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伊弉諾神琴 GM 

 伊弉諾神琴(いざなぎみこと)と申します。愛称を込めて「みことさん」でOKです。皆様のPBWライフを楽しませられるように尽力していきたい所存です。

●シナリオ傾向など
 基本的に冒険・戦闘、コメディ・シリアスといろいろ書きます。
 「このシナリオでやりたいこと」や「表現の要望」など、皆様の思いのたけをいっぱい書いてもらえると嬉しいです!

 

担当NPC


メッセージ


◆遅ればせながらの謝辞
 いつもファンレターや課題の参加、誠にありがとうございます!
 あまり真面目にこういったお礼分を書くのはキャラでもない飲んだくれ野郎ですが、今後ともよろしくお願いいたします!

作品一覧


憧れの先輩から、未来の後輩へ (ショート)
伊弉諾神琴 GM
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の職員室――その一角で非常勤の魔法講師、【ガルベス・ユークリッド】は、自身の手元に目を落として独りごちる。 「……貴学園の生徒を私の息子に会わせてあげてください、か」  ふぅむと唸り、豊かに蓄えた真っ白な顎髭を撫でる。薄紫の花が描かれた便箋には、『ユニの村』と【フィオナ・ジュミナ】と書かれている。宛先も講師個人でなく学園名だった。この手の手紙は大抵は依頼の類だが、今回も案の定だった。  依頼内容は差出人の息子、ヴァルナが「勇者に憧れ奇行に走るようになった」とのことであり、ガルベスは顎髭を弄って息をつく。 「むぅ……いったいどこに人様に迷惑をかける勇者がいるのだと……」  悪戯目当ての手紙が届くことも少なからずあるため、やや斜に構えた気分で読んでいくと、衝撃の行動にガルベスは思わず目を丸くした。  家のタンスや戸棚を勝手に漁る、壺や花瓶を割って中身を奪う、近場に居もしない魔物と棒切れで戦いたがる――ヴァルナが取っていた行動は、模範的な勇者の行動理念からは到底かけ離れていたものだった。  誰から吹き込まれたのかと呆れ半ばに読み進めていくと、原因はどうにもヴァルナの近所に住む酔っぱらいの中年らしい。飲んだくれのサガなのか、大人でも子供でも何かと話したくなるのか。偶然居合わせたヴァルナに勇者の話をしたところ、思いの外食いついて気をよくしたのだろう。調子に乗ってあることないことを吹聴したそうだ。 「四歳の少年に大の大人が……まったく」  話を聞いたヴァルナに悪意が無いのが余計に質が悪く、間違った知識のせいで近所では厄介がられているらしく、母親も「勇者を目指す息子の意思は尊重したい」と強く怒れていないようだ。 「正義感に満ち溢れているのは良いことだが……。まあ、これもいい機会だろう」  偽りの情報で誤った方向に正義感を向けている点に目を瞑るとして、勇者志望ならいずれ魔法学園に入学するだろう。彼にはそれまでに勇者の手本を見せてやらなければならない。 「息子に生徒を会わせてあげてほしい、か」  指に豊かな顎髭を巻きつけて呟く。学園に入学してからはおそらく講師よりも同じ学園に在籍する生徒との時間が増える。互いに研鑽し合い、高みを目指していく存在になる生徒が会うことは、ヴァルナに良い影響を与えるだろう。「見習い」と言えど、うちの生徒は「勇者」なのだから。  それにこの依頼はヴァルナと生徒双方に大きな経験になるだろう。ヴァルナは何年もしない内にフトゥールム・スクエアの生徒として入学し、自分の理想像を追求していくはずだ。この課題を受けてユニの村に行く生徒がどのコースに属していようと、各々が確固たる意志や思いをもって入学してきたのだ。勇者を目指す者の姿も、魔王を目指す者の姿も、学園に憧れを持つヴァルナには輝いて見えるだろう。それに「後輩が自分に憧れている」と知れば、授業や課題のやる気も大いに増す。どちらにも損が無い、こちらとしても願ったり叶ったりな依頼だ。 「――よし」  一瞬の逡巡の後、ガルベスはこの一件を生徒たちの課題として、正式にまとめることにした。  課題名はこうだ――憧れの先輩から、未来の後輩へ。
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-02-17
完成 2019-03-07
【夏コレ!】アルチェを襲う海の巨影 (EX)
