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今日は惚れ惚れ


ストーリー Story

「はっ……はぁっ!」
 学園の廊下を走る。
 当てもなく、ただひたすら走る。
 少しでも離れるために。
 うっかり目を合わせないために。
「どうしてこんなことに……!」
 息も絶え絶えに、逃げ切れたと思った恐怖が目の前に迫るのを見て、絶望に染まった表情を浮かべる。
「わたしに近付かないでください!」
 そして彼らは、目が合った。

 事の発端は数時間前。
 本日、職員の朝礼が始まる直前のこと。
 朝礼に遅刻することが稀である勤勉な職員たちが集う職員室に突如転がり込んでくる、歓喜の雄叫び。
「できた……! できたんだよぉ! 聞いてくれよ、できたんだよぉ!」
 無精ひげを生やし、長い間手入れしていないのが分かる脂ぎった髪をアフロのように爆発させた男性。
 彼の胸元には【ウツ・ケ】と書かれたネームプレートが斜めに下がり、羽織っている白衣は皺だらけになっている。
 心なしか、少し臭う。
 そんな彼の手にあるのは、大きめの瓶。
 中身は白い錠剤がいくつも入っている。
「できたって……それ、なんです?」
 比較的勤続年数を重ねている女性職員が顔を顰めながらも彼に話しかけている傍ら、新人として入ってきた後輩職員は、書類を確認しながらコーヒーに舌鼓を打つ【ウケツ・ケ】へ囁く。
「先輩……。あの人、誰ですか?」
 ウケツはほんのわずかな時間だけ、ウツに視線を遣る。
 その視線はすぐに書類へと戻っていく。
「ああ、この学園に在籍している研究職のひとりで……金食い虫のような男ですよ」
 苦々しく吐き出したウケツの言葉に、後輩は思わずウケツの顔を二度見する。
 普段穏やかな表情に、一瞬だけ現れた眉間の皺。
 すぐに消えたそれが、見間違いかと瞬きを繰り返す後輩の髪がウケツの鼻腔を擽る。
「ところで香水でも変えました?」
「え? 香水なんて付けてませんけど……」
「おかしいですね。いい匂いがすると思ったのですが」
 しきりに匂いを嗅ぐウケツの姿は、大型犬を彷彿とさせる。
 ややくすぐったく感じている後輩の鼓膜を劈く、女性職員の声。
「ウケツ先輩! コーヒー飲んじゃダメ!」
「え?」
 呆けたように呟くウケツ。
 その手元にあるマグカップの中身は、既に半分以上、その姿を消している。
 顔面蒼白になる女性職員。
 訳も分からずマグカップを握りしめているだけのウケツ。
 そして、愉快な見世物でも見ているかのように、厭らしく笑むウツ。
 マグカップの中のコーヒーが、丸い波紋を浮かべる。
「ウケツ先輩。よーく聞いてくださいね」
 女性職員は意を決した様子で、やや早口で伝える。
「この研究職が作ったのは、いわゆる『惚れ薬』です」
「は、はい」
「そしてこの人は、それをウケツ先輩のコーヒーに入れました」
 ウケツは条件反射で吐き出そうとする。
 無論、吐くものなど何もない。
 空咳だけが苦し気に響く。
「先輩、飲んでしまったものはしょうがありません。聞いてください」
 女性職員がウケツの肩を掴み揺さぶる。
 それは女性職員さえも冷静さを欠いているかのような、やや乱暴な揺すり方。
 しかしその視線は泳ぎ、ウケツと目を合わせようとしない。
「それは飲んでから時間を経るごとに効果を増していきます。初めの数分間はまるで出会いたてでまだ恋を知らない少年少女のような甘く初々しい気持ちが芽生えます。そう、目が合った人誰もにその気持ちを抱いてしまうのです」
 ウケツは思わず先ほどまで会話をしていた後輩に顔を向ける。
 後輩は勢いよく顔を背けた。
「続けて第二段階。薬を飲んでから十分、あるいは十数分の間に起こる症状です。それは思いが通じなくてもどかしくなる、苦しい時期……。そう、片思い期に突入するのです。片思い期では、出会い期に目が合った人限定で苦しい片思いのような気持ちを抱きます」
 ウケツは後輩の方向を勢いよく見た。
 後輩は筋を傷めないだろうかと心配するほど勢いよく顔を背けたままでいる。
「そして効果はクライマックス。薬を飲んできっかり三十分で起こる症状、熱愛期。片思い期で片思いを抱いた人の内、三十分経ってから初めて目を合わせた人に、狂おしいほどの愛情を抱きます。……厄介なことに、異性だけでなく、同性とそうなる可能性もあるそうで……」
 ウケツは以下略。
 後輩は以下略。
「惚れ薬の効果で惚れた相手と一緒になれるのなら、別に元に戻さなくても支障はないそうなのですが……」
「至急、元に戻る方法を」
 語気を強めた声で、ウケツはウツの方を睨む。
 ウツはウケツの視線を受け、興奮に頬を染め、身を震わせながら高らかに叫ぶ。
「なぜ愛情を否定するんだい? それは素晴らしいものであるのに! ああ、それともウケツ。君は人を愛することを恐れているのかい?」
「あなたの一人芝居に付き合っている暇などありません。元に戻る方法を教えなさい、ウツ」
 ウツは眉を下げ、つまらなそうに口角を上げる。
「しょうがない。他ならないウケツのために教えてあげようじゃぁ、ないか」
 ウツは白衣の裾を翻し、窓際へと歩いていく。
「ひとつ。この薬を飲んだ別の者と、ハグ、オア、キス。段階は互いに関係ないよぉ。薬さえ飲んでいれば、キスで目覚める姫の如く互いに目が覚めるであろう。……ふ、ふふっ」
 ウツの含み笑いに、ウケツは眉を顰める。
「他にも方法があるのでしょう。……あなたが人を食うような笑い声を発するときは、大抵他の手を隠して人をおちょくっている時だ」
「ん、んー。昔の純真なウケツはどこに行ってしまったんだろうねぇ? ……まあ、いいさ。そうとも、手はもうひとつある。それは……」
「それは?」
 ウツは瓶の中身を窓の外へとぶちまける。
「惚れ薬をもう一錠飲むことさ! さすれば呪いは解かれるであろう!」
口を大きく開き、驚きを表現するウケツたち。
「ああ、安心して? これは偽物だからさぁ。本物はね……」
 遠くの方から、騒がしい音が聞こえてくる気がする。
 嫌な予感に耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。
 ウツは手を薄っぺらく振り、軽薄な笑みを浮かべた。
「学園内にばら撒いてきたからさぁ。食堂とか、購買とか? だからねウケツぅ」
 ウツは、ただひたすら睨むウケツを余裕な笑みで流した。
「元に戻れるといいねぇ?」
「……っ! みなさん、今すぐ食堂と購買に連絡を! 至急、流通を止めてください! わたしは今から校内放送で呼びかけます!」
 ウケツが再び睨んだ窓際には、ウツの姿はもうなかった。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 6日 出発日 2020-06-03

