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波乱の秋物バーゲンセール!!



ストーリー Story

 夏の暑さも終わり、次第に風も涼しくなってきた。あれほどうるさく感じていたセミの声も今ではすごく懐かしい。
 暑さを通り越して最近は肌寒く感じるようになり、秋の訪れを感じる季節となってきたのだが、そんな穏やかな季節とは裏腹に女性用の服を取り扱っている『コンポタンジュ』では、開店準備に慌てふためく2人の姿があった。
「あー、もうなんでこういう日に限って2人しかいないわけ!? どう考えたって人足りてないし、正気の沙汰とは思えないんだけど!!?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ちゃんとフトゥールム・スクエアの学生さんにヘルプ求めてるし、誰かしら手伝いに来てくれるって!」
「すごいお気楽風に言ってるけど、ほんとに来てもらわないと困るからね? ちゃんと依頼出したんでしょうね」
「出した出した。ちゃんと1ヶ月前には依頼出してたし、そんなに確認してくれなくても大丈夫だって。私に任せなさい」
 平日の昼間でさえ2人で回すのがやっとだというのに休日の昼間、しかもバーゲンセールを行っている日に2人しかお店にいないなんて死刑宣告をされているようなものである。
 どうしても2人で回さなければならない状況であればなんとかするが、その時は商品の補充とお会計に専念しなければならず、店内清掃や接客等の他の業務は全て後回しにするしかない。
 そんな猫の手でも借りたいような状況の中、接客業のことについてなにも知らないような学生さんでも、なんなら人と接することがとことん苦手な恥ずかしがり屋な学生さんでもうちとしては大歓迎である。
 なんならそのままコンポタンジュの店員として働いてくれれば長年の人手不足も解消されるのだが、わざわざ今日のために学園からお手伝いに来てくれるというのにさすがにそこまで欲張るわけにはいかなかった。
「……そういえば、フトゥールム・スクエアに依頼出すときにちゃんとうちのお店の事詳しく書いた? うち女性服扱っているお店だけど、まさかそれ伝えてないなんて事はないでしょうね」
「……ナ、ナンノコトカナー」
「あんた嘘でしょ……。うちのお店って女性服しか置いてないのに、男性の学生さんが来ちゃったりしたらどうするのよ……。まぁ、私からしてみたら若い学生さんが来てくれるのは万々歳なんだけどさ」
 まさかそんなことはないだろうなと思いながらも念のために確認を取ってみると嫌な予感が的中する。
 別にコンポタンジュでは男性の入店を拒否しているわけではないのでお客さんとして来てくれる分にはとてもありがたい事なのだが、働く側に立とうとするとお店で売られている服を来て接客を行わなければならない。
 これはお店の宣伝も兼ねているのでアパレル店の間では至ってごく普通な規則なのだが、問題はコンポタンジュに置かれている服だ。
 コンポタンジュでは主に20代から30代と比較的若い女性向きの服しか取り扱っておらず、男性用の服は一切置かれていない。
 店長の許可があれば他のお店の服を着て接客をすることもできるのだが、残念ながら店長は今日の秋物バーゲンセールに向けて残業続きだったため今日はお休みである。
 綺麗な顔をしていてほっそりとした学生さんなら少し長めのズボンと黒を基調とした服を合わせれば少しはましになるかもしれないが、その格好だとどうしてもボーイッシュの女の子を連想してしまう。
 男性は髪が短い人が多いので女性の服と合わせようとすると違和感が出てしまうのは仕方のないことなのだが、なんとか合わせることができないかと考えてしまうのはアパレル店員としての性だった。
「……あっ、そういえばあそこにいいもの置いてあるじゃん! あれもこのお店にあるものだし、コーディネートに使っても怒られないよね!!」
 彼女が指さしているのはお店の角にこじんまりと構えられている小物コーナー。このコーナーには帽子や伊達メガネの他にもイヤリングやチョーカー等のアクセサリーが並べられており、鏡で自分の姿を確認しながら自由な組み合わせでコーディネートを楽しむことができる。
 特に20代前半の若い女性の方から人気のあるコーナーで、たまに購入した商品を試着室で着てその服に合うアクセサリーを選ぶ人がいるぐらいなのだが、どうやら彼女はそこに置いてあるウィッグのことを言いたいらしい。
 本来は自分が髪を切った時の姿やカールをかけたときの姿を想像しやすくするために置かれているもので、もはや売り物ですらもないのだが、確かにこの状況を打破するコーディネートとなれば、ウィッグの存在はなくてはならないものだった。
「……いやいや、確かにウィッグを被れば見た目は女の子に近づけるかもしれないけどさ。さすがにそれはまずすぎでは?」
「えっ、だって似合ってるなら着る服なんて男性用でも女性用でもどっちでもよくない? 女性の服を着ている男性、つまり女性だよね。なにも問題ないじゃん!!」
 その自信はどこから出てくるんだろうと思いつつ、彼女は倉庫の中からありったけのウィッグを持ってくる。
 肩元で綺麗なカールを巻いているウィッグがあったり、頭の上にお団子のあるウィッグがあったりと種類は様々だ。
 そのときのお客さんに合った服を選ぶことがアパレル店員のお仕事なのだが、まさか男性に女性用の服を見立てる日が来るとは思ってもいなかった。
「ほらほら、早くしないと開店時間に間に合わなくなっちゃうよ。さっさと手を動かす動かす」
「……あんたに言われるとすっごいムカつくけど、まぁ急がないといけないのはほんとだから何も言わないでおくわ。なんとか開店時間までに間に合わせるわよ」
「あいあいさー」
 時計を確認してみると、今は8時45分。開店時間まであと1時間弱しかない。
 フトゥールムスクエアの学生さんには10時すぎぐらいに来てほしいとだけ伝えているので、それまでは2人の頑張りどころだ。
 すでに店内には値下げシールが貼られている洋服がずらりと並べられており、後は開店前の店内清掃とまだ倉庫から出していない商品の品出しとバーゲンセール用のPOPを店内に貼り付けるだけである。
 普通にやればあと2時間はかかるだろうが、かなり急ぎ気味でやればなんとか開店前には間に合うはずだろう。……いや、終わらせないとまずい。
 2人はお互いに目を合わせ、先ほどまで軽口を叩きあっていたのが嘘のように黙々と作業に取り掛かり始める。
 そのおかげか開店10分前には全ての業務を終わらせることができ、後はフトゥールム・スクエアから来てくれるであろう応援を待つのみとなった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-10-19

