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波乱!! シュターニャ旅行記!!


ストーリー Story

 西部への玄関口『シュターニャ』。この街に数人の生徒が招かれ、この街で名の通る二人からある依頼を受けることになった。

 ちょっとその前に、この街についていきなりいろいろと言われてもピンとこないだろうから改めて説明しよう。
 まず、皆が通う魔法学園『フトゥールム・スクエア』がある『エイーア大陸』は、雄大な『ノルド川』により東西に分断されていて、その東西をつなぐ架け橋はたった一つしかない。そのもとに位置する街が『シュターニャ』だ。
 シュターニャはノルド川の東側に隣接していて、橋を越えた先には、東側よりも強力な魔物もいる。だからシュターニャは西部への玄関口と呼ばれていて、また西へ向かう人々を護衛したり案内することを生業(なりわい)としている人々が集まっている。
 活気あふれる商売の街。シュターニャを一言で表すのであればこれに尽きる。町民は活気に溢れ、路地は市や露店で埋め尽くされ、いつも陽気な掛け声が飛び交い、毎日とても賑やかだ。
「ようこそ『シュターニャ』へ。わたしはこの街で旅の案内務め――いわゆる観光案内業を営む【マチルダ・アベーユ】よ」
 そう、皆へ微笑みを向ける彼女は観光組合『アイネ・フォーリチェ』の代表者だ。
 まっすぐに伸びた長い金髪が彼女のしぐさ一つ一つでしなやかに揺れる。きっちりと純白の制服を着こなし、身なりは清潔に整えている。なのに自然と近寄りがたさはなくて、温和な優しい雰囲気は、さながら近所に住んでいるお姉さんと言ったところか、身近に感じる親しさがあった。
 観光案内人は西部へ向かう旅人に安全で快適なサポートを行う。温泉街へ行くための馬車、現地での宿泊施設、魔物から護衛してくれる傭兵まで、必要なものは全て手配してくれる。よって組合所属の観光案内人は知識豊富でサービス精神旺盛、有事の際にも機転が利く上に器量良しと評判がいい。もちろんマチルダも例にならってしっかり者で、その代表というだけあってその資質も飛びぬけている。
「私は【ニキータ・キャンベル】だ。傭兵組合で長を務めている。よろしく頼む」
 一方、落ち着いた口調で簡潔に挨拶をした彼女も、この街では有名人だ。どんな人かというならば、この街の屈強な傭兵を束ねる女組長、となれば言わずもがなどんな人物か分かるだろう。
 ニキータはすらりとした体型と、整った顔立ちをしていて、立ち振る舞いは舞台俳優を思わせるほどのオーラがある。これでいて、男性と見間違うほど短くした赤髪をしているのだから、世の女性が黙っていない。
 ちなみにマチルダは年に男性から何百通のファン(と言うよりもラブ)レターを貰っている一方で、ニキータは女性からだけでもファン(ラブ)レターを年間何千通も受け取っている。
 そして彼女は、大盾を背景に、無骨な姿をした長剣をふたつ交差させて背負っていた。なお、その特徴的な姿は傭兵組合のシンボルマークにも採用されている。

