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心の夢を見せる森


ストーリー Story

 理解のできない、不可思議で恐ろしいものに惹かれるというのは、どこにでもある話だ。
 現にそれは、肝試しや怪談話を娯楽遊戯として人々が行っていることからも明らかだろう。
 それはここ、魔法学園『フトゥールム・スクエア』でも例外ではない。

 放課後の教室。
 そこには幾人かの男女が集まり、季節外れの怪談話で盛り上がっていた。
「それじゃあ、こんな話は知っている?」
 場も温まってきたところで、一人が声を上げる。
 日が暮れて、明かりを付けていない教室内は薄暗く、だれが声を発したのかは分からないが、仲間のうちの誰かであるということは、皆容易に思いつくこと。
 しん、と静寂が教室内に落ちる。
 その中で語りだされた物語は、どこにでもありふれたお話。

 むかしむかし、愛し合っていた二人の男女がいた。
 二人はとても仲睦まじく、結婚すればだれもが羨むほどいい夫婦になれそうな恋人で、なぜ結婚していないのかをだれからも不思議がられたという。
 男は女の作った木の腕輪を、女は男が買ってくれた貝殻の髪留めを、それはそれは大切にしていたそうだ。
 その二人は、お互いに愛し合っていたため、いつかは結婚をしようと思っていた。
 しかし、それは永遠に叶うことはなかった。
 あるとき、出先から町に戻って来た男が、見知らぬ女を傍に侍らせ、恋人である女に告げた。
「俺、この女性と結婚するから」
 自分の何が悪かったのか分からず、女は男になぜ、と詰め寄った。
 しかし男は、鬱陶しそうに僅かに眉間にしわを寄せただけで、何を答えることもなく女の元から去って行ってしまった。
 その悲しみに耐えきれなかった女は、町の外れにある森の前で自ら命を絶ってしまった。

 さて、ここまでならどこにでもある、ただの悲恋物語だよね。
 本番はここから。
 女が命を絶ってからしばらく。
 その森から不気味な怨嗟の声が夜な夜な響いたというんだ。
 怪しがった人々は、幾人かを集めて調査に向かった。
 しかし、その調査隊は戻ってくることはなかった。
 二回目も、三回目も調査に向かわせても、そのどれもが戻ってくることはなかった。
 魔物の仕業か。
 そう思い始めた頃、調査に向かった一人が、ふらりと戻ってきた。
「おい、今までどこにいたんだ」
 そう問い詰めた住人に、彼はぽつりとこう言ったそうだ。
「死んだおふくろと、遊んでたんだ」
「はぁ?」
 彼はそう言ったきり、黙り込んでしまい、二度とその話は聞くことは叶わなかった。
 どういうことだと人々が集まって頭を悩ませているうちに、二人、三人とぽつぽつ、いなくなった人々が戻ってきた。
「助けてくれ、苦しんだガキの声が、耳にこびりついて離れねぇ!」
「久しぶりに、友人と会ってきましたよ。ええ、素晴らしい時間でした」
「いやだ、いやだいやだいやだ、もうあそこに戻るのはごめんだ!」
「ああ、またあの森に行きたいなぁ」
 戻ってきた人の証言は、まったく一致しない。
 ある者はすばらしく幸福な時間を味わい、またある者は地獄もかくやという苦痛が与えられた。
 その、幸福か苦痛かの二択でさえ、大まかにも分類分けはできないほど、規則性がない。
 明らかに悪人のような風貌で、本人の悪評も周りに知れ渡っているような者が、幸福そうな表情をしていたり、普段温厚で、悩みも何もなさそうな明らかに善人に見える者が苦痛に呻いていたり、また、その逆も。
 曰く、我々は夢を見ていたのだ。と。
 しかし、その証言には必ず、揺らめく女の姿を見たことも、付け加えられている。
「リバイバル、か?」
 『リバイバル(魂霊族)』であるのかという疑問は、否と首を振られる。
「リバイバルとは、あれは絶対に違う。理性がなくて、彷徨っているような感じで。あえて言うなら、怨霊……かな」
 帰ってきた内の一人は、そう言って口を噤んだ。

「お前は何を見た?」
 調査隊に入って、そして戻ってきたある男は、ぼんやりと焦点の合わない眼差しで問いかけた人を見た。
「彼女を見た」
 男は以降、口を開くことは一切なかった。
 後日その男一人で森に入ってしまったきり、行方が分からなくなったという。

 その男が行方不明になってから、森から響く怨嗟の声はぱたりと止んだというよ。
 曰く、その男とは、恋人を新しい女ができたからと振った男で、怨嗟の声はその恋人の女が発していたものとかいう話だよ。
 男が女の元へ戻ったから、怨嗟の声も止まったっていうお話。
 でもね、それからも森から不思議な声は度々聞こえて、その度に一人、また一人と森に吸い込まれるように消えていくんだって。
 もしかすると、連れて行った男で足りなかった女が未だに残って、誘っているんだろうね。
 夢を見せてさ。
 
