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【優灯】 Trick yet Treat!


ストーリー Story

 ハロウィンを数日前に差し掛かったある日の学園都市、レゼント。
 中身をくりぬいたカボチャを幾つも陳列している商店の男性。鋭く尖った牙のアクセサリや付け耳付け鼻など装飾品を作っている女性などなど、思い思いに仮装や装飾の準備をしながら語らう人たちを眺めるのは【コルネ・ワルフルド】。
 とある事件を端とし、ハロウィンというイベントのイメージを悪くしている人が多かったのだが、多数の生徒の尽力もあり、そこそこハロウィンムードで賑わっているという様子だ。
「万事問題なさそうかな!」
 軽く見回りを終えたコルネは売店で干しブドウの大袋を買っていた。大きな袋一杯の干しブドウを抱えて、ほくほくと効果音が出そうな表情と軽やかなステップで通りを歩いていると、何やら上空から自分の名前を呼ぶ声がした。
 聞きなれている声。立場上自分の上司の声。自分によく無茶ぶりを仕掛けてくる声。勢いよく晴天の空を見上げると、体を覆い隠すかのような大きな帽子とマントに身を包む女性が一人、箒に跨っていた。
「コールネたーん! トリッーク・オア・トリートー!」
 校長先生の【メメ・メメル】だ。普段は見回りなんてしないような人なので、珍しくレゼントの上空を飛んでいることにコルネはやや驚く。ついでに気になることと言えば、何故か彼女の右手には深紅の液体が入ったグラスを携えられていることだ。
「校長先生……まだハロウィンは先ですよ? それに箒に乗って珍しい……というか、そのグラスはなんです?」
「まーまー、コルネたん! 何はともあれ駆け付け一杯ってことでぐぐいと飲みたまえ!」
「それを言うなら三杯……ってこれワインじゃないですか!?」
 話の流れもお構いなしと、ずずいと顔を近づけ強引に手渡されたのはブドウの醸造酒こと、赤ワインだ。鮮血のような深紅色の液体は、濃縮したブドウの芳しい香りを漂わせている。
 仕事中故いくら校長権限と言えど飲めません、と丁重に断ったコルネの耳元でうわ言のように呟いた。
「……知り合いのツテで貰った特製の干しブドウワイン……極上の干しブドウで作ったこのワイン、口の中ではほのかな甘みと深い苦みが最高のハーモニーを奏でる――」
「いただきますっ!」
 飲む意欲を掻き立てるような言葉……よりも干しブドウという一言に反応した気もするが、有無を言わさずコルネは一気に飲み干した。
 そんな彼女へと、メメルは形容しがたい邪悪な笑みを浮かべる。特製、極上、最高という謳い文句に恥じない芳醇かつ重厚な味わいが舌一杯に広がり、ついうっとりしてしまうコルネだったが、すぐに体に異変が起こる。
「ん……あれ? 校長先生が……分身して……みえ――」
 虚ろな目でメメルを見たり目をこすったりしていると、数秒後にパタリと地面に崩れ落ちるコルネ。
「ふふっ……オレサマの計画通りだなー!」
 頬を指で突いて起きないことを確認すると、胸元から蛍光色の液体が満ちた試験管を取り出す。中身は所謂睡眠薬であり、コルネが瞬時に眠るようにメメル自身が調合したものだ。
 ここでその光景を見てふと足を止めた学園生徒や、そのまま通り過ぎる人々は一同にこう思っていた――何故そんなことをするんだ、と。
 コルネが抱えた干しブドウの大袋をメメルはどうにかひったくる。昏睡しているはずなのに、凄まじい握力で中々剥ぎ取れなかったことに爆笑しながら、手近にいた男子生徒へとパスした。
「そこのチミ! これの一枚目を今、高らかに読み上げるのだー!」
 そして再び胸元……というかその豊満な胸の谷間から数枚のカードを取り出すと、ウインクして傍にいた女子生徒へと渡す。その一枚目をメメルに読み上げるよう促されると、恐る恐る口を開いた。

『これは抜き打ちテストだぞっ! 干しブドウの袋を持ったまま、ファンタ・ブルーム大講堂内に辿り着くのだー! 昔のチミらと一味も二味も違うとこ、コルネたんに見せつけちゃえっ!』

 話の内容が飲み込めない生徒たちへにんまりと微笑むメメル。
「それじゃあ頑張りたまえよ、チミたち! トリック・イェット・トリート!」
 それだけ言い残すと、メメルは箒に跨ってすたこらさっさと空の彼方へ消えていった。
 干しブドウの袋、持ち主はコルネ先生、眠らせて奪い取った――袋を渡された生徒は青ざめる。
 これが狂騒と波乱の幕開けだということに気付くのは、数秒と掛からなかった。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 5日 出発日 2019-10-20

難易度 とても難しい 報酬 多い 完成予定 2019-10-30

登場人物 7/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《人たらし》七枷・陣
 ヒューマン Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
異世界:情報旅団テストピアという所に住んでいたが、とある仕事の最中に、この世界に強制転移してしまった。 普段は一人称おじさん。真面目、シリアスな場合はオレ。 本来は50手前のアラフィフおじさんだが、何故か30歳以上若返ってしまった。強制転移した経緯が原因と思われるが真偽は不明。 普段はいかに自分の得意分野だけで楽出来ないかを考えているダメ親父的な人間。 自分や同行する仲間が危機に陥ると気合いを入れて打開しようと真面目モードに。 厄介事に巻き込まれるのは嫌い。お金にならない厄介事はもっと嫌い。でも一度関わってしまったら何だかんだ文句言いながら根気よく取り組む。 やれば出来る人。でも基本ダメ人間。 恋愛事は興味をあまり示さない枯れ気味な人。超若返っても現状は変わらず。 どうにかして元の世界へ戻る為、フトゥールム・スクエアに入学。 転送、転移関係の魔法や装置を徹底的に調べる事が目下の目標。 魔法系の適性があったらしいので、雷系を集中的に伸ばしたいと思っている。自前で転移装置の電源を確保出来るようにしたいのと、未成熟な体躯のフォローとして反応速度メインの自己強化が主な理由。理想は人間ダイナモ。 転移直前まで一緒にいた仲間の女性3名(マナ、マリア、マルタ)の安否を心配している。 「はぁ~…どうしてこんな事になったんだ?…おじさん、ちゃんと元の世界に戻れるんだろうか…こんな厄介事は前代未聞だよ…トホホ」
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)

解説 Explan

 状況を何も知らず現場に通りかかった貴方たちは、とある生徒たちから人数分の干しブドウが入った袋と三枚のカードを押し付けられます。

『これは抜き打ちテストだぞっ! 干しブドウの袋を持ったまま、ファンタ・ブルーム大講堂内にたどり着くのだー! 昔のチミらと一味も二味も違うとこ、コルネたんに見せつけちゃえっ!』
『辿り着けた生徒にはコルネたんのお仕置きは免除とするぞー!』
『制限時間は一時間! ただし干しブドウを無くしたら失格だー!』

 そして背後で寝ているのはコルネ先生――状況はお分かりいただけたでしょうか?