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-10-29

登場人物 5/8 Characters
《ゆう×ドラ》シルク・ブラスリップ
 エリアル Lv17 / 村人・従者 Rank 1
「命令(オーダー)は受けない主義なの。作りたいものを、やりたいように作りたい……それが夢」 「最高の武具には最高の使い手がいるの。あなたはどうかしら?」 #####  武具職人志願のフェアリーの少女。  専門は衣服・装飾だが割と何でも小器用にこなすセンスの持ち主。  歴史ある職人の下で修業を積んできたが、閉鎖的な一門を嫌い魔法学園へとやってきた。 ◆性格・趣向  一言で言うと『天才肌の変態おねーさん』  男女問わず誘惑してからかうのが趣味のお色気担当。  筋肉&おっぱい星人だが精神の気高さも大事で、好みの理想は意外と高い。 ◆容姿補足  フェアリータイプのエリアル。身長およそ90cm。
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。

解説 Explan

 秋物バーゲンセールを開催しているコンポタンジュでお手伝いをしましょう!

 コンポタンジュとは、20代から30代と比較的若い女性向けの服を取り扱っているお店で、大人しめの服が多いです。あまり大きなお店ではありませんが、ちまたで話題となっています。
 今日はコンポタンジュで1日店員として接客や店内清掃、品出しなどを行ってください。お会計はコンポタンジュの店員である2人がやってくれるそうなので、任せてしまって大丈夫です。どうしても分からないことがあれば、合間を縫って店員さんに聞きに行ってください。

 なお、コンポタンジュではお店に売られている服を実際に着て接客を行わなければなりません。女性の生徒さんはもちろんですが、男性の生徒さんも女性用の服を着るしか残された道はないのです。店員さんが数十種類のウィッグを用意してくれているので、自由に活用して接客を行ってください。

 それでは、幸運を祈ります。


作者コメント Comment
 こんばんは、なぜこんなシナリオを書くことになったのか頭を悩ませている桜花です。

 とあるGMさんたちの悪ノリにより、桜花さん身長ちっちゃいならついでに女装しない? という話になり、更に悪ノリを重ねた桜花さんがじゃあ女装シナリオ作ってやるよ! となってできたお話です。自分でネタを投下しに行こうとすな(´・ω・`)