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-06-13

登場人物 8/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)
《勇往邁進》リズリット・ソーラ
 カルマ Lv17 / 魔王・覇王 Rank 1
ぼんやりとした表情の記憶喪失のカルマ 男の子なのか女の子なのか自分でもわかってない 口調がとても特徴的 外見 ・黒色の髪に金の釣り目 ・短髪だが、横髪だけ長くそこだけウェーブ ・基本的に無表情 ・魔法陣は右手の甲と左足の太ももの内側 性格 ・基本的にぼんやりとしている ・自分が色々と物を知らないことは何となくわかっているので、色々と勉強したい。最近はとある演劇の課題を通じて物語作りに少し興味を持ち出している ・独特な口調の持ち主(所謂関西弁) ・時折「雑音がする」と元気がない時がある 好きなもの ともだち、きれいな音 嫌いなモノ 人形扱い、雑音、■■■■ 一人称「うち」時々、戦闘中気分が昂ると「ウチ」 二人称「きみ」 名前の呼び捨て
《商人の才覚》マリウス・ザ・シーフ
 カルマ Lv7 / 黒幕・暗躍 Rank 1
「マリウス・ザ・シーフ……『怪盗マリウス』だ」 「固すぎるビンの蓋、どこからでも開けられるはずの袋、開かずの金庫……そして、誰かに奪われた何が何でも取り戻したい宝物……」 「そういったものがあるならば、私のところに来たまえ。無論、相応の報酬はいただくがね」 本名不明。年齢不明。性別不明。国籍不明。 依頼を受けてターゲットを盗み出す、謎だらけの怪盗。 (性別に関しては、男物の服をよく着ているため、男性と仮定して扱われることが多い) 両利きで、魔法陣の位置は両手の甲。 カルマらしい球体関節の身体に、魔術的なものと思しき紋様が刻まれている。 どちらも露出の低い服で隠しており、一見してヒューマンと見分けがつきづらい。 話し方は紳士的で気障な口調、無機質で機械的な口調、フランクな若者口調の3つを、恐らくは気分によって使い分けている。 特技は鍵開け。好物はプリンアラモード。 【怪盗6ヶ条】 マリウスが己に課している、怪盗たるための6つの鉄則。 一、己の仕事に誇りと自信を持つべし 一、美意識は高く保つべし 一、日々、鍛錬に励むべし 一、道具は丁寧に扱うべし 一、暴力・破壊は極力慎むべし 一、一度定めたターゲットは必ず盗み出すべし
《野性のオオカミ》ヘルムート・アーヴィング
 ルネサンス Lv8 / 魔王・覇王 Rank 1
「自分はヘルムート・アーヴィング。誇り高きロイニデッド出身、種族は狼のルネサンスだ。優れた軍人になるべく、この学園へと入学する事となった。諸君らと良い学友になれることを願っている。」                               ―――――――― 【性格】 軍人を目指すだけあって、堅さがある口調だが社交的に見えるよう、人前では口角を意識して上げて笑みを作っている。 己に厳しく、そして他人と一定の距離を置く様にしている。 ポーカーフェイス、冷静で居るよう意識してるが、狼なので尻尾に意識せず感情が現れてしまう。 『優れた軍人であるべき』アーヴィング家の血を引きながら、放蕩な1期生のプラムに嫌悪感をあらわにするが、半年経った現在、態度は軟化してきている。 根が善人の為、厄介事に巻き込まれがち。 【口調】 一人称:自分、僕(感情が高ぶると俺) 二人称:君、諸君、(男女共に)名前+君 「本日の授業の仲間は…諸君らか。勉学ばかりで実戦経験が乏しい自分だが、どうかよろしく頼む。」 「課題を一緒に乗り越えてきた仲間は、一生の宝だ。特に先日のマラソン大会は、少し自分に自信を持てたよ。」 「プラム…貴様さては何も考えてないな????」 【好き】 長姉 家族 酸味 【嫌い】 プラム・アーヴィング 自堕落な人間 侮られる事 傷の舐め合い
《1期生》カンナ・ソムド
 ルネサンス Lv10 / 芸能・芸術 Rank 1
猫耳と猫の尻尾が生えている女性のルネサンスで体つきはかなりセクシーである。とはいえ年齢は高校生~大学生相当と本人は言っているものの、外見はどうみても中学生相当の若さである、いわゆる合法□リ。 性格はかなり受け身でおとなしい。 よほどの事がない限り喋ってくれないのが玉に瑕。 喋ることはほぼないものの、学園生活は普通に満喫している模様。 普段は踊り子としてお金を稼いでいるらしい。 好きなものはスイーツと猫科の動物、嫌いなものは虫。
《2期生》シルワ・カルブクルス
 ドラゴニア Lv15 / 村人・従者 Rank 1
細い三つ編みツインテールとルビーのような紅い目が特徴のドラゴニア 元々彼女が住む村には、大人や数人ぐらいの小さい子供たちしかおらず同い年程度の友達がいないことを心配した両親にこの学校を薦められて今に至る 一見クールに見えるが実際は温厚な性格であり、目的である世界の平和を守ることはいわば結果論、彼女の真の目的は至って単純でただの村人として平穏に暮らしたいようである しかし自分に害をなすとなれば話は別で、ドラゴニアらしく勇猛果敢に戦う 一期生にはたとえ年下だとしても「先輩」呼びをするそうだ 「私はただの村人、できる限りのことをしただけです」 「だれであろうと私の平穏を乱す者はすべて叩き伏せます」 ※口調詳細(親しくなったひとに対して) 年下:~くん、~ちゃん 同い年あるいは年上:~さん ※戦闘スタイル 盾で受け流すか止めるかでダメージを軽減しつつ、斧で反撃するという、いわゆる「肉を切らせて骨を断つ」戦法を得意とする
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に

解説 Explan

 学園内にばら撒かれた『惚れ薬』を、皆さんは飲んでしまいました。
 うっかりでも、意図的でも、飲まされたでも、とにかく皆さんは飲んでしまいました。
 元に戻るためには、以下の条件を満たしてください。

【『惚れ薬』の解毒方法】
 方法その一:同じく惚れ薬を飲んだ者同士でハグ、またはキスをする。
 方法その二:学園内にばら撒いたとされる惚れ薬を探し出し、もう一度飲む。
 方法その三:熱愛期にて惚れてしまった相手と交際する。

【職員等の動向について】
 受付職員ウケツ・ケは、学園内にばら撒かれた惚れ薬を回収する作業に当たりつつ、できるだけ人と接しないように細心の注意を払いながら奔走しています。
 研究職員ウツ・ケは、この騒動を学園内のどこかで眺めていることでしょう。
 彼の真意は不明です。

【PL情報】
 いわゆるカップリングシナリオとなります。
 皆さんがもしも恋愛をするのなら、どのような感情を抱くのか教えてください。
 また、カップリングの希望等ございましたら、お相手の名前(参加者もしくは参加NPCに限ります)をプランにご記入ください。
 ご記入の無かった場合、厳正なるくじ引きによって決めさせていただきます。


作者コメント Comment
 舞い散れ、ゆうがくに恋の花∈( ºωº )∋


個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
なーんか騒がしーけど何?…惚れ薬?さっきの学食に?
…だーれが作ったんだか。趣味悪さが学園長様85人分じゃん。

じゃ、ザコちゃん部屋帰って寝る。
だってほら、ザコちゃんそんなお気持ちわかんないし?湧かないし?
ザコちゃんにそんなお気持ち湧くお人もいないじゃん?ここには。
そったらザコちゃん1人篭れば解決。よゆーじゃん。
…恋、知らないけど知ってるよ。くそ貴…高慢なお人が人間に汚い所持所有欲向ける時、良く使うやつでしょ?知ってたまるか。