 ――さて、説明と紹介が長くなってしまったが、ここからが本題だ。
「今回、キミたちには私たちの訓練を受けてもらう。これは一応本番の意味も兼ねているんだ。我々はキミたちが通う学園殿へ緊急で傭兵や観光案内業を依頼することだってある。今回はその練習だ。内容は……なに、そんな難しいことじゃないさ」
「観光案内業担当と傭兵担当に分かれてわたしとニキータを『シュターニャ橋』を超えて西へ案内してね。そして数日かけて私たちを『トルミン』まで案内して欲しいの。訓練と言ってもこれも大切な課題よ。大変だけど、皆さん頑張っていきましょうね」
 トルミンとはもゆる煙と極楽の街。観光客が向かうルートとしては定番中の定番ともいえる。
「しかし、珍しい。トルミンは片道でも一日半はかかる。マチルダにしては長く休暇を取れたものだな」
「そうでしょう? わたし、この日のために頑張って残業して、次々来る仕事をいなし、部下へ引き継いで……ふふふ、どれだけ今日を楽しみにしていたことか……」
 そうぶつぶつと呪詛の様な言葉を口にするマチルダの目元にはわずかにクマがあった。その一方で両手には大荷物が準備されている。おい、満喫する気満々か。大切な課題に対する想いはどこ行った。
 ニキータはマチルダの話を聞いてふぅんと鼻を鳴らす。
「まぁ、私がわざわざ参加する必要もなかった気もするがな」
「そんなことないわ!!」
 すると食い入るようにマチルダが言葉を返す。
「いいかしら。傭兵と観光案内業がいかに大変で大切な仕事なのか、それをあえて経営トップであるわたしたちが教えてあげることで真の想いを皆さんに感じ取ってもらう必要があるのよ! あと、ニキータが頑張っているとことか、ニキータのかっこいいところとか、ニキータは本当は カワ……カワッ……いやっ! それ以上は恥ずかしくて言えないわ!! とととにかく! そういった思いを未来ある生徒たちに教えてあげるべきなのよ!!」
 なんか早口で怖い。どうしたマチルダ。というかこの課題はもしや、マチルダの大いなる想いにより組まれたプログラムではないだろうか。
 ……というか何を教わるの。一方的で重い愛情かな? もしかして受ける課題を間違えた?
 さておいて、ニキータはその言葉を聞いて優しく微笑む。
「そこまで生徒のことを想っているんだな。分かったよ」
 マチルダが想っているのはきっとほとんどがニキータのことだけですよ。まあいいや。いずれにせよ、マチルダの話す傭兵と観光案内業についてしっかりと学んでおく必要はありそうだ。
「では皆さん、ちゃんとわたしたちのデー……案内をよろしく頼みますね。案内のルートには魔物がいたり、盗賊も出たりします。わたしたちがいるからと言って油断は大敵ですよ」
 ついに本音を口にしかけたマチルダの方が油断している気もする。しかし、彼女が口にすることももっともで、前述の通り、橋を抜けてから街に着くまでには強力な魔物が潜んでいる可能性がある。
「この間も『ゴブリン』が観光客を襲って大変だったわ」
 マチルダが話すように細心の注意が必要だ。他にも草原や平野に出没しうる魔物が出るらしい。
「橋を渡ってから草原を抜け、キャンプで一夜を明かしてから今度は少し山地の麓を歩いていくことになるわ。足はこちらから馬車を手配するから安心してね」
 もう準備は完璧らしい。流石は観光案内業の長と言うべきか。
 さぁ、色々な意味で波乱が起きそうなこの課題。生徒諸君はいかようにして臨むのであろうか。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-03-14

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-03-24

登場人物 2/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《新入生》クルト・ウィスタニア
 ヒューマン Lv9 / 勇者・英雄 Rank 1
「まったく……彼女はどこに行ったんだ!」 「俺は魔法はさっぱりだけど……入ったからには、頑張ってみるさ」 「もう、だれも傷つけたくない。傷つけさせない。そのための力が欲しい」 [略歴]  以前はとある国で、騎士として活躍していた。  しかし、とある出来事をきっかけに国を離れ、パートナーと共に各地を旅していた。  その道中、事件に巻き込まれパートナーとはぐれてしまう。  人の集まる魔法学園でなら、パートナーの行方の手がかりがつかめるかもしれないと考え、入学を決めた。 [性格]  元騎士らしく、任務に忠実で真面目。常識人っぷりが仇となり、若干苦労人気質。 [容姿] ・髪色…黒。 ・瞳……淡い紫。 ・体格…細マッチョ。ちゃんと鍛えてる。 ・服装…学園の制服を着ている。が、若干イタイんじゃないかと心配もしている(年齢的に)。 [口調補足] ・一人称…俺。改まった場では「私」も使う。 ・二人称…君、名前呼び捨て。目上の人には「さん」「様」をつける。 ・語尾…~だ。~だろう。目上の人には敬語。 [戦闘] ・剣を扱う。 ・「もっと守る力が欲しい」。  そう思い、最近は魔法と剣を融合させた剣技を習得したいと考えている。

解説 Explan

1)目的
 観光案内業側と傭兵側に分かれて二人を案内してください。一行がトルミンに到着すればクリアです。敗北条件は、トルミンに着かない、ニキータ及びマチルダの戦闘不能、パーティの全滅です。

2)立ち回りについて
 【傭兵側】
 ・観光案内業担当の指示にしっかり従ってください。
 ・うまく連携して魔物を倒してください。
 (トルミン付近では盗賊にも警戒してください)
 ・移動時のトラブル対処をしてください。
 (馬車が壊れたり、動かなくなったり。進行ルートを確保したり)
 【観光案内業側】
 ・観光案内業としての気遣いと周囲への注意を怠らないようにしてください。
 ・傭兵への指示及び回復サポートをしてください。
 ※傭兵と観光案内業の担当比率は任せます。よく話し合ってください。