 ちなみに余談ですが、桜花さんは足がちっちゃすぎて男性用の靴だと基本的にサイズがないです。男女兼用の靴を履くか、女性用の靴を履くしか選択肢は残されていないんですよね。
 女性用の靴を履くのはさすがにヤバいかなと思ってなんとか踏みとどまっていますが、靴を探すために23件のお店をはしごするのは正直めんどくさいです。飲み屋じゃねぇんだよ。

 それでは、話が逸れてしまいましたが是非女装シナリオをお楽しみください。もちろん、女性の生徒さんが参加されるのも大歓迎で。ではでは~


個人成績表 Report
シルク・ブラスリップ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
力仕事は無理なので接客全振りで!

●事前準備
今年の流行ファッションを『事前調査』
ほぼ日課みたいなもんですが

●行動
「大丈夫、まーかせて♪」
ノリノリでコンポタンジュに助っ人に。
男性陣のコーデはシキアとヒューズならそう心配ないかな?
苦戦しているようなら、ハスキーな声でも違和感ないかっこいい系で勧めたり。

『裁縫』の腕と『会話術』を生かしお客さんの注文に合わせつつ、もう一品。
「今年の流行りはレイヤード(重ね着)とセットアップ(上下組み換え)ですよー」と、
自身の衣装で実演しつつ、お手頃価格のものを勧めたり。
また手に取ったけど悩んでいるような衣装を好みに調整したり、客にも損させず多く売れるような努力を。

ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:195 = 65全体 + 130個別
獲得報酬:6000 = 2000全体 + 4000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【台詞】
「今回のミッションは「接客」なんすよね。そーゆことならクマを落としてきますよっと。」
【行動】
状況に対して若干、眉間に皺が入りますが
無難に乗り切ろうとします。
店員の女性からメイクセットを借りクマを隠します。
何となく分け目を変えてみたり。興味本位でウィッグを被ったりします。
無難にシャツとカーディガンに長いスキニーパンツにしようかと考えますが…
オフショルダーやショートパンツに目が行ってしまいます。
厚底のサンダルや…耳飾りまでも…。。
ーーーーーーーーーー
ギャル店員の如く、積極的に商品説明やお客様に似合いそうな服を選んであげつつ、セール品以外の商品も案内。徐々にタメ語にシフトしていく友達接客。

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
お店の手伝いの課題と聞いて…
女性服を着て接客するの?
ちょっと待ってて、急いで仕上げるから

・レッツ女装
化粧品セットを使用し「変装」
店員に頼んでウィッグを拝借
同じ色のロングのウィッグを落とさないようにピンで固定
ウィッグの毛先を緩くカールさせてウェーブヘアに

・服装
ゆるめの薄いベージュのニット
カーキ色のフレアスカート
黒のブーツ あまり体のラインを出さない服をチョイス
手首に細いチェーンのブレスレット着用

・行動
あまり声を出しすぎないよう、基本的に品出しや整理>接客
質問にはある程度答えられるように品物の場所を事前にチェック
「運動神経」と「緊急回避」で客にぶつからないように注意
客に声をかけられた時は接客を優先

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
色んな服見んの、個性と自由がぶわぶわでいーよね。正直わりと好きだよ、見るのだけは。
ザコちゃんが着んのは好きじゃないけどさぁ。スカートだのドレスだのにいい思い出ないし。
袖長くてー、裾長いズボンでー、なるべく売れてないのかーして。
それ2、3枚着る。

その延長で、売れてない不人気需要系の服一通り出しといて。その辺の陳列で遊ぶから。

ぶっちゃけザコちゃんさぁ、人気とか流行りとか好きじゃないんだよね。
だってさ、みぃんな買った服って、みぃんな着てるわけじゃん?
同一画一のなーにがいいんだか。つまんなくない?

で、売れてない服は大体が粗雑乱雑ワゴンなの良くないんでしょ。
売れてない服って言ってみれば個性の宝庫じゃん?



朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:97 = 65全体 + 32個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
私は主に接客のお手伝いを行います。お店の商品を着用との事ですので白の長袖のTシャツにジーンズを履き、デニムジャケットを羽織ってみますわね

ご来店なさったお客様にはいらっしゃいませ、とご挨拶。私が着用している服について尋ねられましたら

「こちら、活動的な女性の方に大変お勧めとなっております。こちらのジーンズやTシャツは汗の吸収も良く、ジーンズは伸びも良くて動きを阻害する事も少なく秋の行楽シーズンにもってこいですわ」

と笑顔で解説

「こちらのデニムジャケットも大変軽い素材でできておりまして、且つ保温性も優れておりますの。朝晩少し冷え込むこの季節、一枚羽織るのに持って来いの商品ですわ」

とさらに説明しますわね


リザルト Result

「……ふー、これで品出しは全部ですわね。なかなかにいい運動になりましたわ」
「ルネサンスの女武人様、お疲れさまー。まだお客さん来てないし、少しばっか休んでても大丈夫じゃん」
 コンポタンジュに1日店員として働くことになった【朱璃・拝】は、商品が詰まっている段ボールを【チョウザ・コナミ】の足元に置き、額に浮かんだ汗を手で拭う。
 朱璃は普段から活発的な服を着ることが多いので、今日はいつもの服装を真似て白の長袖Tシャツにジーンズ、上にデニムジャケットを羽織っている。
 コンポタンジュは女性服専門店なのでもしかしたらロングスカートやワンピースといった、とても女性らしい服しか取り扱っていないのではないかと少し不安に思っていたが、朱璃が求めているような動きやすさ重視の服も置かれていたので迷いなくこの服を選んだ。
 チョウザは他の人が着ていそうな服を着たくないからとあまり売れ筋の良くない、なんならお店側ですら売れるとも思っていない服を2、3着選び、適当に重ね着している。
 服の1枚1枚が個性の塊で本来であれば混ぜるな危険であるはずの服たちなのだが、どういうわけか互いの個性が打ち消しあったり喧嘩することもなく、チョウザ流の1つのファッションとしてまとまっていた。
「ふー、それではお言葉に甘えて少しだけ休憩させてもらいますわー。……ところで、チョウザ様とシルク様はなにをしていらっしゃいますの? なんだか見慣れないコーナーが増設されていますが……」
「あー、これね。せっかくの機会だし、あんまり表舞台に立ってこなかった服たちも一緒に陳列してあげようかなって思ったんだけど、なーんか違う気がするんだよねー。もっとこうなんていうか、地味さが欲しいっていうかさぁー」
「あたしもチョウザと一緒に商品の陳列をやっていたのだけど、どうしても上手くいかないのよね。……いっそのこと羽織りものの服と一緒に売るっていうのはどうかしら」
 【シルク・ブラスリップ】はカーディガンを片手にそう提案する。
「あー、確かにそれはいい案かもねー。流行ものの服ってみぃんなが買ってみぃんなが着てるイメージがあるからあまり好きじゃないんだけど、中に着ている服で個性を主張していくっていうのはザコちゃん好きよー」
「なら私もお手伝いさせていただきますわ。こちらにはシルク様もいますし、コーデに迷ったら一目散に頼りに行きますわ。……そういえば、男性のおふたりはまだ化粧室から出てきていませんわね。そろそろ開店の時間になってしまうのですが……」
「確かにちょっと遅いわね。あたしちょっと様子を見てくるわ」
「ありがとうございます、シルク様。お願いしますわ!」
 女性陣にとっては日頃着ている服を真似てみたり、この機会に新しいファッションに挑戦してみたりとみんなでわいわいしながら服を選んでいたのだが、男性陣は強制的に女装をする選択肢しか残されていない。
 女装するためには改めてメイクをしなければならないし、時間がかかるだろうからと先に女性陣がお店に出て開店準備を進めていたのだが、このままでは2人の準備が終わる前にお店が開店してしまう。
 シルクはお店の開店準備をチョウザと朱璃に任せ、化粧室へと向かっていった。