 今回の目的は『コルネ先生から逃げつつ、一時間以内にファンタ・ブルーム大講堂内のメメたんまで辿り着く』ことです。スタート地点は居住区域レゼントからとなり、大講堂までの距離は5km少々です。裏路地や屋根の上など、隠れる場所は様々ありますので、有効活用しましょう。

 コルネ先生は現在沈黙していますが、時間にして一分後には復活します。
 暴走ないしは一種の覚醒状態になっており、五感がごく研ぎ澄まされているため嗅覚・視覚的にターゲットとして捕捉されたら最優先に襲撃されます。また参加人数分に干しブドウを小分けにされているため、全員がコルネ先生の追跡対象になります。
 戦闘能力は言うまでもなく貴方たちより数段格上です。最終手段と割り切り、くれぐれも戦闘は避けることをお勧めします。

 ……しかし、貴方たちも勇者、魔王、村人などなど。それぞれが経験を積み成長したはずです。
 持てる最大の戦術、知略、気合いと根性でメメたんの(タチの悪い)悪戯に打ち勝ってみせましょう!



 なお、貴方がたが持っている干しブドウ袋の中にもう一枚紙が入っていました。

『寝ているコルネたんの傍に置いて帰るような真似をしたら――』

 そこから先は何も書かれていませんが、どうなるかは想像にお任せします。


作者コメント Comment
 どうも皆さま、読み難い名前のGMこと伊弉諾神琴(いざなぎみこと)です。

 お菓子はいいから悪戯するぞー! というメメたんの突然の来襲です。
 たぶんこの人はこれくらい突然に生徒へ厄災げふんげふん、試練を与えてくると思います。
 勇者、魔王そのほかいろいろ、いつだって突如降りかかる理不尽には立ち向かうこともあるので、皆頑張ってメメたんまで辿り着いてくださいね!


個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:270 = 225全体 + 45個別
獲得報酬:10080 = 8400全体 + 1680個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
意図せず巻き込まれてんの、不条理の雲行きじゃん?
ってもよくある事なんだろーけどさぁ。自己もなく意志もなく過ごすよか何倍もおもしろいけど。

で、干しぶどう、ねぇ。あの戦闘教官様の。
学生証じゃレベル2だけど、実際強いんだってね。あれ基準なんなんだろーね。
干しぶどう絡んだ時だけ特殊な祖流帰り?なんでもいーけど。

…ぶっちゃけさぁ、逃げ隠れたりな必要、無くない?
だってザコちゃん、一欠片も悪いことしてないし。学生長様からの貰い物だし、食べて文句言うってなら、学園長様の方でしょ?

指示通り『袋を持ったまま』人通り多い大通りの道で、気楽にぶどう食べ歩きつつ向かうかな。
戦闘教官様にもちょっと口出したいことあるしね。

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:270 = 225全体 + 45個別
獲得報酬:10080 = 8400全体 + 1680個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
一時間以内に大講堂内のメメたんの所に干しぶどうをもって辿り着ければ試験は合格なんだよな

とりあえずはファンタ・ブルーム大講堂内のメメたんの所まで走る!
何はともあれ全力撤退

コルネ先生に小細工とか多分効かないからそこら辺は他の人たちに任せてただひたすらに走る!

第六感、危険察知、基本回避が仕事してくれるのを期待しつつ走り追いつかれたら、交渉
騒動の元凶がメメたんであることと、メメたんの所に着いたら干しぶどうを返すことを伝える
三枚のカードを持ってこいとも指示されてないので証拠としてコルネ先生に渡してもいいよな

交渉も出来ないようなら周りの関係ない奴とかお店とか盾にしつつ全力撤退
メメたんが悪いのだよ!




レダ・ハイエルラーク 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:648 = 225全体 + 423個別
獲得報酬:23400 = 8400全体 + 15000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
・コルネ先生の追撃をかわす
・講堂に着く

◆プレイング
・【事前調査】【推測】で技能が生かせるルートと、「冷凍庫」を探しておく
・開始直後、近隣(コルネ先生からある程度離れた)の店の「冷凍庫」を授業で使うと店主に説明
・【プチミド】で干しぶどう袋を水で包み「冷凍庫」で凍らせる
・途中【ドルフィンガン】で更に厚い氷に仕上げる
・氷が完成したら急いで事前に調べたルートを急ぐ
・【演技】【変装】【隠れ身】【緊急回避】等の一般技能で使えそうな物は全て使用
・【第六感】で索敵、【全力撤退】【立体機動】【龍の翼】【飛行】等で逃走及び難しい地形で使用
・逃走に失敗した場合は袋を渡す
・成功した場合はゴール後お菓子に変えます

ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:270 = 225全体 + 45個別
獲得報酬:10080 = 8400全体 + 1680個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
逃げ切れ!

【行動】
大講堂に真っ直ぐ向かうよ。
干しブドウ袋は荷物カバンに入れるよ。

基本は走って移動。
建物や障害物など大きく迂回が必要そうなところは、龍の翼で飛び越えるよ。
一度飛び上がったら、効果時間まで一気に直進。
時速45kmで1分飛べばそれなりに距離が稼げるはず。

コルネ先生に追いつかれそうになったら、龍の翼で飛んで屋根上に。
そのままを低空飛行して路地1本分横にズレつつ直進、コルネ先生の視界外に出つつ巻く。

気力が少なくなってきたら、走りつつ石焼き芋を食べて気力回復。

そして大講堂が近くなってきたら…残りの気力を全部使って龍の翼で大講堂までカッ飛ぶ!
ここまで来たら、後は気合と根性だ!!

七枷・陣 個人成績:

獲得経験:270 = 225全体 + 45個別
獲得報酬:10080 = 8400全体 + 1680個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
コルネ先生から逃げつつ、いち早く大講堂内の校長まで辿り着く

【行動】
コルネ先生が目覚める前に即行動
自分の進行方向と真逆の所へ干しぶどうの一部を撒き餌としてぶん投げ時間稼ぎ
可能な限り大講堂へ直進して全力撤退
最短距離を進む
途中の建物等の障害物は見習いの箒で飛び越えてショートカット
立体機動も使って魔力を節約
先生に追いつかれた場合はディスエレメンティで有利属性にした上で重力思念のデバフかけて行動阻害
加えて干しぶどうの一部を進行方向の逆へぶん投げて気を取らせた上で再度全力撤退で離脱
干しぶどう使い切らないよう注意する
レーズンキチと化した先生の一撃はほぼ死だろう
持てるスキルと魔力気力は全部使い逃げ切る

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:648 = 225全体 + 423個別
獲得報酬:23400 = 8400全体 + 15000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
とにかく、まずは現場から離れて……市場や食堂街、工房街なんかの人通りがあったり、食料品や木材、油なんかの臭いがするところを通って、大講堂を目指します

ローブのフードや帽子で顔を隠して、干し葡萄は荷物鞄に入れて学生と分かりにくいようにし、人波に紛れ焦らず足早に移動
人だかりの中では、人が壁になるし……先生も無茶はできないでしょう

流れに逆らわず、時には少々遠回りになってもいいので、制限時間中に間に合うよう移動

先生に見つかって逃げられないなら、水筒の水を先生に掛けて怯ませたり、足元に水溜まりや泥濘があれば、そこ目掛けバールを振り下ろし打撃職人で派手に泥を先生に飛ばして

隙が出来れば人波に紛れ…逃げますよ!

ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:

獲得経験:270 = 225全体 + 45個別
獲得報酬:10080 = 8400全体 + 1680個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
ま、今回はシンプルにいかせて貰いますぜ。
スタートダッシュに命を懸けた先行・逃げ切りの一気駆け、ってね。【全力撤退】

【立体機動】を駆使。遮蔽物は「跳躍Lv3」で跳び越え
ショートカットになるなら、鍵爪ロープも使ってガンガン進んでいく。【精密行動】
先生から誰よりも離れりゃ、真っ先にターゲティングされることは無い。
と、信じたい。

不意打ちは怖いね。【聴覚強化】で気を張っとこう。


→もし追い付かれたら
狙いは干しぶどう。ならこいつを高めにトスする。
飛びついたら所or目線が上がって注意が逸れた所に【マド】
タックルをぶちかます。干しぶどうをキャッチ。即効ズラかるぜ。

リザルト Result

 その場に集まった七人の生徒へ押し付けられたのは八つの革袋。
 ご丁寧に一袋ずつに麻縄で口を結ばれ、銀色に煌めく菱形の装飾が施されている。
「これは……干しブドウ?」
「そうですね。紛れもなく……」
 中身を検めた【レダ・ハイエルラーク】と【ベイキ・ミューズフェス】は、そっと後ろを振り向いた。
「……嫌な予感がするのだが?」
「おじさんそっとこの場から離れることをお勧めするぞ」
 怪しげな薬で眠らされたコルネが路上に突っ伏しているのを見て、【仁和・貴人】は未来に暗雲を予期する。体は正直で、講堂方面にしっかりと向いていた。
 逃げ出そうとする貴人の気配を【七枷・陣】は敏感に察知していた。律儀にカードの指令に従い干しブドウを二つ持ち、一つを貴人のマントのポケットに投げ入れる。
「ッ――! おい! 何故干しブドウを突っ込んだ!?」
「どーせあの校長のことだ! どっかでこの騒動を愉悦しながら見てんじゃないかねぇ!? そんでもって素直にコルネ先生に渡したら雷でも落としてくるんだろどーせ!」
 ぎゃあぎゃあと喚き合いながら騒々しく走り去っていく――その背後を陣風のように二人が駆け抜けていった。
「ふぁぁっ……ったく、眠てーのになんつーことしてくれんのかねぇっ!」
 欠伸をしながら鮮やかなスタートダッシュを切ったのは【ヒューズ・トゥエルプ】。脱力した体を軽く前傾すると同時に逡巡している生徒たちを置き去りにする。
「隠れるよりは逃げる方がまだマシだよね! 捕まるくらいなら、全力で逃げ切ってやる!」
 一拍遅れて【ビャッカ・リョウラン】も全力疾走。貴人と陣を追い抜き、ヒューズの後を追走する。
「……どうやら逃げ出す以外に選択肢は与えられていないようだな」
「いつ暴走……或いは覚醒して襲ってくるか分かりませんからね」
 レダとベイキはするりと人ごみの中に紛れ込みながら、それぞれ機を待ちつつ緩やかに進行する。
 最後にポツンと残ったのは、奇抜な『モブ』一人。
「……なーんか面白そーなことだけどぉ。なーんか腑に落ちないってか? なーんで『逃げる』必要があるんだろうかねぇ?」 
 逃走を目論み、或いはメメたんに一言物申すため、ほぼ同時に生徒たちはファンタ・ブルーム大講堂の方角へ駆け出した――【チョウザ・コナミ】ただ一人を除いては。
 おもむろに袋の口を結ぶ麻縄を解くと、彼女はのんべんだらりと講堂を目指し歩き始める。

●Side:チョウザ・コナミ
 全員がカードを読み、内容の絶望感に打ちひしがれている暇なし、と逃げの一手を打ったのが三十秒前。
 三十秒後、酩酊に似た感覚に微睡んだコルネが立ち上がる。
 二十秒後、辺りの光景がクリアに認識できる。
 十秒後、何かが無いことに気付く。
 そして今、この瞬間――。
「ユルサナイ……ユルサナイ……!」
 激怒する、激昂を抑えきれない、激情が止まらない。
 干しブドウは何処に消えたか?
 そもそもどうして眠りについたのか?
 冷静に記憶を探れば眠った原因が分かるのでは?
 冷静ならばいくらか思い至るものがあっただろう。
 今はただ怒り狂う。怒りに任せて持ち得る全ての力を込めて走り出す。
 ――ホシブドウハ、アッチ。
 電光石火の脚力で人ごみを掻い潜り、香りの残滓を導にして追跡を始める。
 高速で角を曲がり正面を見据えると、香りを漂わす奇抜な学生と目があった。
「おぉ、怖い怖い。それじゃホントのケダモノじゃん?」
 不穏な気配を纏うコルネとチョウザが対峙する。
 自分の物を略奪した者に対する敵意。
 これが行き過ぎれば殺気になるのだろうが、いずれにせよ教師が生徒に対して放つには相応しくない代物だ。
 そこから有無を言わさず踏み込んでチョウザとの間を詰める。
「んで、そっから問答無用で暴力に訴えるのはどーかと思うのよねぇ」
 干しブドウが詰まった袋へと手をかけようと、貫き手のようにチョウザが持つ革袋へ手を伸ばす。
「ちょっとぉ、戦闘教官様ぁ? よーく見てくれないと困るよぉ?」
 袋から破れて零れたのは煮干し。干した食品だが食材の種族から違うものだ。
 困惑したコルネを他所に、零れ落ちる一匹を空中で取り、口の中に放り込みバリバリと小気味いい音を鳴らしながら咀嚼する。
「美味でもなければ不味でもないない。出汁取りが一番の使い道ってね」
 装飾がある以外では革袋はそこいらで売っている物と変わらない。煮干しの袋が偶然同じだったので、干しブドウの袋と移し替えただけだ。
「戦闘教官様ねぇ、ゆーしゃ様とか魔王様とかならまだしも、善良一般な皆々様にそんな姿を見せるもんじゃないよぉ? ま、もしザコちゃんから干しブドウが欲しければどうぞってね。『教師の矜持』も何もかも捨てるってんなら、奪ってみればいいんじゃない?」
 チョウザが捲し立てる言葉に、ほんの微かに残った理性を呼び起こされる。
 そもそも理性を吹き飛ばして本能で行動するきっかけとなった、『干しブドウの強奪』は生徒たちによって行われたという確証は無いのだ。確認をする前に強奪するのは、些か強引が過ぎる。
 チョウザは口角を上げて笑みを作る。
「ゆうしゃ様のがっこーの新入生の挑発……これでちょっとは正気を戻したかな?」
「……うん。少し我を忘れすぎちゃった。つい血が騒いじゃってね……たはは」
 顔を背けたコルネが弱弱しく呟いた。
 ――よけーなお世話しちゃったかな?
 説教くさい物言いをするのもらしくないな、と苦笑交じりにコルネの言葉に耳を傾ける。
 暴走モードも解除され、正気に戻ったはずだ。
「でも、それはともかく」
 が、それはそれ。干しブドウのことは干しブドウ。
「え?」
 そっと干しブドウが入った革袋を掴んで一言。
「ホシブドウ、ちょーだい?」
 悲しいかな。時として正論は塵芥程の意味すら為さないのだ。

