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良かれと思って


ストーリー Story

 シンシンシン。
 コンコンコン。
 ドザァーーーーッ。
 静かに降っていた雪は一転。
 突如として降り注いだ。――ゲリラ豪雪とでも言うべきか。
 そんな、【コルネ・ワルフルド】もコタツで丸くなるような気候の中、動く影が一つ。
 ズンッ、ズンッ、と。
 独特な跡を地面の雪に残しながらその影は、猛吹雪の中で何かを象っていた――。

 *
 一夜明け、朝の日差しを取り入れようとカーテンを開けた生徒は驚愕した。
 見覚えの無い建物が目に入ったからだ。
 その建物の外見は白く、むしろそれが優雅さを醸し出している。
 その生徒は、建物の全容を把握するためにマフラーを巻いて外へと駆け出した。

 *
 すでに建物の周りには生徒や教員等で人だかりが出来ており、様々な会話が聞こえてくる。
「城?」
「誰が作った?」
「あんな吹雪の中で?」
「何のために?」
 けれどもそんな会話の内容も、全て疑問符が付くものばかりであり、それに対する反応も推測の域しか出ないもの。
 つまり、誰もが納得出来るものでは無かった。
 ――と。
 ギイィッ。
 どこからそんな音が出るのか不明だが、雪の城の門が開き、中から、
「これはこれは大衆であるな。所で聞きたいのであるが」
 威厳と戦痕と強者感を纏った雪だるまが出てきて――、
「この場所、ちと寒すぎでは無いか?」
 雪だるまとは思えない言葉を発した。

 *
「おー、暖かい。はぁ……末端が感覚を取り戻していくのである」
 城の中に招かれた生徒達は、これでもかと寒がるその雪だるまに対して、城の中で焚き火を熾し暖を取らせる、という事を提案した。
 これを喜んで聞き入れた雪だるまは生徒達を城に招き入れ、雑談に興じていた。
「我が名は『冬将軍・ジェネラルフロスト』である」
 そんな雑談の中で手に入れた雪だるまの情報。
 その情報を手に入れた生徒が一人、大図書館『ワイズ・クレバー』へ向かってダッシュ。
 名前からして魔物では無いか、と疑ったその生徒はモンスター図鑑を勢いよく捲る。
 そうして見つけたジェネラルフロストの情報には、驚くべき事が書かれていた。
 一方その頃、焚き火で暖を取り続けていたジェネラルフロストの足下に、ほんの僅かに水たまりが発生している事に、まだ誰も気が付いていなかった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-02-01

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-02-11

登場人物 4/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。

解説 Explan

 魔物、ジェネラルフロストを倒すことが目的です。
 が、普通の方法では倒すことが出来ないため工夫を凝らす必要があります。

 舞台 辺り一面銀世界の学園の校庭。そこにそびえる城の形をしたかまくらの中からスタートです。城の外には雪が積もっていますが、寒いため城からは出ません。

 ジェネラルフロストの情報については次の通りです。

 【格】 5

 【生態】 外見は傷だらけの雪だるま。ダメージを受けても周囲の雪を取り込んで回復する。

 【本能】 寒い地域を徘徊している。が、実際は温かいところを目指して移動すると本人が纏っている寒気も移動するため移動先が寒くなる。寒がりで暖を取りたがる。

 【属性得意/苦手】 氷/炎 ただし炎でダメージを与えても雪があると即時回復。

 【得意地形】 氷雪地

 【戦闘スタイル】 雪を固めて作った槍や刀で戦う近接スタイル。機転が利いたり罠、誘導なども察知する。

 【状態異常】 睡眠。攻撃などでの付与では無く、寒さによる体温低下で眠くなってしまう。


 ▼まともに立ち向かえば歯が立たない相手ですが、敵意を見せなければ襲っては来ません。
  なので、皆さんの『好意』の元、寒がっているジェネラルフロストを温めて溶かしてください。


 また、特定の条件を満たすと【称号】を取得出来る可能性があります。取得出来る称号と条件は以下。

 取得可能称号・善意の塊
 取得条件・誰よりも善意を持ってジェネラルフロストを溶かす。


作者コメント Comment
 二本目の戦闘エピです(ドヤ顔)。
 え? 戦闘してない?
 敵が居て、その敵を倒すために行動する。これを戦闘と言わずして何という?

