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助っ人募集! グリフォンコンテスト!


ストーリー Story

「クゥー!」
 フトゥールム・スクエア第四校舎のわきには、厩舎が建っている。ここでは主にグリフォンが飼育され、部活の生徒たちがグリフォンの世話をしていた。
 その厩舎の一角で、グリフォンの元気な鳴き声が、厩舎の中に響く。
「よしよし。いっぱい食べろよ」
 ルネサンスの少女、【リサ・ストーンズ】が餌皿に飼料を入れる。真っ先に駆け寄ってきたのは体の白いグリフォンだ。彼がおいしそうに食べだしたのを見て、他の2頭も寄ってくる。
「クゥー!」
 最初に食べていたグリフォン……【シロ】がほかの2頭を威嚇する。手足だけが白いので【クツシタ】と呼ばれている体の小さいグリフォンはパッと飛びすさった。だが、餌皿に体が当たってしまい餌がこぼれる。
「クゥー」
 それを見逃さず、【ブチコ】と呼ばれているぶち模様のグリフォンがこぼれた餌をおいしそうに食べ始めた。
「こらこら、いっぱいあるんだからケンカせず仲良く食べろよ」
 リサが苦笑いしながら別の餌皿を差し出す。グリフォンたちが美味しそうに食べだしたのを確認して、目を細める。
「しっかし、困ったことになったなあ……」
 リサは頭をかきながらぼやいた。視線の先には2名の男女。男のほうは右足を、女のほうは左足をギプスで固め、包帯でぐるぐる巻きにしていた。
「まさか二人とも転んで足を折っちゃうとはね……」
 ヒューマンの少女、【コーナ・トーデン】はため息をついた。髪の短い、いかにも活発そうな少女だ。
「どうしよう……俺たち、このままじゃ今年のグリフォンコンテストに参加できないぞ」
 同じくヒューマンの少年、【オース・ケイン】も肩を落とす。こちらは眼鏡をかけ、温和な表情の少年だ。以上の3名が、『グリフォン愛好会』のメンバーだった。
「そうだよなあ……オレだけじゃあ、コンテストには参加できないしな……」
 そこまで言ったところで、リサは名案を思いついたかのようにポンと手をたたいた。
「そうだ、あいつらに頼んでみるとするか!」
「あいつら?」
 オースとコーナはそろって首を傾げた。

「グリフォンコンテスト?」
 次の日の放課後。教室に集められた生徒たちは、リサが発した単語に首を傾げた。
「そうそう。みんなで育てたグリフォンを自慢するお祭りなんだぜ!」
 リサが大雑把にまとめる。
「いや、それじゃ何もわからないだろ」
 オースがツッコミを入れ、説明を引き取った。
「グリフォンコンテストは2つの部門があるんだ。まずはグリフォンと一緒に歩いて、美しさやどれだけ人になついてるかを競う。今年は俺がグリフォンと一緒に歩くつもりだったんだけど、この足じゃ無理だから……みんなに頼みたいんだ。動物が好きだって気持ちがあれば、きっとグリフォンも応えてくれると思うんだ」
「その後、みんなでグリフォンに乗って速さを競うの」
 続いてコーナが話し出す。
「うちのグリフォンは人懐っこいから、初めて会う人でもちゃんと頑張って飛んでくれると思うんだ。私もグリフォンと一緒に飛びたかったんだけど、しょうがないよね……」
 生徒の一人が質問する。その2つの部門とも、リサが出るわけにはいかないのか?
「このコンテストはグリフォンを連れて歩く人とレースに参加する人は別々の人でないといけない、って決まりがあるんだ」
 オースがその疑問に対して答えた。 
「だからみんなに手伝ってもらおうってワケさ。なあ、手伝ってくれないか?」
 リサは両手を合わせて頭を下げた。コーナとオースも頭を下げる。さて、それにたいして生徒たちは……。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-05-12

難易度 普通 報酬 少し 完成予定 2020-05-22

登場人物 5/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《新入生》馬場・猿二
 ルネサンス Lv8 / 武神・無双 Rank 1
(未設定)
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。

解説 Explan

●成功条件
 グリフォン愛好会の3人を助けて、グリフォンコンテストに優勝してください。

●コンテストが始まるまでについて
 まずグリフォンと一緒に過ごし、信頼してもらう必要があります。
 対応する技能があること、もしくはグリフォンが好む餌やおもちゃをあげることで信頼してもらえるでしょう。