てことでまた明日。
状態異常なら【福の針】あるしね。ぶっ刺せば終わりじゃん?どーせ。

そーいや胸と呼吸がキツい…けど、なんだろ。いっか。
疲れてんのかな。部屋の寝床で布団被っとこ。

ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【前フリ】
惚れ薬、ね。子供騙しっつーか、プラシーボ効果…だっけ。
例えば生姜や鷹の爪のような辛味のある食材から抽出した汁なんかを混ぜ合わせれば体温は上昇する。そいつと恋心を上手いこと絡めて、ドキドキによって生じた体温上昇のように錯覚させる。そんなことだろう。生憎、青春に手間暇惜しまぬ若人って訳でもないからな。飯食った後は、惰眠とヤニを貪るに限るってなもんで。

【行動】
やれやれだわ。やれやれだよ。やれやれやれ。
自室で眠ったはずなのに、目が覚めたら女子寮の前だよ。
体は正直だった。こりゃ、不貞寝を決め込もうにも鼓動が煩くて眠れねえや

…そうさな…ザコちゃんに会いに行くか
確か「福の針」を持っていたよな。


リズリット・ソーラ 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
食堂でジュースを貰ったところ、惚れ薬でした
惚れ薬?えっほんまに?
…えらいこっちゃ(真顔
なるべく目線は合わせないように移動
周辺の人物に聞き込み 話すときは俯いて

相手:仁和貴人
うっかり目と目が
あ、あわわ…!
とりあえず 薬探そ
お互い こんなんアカンやろし
なんだかちょっとドキドキする
同じコースだし、知らない人…とはちゃうけど
何や緊張する どないしよ
え、ハグしてもいける?
………あ、あかん
うっかり力入れすぎて どっか傷めでもしたら…!

・行動パターン
相手の言う事には従順 なんでもやってあげたい
出会い期はよくそばにいたがるが、熱愛期に移行するにつれ距離を置きたがる
好意と怯えが混ざった眼をしている様子

マリウス・ザ・シーフ 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
アドリブ絡み歓迎
カンナ・ソムドさんとペア
学年は先輩なので「カンナ先輩」と呼ぶが、自分の方が歳上だと思ってるのか
何とか守ろうとする

自由に使える調味料の類がある学園内の食堂などを巡り
隠密を駆使し目を合わせないように気をつけながら質問をして聞き込みを行う
その際カンナ先輩は他の誰かと目を合わせないよう手を引いて連れていく
・怪しい人物の出入りはあったか?
・本日の食堂の利用人数、混んでいた/空いていた時間は?
・調味料の詰め替えは普段どのように行うのか?
を聞き出し、怪しい人物(または直球でウツ)が薬を入れる余地があった、あるいは長い時間人目を離れていたものを一時的に回収
検査して異常がなければ事態収拾後に返却

ヘルムート・アーヴィング 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:198 = 66全体 + 132個別
獲得報酬:7200 = 2400全体 + 4800個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
なんて事だ、落ち着かないのは妙な薬のせいか…!
朝食に混入していたのか?クソ…ッ!

■惚れ薬の確保
食堂に戻り、技能【祖流還り/料理】で狼の嗅覚を利用し、食した事がある料理を調べ違和感…薬の匂い等から【推測】で厨房内を調べる。

惚れ薬を確保したら、まず自分に。
そして、朝食で一緒になった諸先輩、同級生を探して投与する。

■対策
人の目線より下に視線を落として歩く。
また、【聞き耳】で衝突の拍子に目を合わせる事故を防ぐ。

■三段階目
ここに丁度良い大鎌がある。
死なない程度に重症になれば、他者に危害を及ぼす事はないだろう。

■初期に目を合わせた相手(ペアの相手)
朝食で一緒になった…シルワ君…だ…。(胃痛で耳がへちゃる)

カンナ・ソムド 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
マリウスと行動

不覚…まさか怪しい薬が入った飲み物を飲んでしまうなんて…
とても胸がドキドキして仕方がない…
とりあえず何故かさっきからマリウスが気になって仕方がない…
それでもこの惚れ薬に対する脅威をとめたいという気持ちは同じだから一緒に行動する…
とりあえず何よりどうやって止めればいいのかな…?
マリウス、何かいい案はあるかな…?
私も「やせーの勘」を使って怪しい場所を調べてみる…
なんというか私、なにか感情が抑えるので精一杯…なんというか考えることをやめると大変なことになる…
お願いだけどマリウス、私と手をつないでエスコート、して…?
でないと私、歩くのも大変なことになりそう…
ん、食堂?いい案、私も行く…

シルワ・カルブクルス 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【同じ薬を飲んでしまった者に対してハグをする】
【対象:ヘルムート・アーヴィング】

朝食にていつの間にか例の薬が混ざっていた食品を食べてしまったシルワ

その際、一緒だったヘルムートと目が合ったことにより第一、第二段階の対象候補が含むことになってしまう
放送後は人と目を合わせないように惚れ薬を探しにいく
第三段階時…他の人と目を合わせないようにまさか人気がない時に探しているところでヘルムートとばったり再会する
その瞬間頭の中が爆散しそうになり、攻撃されそうなときに『危険察知』で回避しながらすこし謝罪して思い切って抱きしめることでいち早く薬の影響から解放しようと試みようとする

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:79 = 66全体 + 13個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
惚れ薬のばら撒きか・・・
自分に実害がなければ笑って眺めてられたんだがこういう状況じゃ笑ってられないよな・・・
解決に向かって惚れ薬を飲んでしまったと思われる人物と惚れ薬を回収するとしよう
ウツ・ケ研究職員も確保したいところだが、どうだろうな?


身体的な危険はほぼないとはいえ不測の事態に備えるのは基本だからな・・・
ここは誰かとペアを組んで動きたいところだが・・・前々から気になってた彼?がいるし声をかけるとしようか・・・

自分が惚れ薬を摂取してしまったという考えはしない方向で行動
フリーハグを提案しようとするが(飲んでない相手とのハグをした場合の)被害の拡大を考え断念

アドリブ、絡み大歓迎
ワンプランラブ

リザルト Result

『貴女は大切なものを奪っていきました』
 何の変哲もない日常の中に、当然の顔をして存在する朝食の時間。
 朝、何も食べない派の人々や、寝坊してしまった人々以外は、大半の生徒が各々のペースで集まる食堂。
 安穏としたその空気は、ひとりの生徒が違和感を覚えたことで、不穏な気配を纏い揺れる。
「なんだか、正面にいる生徒が魅力的に見えてきた」
 小さく零した言葉。
 その言葉が存在感を持たないうちに、スピーカーから流れる放送。
『現在、食堂や購買にて惚れ薬の混入が確認されています。直ちに食べ物等を口に入れるのをやめてください』
 スピーカーから流れる【ウケツ・ケ】の声に、食堂内がにわかに騒めきだす。
 不穏を覆い隠すように流れる放送は、更なる混乱を呼び込む。
 沈静化を図るために投げ込んだものは、小さな不穏を覆い隠す代わりに、大きな不安を爆発させる、ダイナマイトのようなもの。
『また、惚れ薬を飲んでしまった可能性のある方は今からお知らせします方法にて解毒できるそうです。方法をお知らせします。まず、一つ目は――』
 解決策を述べていくウケツの声が届かないほど、混乱した様子の【カンナ・ソムド】は動揺したようにコップを倒してしまう。
(不覚……まさか怪しい薬が入った飲み物を飲んでしまうなんて……)
 脈打つ鼓動が煩わしい。
 カンナは目の前に対峙する【マリウス・ザ・シーフ】を見る。
 どういうわけか、先ほどからマリウスが気になって仕方のないカンナは、マリウスの視線から逃れるように顔を俯かせる。
 カンナの俯いた視界に、白い手が映る。
 視線を上げると、マリウスの笑みがカンナの世界に広がった。
「カンナ先輩、キミは魅力的な女の子だから、こんな状態でこれ以上誰かと目が合うのは危険だ。私に着いてきたまえ、エスコートしてあげよう」
 差し出された手をカンナは取る。
「とりあえず何よりどうやって止めればいいのかな……? マリウス、何かいい案はある……?」
 首を傾げるカンナに、マリウスは思案するように唇に指を当てる。
「そうだね……。私たちは今、食堂で出された朝食を食べ、その中に混入していた惚れ薬を飲んでしまった。つまり……」
「食堂を探せば、惚れ薬があるかもしれない……?」
「その通り!」
 感動に目を輝かせるカンナに得意げなマリウス。
「いい案、私も行く……」
「それじゃあ、行こうか。食堂に……!」
 エスコートされながら、カンナは座っていた椅子から降りる。
 そうして彼女たちは周囲を見渡した。
 忘れているかもしれないが、ここは食堂である。
 