●Side:仁和・貴人&七枷・陣
「果たして生きているのだろうか」
「おじさんそこまで心配してあげる余裕ない!」
 全力で撤退する瞬間、チョウザが悠々と歩いているのを見た貴人と陣。
 無謀なチョウザの姿を心配する貴人も、飄々とした風体が何処かいった陣も、現在は保身の方が優先らしい。
「まぁ、十分近く走ってたらおじさんたちに追いつくのには、幾ら速かろうと五分はかかるだろうて」
「その理屈が通じないのがあの人だからな」
 言った瞬間、貴人の脳裏にとある言葉が思い浮かぶ。
 ――あれ、これって所謂フラグでは?
 悪寒が背筋をゾクゾクと駆け巡る。
 背後をちらりと覗く。
 脊髄反射で目を逸らす。
「異世界の化け物が追ってくる」
 貴人の口をついて出たモノ、見えたモノ。
 自分が知る世界では当然、この世界でもそう易々と見れるモノではない危険性を孕んだ化け物。
 疾風迅雷の速度、縦横無尽の軌道でコルネが迫ってくるのだ。
「干しブドウ……じゃなくて生徒二人みーっけ!」
 距離にして約五メートル前後――そもそも目覚める前に逃げた筈の二人に対して、標的と認識した上で獲物を捉えた形相を浮かべる。
「やだもう、おじさんたちのこと『干しブドウ』とか言ってるんすけど!?」
「聞いてたよりも本能に忠実だな!」
 貴人がやや皮肉めいて毒づいたが、現状の事実とは異なっている。
 コルネは揺れる本能と理性の狭間で均衡を保っているのだ。
 これはチョウザがコルネへ問いた『コルネ自身の教師の矜持』――教師として見せるべき姿、教導の担い手たる自身の姿を今一度見直したコルネが、手放しかけた理性を取り戻したことにも起因する。
 先ほどまでは狩猟本能が探知した干しブドウの臭いに釣られていただけに過ぎなかった。それが今では五感から得られる情報は勿論のこと、ルネサンスの血脈からなる第六感もフルに働かせ、理性と獣性の両面で生徒を追い詰めていた。
 体の芯まで威力を響かせる打撃ではなく、あくまで捕獲のために速度重視で突きを放つ。
「ぐっ……済まない、七枷くん!」
「ってちょっとぉぉぉっ!?」
 急に貴人が進行方向を百八十度切り替えた結果、半ば身代わりに近い形で陣が前に出てしまった。
 頭の片隅に追いやったはずの忌まわしき記憶がチラつき、反射的に学友たる陣すら囮として差し出してしまったのだ。
 というのも、何を隠そう貴人は『コルネ先生の干しブドウ調教』を受けた犠牲者であり、そもそも元々干しブドウが好きではなかったのだ。
 ある日のこと、コルネ先生が担当する訓練授業中にふと腹減ったなぁ、と零してしまったのが発端だ。聞きつけたコルネ先生が差し出したのは、当然ながら彼女が大好き干しブドウ。それもお徳用のキロ単位で入った物だ。
 拒否したら訓練中盛大に叩きのめされた挙句、訓練終了後に干しブドウの良さを延々と説かれたのだ。六時間耐久で。
 今では大量の干しブドウをキメれるまでに洗脳されたが、『干しブドウうめえええ!!』と口にするも、心に去来するは虚無感のみ。
 ……無意識に貴人の脳がそっと記憶に封印を施しているのだろう。心が壊れてしまわぬよう、頭も体も騙して。
「うわっ! ひぃっ! 死が! 見えるって――ちょっとぉ!」
 高速の連撃の対象となった陣へと、干しブドウ奪取の魔の手が迫る。
 掠りでもすれば当たった部分が削ぎ取られる錯覚や、残像が見えそうな速度から竦みそうになるが、抵抗を止めるわけにはいかない。
「ディスエレメンティ、重力思念!」
 自身の属性をコルネの属性に有利な属性に、同時に相手の魔力生成を阻害する魔法を詠唱して妨害を試みる。本来の効力は魔力生成の阻害だけで、魔法攻撃をしてこないコルネにはあまり効果が無いのだが――。
「うぅ? なんか……うーん、気怠いなぁ……」
 強いて言うならばちょっとだけ本人の思考能力に影響を与える程度だ。
「お? 様子が変わったな」
「……想定外な魔法の効き方をしているな」
 詠唱した陣すらも思いがけない展開となっていた。
 魔法の効力単体でここまで劇的な効果が出る訳が無いことは何となく感じているが、他の原因は今では分からない。今はやれることをやるまでだ。
「とりあえず正気を失ったなら干しブドウ遠くにぶん投げればついていくんじゃないのか?」
「お、それアリだな」
 貴人の提案に安直に乗った陣が革袋をコルネの前に突き付ける。
「ほーら、先生が大好きな干しぶどうだよ……そら取ってこーい!」
「わーい干しブドウだー!」
 骨に釣られた犬なのか、肉に釣られた狼なのか。ともかく普段のコルネでは考えられないような反応を見せる。
 陣の手の動きに合わせ視線を彷徨わせ、陣が遠くに放り投げた干しブドウへ向けて駆け出していったのだ。
 必然的に生徒二人には踵を返し、背中を見せる形になる。
 そして、結果的に損失した干しブドウの袋は一つだけだった。
「……なるほど、これが『祖流還り』か」
「おじさんそれたぶん違うと思うんだけど?」
 遥か彼方へ走り去っていくコルネの後ろ姿を見ている二人は、他人事のように呟いた。

