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のんびり屋のサンタクロース


ストーリー Story

 勇者歴2019年、11月半ば。
 この時期になると世のサンタクロースたちはよい子にしている子供たちのため、プレゼントの準備に追われ始める。
 自身が担当している地区にどれだけプレゼントを欲しがっている人達がいるかによって忙しさは変わってくるが、大抵のサンタクロースは夏が始まる頃からプレゼントの準備に取り掛からなければ間に合わない。
 サンタクロースにとって12月は1年の中で最も忙しく、1年の中で最も輝く月。
 12月の24日、クリスマスの夜。そのたった一夜のために、世のサンタクロースは何ヶ月もの月日をかけてプレゼントの準備を行う。
 11月ともなるとそれはそれは忙しい毎日が続いていくのだが、とある離れに住む1人のサンタクロースはハンモックの穏やかな揺れに身を任せながら、テーブルの上に置いている特大タピオカミルクティーを飲んで盛大にくつろいでいた。
「HEY、ちょっとお邪魔するゼィ!! アナタはクリスマスの準備、もう終わってるますカー!? HEYカモーン!!」
 本日で3杯目となるタピオカミルクティーを飲み終わり、お手製のハンモックに揺られながら眠りにつこうとしていると、突如として厚手の赤い服を身にまとった愉快なおじさまが、ピンポンも押さずに扉を開けて入ってくる。
 独特な喋り方をするこの件のサンタクロースは、みんなからあわてんぼうのサンタクロースだと噂されていた。
「ん? ……あー、なんだあんたか。用がないならさっさと帰ってくれないか? 俺はもうそろそろ寝たいところなのだが……」
「アナタは寝るの早すぎるのデース!! まだお昼の1時ですヨ!? そしてもうジュウニガツデース!! ディッセンバーデース!! アナタはクリスマスの準備に取り掛かってマスカー?」
 いつものことながらこいつのテンションはどうなっているんだと心の中で悪態をついていると、どうしても聞き捨てられない言葉が耳の中に入ってくる。
 ジュウ、ニガツ? ディッ、センバー……?
 こうしてはいられないと羽織っていた毛布を勢いよく放りだし、慌てた様子で壁に掛けているカレンダーに目を向けてみる。
 そこには大きな文字で。まず間違いなく。『11月』と書かれていた。
「…………あぁ、そういうことね」
 のんびり屋のサンタクロースはしばし考えた後、一つの結論に至る。あぁ、いつものあわてんぼうだなと。
「はっはん? 確かにそろそろ準備し始めないとな、教えてくれてサンキュー。あんたもクリスマスの準備もあるだろうし、早く帰れよ」
「ソウデース! ワタシもまだ準備が終わってないんデシター!! ワタシはもう帰るのデース!!」
 そう言って、あわてんぼうのサンタクロースは来た時と同じように猛ダッシュで外へと駆け出していく。……どうでもいいけど、扉は閉めて帰ってくれよな。
「さて、そろそろ動き始めないと流石にまずいかねー。……おっ、こんなところにスライム饅頭があるじゃん。もーらいっと」
 もはや主食となっているタピオカミルクティーを置き、あわてんぼうのサンタクロースが忘れていったのであろうスライム饅頭の箱を勝手に開けて食べ始める。
 先ほどまではしっかりと子供たちにあげるためのプレゼントについて考えていたのだが、すでに頭の中ではスライム饅頭のことしか考えられなくなっている。スライム饅頭が1個、スライム饅頭が2個、スライム饅頭が3個……。
「……そういえばこのスライム饅頭ってフトゥールム・スクエアで人気なお菓子だったよな。フトゥールム・スクエアってことは、あの【メメ・メメル】が学園長をしているところか……。せっかくだしフトゥールム・スクエアの生徒さんたちにもプレゼントの準備を手伝ってもらうか」
 本来ならばプレゼントを渡される側にいるはずの生徒たちに、悪びれもなくプレゼントの準備を手伝わせおうとするのんびり屋のサンタクロース。のんびりを通り越し、もはやそれは怠けである。
 正体がサンタクロースだということがばれてしまうと面倒なことになるので、フトゥールム・スクエアの生徒たちには詳細については知らせず、メメ・メメル学園長に完成したプレゼントを送ってもらえればなんとかなるだろう。
 のんびり屋のサンタクロースは重い腰を上げながら、10か月ぶりのプレゼントの調達準備に取りかかり始めるのであった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-11-16