3)移動ルート(ステージ)について
 シュターニャ橋を渡ってから草原を抜け、キャンプで一夜を明かしてから今度は少し山地の麓を歩きトルミンへ向かいます。
 移動用の馬車は1台レンタルされます。参加者含めて全員が乗ることが可能とします。馬を誘導する人を観光案内業担当内で決めてください。
 なお、ルートには『ゴブリン』などの草原や平野に潜む魔物が出現します。
 大型の敵では『のけもの』の出現が観測されたこともあります。

4)NPCについて
 生徒たちに傭兵と観光案内業の指導をしてくれます。
 基本は戦闘に加わりませんが、パーティーがピンチの時にサポートを行うかもしれません。
 ・マチルダ・アベーユ:優しいお姉さん。回復魔法も使用可能。
 ・ニキータ・キャンベル:クールなイケメン(だが女だ)。魔導剣士です。なお両手で長剣を振ることができます。


作者コメント Comment
 はじめましての方ははじめまして! またの方はお世話になっております。へぼあざらしです。
 真面目な課題だと思った? 残念! ギャグモノだよ!
 しかしながら、戦闘エピでもあります。うまーく担当を決めて、面白いプランに仕上がるといいですね。
 みなさんでワイワイ盛り上がりながら楽しんでいただけると幸いです!!


個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:60 = 40全体 + 20個別
獲得報酬:1200 = 800全体 + 400個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
観光は好きだよ、ザコちゃん。
初めてをいっぱい見られるから。初見未知に足伸ばすのいーよね。
…でも馬車が苦…んー、むしろやだ。
グリフォン便のが数倍もふいし。
今からでも変えない?いっそ馬本体に乗っても…ダメ?馬って喉の皮膚ぶよっぶよなのに?えー。
…知らないよぉ?耳の長い小動物引き飛ばしても。

ならザコちゃんが案内側かー。【新鮮な野菜】で馬寄せ誘導かな。
ぶっちゃけザコちゃん、土地も国のこともぜーんぜん知らないよ?
代わりにどーでもいーこと話しとこ。
馬って人参の実より葉のが好きなんだってね。そのくせ馬車使いがちなお貴族様は、見栄映えで葉は投げ捨てて与えやがる。自分基準の価値しか考えてねーんだなー…ってやつ。

クルト・ウィスタニア 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:120 = 40全体 + 80個別
獲得報酬:2400 = 800全体 + 1600個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
護衛は久しぶりにやるな……。
あの頃の感覚を思い出してやってみよう。

傭兵側を担当する。
とはいえ人数も少ないし、多少は観光案内ができるように【事前調査】で会話のネタを用意する。
道中、依頼人に安心してもらえるように【会話術】や【信用】を活用する。
【野宿】の知識も使えそうだな。

移動中は【聞き耳】等で周辺への警戒を怠らないようにする。
戦闘になったら、ニキータさんにマチルダさんたちの守りをお願いしたい。
俺は魔物を引き付け、囮となろう。
深追いはしない。人数も少ないし、討伐ではなく護衛が今回の任務だからな。
ある程度倒したら撒こう。

