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オーロラを見に行こう!! (ショート)
GM
 魔法学園フトゥールム・スクエアに入学することになった君達は、同じ新入生である他の学生たちと親睦を深めるため、綺麗なオーロラが見えるというとあるコテージへと合宿に来ていた。 「うぅ~~、寒い……。死にそう……。もう帰りたい……」 「なんでこういう時に限ってこんなに寒いのかしらね。外の冷気が部屋の中まで入ってきて、ものすごく寒いのだけど」 「全くもう、だらしないよ~? 新入生たち。これぐらいの寒さで弱音を吐いてちゃこれからやっていけないよ♪ これからもっともっと寒くなるんだから、がまんがまん♪」  食後の運動として腕のストレッチをしている彼女は、この合宿に引率者として同行している武神・無双コースの【コルネ・ワルフルド】先生。  幼い頃からこの学園にいるコルネ先生の話によると、この時期に雪が吹雪いているのはよくあることのようで、寒いときにはマイナス15度を下回ることもあるらしい。  それと比べたら今日は雪も降っていないしまだ暖かい方なのかもしれないが、コルネ先生のようにもふもふの尻尾を持っていない私たちにとって氷点下の寒さというのはとても厳しい寒さだった。 「さてと。お夕飯も食べ終わったことだし、簡単に今からの流れについて説明するね♪  えっと今は夜の10時だから……、だいたい1時間か2時間ぐらいかな。今日はお外も寒いし、綺麗なオーロラが見えるはずだよ♪ 運がよかったら流星群も見れるかもしれないね」 「えっ、ここって流星群も見られるんですか? オーロラだけかと思ってました」 「確かにオーロラもよく見えるけど、この天気ならたぶん流星群も見れると思うよ。まっ、オーロラも流星群も見れるかはどうかは運次第なんだけどね~~。じゃ、なにかあったら呼んでね。私は部屋でゆっくりしてるから」 「えっ、コルネ先生はオーロラ見ないんですか? せっかくだし一緒に見ましょうよ」 「んー、私は遠慮しとくよ。今日はきみたち新入生の親睦を深めることが目的なんだし、私がいたら邪魔になっちゃうだろうしね。部屋で干しぶどうでも食べながらゆっくりしてるよ。それじゃあね~♪」  夕食のときにも食後のデザートと言って干しぶどうを食べていたような気がするが、どうやらあれぐらいの量ではもの足りなかったらしい。さすが干しぶどうは飲み物だと豪語するだけのことはある。  コルネ先生はふさふさの尻尾を左右へと揺らしながら階段を上っていき、自分の部屋へと帰ってしまった。 「コルネ先生とも色々とお話ししてみたかったんだけど、それはまた今度になりそうだね。ちょっと残念かも」 「まぁこれから学園でお世話になる先生なんだし、またいつか話す機会があるでしょ。さっ、オーロラが出るまでまだ時間はあるだろうし、なにから始めていこうか」
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-02-05
完成 2019-02-23
私、スケート教室の臨時スタッフになります (ショート)
GM
「ふわぁぁ、すごく重かったなのですぅ……。手伝ってもらって助かりましたぁ」  そう言って、【シルフィア・リタイナー】は包帯や消毒液などの医療品が入った段ボールを机の上へと置き、そのまま椅子へと腰かける。  保健室に運ばなくてはならない段ボールは2箱だけだったので大きい方の段ボールを持ってあげたのだが、とても小柄な彼女にとっては小さな段ボール箱だけでも少し重かったらしい。椅子に座って休憩しているシルフィアの額にはうっすらと汗が流れていた。 「ふぅー、思ったより重かったですね。シルフィーちゃんもお疲れさまでした」 「あぁぁぁ、ほんとに手伝ってくれてありがとうなのですよ。あなたがいてくれなかったら私どうしたものかと……」  小さな箱を持ってくるだけでもここまで疲弊している彼女にとって、自分のひざ丈ぐらいまである段ボール箱は到底持ちきれないだろう。  食堂で昼食を取った後にたまたま通りかかったので成り行きで手伝うことになったのだが、シルフィアのお役に立てたようで本当に良かった。 「あの……、実はですね。お礼ついでにもう一つお願いしたいことがあるんですが……、いい……ですか?」 「別に構いませんけど……なんです、これ?」  凄く申し訳なさそうな顔をしながらシルフィアが差し出したのは、アイススケート場の入場チケット。数えてみると、全部で8枚ある。   そういえば、階段の踊り場に初心者大歓迎と書かれたスケート教室のポスターが貼ってあったような気もするが、どうやらこのチケットはそのスケート教室が開かれるアイススケート場のものらしい。  