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とある受付職員の受難


ストーリー Story

「ねえ、聞いた?」
「聞いた聞いた。聞いたどころか見た」
「見た? どうだった?」
「すごいクマ」
「クマすごい?」
「クマすごい」
 ひそひそ食堂で囁かれている、世間話程度の噂話。
 それは、とある受付職員にまつわるもの。
「【ウケツ・ケ】さん、最近いつ休んでいるの……?」

 魔法学園『フトゥールム・スクエア』における、職員の修羅場というものは常に不定期にやって来る。
 何月は暇で、何月からすごく忙しくなる、そんなルーティーンは夢にも見てはいけない。
 なぜならば、魔物が大量発生したという連絡があれば、現地に赴き下見をし、書類を作成し教室の掲示板に貼りだし。
 通常業務に加えて各地からくる問い合わせに対応しなくてはならない。
 祭り等イベントをしたいが人手が足りないと連絡があれば、現地に赴き打ち合わせをし、書類を作成し教室の掲示板に貼りだし。
 通常業務に加えて参加希望者各位に詳細を説明したり、必要な物資等あれば揃えるために手配したりしなくてはならない。
 学園内で干しブドウ欠乏症に陥っている【コルネ・ワルフルド】先生が暴れていると連絡があれば、現地に赴き足止めをし、状況を待機している受付に連絡し、書類を作成し、教室の掲示板に貼りだす前に大声で手伝いを求め。
 通常業務どころではないから、作業していた手を止めて。
 生徒たちが作戦会議をしている間、受付職員が総出で被害を拡大しないように踏ん張っている。
 そんな修羅場は、時期が決まってくるものではない。
 どこからともなく現れて、嵐のように去っていく。
 それが、職員が対峙する修羅場の印象。
 さて、学園窓口では、新年早々、そんな修羅場がまたやって来ていた。
 そのため、朝から晩まで受付職員は馬車馬の如く働いていたのだが。
 その中でも、ウケツという男は、文字通り休む間もなく働いていた。
 いつ、どのタイミングで誰が行っても、ウケツが休んでいるところを、ここ最近見ていない。
 受付職員が利用する休憩所にすらも訪れることはなく、常に受付に缶詰めになっている状態だという。
「……ウケツ先輩」
「はい、なんでしょう」
「……今、何徹目ですか」
 後輩職員に恐る恐る聞かれたウケツは、指折り数え――その指の数が尋常でない本数であったことを、後輩は見ないふりをした――答えた。
「十五徹目ですね」
「寝てください!」
「大丈夫です。人間、五徹目以降から眠くなくなってきますから」
 爽やかに笑うウケツ。
 人はそれを、ただハイになっているだけだと言う。

「……なーんてことを言うんだよ、ウケツ先輩」
「はあ、そりゃ大変だったね」
 ウケツの後輩職員は、残業終わりに食堂で同僚に愚痴のように話す。
「絶対疲れは溜まっているはずなの! だって!」
 後輩は普段のウケツでは絶対にしないはずの失敗をつらつらと並べる。
 例えば、書類の誤字や誤用に始まり。
 この間はブラックコーヒーに、砂糖と塩を間違えて入れただとか。
 うっかりばら撒いた書類の中の重要書類が、生徒の鞄に混入してあたふたと焦って仕事量を増やしてしまっただとか。
 チョークを飴と勘違いして、『千歳飴だー』なんて言いながら食べてしまっただとか。
「絶対それ疲れてるわ」
「でしょう?! 今日も仕事を上がるときに、『お疲れ様です』って言いながら、あの人、なんて言ったと思う?!」
 同僚は、ぷんぷんと興奮しきりの後輩職員を眺める。
「『私のメガネ知りませんか?』だよ?! 頭の上にあるのに加えて、もうひとつ別のメガネがちゃんとかかっていたのに!」
 同僚は言葉もなく笑うしかなかった。
「だからなんとかして休ませたいんだけど……。ここ最近、何かに取り憑かれたように仕事仕事ばかりだから……」
 ぶぅ、とホットミルクを口に運ぶ後輩職員。
 その背後から、ぬ、とひとりの男性が顔を出す。
「おや、まだ帰ってなかったんですか」
 噂のウケツ・ケ、その人だった。
「早く帰って、体を休めてくださいね」
 大量の書類を手に、おそらく教室の方へ去っていくウケツのその肩。
 なにやら白い、拳大のものがうにゅうにゅ蠢いている。
「せ、先輩。その肩のものは……?」
「肩のもの?」
 不思議そうな顔で肩を見るウケツ。
 しかし白いものは、視線から逃れるようにうにゅうにゅ移動してしまう。
「埃か何かでしょう。ほら、そろそろ帰って休まないと、明日に響きますよ」
 最早欠伸も出なくなった、濃いクマを浮かべた顔で、ウケツは去って行ってしまった。
「……憑いてたね」
「……うん、憑いてた」