道中のトラブルに対しては先輩方に助言をいただきつつ、積極的に対処していきたい。


リザルト Result

 生徒たちは、依頼元の傭兵団長【ニキータ・キャンベル】と観光組合代表【マチルダ・アベーユ】と共に馬車に乗り、目的地のトルミンへ向けて移動していた。
「護衛は久しぶりにやるな……」
 【クルト・ウィスタニア】は馬車に揺られながら、かつて騎士として過ごしていた日々を思い出していた。この傭兵の訓練を自身の経験と重ね合わせると、少し懐かしさを感じる。彼は一切気を抜かず、鞘に納まった『ルーンソード』をいつでも抜けるように抱え込んでいた。
「訓練とは言え、いい心がけだ」
 ニキータは注意を欠かさないクルトの様子を見て感心する。
「一瞬の油断が依頼人(クライアント)の生死を分かつ。引き続き気は抜かないように、な」
 一方で【チョウザ・コナミ】は馬に乗り、『新鮮な野菜(ニンジン)』の葉っぱを都度与えながらうまく馬をコントロールしている。馬車はあまり好まないらしく、道端に出てきた小動物を引き飛ばしても知らないよーとは口にしていたが、周囲への気配りは欠かしていないようだった。
「馬ってニンジンの根より葉のが好きなんだってねー」
「あらチョウザさん、詳しいのね」
 チョウザのトークに対して、マチルダは朗らかに返事をする。こうした他愛もない話をすることも、長い旅路では気を紛らわす観光業の大切な仕事だ。
「まーどーでもいいことなんだけどねー。見栄映えだけで葉は投げ捨てるなんて、お貴族様は自分基準の価値しか考えてねーんだなーって」
「ふむふむ、なかなか考えさせられる話ね」
「てか話は変わるけどー、この辺にゴブリンが出るってならさー、それも観光にしちゃえばいいのに」
「まぁ、ゴブリンは避けるべき敵ですから、観光にするのは難しいかもしれませんね……」
「ふーん。じゃー誰か企画計画してくれないかなー、『ザ・ゴブリンボコボコツアー』。あとザコちゃん、ゴブリンの呻き声の真似とかできっけどー。うー」
「フフ、確かに似てるかもしれないな」
 思わず笑みを浮かべるニキータ。だんだん観光案内人が板についてきたのかもしれない。そしてその気配りはトークだけではない。
「……おーっと、お客様方、静粛お静かにーっと。噂をすればなんとやら。草原名物ゴブリン様のお出ましお出ましーってね」
 チョウザはいち早く、遠方にいるゴブリンに気が付いたようだった。ゴブリンは少し高く生い茂った草むらに身を隠しているが、幾多のゴブリンを葬ってきたチョウザからすれば子供のかくれんぼ同然だ。ゴブリンの位置を認識したクルトはゆっくりと腰を上げる。
「周りのゴブリンは俺がやります。ニキータさんはもし馬車までゴブリンが上がってきたらマチルダさんをお願いします」
「あぁ、分かった。マチルダは私に任せてくれ」
 ニキータはそう言うとマチルダを片腕で抱き寄せ、もう片方の手で背負っている大剣に手をかける。
「ちょちょちょっとニキータ! だ、駄目よ、まだわたし……任せろだなんて心の準備が……!」
 マチルダは顔を真っ赤にさせ、ニキータの腕の中で悶えている。クルトはジト目でそれを眺め、色々と思うことはあったが――考えることをやめた。クルトは颯爽と馬車から飛び降り、ゴブリンの方へ駆け出す。
「あぁは言ったが、手を出す暇を与えるつもりはない」
 クルトはゴブリンの目の前に急接近し、それを一刀両断した。クルトは倒したゴブリンの他に周囲に敵がいないことを確認するとニキータへ合図を送る。そのクルトの手際を見たニキータはずいぶん感心したようだった。
「お見事」
 その言葉は端的ではあったものの、ニキータからすればこの上ないほどの賞賛に値するものだった。

◆ ◆ ◆

 日は沈み、野営の時。4人は焚火を囲み談笑していた。するとチョウザはふと思い出したようにして、仕留めたゴブリンを荷馬車から引きずり出した。
「さーて、みんなゴブ肉でも食べてみよーか。土の味すんだよー、コレ」
 チョウザはいたずらっけに笑みを浮かべる。
「おいおい、やめておけよ。そんなモノを食べて腹を壊したら大変だろう」
 ニキータは苦笑いをする。だが一方で、ニキータの片手には異臭を放つ何かが握られている。
「それよりもコレを食べるとイイ。私が作った栄養食だ」
 そう言ってニキータが差し出したのは、灰色に淀んだ液体で満たされたコップだった。いずれにせよ、これを飲めば腹を壊すことは間違い気がする。あまりの毒々しさにクルトは息を飲んだ。
「……俺は試されているのだろうか。これは毒の混入を確かめるとかそういうヤツなのだろうか?!」
「おいおい、疑うなよ。クセは強いが悪くないはずだ。そうだマチルダ、試しに飲んでみるか?」
 流れ弾に被弾したマチルダはひぃと言葉を漏らす。食べたくない気持ちとニキータの気持ちを無視できない二つの感情が天秤の上で揺れている。そんな涙目になっているマチルダを見て、クルトは居てもたってもいられなくなっていた。
「マチルダさんッ! 大丈夫です! 俺、栄養不足だったの思い出しましたッ!!」
 クルトはニキータから栄養食をひったくり、一気に口に放り込んだ。クルトは吐き気に襲われて、顔を真っ青にする。
 クルトよ、君は漢だ。
「ほう。クルトがそんなに景気よく飲んでくれるとは思わなかった。おかわりもあるぞ」
 そしてさようなら。
 よく見れば、ニキータの後ろには大鍋があり、そこから怪しい液体が吹きこぼれている。ニキータは笑顔で栄養食を差し出し、一方でクルトは絶望する。
「……ニキータさん。ちょっ……!」
 そしてその後、クルトの気分と腹の調子が最悪だったことは言うまでもないだろう。