詳しく話を聞くと、シルフィアはそのスケート教室が開催される今週末だけ臨時救護医として呼ばれているらしく、できることなら魔法学園の生徒さんも臨時スタッフとして連れてきてくれないかと頼まれているらしかった。 「いやいや、いくらシルフィーちゃんの頼みでもさすがにそれは無理ですって。アイススケート場の会場スタッフなんて出来る自信ないですもん」 「スタッフといっても会場を軽く見回りしてもらうだけでいいんですぅ。あなたが来てくれるだけでわたしもすごく心強いんですが……。ダメ、……ですか?」  シルフィアは顔の前でぱちんっと両手を合わせ、懇願するようにこちらを見る。  自分にそんな大役が務まるとは思わないのでできれば断りたいところではあるのだが、そのつぶらな瞳を見ているとなんだか断るのも申し訳なく感じてきて…………。 「……はぁ分かりました、引き受けますよ。友人にも手伝ってもらえないか頼んでみます」 「うわぁぁ、ありがとうなのですよ。学園の生徒さんが来てくれるだけで、わたしはとても心強いのですぅ」  スタッフと言ってもそれほど大変な仕事は回ってこないだろうし、そこまで気を張らなくても大丈夫だろう。  シルフィアも場内の見回りは遊びながらでも全然大丈夫だと言っているし、おそらくなんとかなるはずだ。…………たぶん。 「それでは、当日はよろしくお願いしますぅ。あなたにはすごく期待しているのですよ」 「まぁ、頼まれたからには頑張りますけど……。そういうシルフィーちゃんこそ救護医としての仕事頑張ってくださいよ。いつもみたいにとりあえず注射打とうとはしないで下さいね」 「はうぅぅ~……、痛いところを突かれてしまったのですぅ…………」
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-02-24
完成 2019-03-14
美味しい美味しい卵料理はいかかでしょう! (ショート)
GM
 この世界の明日を担う勇者のために開かれた学校、ここフトゥールム・スクエアでは日々様々な授業が行われている。  街に現れた魔物を退治するのはもちろんのこと、迷子になった子どもを探しに森の中を歩き回ったり、参加人数がいまいち足りないからという理由でマラソンに参加させられたりと授業の内容は様々だ。  入学したときに選んだコースによって授業内容は多少変動するが、生徒たちはそれぞれの思い描いた将来像により近づくために、日々勉強をしながら少しずつ成長していくのであった。 「はーい、みなさん準備は出来ましたね。それでは、今日もみんなで楽しく調理実習をやっていきましょう!」  フトゥールム・スクエアでは、月曜日から金曜日を平日と定められており、土曜日と日曜日は休日ということで学校はお休みとなる。  いつもならば教室に残ってお喋りを楽しんでいる生徒達も、金曜日はあまり学校に残りたがらない。みんな明日から始まる休日のために早々に家に帰って休息をとっているか、待ちきれずにすでに遊びに出かけているからだ。  そんな中、学園内のとある調理室では毎週金曜日に自由参加型の調理実習が行われる。  自由参加といえど、調理室を借りる名目上は授業でないといけないので特別授業扱いになってはいるが、実際はただお喋りを楽しみながら夕飯を作っているだけだ。  先々週はさんまの塩焼きを作ってみんなで魚パーティーを開き、ある日は自宅から自分の好きな材料を持ってきてオリジナルのお好み焼き。またある日は豚の生姜焼きやクレープ作りと作るものは日によって大きく異なる。  気持ち的にはお肉を使ってがっつりといきたいような気もするが、ちょっと趣向を変えてデザート作りなんていうのもいいかもしれない。なんて考えて、何を作るのか楽しみにしている生徒もいる。  生徒たちは今まで気にしたこともなかったが、この調理室には様々な種族の生徒たちが集まっており、それぞれ生まれも育ちも違う。その生徒しか知らない郷土料理があってもおかしくない。  この授業では事前に作る料理を教えてもらえず、使う食材ですらいつも直前になって知らされる。授業の初めに行われる食材お披露目タイムは、緊張の一瞬であった。 「せんせー、今日はなにを作るんですか? かつ丼とか?」 「んー、ちょっと惜しい! 今日はみんな大好き卵料理を作ってもらうよ!」  どうやら今日卵料理を作る予定だったらしく、先生は冷蔵庫の中から今日のメイン食材である卵を4パック程取り出してくる。今日の調理実習に参加している生徒は30人とちょっとなので、平均すると1人1玉ぐらいだろうか。  卵に余裕があるならば温泉卵を作ってトッピング! なんていうのもありかもしれないが、これぐらいの量なら溶き卵にするのが限界だろう。  さっき誰かが先生に聞いていたが、かつ丼や親子丼にするならば卵の量もちょうどいいだろうし、作るのも簡単だ。