 食堂でアルバイトしている男子生徒は、現在進行形で死の危機を感じていた。
 仮に、彼を生徒Bとしよう。
 生徒Bは背中から感じるプレッシャーに、冷や汗を掻いている。
「動くな。そのままの姿勢で私の質問に答えろ」
 冷静で平坦で、且つ冷酷な、マリウスの声が耳朶に静かな響きを以って届く。
「よし、いい子だ……。私が聞きたいことに答えてくれるだけでいい。まず一つ目だが……」
 怪しい人物の出入りがあったかどうかの質問。
 これに対し、生徒Bは。
「研究職で見たことのある【ウツ・ケ】職員がキッチンに紛れていたのは見ました。いつものことなので、特に気には留めていません」
 この返答に、マリウスは思考する。
「なるほど。では、調味料の詰め替えは普段どのように行うのだろうか?」
「切れた物に気付いた人が各自……。そういえば、そこの塩はウツ・ケ職員が詰め替えていました。他は……分かりません」
 マリウスは行った質問に対する答えに、満足そうに笑んだ。
「……成程、よく分かった。薬品が混入された恐れがあるのでこれは一時的に借りていくが、構わないね?」
 マリウスは手に持った塩を、大切なものを手渡すかの如く、丁寧にカンナに預ける。
「ゆっくり30数えたら、通常業務に戻ってくれたまえ。協力に感謝する」
 ゆっくりと背中から死の予感が離れていく気配がする。
 30秒のキッチンタイマーが鳴り響く。
「なんだったんだ……」
 違う意味で心臓を高鳴らせながら、生徒Bは冷や汗を拭った。
 
「惚れ薬が混入したと思われる調味料の回収には成功した。あとは……。カンナ先輩?」
 反応の無いカンナに訝しんだマリウスが彼女の顔を覗き込む。
「……ぅ、だい、じょぶ」
 カンナの頬は、先ほどまでと比べ物にならないほどに紅潮し、息は荒ぎ、心拍数は上がっている。
 恋、と言うよりも熱と言った方が正しいと思われる、その反応。
 とても傍目に見て大丈夫と言えるものではなかった。
 それと同時に、彼女の露出が多めの派手な見た目も合わさって、見る者に劣情を植え付ける、そんな印象を受ける。
「大丈夫、だから。探そう、薬」
 自身の不調を押さえ、相手を気遣う笑みを浮かべようとするカンナはいじらしい。
 マリウスは喉に唾液を押し込む。
「……そうだね。まず、これは私が毒見をするよ。……惚れ薬だったとしても、塩分の過剰摂取はよくないからね」
「あ、ありがとう」
 マリウスはカンナから塩を受け取る。
 その蓋を取り、中身の匂いを嗅いでみる。
(無臭。さて、味は……)
 適当に手に取った塩をひと舐めする。
「うん、しょっぱい」
 しょっぱいと零した口から、淡く咲いた恋心が零れていく。
 胸の内に巣食っていた恋情が、違和感なく感慨もなく、平坦な感情を取り戻していく。
「どうやら、惚れ薬が混入していた調味料のようだよ。カンナ先輩もどうぞ」
 手の上に落とされた塩を、カンナは恐る恐る舌に付ける。
「しょっぱい」
「うん、しょっぱいね」
「でも、苦しくなくなった」
 頬の赤みは引いていく。苦しい動悸も今は聞こえない。
 マリウスは穏やかな表情を浮かべたカンナを優しい瞳で見下ろす。
「今回は事態の収拾を優先したが、いつか必ず奪い返してみせる。キミが私から奪ったものを」
 マリウスを見上げたカンナは首を傾げる。
「なにも、奪ってないと思う……」
「いいや、ひとつだけ奪ったのさ」
 マリウスは繋いでいた手を口元へ持ち上げる。
「……私の心をね」
 口付けられた右手に呆気にとられたカンナは、立ち上がるマリウスを呆然と見上げる。
「では、また」
 立ち去っていくマリウスの後ろ姿に、カンナの中でどんな感情が芽生えたのか。
 それは本人のみが知ることだろう。


『無意識下の狂詩曲』
 ウケツによる放送が流れたのは、【チョウザ・コナミ】がちょうど食堂から出た時だった。
「なーんか騒がしーと思ったけど」
 チョウザは舌で歯列をなぞる。
 口の中に学食の風味が、未だ残り続けている。
(何? ……惚れ薬? さっきの学食に?)
「……だーれが作ったんだか。趣味悪さが学園長様85人分じゃん」
 我関せずとばかりにチョウザが足を向ける先は寮の自室。
 彼女は自室でに帰って寝ようと、そんなことを思い描く。
「ザコちゃんそんなお気持ちわかんないし? 湧かないし? ザコちゃんにそんなお気持ち湧くお人もいないじゃん? ここには」
 だれかに言い訳でもしているかのように、つらつら独り言を流していくチョウザは、服の胸元をきつく握りしめる。
 それは彼女も知らない、無意識の行動。
(そったらザコちゃんひとり篭れば解決。よゆーじゃん)
 長い廊下のその先にぼやきながら、チョウザは扉に手を掛ける。
「……恋、知らないけど知ってるよ。くそ貴……高慢なお人が人間に汚い所持所有欲向ける時、良く使うやつでしょ?」
 彼女は廊下を背に、吐き捨てる。
「知ってたまるか」
 言葉は扉に阻まれ、廊下に響くことは無い。
 チョウザは服をなおもきつく握りこみ、その場に蹲る。
(そーいや胸と呼吸がキツい……けど、なんだろ。疲れてんのかな。いっか)
 静けさを保つ寮の中、彼女は寝れば治ると、頭までを布団で覆い、きつく目を閉じた。

 【ヒューズ・トゥエルプ】はしきりに首を振っていた。
 自身の抗えない欲と煩悩を振り払うかのように、何度も何度も。
「はー。やれやれだわ。やれやれだよ。やれやれやれ」
 彼が放送を聞いたのは、今から実に三十分前のこと。