 教室内はしん、と始まる前と同様に静まり返る。
 ふと、誰かが自身の腕を、寒さに耐えるように摩った。
「ねえ」
 声は楽しそうに続ける。
「その森、近くにあるらしいし、行ってみない?」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2019-12-31

難易度 普通 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-01-10

登場人物 8/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《真心はその先に》マーニー・ジム
 リバイバル Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
マーニー・ジムよ。 普通のおばあちゃんとして、孫に看取られて静かに逝ったはずなんだけど…なんの因果か、リバイバルとして蘇ったの。 何故か学生の時の姿だし。 実は、人を探していてね。 もし危ないことをしていたら、止めなければならないの。 生きてる間は諦めてたんだけど…せっかく蘇ったのだから、また探してみるつもりよ。 それに、もうひとつ夢があるの。 私の青春、生涯をかけた行政学のことを、先生として、みんなに伝えること。 これも、生前は叶える前に家庭持っちゃったけど、蘇ったいま、改めて全力で目指してみるわ。 ※マーニーの思い出※ 「僕と一緒に来てくれませんか?」 地方自治の授業の一環でガンダ村に視察に行ったとき、そこの新規採用職員であったリスク・ジムからかけられた言葉だ。 この時点で、その言葉に深い意味はなく、そのときは、農地の手続きの案内で農家を回る手伝いといった用件だった。 「よろしくお願いします。」 これ以降、私たちの間では、このやり取りが幾度となく繰り返されることとなる。 その後、例のやり取りを経て婚約に至る。 しかし、幸せの日々は長くは続かない。 結婚式の前夜、リスクは出奔。著作「事務の危機管理」での訴えが理解されない現状に絶望したとのことだが… 「現状の事務には限界がある。同じことの繰り返しじゃ、世界は滅ぶよ」 結婚前夜の非道な仕打ちよりも、消息を絶つほど思い詰めた彼の支えになれなかったことを今も後悔している。 ※消滅キー※(PL情報) リスク及びリョウに感謝を伝えること 片方に伝えると存在が半分消える(薄くなる) メメ・メメル校長はこのことを把握しているようで、これを逆手にとって消滅を遠ざけてくれたことがある。 (「宿り木の下に唇を盗んで」(桂木京介 GM)参照)
《不屈愛の雅竜天子》ミサオ・ミサオ
 ドラゴニア Lv18 / 魔王・覇王 Rank 1
「ミサオ・ミサオ。変な名前だろう。 この名前は誰よりも大切なあの子からもらったんだ。」 名前はミサオ・ミサオ。無論本名なわけがない。 外見年齢は20代、本年齢は不明。 本人曰く100越えてんじゃないの、だとか。 職業はギャンブラー。 学園に入る前は彫刻師、薬売りなどいくつか手に職を持っていた。 魔王コースを選んだのは、ここが楽だと思ったからだそうだ。 遠慮なくしごいてくれ。 性格はマイペースで掴み所がなく飄々としており、基本滅多に怒ることがない。 面白そうなことや仲の良い友人が居れば面白そうだとついて行き、 好きな人や大切な人にはドロドロに甘やかし、自身の存在を深く刻み付け、 飽きてしまえば存在を忘れて平然と見捨てる外道丸。 いい子には悪いことを教えたり賭け事で金を巻き上げ、 そして悪友のオズワルドや先輩先生にこってり絞られる。 恋愛したい恋人欲しいと言っているが、一途で誰も恋人を作ろうとしない。 たくさん養ってくれる人大好き。 趣味は煙草と賭け事。 特技は煙草芸、飲み比べ、彫刻。

解説 Explan

〇目的
 季節外れの肝試しに行きましょう。
 

 学園の近くにあるとされる森まで、肝試しに行きます。
 噂では、森からは夜な夜な声が聞こえるとか、女の怨霊が出るとか言われています。
 また、森に入ると夢を見るそうです。
 それは人によって、楽しいものだったりつらいものだったり、苦しいものだったり気持ちいいものだったりと様々なようです。

【PL情報】
 夢は自分にとって、一番忘れられない思い出や、深層に刻み込まれている自身を形作る何かを見るそうです。
 あなたにとって、それに該当することを、プランにお書きください。

 今回は討伐依頼ではありません。
 肝試しを楽しみましょう。

『森の正体』
 ヨイユメゴケが群生する森です。
 ヨイユメゴケは、自身から発生する匂いで、他者に幻覚を見せることのできる植物です。
 ヨイユメゴケの匂いで、自身の記憶から幻覚を見せられます。
 それが夢の正体です。
 それと同時に、マヒノクサも点在しています。
 マヒノクサは、麻痺性の花粉をばら撒きます。
 かなり大きなポピーのような見た目で、禍々しいほどに真っ赤な花を咲かせます。
 一度入った調査隊が中々戻ってこなかったのは、マヒノクサの花粉で体が痺れて動けなかったためです。
 また、奥の方にはピクシーが生息しているといいます。
 ピクシーは妖精族の特性を真似て作られた、いたずらが大好きな魔物です。

 また、意味深に書かれてはいますが、男を奪った女は普通の人間です。
 ただ、性格がずる賢く、自身をより魅力的に魅せる方法を知っているだけの人間でした。
 耐性の無かった男は、まんまとそれにころりと落ちてしまっただけのお話です。


作者コメント Comment
 肝試しです∈( oωo )∋
 夏に肝試しは定番……
 だが!冬とか春とかに行う肝試しもいいじゃないか!
 怪談話なんて一年を通してできるんだから!