鍋を作って最後の締めに卵雑炊! なんていうのも面白い。  調理室に集まっている生徒たちのお腹は減る一方なのに、頭の中に広がっている夢はみるみるうちに膨らんでいった。 「なんと、まだまだありまーす!」  どんな卵料理を作ってやろうかと生徒たちが頭の中で試行錯誤を繰り返していると、先生が追加の卵を持って再び教卓の前へと立つ。  先生の手に2パックの卵が握られているということは、すでに置かれている卵も合わせて今回使用するのは全部で6パックの卵。  こんなに卵があるならばたっぷり卵を使ってオムライスやオムレツに挑戦してみるのもいいかもしれないが、メインは違うものにして副菜のサラダに卵を混ぜても美味しそうだ。  増えたのはたったの2パックだけだが、生徒たちの頭の中では料理のバリエーションが莫大に増えていった。 「……って先生、一体何パック買ってきたんですか。いくらなんでも多すぎますよ……」 「だって仕方ないじゃん。先週やる予定だった調理実習が中止になったんだもん!! 腐らせるのももったいないし、消費するの手伝って!!」  しかし、先生は冷蔵庫から2パックの卵を出した後にも次から次へと卵を出してくる。  ようやく先生の手が収まったかと思えば、教卓の上に並べられているのは全部で10パックの生卵たち。1パックには10個の生卵が入っているので、合計で100個の生卵となる。  呆れすぎて開いた口が塞がらない生徒たちが心の中で思っていることはただ一つ。 『これ、どうやって消費すれば……』
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-07-19
完成 2019-08-06
な~にがでるかな な~にがでるかな (EX)
GM
 その日は雲1つないような晴天で、とても気持ちのいい夏の日だった。  最近雨の日が多くてなかなか外に出られなかったということもあり、彼女たちは中庭にブルーシートを広げてお弁当を食べる。  春になれば桜が咲いてとても綺麗な景色になるのだが、たまには深緑色に染まった桜を眺めるのも悪くない。特にここの桜は毛虫が寄り付かないように対策されているのでお昼ごはんを食べるには最適だ。  彼女たちはお弁当のおかずを見せ合ったり交換したりしながらのどかな時間を共有し、お腹が膨れるとそのまま食後の散歩をすることにした。 「暑いねぇ……」 「うん、暑いねぇ……」  1度教室へと戻ってお弁当箱をカバンの中へとしまい、校庭を歩き始めてからおよそ5分。彼女たちは迂闊な判断で散歩を始めてしまったことを後悔していた。  お昼ご飯を食べている時は木陰に入っていたのであまり気にしていなかったが、いざ歩き始めてみるととにかく暑い。  なるべく日に当たらないようにと陰を選びながら歩いているが、足を踏み出すたびに首からはすーっと汗がしたたり落ちる。  水分は十分に取っているはずなので熱中症になる可能性はないだろうが、時間が経つにつれて2人の口数は徐々に減っていった。 「ストーップ!! 2人とも、ストーーップ!!」  彼女たちの頭の中から暑い以外の情報が全てシャットダウンされ始めた時、元気な声が頭の中に割って入ってくる。  なんでこんな暑い日にそこまで元気なのだろうかと不思議に思いながらも顔を上げてみると、そこには同級生の【冬空・コタツ】が立っていた。 「あっ、コタツちゃん……。こんなところで、何してるの……?」  手には杖のように長い木の枝を持ち、小麦色に焼けた腕で汗をぬぐいながらコタツは満足気な笑みを浮かべている。  やけに手が泥だらけになっていたので気になってコタツの持っている枝の先に視線を向けてみると、地面をえぐって書いたのであろう黒い線が先へ先へと続いていた。 「なにってすごろくに決まってるじゃん! だからそこのマスは踏まないでね。そこを踏んだら秋刀魚の香りに誘われて2進まないといけなくなるから!!」  一体なんのことだろうかと首をかしげながらも足元を確認してみると、2人の目の前には『2↑』と書かれたマスがある。どうやらこれはすごろくの一部らしく、このマスに止まれば2マス進むことが出来るらしい。  マスの隣には大きな文字で「1」と書かれており、「2」「3」「4」と続いてる。スタート地点がドッジボール並みの広さなのには少し違和感を覚えるが、思っていたよりも本格的なすごろくだった。 「あぁ、すごろく作ってたのね。邪魔してごめん。…………あともう1つだけ聞かせて。これはなに?」 「えっ、サイコロだよ? すごろくするならサイコロも必要でしょ?」 「いやいや、そうじゃなくてね。なんでこんなに大きなサイコロがあるのかなって思ったの。いくら何でも大きすぎじゃない!?」  コタツの傍に置かれているのは、1辺が1mあるのではないかと疑うほど大きなサイコロ。