 その時彼は悠長に、煙草の箱を弄びながら知識と現状を擦り合わせていた。
(惚れ薬、ね。子供騙しっつーか、プラシーボ効果……だっけ。生姜や鷹の爪のような辛味のある食材から抽出した汁なんかを混ぜ合わせれば体温は上昇する。そいつと恋心を上手いこと絡めて、ドキドキによって生じた体温上昇のように錯覚させる。……この惚れ薬だって実態はそんなことだろう)
 その態度は、『余裕』。そんな言葉がしっくりくる、そんな悠長さ。
「……っと、悪い、ぶつかるとこだった」
「いーよ、ぶつかってないし。ザコちゃんも前見てなかった。お互い様」
 見上げるエメラルドグリーンと視線をすれ違わせ、食堂から出て行く赤い髪をぼんやりと目で追い、時間を取り戻したかのように動き出す。
「ごちそーさん」
 軽く手を振り、食堂のおばちゃんに挨拶をしたヒューズは寮へと向かう。
「生憎、青春に手間暇惜しまぬ若人って訳でもないからな。飯食った後は、惰眠とヤニを貪るに限るってなもんで」
 ヒューズは箱から煙草を一本出し、またしまうを繰り返した。

「あー……で、俺ぁ自室で眠ったはずなのに、目が覚めたら女子寮の前だよ」
 ヒューズの鼓動が跳ねる。
 高揚した、後悔が微塵も見当たらない高鳴り。
「体は正直だった。こりゃ、不貞寝を決め込もうにも鼓動が煩くて眠れねえや」
 反省した。そんな形を、肩を竦めて取ったヒューズの脳裏に、鮮やかな赤色の髪が浮かぶ。
「……そうさな……。ザコちゃんに会いに行くか。確か『福の針』を持っていたよな」
 ヒューズは禁断の女子寮へと足を踏み入れる。
 その足取りは軽かった。

 ……眠れない。
 チョウザは本日何度目の寝返りを打つ。
 息は荒く、頬は紅潮している。
 苦しいくらいの動悸に、薄らと目尻に涙が浮かぶ。
(なにこれ。遅効性の毒? 魔術? 謎)
 チョウザの頭に、次々と言葉が浮かんでは消える。
 きもちわるい。布団が煩わしい。暑い。
 熱でも出ているかと勘違いするほどに息苦しく、身体は火照る。
 チョウザの脳裏にぼんやりと、拒絶と衝動と情欲が混じる。
(見ないで。痛い。欲しい。……何が?)
 しかし彼女にとって、その感情は未知。
 今まで体験したことの無い感情の波に、ひとり恐怖する。
「……ましになれば眠れる。こわい。眠れば治る、消える。お願い、ねむらせて」
 か細く呟く言葉は布団にくぐもっては消えていく。
(どうしよう。人の顔がたくさんうかぶ。うるさい、消えて。……なにかを忘れている。なにを?)
 滲むチョウザの視界に、見慣れた緑色のシルエットが映る。
「……ふーどさま? ……て、かして」

 ヒューズは予想外の衝撃に硬直していた。
 包まった布団の隙間から顔を覗かせるチョウザの不安げな目に、心臓を鷲掴みされたかのような、そんな衝撃を一身に受ける。
 有り体に言えば動揺している。
 不安げに取られた手に汗を掻く。
 ヒューズからの拒絶が無いことを受け、チョウザはその腕を胸に抱き込む。
 その姿は、まるで悪夢を見た幼子が助けに縋るかのような、そんな姿。
「やべ……手汗かいてきた……」
 言葉少なめに抱き着くチョウザ。彼女にヒューズは視線を遣る。
 頬が紅潮し、目尻に涙を浮かべる弱々しい姿に、彼の中の何かが抉られる。
 予想外に優しい手つきだった。
 彼はチョウザの前髪を人差し指で掬い上げ、目尻に浮かぶ涙を拭い取る。
「たぶん……煙草のフレーバーの味がすると思う」
 自然な流れで後頭部に手を添え、エメラルドグリーンと見つめ合う。
 言葉は交わさない。
 ゆっくりと詰められる距離。
 鼓動は高鳴る。
 緊張で表情が強張るヒューズとは対照的に、安心しきった表情で身を委ねるチョウザ。
 ヒューズよりも小柄なチョウザの身体。
 彼は彼女の身体をその腕の中に抱き込み、唇を近付け――。
「はーぁ、授業つっかれたー……ぁ?」
「あ」
 唇と唇が合わさる直前。
 ヒューズの身体が固まる。
 それは部屋へと入ってきた制服を纏う見知らぬ女子生徒と視線を合わせながら。
「あ、部屋間違えちゃった? あー、間違えてるねー。あはははは……」
「は、ははははは……」
 ぎこちなく笑い合うヒューズと女子生徒の間に流れる均衡は、突如上げられる女子生徒の叫び声によって崩れ去る。
「って! あたしが部屋を間違えたことはどうだっていいわ! なんで男子がここにいるのよ! ここ、女子寮よ?!」
 今にも寮母を呼んできそうな剣幕に押され、ヒューズは窓を開ける。
「撤退っ!」
「あ、待て!」
 窓から飛び降りたヒューズ。
 脳を支配していた、違和感のある熱情が覚める。
 代わりに胸にほのかな温かさを灯しながら、ヒューズは走り去る。
「ったく。とんだ悪ガキもいたもんだ。……なんかされそうになってた本人は、まあ安心して寝ちゃってさぁ」
 女子生徒が静かに出て行った部屋の中。
 チョウザは幼子のように無垢な笑みを浮かべ、穏やかに寝息を立てていた。

『理性と野性』
 苛ついた風に髪を掻きむしり、尻尾を足の間に丸めて劣情に耐える。
 今現在、【ヘルムート・アーヴィング】はそのような格好を取りながら、食堂で頭を抱えていた。
(ああ、なんて事だ、落ち着かないのは妙な薬のせいか……! 朝食に混入していたのか? クソ……ッ!)
 必死に煩悩を身体の外へ逃がそうと、頭の上で拳を握る。
「しかもよりにもよって……」
 彼の頭の中では、おそらく薬を飲んでから今までに出会った人たちが浮かんでは消える。
 その中に、白髪を靡かせるドラゴニアの女性が存在することに、ヘルムートは胃痛を覚えた。
(朝食で一緒になった……【シルワ・カルブクルス】君も候補に入ってしまうなんて)
 小さく存在を主張する胃痛に、ヘルムートは呻き声を上げる。
「兎にも角にも……薬を探し当てないと」
 叱られた子犬のように耳を垂れさせながら、ヘルムートは席を立つ。
 脳裏に浮かぶシルワの姿は、ヘルムートの長姉を連想させ、落ち着かない気分にさせる。
 彼は再び痛み始めた胃を摩り、ひとまず食堂のおばさんたちに話を聞きに行った。
 無様な真似はできないと、固く拳を握りしめながら。

『現在、食堂や購買にて惚れ薬の混入が確認されています。直ちに食べ物等を口に入れるのをやめてください。また、惚れ薬を飲んでしまった可能性のある方は――』
 スピーカーから流れるウケツの注意に、シルワは胸を抑える。
「この気持ち……もしかしてあの時それが入っていたの……? はやく治さなければ……だけど……」
 頭に浮かぶ人々はまだ少ない。
 それは恐らく、惚れ薬を口に含んだとされる時間から、まだそんなに人と会っていないためだろう。
 視線を落とし、シルワはできるだけ行きかう人と視線を合わせないように努める。
「今、多分飲んでから……十五分」
 朝食を食べ終わった時間を計算し、おおよその経過時間を算出する。
「……苦しい」
 熱っぽい息を吐く。
 頭に浮かぶ数少ない人々の姿を振りほどくことができない。
 中でもより鮮明に映るのは、狼の耳を揺らしながら正面で同じく昼食を共にしていたヘルムートの姿。
(好物でもあったのかな……。尻尾、勢いよく振ってたの、可愛かった)
 首を振り、思考をリセットする。
「……よし」
 頬をひとつ、叩く。
 シルワは惚れ薬を探しに、購買へと足を向けた。