「と、いうわけで!」
 ばあん! と机を叩くのは後輩職員。
 空き教室に集められたのは、授業後の休み時間、のんびりとしていたところを運悪く見つけられてしまった生徒たち。
「今現在、受付職員であるウケツ・ケの肩に取り憑いているのは、『ハンタイのサナギ』と呼ばれる魔物ではないかと推測されます」
「ハンタイのサナギって、どういった魔物でしょうか」
 後輩職員は、資料を一枚手に取る。
「性質を反対にしようとする魔物である、と調査した資料には書いてありました」
「性質を反対に?」
「はい。のんびり屋をせっかちに、大食らいを少食に。ウケツ先輩は働き者で、修羅場の際も率先して働いていましたので、その反対の性質と言えば怠け者……」
 あるいは、疲れた体を休めたいと思う、生物的な本能が表面に出ているのかもしれません。
 後輩職員の説明に、生徒は疑問符を浮かべる。
「それって、悪いこと? 事実働きすぎなんだし、休ませてあげればいいんじゃないの?」
 後輩職員は、諦観の笑みを浮かべる。
「ええ、きちんと休んでくれるなら、わたしたちも放置するつもりでした。ですが……」
「ですが?」
「……ウケツ先輩、意志が強いんですよ」
「……はぁ?」
 後輩職員曰く、このハンタイのサナギは、取りついた者の『本来の性質でありたいと願う意志』が強ければ強いほど、相反する性質が大喧嘩を起こしてしまうのだとか。
 現状、ウケツの『真面目に働かなければならない』という信念にも似た意地がハンタイのサナギの性質を上回っているのだという。
 その結果、意固地になった子供のように、『絶対に何があっても休まない』ウケツ・ケが出来上がってしまったのそうだ。
「ハンタイのサナギは、取りついた本人の意志が強ければ強いほど、正反対にする予定だった性質が取りついた人から失われていく。そんな厄介な魔物なんです……」
 だが、そうした経緯の末に出来上がった『絶対に何があっても休まないウケツ・ケ』であるが、身体的スペックは元のまま。
 一気にスペックが下がったり、いきなり上がったりしない。
「そのせいで、ウケツ先輩の疲労度はもうマックスに……! 本人の意識していないところで、まるでコメディ作品のようなミスを連発しているんです……!」
 先輩、火炎魔法石は大きなイチゴ飴じゃないんですよおぉ!!
 後輩職員の嘆きは、惨状を思い起こさせるには十分すぎるものだった。
「ええっと、それで……。俺たちはどうすれば?」
 同情だったのだろう。
 差し出された手を、後輩職員は救いもかくやと握りしめる。
「先輩を……! ウケツ・ケ先輩を休ませてください!」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-02-09

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-02-19

登場人物 6/8 Characters
《新入生》夕夜・御影
 ルネサンス Lv4 / 魔王・覇王 Rank 1
名前:夕夜 御影(ゆうや みかげ) 種族:黒猫のルネサンス 外見 ・黒い長い髪を高く結ってる ・黄色人種 ・両目金 ・小さい 服装 ・赤い首輪に鈴 ・和装 性格 自称ゆうがく最強黒にゃんこ そういう遊びである 基本的には遊びの延長線で生きてる 大体の事は何となくで物を言っている ご飯を基準に生きておりお金よりご飯くれる人に懐く ご飯くれる人は軒並み『ご主人様』である 猫の姿になり皆のほっぺを肉球でムギュッとするのが趣味 やたら背中に乗りたがる 必殺技は肉球パンチ ちなみに殺傷能力は0である 口調:~なんだにゃ、~なのかにゃ? 一人称:にゃー、御影 二人称:~ちゃん、ご主人 ご飯くれる人が複数いる時は (ご飯の内容)のご主人 例:マグロのご主人 貴様らもー! にゃーのやっこい肉球の虜にしてやるにゃー!(/・ω・)/にゃー!
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《ゆうがく2年生》蓮花寺・六道丸
 リバイバル Lv13 / 芸能・芸術 Rank 1
名前の読みは『れんげじ・りくどうまる』。 一人称は『拙僧』。ヒューマン時代は生まれ故郷である東の国で琵琶法師をしていた。今でもよく琵琶を背負っているが、今のところまだ戦闘には使っていない。 一人称が示す通り修行僧でもあったのだが、学園の教祖・聖職コースとは宗派が異なっていたため、芸能・芸術コースに属している。 本来は「六道丸」だけが名前であり、「蓮花寺」は育ててもらった寺の名前を苗字の代わりに名乗っている。 若い見た目に不釣り合いな古めかしい話し方をするのは、彼の親代わりでもある和尚の話し方が移ったため。基本的な呼び方は「其方」「〜どの」だが、家族同然に気心が知れた相手、あるいは敵は「お主」と呼んで、名前も呼び捨てにする。 長い黒髪を揺らめかせたミステリアスな出で立ちをしているがその性格は極めて温厚で純真。生前は盲目であったため、死んで初めて出会えた『色のある』世界が新鮮で仕方がない様子。 ベジタリアンであり自分から肉や魚は食べないが、あまり厳密でもなく、『出されたものは残さず食べる』ことの方が優先される。 好きなもの:音楽、良い香りの花、外で体を動かすこと、ちょっとした悪戯、霜柱を踏むこと、手触りのいい陶器、親切な人、物語、小さな生き物、etc... 嫌いなもの:大雨や雷の音
《妖麗幽舞》サクラ・ブラディー
 リバイバル Lv14 / 黒幕・暗躍 Rank 1
イタズラ好きのリバイバル。 自分の名前や常識等以外記憶から抜け落ちている。 リバイバルになるための強い感情も抜け落ちておりなんで今ここに存在しているのかも本人にもわからない。(という嘘をついている) 取り敢えず毎日が楽しく過ごせればいい。 黒幕・暗躍コースなのは自分の特性がうまくいかせそうだったから 楽して成績優秀なら空いた時間は自由に使えるじゃろ? 趣味は人を揶揄うこと。 特技はなぜか舞踊、剣舞ができる。 また、占いもすることがあるようだ。 偶に変な雑学を披露する。 とある生徒の部下ではあるがそれを理由に相手をおもちゃにするために部下になってる ただ、ちょっとしたことならお願いは聞いているようだ 二人称:おぬし、または 名前殿
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」