 と言うわけで皆さん、良かれと思って寒がっている存在を温めてあげましょう。


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:44 = 44全体 + 0個別
獲得報酬:1200 = 1200全体 + 0個別
獲得友情:1
獲得努力:1
獲得希望:1

獲得単位:0
獲得称号:---

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:52 = 44全体 + 8個別
獲得報酬:1440 = 1200全体 + 240個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
まーた見たことない魔物じゃん。面白いからいーけど。
てかここまで種類いると、魔物一体一体が別個体だったりしない?
ヒューマンのザコちゃん、ヒューマンだろう学園長様、みたいな意味合いで。なんせよぼこしてめんどい境遇に遭遇する訳でもなし、変わらず好き勝手するけど。

でもってー、あの魔物。
あっためたら倒せてー、あっちも温まりたい。
でも雪があれば回復できる。周りは1面雪まみれ。
…ザコちゃん、思いつくの一択の限りなんだけど。他ある?

ザコちゃんと一緒にかまくら強化しよ。うん。
だってさぁ、どーせ外に出ないってならその方がいーだろーし。
何より、かまくらに押し固めた雪って密度上がってほぼ氷じゃん?雪じゃなくて。ふふ。

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:52 = 44全体 + 8個別
獲得報酬:1440 = 1200全体 + 240個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
取り敢えず暖めればいいんだな?
だが、かまくらか・・・
手っ取り早く温めるために城の中に小屋を作ろう
・・・空間が広いと暖まるのに時間かかるしな
元の空間が狭ければ木の板で補強でもしようか
ってことでいつもの工作
設計防御拠点芸術親和を使おう
材料は学園が用意してくれるだろ・・・

あとは同意を得て焚火をちょっと強めればいいか・・・

エンジュワカイロを持っていくが他の人が貸すのなら自分が温まるために使う
貸す人がいなければ貸し出すとしよう
あ、カイロはやけどに注意しないとなのでハンカチなどの布にくるもう

身体の内側からも暖めた方がいいので月見うどんを用意した
ほんとはおでんの方がいいかと思ったんだが時間を考えてうどん

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:132 = 44全体 + 88個別
獲得報酬:3600 = 1200全体 + 2400個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
外は雪で、炎でダメージを与えても雪があれば回復
だけど寒がり

温まりたい雪だるま

ならば、かまくらの中で焚き火しながら、敵意を見せず温め合いましょう
できるだけ厚着しカイロで暖を取りながら、焚き火を絶やさないように

溶けた水が焚き火を消さないよう、焚き火から雪だるまに向かって微妙に低くなるような傾斜が付くようにセッティング

雪だるまが寒がるなら、焚き火でお湯を沸かして、雪だるまにタライとかに入ってもらい、タライにお湯を入れて温めて

それでも寒がるなら、タライから出てもらい雪だるまを抱きしめて、体温で温めましょう
自身に祈祷して回復しつつ、ディスエレメンティや魔力纏でダメージを抑え、焦らず雪だるまを温めてみます