 さて、あなたの深層にある記憶や、自身を形作るものは何ですか?
 夢はその人自身とも言われます
 あなたは、どんな人ですか?
 ぜひ、教えてください


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
噂の森の調査…という名目で夢を確かめに

●事前準備
深層調査も本音なので男女の噂や森の生態の『事前調査』はしっかり実施して準備。
(装備は消去法的な『推測』(睡眠以外で長期拘束、自力復帰可能=麻痺?)ですが不自然ならナシで)

●行動
事件解決の使命感を強く抱き、夢と障害(麻痺)をかわして真相を確認。
ピクシーに害意がなければ倒さず、森の危険な生態について情報だけ持ち帰る。

●夢
本物のフィリン(以下、真フィリン。経歴参照)と運命の岐路
街で盗賊団の間者をしていたフィリン(ライア)を見抜き、傷を手当てし優しく保護しようとする。
(史実はライアが優しさに嫉妬して拒絶、彼女を盾にした盗賊との戦闘で真フィリン死亡)

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
…なるほどねぇ。
お話聞き伺っててなんとなくの【推測】はしてたけど。
自分が思うそれが見えちゃうわけ。それそのもの本物が、実際実物の姿光景が見えるわけじゃなしで。ふーん。

それはそれとして、原因も推測したくない?わかった方が面白そうだから。再現性あるってならなんかに利用活用かもだしね。
原因は魔物か自然か魔術か。分かったところでザコちゃんが手出しはしないけどさ。めんどいし。
ただ何処ぞに報告で対策はしたいかもじゃん?学園に任せよ。
今後通らざるを得ないときに、毎回見たいもんでもないし。毎回は飽きるもん。

てか魔物の仕業ってならザコちゃん遊ぶけど。
害あるなら、倒せそうだったら、倒していいよね?持って帰りたい。



ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:27 = 18全体 + 9個別
獲得報酬:675 = 450全体 + 225個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
女性が立っている。
あの髪の色、翼の輝き、
あれは…もしかして…お母さん!?

その姿を近くで見たくて、近付きたくて。
そして何によりその声が聞きたくて。
でも何故か近づけない。
歩いても、走っても、羽ばたいても、距離が縮まらない。
お母さん!お母さん!!お母さん!!!

お母さんは何かを語りかけている。
でも何故か聞こえない。
どんなに耳を澄ませても、声は、言葉は、聞き取れない。
え?何?聞こえないよ!?お母さん!?

不意に強い風が吹く。私は堪らず目を逸らした。
目線を戻すと、そこにお母さんの姿はない。
辺りを見渡しても、どこにもお母さんの姿は見つからない。

憧れには…お母さんには未だ届かず。
この夢はそういうことなのかな…


ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
肝試し……ですか
まあ、一番怖いのは生きている人間とも言いますが

◆夢
……って、これは
あのときの!?

巡礼の一団が賊に襲われ、男は年寄りも子供も皆殺し
私はけだもの共に……

でも、そんな私を賊の仲間だったあの少年が……救おうとした
「こんなの、人間のやることじゃない!」

と言って
私は彼の眩しい眼差しに、勇者の光をみた

だけど、現実は優しくも美しくもない
手を取り合って逃げた私と彼は、賊に捕まった

彼は目の前で、生きたまま手足を折られ腹を裂かれ……息絶えた

次は自分の番だ
そう思ったとき……剣風一閃

賊共は物言わぬ肉塊と化した

でも、救いの手は英雄でも勇者でもなく
私を息長らえさせ、その苦痛を最高の美酒と悦ぶ悪魔の気まぐれ

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
本当に幽霊がいるなら大変だけど
うん 肝試しって面白そう!
…わ、わかってるよ
ちゃんと気をつけるってば!

夢に惑わされる仲間がいた時用に楽器を持っていく
呼びかけて戻ってこなければ、「音楽」で明るい曲調の曲を演奏
音量大きめで呼び戻す
「うるさかったらごめんね?大きい方が起きるでしょ?」
…大音量だと森の生き物をびっくりさせるかもしれないか
なるべく近くで演奏しよう
麻痺で動けない仲間には麻痺消し草を
使用の際は仲間を優先

俺が見たもの?…別に どうってことなかったよ
幻だってわかりきってる光景だったしさ
平気平気……本当だってば

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
引き籠り明けに丁度よさそうな暇つぶしだな。
前回似たような事があったし、まぁ大丈夫だろ。
幽霊っつてもリバイバルとかだろうしな。
それか、魔物なら殴ればいいだろうし。
…フフ、最近片手でリンゴ潰せるんだよね❤

あぁ、誰か分からないなら眉毛で察してくれると嬉しいな。
うんそう、急激な成長期が来た。
お陰で服は学生服しか着れなくて…まあこれもシャツとかパツパツだけど。
男で胸がきついとか言う日が来るとか思わんやんけ。

てなわけで、【気配察知/デトル/マドガトル】と【清廉のオルゴール/ランタン】を持っていこ。
日暮れの森だし、原生生物には気を付けとかないとだろ?