解説 Explan

 受付職員、ウケツ・ケを休ませてください。

 現在十六徹目に差し掛かろうとしている受付職員、ウケツ・ケの肩の上に、うにょうにょとした魔物が引っ付いています。
 それを取り除くために、ウケツを休ませてあげてほしいのです。
 本人はハイ、肩には魔物!
 後輩同僚心労マックス!
 救う手立てはウケツを休ませるしか……!

 実現可能で、危険ではなく、且つ周囲に危害が及ばないのであれば、どんな手段を用いてもいいので、ウケツ・ケを仕事から離れさせ、休ませてください。
 最終的には睡眠をとらせてください。
 いくらハイになっていたとしても、そろそろ十六徹目です。
 体はだいぶ限界に近いでしょう。

『ハンタイのサナギ』
 取り憑いた人の性質を反対にしようとする魔物。
 働き者を怠け者に、俊足を鈍足に。
 しかし、取り憑いた者の『本来の性質でありたいと願う意志』が強ければ強いほど、正反対の性質にし辛くなる。
 加えて、正反対の性質にし辛くなるだけではなく、本人からその正反対の性質が失われてしまう厄介な魔物。
 今回の場合で言えば、ウケツの『真面目に働く』性質と、『休みたい』と願う正反対の性質が相反し、『何があっても休まない』性質へと変わってしまう、そんな能力。
 ただし、本人のスペックは変わらないため、体が追いつかないことも多々ある。

 一度取り憑いたら取れない。
 ア〇ンアルフア的な接着剤よりも取れない。
 むにいぃぃともっちもっち伸びて、つぶらな瞳でウルウルと見上げ、引き剥がされまいと抵抗してくる。
 剥がすには羽化を待つしかないが、その羽化に必要なエネルギーが、本人とは正反対の性質。
 面倒くさいことに、取り憑いた本人からしかエネルギーを吸収できない。


作者コメント Comment
 みんなー! 徹夜してるーぅ?∈( ºωº )∋
 今まで最高何連続徹夜をしましたか? ウーパールーパーは最高五徹です。
 自慢はできません。徹夜をするなら休んでください。
 あの時のことは思い出したくない……∈( ´ºωº )∋


個人成績表 Report
夕夜・御影 個人成績:

獲得経験:97 = 65全体 + 32個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【もくてき】
寝かしつけるにゃー
ついでに遊ぶんだにゃー

【こーどー・しんじょー】
寝れない悪い子だーれにゃー!
そんな悪い子にはにゃーから肉球パンチをお見舞いするのにゃ!

さぁ行くにゃー!
『祖流返り』で黒にゃんこになって背後に回って乗っかり
貴様のほっぺに肉球をムニィィィ!
してやるにゃ!

そう、にゃーは今ぬこの姿にゃ!
きーさーまーにーはー!
この黒い毛玉の誘眠魔法をお見舞いしてやるにゃー!(>ω<)ノシ

にゃははは!
ぬくい、ぬくい!
今冬だから毛ももっふもっふにゃ!
どうにゃどうにゃ?

……もっふもっ…(すぴー…

ぐぬぅ…喜ぶが良いにゃー…
この肉球パンチをくらって立っていたのは貴様で記念すべき100人目にゃ…(すぴすぴ

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
ウケツ先生をどうやって休ませるか……お腹がふくれたら、眠くなって休みたくなるかも?
調理道具を持ち込んで、料理を用意してみますね

サーモンにジャガイモ、ニンジン、玉ねぎを食べやすい大きさに切って、ミルクとチーズをたっぷり使ったシチューを作って、トーストしたバゲットをつけて先生に召し上がっていただきましょう

お忙しいでしょうけど、仕事のクオリティを上げるにはバランスのいい食事も大事ですよ

カリカリにトーストしたバゲットなんかは、噛むことで頭も活性化するそうですから

眠くなったら……少し仮眠をとられては?

仮眠して頭も体もリフレッシュしたら、目覚めたあとの仕事の精度もスピードも上がって、いい仕事になりますよ!