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-11-26

登場人物 3/8 Characters
《ゆう×ドラ》シルク・ブラスリップ
 エリアル Lv17 / 村人・従者 Rank 1
「命令(オーダー)は受けない主義なの。作りたいものを、やりたいように作りたい……それが夢」 「最高の武具には最高の使い手がいるの。あなたはどうかしら?」 #####  武具職人志願のフェアリーの少女。  専門は衣服・装飾だが割と何でも小器用にこなすセンスの持ち主。  歴史ある職人の下で修業を積んできたが、閉鎖的な一門を嫌い魔法学園へとやってきた。 ◆性格・趣向  一言で言うと『天才肌の変態おねーさん』  男女問わず誘惑してからかうのが趣味のお色気担当。  筋肉&おっぱい星人だが精神の気高さも大事で、好みの理想は意外と高い。 ◆容姿補足  フェアリータイプのエリアル。身長およそ90cm。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。

解説 Explan

 のんびり屋のサンタクロースのプレゼント準備を手伝ってあげましょう。

 メメ・メメル学園長の話によると、どうやらあなたたちが作ってくれたプレゼントは3歳から5歳ぐらいの子供たちが生活をしている小さな保育施設に配られるようです。
 その保育施設ではあまりお金に余裕がなく、ぬいぐるみや積み木などのおもちゃを買ってあげられません。
 お店で買ってきたものでも大丈夫ですが、せっかくなら手作りのプレゼントをあげた方がいいんじゃない? とのことでした。

 なお、今回のプレゼント作りは学園の教室を使うことができ、PCのみなさんには保育施設の子供たちにプレゼントを渡すことしか伝えられておりません。
 プレゼントを待ち遠しく思っている子供たちの顔を思い浮かべながら、大切に作ってあげてください。


作者コメント Comment
 こんにちはこんばんは、桜花です。

 このエピソードはじょーしゃGMとの連携エピソードとなっております。本エピソードに出てくるあわてんぼうのサンタクロースはじょーしゃGMが作成したオリジナルNPCです。
 私の手元に入っている情報ですと、おそらくこのエピソードが公開される頃にはじょーしゃGMのエピソードが公開されていると思います。
 そちらでは、あわてんぼうのサンタクロースが1ヶ月間違えて配ってしまったプレゼントを回収するエピソードとなっております。もしかしたらすでに満員御礼となっているかもしれませんが、そちらのエピソードも読んでいただけると幸いです。

 ……他のGMさんの宣伝をしてたら自分のスペースなくなったんだが!!?
 おっかしいんだよなぁ……。


個人成績表 Report
シルク・ブラスリップ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:180 = 60全体 + 120個別
獲得報酬:4500 = 1500全体 + 3000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
特技を生かしてプレゼントを。
服飾に限らず楽しさを込めて

●行動
3~5歳の子、衣食住が困窮するほどではない(玩具を買えない程度)として…
機能性より楽しさ、遊び甲斐重視で『裁縫』を生かして手芸品を作成。

まず第一に頑丈さと安全性…誤飲の危険なく、かつ子供でも持ち運びに苦労しないサイズ。
加えてやんちゃしても壊れない頑丈さも重視して…

たとえばぬいぐるみの要領で作った六面体の色んな色の大きな布製さいころ×いっぱい
転がして遊べて、ぶつけても怪我しない柔らかさ。枕にもできるし、積み木の代わりになる。どうよ?