リザルト Result

 自らが作り出した雪の城の中。風を遮り寒さから防ぐ為のその中で、焚き火に手を翳(かざ)しながら。……けれども未だに寒いのか身を震えさせている『ジェネラルフロスト』は周囲へと問いかける。
「誰ぞもっと温まる方法を思いつかぬか?」
 と。
 周囲でざわざわと声がする中、真っ先に行動した人物が一人。
 六角棒を横にして、ズリズリと地面を這わせ、周囲の雪を集め始めたのは【チョウザ・コナミ】。
 何をするかと見ているジェネラルフロストを余所に、意図に気付いた他の者も手伝い始める。
 チョウザの雪集めに手を貸す【フィリン・スタンテッド】に、骨組みを焚き火に使う薪で組み始める【仁和・貴人】。
 そしてその骨組みに雪を纏わせ、かまくらを形成していく【ベイキ・ミューズフェス】。そうして意図を理解した周囲の生徒が同じくかまくらを作ろうとすると……。
「ふむ。よく分からんがこうして雪で狭い空間を作るわけであるな?」
 そう言ってジェネラルフロストが両手を掲げると、周囲の――それも城にまで使われていた雪が集合、密集、集約……そして形成。
 ぎっちりがっちり固められ、爪を立てようが――なんならプチヒドを放とうが微塵も溶ける様子も崩れる様子もないソレは、もはやかまくらと言うよりはシェルター。
 外から六角棒で押し固めようとしていたチョウザも、最初の一回で不要だと理解した。
 ――弾かれたのだ。六角棒が。……かまくらに。
 さて、こうして出来たかまくらに、既に入っている影が三つ。
 作成者のジェネラルフロストはもちろん、その際に土台作り、かまくら形成。――そして、たまたま集めた雪を持ち、ベイキへと渡しに行っていた、貴人、ベイキ、フィリンが。
 それぞれ巻き込まれる形でかまくらシェルターの中に。
 確かに城よりは空間は狭くなったが、それでもまだまだ空間に余裕はある。
 その空間に、
「む、何を見ている? ……そうか! 入りたいのだな! 遠慮するでない!」
「へ? いや、ザコちゃん見学で――」
 押し固めるのを諦め、何が起こるのかと興味本位で中を覗き込もうとしていたチョウザは、ジェネラルフロストに手を引っ張られ――そうになり、咄嗟に回避。なおも手を伸ばしてくるジェネラルフロストに掴まれたくないのか、かまくらシェルターへと自分から入っていく。
 一人追加されたことで若干手狭になったかまくらシェルターは、具体的には体を動かそうとすると誰かに当たる程の密集具合に。
 こうして、生徒四人は図らずも戦場での戦いにおいて重要な条件を達成する。
 ――すなわち、自分が有利な地形に誘い込むこと。
 ……そして、相手の退路を断つことである。
 さて、そんな状態で、しっかり空間の中央に確保している焚き火に翳した手を少し動かした際に……。
 ふにょんふよん、と何かの感触が伝わってきたジェネラル将軍は――。
 周りが気が付かないくらいに、ほんの一回りだけ、その一瞬で溶けた。

 *
「材料と道具を持って来ましたよっと」
 と、どこかに何かを取りに行っていた貴人がかまくらシェルターへと戻ると、
「おお、ご苦労である。……しかし今年の冷え込みは一段と激しいのである」
 貴人が何かを思いつき、取りにかまくらシェルターを出るまでは女性陣に囲まれ、焚き火にあたっていただけの筈のジェネラルフロストだったが、今その足下にはタライを置いていて。
 さらに言えば、そのタライに両足を突っ込んでいた。
 ……突き詰めると雪だるまなので足などあったのかと貴人は思ったが、その視線の先には紛うこと無き立派な木の枝の足が二本生えていた。
「私も最初は興味津々で見ちゃったから」
 そんな貴人の視線に気が付いたフィリンが、少しだけため息を吐きながら言う。
「足湯がお気に召したらしーよ。深緑髪のせーしょくしゃ様の提案だけど」
 続いて、タライの中に足を突っ込んでいる理由をチョウザが説明し、
「どうせなので、私達も足湯を楽しんでいるんですよ。……結構温まるのですね」
 個々人の足下にあるタライの理由を説明。
 自分たちの有利なフィールドへと相手に悟られず誘い込んだ――ほとんどが自爆に近いが……。
 それでも自分達有利へと傾けた生徒達の次なる攻撃は……。
 先ほどから継続している火あぶり攻めと、さらに追加された湯攻めであった。
 程よい温度だとか、雪が突っ込んでいる都合上すぐにお湯の温度が下がり、かなり急ピッチでお湯を追加する必要があったりと問題はあるが、この攻撃も成功。
 先ほどと同様に戦術とは相手に悟らせない鮮やかな一手であった。
 そして、その戦術から話題を変えようと、ベイキは貴人へと問いかける。
「それで、あなたは何を思いついて取りに?」
 何を持ってきたのか、と。それによりどのような攻めを継続するのか、と。
「鍋と野菜と卵とうどん。温かい物食べて、内側からも温もれば満足しないかなと思ったわけだ」
 答えながら貴人は、右手に持った土鍋と左手に持った既に切られている具材とを見せる。
 なるほど。死地に自らを追いやらせ、くつろがせておいてからの次なる一手は、外側だけでなく内側からも熱による攻撃を試そうという事らしい。
「そんなわけでどうです? 熱々のうどんなどは……。後は一応、酒なんかも持ってきましたが」
 と、それが攻撃だとバレないように。『酒』という餌を吊して本来の目的を霞ませながらジェネラルフロストにお伺い立てれば、
「うむ。ありがたく馳走になるのである」
 未だに体を震わせながら、けれども声だけは威厳たっぷりに。何も気が付いていない様子で言うのだった。