●Side:ビャッカ・リョウラン&ヒューズ・トゥエルプ
 障害物を物理的に乗り越え、最短ルートを突き進んでいるビャッカとヒューズは、現在三キロメートル地点にまで到達していた。
「ここは飛んでショートカットしてっと!」
 ビャッカはドラゴニアの種族特性を遺憾無く発揮している。群衆に遭遇すればその上を飛翔し、跳躍距離を翼で滑空し稼ぐ。体力には限りがあるため無限に飛べるわけではないが、時折逃走前に買っていた石焼き芋を頬張り気を奮い立てる……既に冷めてしまっているのが悲しい。
「カーッ、羨ましいねぇ。神様ってのはひでえもんだ、なんで人様には翼を生やしてくれねぇのか。いくら金積んだらドラゴニアやらアークライトにしてくれんのよ?」
 空を翔けつつ講堂を目指すビャッカを見上げるヒューズが誰に言うでもなくぼやいた。
「自分だって似たようなことしてるでしょー!」
 鉤爪ロープを駆使し、立体機動で移動するヒューズの速度も中々に速い。
 競争の様相を呈してきた二人だが、ビャッカが逃走対象を視認することでそれも終わりを告げる。
「ヒューズ、ヤバい……コルネ先生が!」
 陣が遠くへ投げた干しブドウを拾い、それを水の如くガブ飲みしながら接近してくる。
 不運だったのは、投げた方角がビャッカとヒューズが走っている方角だったことだ。
「うげ、マジかよ。先頭から潰しにくるとは参ったねこりゃ……ぶちのめされる前に白旗振る勇気ってか?」
 そんなことは無論、毛頭、ヒューズのプランには存在していないのだが、誰かを油断させるようにヒューズは弱気な声を上げる。
 迫るコルネが照準を定めたのはビャッカだ。そうはいくまいと自身の最大の武器たる翼で飛翔による逃走を試みるが――。
「へへ、干しブドウ……逃さないぞぉ~?」
 しかし、それを見越したコルネは家屋の壁を蹴り上がって跳躍した。
「って嘘でしょぉっ!?」
 二度、三度、と跳躍しながら少しずつビャッカを捕獲しようと試みるコルネに、ビャッカは頑張って高度を維持し続ける。
 それでも限界は一分ほどで訪れ、ついにビャッカの飛ぶ軌道に合わせて両手で体をガッチリ捕まえる。
 そのまま懐に隠していたはずの干しブドウを一瞬の内にスリ取り、緩やかにビャッカを地面に放ると、セミのように民家の壁に張り付いて壁をよじ登る。
 意味不明な、野生の獣同然の動きをするコルネに、つい足を止めてヒューズも傍観してしまった。
 ――頭のネジ足りない動きしてんなぁ?
 悪意無しの若干たじろぎながらも、頭の回転は止めない。
「はぁーぁ。降参だ。他ぁ当たってくんなせぇ。ブツは渡しますから」
 ヒューズの諦めは早かった。ただし、表面上はだが。
「ほいっと」
 ぽいっと、袋を宙に放ったのだ。
「え、ちょ、ちょっと!? アタシの干しブドウになんてこと――」
「マド」
 空中に目を泳がせたコルネに向けた掌に生成されるは魔法陣――小型の魔力の玉を撃ち出す魔法がコルネの顔面に直撃する。
「ぶっ?!」
 威力はしょっぱいにも程があり、零距離で炸裂したにも関わらずダメージは微々たるものだ。それでも一瞬視線を逸らし、視界から消えるには十分すぎる。
「どっこいしょおっ!」
 僅かな怯みによって生まれた隙を見逃さず、肩から全力でタックルをぶちかます。
「わわっ! 落ちるーーーっ!?」
 対空迎撃されたビャッカの隣に突き落とされたコルネ。驚くことにダメージは思った以上に浅く、ヒューズも唖然としていた。
「うぐぅ……先生を騙すなんてひどいなぁー?」
「おっとぉ。僕を恨まんでくださいよ? そして怒りの矛先は生徒じゃなくて、校長へお願いしまっせ」
 空中で叩き落とされたビャッカと屋根の上から突き落とされたコルネ両名を後目に、我に返ったヒューズはそそくさと屋根から飛び降りて向かいの路地へ逃げた。
「……校長?」
 ヒューズの言葉に引っかかりを覚え、ようやく気を失っていた時のさらに前の記憶に探りを入れ始めたが――。
「校長? ワイン? うっ頭が……」
「こ、コルネ先生?」
「くんくん。おや、あっちからも干しブドウの香りがするなぁ……」
「コルネ先生!?」
 ふらふらと、香りがするらしい方向へと歩いていくコルネ。
 あまりにも普段の優しい先生の姿とは変わり果てており、ビャッカも呆然とする。
「校長先生……コルネ先生にいったい何をしたの……?」
 ちらと見えた血走った目と荒くなった息――生徒たちの合流前に飲まされたメメル謹製睡眠薬の成分は誰も知らない。
 陣によって詠唱された重力思念の影響も相まって、一種の混乱状態に陥っていることもまた、誰も知らない。