あと拝たちがぬいぐるみか何か作るなら、それに服を追加してもいいかな?
ぬいぐるみにも、子供服にもなるような…

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
保育保護って名前の不自由を感じる。
自分の意思で簡抜選ぶことも出来ずに、ただ与えられるのを取り込むだけ。…ってもそれに浸った立場じゃそれを不自由かどーかすら、分かんなくなってくんだよね…よく知ってる。よーく。

ってもこの子らに関しては、ただ現状出ていく理由といける理由がないだけで、ある程度の選択肢はあるんだよね。ならまだ気も軽いね。いーんじゃん。

そったらザコちゃん、自身が介入できる余地手段のあるもん仕込もっかな。
別に面白いもんでもないし、万人種受けなもんでも無いけど。
それでも、ただ与えられるもんで喜ばなきゃ、にしんどさ覚えるゆーしゃ様がいるんならこれ渡しといて。

てか教室だよね?書くもんだけ貸して。

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
思いついたプレゼント、一つは髪飾りについているゴムから連想して、輪ゴムを使った男の子向けの鉄砲のおもちゃですわ

流石に割りばしだけで作った物ですと味気ないので、学園の工作室を使わせていただき薄い板を鉄砲の形に切り抜きそれを数枚張り合わせ、きちんと引き金が動くように調整、撃鉄に輪ゴムをひっかけ引き金を引くと輪ゴムを発射できるようにしますわ。色もきちんと塗らないといけませんわね

それと女の子向けにお手玉を作りますわ。布はもう着られなくなった服を切って使いましょう。単色でなく色んな色を組み合わせて作れば楽しいかも。中に入れる物は小豆が良いでしょうか。幾つか作ったら色々な遊び方を書いた説明書もつけましょう