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
えー、まーたまたの謎未知の魔物?でも完全体じゃないっぽいのかな。蛹だし。
これって何蛹なの?蛾蛹?蝶蛹?調子乗った蛹?その他蛹?これが実は成体系?
なんでもいーけど、面白いのがいいなー。完全に羽化ったら、めちゃくちゃ愉快な物体が流れ出たりしてくれない?

とりまザコちゃんはこの蛹であーそぶ。
そもそも、この蛹によってエネルギー吸い取り奪われてるってなら、これさえ貰……取っちゃえば、全部まるっと解決完了でしょ?
できるかは別として。

とりままずは出来うる限り引きちぎれるか、限界までつまんで引っぱろ。部分的にえぐれたら?それはそれ。それでも羽化るかもだし。
ザコちゃんの【魔物学】でその辺の知識あればいーんだけど。

蓮花寺・六道丸 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
アドリブ絡み歓迎
ウケツどのには敬語で喋るぞ

まずあのかっちりした服を着替えさせよう
うっかり(そううっかり)水をかけてしまって
たまたま(そうたまたま)持ってた拙僧の服(複製前の物質的なもの)に着替えてもらう
着付けは拙僧がしよう。これで少しはゆとりも出来ようて

次に線香を炊く
用途は色々あるがこれは純粋に香りを楽しむためのものだ
リラックス効果のあるラベンダーを選んでみた

そしてとどめにララバイで子守歌を奏でよう
職業技能の『演奏』でがまんを下げるオマケ付きだ

サクラ・ブラディー 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
なんというか自分のパフォーマンスが落ちても働かなきゃいけないと思い込むようになるとは難儀じゃのぉ・・・

取り敢えず、本人の意思は無視してでも休ませればよいのじゃな?
だったらまず無駄だと思うのじゃがカウンセリングモドキでもしてみようかの
信用、精神分析、空気察知、ハッタリ、会話術、占い あたり使ってみようかの
聞いてみたいことは職場に無理して働いていて細かいミスを連発することにどう思ってるのか聞いてみたいのじゃ

まぁ、カンセリングで落ち着いてくれればよいのじゃが・・・

駄目だったら実力行使じゃ
布団で簀巻きにして少し暗い部屋に放り込んでくれるわ
その上でで清廉のオルゴールでリラックスできるようにしてくれるのじゃ

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:97 = 65全体 + 32個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
仕事が終わらないなら減らせばいい。
正攻法でウケツさんを助けます。
事務の一族の底力を見せてあげますよ!

ウケツさんと蛹に【勇者原則】
いつもお世話になっているウケツさんのお困りごと、解決いたします!

後輩職員さんに段取りをお願いし、上の決裁が必要なら校長に直談判でお願いし、職場体験として受付業務に潜り込む

後輩職員さんと連携して、ウケツさんの仕事を減らす

父(自己紹介参照)から学んだ書類仕事・現場仕事
【事前調査】の仕事
法律・帝王・従者・経済学が生かせる仕事など
得意分野を優先して回してもらい
不明点は【推測】した上で後輩職員さんに確認し
【信用】をフル活用し
ひたすら事務処理、処理、処理!
数をこなします

アドリブA

リザルト Result

「寝れない悪い子だーれにゃー!」
「わっ! なんですか?!」
 15徹。
 尋常でない徹夜記録を、現在進行形で塗り替えていっている【ウケツ・ケ】のその背中。
 もっふりとした黒い毛玉が飛びついてきて貼り付く。
「そんな悪い子にはにゃーから肉球パンチをお見舞いするのにゃ!」
 もっふりとした黒い毛玉、【夕夜・御影(ゆうや・みかげ)】は、実にもふもふな黒にゃんこへと祖流還りを果たし、ぷにっぷにの肉球を、ウケツの頬へむにぃぃぃ、と押し付けた。
「きーさーまーにーはー! この黒い毛玉の誘眠魔法をお見舞いしてやるにゃー!」
 うにゃうにゃうにゃー!
 御影がぽふぽふ肉球を押し付けている様子を、教室の陰から覗く後輩職員。
「寝不足の時の子猫×肉球のコンボは最強……! 猫は吸うものですし! そのまま吸って癒されて寝落ちてもいいんやで、先輩!」
 願いは切実。
 ウケツが睡眠をとる、そのカギはこの黒子猫が握っていると、誰もが思った。
「にゃははは! ぬくい、ぬくい! 今冬だから毛ももっふもっふにゃ! どうにゃどうにゃ? ……もっふもっ……」
 突如、かくん、と首が垂れ下がる御影。
「おや、眠ってしまわれたようですね」
 なんてことの無い風に呟き、保健室に向かうウケツに、後輩職員は肩を落とした。
「ぐぬぅ……喜ぶが良いにゃー……。この肉球パンチをくらって立っていたのは貴様で記念すべき100人目にゃ……」
 すぴーすぴー。
 ミイラ取りがミイラ。
 眠り込んでしまった黒子猫の、そんな寝言が廊下に寂しく響いていた。