 *
「具材煮えましたよ」
「ネギは好まんのである。そもそも中が熱くて火傷するであろう」
「暖まるためなんですから好き嫌いは駄目ですよ」
「ザコちゃん的に春菊びみょい。勝手に取るから放置でいーよ」
「というか俺汗かいてるんだけど、まだ寒いですか?」
 かまくらシェルターの中でワイワイと。
 一瞬、火傷という単語でバレたのではないかとドキドキしながら。
 鍋焼きうどんが完成した土鍋の中を、皆へとよそっていたのはフィリン。
 よそわれた野菜に何かと文句を付けるジェネラルフロストはベイキにあしらわれ、チョウザは相変わらずのマイペースで食事中。
 そして、かまくらシェルター内にて足湯、中央の焚き火、さらには鍋焼きうどんと熱源が揃えば、貴人が腕まくりして少しでも上がった体温を下げようとするのは必然だろう。
 かと思えば、ようやく寒さからの震えが止まったジェネラルフロストは、貴人からの問いかけに、
「ようやくマシになってきたのである」
 という驚きの言葉を返しながらお酒をグビり。
 正直なところ、かまくらシェルター内はもはやサウナと言っても差し支えない。
 生徒達の戦略の賜(たまもの)は、本来仕掛けている側の貴人が耐えきれなくなりつつあるくらいには万全だった。
 サウナの中で足湯をし、さらに鍋焼きうどんを食べる。想像して欲しい。
 ……どう考えても過剰である。
 ――が、それでもジェネラルフロストにとってはマシになった程度。
 ここまでやっても駄目か、と。
 他に何か出来ることはないか、あるいは、これからどうすればとうどんを啜りながら思ってベイキは、
(あれ? 気のせい……ではないですよね?)
 ふと、とあることに気が付いた。
 すぐに横に居るチョウザへと耳打ち。
(ジェネラルフロスト、最初見たときより絶対に小さくなってますよね?)
 それは、自分たちの作戦が順調な証拠。
(ん? ホントだ。二回りくらい溶け縮んでるっぽいね。ザコちゃん達何にもしてないのに不思議だねー)
 ソレをチョウザは白々しく、ただの好意だと主張して。
 今度はチョウザが隣の貴人へ。
(あの魔物、結構溶けてる縮んでるっぽいから、もう一押しダメ押しでいけそーじゃない?)
(ダメ押しはマズいだろ。……でも確かに小さくなってきたし、もう一歩な気がするな)
 納得し、思考を巡らせる貴人だが、その最後の一歩が王手たる、チェックメイトへの最後の一手が浮かばない。
 取りあえず耳打ちされた内容をフィリンへと流す。
(もう少しで溶けてしまいそうなんだ。何かいい案ないか?)
(鍋焼きうどん食べたら一気に溶けたみたいだし、内側から温められると脆い? 仮にそうだとしても具体的には思い浮かばないわね)
 四人が四人とも、この鍋焼きうどんを食べ終えた後のこと。――つまるところトドメとなり得る暖を取る方法を模索するが、限られた中でこれ以上に出来る事は多くは無い。
 別段何も思い浮かばないまま、
「ふぅ。美味であったのである。褒めて遣わす」
 ジェネラルフロストは完食し、行儀良く手を合わせてご馳走様。
 そんなジェネラルフロストをよそに、はてさて一体どうしたものかと四人が悩んでいると……、
「満腹なのである。……腹ごなしに運動でもしたい気分であるな」
 という提案が。
 ――すると、
「そうだ! 『おしくらまんじゅう』をやりましょう!!」
 閃いた! と。これがトドメになり得ると勢いよく立ち上がりながらベイキが叫ぶ。
「ん、ザコちゃんはちょっと遠慮して、声出しとかに回りたいかなー。……圧感じる女ゆーしゃ様と仮面のまおー様のお二人さんは?」
 自分はしっかりと拒否しながら、フィリンと貴人へと問いかけたチョウザ。
「うぅ……もうソレしか思いつかないよ……」
「何というかその……お手柔らかに頼む」
 そんな問いかけに、若干顔を赤らめながら言うフィリンと、仮面の下の表情は分からないが、震えた声が動揺を示している貴人という反応で。
「一体何が始まるのであるか?」
 おしくらまんじゅうを知らないらしいジェネラルフロストを置いてけぼりにして……、
「せーーーの!」
『おしくらまんじゅう!! 押されて泣くな!!』
 チョウザが取った音頭から、ジェネラルフロストを中心にした生徒三人の共同攻撃、『三方向からの密集圧死を目論んだ肉体攻撃』が――始まった。
 