●グリフォンの美しさについて
 グリフォンと一緒に歩き、グリフォンの美しさを見せます。信頼できる人が隣にいることで、素の美しさを見せるでしょう。
 なお、一緒に歩く人数に制限はありません。ただし最低一人以上は一緒に歩く必要があります。
 誰も立候補しない場合はリサが一緒に歩くようです。

●グリフォンの強さについて
 グリフォンに乗って速さを競います。いわゆるレースです。
 なお、最大二名が乗ってレースに参加しますが、一名だけで参加することも可能です。その場合ハンデとして、おもりが乗せられることになります。
 また、途中で騎乗者が交代することも認められています。
 誰も騎乗しない場合はリサがレースに参加するようです。

●プランについて
 グリフォンと一緒に過ごすシーンは、全員が描写されます。
 そのあと、一緒に歩くシーンもしくはレースに参加するシーン、皆様が選ばれたほうが描写されます。
 レースに参加する際は先行や追い込みなど、簡単でいいのでレースの方針をお書き下さい。

●グリフォンについて
 今回愛好会が世話しているグリフォンは、以下の3頭になります。皆様はお好きなグリフォンをパートナーにしてください。
 なお、人数がそろえばパートナーにするグリフォンを統一する必要はありません。

 ・シロ
 気が強い性格でこの厩舎のボスです。なついてもらうには手間がかかりそうですがなつけばすごい力を発揮してくれるでしょう。

 ・クツシタ
 臆病な性格です。体重が軽く体も小さいですが、飛ぶ力は強いようです。

 ・ブチコ
 賢い性格で、手間はかからないでしょう。ただ気を抜く癖があるので注意しましょう。


作者コメント Comment
 はまなたくみです。
 今回は魔法学園なので、グリフォンと一緒に楽しめるようなエピソードをご用意させていただきました。
 動物好きな方もそうでない方も、どうぞお気軽にご参加ください。


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆方針
『ブチコ』のレース担当。
先輩として頑張ります

◆事前準備
コースと出走者について『事前調査』
また準備や訓練してるよ…と猿二やレーネたち後輩に伝えられるよう、日報や、同行に説明など先輩らしい努力を。

◆行動
準備はまず実際に騎乗して『生物騎乗』の腕をブチコに見せる正攻法で。
力を合わせれば勝てる、だからちゃんと言う事を聞けという信頼と上下関係を育み、レース時に『得意を伸ばす』事ができるように。

レースでの方針は先行逃げ切り…と見せかけて『追い込み』
シロのように気の強いタイプには『挑発』したり、臆病な子は『ハッタリ』を利かせるなどペースを乱す『創意工夫』

最後は気を抜かぬよう叱咤激励しラストスパートを。

朱璃・拝 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:156 = 52全体 + 104個別
獲得報酬:4800 = 1600全体 + 3200個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
私はシロ様に騎乗してレースに出場

先ずはシロ様とお近づきにならなければ。高級なお肉を料理して美味しい餌を作って食べてもらいましょう。勿論他の2頭にも食べてもらいますわ。シロ様は気が強いボスという事なので、目の前で瓦割りや厚い板を拳で打ち抜く等すれば力を認めて信頼してもらえますかしら?

レースの際は生物騎乗スキルを用い、序盤は力を抑え他の出場者の様子を伺いつつ放されないようにだけ注意。前を塞がれたりと危ない時はやせーの勘や緊急回避を用いて躱します。そして視覚強化で前を走るグリフォンの僅かな隙を見の化さず捕えたら即断即決で一気にスパート、精密行動でシロ様に最良のルートを走ってもらい追い込みをかけますわ

馬場・猿二 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【シロ】と一緒に歩く!

どうやったら懐いてくれるかな!
仲良くするには!積極的にコミュニケーションを取る!
蹴られたり!引っ掻かれても!【心頭滅却】で我慢我慢!

(生物騎乗、子供親和)で危害を加える意図を感じさせない!
加える気もないぞ!

ブラッシングしてあげるの!毛艶が良く見えるよね!
あと【干し肉】だよ!馬力つけて!
先輩達もレース頑張ってね!