伊弉諾神琴 GM
 春から夏へと移り変わりつつあるこの頃。  海の街アルチェも、夏に向けて本格的に観光の準備が進み始めている。やはり夏は海と相場が決まっているからだ。  海開きが間近に迫ってきた白い砂が輝くサビア・ビーチでは、貸出するボートや水着、ボールなどを用意していた。  メルカ漁港方面では観光客たちへ獲れ立ての魚や干物などを提供するため、日々漁に勤しんでいる。  そんな折、漁師たちの間でとある噂が実しやかに囁かれた。  「『海喰い(うみくい)』が目覚めた」と――。  『海喰い』とはアルチェで古くから仄めかされてきた都市伝説であり、深海で眠る巨大なタコであるという。主に秋から冬にかける魚の繁殖期に百年周期で目覚め、アルチェの沖合で海上と深海を往復して魚を捕食し、満足したら再び眠りにつくとされている。  一度眠りについた後は目覚めるまで長い期間を要するため、その姿を目にした者が生きていることはごく少ない。あくまで都市伝説や噂で語られる程度の存在だった。  ところが、連日海に出ている漁師たちは少しずつ違和感を覚え始めていた。  海から魚たちがいなくなっていく。日に日に獲れる魚の量が減っているのだ。  それは当人たちの感覚だけの話ではない。鳥山の数もどんどん少なくなっている。海鳥たちも餌場が無くなって困惑したかのように、どこか遠くへと飛び去っていく。  そしてとうとう事件は起こる――ある日、沖合に出たはずの漁師が血相を変えて戻ってきた。  この世のモノではない何かを見てきたような形相の漁師へ、どうしたどうしたと仲間が問いかけるとただ一言――。 「『海喰い』が出た。大渦を起こして魚を喰らってる」  漁師仲間は大爆笑の渦に飲み込まれた。そんなはずないと、最初は笑い話にしていた。  だが、一隻二隻、さらに一隻二隻と、沖合に漁に出たはずの船がどんどん漁港へと帰ってくる。どの漁師も焦った様子で、『デカいタコが居た』、『巨大な影が海の中に』、『ビーチの方へ向かっている』――口々に叫ぶ漁師たちに、その場にいた全員の背筋が凍った。  伝承では人を喰らう事は無いとされるが、観光客たちの安全を考えると放置するのは得策ではない。  しかし夏は刻一刻と迫っている。  今から海開きを延期させるか?  バカンスやグルメを楽しみに来た観光客たちも追い返すか?  そんなことはさせない――漁師たちの行動は早かった。アルチェに浮上しつつある『海喰い』について文献を読み漁る。『海喰い』を深海に追い返し、あわよくば討伐せしめるだけの情報を得ようとした。  勇者の学校『フトゥールム・スクエア』にも協力を仰ぎ、人騒がせな客人……もとい客蛸にお帰りになってもらう準備をする。  アルチェの人たちは諦めない。観光に来た人たちのひと夏の思い出を守るために。  ……君らも同じ気持ちのはずだ。  楽しい楽しい海辺の青春を謳歌したいだろう?  生命の母たる海が育んだ、美味な魚や貝を食べることを邪魔されたくないだろう?  ならば、取るべき行動は一つだろう?  さあ、勇者たちよ――海開き前の招かれざる客を追い返す時が来た。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-06-14
完成 2019-07-03
でんせつのゆうしゃのつるぎ (ショート)
伊弉諾神琴 GM
「是なるは伝説の聖剣――月光の勇者が振るったとされる『蒼の神月』である!」  学園の敷地を出て北東数十キロ地点の農村、ザレン。  居丈高に蒼く煌めく大剣を掲げた隻眼の男【モナト・アルヴァルク】は、眼下の村人たちに言い放った。 「蒼き月の光を紡ぎしこの剣は、光の一閃で万の魔物を討ち滅ぼす! 万物を断ち切る光の刃は、邪悪なる敵を決して逃がすことは無い!」  強く、荘厳な言葉で剣の力を讃える。  ……しかし、誰もが思っていた。その剣から全く力を感じられないと。  蒼い水晶のような物質でできた刃や、意匠を凝らした彫金、所々に金細工を仕込んであるなど、見た目は確かに伝説の剣のように煌びやかだ。  ただ、それだけだ。見た目こそ伝説の剣のように見えるが、内包している力らしきものを感じられる人はいなかったのだ。  村人たちの疑惑の視線を払いのけるかのように、掲げていた剣を自身の体の前に構えた。 「ご安心召されよ! この剣は『神月の日』に力を発揮する! 蒼き満月が輝く時に! そしていつの日か! 