「ああ、放送で言ってたあれだね。購買に、それっぽいものは入ってなかったと思う」
「そう、ですか。ありがとうございます」
 購買にて聞き込みをしていたシルワは、収穫がなかったことに肩を落とす。
「君も飲んじゃったの?」
「はい、実は……」
「そう、大変だね。……気を落とさないで。僕の方でもなにかそれっぽいものを見付けたら教えるからさ」
 購買のアルバイト店員は、そう言いながらシルワの肩に手を置こうとする。
 しかし、鋭い音を立ててその手は振り払われる。
「触るな」
 振り払った人物は、不機嫌そうに眉間の間に皺を寄せるヘルムート。
 唸りながら身体を前に乗り出し、全身でシルワを庇うその姿に、店員は後退る。
「や、やだなぁ。慰めようとしていただけじゃないか」
「そうか。ならばさっさと去れ。あとはこちらで何とかする」
 ヘルムートは店員に視線を合わせ、唸り声を大きくする。
 さながら威嚇。否、彼は正しく威嚇していたのだろう。
 証拠に、耳は店員の方を向き、尻尾は逆立ちながらゆっくりと揺れている。
「あ、ああ、そうするよ。仕事もまだ残っているしね、はは……」
 苦笑いを零しながらそそくさと奥へと引っ込んだ店員に、ヘルムートは鼻を鳴らす。
「まったく、惚れ薬を飲んだ事実をいいことに、あわよくばと思ったんだろうが」
 そんなことはさせてたまるか。
 ヘルムートは心中で呟く。
「ヘルムート……さん……?」
 シルワは振り返って見上げてしまう。見上げてしまったのだ。
 視線が交わる、その瞬間。ヘルムートの頬が朱に染まる。
 彼が店員と視線を合わせてもなんとも思わなかった原因はここにある。
 惚れ薬を服用後、きっかり三十分。
 彼は熱愛期に突入していた。
「こ、こっちを、こっちを見ないでくれ!」
 ヘルムートは両手の甲で顔を隠すが、その赤い顔は隠しきれていないうえに、尻尾は千切れんばかりに振られている。
「ああ、そうだ、そうだ。ここに丁度良い大鎌がある。死なない程度に重症になれば、他者に危害を及ぼす事はないだろう」
「ま、待って!」
 錯乱したように鎌を自身に向けて振り下ろそうとするヘルムートの腕をシルワは掴み、止める。
「止めないでくれ! 君に危害を及ぼしたくない!」
 暴れながら、しかしシルワを傷付けまいと優しい手つきで距離を取ろうとするヘルムートに、シルワは愛しさを覚える。
(この人に愛されたい)
 今告白してもいいだろうか。いや、しかしまだその段階ではないのでは。
 思考が回り、シルワは混乱する。
 混乱した頭で絞り出した言葉は、やはり混乱したもので。
「あのっ。抱き着いても、いいですか?」
「……は?」
 鳩が豆鉄砲でも喰らったかの表情で、暴れていたヘルムートの身体は止まる。
「ごめんなさい、失礼します」
 ヘルムートの固まった身体に抱き着こうと、彼女は恐る恐る腕を伸ばす。
 惚れ薬の影響か、シルワの白い頬は苺のように赤く染まり、緊張からか、その両目には涙が浮かぶ。
 やや上目気味に様子を窺ってくるシルワの姿に、ヘルムートは耐えきることができなかった。
「シルワ君、すまない!」
「え、きゃっ……んっ、いった……!」
 合わさった唇、立てた牙。
 数秒重ねた唇を離せば、ヘルムートの牙から僅かばかりの赤い液体が垂れる。
 それは唾液に混じり、シルワの唇へと繋がっている。
 互いにぼんやりとした思考が徐々に醒めてくる。
 繋がる赤い糸を見て、頬の熱が冷めないシルワとは対照的に、ヘルムートの顔からみるみる血の気が引いていく。
「お、俺はなんてことを! すまない、嫁入り前の女性にこんな、あああ! 本当に申し訳ない、責任を取って自害する!」
「気にしてないです! そこまでしてもらうほど気にしてませんから!」
 一度止めたはずの大鎌を自身に対して振り回す動作。
 動くことを思い出したゴーレムのように再び動き出したヘルムートは明らかに錯乱していた。
 それを止めようとするシルワの焦りが大半を占める表情には、どこか暖かな感情が灯っている。
 まだ薬の影響が残っているのか、はたまた、薬とは無関係に生まれた感情か。
 それを知ることのできる者は、少なくとも今現在、ここには存在しない。
 ひとつ確かに言えることは、この先どうなるかはシルワ、そしてヘルムートの気持ち次第であること。
 未来の予感を肌に感じながら、シルワはヘルムートの混乱を落ち着けようと動き出した。

『恋と殺意は紙一重?』
 『食堂でジュースを貰ったところ、惚れ薬でした』
 そんな、ライトなノベルのタイトルにでもなっていそうな状況の中、【リズリット・ソーラ】は真顔で驚いていた。
「惚れ薬? えっほんまに?」
 リズリットは頭を抱える。
(……えらいこっちゃ)
 リズリットが頭を抱える正面、【仁和・貴人】(にわ・たかと)が思案するように仮面に手を添える。
(惚れ薬のばら撒きか……。自分に実害がなければ笑って眺めてられたんだがこういう状況じゃ笑ってられないよな……)
 貴人の目の前には、奇しくもリズリットと同じ種類のジュース。
 ……惚れ薬が混入したジュースが、既に半分以上、貴人の胃の中に流し込まれていた。
 しかし、貴人はそれに惚れ薬が混入しているとは思ってもいないし、リズリットと同じ種類のジュースを飲んでいることにも気が付いていない。
「……とりあえず、解決に向かって惚れ薬を飲んでしまったと思われる人物と惚れ薬を回収しようと思うが……」
 貴人に話しかけられたリズリットは、弾むように顔を上げる。
 視線と視線が交わった時、リズリットは内心、(やってしまった)と思った。
「あ、あわわ……! 目が合ってもうた……!」
「あ、ああ、すまない。たしか、目が合ったらいけないんだったよな……。もう合ってしまったけど……はは」
 貴人は、先ほどまでのリズリットと同じく頭を抱えた。
 黙考の後、リズリットが椅子から立ち上がる。
「とりあえず、こんなこと考えててもしゃあないし、薬探そ。お互いこんなんアカンやろし」
「……ああ、そうだな。……元凶っぽいウツ・ケ研究職員も確保したいところだが、どうだろうな?」
 真剣な貴人の横顔に、リズリットの顔に熱が集まってくる。
(なんだかちょっとドキドキする。同じコースだし、知らない人……とはちゃうけど。何や緊張する。どないしよ)
 リズリットが無言で俯いていると、思考から戻ってきた貴人が手を一つ叩く。
「食堂や購買に混入しているであろう惚れ薬を探し当てるよりも、元凶を探して直接もらった方が手っ取り早いと思うんだ。オレは探しに行くけど、ソーラくんはどうする?」
 貴人が差し出した提案を、リズリットは跳ねるように掴み取る。
「う、ウチも行く!」
 まるで飼い主に甘える子犬のようなリズリットのその姿に、貴人は仮面の下、暖かな笑みを零した。