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
なかなか素敵なコンテストね。

まずは信頼関係ね。
【生物騎乗】があるから大丈夫そうだけど、折角だから寝食をコンテストまでの間一緒にするわ。
【野宿】でコンテストまでの間泊まり込みね。【汚れ耐性】も持ってるし私自身もきにならないわ。
厩舎も【掃除】でピカピカにしておくわ。

グリフォンは「クツシタ」でレースに参加するわ。
クツシタは臆病だから馬ごみだと神経磨り減っちゃうかも知れないから逃げ、追い込みが良さげかしら。
飛ぶ力が強いクツシタは瞬発力がありそうだから、逃げよりも追い込みがあってるかもね。
だからゴール直前まで後方で待機して最後に一気に差し抜ける方向でいくつもりよ。

レーネ・ブリーズ 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
クツシタさんと「いっしょにあるく」部門に参加します。

グリフォンさんたちにはのせてもらったり
はこんでもらったりします。

ですから、とってもたいせつな場面のデモンストレーション、
「けがしてしまったひとをやさしくはこぶ」ということで
トーデンさんかケインさんにのってもらって
わたくしがつきそってあるきたいです。
魔法薬生成(治療)の技能で痛み止めは用意しますが、
もちろん悪化させないようにおいしゃさまにも相談して。

一緒に過ごす
急にあるきだしたり、急にまがったり、
急にとまったりしない、「ゆるやかな動き」を練習します。
グリフォン愛好会のひとといっしょに。

本番
笑顔で、でも万一にそなえて回復できる楽器も用意しますね。

リザルト Result


 第四校舎そばの厩舎の一角。そこに生徒たちとグリフォンのにぎやかな声が響いていた。
「よろしくね、シロ!」
 グリフォンたちに積極的に話しかけているのは【馬場・猿二】だ。顔中に笑みを浮かべ、彼らと仲良くなろうとしている。
「クゥー!」
 話しかけられたシロはじろりと猿二をにらむ。なんだこの人間は、とでも言いたげな目つきだ。気の弱い人間なら思わず後ずさってしまうだろう。しかし猿二はひるまない。
「僕、シロと仲良くなりたいんだぞ! ダメ?」
 小首をかしげてみせる。シロは身じろぎもせずじっと猿二を見つめ返していたが……。
「クゥ」
 と一声鳴くと興味をなくしたように歩いていってしまった。
「うーん、なかなか手ごわいんだぞ!」
 だが、猿二はあきらめない。次の手を取り出す。
「ほら、干し肉だよ! これ食べて馬力つけて! ……って、あれ?」
 ポケットをがさごそと探ってみるが干し肉はどこにもない。どうやら用意はしたのだが、持ってくるのを忘れてしまったようだ。
「どーしよどーしよ! 何かほかにあげられるものないかな……」
「猿二様、私に考えがありますわ」
 そこに声をかけたのは【朱璃・拝】だった。彼女もシロをはじめとするグリフォンたちと信頼関係を築こうとして、ある秘策を練っていた。
「これをシロ様に食べていただくのはいかがでしょう?」
 言葉とともに朱璃が取り出したのは肉の塊だった。
「なるほど、これをあげればいいんだね!」
 朱璃が取り出したのはただの肉ではない。温泉の町トルミンで丁寧に育てられたブランド牛の肉だ。人類が食べても美味しい肉だ、当然グリフォンが嫌いなはずはない。
「お待ちください。そのままあげてもよろしいのですけれど……」
 そう言うと朱璃は用意したナイフで肉を丁寧に薄切りにしていく。調味料で味をつけ、彩りに野菜も添えて……。
「カルパッチョの出来上がりですわ。シロ様の分だけでなく、ブチコ様やクツシタ様の分もありますわ」
「わー、おいしそうだね! さっそくあげてみようか!」
 猿二は離れていたシロを追いかけ、目の前に皿を差し出す。シロはじろっと皿を見た後、ふんふんと匂いをかいでみる。
「クゥー!」
 これはおいしいものに違いない!
 シロは一声高く鳴くと、一切れ口にした。
「あ、食べてくれたよ!」
「それはよかったですわ。では、ブチコ様とクツシタ様にもお出ししましょう」