「いやー、流石にウィッグだけは勘弁してくださいよ。ただでさえ女物の服を着ているっていうのに、ウィッグまで被ったら絶対に似合わないに決まってるじゃないっすか」
「何言ってるの。ウィッグを被った方が断然似合ってるし、むしろそのままの恰好の方が浮いて見えるよ。ほら、こっちのウィッグなんてとても似合ってそうだし、とりあえず被るだけ被ってみようか」
 一方化粧室では、どうにかしてウィッグの使用だけは免れようとしている【ヒューズ・トゥエルプ】と、そんなヒューズに似合うウィッグを全力で勧める【シキア・エラルド】の姿があった。
 ヒューズが着ている服はシャツにカーディガン、下は長いスキニーパンツとなるべく男性が着てもおかしくないような服を選んだつもりなのだが、ウィッグを被ってしまうと女装であることを隠し切れない。
 女装を強いられているのはヒューズだけではなく、シキアも同じ立場にいるのだが、シキアはカーキ色のフレアスカートを履いて自身と同じ髪色のウィッグを被っており、カールアイロンまで使って綺麗なウェーブヘアを描かせている。
 しばらくの間ヒューズとシキアは、ウィッグを被る被らないの攻防戦を繰り広げていたのだが最後にはシキアの熱意に押し負け、ヒューズは渋々といった様子でシキアがお勧めしてくれたウィッグを被ることにした。
「ちょっと失礼するわ。もうそろそろお店が開店する時間なんだけど、準備は終わっ……あら、思ったより似合ってるじゃない。終わってなかったら口出ししようと思ってたのに残念」
「!!?」
 改めて姿見の前でウィッグを被った自分の女装姿を眺め、思っていたよりも違和感を感じないし、なんならよく似合っているのではないかと鏡に映った自分の姿を注意深く観察していると、化粧室の扉が何の前触れもなく開かれヒューズは声にならない悲鳴をあげる。
 シルクはもし着換え中だったら申し訳ないと思って扉をノックをしてから入ってきているし、それに対してシキアも返事をしていたので全く突然ではなかったのだが、鏡に映った自分の女装姿に夢中になっていたヒューズは全くもって気づいていなかった。
「あの、似合ってるって言ってくれるのはすごく嬉しいんですけど……、本当に似合ってます……かね?」
「安心なさい、どこからどう見ても女性に見えるわ。……しいて言うなら耳元が少し寂しいわね。ヒューズ、イヤリングつけてみない?」
「イヤリングかぁ、イヤリングを付けるのはちょっと……」
「ちなみにものは相談なんだけど、イヤリングの代わりにこの耳飾りをつけてみるのはどうだろうか。もしかしたらキミに似合うかもと思って借りてきたものなんだけど」
「さっすがシキア、よく分かってるじゃない。なら、ヒューズにはシキアが持ってきた耳飾りを付けてもらうとして……、そこに置いている厚底サンダルを履いてみるとよさそうね。そうね、あと合わせるとしたら……」
 シルクは化粧室にいるヒューズたちを呼びに来たはずだったのだが、いつの間にかシルクも加わり、シキアとシルクによるヒューズの女装コーディネート講座が始まってしまう。
 ついさきほどまで女装を嫌がっていたヒューズであったが、ウィッグを被ってしまったことにより、すでに女装に対する抵抗は感じられない。
 むしろこれ以上に可愛くなった自分の姿が見れるならと自らのコーディネート希望を2人に伝えながら、シキア同様ノリノリで女装に励んでいくのであった。