見たところサイコロの出目は一般的なもののようだが、なによりサイズが規格外すぎる。  何でここまで大きなサイコロを作ったのかとコタツに聞いてみても、返ってくるのは大きいサイコロの方がいい数字が出そうだからというよく分からない答えだけ。終いには、このサイコロはものすごく軽いんだよという謎の自慢をし始めた。  もはや話の方向性が迷子になっているような気もするが、コタツが楽しそうに話を進めているのでよしである。 「ぐぅぅぅ……」  話はさらに盛り上がっていき、なぜ秋刀魚は美味しいのかという話になり始めた時、コタツのお腹からぐぅっと可愛い音が鳴る。  どうやらコタツはまだお昼ごはんを食べていなかったらしく、朝からずっとここですごろくを作っていたらしい。道理で先ほどから食べ物の話しかしていなかったわけである。 「うぅ、お腹減った……。ちょっとお昼ごはん食べてくるね!」 「うん、分かった。……えっ、ちょっと!? まさかのこの流れで!!?」 「秋刀魚がボクを呼んでいる気がする! それじゃあねー!!」  今は夏真っ盛りなんですけど!? と心の中で突っ込みをいれている間に、コタツは校舎の方へと走り去っていく。入学当初からあんな感じだったのでもう慣れたが、相変わらずの気まぐれっぷりだ。 「えっと……、これどうする?」 「どうするって……、せっかくだしやってみる? あー、けど私たちはそろそろ教室に戻らないといけないか。誰か代わりにやってくれないかな」  疾風の速さで駆けていったので、コタツ特製の巨大サイコロはその場に転がったまま。すごろくにはまだなにも書かれていないマスが目立つが、適当につけ足せば十分に遊べるだろう。  幸いにも、すごろくが描かれているのはとても心地の好い木陰で暑さの心配もない。さっきまで外で遊んでいた人にとって、ちょうどいい休憩となるだろう。  2人はすごろくをやる参加者を集めるため、近くにいる生徒たちに声をかけ始めた。
参加人数
2 / 8 名
公開 2019-08-02
完成 2019-08-20
波乱の秋物バーゲンセール!! (ショート)
GM
 夏の暑さも終わり、次第に風も涼しくなってきた。あれほどうるさく感じていたセミの声も今ではすごく懐かしい。  暑さを通り越して最近は肌寒く感じるようになり、秋の訪れを感じる季節となってきたのだが、そんな穏やかな季節とは裏腹に女性用の服を取り扱っている『コンポタンジュ』では、開店準備に慌てふためく2人の姿があった。 「あー、もうなんでこういう日に限って2人しかいないわけ!? どう考えたって人足りてないし、正気の沙汰とは思えないんだけど!!?」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ちゃんとフトゥールム・スクエアの学生さんにヘルプ求めてるし、誰かしら手伝いに来てくれるって!」 「すごいお気楽風に言ってるけど、ほんとに来てもらわないと困るからね? ちゃんと依頼出したんでしょうね」 「出した出した。ちゃんと1ヶ月前には依頼出してたし、そんなに確認してくれなくても大丈夫だって。私に任せなさい」  平日の昼間でさえ2人で回すのがやっとだというのに休日の昼間、しかもバーゲンセールを行っている日に2人しかお店にいないなんて死刑宣告をされているようなものである。  どうしても2人で回さなければならない状況であればなんとかするが、その時は商品の補充とお会計に専念しなければならず、店内清掃や接客等の他の業務は全て後回しにするしかない。  そんな猫の手でも借りたいような状況の中、接客業のことについてなにも知らないような学生さんでも、なんなら人と接することがとことん苦手な恥ずかしがり屋な学生さんでもうちとしては大歓迎である。  なんならそのままコンポタンジュの店員として働いてくれれば長年の人手不足も解消されるのだが、わざわざ今日のために学園からお手伝いに来てくれるというのにさすがにそこまで欲張るわけにはいかなかった。 「……そういえば、フトゥールム・スクエアに依頼出すときにちゃんとうちのお店の事詳しく書いた? うち女性服扱っているお店だけど、まさかそれ伝えてないなんて事はないでしょうね」 「……ナ、ナンノコトカナー」 「あんた嘘でしょ……。うちのお店って女性服しか置いてないのに、男性の学生さんが来ちゃったりしたらどうするのよ……。まぁ、私からしてみたら若い学生さんが来てくれるのは万々歳なんだけどさ」  まさかそんなことはないだろうなと思いながらも念のために確認を取ってみると嫌な予感が的中する。  別にコンポタンジュでは男性の入店を拒否しているわけではないのでお客さんとして来てくれる分にはとてもありがたい事なのだが、働く側に立とうとするとお店で売られている服を来て接客を行わなければならない。  