リザルト Result

「はぁぁ~、急にプレゼントを作れなんて言われても悩みますわ~。女の子たちはお手玉を作ってあげれば喜んでくれそうな気がしますけど、男の子は何を作ってあげればいいのでしょう。難しいところですわ~」
 【メメ・メメル】学園長からの依頼で、保育施設に自分たちが作ったものをプレゼントすることとなった【朱璃・拝】は椅子の背もたれに全体重を預け、大きく伸びをする。
 朱璃はそれほど裁縫が得意な方ではないので、お手玉を作っている途中で何度か手縫い針で自分の指を刺してしまったが、プレゼントをもらって喜んでいる子供たちの顔を想像したらそんなもの痛くもかゆくもない。
 お手玉を作るのは随分と久々だったので試しに1つだけお手玉を作ってみたが、それほど歪な形をしているわけではない。縫い目が少々荒っぽくなってるような気もするが、お手玉として遊ぶならばこれぐらい頑丈に作っていた方が寧ろ布が破けにくくなっていいだろう。
 問題は男の子用のプレゼントだ。男の子にお手玉をあげたとしてもあまり喜んでくれないだろうし、せっかくあげるならかっこいいプレゼントをあげたい。
 朱璃は何を作ろうかと考えながら無意識のうちに後ろ髪を手で梳かし、隣に座っている【チョウザ・コナミ】に相談してみることにした。
「チョウザ様は男の子用のプレゼントを作るって言っておられましたけど、何を作っておられますの? 先ほどから随分と熱心にペンを走らせておりますが……」
「あぁ、これ? いやさ、プレゼントって言ってもただ与えられるだけじゃ面白くないじゃん? だから、宝の地図でも作ってプレゼントを自分たちの手で掴み取ってほしいんだよねー。ほい、完成っと」
 どうやらチョウザが描いていた宝の地図は朱璃が話かけている間に完成したらしく、チョウザは最後の仕上げとして羊皮紙の端っこに大きなバツ印を付ける。あとは子供たちを宝の元へと導く文を考えるだけだ。
 学園長の話によると保育施設には子供たちが元気に遊び回れるほどの大きな芝生があるらしく、宝物を埋めるのであればそこが一番向いているだろうとのことだった。
 ただ、そこの芝生には少し背の高い草むらと木が数本生えているだけであり、目印になりそうなものはそれほどない。
 その少ない選択肢の中で子供たちをどう楽しませるか、子供たちにどのような驚きを与えることができるのか。それはチョウザの腕の見せ所である。
「へー、チョウザは宝の地図を作っているの。男の子たちが飛んで喜びそうなプレゼントね。なら、あたしは女の子用のプレゼントを作ることにしようかしら。保育施設に住んでいる子供たちって3歳から5歳ぐらいの子供たちだったわよね。……ふんふん、りょーかい♪」
 チョウザが男の子用のプレゼントを作っているのならば自分は女の子用のプレゼントを作ってみせようと、【シルク・ブラスリップ】は大きなお胸を強調しながら、腕を組んでしばし考える。
 シルクが得意としていることといえば裁縫一択なので何かしらの手芸品を作ろうとは思っていたのだが、なかなか作るものが定まらない。
 プレゼントをあげる相手が小さな子供たちということも考えると、機能性よりも遊び心を重視したプレゼントで、なおかつ安全面にも配慮したプレゼントを作らなければならない。
 もし誤ってプレゼントを飲み込んでしまったら危ないのである程度の大きさが必要で、怪我のリスクも考えるとあまり固くないものがいい。
 数が少なすぎてもプレゼントの取り合いで喧嘩になってしまうかもしれないのでなるべく多くのプレゼントを作りたいのだが、だからといって1つ1つの質を落としてしまうのはシルクとしてのプライドが許さない。
 どのような工夫をすれば手芸品としても子供の遊び道具としても優秀なものが作れるだろうかと考えていると、ふと朱璃がお手玉の素材として使っているカラフルな布に目が留まった。
「……確か朱璃が使っているその布って、もう使われなくなったお洋服から切り抜いたものよね。もし余っていたらでいいのだけど、その生地を少し分けてもらえないかしら」
「もちろん大丈夫ですわ! 私だけだと布を余らせてしまいそうですし、むしろ残してしまった方がこのお洋服を分けてくださったご友人達に失礼ですもの。シルク様もこのお洋服を使って子供たちにあげるプレゼントを作っていただけると、私としても嬉しい限りですわ!」
「あらありがとう。後は、そうねぇ……。大量の綿が必要になるかもしれないわね。先生方にお願いしたらもらえるかしら」
「なーんか大掛かりなプレゼントを作ろうとしているみたいだけど、お色気フェアリーのゆーしゃさまは何を作ろうとしてるのかねー。綿が必要になるってことは、大きなお人形さんでも作るつもりー?」
「ぬいぐるみではないけど、これだけたくさんのカラフルな布がある事だし、色も大きさも疎らな六面体のサイコロを作ってあげようかと思ってね。中に綿を詰め込んであげれば子供たちが怪我をすることはないし、枕にしたり積み木にしたりと色々な用途で遊べるでしょ。それじゃ、あたしは先生方に綿を譲ってもらえないか相談してくるわね」
 確か被服室に大量の綿が余っていたような気がすると思いながら、シルクは職員室へと向かって綿を譲ってもらえないかと交渉しに行く。
 そんなシルクの後ろ姿を見ながら朱璃は先ほどから男の子用のプレゼントを何にしようかと考えていると、指先が髪飾りについているゴムに触れる。
 朱璃の指はそこで止まり、しばらく考えた後にピンときた朱璃は勢いよく立ち上がった。
「……は!? そう、これですわ!! 私も小さい頃によくお兄様と遊んだではありませんの。ここは1つ、立派な輪ゴム鉄砲を作ってみせますわ!」
 朱璃がまだ幼かったころ、よく兄と輪ゴム鉄砲を作って遊んでいた。兄に何度も打たれて喧嘩になったりもしたが、今では昔を懐かしむ笑い話だ。
 最初は普通の輪ゴム鉄砲で満足できていたのだが、いつの間にかお手軽さよりもかっこよさを求めていくようになり、最終的には輪ゴム鉄砲をいくつかのパーツに分けて組み立てていたほど、輪ゴム鉄砲に対しては思い入れが深かった。
「うーん、輪ゴム鉄砲なら割りばしで作るのがメジャーですけど、どうせならかっこいい銃をもらった方が嬉しいですわよね……。ちょっと工作室まで行って作ってきますわ!」
 輪ゴム鉄砲の事を思い出していくうちにいつのまにか心が童心に帰ってしまったのか、更によりよい輪ゴム鉄砲の製作を目指して朱璃は教室から飛び出していく。
 シルクと朱璃がそれぞれの用事で教室から出ていった後、チョウザは1人教室に残って羊皮紙をもう一枚取り出し、子供たちを宝の元へと導く文を綴り始めた。
「えっと……。その場に程近い天を貫く槍を背に沈む直前の日を貫く槍の根元を目指せ。輝く宝がそこにっと……。わー、それっぽい。子供には理解するのが難しいかもしれないけど、まぁこっちの方が宝の地図っぽいよねー」