ま、一番出くわしたくないのは季節外れの蚊やダニだけどな。

マーニー・ジム 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【事前調査】大図書館で森について調査
また、夢に関連する植物を調べヨイユメゴケに当たりをつける
現地でマヒノクサを目にしたらプロローグ内容を大体【推測】

夢の内容と目覚め方はウィッシュ参照

仲間の目覚まし方はまず肩叩いて声かけ
駄目ならラペイカを耳元で大音量で死ぬほど激しい曲を【楽器演奏】

夢に入って苦しそうな仲間は即目覚まし
嬉しそうなら頃合いをはかる
事前に目覚ましを断った仲間にはしない

今後のこの森の安全対策に
ヨイユメゴケとマヒノクサの群生地に注意を促す看板を立て
安全なルートを確保してロープで見える化しておく
【設計】

「村役場ではこういうお仕事も多かったからね、
まかせといて」

全ての行動に【博愛主義】適用

ミサオ・ミサオ 個人成績:

獲得経験:21 = 18全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
前に課題で先輩救出のために出たのを思い出したぜ。
ヨイユメゴケが幻影を見せるんだろうねぇ。

行動:ランタンを使い、小さな灯りを頼りに森を探索。
のんびりお遊び散歩感覚で行動。
時々木々にデビルイーターで大きめの傷を作り、道標にする。

幻影を見た場合、ヨイユメゴケを視覚強化Ⅰ嗅覚強化Ⅰで探し、
見つけ次第プチヒドで燃やす。
自身の心情等々でなにかあれば煙管を使って煙草を吸い落ち着かせるが、
仲間に自身のことを悟られるような事があれば、演技やハッタリで誤魔化します。


自分なら大丈夫、それは甘い考えだったな。

リザルト Result

『憧れているだけでは届かない』
 女性が立っている。
 この寒空の中、暗い森にひとり、不気味に、寂しく、懐かしく。
「季節外れの肝試しか……ちょっとドキドキだね」
 そんな風に、少しの怯えとそれ以上の好奇心を見せて、照れ臭そうに頬を掻いていたのに。
(う~ん、私だとどんな夢を見るんだろう?)
 そんな僅かな期待のような興味を夢に抱いて、共に道行く仲間たちと別れたばかりだというのに!
 一体、これはどういうことなのだろう。
 ぱっと目を離した隙に、仲間たちは霧のように掴みどころなくいなくなっている。
 代わりに、【ビャッカ・リョウラン】の視界真正面に立ち尽くしているドラゴニアの女性は、いったい何者なのか。
(あの髪の色、翼の輝き……)
 あれは……もしかして……。
 記憶の中に鮮明に映る、肖像画の彼女を思い出し、ビャッカは叫ぶ。
「お母さん!?」
 ビャッカは駆けだす。力の限り。
 物心つく前に亡くなった、実の母親の面影を、必死に追い求め。
(お母さん、姿を近くで見せて)
 走っても、走っても。
(お母さん、頑張ったねって、頭を撫でて)
 羽ばたいても、羽ばたいても。
(お母さん、声を聞かせて!)
 距離は縮まず、面影を追い求めるばかり。
「お母さん!」
 ついに、足場の悪い森の中、木々の根っこに躓いて、ビャッカは地面になだれ込む。
「お母さん。お母さん! お母さん!!」
 置いて行かれた幼子のように、ビャッカは必死に、声を嗄らして母を呼ぶ。
 ビャッカの声が届いたのか、不意に女性はビャッカの方へ振り向く。
 その顔は、肖像画にあった女性の顔そのままで。
 表情も、顔立ちも、全て、全てが肖像画のまま。
「――」
 女性は何かをビャッカに語り掛ける。
 ビャッカは必死に耳をそばだてる、が、いつまで経っても声という声は、音という音は聞こえてこない。
「え? 何? 聞こえないよ? お母さん! ねえ、お母さん! なんて言っているの? お母さん!」
 手を伸ばす。
 母に届くように。
 風が吹く。
 母の温もりを掻き消すために。
 まるでそれ以上はいけないと言っているかのように吹いた風は、ビャッカの視線を逸らさせる。
「おかあ……さん……」
 呆然と呟くが、そこにはもう、騒めく風と、木々の木の葉の音しかしない。
 面影は、憧れは。
 あっという間もなくビャッカの目の前から消えていた。