醜悪にて冷酷、残忍な魔物が胎動せんとする時、『蒼の神月』は必ず力を取り戻す! その時は我が伝説の剣の所有者として、一騎当千の勇者として歴史に名を刻むだろうッ!」  その後もモナトの演説は続いたが、衆目は次第に一人一人と離れていった――物好きな村人を何人か残しながら。  所変わりフトゥールム・スクエアの職員室――とある村の伝説の剣の話を生徒から聞いた教師、【ガルベス・ユークリッド】は豊かに蓄えた白い顎髭を触る。彼の癖であり、人と話す時もそれは変わりない。 「――と、あるらしいが。ネルウァ殿はどう思われる、この伝説の剣とやらを」  ネルウァ殿――そう呼ばれた童顔の男が椅子を回してガルベスに正対した。  新雪のように真っ白な長い髪を頭の後ろで結った教師、【ネルウァ・シン】は興味なさげに反応した。 「なら、ぶち折ってみればいい」  話の流れすらぶち折る一言を、ネルウァは一切の躊躇なく言い切った。 「ほう……ぶち折るか……って、いやいや待つのだ! それは些か短絡過ぎというか、そもそも話は聞いていたのか!?」 「聞いていたさ。本物が仮にあるとしてそれが偽物・贋作の類なら、ただの剣の形を模した綺麗な水晶の塊に過ぎない。折ることはおろか、粉々にすることすら容易いだろうね。本物でなければ、の話だけど」 「いや、そういうことではなくてだな。そもそも勇者志望の学生に他人の物を壊させるのは如何なものかと……」 「魔王や武神に村人、黒幕賢者誰でもいいさ。適当にスキ作って折るなり粉々にするなりしてくれれば誰でもね」  ――だからそういう問題ではないのだが。  この年若い教師は底抜けのひねくれものであり、時に教員という立場や当人の倫理観すら疑うようなこともやってのける。物を壊す、自然破壊スレスレの行為をするのは最早当たり前。自分の知識欲のために私財を投げ打ち、学園に内緒で個人で様々な実験をしているとまで噂されているのだ。  そんなガルベスの心中の非難が顔色に表れていたのか、ネルウァは肩をすくめる。 「じゃあ、お堅い君の腑に落ちるように理由をくれてやろうか」  椅子を回してくるりと一回転すると、ガルベスへと改めて正対して簡潔に説明する。 「このまま偽物の伝説を広められると中々厄介な事になる。それを阻止するためにも、あの剣を折ることは必要かつ肝要なことなのだよ」 「厄介な事?」 「偽物だろうと贋作だろうと、人が讃え信仰してしまえば、それはいずれ伝説になってしまうのだよ」  抽象的かつ濁した言い方だったが、察しのいいガルベスはその意図を掴んでいた。 「なるほど、剣自体をプロパガンダの象徴にするということか」 「まあ、そこまで深く考えているかは知らんがね。ただ、妙な集団が現れる前に旗印はへし折るのは正しいことだ。騒乱の芽は悪さをする前に摘み取るに限る」  モナトという男がどのような意図をもってして、架空の伝説の剣を喧伝しているのか――それが今回の『蒼の神月』の破壊の理由に尽きる。  偽物の伝説を作り喧伝する意味を深読みすると、ホイホイ釣られた愚か者を手玉に取り、大規模な叛乱の人手を集めているかも――などと考えられる。それほど大きな理由がなくとも、力に釣られた連中がモナトの傀儡にされることもありかねない。  ならば、『偽物の伝説』という火の手が広がる前に、さっさと大本から鎮火してしまえばいい。剣を折ってしまうという、ネルウァの過激とも取れる発言の理由は大凡こんなところだろう。  うぅむ、とガルベスはつい唸ってしまう。年若いが起こり得る未来を見据えているなと、素直に驚嘆したのだが――。 「それにもし、その『蒼の神月』とやらが本物だったらそれはそれで面白い。真の力を発揮したならば、生徒たちに戦ってもらってレポートを取ってもらえればいいだけだ」  口角の両端を上げて嗤うネルウァを見て、ガルベスは再びうぅむと唸る。  ――この教師……大儀や騒動鎮圧云々よりも知識欲を優先しているのではなかろうか?
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-08-16
完成 2019-09-01
【優灯】 Trick yet Treat! (EX)
伊弉諾神琴 GM