「店員さーん、おすすめの服ってありますかー?」
「あらお客様いらっしゃいませなのですわ。そうですねぇ……。私がいま着ている、このデニムジャケットなんていかがでしょうか。私もこの服を着たのは今日が初めてなのですが、軽い素材なのに保温性があって肌寒い季節に羽織るにはぴったりのお洋服となっておりますわ」
「あー、そのジャケットを買うならついでに中の服まで一緒に買わなーい? デニムジャケットにただ白い服を合わせてもなにも面白くないし、中に着こむ服で自分らしさを主張して言った方がかっこいいって、ザコちゃん思うんだけどなー」
 一方、よりヒューズを女の子らしくするためにはどうすればいいのだろうかと、シルクとシキアによる熱い会議が繰り広げられている頃、お店の方では朱璃とチョウザが店頭に立って接客業務を行っていた。
 最初はお店の人からあまり売れないのではと懸念されていた不人気服コーナーだが、服を1カ所にまとめて陳列することによって興味本位で手に取ってくれるお客さんが増え、そこですかさず朱璃が羽織りものの服を勧めてチョウザがパンチの効いた服を勧めてと想像していた以上の大盛況である。
 お店側からしてみればこのセールを機会に2、3着売れてくれれば万々歳ぐらいの気持ちであの服たちを出したのだが、開店30分ですでに5着もののおもしろTシャツが売れ、この仕事を続けて5年目となる店員さんでさえも経験したことがないような、嬉しい大誤算が起こっていた。
「……ふー。アパレルショップのお手伝いなんてやったことはありませんでしたが、意外となんとかなるものですね。なんだか楽しくなってきましたわ」
「ぶっちゃけた話、ザコちゃんはあんまり流行りものとか分からないし、ルネサンスの女武人様がいてくれてすごく助かるよー。おかげでこの個性の宝庫たちも着実に売れていってるし、すごくありがたい」
「そう言ってもらえると嬉しい限りですわ。……それにしてもシキア様たち遅いですわね。呼びに行ったはずのシルク様もなかなか戻ってきませんし、何をしているのでしょうか」
「あー、言われてみれば3人とも遅いねー。そろそろ戻ってきてもいいころだとは思うんだけど……」
 今まではあまりお客さんの入りが少なかったので朱璃とチョウザの2人だけでもなんとかなっていたのだが、今からはもっと多くのお客さんが詰めかけてくるだろう。これ以上お客さんが増えてしまうと、チョウザと朱璃の2人では対応しきれない。
 シルクたちには、できればいますぐにでも戻ってきてほしいところなのだが、3人を呼びに行くためにどちらか片方が抜けてしまうだけで、お客さんを処理できなくなってしまうのは目に見えている。
 大変なことではあるがここは3人が戻ってくるのを信じ、朱璃とチョウザの2人だけで接客業務を行っていくしかなかった。
「いやー、ごめんごめん。ついヒューズの女装に熱が入って遅くなっちゃった。お店は今どんな感じ?」
「あらシキア様、お待ちしておりましたわ。……なんだかシキア様が女性服を着ていてもそこまで違和感がありませんわね。スカートだって履いているのになんだか自然に見えてしまいますわ」
「えー、せっかく女装してるんだしもうちょっと恥ずかしがってくれてもよくなーい? どこからどう見ても女性にしか見えなくて、いじりがいがないんだけどー」
「そういうときは似合ってるって言ってくれないかな。女装するのは今回が初めてじゃないから慣れてるし、メイクするのってすごく大変なんだから」
 元から顔が整っているからなのか、それとも顔が中性的なのか。まず間違いなく女性服を着ているはずのシキアの姿を見て、全く違和感を感じられなかった朱璃とチョウザ。
 流石に声を聞いてしまえばシキアが男性であるということはバレてしまうのだろうが、男性が女装していると考えるよりも、声が低いことを気にしている女性と考えた方がしっくりくるような、見事な女装姿だった。
「まぁいいや。とりあえず、俺はあんまり声を出したくないから品出しや商品陳列を中心にやっておくよ。後のことはあの2人に任せてくれていいからさ」
「あの2人って、シルク様とヒューズ様の事ですわよね。シルク様はあそこにいらっしゃいますけど、ヒューズ様はどちらにおられるのでしょうか。シルク様のお姿しか見当たらないような気がしますが……」
「えっ? いや、シルクさんと一緒に接客してるじゃない。ほら、あそこに」
 シキアに促されてシルクのいる方を見てみるも、そこにはシルクと見知らぬ女性店員しかおらず、女装したヒューズの姿はどこにも見当たらない。
 どうしたってヒューズを見つけることのできなかった2人と、なぜ2人が無言でいるのかに気づけなかったシキアの間には、しばし無言の時が流れていた。
「…………あっ、あれが眠たげなフードのゆうしゃ様なのね。へー、あんなに女装嫌がってたのに、思ってたより似合ってるじゃん」
「……えっ、あれがヒューズ様なのですか!? もう一度聞きますけども、あれがヒューズ様なのですか!!?」
 まさかその見知らぬ女装店員がヒューズ本人だと思っていなかった2人は思わず驚きの声をあげる。
 ヒューズの目にしっかりとついていたクマは化粧でなんとか誤魔化し、シキアが選んでくれた耳飾りにシルクが選んでくれた厚底サンダル、スキニーパンツにカーディガンを合わせたコーディネートとなっている。
 本人の希望もあってスカートまでは履いていないが、遠目から見ても近くから見ても全く不自然のない女装姿となっており、これが女装姿だと気づく人すら少ないだろう。
 ヒューズの身長の低さも活かされ、ただの女の子にしか見えなかった。
「えっ、店員さんって男性の方だったんですか!? むちゃくちゃ似合ってるどころかちょー似合ってるじゃないですか。むしろ私たちより着こなしてね?」
「そう言ってくれると俺も嬉し……、ウチも嬉しいよ。気安く『ユズぽよ』って呼んでくんな☆」
 服装が変わることによって性格まで影響が出てきたのか、自分のことをユズぽよと呼び始めるヒューズ・トゥエルプ。最初はヒューズの女装に驚いていたお客さんも、その徹底ぶりが大いにうけ、雑談交じりに服を選び始めた。
「やっぱ秋だかんね。落ち着いた色で合わせながらもシルエットで遊ぶとすごく映えると思うんだよ。ほら、お客さんスタイル良いしこっちの服と合わせちゃえば……、ほらクソカワじゃん☆ ちょ~似合ってんよ! ウチと一緒に肖像画描いてほしいぐらい☆」
 いつの間に仲良くなったのか徐々にタメ語にシフトしながら接客を行っていくヒューズ、またの名をユズぽよと呼ばれる女装店員の姿は、まさしくギャル店員と呼ばざるをえなかった。
「お姉さん、いいもの持ってるわね。これはメロンサイズね……。せっかくだし、もっとお胸を強調するようなコーデにしてみてはどうかしら。あたしは基本的に、人からのオーダーはあまり受け付けない主義なんだけど、今日はコンポタンジュのアパレル店員として完璧なコーデに仕立て上げて見せるわ」
 シルクはというと通りすがりのお姉さんを捕まえて、自ら服を売り込みに行っている。男性がいまの発言をしてしまうと問題発言に発展してしまいそうな気がするが、シルクは正真正銘の女性。女性に対する危ない発言なのでギリギリセーフである。
 それを言われたお客さんもそれがジョークだと分かっているからなのか、声を高らかに笑っていた。
「こうしちゃいられませんわ! チョウザ様、私たちも頑張ってお洋服を売っていきましょう。シキア様も手伝っていただけると非常に助かりますわ!」
「何かに対して頑張るのってザコちゃんあまり好きじゃないんだけど、負けるのもなんかびみょういし。ここはザコちゃんも本気出していきますかねー。いっちょやりますかー」
 シルクとヒューズの接客姿にあてられたのか、朱璃とチョウザにも熱が入る。
 本来であれば品出しや商品陳列に回るはずだったシキアさえも接客に駆り出され、お店を閉める頃には秋物の服はほとんど売り切れ、秋物バーゲンセールは大成功に終わったのであった。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
波乱の秋物バーゲンセール!!
執筆: GM