『引き摺り堕とす黒い手は』
 痛い。
 痛い、痛い。
 痛い痛い痛い痛い嫌だ引っ張らないで放して嫌だ痛い私をどこに連れていくの!
 首に、足に、腕に纏わりつく黒い手は。
 顔を、頭を、髪の毛を引き摺り、どこか遠くへと【ベイキ・ミューズフェス】を連れ去ろうとしていた。
『一番怖いのは生きている人間とも言いますが』
 肝試しのために森に入る直前、そんな言葉を零した。
 たしかに、怖いのは生きている人間。
 こんな幻覚ではない。
 だけど、だけど!
 掴みかかる手が腕が、肌に触れる温度が、生きている人間のような温かさを持ってベイキを害そうと伸ばされてくる。
 これは夢、幻覚、現実じゃない。
 これは真実、記憶、現実だったもの。
(これは……あのときの……)
 薄れそうになる意識、ぼやけていく視界。
 彼女を守ろうとしていた優しい温度は既に冷え、地面に倒れ伏すばかり。
(ああ、もう、楽になって、いいかしら)
 全てを諦めようと目を閉じかけたベイキの視界を、強烈な閃光が無理矢理こじ開ける。
「こんなの、人間のやることじゃない!」
 光は希望。
 希望はベイキの道を照らす。
 安堵と温もりに包まれる。
 それはまさしく、勇者の光。
 しかし、光は闇に勝てなかった。
 夜空に瞬く星々がやがて、抗えぬほどに濃く深い闇に呑み込まれるように、光は闇に滅ぼされる。
 煌々と輝く光は徐々に、黒く染まる手に覆われていく。
 ぐしゃり、ばきり、ぼき、ぐじゅ。
 無慈悲に圧縮されていく光を見ながら、ベイキは光の灯らない瞳でぼんやりと呟く。
「次は自分の番だ」
 そうして黒く染まる手が再びベイキに向けられる。
 ベイキは全てに絶望したように、口角を上げ、微笑んだ。
 受け入れた闇は、やがてベイキの首を絞めようとして。
 剣風一閃。
 再びの希望かと目を見開き、必死の思いで捉えたそれは、しかし眩しいほどの光ではない。
 むしろ、光とは正反対の闇。
 深い、深い闇に覆われた剣。
 剣はベイキへ、語り掛けるように問いかける。
「人などこのように堕落したもの。それなのに勇者を求めるか? 深き海底の精よ」
「私、私は……」

 彼女は何を言おうとしたのか。
 ぼんやりとした思考の中、ベイキはポツリ、と。
「思い出したくなんて……なかった……」
 ベイキはひとり、静かに森の中で涙した。

『真名』
『夢の話は素敵だけど……未帰還未遂も起きてるし、危険は調査しないと』
 そう言って振り返った先に、仲間はいない。
 先ほどまでの、暗い森の中でもない。
 街。人が行き交い、賑やかに彩られる街。
「ここは」
 きょろ、と辺りを見渡すと、行きかう人々の中に感じる違和感。
 じ、と人々を警戒したように睨みつけ、物陰に身を潜めようと翻る黒い髪。
「あ、ねえ、待って!」
 彼女に追い付く。
 追い詰められたネズミのようにすばしこい彼女に、ようやく。
「なに」
 ぶっきらぼうに言い捨てる彼女の腕を取る。
「怪我をしているじゃないの! 今、手当するわね」
 そう言いながら、包帯を手に取っていると、彼女はぶすっとぶすくれたように、つっけんどんに言い放つ。
「あんた、だれ」
 そんな彼女に、微笑んだ。
「私は【フィリン・スタンテッド】よ」
 よし、できた。と包帯から手を放す。
 手当をしていた彼女は、自身よりも4歳か5歳年下に見える。
 屈んでいるためにはっきりとは分からないが、おそらく身長も自身よりも低いだろう。
 そんな観察をしていると、はた、と気付くことがある。
(この子、どこかで見たことがあるような……)
 知っている子だ。
 でも、どこで会ったのか思い出せない。
 名前すらおぼろげで、思い出そうと彼女の目を覗き込む。
 すると。
「え」
 視界が回転、反転、やがて暗転。
 次に目を開けたとき、目の前に自分が立っていた。
 いや、自分じゃない。
 フィリンだ。
 フィリンは聖女のように優し気な瞳で、自身では絶対にできないような、演技をしていない自然体のままで、問いかけてくる。
「あなたの名前は?」
「……ライア」
 言葉を発したのは、紛れもなく自分の口だった。

「っ!」
 ひゅぅ、かひゅ。
 咳込んだ時のように空気を吐き出せば、夜の冷たい風が頬を撫でる。
 さぁ、と静かな夜風は、彼女の頭を冴えさせる。
 彼女は膝を立て、立ち上がろうと力を籠める。
「行かないと……。今は、今の私はフィリンだから……!」

『ガチっ(はーと)ムキっ(はーと)ゴリっ(はーと)の悪夢』
『引き籠り明けに丁度よさそうな暇つぶしだな』
 そう言った彼。
『前回似たような事があったし、まぁ大丈夫だろ』
 とても頼もしいことを言う彼。
『幽霊っつってもリバイバルとかだろうしな。それか、魔物なら殴ればいいだろうし』
 彼は、一体……。
『……フフ、最近片手でリンゴ潰せるんだよね』
 これほどまでに身長が高く、体格のいい同級生がさて、周囲にいただろうか。
『あぁ、誰か分からないなら眉毛で察してくれると嬉しいな』
 その言葉に眉毛を思わず見上げた仲間たちは、その特徴的な形……つまりマロ眉に、ひとりの同級生を思い出す。
『【プラム・アーヴィング】だよ』
 仲間の心はきっとひとつ。
 お前、誰だ。