 ハロウィンを数日前に差し掛かったある日の学園都市、レゼント。  中身をくりぬいたカボチャを幾つも陳列している商店の男性。鋭く尖った牙のアクセサリや付け耳付け鼻など装飾品を作っている女性などなど、思い思いに仮装や装飾の準備をしながら語らう人たちを眺めるのは【コルネ・ワルフルド】。  とある事件を端とし、ハロウィンというイベントのイメージを悪くしている人が多かったのだが、多数の生徒の尽力もあり、そこそこハロウィンムードで賑わっているという様子だ。 「万事問題なさそうかな!」  軽く見回りを終えたコルネは売店で干しブドウの大袋を買っていた。大きな袋一杯の干しブドウを抱えて、ほくほくと効果音が出そうな表情と軽やかなステップで通りを歩いていると、何やら上空から自分の名前を呼ぶ声がした。  聞きなれている声。立場上自分の上司の声。自分によく無茶ぶりを仕掛けてくる声。勢いよく晴天の空を見上げると、体を覆い隠すかのような大きな帽子とマントに身を包む女性が一人、箒に跨っていた。 「コールネたーん! トリッーク・オア・トリートー!」  校長先生の【メメ・メメル】だ。普段は見回りなんてしないような人なので、珍しくレゼントの上空を飛んでいることにコルネはやや驚く。ついでに気になることと言えば、何故か彼女の右手には深紅の液体が入ったグラスを携えられていることだ。 「校長先生……まだハロウィンは先ですよ? それに箒に乗って珍しい……というか、そのグラスはなんです?」 「まーまー、コルネたん! 何はともあれ駆け付け一杯ってことでぐぐいと飲みたまえ!」 「それを言うなら三杯……ってこれワインじゃないですか!?」  話の流れもお構いなしと、ずずいと顔を近づけ強引に手渡されたのはブドウの醸造酒こと、赤ワインだ。鮮血のような深紅色の液体は、濃縮したブドウの芳しい香りを漂わせている。  仕事中故いくら校長権限と言えど飲めません、と丁重に断ったコルネの耳元でうわ言のように呟いた。 「……知り合いのツテで貰った特製の干しブドウワイン……極上の干しブドウで作ったこのワイン、口の中ではほのかな甘みと深い苦みが最高のハーモニーを奏でる――」 「いただきますっ!」  飲む意欲を掻き立てるような言葉……よりも干しブドウという一言に反応した気もするが、有無を言わさずコルネは一気に飲み干した。  そんな彼女へと、メメルは形容しがたい邪悪な笑みを浮かべる。特製、極上、最高という謳い文句に恥じない芳醇かつ重厚な味わいが舌一杯に広がり、ついうっとりしてしまうコルネだったが、すぐに体に異変が起こる。 「ん……あれ? 校長先生が……分身して……みえ――」  虚ろな目でメメルを見たり目をこすったりしていると、数秒後にパタリと地面に崩れ落ちるコルネ。 「ふふっ……オレサマの計画通りだなー!」  頬を指で突いて起きないことを確認すると、胸元から蛍光色の液体が満ちた試験管を取り出す。中身は所謂睡眠薬であり、コルネが瞬時に眠るようにメメル自身が調合したものだ。  ここでその光景を見てふと足を止めた学園生徒や、そのまま通り過ぎる人々は一同にこう思っていた――何故そんなことをするんだ、と。  コルネが抱えた干しブドウの大袋をメメルはどうにかひったくる。昏睡しているはずなのに、凄まじい握力で中々剥ぎ取れなかったことに爆笑しながら、手近にいた男子生徒へとパスした。 「そこのチミ! これの一枚目を今、高らかに読み上げるのだー!」  そして再び胸元……というかその豊満な胸の谷間から数枚のカードを取り出すと、ウインクして傍にいた女子生徒へと渡す。その一枚目をメメルに読み上げるよう促されると、恐る恐る口を開いた。 『これは抜き打ちテストだぞっ! 干しブドウの袋を持ったまま、ファンタ・ブルーム大講堂内に辿り着くのだー! 昔のチミらと一味も二味も違うとこ、コルネたんに見せつけちゃえっ!』  話の内容が飲み込めない生徒たちへにんまりと微笑むメメル。 「それじゃあ頑張りたまえよ、チミたち! トリック・イェット・トリート!」  それだけ言い残すと、メメルは箒に跨ってすたこらさっさと空の彼方へ消えていった。  干しブドウの袋、持ち主はコルネ先生、眠らせて奪い取った――袋を渡された生徒は青ざめる。  これが狂騒と波乱の幕開けだということに気付くのは、数秒と掛からなかった。
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-10-12
完成 2019-11-02

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