 さて、黒子猫もふもふチャレンジが失敗してしまい、後輩職員が肩を落とす中。
 立ち上がったのは赤く燃える髪を揺らす【チョウザ・コナミ】。
 彼女は眠らないウケツを眠らそうと奮起している、訳ではなく。
「えー、まーたまたの謎未知の魔物? でも完全体じゃないっぽいのかな。蛹だし」
 彼女自身の知的好奇心を満たすため、そっと足音を忍ばせながら、鬼のような量の書類をこれまた鬼のように片付けていくウケツの背後へ忍び寄る。
 チョウザはウケツの肩付近でうにうにしているハンタイのサナギを見る。
 黒い丸薬のような二つの目が、愛らしい小動物を彷彿とさせる。
(これって何蛹なの? 蛾蛹? 蝶蛹? 調子乗った蛹? その他蛹? これが実は成体系?)
 ふに、突いてみる。
 サナギにもちい、と指が深く沈んだ後、すぐさま元の形へ戻る。
 凄まじい弾力性である。
(ま、なんでもいーけど、面白いのがいいなー。……あ、完全に羽化ったら、めちゃくちゃ愉快な物体が流れ出たりしてくれない?)
 ぷに。サナギを人差し指と親指で摘まみ、後ろへ引っ張りながら後退していく。と。

 む
  に
   い
     い
      い
    い
   い
    ぃ 
   ぃ
  ぃ

 ぱち、くり、目が点。
 サナギを引っ張れば、引き千切れるどころか伸びて伸びて伸びまくる。
 このままうんと引っ張っていけば、軽く校庭一周分くらいは伸びそうな勢いである。
 チョウザはぱ、と指を離す。
 しゅん。残像が生まれる音がして、次の瞬間には何事もなかったように、ウケツの肩に乗っているサナギ。
 驚くべきはハンタイのサナギがものすごく引っ張っても取れないことよりも、ウケツの上着である。
 あれだけ引っ張っていたのに、形ひとつ崩れない。
 皺もない。
「ええ……。そのスーツどうなってんの? 強力な接着剤でくっつけてるの? それとも鉄でも入ってんの?」
 思わずといった風にウケツに聞けば、はて、と首を傾げた後スーツを摘まんで肩を見る。
「どこにでもある上着ですが……」
「あ、そう」
 もーいーや。
 チョウザが言えば、首を傾げながらウケツは『では、失礼します』と言って去っていく。
 くるり。
 後輩職員の方を見て一言。
「あの素材研究したほーが良くない? 学園」
 『あの素材』が、サナギについてなのか上着についてなのかは言わなかった。

「なんというか、自分のパフォーマンスが落ちても働かなきゃいけないと思い込むようになるとは難儀じゃのぉ……」
 憐れむように零す【サクラ・ブラディ―】に同調するように頷く【蓮花寺・六道丸(れんげじ・りくどうまる)】は、ゆっくりと頷いた首を上げる。
「眠らせない、という拷問があるくらいだ。ウケツどのの受けている苦しみは凄まじいものであろう」
 廊下の陰、自身の背後にいる後輩職員を見るサクラ。
「取り敢えず、本人の意思は無視してでも休ませればよいのじゃな?」
「はい。そうすればサナギは羽化して離れるでしょう、と資料に」
「幾ら言っても休まぬというなら最悪は寝床に縛り付けてでも寝かせるしかあるまいが、それはそれで身体に良くない。気も咎めるしの……」
 頭を悩ませる六道丸に、降ってくるのは天啓。
「だったらまず無駄だと思うのじゃがカウンセリングモドキでもしてみようかの」
「だがいくらウケツどのの意思が強いと言えども、肉体に抗うには限度があろう。ここは物理的にリラックスさせて寝落ちを計ってみよう」
 同時に呟いた後、お互いに顔を見合わせた。

 いっけなーい! 遅刻遅刻ぅ!
 拙僧は蓮花寺 六道丸! ぴっちぴちの(見た目)17歳リバイバル!
 今、とっても遅刻しそうで急いでいるんだ! 何で遅刻しそうなのかって? それは知らぬ(素)。
 兎にも角にも、バケツ一杯の水を抱えながら拙僧、廊下を走ってるの!
 もうすぐ廊下の角……あっ、あぶなーいっ!!

 ドーンっ!

「いったーい……でござろう」
「すいません、前方不注意でした。お怪我は?」
 目の前で手を差し伸べてくれているウケツどの。
 ビシャッ。
 これはまさか――水?!