「ふぅ、やっと綿をもらってこれたわ。……って、あれ? 朱璃はどこに行ったのかしら」
「おー、お色気フェアリーのゆーしゃさまお帰りー。ルネサンスの女武人様は工作室まで輪ゴム鉄砲を作りに行ってまだ戻ってきてないよー。細部までこだわりたいとか言ってたし、一時戻ってこないんじゃなーい?」
「朱璃が輪ゴム鉄砲作りにそこまで張り切るなんて、なんだか意外ね。……そもそも輪ゴム鉄砲ってどうやって作るのかしら? あまりにも懐かしすぎてもう覚えてないわ。人の記憶って儚いものね」
 そもそも輪ゴム鉄砲って工作室の道具を借りなければ作れないものだったかと疑問に思いながらも、シルクは先生から分けてもらった大量の綿を机の上へとそっと降ろす。
 余ったら返してくれればいいと被服室にある綿を大量にに借りてきたのだが、あまり力には自信がないシルクにとって、業務用として売られている手芸用の綿2袋を教室まで運ぶのは一苦労だった。
「さて、それじゃあたしも頑張って作っていこうかしら。もしよかったら、チョウザも作るのを手伝ってくれないかしら。さすがにあたし1人でこの量の綿を使いきれそうにないわ」
「おっけー、りょーかい。宝の地図も作り終わったし、後は保育施設に行って宝物を埋めるだけでもんねー。ザコちゃんは何をしたらいーい?」
「そうねぇ……。ならこのお洋服たちを適当な大きさに切ってもらえないかしら。縫い合わせるところはあたしがやるから大丈夫よ」
「んー、四角に切るだけじゃなんだか物足りないし、星形とか丸形とか適当に切ってみちゃってもいーい? 形や色大きさが違っていたとしても、全部同じような印象のサイコロだったら面白くないでしょ」
「そうね。なら、サイコロの表面は後で自由に飾り付けることにしましょうか。ほら、サイコロの目が音符になったりしてたら可愛いでしょ♪」
 朱璃のお手玉作りに使う洋服まで切ってしまったらいけないので、チョウザは洋服の山から数枚の服を別のところに分けておく。
 朱璃が様々な人から譲ってもらった洋服の中には、色褪せや色移りしているものも何枚か含まれているが、どれも大切に着られていたということだけはよく分かる。
 チョウザはもう着られなくなってしまった服にハサミを通し、新たな姿へと生まれ変わらせるために様々な形へと切り抜いていった。