これはお店の宣伝も兼ねているのでアパレル店の間では至ってごく普通な規則なのだが、問題はコンポタンジュに置かれている服だ。  コンポタンジュでは主に20代から30代と比較的若い女性向きの服しか取り扱っておらず、男性用の服は一切置かれていない。  店長の許可があれば他のお店の服を着て接客をすることもできるのだが、残念ながら店長は今日の秋物バーゲンセールに向けて残業続きだったため今日はお休みである。  綺麗な顔をしていてほっそりとした学生さんなら少し長めのズボンと黒を基調とした服を合わせれば少しはましになるかもしれないが、その格好だとどうしてもボーイッシュの女の子を連想してしまう。  男性は髪が短い人が多いので女性の服と合わせようとすると違和感が出てしまうのは仕方のないことなのだが、なんとか合わせることができないかと考えてしまうのはアパレル店員としての性だった。 「……あっ、そういえばあそこにいいもの置いてあるじゃん! あれもこのお店にあるものだし、コーディネートに使っても怒られないよね!!」  彼女が指さしているのはお店の角にこじんまりと構えられている小物コーナー。このコーナーには帽子や伊達メガネの他にもイヤリングやチョーカー等のアクセサリーが並べられており、鏡で自分の姿を確認しながら自由な組み合わせでコーディネートを楽しむことができる。  特に20代前半の若い女性の方から人気のあるコーナーで、たまに購入した商品を試着室で着てその服に合うアクセサリーを選ぶ人がいるぐらいなのだが、どうやら彼女はそこに置いてあるウィッグのことを言いたいらしい。  本来は自分が髪を切った時の姿やカールをかけたときの姿を想像しやすくするために置かれているもので、もはや売り物ですらもないのだが、確かにこの状況を打破するコーディネートとなれば、ウィッグの存在はなくてはならないものだった。 「……いやいや、確かにウィッグを被れば見た目は女の子に近づけるかもしれないけどさ。さすがにそれはまずすぎでは?」 「えっ、だって似合ってるなら着る服なんて男性用でも女性用でもどっちでもよくない? 女性の服を着ている男性、つまり女性だよね。なにも問題ないじゃん!!」  その自信はどこから出てくるんだろうと思いつつ、彼女は倉庫の中からありったけのウィッグを持ってくる。  肩元で綺麗なカールを巻いているウィッグがあったり、頭の上にお団子のあるウィッグがあったりと種類は様々だ。  そのときのお客さんに合った服を選ぶことがアパレル店員のお仕事なのだが、まさか男性に女性用の服を見立てる日が来るとは思ってもいなかった。 「ほらほら、早くしないと開店時間に間に合わなくなっちゃうよ。さっさと手を動かす動かす」 「……あんたに言われるとすっごいムカつくけど、まぁ急がないといけないのはほんとだから何も言わないでおくわ。なんとか開店時間までに間に合わせるわよ」 「あいあいさー」  時計を確認してみると、今は8時45分。開店時間まであと1時間弱しかない。  フトゥールムスクエアの学生さんには10時すぎぐらいに来てほしいとだけ伝えているので、それまでは2人の頑張りどころだ。  すでに店内には値下げシールが貼られている洋服がずらりと並べられており、後は開店前の店内清掃とまだ倉庫から出していない商品の品出しとバーゲンセール用のPOPを店内に貼り付けるだけである。  普通にやればあと2時間はかかるだろうが、かなり急ぎ気味でやればなんとか開店前には間に合うはずだろう。……いや、終わらせないとまずい。  2人はお互いに目を合わせ、先ほどまで軽口を叩きあっていたのが嘘のように黙々と作業に取り掛かり始める。  そのおかげか開店10分前には全ての業務を終わらせることができ、後はフトゥールム・スクエアから来てくれるであろう応援を待つのみとなった。
参加人数
5 / 8 名
公開 2019-10-11
完成 2019-10-26
芸術の秋、食欲の秋、おもしろそうな秋? (ショート)
GM
 芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、紅葉の秋、実りの秋。秋と言えば色々な秋と言えば、その多くは外ででしかできないものばかり。つまり部屋の中でのんびりとしているのはもったいない!!  学園の西側に広がっているスペル湖という広大な湖では、特別授業という名目でスケッチ大会が開かれようとしていた。 「はーい、みんな揃ったかな? それじゃ、秋のスケッチ大会初めていこっか♪」  特別授業ということもあってか、引率は武神・無双コースで教師をしている【コルネ・ワルフルド】先生。  今でこそコルネ先生=干しぶどうというイメージが強いが、干しぶどうが関わらなければものすごく面倒見がよく、生徒からの信頼も厚い。  