 *
 おしくらまんじゅう――いや、『三方向からの密集圧死を目論んだ肉体攻撃』と言うには齟齬があった。
 確かに最初は攻撃であったが、一向にそれ以上溶ける気配がないジェネラルフロストを前に、サウナと化したかまくらシェルターで動き回り続けた四人は疲れ果てた。若干一名、動いてと言うか、声を出したことで疲れていた。
 ――どころか脱水症状一歩手前、体温も上がりっぱなしであった。
 とすれば動けなくなるのは必然で、倒れ込んでしまうのも無理はない。
 四人も例外なく倒れ込んだ――ジェネラルフロストの方へと。
 すると、
「あ……ひんやりしてて気持ちいい」
 おでこをジェネラルフロストの背中へと押し当てたベイキが呟いた瞬間。
 他の二人も冷気を求めて思い思いの場所をジェネラルフロストへと押し当てた。
 仮面のせいで顔を押し当てられない貴人は、無理矢理首筋をジェネラルフロストの肩へ。
 フィリンは靴を脱いでジェネラルフロストの脇腹へと足を押し当てる。
 唯一違うのは離れて声を出していたチョウザであり。ジェネラルフロストへと体を押し付ける三人を尻目に、胸元を少し引いてパタパタと手で扇ぎ風を送っていた。 
 それはもはや、戦術を忘れての行動――の筈だった。
 しかし、
「その、何というか……むず痒いのである」
 それまで表情が変わらなかったジェネラルフロストが、ここに来て始めて表情を変えた。
 ……変えたというか、蒸気した。
 比喩でも何でもなく、湯気を立たせ。
 見る見るうちに溶けだしたのだ。
 驚いた四人がただ見つめることしか出来ない中、ジェネラルフロストは――、
「非常に……非常に――照れるのである」
 小さくなっていく自分に気が付かない程に頬を赤らめ照れ続け……、
 そのまま、照れ溶けて――消滅した。



課題評価
課題経験:44
課題報酬:1200
良かれと思って
執筆:瀧音 静 GM


《良かれと思って》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 1) 2020-01-28 06:39:10
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。
寒がりなのに寒気をともなって移動、って…はた迷惑、コホン。難儀な相手ね…。
何か寒気に負けない熱を用意できればいいのだけど…

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 2) 2020-01-30 13:41:18
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。

熱・・・熱いもの・・・おでん?

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 3) 2020-01-31 21:35:32
温まりたい。そしたら消える。でも雪があったら復活してー、周りは限りなく雪。

…ザコちゃん思いつくの、一択の限りなんだけど。
できっか、やる気になれっかは別としてー。てきとーにちょっかいかーけよ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 4) 2020-01-31 22:09:00
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。
出発間際ですがよろしくお願いします。