 猿二と朱璃がグリフォンを餌付けしているころ、厩舎の中では……。
「お家をピカピカにしてあげれば信頼してもらえるんじゃないかしら?」
 【ニムファー・ノワール】は厩舎の掃除に取り掛かっていた。
「それに、わたくしが泊まる場所も確保しないとね」
 グリフォンたちと寝食をともにすることで信頼を勝ち取る、というのがニムファーの作戦だった。ふんふんふん、とゴキゲンな鼻歌交じりに、手を動かしていく。
「クゥー……」
 グリフォンの声がして、ニムファーは振りむく。手足だけが白い小柄なグリフォンがニムファーのほうを見つめていた。
「あなたがクツシタさん?」
 ニムファーが声をかけると、グリフォンは一、二歩あとずさった。どうやらニムファーのことを警戒しているようだ。
「大丈夫、怖くないわよ。あなたと仲良くなりたいの」
 ニムファーはクツシタを怖がらせないようにそっと近づく。ニムファーがまとう柔らかい雰囲気を察知したのか、クツシタはそれ以上あとずさることなく、ニムファーを迎え入れる。
「よーしよし……」
 ニムファーに首筋をなでられ、クツシタは甘えたような声を出した。
「クゥ~」
「かわいいわね……いけない、掃除の続きをしないと」


「……というわけなのですが、どうでしょうか?」
 一方そのころ、【レーネ・ブリーズ】は保健室で医師と相談していた。【リサ・ストーンズ】、【コーナ・トーデン】、【オース・ケイン】といったグリフォン愛好会の面々も同席している。
 レーネの考えは、『けが人をやさしく運ぶ』という大切な場面のデモンストレーションを行うことだった。そのために、コーナかオースを実際に乗せて美しさ部門に参加しようというのだ。
「もちろん痛み止めは用意するつもりですし、怪我が悪化しないように気を付けます」
「ふーむ……」
 医師はがりがりと頭をかきながらうなった。
「僕としては、グリフォンコンテストのことはわからないからその演出については口出しできない」
 集まった面々は固唾をのんで医者の言葉を待った。
「だが医者として、今の時期は骨がくっつくまでできるだけ安静にしていなきゃならない、としか言えないな。だからコーナ君とオース君をグリフォンに乗せるのは許可できない」
「そうですか……」
 レーネは少々寂しそうに答える。
「でもレーネのアイデアはすっごくいいと思うぜ! 実際のけが人じゃなくて、誰かにけが人の役をやってもらえばいいんじゃないか?」
「誰を運ぶのよ? 私とオースは許可が下りないから出られないし、リサはブチコの付き添いがあるでしょ?」
 リサとコーナの会話が途切れ、保健室に沈黙が下りた。そのとき。
「あれぇ~? 今日はお客さんいっぱいですねぇ~」
 【シルフィア・リタイナー】が通りがかった。
「あ」
「あ」
「あ」
「え、なになに? 何なんですかぁ~?」


