを焼いて食べるのがザコちゃんルールだからねー」
「……なんか、こういうときはちゃんとルール守るのね。もっと遠慮とかしようよ」
「えー、遠慮なんてしたらザコちゃんらしくないでしょー。それにほら、すごろくの指示には絶対に逆らうことはできないんだし、仕方なし仕方なし」
 それにしては序盤からルール完全無視でやっていたような気もするが、ここでそれをいうのは禁句である。
 チョウザは勝手知ったる様子で鉄板の温度を上げ始め、プラムは冷蔵庫の一番手前にあったお肉を持って席へと座る。
 これがなんのお肉なのかは分からないが、とりあえずお肉ではあることは間違いない。試しに焼いてみても部屋の中に美味しそうな匂いがただ寄ってくるし、おそらく食べても大丈夫だ。
「んー、思っていたよりも美味しいけどこれってなんのお肉なんだろうね。なんかこれまで食べたことのない味」
「ザコちゃんも食べたことない味だなー。でも美味しいからおけまるじゃん? ちょっと獣臭いような気もするけど、食べれる食べれる」
 すでにブロック状に切られていたお肉だったので元はなんのお肉だったのかは分からないが、馬でも牛でもないのは確かである。
 あまり量が多くなかったので食べ終わるまでにそれほど時間は要さなかったが、結局最後までこれがなんのお肉だったのか、2人には見当がつかなかった。
「ごちそーまっと。それじゃ、指令通り冷蔵庫の一番手前にある食材を食べきったってことで、すごろく勝負はザコちゃんの勝ちだねー。おーつかれちゃーん」
「そういえばこれすごろくの途中だったね。勝負には負けたけど、美味しいお肉が食べれたのでまぁよしとしようかね。ごちそうさまでした」
 2人は空となったお皿を前に両手を合わせ、食後の片づけに入る。
 最初は校庭でちゃんとすごろくをしていたはずなのだが、いつの間にか舞台が校庭から闇焼き肉クラブの部室へと変わり、勝つために焼肉を食べ始めたりと、とても異例づくしなすごろくとはなったが、これにて第1回波乱のすごろく大会は終了となった。



課題評価
課題経験:22
課題報酬:600
な~にがでるかな な~にがでるかな
執筆: GM


《な~にがでるかな な~にがでるかな》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-08-08 00:13:27
いまんとこザコちゃん1人だけど、とりあえず言うだけ言っとくね。

っても相談献策が不要系な課題ではあるんだけどね。
ザコちゃんが用意しとくマスはー、ただ書いてるの受け入れ甘受なのは気に食わないし。
ある程度本人のやりようで結果変わる、みたいなあれにしてるかな。そんな感じ。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 2) 2019-08-08 23:16:48
あ、なんかこう言う遊び教会の子供とやった気がする。

じゃあ、俺は一番自分が美しく見えるであろうポーズを取る…で。
やる本人だけじゃなく、周りも色んな意味で楽しい。
名案。