◆ ◆ ◆

 翌日。一行は山地の麓を歩きトルミンへ向かっていた。この旅もあと少しだと考えると、ちょっとだけ名残惜しい。
 そして、トルミンまでもう少しで到着するというところのことだった。
「ククク、金目の物を置いて行ってもらおうか」
 一行の目の前に明らかにガラの悪そうな集団が道を阻むようにして現れた。チョウザは眉をひそめる。
「んー? 何かなあの珍妙奇怪な集団はー?」
「まったく、旅の終わりに盗賊とは無粋なものだ」
「フフフ、まぁいいじゃないかクルト。付き合ってやるとしよう」
 クルトとニキータは武器を抜き、合図とともに馬車から飛び出すと、ちぎっては投げ、ちぎっては投げといった勢いで次々と盗賊をなぎ倒していく。
「お頭! こいつ強すぎます!」
「なっ! 俺の部下がやすやすと! ……しかし、若造と女とはなめられたもんだぜ!!」
 盗賊の頭は剣を乱暴に振りかざす。しかし、それはニキータとクルトの剣で受け止められてしまう。
「ふっ、俺の攻撃を受け止めるとは大したもんだ」
「私たちをなめるなよ……さぁ、行くぞクルト! 力こそパワー! 私とクルトで二倍。そしてこの両手剣で威力四倍!」
「……それだけじゃないさ。俺たちの倍以上のやる気、勇気、元気、その他もろもろで威力百倍だッ!!」
 滅茶苦茶な計算式な気もするが、ニキータとクルトの倍以上の体格はある盗賊の頭が、二人の押し返しで吹っ飛んだ。団長は大きな岩壁にぶつかり、地面に転げる。
「おめぇら……絶対に許さ……!」
 しかし、盗賊の頭の言葉は途中で遮られる。盗賊の頭の前に、剣を向けるクルトがいたからだ。
「命までは奪わん。とっとと消えるんだな」
 かくして、盗賊の頭は逃げることを余儀なくされたのであった。
 
◆ ◆ ◆

「さーて、皆さまお待ちかね、正面に見えるのは、もゆる煙と極楽の街トルミンでございーっと」
 チョウザは大げさに手を向けて、目の前に広がる温泉街を紹介した。旅の紆余曲折を思い返すと、街の景色が一層格別に見える。皆は感嘆の声を上げてから思わず拍手した。
「ねぇ、チョウザさん。観光案内、どうだったかしら?」
「まぁザコちゃんとしては。初見未知に足伸ばすのいーよね。って感じなだけだけどー」
 そう返すチョウザに、マチルダは優しく笑みを返す。
「うん! その思いが強ければ、お客様も楽しんてもらえると思うわ。あともう一つ大切なのは最後までお客様を送り届ける強い気持ちよ」
 そう語るマチルダも、沈黙を通すニキータも、仕事を通じて色々な光景を目にしてきたのだろう。
 魔物の群れに襲われて、仲間を失った者。
 自然の脅威に打ち負かされて、なすすべなく命を失った者。
 皆をそんな目に遭わせたくないから、彼女たちは仕事を全うする。その為にも学園へ人員を要請することは不可欠だ。今回は訓練だけでなく、その意味を伝えたい彼女たちの思いがあった。(少し邪念もあったが)
「マチルダ」
「ええ」
 二人は顔を見合わせてから生徒たちへ笑顔を向ける。
「二人とも、上出来だ」
「本当に、よく頑張りましたね!」



課題評価
課題経験:40
課題報酬:800
波乱!! シュターニャ旅行記!!
執筆:へぼあざらし GM


《波乱!! シュターニャ旅行記!!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《新入生》 クルト・ウィスタニア (No 1) 2020-03-13 01:07:52
クルトだ。ギリギリの参加になってしまってすまない…。

俺は傭兵側を希望するよ。護衛は昔やっていたこともあるしな。
とはいえ、この人数だ。多少は依頼人と話ができるように、観光地についても調べておくことにしよう。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 2) 2020-03-13 12:39:52
ザコちゃんも護衛のつもりだったから被りみ?
そったらザコちゃん、観光業しつつ敵のちょっかいあった時だけ護衛回るかなー。

ぶっちゃけ馬誘導めんど……やらないつもりだったけどー、ゆーしゃ様不足の現状事実、しゃーなしでそっちもちらっと手出しかな。