●Side:レダ・ハイエルラーク
 生徒たちがコルネとのデッドヒートを続けている中、レダは身を潜めながらある店を探していた。
「記憶ではここに……あった!」
 辿り着いたのは鮮魚店。菓子作りには関係ないが、レダにとって今はここが都合が良い。さっそく店主らしき黒い不精髭を生やした男に捲し立てる。
「店主! 申し訳ないが学園の授業の一環で冷凍庫を使う! 何卒、中の一部スペースを借りさせてくれないか!?」
「は、はぁ? じゅ、授業で冷凍庫ぉ?」
 魚の購入ではなく冷凍庫の借用――店主の反応はもっともだ。輸送した魚の鮮度を保つため、大量の氷を敷き詰めた極低温の部屋はあるが、食い扶持を稼ぐ魚を大量に詰め込んでいるのだ。衛生上勝手に人を入れる訳にも行かないのだろう。
「そこをなんとか頼む! 命が懸かっているんだ!」
 レダが危惧しているのは、コルネが干しブドウに関しては無類の感知能力を誇ることだ。以前とある事件でも『香りのみで追跡してきた』などと証言した生徒もいるほどに優れている。自分たちでは仄かな香りを間近でしか感じられないが、コルネにとっては一キロ程度ならば容易に嗅ぎ分けれるのだろう。
 目印が臭気を放つならば、対策を講じるのは必須。そのための準備にここが最低条件なのだ。土下座せんばかりの勢いで頼み込むレダに、次第に周囲の客の視線が集まる。
 店主も少しずつ居たたまれなくなったのか、程なくして折れてくれた。
「あぁもう分かったって! 頼むから顔を上げてくれって! 使えばいいさ! ただし魚には触れるなよ!」
「助かった……! ではさっそく――」
 なし崩し的に了承を得て冷凍庫にいざ行かんとした先のことだ。
「そこの泡立て器を腰に差したドラゴニアの学園生くーん? 魚屋の前で何をやってるのかなー?」
 レダの背筋が文字通り、ないしは行動通りに凍った。
 理由は言うまでもないだろうが、明記しておこう。
 『ドラゴニアの学園生』ならば、注視すればそこいらにいるかもしれない。
 が、そこに『泡立て器を腰に差した』という文言が付くと話は別だ。これ以上は追及する必要もないだろう。
「……店主! 冷凍庫の使用協力感謝する! この礼は後で必ず!」
 レダの第六感が自らに迫る危機を告げている。微かにでも視認されたからには身を隠さなければならない。
 そうはさせまいとコルネも爆発的加速力でレダ視点前方方向から迫り来る。ビャッカを捕まえた後、この二人が先頭集団であることを察し、彼女らの行動ルート周辺を警戒していたのだ。その警戒網に引っかかったのがレダだった。
「逃さないよ、そこに居るのは――ってあれ?」
 往来のど真ん中。左手には鮮魚店があり、先ほどまでレダを視認していたのはここだ。だが、そこに在るは銀光放つ歪曲したフォルムが特徴の調理器具こと、レダがいつも肌身離さず携帯している泡立て器だ。
「なんだい。魚を買いに来たのかい?」
 店主が落ちている泡立て器をジッと見つめていたコルネに声をかける。
「こっちに黒づくめで泡立て器を持ったドラゴニアの学生が居たと思うんだけど、見てない?」
「ああ。それなら向こうへ行ったぜ」
 指を差した先は泡立て器が落ちていた方角――ファンタ・ブルーム大講堂への直線路だ。
「……こっちに行って、焦って落とした……のかな?」
 あまりにも偶然が続いているようでコルネも訝しむ。
「ふーむ……見失うには早すぎるような? まぁいっか!」
 会ったら返してあげようと独りごち、泡立て器を拾い上げて講堂の方へ駆けて行った。
「おう、撒けたぜ。あんちゃん」
「……助かったか」
 店主の合図を受け、冷凍庫の中からレダが這い出てくる。冷や汗が氷粒と化しているほどの場所で隠れていたのだ。腰元には使い込まれてはいるが手入れを欠かしていない泡立て器が僅かな光を受け輝いている。
 ――泡立て器は一つだけだと思ったか? 残念、二つあるのだよ。
 ……まあ、落とした一つは鮮魚店の台所から借りたものなのだが。自前の物は腰に差してある方だ。
 持ち去られた鮮魚店の泡立て器へ合掌する。
「感謝します、店主。貴方と泡立て器のおかげで逃げ――へっくしゅ!」
「あんちゃん……『アレ』が今日の授業内容ってかい?」
 平静を装っていた店主も、店の前まで鬼気迫る勢いで駆けてきたコルネを『アレ』呼ばわりしている。一般人が関わりを拒みたくなる気配を纏うのはいやはやとレダは苦笑する。
「そういうことです。『アレ』から逃げるのが今日の授業……へっぶし!」
 零下三十度以下という極低温の中、見つかるわけにはいかないレダは冷凍庫の中に潜伏することになった。閃きで隠れたとはいえ、本当に自身が凍りかけた。本来は干しブドウのみを凍らせようとしていたのだが、危うく自分も魚と一緒に売り出されてしまうところだっただろう。
 凍らせた物体は臭いを発さない。臭いの元になる成分が蒸発しなくなり、結果として知覚するべき器官の鼻へと届かないからだ。
 鮮魚店の冷凍庫は、短時間で物を凍らせるための苦肉の策だ。
 魚は品質劣化が早い。極力低温の環境を維持し、細胞の劣化を防ぐ必要がある。物を凍らせるには最も零下が低い冷凍庫を持っているだろう。
 懸念としては、時間が足りな過ぎること。制限時間の半分をかけても氷の膜すら貼れるかどうかだが、何はともあれ、結果はどうあれ、コルネは遥か前方だ。ターゲットから外れたことに相違ない。
「後を追う形ならば、時間内に講堂に辿り着けるだろうな」
「あんちゃん。死なない程度に気ぃ付けれな」
「……死ぬことはないでしょうが、気を付けるとします。ありがとうございました」
 店主の不穏な言葉に背筋が冷える――割と現実味があるのが怖いものだ。

●Side:ベイキ・ミューズフェス
 ――他の方たちは恐らく派手に行動しているでしょうね。
 俯きながら商店街エリアの人の流れに紛れていたベイキは現在、講堂まで一キロを切った地点まで辿り着いていた。
 障害物を無視して全力で講堂まで突っ切っていくビャッカとヒューズ。
 その後を身を隠しながらも相当なスピードで追いかける貴人と陣。
 さらにその後ろで隠密主眼で何かを探している様子で路地を駆け抜けるレダ。
 一番後方からゆっくりと、干しブドウと煮干しを気ままに食べながら歩いているチョウザ。
 各々が己の得意とする手段で講堂までの到達を目指している。若干一名余裕綽々過ぎて不安と心配が頭をもたげそうになったが、気にしないことにしよう。
 ベイキの策もレダと似通ったものがある。人ごみに紛れ、他者の体を盾に隠れ、臭いの発生源を増やし潜むのだ。
 個人で違う体の臭いや香水、整髪料、化粧品の香り、建ち並ぶ商店街が放つ焼き物や魚の匂い――それらが雑多に入り混じった中に旅人を装って紛れていれば、鋭敏な嗅覚を持つコルネとて発見は困難になるだろう。視覚上見つかりにくくなるのも必然である。
「レダさんが最後に曲がったのはあそこで――」
 小声で確認を取りながら路地に目線を向けると、ふらりと最後にレダが曲がった路地からコルネが姿を現す。
 冷静さを取り戻したのか狂気は成りを潜めている。それでもつい悲鳴を上げそうになった。
 ――なんでここに? レダさんを追っているはずなのになぜ?
 一定方向に進み続ける人の流れは着実にコルネに近づきつつあるが、思考を止めることは無い。
「おっかしいなぁー……生徒の皆は講堂方面に向かっているハズなんだけどなぁー……」
 コルネの戦闘経験からなる洞察力なのか。
 干しブドウに関する執念なのか。
 種族的な野生の本能、勘なのか。
 ――『講堂方面』って断定しましたね。
 喧噪の中、集中して何とか聴き取れた言葉に動揺を隠せないベイキ。
 恐らく全員が同一方向に向かっている――この結論に至った理由は二点。
 一つ目はビャッカとヒューズが講堂方面になりふり構わず向かおうとしたこと。前者は空を飛んでまで向かい、後者は障害物を乗り越え、最短ルートで目的地に向かっていた。
 二つ目はレダの身代わりの術……のように置かれた囮の泡立て器。
 彼が意識して置いたか、偶然そうなってしまったかは分からないが、コルネの猜疑心を揺り動かし、講堂へと誘導されたことは事実だ。
 ――ゴールまでできるだけ気配を殺して遠ざかりたいですね。
 残り数百メートル地点まで何事もなく辿り着けたのだが、彼女に与えられた試練はこれからが本番らしい。正念場を冷静に耐え忍ぼうと、より一層気配を薄くしようと努力するが――。
「おや、そこにいるのはベイキちゃんじゃないか!」
「こ、こんにちは! それじゃあ私はこれでっ!」
 ――こういう時に限ってホントにもうっ!
 ベイキが自己申告する巻き添え属性がこの上なく絶妙なタイミングで発動する。
 ちらりとコルネの位置を確認した瞬間目があってしまった。
 咄嗟に会話の流れをぶった切り、そそくさと動き出したベイキにコルネの両目がキラリと光った。
「はーい発見しちゃったよー? 早急にそこから出てくることをお勧めするよー?」
 先刻同様の応対をされたこともあり、ベイキの過剰反応に違和感をビンビンと感じる。彼女はクロだと、即刻断定したのだ。
「さすがに一般の方を蹴散らしてまでは来ないですよね?」
 バレてしまえばもう隠れることも意味は無い。人ごみをするすると抜けながら、十分な距離を取る。距離二十メートルほど離れたその時――ベイキがラストスパートと駆け出し、群衆から抜けた刹那の隙を見逃さず、コルネの体は動き出す。
「ごめんなさい、コルネ先生っ!」
 それを読んでいたベイキもすぐさまバールを振りかぶる。本来の用途は釘抜きであり、悪用で扉の破壊に使うバールだ。
 ――バール? 躱してそれで終わりじゃないか?
 コルネもその行動の意味を把握できないまま、特に注意もせず捕獲行動へ移るが――。
「うわっぷ!?」
 バールを叩きつけたのは水溜まりと土。撥ねた水分を含む土砂がコルネの目と鼻に散弾となり直撃する。
 目くらましにはなったものの、どのみち速く逃げなければならないことに変わりない。後は自力で逃げおおせるのみ――そこで五十分前に聴いた声が二つ、背後からかけられる。
「おっとぉ、そこにおわすはベイキさんじゃないすか」
「おい、皆! もっと速く走らないと追いつかれ――へっくし!」
「ヒューズさん! レダさん!」
 干しブドウを死守したヒューズ、レダと合流する。
 その背後からは残り数メートルで三人に接触できるだろうコルネの姿もあった。