決してコルネ先生が食べようとしている干しぶどうを奪ってはいけないという暗黙の了解はあるが、こんな時に生徒たちをまとめてくれるのはいつもコルネ先生だった。 「それじゃ、審査員のメンバーを紹介していくね♪ まずは芸術の秋部門から。芸術の秋部門はみんなのアイドル、【エミリー・ルイーズム】ちゃんだよ♪」 「えへへ、なんだか改めて言われると照れちゃうな☆ みんな、綺麗な絵を期待してるよ☆」 「エミリーちゃん、元気のいい挨拶ありがとう。それじゃあ次は、食欲の秋部門担当の【キキ・モンロ】ちゃん」 「キキなの~。なんだかお腹が減ってきたからおいしそうな絵をいっぱい持ってきてくれると嬉しいの~」 「えっと……、絵は食べちゃダメだからね? それじゃあ最後に、我らがフトゥールム・スクエアの校長、【メメ・メメル】先生」 「はいは~い、メメたんだぞ☆ 今日は俺っちのために集まってくれてありがとうなのだ! 俺様の担当はおもしろそうな秋部門だから、とにかく面白そうな絵を描いてきてくれよな☆」  芸術の秋、食欲の秋と続いて次はスポーツの秋か読書の秋かなと思っていたが、ここで期待を裏切らないのがメメたん先生。最後はおもしろそうな秋部門である。  もはやそれは秋と関係なのでは? とも思ったりするが、メメたん先生が審査員を務めている部門なので仕方がない。メメたん先生が秋と言ったらそれは秋なのだ。  審査員の紹介を終えたコルネ先生は学園から持ってきた段ボール箱を開き、中に入っていた筆やパレッドを近くにいる生徒に一人一人手渡しで配っていく。  どうやらこのスケッチ大会では画材の指定はないらしく、鉛筆や絵の具、なんならその場に落ちていた石炭など、絵を描けるものであればなんでもいいそうだ。  今日は特別授業という名目でスペル湖に来ているが、絵の出来によって評価が決まるなんてことはない。メメたん先生がたまたま暇をしていて、天気が良かったからスペル湖に遊びに来ただけである。  スケッチ大会なんてものは、この時間を特別授業にするための名目でしかない。これがフトゥールム・スクエアの日常だ。  「それじゃ、みんな頑張ってきてね~。お昼までには戻ってくるんだよ~」  それぞれ好きな画材を持った生徒たちはコルネ先生の掛け声により、思い思いの場所に散っていく。  お昼ごはんを食べる頃には学園に戻らないといけないのであまり時間はないが、たまには外でのんびりとしながら絵を描いてみるのもいいかもしれない。生徒たちは何を描こうかと辺りを散策しながら、スケッチ大会を満喫することにした。
参加人数
2 / 8 名
公開 2019-09-13
完成 2019-10-01
のんびり屋のサンタクロース (ショート)
GM
 勇者歴2019年、11月半ば。  この時期になると世のサンタクロースたちはよい子にしている子供たちのため、プレゼントの準備に追われ始める。  自身が担当している地区にどれだけプレゼントを欲しがっている人達がいるかによって忙しさは変わってくるが、大抵のサンタクロースは夏が始まる頃からプレゼントの準備に取り掛からなければ間に合わない。  サンタクロースにとって12月は1年の中で最も忙しく、1年の中で最も輝く月。  12月の24日、クリスマスの夜。そのたった一夜のために、世のサンタクロースは何ヶ月もの月日をかけてプレゼントの準備を行う。  11月ともなるとそれはそれは忙しい毎日が続いていくのだが、とある離れに住む1人のサンタクロースはハンモックの穏やかな揺れに身を任せながら、テーブルの上に置いている特大タピオカミルクティーを飲んで盛大にくつろいでいた。 「HEY、ちょっとお邪魔するゼィ!! アナタはクリスマスの準備、もう終わってるますカー!? HEYカモーン!!」  本日で3杯目となるタピオカミルクティーを飲み終わり、お手製のハンモックに揺られながら眠りにつこうとしていると、突如として厚手の赤い服を身にまとった愉快なおじさまが、ピンポンも押さずに扉を開けて入ってくる。  独特な喋り方をするこの件のサンタクロースは、みんなからあわてんぼうのサンタクロースだと噂されていた。 「ん? ……あー、なんだあんたか。用がないならさっさと帰ってくれないか? 俺はもうそろそろ寝たいところなのだが……」 「アナタは寝るの早すぎるのデース!! まだお昼の1時ですヨ!? そしてもうジュウニガツデース!! ディッセンバーデース!! アナタはクリスマスの準備に取り掛かってマスカー?」  いつものことながらこいつのテンションはどうなっているんだと心の中で悪態をついていると、どうしても聞き捨てられない言葉が耳の中に入ってくる。  ジュウ、ニガツ? ディッ、センバー……?  