 【フィリン・スタンテッド】がコースの下見から戻ってきたとき、運動場ではグリフォンと生徒たちが思い思いに交流していた。
「ただいま」
「あ、お帰りなさい!」
 シロにブラシをかけていた猿二が声を上げる。最初は警戒していたシロもすっかり猿二のことを信頼したようで、されるがままになっている。
 時折気持ちよさそうに目を細める。
「クゥ~」
 という鳴き声は猿二に対する信頼の証だ。
 その横ではクツシタが、レーネとコンテストに向けての練習をしていた。
「クツシタさん、まずはわたくしが乗って練習してみましょう」
「クゥ」
 レーネに対しても警戒していたクツシタだったが、レーネは秘策を用意していた。
「こわがらないで、リラックスしてください」
 レーネから発せられるさわやかな香りが、クツシタの警戒心をほぐしていく。
「クゥ~」
 クツシタが大人しくなったのを確認して、レーネは背中にまたがる。
「『ゆるやかな動き』の練習をしましょうね、わたくしが見てあげますから」
「クゥ~!」
 レーネを乗せたクツシタは、レーネを振り落としてしまわないよう慎重に歩いている。小柄でもしっかりグリフォンとして頑張るクツシタだった。
 そしてブチコはリサを背にコースで練習をしていた。運動前のウォーミングアップとしてゆっくりと歩いたり、羽ばたいてみたり。
「あらフィリンさん、その資料は?」
 ニムファーがフィリンの手にした紙の束を見て、声をかける。
「大会本部でもらってきた参加者リストと前回までのレース記録よ」
「わたくしも見せてもらっていいかしら?」
「ええ、かまわないわ。何事もやって損な事はないと思うから」
 ニムファーはクツシタがレーネとの練習を終えるまでの間、レース記録に目を通して参考にならないか確かめることにした。
「はい、終わり! シロ、練習頑張ってきてね!」
 猿二はブラッシングを終えて最後にぽんとシロの体をやさしく叩いた。
「クゥ!」
 シロは高く一声鳴くと、ゆったりした動きで朱璃のもとへと向かっていった。
「おー、フィリンおかえり! ちゃんとウォーミングアップさせておいたから、いつでも練習できるぞ!」
 ブチコにまたがったリサが声をかけてくる。
「ありがとう」
 短く答えるとフィリンはリサと騎乗を交代する。まずは軽い駈歩程度の運動で、ブチコの反応を確かめてみる。
(確かに、リサが言っていたとおりね)
 全力を出しているように見せて、手を抜いている。さまざまな動物を乗りこなした経験からフィリンにはそれが理解できた。
(いい気分ではないわね……)
 まるで、昔の自分を見ているみたいで。
「いいわ……見てなさい!」
 フィリンはブチコに合図を送り、コースへと出ていった。

「おかえりなさい!」
 練習を終えて帰ってきた朱璃とシロを猿二が出迎える。
「さすがシロ様、すばらしい力をお持ちですわ。私と貴方が力を合わせれば勝利は間違い無しですわ!」
 朱璃はシロに語りかける。シロも単なるおいしいものをくれた人というだけでなく、騎乗の腕でも朱璃のことを認めていた。
「あれ? シロ、ここどうしたの?」
 猿二はシロの羽の先に軽い切り傷があるのを見つけた。
「あら、どこかにぶつけたのかしら……シロ様、大丈夫ですか?」
「クゥ!」
 朱璃が尋ねて、シロは問題ないというように一声鳴いてみせる。
「僕、知ってるんだぞ! こういう時は包帯を巻いてあげるといいんだぞ!」
 猿二は持ち合わせた医学の知識を使い、シロを治療してあげる。
「ありがとうございます、猿二様」
「問題ないんだぞ! コンテスト頑張ろうね!」
「クゥ!」


 コンテスト当日。まずは美しさ部門の審査が始まった。
「シロ、よろしくね!」
「クゥ!」
 猿二はシロと一緒に歩く。シロのほうも猿二と一緒に過ごすうちに彼を認めたらしく、今ではすっかり猿二になついていた。
 シロの魅力を引き出せるように。堂々とした態度で歩く猿二とシロは観客の注目をひきつけていた。
 そして……。
「おー、目立ってる目立ってる」
 ブチコと一緒に歩きながら、リサはニヤリと笑った。
 レーネと一緒に歩くクツシタ。その背に乗っているのは……。
「クツシタさん、すごく優しく歩いてくれてますねぇ~」
 シルフィアだった。たまたま保健室に顔を出した彼女は、頼まれてけが人役をつとめていた。もちろん、右足に包帯を巻いてそれらしくすることも忘れない。
(用意した楽器は必要なさそうです)
 クツシタが暴れたりしてシルフィアがけがをした時のために用意していたものだが、そんな心配は無用だった。
 クツシタはゆるやかに、力強くシルフィアを運びながら歩く。そんな素敵な仲間とともに歩けることがレーネはとても嬉しかった。