 が、タッチの差で三人が講堂に辿り着く方が速かった。
 
●Finale
 扉を突き破る勢いで講堂へ入るレダ、ベイキ、ヒューズの三名。
 にひっ、と擬音が聴こえそうな笑みを浮かべるメメルがそれを出迎えた。
「どうやら――へぶしっ! 無事に辿り着けたのは三人だけか」
「随分と体が冷えているようですが……大丈夫ですか?」
「主犯もそこにいらっしゃるようだなぁ」
「もーちょっと待つのだ諸君! 役者はじき揃うぞー?」
 一歩遅れて三名を追跡していたコルネが講堂へと飛び込む。
 さらに遅れて干しブドウを強奪されたチョウザ、貴人、陣の三名も講堂へと入った。
「居た! 諸悪の根源が! SSM! SSM!(そこまでにしておけよメメたん)」
「コルネ先生! この人です! この校長こそグラウンド百周の刑にすべき人です!」
「証拠は全員がカードを持っている。言い逃れはできんぞ?」
「はははっ! チミたちもなんだかんだ無事に辿り着けたじゃないか! コルネたんを相手取ってたのにまっこと素晴らしいことだなっ!」
「……何故、私たちがしっかり干しブドウの袋を守れたことを知っているのですか?」
 ここから動いていないメメルがバラバラに逃げていた生徒を認識する手段は『普通』存在しない。ベイキもつい口をはさむ。
「ふっふーん! これがあればすぐにわかるのさっ!」
 メメルが抱えているのは透明な水晶玉のような何か。不思議なことに水晶の輝きは何処かの映像を映している。メメルが魔力を送り込むと、淡い光を放ったかと思えば映像が切り替わる。
「これは共鳴魔法石だっ!」
「え!? 校長先生なんてものを持ち出してるんですかぁっ!?」
 共鳴魔法石――親玉に魔力を供給することによって、子機たる欠片がある場所の周囲の映像を観ることができるものだ。
 子機にあたる欠片は親玉に魔力を送り込むことで零れ落ちる。そしてそれは生徒たちが持っている革袋にあしらわれた菱形の装飾品にそっくりだった。
「革袋から四方向を観れるように付けたけど、懐に入れられちゃ何も見えないから、所持していることが分かるってことだなっ」
 次々と映像を切り替えていくと、真っ黒な映像の中に路地の映像が混じっている。これは革袋を保持している生徒は懐にしまい込んでいるからだ。
 なお、コルネが目を丸くしてメメルを非難したのも、大玉はここにある一つだけで、且つ大変貴重なものであり、今回の一部始終一分一秒逃さず見物していたということでもある。
「もしカードに逆らって干しブドウを置いて逃げても、すぐにでも折檻できたっつーわけか」
 ヒューズがしてやられたような表情をする。
「そういうことだぞ。ほれそこにいるだろう? 干しブドウに囲まれた生徒がねー」
 メメルが指さした方向には、一時間前に干しブドウの袋を押し付けてきた男子生徒が、何故か大量の干しブドウを食べさせられていた。その表情は貴人と同じく虚無に支配されている。
「干しブドウ百キロの刑だなっ」
 生徒たちがゲッソリした表情で見ているが、コルネのみ大量の干しブドウに目を輝かせていた。今にも駆け出しそうなその首根っこをメメルは引っ掴むと、手を叩き皆を手招きする。
「というわけで計画通りげふんげふん、丁度よく全員揃ったんだ! コルネたん含めて今回の抜き打ちテストの講評のお時間だーっ!」
「え、アタシも含めてぇ!?」
 コルネ自身、巻き込まれたも同然なのだが、気にせず続けるメメル。
「まずは貴人たんと陣たん!」
『SSM! SSM!』
「ええぃ、少しは聞く耳持たんかい!」
 貴人と陣のダブルSSMコールに、珍しくメメルも困った素振りを見せる。
「にしてもまさかオレサマの薬と魔法が組み合わせるとあんな効果があるとは思わなかったなー! メメたん超ビックリ~! みたいなぁ?」
「アクシデントな気もするが、おかげで俺は救われたしな」
「絶対分かっててやってたろ、この愉悦校長めぇ……」
 チョウザの言葉で解除された暴走状態にスイッチを入れる行為となってしまったが、陣の魔法が貴人を守ったことは他ならぬ快挙と言える。
「それでは、この干しブドウはお返ししようか。……俺はしばらく干しブドウを口に入れたくはない」
 誇らしげな陣を無視して貴人は革袋をメメルへと投げ渡した。
「そいでビャッカたん、ヒューズたん!」
「はぁい……」
「ほいほいっと」
「さっきの二人とはテンションの落差があるが、聴く姿勢はよーし!」
 気怠そうに欠伸をするヒューズと何故か正座しているビャッカ。
「スタートダッシュで最短ルートを突っ切るって考えは悪くなかったぞ! 龍の翼も駆使して一着も狙えたかもだけど、まっさかコルネたんが飛んだ自分を捕まえられるとは思ってなかったんじゃないかな?」
「飛んでる私に地上から物理で対空攻撃って……普通じゃないですよ?」
「でもコルネたんのような化け物も実際いるから、実戦でも気を抜かないようにな! いやぁ惜しかったなぁ!」
 感慨深そうに唸るメメルに、ビャッカも前向きに心を入れ替える。次があれば、きっと逃げ切ってやると。
「で、ヒューズたん! コルネたんの虚を突いた騙し討ちはお見事だったよ! でも、早々にビャッカたんを見限ったのはよろしくないなぁ?」
「つっても……あのコルネ先生とマジでやり合ってたら、命が幾つあっても足りないじゃないっすか?」
「ま、それは確かにな! オレサマでも逃げたくなるからなっ!」
 愉快そうに爆笑するメメルに、シャレにならないと突っ込みを入れたくなるビャッカとヒューズだった。
「最後にレダたんとベイキたん!」
「は――へっぶしょい!」
「独力で逃げ切りましたので、相応の評価をお願いしますね」
 盛大なくしゃみをしたレダと逃走の緊張を落ち着かせたベイキが返事をする。
「二人とも臭いを封じたり誤魔化したりする発想はグッド! 覚醒状態コルネたんの化け物級の嗅覚は並大抵のことじゃ欺けないからな!」
 普段は放任主義というか、言ってしまえばちゃらんぽらんなのだが、よく見ているようだ。
「にしても本当に四人も逃げ切ったのは凄いことだなっ! 逃げ切れなかった三人も自分らしいやり方が見て取れた! そう、創意工夫が大事ってことだなっ!」
 嬉しそうに『オレサマ上手い事言ったな!』と無邪気に笑うメメル。
「最後にコルネたんはザコたんの有難ーいお言葉をそのまま心に刻み込むよーに。一般人をホントに一人でも倒してたらコルネたんグラウンド一万周だったからなー?」
「う、うぅ! でもそれは校長先生が原因じゃ……反省しますぅ……」
 コルネとて、校長の勅令には拒否できず。
 いや、拒否しないからこの騒動は起きたのでは?
 そう思った生徒も居たり居なかったり。
「おっとぉ、丁度終わったばっかりだったかな?」
 味に気に入ったのか煮干しをぽりぽりと食べているチョウザが講堂へとやってきた。
「ザコたんにはお叱りは特になしだなっ。むしろ褒めちぎれるくらいだぞー?」
「そりゃ感謝感激ってねぇ」
 全てを見透かしたようなメメルの笑みに、チョウザも追及せずに謝辞を言う。
「講評も終わったし、オレサマも楽しめ……げふんげふん。生徒の成長も見れたことだし、さすがオレサマ良い校長っぷりだなぁ!」
 どこがだよ、と心中で一同が非難を口にする。口には決して出さないが。
「というわけでサラダバー!」
 座っていた箒で大きく浮かび上がったかと思えば、そのまま全員が入ってきた講堂の入口へと流れ星が如く消えていった。
 全員が声を合わせる――逃げたっ!?
「お、追って! みんな今すぐ校長を追って!」
 コルネが慌てて追跡しようとするものの、相手は空を制限付きながら自在に飛び回れる箒。
 生徒も命がけの追いかけっこをした後だ。そんな体力が残っている者はこの場にはいなかった。
「うう……あぁーっもう! 結局この中で一番損をしたのはアタシじゃないかーーーっ!?」
 伽藍洞の講堂内に、コルネの慟哭が空しく響き渡るのだった。