こうしてはいられないと羽織っていた毛布を勢いよく放りだし、慌てた様子で壁に掛けているカレンダーに目を向けてみる。  そこには大きな文字で。まず間違いなく。『11月』と書かれていた。 「…………あぁ、そういうことね」  のんびり屋のサンタクロースはしばし考えた後、一つの結論に至る。あぁ、いつものあわてんぼうだなと。 「はっはん? 確かにそろそろ準備し始めないとな、教えてくれてサンキュー。あんたもクリスマスの準備もあるだろうし、早く帰れよ」 「ソウデース! ワタシもまだ準備が終わってないんデシター!! ワタシはもう帰るのデース!!」  そう言って、あわてんぼうのサンタクロースは来た時と同じように猛ダッシュで外へと駆け出していく。……どうでもいいけど、扉は閉めて帰ってくれよな。 「さて、そろそろ動き始めないと流石にまずいかねー。……おっ、こんなところにスライム饅頭があるじゃん。もーらいっと」  もはや主食となっているタピオカミルクティーを置き、あわてんぼうのサンタクロースが忘れていったのであろうスライム饅頭の箱を勝手に開けて食べ始める。  先ほどまではしっかりと子供たちにあげるためのプレゼントについて考えていたのだが、すでに頭の中ではスライム饅頭のことしか考えられなくなっている。スライム饅頭が1個、スライム饅頭が2個、スライム饅頭が3個……。 「……そういえばこのスライム饅頭ってフトゥールム・スクエアで人気なお菓子だったよな。フトゥールム・スクエアってことは、あの【メメ・メメル】が学園長をしているところか……。せっかくだしフトゥールム・スクエアの生徒さんたちにもプレゼントの準備を手伝ってもらうか」  本来ならばプレゼントを渡される側にいるはずの生徒たちに、悪びれもなくプレゼントの準備を手伝わせおうとするのんびり屋のサンタクロース。のんびりを通り越し、もはやそれは怠けである。  正体がサンタクロースだということがばれてしまうと面倒なことになるので、フトゥールム・スクエアの生徒たちには詳細については知らせず、メメ・メメル学園長に完成したプレゼントを送ってもらえればなんとかなるだろう。  のんびり屋のサンタクロースは重い腰を上げながら、10か月ぶりのプレゼントの調達準備に取りかかり始めるのであった。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-11-08
完成 2019-11-26
崩落に巻き込まれたルネサンスを救出せよ! (EX)
GM
 今からおよそ3年前。人里離れた小さな村がジャバウォックの群れに襲われるという事件があった。  この事件により村で畑作業をしてた成人男性3人が負傷、うち1人は全治1ヶ月の重傷を負った。  ジャバウォックによる被害は幾度にも渡り、畑は荒れ果て、村人たちはまともに外を歩くことさえ許されない。このままでは村から死傷者が出ることだってあり得るだろう。  事態を重く見た村人たちは勇者の育成を行っているフトゥールム・スクエアにジャバウォックの討伐を依頼。後日、学園からジャバウォック討伐部隊が派遣された。  勇者・英雄コースに通う生徒たちで構成された討伐部隊は村人たちからジャバウォックの巣窟と呼ばれている洞窟に足を踏み入れ、負傷者を1人も出さずに見事討伐に成功したのだが、そこで思わぬ問題が起きたのだった。 「ちょっとキミ、大丈夫!!?」  洞窟内に転がっているジャバウォックの死体が次々と光の粒子となって消滅していく中、肩から腰に向けて深い切り傷を負っている狼のルネサンスが紛れ込んでいたのである。  彼の存在にいち早く気づいた【サクラ・スミレ】は大慌てでその青年を抱き寄せ、自身が持ちうる限りのありったけの魔力を使って彼の胸元にできている傷を塞ぐ。回復魔法をあまり得意としていないサクラにとって、これが今できる精一杯の応急処置だ。 「早くこの子を救護班のところへ!!」  しかし、いくら傷を塞いだところで傷が癒えているわけではない。うす暗い洞窟の中でも明確に分かるほど彼の顔からは血の気が引いており、一刻も早く治療しなければ命を落としてしまう。  幸いにも今回の作戦で負傷者が出てもすぐに治療ができるよう、洞窟の外には回復魔法を得意とする教祖・聖職コースの生徒たちを待たせている。彼らならばこの青年を救うことが出来るかもしれない。  サクラは今にも死にそうになっている青年をそっと担ぎ、洞窟の外へと連れ出したのだった。 「オレ……、ユウシャ……タオス」 「はいはい、今日もあなたは元気ねー」  そして時は経ち、勇者暦2019年。ジャバウォックの巣窟から助け出された青年は【ラルフ・ネイン】と名付けられ、フトゥールム・スクエアの生徒として学園に通うようになっていた。  