《波乱の秋物バーゲンセール!!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-10-14 01:05:33
色んな格好見んのは好きだから、こーいうのもたまにはいーよね。
ただザコちゃんは色んな服きんの、めんどいしそこまで好きじゃないし。
あんまし華美華美じゃないの探して着とこ。長袖でー、長ズボンでー、1番売れてないやつかーして。

ザコちゃん品出し側やるつもり…だけど、他のとこが人手不足とかなら考えるから呼んで。
なんもなかったら、とりま陳列で遊ぼっかなって。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2019-10-14 08:59:52
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

お困りのお店の皆様の為に頑張りますわ。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 3) 2019-10-14 10:28:39
村人・従者コースのシルクよ。よろしくー。

接客・レイアウトはまーかせて。
なんなら女装に自信がない人もコーディネートするわよん?

ただ、こんなナリ(身長90cm)なんで、力仕事や背丈のいる仕事はちょっと無理…
その辺は手助けしてもらえると、助かるかな?

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 4) 2019-10-17 18:23:14
芸能・芸術コースのシキア・エラルドです。みんなよろしくね。

お店が困ってると聞いて、参加してみたよ
…え、接客?女性の服着て?……大丈夫、女装は経験あるから(ぐっ
とはいえあまり喋っちゃうと違和感出ちゃうだろうし、基本は力仕事とかかな…

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 5) 2019-10-17 20:46:02
黒幕・暗躍コースのヒューズだ。
何の因果か、この課題とマッチングしちまった。
ま、芸の肥やしにでもなると思って無難にこなしますよっと。