「うんそう、急激な成長期が来た。お陰で服は学生服しか着れなくてさ……まあこれもシャツとかパツパツだけど」
 男で胸がきついとか言う日が来るとか思わんやんけ。
 そう楽しそうに話しながら道を行くプラムは、周囲がやけに静かなことに気が付く。
「……お出まし、かな?」
 森の中のようで森じゃない。
 そんな微妙な違和感を、プラムは何となく肌で感じ取る。
 ぼやぼやと目の前に靄が集まって来る。
 靄が形作っていくそれは、人型。
 それも、プラムがよく知っている形に作られていく。
「よう、俺」
 人型は意地の悪いゲス顔でプラムを見下ろす。
 それはプラム。
 今のプラムよりもさらに体格の良くなった、完成形とも呼べるムキムキとした体格のもうひとりのプラム(ムキムキ)。
 彼はどこから現れたのか、女物のプラムの私服や、高いヒールを爆破させ始めた。
 拳で。
 ごしゃ、めしゃ、ぐしゃりと。
 拳で。
「本来のお前の姿はこうなんだよ! 女物が似合う奇跡の時間は終了だァ!」
 なーっはっはっはっは! と悪役も真っ青の悪者顔で高笑いをするプラム(ムキムキ)。
 プラム(ノットムキムキ)は悲劇のヒロイン張りに地面へ崩れ落ちる。
「嫌ァ! まだ儚く神秘的な修道士として生きたい! これはこれで男前で顔整ってるし別需要あるだろうなとは思うけどそれはお前で良いだろ! 俺は相手の背徳感刺激しまくるこのルックスが気に入ってんだよド畜生―――!!」
 プラム(ノットムキムキ)は魂の慟哭を森に響かせた。

「――っは!」
 はっと飛び起きると、そこは森の地面。
 プラム(ノットムキムキ)はうっかり眠ってしまったようだ。
 彼はすっきりした面持ちで、上半身を起こす。
「良いぜ……。俺をムキムキにしようとしている神様よぉ。そっちがその気なら、このルックスで信者全員食い荒らしてやっからなァ……!」
 プラム(カミングスーン)は空へ吼えた。

『そんな目で見ないで』
「これぁ……ヨイユメゴケか」
 【ミサオ・ミサオ】は足元の岩に貼り付いている、コケに触れて記憶と照らし合わせる。
「前に課題で先輩救出のために出たのを思い出したぜ。……ヨイユメゴケが幻影を見せるんだろうねぇ」
 森で起こった不可解な事件の一端を知り、ふむ、と顎に手を当てて思考する。
 すると、ぱっと目の前に広がるのは、記憶の中に根深く残り続ける、部屋の風景。
 ミサオの足元で、床に蹲り、血を吐き続ける幼いあの子。
 あの子の足元に転がる瓶に、ミサオはよく見覚えがあった。
「……そのまま、飲ませたのか。いや、そんなことはないはずだ」
 史実と微妙に違う光景に、ミサオはこれを夢であると断定する。
 あの子が飲んだ毒は自分が作ったもの。
 だけど実際は、もう少しうまく、巧妙に口にさせたはずだった。
(オレが仕込んだわけではない、が……)
 ミサオは床で苦しそうに息を吐くあの子の頬に触れる。
 今にも消えてしまいそうなほどにか細く吐かれる息は、脈は、ミサオの手に震えとして伝わってくる。
「ああ、許しておくれよ、坊や」
 背後に立つ何者か。
 気配を感じても振り返ることができない。
「オレぁ、お前のこと家族のように思ってんだァ。だから」
 情けない笑みを貼り付けながら、ミサオは背後に振り返る。
 そこで見た気配の表情に、一層ぐしゃりと顔を歪める。
「嗚呼坊や、健気で馬鹿で甘い愛しい坊や。そんな目で見ないでくれや」
 たとえそれが幻影だとしても、オレぁぐちゃぐちゃに潰れてしまいそうだ。

 血濡れの床は、もうどこにもない。
 ミサオが座っている地面は、夜露で湿るコケと土が広がるばかり。
 煙管から立ち昇る煙を燻らせながら、ふぅ、と長く息を吐く。
「……自分なら大丈夫、なんてな。甘い考えだったな」