後に詳しい話を聞いてみると、どうやらラルフは小さい頃からジャバウォックの巣窟に住みついていたらしく、その間はジャバウォックが親代わりとなって育ててきてくれていたらしい。魔物が自種族以外の子供を育てていたなんて話は聞いたことがないのだが、不思議なこともあるものである。  ジャバウォック討伐の依頼が出されていたとはいえど、ラルフの親代わりとなっていたジャバウォックたちを殺してしまったのは紛れもなくフトゥールム・スクエアの生徒たち。  ラルフは勇者を憎み、人間を滅ぼすために魔王・覇王コースへと入学を希望したのだが、今では勇者・英雄コースのサクラが親代わりとなって行動を共にしているというなんとも不思議な関係である。  今日受けた依頼は洞窟の奥深くでしか取れない鉱石を取ってきてほしいという、至ってシンプルなもの。  力仕事である鉱石採掘はラルフへと任せ、サクラは大きなバックパックを背負いながら適当に歩いていたのだが、ラルフが急に立ち止まったことによりサクラは鼻を強く打ち付ける結果となってしまった。 「痛ッ! もー、急に止まらないでよ。鼻が曲がったらラルフのせいだから……って、どうしたのラルフ?」 「…………ナニカ、クル」  ジャバウォックに育てられた時の影響からか、ラルフは妙に鼻がいい。サクラには何も見えないがおそらく魔物の気配に気づいたのだろう。  ラルフは音もたてずに戦闘態勢へと入り、サクラも腰に差している刀に手をかける。さっきまで楽しく会話を楽しんでいたのが嘘のように、2人の間には静寂の時が流れていた。 「……これはなんだかやばそうな気がするね。敵はどれぐらいいる?」 「ジュウ……。チガウ……、モット、タクサン……。カゾエル、ムリ……」  フトゥールム・スクエアの情報によると、このダンジョンで確認されている魔物はゴブリンとスライムナイトの2種類。どちらも魔物の中では下級と扱われており、2人の手にかかればそれほど脅威な魔物ではない。  だが1人は野生としての勘、もう1人は勇者としての勘がこう警鐘を鳴らしていた。闘うな、逃げろと。 「サクラ。ニゲル、ユウセン……。ラルフ。テキ、タオス……」 「なに言ってるの。さすがにこの数をラルフ一人で倒せるわけないじゃない。私も一緒に闘うよ」 「チガウ。フタリデモ、タオス……、ムズカシイ。ラルフ。ジカン、カセグ……。サクラ。サキ、ニゲル……」 「……うん、分かった。危なくなったらラルフも逃げるんだよ」  恥ずかしながら、サクラはあまり逃げ足が速い方ではない。ここで闘うことを諦め、戦略的撤退を選ぶならば、ラルフが敵を引き留めてくれている間にサクラが先に出口へと向かうべきだろう。  そうサクラは判断し、ラルフができるだけ早く逃げ出せるようにするためにも出口へと向かって全力で駆けだす。脇目も振らず、ただ前だけを向いて。 「……ソレデ、イイ。サクラ。……タオスノ、オレ。オレイガイ、……タオサレル、ゼッタイ……、ユルサナイ!!」  だが、サクラはそのとき気が付くことが出来なかった。サクラとラルフが無事に洞窟から脱出できたところで、敵の数が減っていなければ窮地に立たされることに変わりないと。  ラルフは持ち前の怪力さを活かし、鉱石採掘用のピッケルを思いっきり振りかざして手当たり次第に壁を攻撃する。いくらピッケルが壁に跳ね返されようとも、何度も、何度も。 「……ゴゴゴゴゴ」  魔物たちもラルフが何をしようとしているのか分からず、しばらく様子を見ていたが、洞窟内に地鳴りが響き始めると一目散に去っていく。  今回の依頼を受ける際に散々言われた注意事項。この洞窟は脆く、崩れやすい。それを逆手に取った捨て身の作戦だ。  魔物が散っていったことを確認したラルフはすぐさま手に持っていたピッケルを投げ捨て、洞窟の奥へと向かう。  今ここでサクラが走って行った方へと向かえば、まず間違いなく崩落に巻き込まれてしまうだろう。ラルフが生き残るためには、自分たちが入ってきた方とは違う出口を見つけ出すしか方法はない。 「えっ、これってもしかして……。ラルフ? ラルフーーーーー!!!」  この地鳴りはすでに洞窟から脱出していたサクラの耳にも聞こえ、振り向いた頃にはすでに崩落が終わった後だった。もう引き返すことはできない。 「早くラルフを助けにいかないと!!」  洞窟に入るための入口はここを除いてあと1つあるが、サクラ1人で救出に向かったところでラルフを助け出す前に自身が力尽きる可能性の方が高い。  サクラはラルフの無事を祈り、急いで学園へと戻ってラルフの救助要請を出したのだった。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-11-20
完成 2019-12-22

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