「はぁー、やっと納得のいく輪ゴム鉄砲が作れましたわ! って、なんだか私がいない間にすごいことになってますわね。サイコロがたくさん転がっていますわ!」
「あら、朱璃もお帰りなさい。お言葉に甘えてお洋服を何枚か使わせてもらったわ。朱璃が作るお手玉用のお洋服もちゃんとチョウザが取り分けてくれてるから安心して」
「あー、そうそう。それで思い出したんだけどさー。ルネサンスの女武人様がお手玉を作ってたときに小豆を入れていたみたいだけど、その中にキラキラ石も一緒に入れてみない? 暗闇で光るお手玉っていうのもなんだか粋なものでしょ」
「えっ、もらってもいいんですの!? ありがとうですわ!! ……けど、本当によろしいんですの? これってチョウザ様が使うはずだったものですわよね」
「使うって言ってもどうせ宝物として木の下に埋めるだけだし、少しぐらい使ってくれてもおけまるじゃん? なんなら最大の景品はザコちゃんが持っているジュエルトンファーにするつもりだしねー。ということで、はいこれあげる」
 チョウザはキラキラ石が入っている袋に右手を突っ込み、適当な数を掴んでからそのまま朱璃の手元へと持っていく。
 さすがに朱璃が作るお手玉全てにキラキラ石を入れられるほどの数はないが、お手玉の中にいくつか光るお手玉があった方が貴重さが出て面白いだろう。
 途中からあれほどあった手芸用綿を全て使い切って満足したシルクも加わり、こちらも用意していた小豆が全て使い終わるまでお手玉作りに励むのであった。

「これはちょっと作りすぎ……ましたわよね。どう考えても」
「けど、プレゼントが足らないよりたくさんあった方が子供たちも喜んでくれるでしょうし、これでいいんじゃないかしら。……いいわよね?」
「んー、大丈夫じゃない? 少なくとも、これだけあれば奪い合いの喧嘩になることはないと思うよー。問題は、このプレゼント達をどうやって保育施設まで持っていくかだけどねー」
 朱璃のお手玉作りも終わり、後は学園長から預かっていた大きな白い袋にそれぞれが作ったプレゼントを入れて保育施設まで持っていくだけなのだが、シルクがあまりにもたくさんのサイコロを作ってしまったせいで1つの袋に納まりきれていない。
 手芸品であれば少し無理をしてでも押し込んでしまえばなんとかなるのだが、朱璃が作った大量の輪ゴム鉄砲があるということもあってぎゅうぎゅうに押し込むわけにもいかない。
 宝物を埋めるためにもプレゼント達は全てチョウザが持っていく手はずだったのだが、プレゼントの量からしてチョウザ1人で持っていける範疇を超えていた。
「もう面倒だし、袋を小分けにしてみんなで持っていく? どうせなら自分たちの手で渡した方が面白そうじゃない?」
「それもいいですわね! せっかくだし、プレゼントをもらって喜んでいる子供たちの顔もみたいものですわ!」
「確かに量は多いけど、ほとんどあたしが作ったサイコロだからそこまで重くないっていうのがせめてもの救いね。これならあたしでも手伝えそう。先生から新しい袋をもらって来るわね」
 そう言って、シルクは新たな袋をもらいに職員室へと直行する。
 後日、保育施設へと運ばれたプレゼントたちは子供たちに大変喜ばれ、男の子たちはチョウザが作った宝の地図に頭を悩ませ、女の子たちは朱璃が作った遊び方説明書の元お手玉で遊び、疲れた子供たちはシルクが作った六面体サイコロを枕にして静かな寝息を立てるのであった。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
のんびり屋のサンタクロース
執筆: GM


《のんびり屋のサンタクロース》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-11-11 00:12:39
与えられる物しか手にできず、自分で手に入れる選択肢すらないってやだよね。分かる。
自分で手に入れるって思考すら出来なくなっちゃうし。それに気づくことも出来ないし。
っても、まだちっちゃいんだし、施設でたら自由に満ちてっか。そったらまだ余裕あんね。

ザコちゃんはおもちゃじゃないもん仕込んどく。
ぶっちゃけ今すぐなんかできるもんじゃなし、面白いもんでもないしだけど。
でもさぁ、その時一時の喜びだの気晴らしだのはそれはそれでいーとして。
未来の自由にちょっとだけ希望持つってのもいーんじゃん?って。ザコちゃん的に。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2019-11-11 21:02:40
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

さて、どんなプレゼントにいたしましょう・・・。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 3) 2019-11-11 23:09:46
村人・従者コースのシルクよ。よろしくー。
この数のプレゼント、腕が鳴るわねぇ?