『音は刹那』
(本当に幽霊がいるなら大変だけど……)
 【シキア・エラルド】は星の瞬く夜空を見上げる。
 普段体験することがなかなかできない、非日常的な夜の森。
「うん。肝試しって面白そう!」
 そう呟いてしまう程度には、シキアは非日常に、好奇心をくすぐられていた。
「はしゃぐのもいいけど、怪我はしないようにね、シキア」
「……わ、わかってるよ。ちゃんと気をつけるってば!」
 背後から聞こえてきた声に振り向けば、はて。彼は首を傾げる。
 今、話しかけてきた人はだれだ?
 聞いたことのある声。仲間のものではない声。
 見える景色はどこかの劇場。
「ここって……」
 劇場の中は観客で賑わい、その中でもシキアにとって、ひと際目に付くのが、観客席に座っている少年と青年。
 忘れない。忘れるわけがない。
 だってあれは、自分自身の幼い頃。
「ねぇ、お父さんとお母さんは?」
 少年の声がやけによく通る。
 少年に話しかけられた青年は、穏やかな笑みで返答する。
「素敵なものが見られますよ」
 青年が言うとほぼ同時。
 ステージの幕が開き、少年の目はきらきらと輝く。
 ステージに立つ、マイクを持つ女性は。楽器に触れる男性は。
「父さん、母さん」
 シキアが呟く。
 音は奏でる。
 ステージ前の観客席を虜に、ふたりは輝く。
 ああ、覚えてる。
(初めて聞いた、『音楽』を)
「ねぇ、おれもあそこに立ちたい。ううん、あそこに行く!」
 無邪気な少年の声に、優し気な青年の声が重なる。
 ――えぇ、私も楽しみにしています。シェルシア様。
(……あぁ、確かにこれは夢だ)
 シキアは懐かしさに涙を零しそうになりながら、きゅ、と唇を引き結ぶ。
(だって、二度とこの光景は見られない)
 吐き出す吐息は、苦しそうなシキアの声。
「……俺は、憧れてるどころか、逃げたんだから」

『『あの人』』
「……なるほどねぇ」
 どこか面白そうな表情を浮かべ、目の前に相対する人物を眺める【チョウザ・コナミ】は、真相見えたりと得意そうに呟く。
「お話聞き伺っててなんとなくの推測はしてたけど。自分が思うそれが見えちゃうわけ。それそのもの本物が、実際実物の姿光景が見えるわけじゃなしで。ふーん」
 チョウザの目の前に立つウサギのルネサンス。
 年の頃は……チョウザと並ぶとおじいちゃんと孫ほどの開きがあるように見受けられる。
「――」
 チョウザと似たような、目立つ服に髪色。
 口を開くとチョウザと同じような言い回し。
 チョウザは地面を見る。
 俯き、そして。
「はっ」
 鼻で笑った。
「この上なく会いたいお人ではあるけど、誰よりも会いたくないお人なんだよね」
 目の前のルネサンスは、ウサギ耳をぴょん、と跳ねさせる。
「会った時点で、何でここに居られるのか、が揺らぎかねないから」
(……あの人の自由の為にも)
 チョウザは物思いに耽るように上を見上げる。
(……あの人がこの姿見たらどう思うかな。画一で気味悪いーって嫌がるんだろうな)
 いつもみたいに擦れるみたいな笑い声上げて。
「ただ、ね」
 チョウザはルネサンスの老人に指を突き付ける。
「今見えてるのは、あの人じゃない。まやかしってバレバレ」
 それはあくまでも、チョウザの想像の範囲内でしかない。
 それは違うと彼女は謳う。
「全く想像つかない存在ってのがあの人なんだから」
 ルネサンスの老人は、二、三、言葉を発しようとして口を噤む。
 そして――。

「……」
 チョウザは地面に寝そべりながら、あの人がいた場所をぼんやりと見つめる。
「……笑って、たなぁ」
 あの人は笑っていた。
 記憶の中にある笑みで。
 チョウザが浮かべる笑みと、よく似た笑みで。

『あなたに返事をするために』
 ああ、そこにいるのは。
「リスク? あなた、リスクなの?」
 追いかけ伸ばす手を掴まれる。
 目の前の、若かりし日の婚約者に。
「ああ、マーニー。僕の【マーニー・ジム】」
 抱きしめられ、包まれる香りは紛れもなくあの人のもの。
「ねえ、マーニー」
「なあに、リスク」
「世界を変えよう、僕と一緒に」
 甘い誘いに、つい、と開いた口から零れる言葉。
「よろしくお願いします」
 瞬間、彼女を包む匂いは、婚約者のものではなくなった。
 鉄臭い、錆びた匂い。
 軍需工場の中と言っても違和感のないほどに薄暗く、汚れた――。
「あ、ああ……」
 マーニーは呆然と自身の手を見つめる。
 赤く、赤く、どろりと赤く彩られた罪の手。
「僕も、君も。沢山の人を手にかけた……」
 震える肩を優しく抱くのは、婚約者だった人。
「家族さえも」
 足元に横たわるのは、既に息の無い孫の亡骸。
「ああ、あああ! うわあああああああああああ!!」
 婚約者だった人は、楽しそうにマーニーの手を握る。
「さあ、最後に僕と君で殺しあいをしよう。最後に立っている方が……次の魔王だ」
 高笑いをする婚約者だった人の声に交じり、ぱさり、と紙の落ちる軽い音がマーニーの耳に届く。
「こ、れは、事前調査資料……?」
 資料の一番上に描かれているのは、特徴的なコケの形と、ヨイユメゴケの名前。
(ああ、そっか、そうなのね)
 マーニーはほっと、息を吐く。
「あなた、ヨイユメゴケなのね」
 ふぅ、と息を整えたマーニー。
 彼女は拳を振り上げ。
「お断りよ!」
 婚約者だった人に、容赦のないパンチを決めた。
「私は他の方法を探す! 絶対に諦めないわ!」
 さらさらと砂のように溶けていく、現実ではありえない光景に、これは夢だと繰り返す。