「まことに済みませぬ、ウケツどの……。詫びというわけではないのですが、すぐに干してまいりますゆえ、此方の服に着替えて下され。拙僧のものですが、着られぬということもありますまい」
 びっしゃりと、頭の先からつま先まで濡れてしまったウケツへ、詫びの姿勢も込め、差し出すのはたまたま(そう、たまたま)持っていた六道丸の服。
 いわゆる和服。
 ゆったりとしたシルエットのそれは内部に空間も多く、随分とゆったりできそうな締め付けないスタイル。
「あ、いえわたしは」
「着方が分からぬ? 相、分かった。拙僧が着付けてしんぜましょう」
 ウケツが断る暇も与えず、手早く服を着替えさせ、ウケツはいつの間にかあのかっちりした服からゆったりとリラックスのできる服へと変わっていた。
「それでは干して参りますゆえ、失礼いたす」
 すったかたー。
 まるで嵐のように。
 そう、いつも突然やって来る修羅場にも負けず劣らずのスピード感で六道丸は去っていく。
 廊下に残されたのはウケツただひとり。
「……なんだったんでしょう」
 首を捻りながらも仕事に戻ろうとするウケツを、しかし運命は許さない。
「ちょいとそこの受付職員さん」
「わたし……ですか?」
「そうじゃ、何か悩みなどはないじゃろうか?」
「悩み、ですか……。特にはありませんね」
 ウケツに話しかけたのは、廊下で机と椅子を置いて店を開いているサクラ。
 営業スマイルで乗り切ろうとするウケツに、サクラは手を引いて椅子に座らせる。
「まあ、座りんし。なんか、顔色が悪く見えてな」
「そんなに悪いですか? 顔色」
「悪い」
 サクラははっきりと肯定する。
「聞いた話、ここ最近は随分とひょうきん……おもしろ……普段のおぬしでは考えられぬような失敗ばかりしてると聞くぞえ。そのことについて、どう思っているのか聞きたいのじゃ」
 眉を下げ、実に心配そうな表情を浮かべるサクラ。
 ウケツは、心底悩んだような表情を浮かべる。
「わたし……そんなに失敗をしていましたか?」
「なんと、無自覚であったか」
 意外や意外。
 悩みどころか、失敗をしていたという自覚すらなかったウケツの元へ、ほんわり届くミルクと焼いたパンのいい匂い。
「お忙しいこととは思いますが、仕事のクオリティを上げるにはバランスのいい食事も大事ですよ」
 カタン。
 木のトレーをウケツの目の前の机に置いた、【ベイキ・ミューズフェス】。
 その上にはほこほこと湯気を立てるシチューとバゲット。
 四角い銀紙に包まれたバターも添えて、ウケツの目の前に出される。
 それはウケツに、幸せな家庭の食卓を幻視させる。
 廊下なのに。廊下なのに。
(お腹がふくれたら、眠くなって休みたくなるかも?)
 そう考えたベイキの手料理。
 女の子の手料理。
 食べないわけがない。
「ああ……。では、いただきますね」
 働かない頭で手に取ったものは、銀紙に包まれたバター。
 彼はその銀紙を破り。
「って、先生。それはバゲットに付けるバターです。キャラメルや飴じゃないから、そのまま食べるものでは……」
「甘味は頭脳労働に必須ですから」
 それは甘味ではない。油脂である。
「先生、先生。それは先生のハンカチじゃなくて、私のスカートです! 手や口元を拭わないでください!?」
 ウケツが油脂で濡れた手指を拭くのはベイキのスカート。
 相当疲れているのだろう。
「……あとで洗えばいいですけど」
 よくない。

「ごちそうさまでした」
 食事を平らげたウケツは、さて。と立ち上がる。
「おっと、どこへ行くのじゃ?」
「ええ、仕事に戻ろうかと」
 食事を取ったことで、休憩を取ることができたと本人は言っている。
 しかし、肩のサナギは消えていない。
 未だ眠ろうとしないウケツを見て、顔を見合わせる。
 よろしい、ならば実力行使だ。
「簀巻きなのじゃー!」
「うわ?! な、なにを」
 サクラがどこからか調達してきた布団でウケツをぐるぐる巻きにする。
 ふんわりふっかり。
 それに重ねるようにしてベイキがぐるぐる巻きにしたのは、これまたどこかから持ってきたロープ。
「簀巻き、一丁上がりです!」
 ベイキが転がす、ウケツの簀巻き。
 転がったウケツを見下ろす、赤い髪。
「だれか運んだげてー」
「では拙僧が」
 簀巻きになったウケツの身体が浮かび、どこかへと運ばれる。
「あの、遊んでいる暇はないんです。本当に仕事に戻らないと」
「先生の仕事場はここですよ!」
 ごろん。
 ウケツが転がされたのは、カーテンを閉め、電気も消して薄暗くした、職員休憩所。
 漂う香りは六道丸が用意した、ラベンダーの香りの線香。
 流れる音はサクラのオルゴール。
 とどめとばかりに奏でられる、六道丸の子守歌。
 確実に寝させに来ている。
「ウケツどのの次の仕事はしっかりと休むことでありましょう」
 薄暗い部屋。
 落ち着く香りと眠りに誘う音楽。
 抗いがたい。しかし。
「1分後には……起こしてください……」
 言い残し力尽きたウケツは、がく、と意識を落とした。
「1分は短すぎます」
「起こすのをうっかり忘れてしまおう」
 呆れたように、すっかり寝入ってしまったウケツを見下ろすベイキに、うっかり(そう、うっかり)忘れてしまうことを提案した六道丸。
「……どちらにしろよくあれだけ徹夜して倒れないの。回復魔法とかポーションで無理できるものなのかのぅ?」
 首を捻るサクラは、ほどなくして穏やかな寝息の聞こえてきた職員休憩所に視線を向ける。
「なんにせよ、これであのサナギが取れるといいのだがな」
 六道丸は受付窓口の中を覗く。
「本当は仕事も代わりたかったが、拙僧にウケツどのの代わりになれるほど事務の能力はあるまいしの」
 そこでは、机を埋め尽くすほどの量あった書類が、【タスク・ジム】によってあっという間とまではいかないものの、コツコツ、コツコツと片付けられていた。
「事務の一族の底力を見せてあげますよ!」
「タスクくんがちょうど職場体験に来てくれて助かるわ」
 膨大な量の書類に記入する、先輩受付職員が言う。
「お役に立てているようで、良かったです」
 実際のところ、今日、受付窓口内で職場体験をするという予定はなかった。
 ウケツを休ませてほしいと懇願した後輩職員の、なにより、既に15徹もしていたウケツのため、タスクが【メメ・メメル】学園長の所へ『職場体験をさせてほしい』と直談判に行ったところ。
『面白そうだからオッケーだぞ☆』
 と返事をもらえたため、こうして職場に潜り込んでいる次第である。