 美しさ部門の興奮が冷めやらない中、生徒たちがまたがったグリフォンは一頭一頭コースに現れてきた。軽く歩いたり飛んだり、準備運動に余念がない。
 そしてレースは始まった。
「今スタートしました! おっとばらついたスタートだ!」
 魔法で拡声されたアナウンスが場内に響く。
 朱璃、フィリン、ニムファーは偶然にもまったく同じ戦法をとっていた。後方からの追い込みだ。あえて手綱をゆるめ、ほかのグリフォンを先に行かせる。
(ライバルのペースを乱したいところだけれど……)
 普段は仲間同士でも、いざレースとなったらライバルだ。フィリンは他のグリフォンのペースを乱すことを考えた。が、グリフォンがレースで飛ぶ速さは想像以上だった。他の鞍上が何を話しているか、風切り音で何も聞こえないに等しい状況だった。
(言葉が使えないなら、ブチコの動きでハッタリを利かせるしかない)
 フィリンはあえてブチコをクツシタの進路に寄せていく。それを嫌ったクツシタはさらに後方へ、後方へと位置取りを下げていく。
(フィリンさん、本気で勝ちに来てるのね……!)
 クツシタに乗るニムファーはフィリンの本気を感じ取った。密集が苦手なクツシタには無理をさせず、気分よく飛べるように集中させていく。
「練習で見せてもらったあなたの力、あれが出せればちゃんと勝てるわよ。今は我慢我慢」
「クゥ!」
 ニムファーとクツシタは位置取りを下げつつも、じっと後方に構えていた。
 一方、朱璃とシロもじっくりとレースを進めていた。気の強いシロは横を飛ぶブチコに刺激されたのか、時折前に行きたがるそぶりを見せる。だが朱璃がシロをうまくなだめ、テンションが上がりすぎるのを防いでいた。
「まだですわよ。最後に一気にゴボウ抜きすればシロ様は一躍ヒーローですわ♪」
「クゥ!」
 ほかのグリフォンたちも互いに牽制しあい、ペースはさほど上がってこない。どのグリフォンも十分に余力を残したまま、レースは最終コーナーに差し掛かる。
「小細工は全力への布石! 勝負よ!」
 フィリンはブチコに合図を送る。ブチコはフィリンの合図にこたえ、加速を始める。
「さあ、今こそシロ様の力を見せる時ですわ!」
 朱璃もシロにゴーサインを送った。じっと後ろに構えていたシロは、ためていた力を開放して前のグリフォンたちを追う。
「行くわよ、クツシタ!」
「クゥ!」
 ニムファーとクツシタも追い出しを始める。クツシタが他のグリフォンを気にしないように、大外に持ち出して一気に飛んでいく。
「楽しようなんて考えんじゃねぇッ!」
 ブチコは外から現れたシロに気を取られ、速度が緩む。そんなブチコをフィリンが叱咤する。素のフィリンが出てしまっているが、風切り音のおかげで誰にも聞かれることはない。だいいちどの鞍上もグリフォンの力を引き出すことに精いっぱいで、フィリンの言葉遣いを気にしている余裕はない。
「おっと後方からシロ、ブチコ、クツシタの3頭が飛んできた。3頭ともすごい脚だ!」
 場内に響く歓声とアナウンスの声。それにも気づかないほど、ただ、前へと進む3匹のグリフォン。そして彼らの力を引き出すフィリン、ニムファー、朱璃。
「まったく並んでゴールイン!」


「リタイナーさんのおかげでコンテストは大成功でした。ありがとうございます」
 宴の後。レーネはシルフィアに丁寧にお礼を述べた。
「いえ~、お役に立てたなら何よりですぅ」
 そう言ってシルフィアはにっこりと笑った。
「シロ、レースお疲れ様! とってもかっこよかったんだぞ!」
「そうですね。シロ様は本当によく頑張ってくれましたわ」
 猿二と朱璃はシロにねぎらいの言葉をかける。シロは誇らしそうに胸をそらして、一声鳴いた。
「クゥ!」
「ブチコ、すっげー頑張ってたな。フィリンのおかげだと思うぞ!」
 リサに言われて、フィリンは控えめに笑う。
(全力を出すことの大切さ、ブチコにも伝わったかな……)
「クツシタもよく頑張ってたよ。ニムファーさんがうまく力を引き出してくれたおかげだ」
「わたくしは何もしてないわ。クツシタが頑張ったのよ」
 オースとニムファーもクツシタをねぎらう。
 グリフォンたちと生徒たちの間に、確かな友情が芽生えていた。



課題評価
課題経験:52
課題報酬:1600
助っ人募集! グリフォンコンテスト!
執筆:はまなたくみ GM


《助っ人募集! グリフォンコンテスト!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2020-05-06 11:22:51
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞ宜しくお願いしますね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2020-05-07 19:35:29
レースに出る人と一緒に歩く人は別でないといけないのですね。ひとまず動物騎乗もありますのでレースに出る方を希望しておきますわ。

その前にグリフォン達と一緒に過ごして信用してもらわないといけませんわね。さて、どうしたものか・・・。

《新入生》 馬場・猿二 (No 3) 2020-05-08 10:05:14
同じく!二期生で武神・無双コースの馬場・猿二って言う!