「……ああ、そっか」
 夢と現実の境目など分からない。
 しかし、虫の鳴き声が聞こえる静かな森の中で、マーニーはたしかに現実に帰ってきたのだと確信する。
「この返事をするために、私はリバイバルになったのね」
 虫の鳴き声を聞くマーニーの、案外近くにいたようで。
 マーニーの名を呼ぶ仲間の声に、彼女は元気よく答えた。

『夢は続く』
「……ちょっと、疲れたわね」
 ふぅ、と溜息を吐いたマーニー。
 同意するように頷くフィリンが、少しの違和感に首を傾げる。
「……あれ?」
「どーしたの」
 問いかけられたフィリンは、困ったように眉を下げる。
「……えっと、あの。私たちって、8人……で、この森に入った……よね?」
「そう記憶しているわ」
「……」
 黙ってしまったフィリンに、プラムは不審な表情を向ける。
「なにか気になることでもあったのかな?」
 意を決したように、フィリンは言葉を発する。
「変なことを聞いていたら、ごめんね。……教室で、この森に行こうと言い出したのは、だれだった?」
 戸惑ったような空気が流れるのが分かる。
「えっと……私ではないよ」
「オレも違うぜ」
「誰も、心当たりがないんですか?」
「あの、今からすごくおかしなことを言うわね」
 ごくり。ひとつつばを飲み込んで言葉を吐き出す。
「教室で話していたのは、9人じゃなかった?」
 しん。と駆け抜ける静寂に、森の奥から笑い声のようなものが聞こえてきた。

 くすくす、くすくす、ふふ、あはは、きゃはは、くすくす、くすくす、くすくす、くすくす、くすくす、くすくす。



課題評価
課題経験:18
課題報酬:450
心の夢を見せる森
執筆:宇波 GM


《心の夢を見せる森》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-12-26 00:37:13
…肝試し、ねぇ。

別に解決が求められてるー、とかそーいうのじゃないからいーけどさぁ。
それはそれとして、原因の追求希求はするべきなあれ?通る時に困らないよーに。

一応【推測】は立ててっけどね。
だからって森だか森に住むなんだかなんかの諸々があったとして、手出しする訳じゃないけど。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 2) 2019-12-26 19:58:03
勇者・英雄コースのフィリンよ、よろしく。

原因調査は…なかなか帰ってこなかった調査隊の件もあるし、
危険の有無くらいは自主的でも調査してみたいと思うわね。

…そうでも思っていないと、帰ってこれなくなるかもしれないし

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 3) 2019-12-26 21:58:13
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
肝試しですか……まあ、一番怖いのは生きている人間とも言いますが。

調査はできそうな方は挑戦されるのもいいと思います。
(肝試し全振りの方も居るでしょうし、個々の判断でいいのではと思ってます。)

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 4) 2019-12-28 13:35:11
遅刻帰国、ご無沙汰かさぶたです。
…って、ずいぶんなご挨拶をしてしまったわ。
教育実習対策で、言葉遊びの児童書を読みすぎたせいかしら。

改めまして、賢者・導師コース、教職志望のマーニー・ジムです。
よろしくね。

私は、アクションで調査に全振り、ウィッシュで肝試し(夢の内容)に全振りします。
アイテムで麻痺対策、アクションに、仲間の夢を覚ます声かけを盛り込むわ。
…方法は、今のところノーアイデアだけど。
なお、夢から覚まして欲しくない人は、挙手してくれたら対象から外すわね。

私は、自力でも夢から覚める方法を記述するつもりだけど、
どなたか、文字数に余裕があって、気が向いた方は、何かアクションをしてくだされば、より嬉しいわ。
大声や、ビンタなど、強めのアクションも歓迎よ。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 5) 2019-12-28 22:10:22
勇者・英雄専攻のビャッカ・リョウラだよ。

季節外れの肝試し…ちょっとドキドキだね。

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 6) 2019-12-29 00:59:05
ザコちゃんさん、フィリンさんのおっしゃるとおり、今後のためにどうにかしたいわね。
事前調査と現地調査でプロローグどおりの状況を把握した上で、
コケとマヒクサの群生地に注意看板でも立てて、
安全なルートを見つけて、ロープで確保しておく、あたりでどうかしら。

ベイキさんのおっしゃるとおり、行動はそれぞれあると思うし、
ビャッカさんの楽しむ姿勢は、見てて励まされるわ。

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 7) 2019-12-29 01:23:15
仮プランを書いてみたわ。
アクションはまだ余裕あるから、何かお手伝い出来ることがあれば教えてね。

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 8) 2019-12-30 23:10:37
いよいよ、間もなく出発ですね。
プラン忘れ等に、どうか気をつけて。
ご一緒いただいた皆さん、ありがとうございました!