 仕事が終わらないのなら減らせばいいじゃない。
 byタスク・ジム

 受付窓口内では、仕事を手伝うタスクの他、緊急でヘルプに駆り出された事務経験者が数名、せっせかっせっせと働いている。
 無言と筆を走らせる音ばかり響くのも気まずいのか、所々で手を止めない程度に私語も混ざる。
「今まで最高何徹した?」
「6徹」
「私7徹」
「何徹目までだったら仕事できたー?」
「5徹くらいじゃないですか?」
「3徹目はむしろ眠すぎて使えないよ」
 聞くもクレイジー、混ざるもクレイジー。
 そんなクレイジーすぎる会話を耳にしたタスクは、当然といえば当然でもあるが、とても引いていた。ドン引きである。
「ま、それにしても15はやりすぎね」
「効率落ちますしね」
 ウケツの異常性で花開く話題。
 それでも侮蔑や嫌悪などのマイナスな感情は見受けられない。
 どちらかと言えば、いたずらした子供を宥めるような。
 しょうがないなと言いながらも笑ってくれるような、暖かな空気。
 タスクは、窓口内に漂うウケツを慕う、そんな空気にほっこり胸を暖かくする。
(……そういえば、ハンタイのサナギ……。この名前、何かが引っかかる)
 首を傾げるタスクは、ウケツの机の上、一枚の資料を見付ける。
「これ、何ですか?」
 後ろを通りがかった後輩職員に聞けば、彼女は資料に一通り目を通す。
「あ、これ、ウケツ先輩がまとめていた掲示板に貼りだす予定の調査依頼ですよ。たしかまだ、清書していなかったはずです。えっと、内容が……」
『農村に『ハンタイのサナギ』が異常発生している。親である『セイシツチョウ』が潜んでいる可能性がある。至急、調査を求める』
 ガタン。
 椅子を鳴らして立ち上がるタスクは、廊下にまだいるはずの仲間たちに向かって叫ぶ。
「ハンタイのサナギの羽化を阻止してください!」
 廊下にいる者たちにとっては、脈絡のない唐突な言葉。
 これに疑問符を浮かべるのはきっと当たり前のこと。
 しかし、そこは学園生。
 疑問に思いながらも、真っ先に起こした行動は、職員休憩所の扉を開けること。
 暗い室内に真っ直ぐ差し込む光。
 そんな光にも一切反応しない程、ぐっすり深くウケツは寝入っている。
 そんなウケツの肩に、サナギ。
 白くもちもちしたサナギの背中がぱっくり割れている。
 中から透明な、薄い黒の羽が片方、見え隠れしている。
 それは蝶の羽のような材質で、鳥の羽のような形。
 あるいはアークライトの翼とでも言えばしっくりくる、そんな形。
 アークライトの翼にしてはいささか禍々しいその羽は、少しずつサナギから出てこようと震える。
「どうする? 焼く?」
 チョウザが羽を指さし、火打石を構える。
「それは悪手です。下手したら先生まで燃えてしまいますよ」
 チョウザの提案を、ベイキが押し留める。
「15徹耐えるくらいじゃから、燃えても平気そうな気もするがの?」
 冗談半分、きっと半分は本気。
 サクラの口から飛び出した冗談に、苦笑いを浮かべながらも六道丸が否定する。
「ウケツどのはよもや、そのような魔物染みた肉体はしておらぬと思うぞ」
 遅れてやって来たタスクは、厳しい目つきでサナギから出ている羽を睨みつける。
「魔物のサナギですから、魔物が羽化するのは当然のことですもんね……!」
 ひと際大きく羽が震える。
 来るか。
 職員休憩所に満ちる緊張感。
 各々が構える武器。
 ピリピリとする緊張が最高潮に達した、その時。
「うにゃにゃにゃにゃー!」
 間を縫い、弾丸のように飛び出てきた黒い塊。
 ぴょこぴょこ猫耳、あと尻尾。
 保健室でぐっすり眠り、元気満タン、遊ぶ気満々な御影である。
「遊ぶのにゃー!」
 元気いっぱい、寝ているウケツを起こそうと近付く御影。
「おっきるのにゃー!」
 その肩に繰り出す猫パンチ。
 しかしそのパンチの下にはサナギの羽が。
 ぷちぃっ!
「あ」
 誰が発したのか分からない、唖然とした声。
 サナギから出たばかりの薄い羽は、思った以上に脆かった。
 ころり、足元に転がるサナギの残骸。
「うにゃ?」
 きょとんとひとり、無残に潰された羽を手にくっつけ、御影は首を傾げた。