 かくして、メメル校長の逃走という結末で悪質な悪戯は終局へと至った。この後三日三晩と彼らは校長捜索にあたったが影も形も無かった。
 『コルネ先生干しブドウ盗難事件』――これ以上この手の痛ましい事件が起こらないよう、我らは校長に祈りを捧げることしかできないのだろうか。
 お菓子よりも悪戯を欲するトリックスターの具現こと、メメ・メメル校長には決して届かないのだろうが。



課題評価
課題経験:225
課題報酬:8400
【優灯】 Trick yet Treat!
執筆:伊弉諾神琴 GM


《【優灯】 Trick yet Treat!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-10-16 00:07:46
なんか訳わかんないことに巻き込まれてんの。不条理の雲行きじゃん?

干しぶどうの袋を持ったまま逃げろー、干しぶどうは無くしちゃだめー。
でもって、追っかけんのは嗅覚と視覚を頼りにー…ふーん。
ま、無意味にばたつくの面白くないしめんどいし、気楽にやるかな。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 2) 2019-10-16 00:26:29
あ、嫌な予感がする逃げ(損なった)

巻き込まれた以上、どうにか頑張って逃げ切るしかないね。
うん、頑張ろう。

《人たらし》 七枷・陣 (No 3) 2019-10-16 22:22:11
待って。…待って(震え声
何考えてんの校長っ…愉悦したいだけだよね知ってた。
兎に角逃げないと…おじさんの手札は少ないけど、何とかやりきってみせるよ。

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 4) 2019-10-17 00:12:56
以前にも似たような事をしたような気が…。

まぁいい、逃げるからには全力で逃げるしかあるまい。
使える技能全て使って逃げてみるさ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 5) 2019-10-18 06:15:38
あ……なんか袋押し付けられたんですが。
これをコルネ先生にお返しして寝返ったら、命は助かるかな?

と思ったけど、たぶん話にならないんだろうな……と05秒位の間で考えてたのは内緒です。

嗅覚、視覚的な情報での追跡になるなら……その裏をかくのが妥当でしょうかね(既に逃げながら思案中)。

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 6) 2019-10-18 23:04:57
…む?
「とある生徒たちから人数分の干しブドウが入った袋と三枚のカードを押し付けられます。」

三枚のカードについて触れられていないが…なんだ…?

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 7) 2019-10-18 23:06:06
む、失礼した。
3枚のカードの内容、よく見たら書かれていたな…。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 8) 2019-10-18 23:07:44
んー、初っ端真っ先に触れてるくない?ふつーに。
『これは抜き打ちテストだぞ…』のカードと、
『辿り着けた生徒には…』のカードと、
『制限時間は一時間…』のカード。ほら3枚。

ま、ゆーしゃ様たちが聞かされた1枚以外は見も読みもしないーってな別として、ねぇ?

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 9) 2019-10-18 23:21:04
1枚に全て書かれていたと勘違いした。
すまない。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 10) 2019-10-19 20:16:58
…とりあえずはあれだ。
オレは全力で撤退する。