僕はね!どっちでも良いと思ってたけど!
せっかくだから出走してみようかな!

どの子でも良いけど「ブチコ」が乗りやすそうだね!

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 4) 2020-05-08 10:56:56
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ

どの子も可愛いけど、名前が気に入った「クツシタ」の騎乗を希望しておくわ。
勿論他の子でもOKなんだけど。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2020-05-08 18:33:13
それでは私はシロ様への騎乗を希望しておきますわね。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 6) 2020-05-08 22:20:56
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。
騎乗の方は出揃ってる感じなら、美しさの方を担当しようかと思うわ。

…こっちも1人1グリフォンになるのよね?
ブチコがちょっと他人じゃない感じだから、担当させてもらおうかな。

《新入生》 馬場・猿二 (No 7) 2020-05-08 22:33:56
あ!僕ね!動物がね!みんなね!好きなんだけどね!
「生物騎乗」持ってなかったんだよ!
良かったら!フィリン先輩!乗り替わって欲しいな!
思い入れがあるなら!殊更!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 8) 2020-05-09 10:17:53
コンテスト前のコミュニケーションについては生物学などがあればスムーズにいくかもしれませんわね。私は今の所持ってないのですが。あとはグリフォンに有効かは解りませんが信用も使えるかもしれませんわね。

料理スキルは持っていますから美味しい餌を作ってあげるのも良いかもしれませんわね。

《新入生》 馬場・猿二 (No 9) 2020-05-09 16:12:26
なーるなーる!ナイスです!信用されるかな!
てもちょっと困ったぞ!
僕は料理とか作れないからぞ!
購買部とかでブラッシングとか出来るようなアイテム探してみるぞ!

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 10) 2020-05-10 06:36:14
芸能・芸術コースのエルフ、レーネです。
よろしくおねがいします。

わたくしはいっしょにあるくのをやりたいです。

ふつう、グリフォンさんたちにはいろいろはこんでもらうとおもいます。
そしてつきそいにつきましては人数制限はないみたいですから、
いちばんたいせつなののデモンストレーション、
「けがしてしまったひとをやさしくはこぶ」ということで、
トーデンさんかケインさんがのったクツシタさんといっしょにあるきます。
もちろん悪化しないようにおいしゃさまに相談しておきます。
あと回復手段も用意しますし、魔法薬の技能で痛み止めもつくっておくつもりです。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 11) 2020-05-10 19:31:27
今騎乗する人が3人、一緒に歩く人が二人、ですわね。騎乗については一人でも重りを乗せれば大丈夫なので、一緒に歩く人があと一人は必要という事でしょうか?こちらも足りない場合はリサ様が一緒に歩くという事になるのでしょうか?

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 12) 2020-05-10 21:48:22
>猿二

あ、《生物騎乗》まだだったのね。
今はもう勉強中みたい(PL:1Lv確認しました)だけど、じゃあ私が騎乗、猿二が付き添いでいく?
私はどちらでも大丈夫よ。

《新入生》 馬場・猿二 (No 13) 2020-05-10 22:01:23
うん!学んできた!
でも!今回はやっぱり勉強させてもらうことにした!
フィリン先輩は上手だって聞いたし!
この子に乗る人はそういう人が良いと思った!僕の見解!

ブチコちゃんは手間が掛からないらしいから!
僕はシロちゃんと一緒に歩いてみるよ!





《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 14) 2020-05-11 15:08:19
希望通りいけそうな感じ?
というわけでクツシタの騎乗頑張るわ。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 15) 2020-05-11 15:34:22
レースはコースの確認くらいはしておいた方がいいかしら。
前回の記録なんかもあれば見ておきたいわね。
【事前調査】でしらべておこうかしら。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 16) 2020-05-11 22:11:03
>猿二
わかったわ。じゃあ【ブチコ】の乗りては引き受けたわ。
手本になれるよう、頑張るわね。