「……はっ!」
 がばり。
 深い眠りから覚醒したウケツは、簀巻きで自由にならない体を曲げくねらせる。
「今、何時ですか?!」
 カーテンの隙間から流れ込んでくる光はオレンジ色。
「今、夕方ですね」
 ウケツがしっかり眠っているか、見張りをしていたベイキが微笑む。
「仕事が」
「ああ、それなんですが」
 ベイキが言いかけたところで、休憩所の扉が開く。
「あ、起きたんですね、ちょうどよかった」
 中を覗くのはタスクと後輩職員。
「ウケツさんのお仕事、本人のサインが必要なもの以外は終わらせました!」
 ぽかんと表情を浮かべるウケツに、後輩職員が話しかける。
「みんな、先輩を心配していたんですよ」
 簀巻きから解かれ、救出されたウケツは、未だ夢の中にいるような足取りで窓口内へ向かう。
 そこには、随分と減った紙の束と、しばらくぶりに見た机の模様。
 ウケツが呆然としていると、上着の裾を引かれる。
 見下ろせば、保健室に連れて行ったはずの猫の少女。
「にゃーは頑張ったのにゃ。ご飯くれにゃ」
 マイペースにご飯を強請る御影に、ポケットの中に手を突っ込めば、ペンと間違えて入れていた煮干し。
 鞄の中を漁れば、インク瓶と間違えて煮干しの大袋が入っていた。
「どうぞ」
「ありがとうにゃ!」
 にゃーにゃー言いながら去っていく御影の後ろ姿を見送り、職員たちに振り返るウケツの顔は笑んでいた。
「ありがとう、ございます」

「先輩ー、量が多いですよぅ」
「文句言わない。これも、それも、全部ウケツくんが引き受けてくれていたとはいえ、任せっきりにしてたのは私たちなんだから」
「うう……。はぁい」
 あの日を境に、ウケツが担っている仕事は、職員内で分担することによってほんの少し減った。
 代わりに、とある受付職員はその受難を甘んじて受け入れることになる、のだが。
(……ま、誰も倒れることの無い幸せな職場ってことで)
 けして受難ばかりでないことに、後輩職員は微笑んだ。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
とある受付職員の受難
執筆:宇波 GM


《とある受付職員の受難》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 1) 2020-02-04 00:03:03
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。
よろしくお願いします。

さて、どうやって先生をスヤァとお休みさせちゃいましょうか。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 2) 2020-02-04 00:16:59
え、それってなに蛹?蛾蛹?蝶蛹?その他蛹?
蛾蛹かその他蛹が面白くていーかな。蝶はザコちゃん好きじゃないから。
…名前に入ってる?あー、わりと失敗。持ち上げられがちで好きなモチーフ題材じゃない。

ザコちゃん蛹で遊びに来てる。
取れない、ってだけで、引きちぎれないとも、切れないとも、砕けないとも言ってないよねぇ?
挙句の結局、エネルギーを吸収さえしなくなればいーんでしょ?ふふ。

《新入生》 夕夜・御影 (No 3) 2020-02-04 09:44:20
にゃはははははは!
ゆうがく最強の黒にゃんこ!
夕夜 御影だにゃー!!(そういう遊び

眠れなくてねむねむな人がいるって聞いたにゃ!
そんな人にはにゃーのこの毛玉と肉球パンチで

即落としてやるのにゃー!ムニ(ノ)*´꒳`*(ヾ)ムニ


《ゆうがく2年生》 蓮花寺・六道丸 (No 4) 2020-02-04 10:11:40
芸能・芸術コースの六道丸だ。よろしく。

眠れない……というのはキツいのう……。
寝かしつけるために楽器『ララバイ』の購入も視野に入れてはいるが、それだけでは効果が薄かろう。
最悪の場合は寝床に縛り付けてでも寝かせるしかあるまいが、それでは目覚めた時の体調に支障が出るであろうし、
あの手この手でリラックスさせて、意思とは無関係に寝落ちてしまう……という方向で考えておる。
例えば香を焚いたり、ゆったりした服に着替えさせたりとかな。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 5) 2020-02-07 18:40:19
遅刻帰国~!
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします!
いつもお世話になっているウケツさんのお困りごと、みんなで解決いたしましょう!

僕は、ウケツさんを手つだうことにより負担を減らす方向で考えています。
事務の一族の底力を発揮できたらと思います!