「いたか?」
「ううん。居らんよ」
 天井裏を覗いていたリズリットは、貴人の呼び声に脚立から飛び降りる。
「職員棟にもいない、寮にもいない、活動中の教室にもいない。……空き教室ならいそうだが、この学園に空き教室なんてどれだけあるか……」
 悩む貴人を横目に、リズリットはほんの少し距離を取る。
(少し、疲れたのかもしれん……)
 急に動悸が激しくなってきたリズリットは、苦しさを誤魔化すようにしゃがみ込む。
 リズリットの額から流れる汗は、貴人の思考の邪魔をする。
(どう見ても……ソーラくんが……いろっぽぉい……)
 リズリットの一挙一動が貴人の視界に鮮明に映る。
 貴人は、鼓動の高鳴る音を通り越し、健全な青少年的劣情を胸に抱く。
「……ウツ・ケ研究職員がいなければ……そうだ」
 その時貴人に電流走る。
 それはもう天才的と言わざるを得ない閃きが彼の脳内に光を灯した。
「学園長なら、何とかできるかもしれない!」
 貴人は前を見据え走り出す。
 リズリットはその後姿の、少し後ろで駆けていった。

(胸が苦しい。……頭が痛い)
 リズリットは走りながら、必死に自身の中にある不快感とも呼べる違和感と戦っていた。
(ノイズが走る。その人のことしか考えられない)
 リズリットは、薄く充血した目で、走っていく貴人の後ろ姿を見る。
(ああ、間違いない。これは)
 リズリットは目を閉じる。
 心当たりも何もない、そんな残念な気持ちをうまく内心に押し隠し、背中を睨みつけたリズリットの視線は鋭い。
(――殺意だ)
 彼に殺意を抱いた経緯に心当たりはない。
 ごく一般的な学友として過ごしていただけに、残念でならない。
 そんな気持ちを、溜息と共に外へ流す。
「……やっぱり、壊すことしか、できないんかな」
「うん? 何か言ったか?」
 微かなリズリットの呟きに振り返った貴人は、作った笑顔のリズリットと目が合う。
「……ううん、なんでもないんよ」
 リズリットの少し後ろで、よく似た顔の女の子が嘲笑っている気がした。
(きっと、幻視)
 女の子の幻影をリズリットが振り払った頃、二人は学園長室に辿り着く。
 リズリットは部屋の扉を押し開けようとしている貴人の背中を見つめる。
 その目には、殺意にも似た憧憬と、好意とほんの少しの怯えが入り混じる。
「メメたん学園長ー……」
 広い学園長室の中に、目的としていた【メメ・メメル】学園長はいない。
 代わりに、部屋の中央で椅子を広げ、その上に陣取っているひとりの男性がいた。
「やあ。この騒動の中、ここに辿り着いたのは君たちが初めてだよ」
 彼は椅子から飛び降り、慇懃に会釈をする。
「君たちは……初めましてだったかなぁ? 俺はしがない研究職をしているウツ・ケという者だ。よろしくねぇ」
 定まらない口調、人を食ったような笑み。
 そのすべてが、彼が人をおちょくっては嘲笑うような人種であることを物語る。
「あんたが元凶か」
「元凶だなんて失礼な。……人に愛され、そして愛する。それはとても素晴らしいことじゃないのかい?」
 貴人は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、強い口調で否定する。
「それが薬で強制されたものでなければな」
「ウツ・ケ研究職。ウチらは惚れ薬の解毒方法を探しているんよ。余りを持ってたら譲ってはくれへん?」
 リズリットの問いかけに、ウツは大袈裟に肩を竦めて首を振る。
「残念ながらね。俺はそのすべてを食堂や購買や、その他ありとあらゆる場所に放り込んできてしまったんだよねぇ」
「そんな。それじゃあ、このさつ……気持ちはどうすれば」
 リズリットは少々の絶望を覚える。
 惚れ薬なるものを解毒できれば、少なくともこの殺意を軽減できるかもしれないと期待していたために、余計に。
「……うん? 君たちはウケツの放送をぉ、聞いていなかったのかなぁ?」
 ウツの笑みが深くなる。
 貴人とリズリットは互いに顔を見合わせ、首を傾げる。
「解毒方法はぁ、惚れ薬をもう一錠飲むか」
 ウツはその唇に人差し指を当てる。
「キス、それか、ハグ」
 単語を聞いた若人二人は固まる。
 愉快そうに笑ったウツは翻り、彼らの背中側へ周る。
「それじゃあ、頑張ってくれよ」
 その言葉と共に扉が閉まっても、しばらく二人は言葉を失ったままでいた。
「……え、ハグしてもいける?」
 放心状態から先に戻ってきたのはリズリットの方。
 貴人の方へ手を伸ばしては引っ込める。
(……あ、あかん。うっかり力入れすぎて、どっか傷めでもしたら……!)
 リズリットは少なくとも今、現在、貴人に対して殺意にも似た思いを抱いていることを自覚している。
 そんなリズリットが貴人を抱きしめれば、傷付けてしまう。
 そんな思考が脳内に渦巻く。
 漫画であれば目の瞳孔が渦巻き型に変化していそうなほどに狼狽えるリズリット。
 その身体は、突然ぬくもりで包まれる。
「え……」
 驚いたように目を見開き、ぬくもりの正体を見定めようとするリズリット。
 視界の焦点が合わされば、ぬくもりの正体は貴人であることが分かる。
 彼は数秒、リズリットを抱きしめて、緩慢な動作で身体を離す。
「ハグで何とかなるんだったら、最初っからやってればよかったな」
 リズリットの胸から、殺意にも似た感情が消えていく。
 安堵したリズリットの表情が、きっと貴人には見えているのだろう。
 仮面の下で笑顔を浮かべているであろう貴人に、リズリットは胸元を抑えながら言葉を紡ぐ。
「あ、あのな、ウチ、ずっと言いたかったことがあるんよ」
 それは乙女たちが想いを告げる、一世一代の告白にも似た雰囲気。
「……実は、ずっと思ってたんよ……キミのことかっこええなって」
 まさか。そのまさかか。
 一般的な感性を持っている人であれば察することもできるであろう、その言い回し。
 しかし貴人は察することすらできずに、その場で首を傾げているばかり。
 リズリットはそんな貴人に気が付かないまま、言葉を吐き出す。
「キミの……その戦闘スタイル、かっこいいなって」
 親指を立てたサムズアップ。
 ここにボケとツッコミのどちらかと言えばツッコミの方がいれば、『違う、そうじゃない』とでも言ってくれそうなセリフ。
 しかし貴人は、素直に喜びを返した。
「そうか? かっこいいか?」
「うんうん、かっこいい。大鎌、ええよね。うち何だかんだで大鎌が一番馴染んだから」
 まあ、今使ってるのは……拾った奴やけども!
 そんなことを宣うリズリットに、貴人は機嫌よく相槌を返す。
 ラブかライクかで言えば、ライク。
 二人の間に産まれかけた甘い感情は、親愛の抱擁と共に消滅した。
 その代わりに大鎌使いとしての共感と絆が、ほんの少しだけ深まったのだった。

『後日談』
 あの惚れ薬騒動から早三日。
 ウケツは今日も書類仕事に精を出す。
「お疲れ様です、ウケツ先輩」
「お疲れ様です。この間はありがとうございます」
「いえ、無事に回収できて、本当に良かったです」
 ウツ研究職がばら撒いた惚れ薬は、ウケツ他受付職員たちと、その他有志の生徒たちによって無事に回収された。
「結局回収し終わるまで通常業務は止めざるを得ませんでしたし……。こんな騒動はもう二度と起きてほしくないですねー」
 後輩職員の嘆きに、ウケツは『そうですね』と生返事を返す。
「まあ、でもあいつのことです。そうですね、きっと今頃、鼻歌でも歌いながら――」

 青空に白い雲。
 ありふれた景色を見上げ、鼻歌を歌うウツは、思い切り伸びをする。
「さぁて。次は何を作ろうかなぁ」
 背中に薄らと滲む汗。
 汗ばむ熱気が、夏がもうすぐ来ることを知らせに来ていた。



課題評価
課題経験:66
課題報酬:2400
今日は惚れ惚れ
執筆:宇波 GM


《今日は惚れ惚れ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《1期生》 カンナ・ソムド (No 1) 2020-05-28 06:10:11
(カンナ・ソムド、よろしく…)

《商人の才覚》 マリウス・ザ・シーフ (No 2) 2020-05-28 23:25:00
黒幕・暗躍コースの、マリウス・ザ・シーフだ。よろしく。

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 3) 2020-05-29 00:49:33
っっっっこの!!!学園は!!!まともな人間が少ないな!!?!!
クソクソクソッ!こんな妙な薬に屈してたまるか!!!!!!
アイツみたいには絶ッッッッッッ対にならん!!!!!!!!絶対にだ!!!!!!

(背後より:ヘルムート現時点でフリー&このシナリオ以降も継続で恋愛ルート所望の方は居られるか?)

《商人の才覚》 マリウス・ザ・シーフ (No 4) 2020-05-29 05:53:44
(すぐにでも屈しそうだな……とは、言わないでおいてやろう)
ふむ……この妙な薬、分析すれば新しい7つ道具の作成に役立つかもしれない。
だがその過程でどうしても他所に迷惑がかかりそうだ、やめておこう。
それにこの具合では、どうもそれどころじゃなさそうだ……

(背後:マリウスもフリーです。継続か否かはお相手のかたに合わせられます)

《2期生》 シルワ・カルブクルス (No 5) 2020-05-29 06:21:23
村人・従者コース…のシルワ・カルブクルス…です
なんだか体調が優れない…ような気がしましたが、薬のせいなのですね
なんとか、その薬かみなさんを探し出してこの状態を直さないといけません

(背後:シルワも基本フリーですが、期限まで希望がない場合は独断と偏見で絡ませていただきます。ルート突入は相手次第ですね。)

《1期生》 カンナ・ソムド (No 6) 2020-05-29 07:03:22
(カンナも現時点でフリー、せっかくの機会だから誰かと一緒に組んでみたいなぁって思っている)

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 7) 2020-05-29 11:50:37
先ずは手分けして薬を探し出すのが良いだろう。
見つけたら先ずは当人が飲み、正気に戻った後に改めて他社の分も確保し配布する。
しかし、症状の進行も時間の問題だろう。俺が正気を失う事があれば遠慮なく殴ってくれ。

(背後:皆様も組まれた相手次第で今後も関係継続するかも、という所ですね。かしこ。じゃあ悩ましいですがヘルムートと相性が良さそう(独断と偏見)なのでシルワちゃん、組んで頂けませんでしょうか...?)

《勇往邁進》 リズリット・ソーラ (No 8) 2020-05-29 12:14:16
えぇっと……魔王・覇王コースのリズリット・ソーラ。
今回もよろしゅう……してる場合やないなこれ…
うん、手分けして探そう。何処にあるかはまだ検討つかんけど、はよ見つけんと…
…その、変な事になったらごめんな?…さっきから、ずっと…変な音する…(頭抑え)

(以下PLより、リズリットもフリーです。継続単発はどちらでも、くじに身を任せても問題なしなのです)

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 9) 2020-05-30 21:49:07
魔王・覇王コースの仁和だ。
あちこちで恋に落ちる音がする。
・・・大変なことになってしまったな

(背後:フリーですが基本単発でお願いします。)

《1期生》 カンナ・ソムド (No 10) 2020-05-31 03:41:08
(うーん、どうしよう…)

《商人の才覚》 マリウス・ザ・シーフ (No 11) 2020-05-31 06:15:15
ハグくらいなら、私は抵抗はないが……
いや、この8名だけで済めばいいが、これ以上学園に惚れ薬の脅威が広まったら危険だ。
目を合わせないように聞き込みをしてウツの動向を探り、薬の在り処を特定するとしよう。

(ではカンナさん、マリウスと組んでいただけないでしょうか?私もどうせなら誰かと組みたいと思っていたところなので……)

《1期生》 カンナ・ソムド (No 12) 2020-05-31 10:42:31
(了解、マリウス…それじゃあ私と組もう…)

《勇往邁進》 リズリット・ソーラ (No 13) 2020-05-31 17:55:38
(PL:皆さんまとまってきた感じですね。
貴人くん、もしNPCの方と組む予定がなければご一緒してもいいでしょうか?単発ということなのでOKでしたらその流れでプラン考えていきたいと思ってます)

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 14) 2020-05-31 17:59:34
(背後:リズリットくん、是非に!ですよ。
やりたいこと、やって欲しいことあれば言ってくださいねー。
不都合なければそのように動けますので)

《1期生》 カンナ・ソムド (No 15) 2020-06-01 13:46:11
(プレイングに関してだけどマリウスの作戦にあわせるよ…)

《商人の才覚》 マリウス・ザ・シーフ (No 16) 2020-06-01 21:24:20
ではカンナ先輩、改めてよろしくお願いする。
先ほど述べたように、薬の在り処を特定して服用することで症状を回復しようと考えている。
そのために、自由に使える調味料の類を置いている食堂などにて、
怪しい人物の出入りがなかったか、調味料から目を離していた時間は……といった具合で調査するつもりだ。

……だが、主だった行動は私に任せてほしい。
キミはとても魅力的な女の子だから、こんな状態で人目に触れるのは危険だ。
ともに動いてくれるなら、手を引いて連れていこうと思うが……それでどうだろうか?

《1期生》 カンナ・ソムド (No 17) 2020-06-02 00:04:28
(改めてよろしく、マリウス…うん、もしかしたら薬の力でうまく自我が保てなくなりそうだから手をつないで、エスコート、よろしく…)

《2期生》 シルワ・カルブクルス (No 18) 2020-06-02 00:09:34
私も大変なことになりそうですし、注意しながら聞き込みをした方がいいですね

(背後:了解しました。実際、誰も誘われなかったらヘルムート君へ絡もうかと思ってたところですしちょうどいいですね)

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 19) 2020-06-02 20:10:50
時間が無い。
僕は某男と同じ姓だが…ケダモノではない。
そんな可能性すら内包していない、と誓う。

なんとか錠剤を見つけ出し、被害が出る前に…、
特にお互いの関係が壊れてしまわないように全力を尽くそう。

(背後:ありがとうございます!シルワちゃんのナイトだ~わ~い!)