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隣の黒猫


ストーリー Story


 吾輩は猫である。名前はもうない。
 村の人間どもは吾輩の毛並みが黒いからクロであるとか身体が少しばかり大きいからデブであるとか好き勝手言っているようだが、そんな名前が吾輩の物であるはずがない。というか前者はともかく後者は失礼だと思わぬのだろうか。
 だが、良いのだ。それに吾輩が反応することこそないが、今更吾輩の名を誰かが呼ぶことなど期待してはおらぬ。吾輩の名を呼ぶ主はもういない。数年前にもう光となってこの世から消えてしまった。吾輩は立ち会うことは出来なかったが、看取った者たちは皆大往生だと口にしていた。ならば吾輩としては何も言うべきこともない。
 吾輩もそれなりに老いた猫である。すぐに主の後を追えるかと思っていたが、身体に溜め込んでいた栄養は主がいなくなって数年経った今も吾輩をこの世に繋いでいる。こればかりは少し肉付きの良い体が恨めしいが仕方のない事であろう。
 それに、主を失ってから今に至るまでの時間もそれほど悪いものではない。村の誇る香木で作られた、主の名が刻まれた墓標の下で日を浴びながらまどろむ時間は中々に心地が良い。風の一つも吹けば主の膝の上でブラシをかけてもらいながら眠っていた頃を思い出すことが出来る。
 こうやってかつてを振り返りながら主との再会を待つだけの日々を退屈だと思わなくもないが、主は喧噪よりも静寂を愛する人だった。光と融けた存在を眠ると評すのはおかしな話なのかもしれないが、眠る主を無暗に邪魔するのも忍びない。
 故に。この不埒な輩は除かねばならぬ。どうも主の墓標を餌と見たらしいが吾輩の猫目が黒い内はそれは叶わぬとこの辺りにいるならば理解すべきであったのだ。
 相手は普段いたぶるネズミに比べれば随分と大きく力強いようだが、何、問題はない。
 
 吾輩は猫である。猫は誇りに生きるモノ故、退くことなど出来ぬのであるから。


 そのアリ型の魔物は『ノッソ』という村の周辺に生息しているため、『ノッソアント』と呼ばれている。
 種族としては図鑑にも載るような有名なアリの魔物に似通っているのだが、その中にノッソ村の周辺に住み着いている一派がおり、好物の違いなどから有名所とは別種として扱われているらしい。
 好物の違い――とはすなわち、ノッソ村特産の香木を好むか否か、という一点を指す。
 ノッソ村の周辺ではとても良い香りのする木が採取できる。村の人々はそれをお香などに加工し名産品として扱っているのであるが、ノッソアントはその木を何故か気に入ってしまい定住してしまった過去があるようだ。
 名産として扱う材木を好んで食べる魔物となれば当然村の住民との衝突も古くから発生している。特にこの時期は繁殖期のノッソアントが餌を求めて人里近くまでやってくるため、『フトゥールム・スクエア』にも討伐依頼が舞い込んでくることが多い。
「と、いうことで君たちには数日ノッソの村に滞在してもらい、村周辺を捜索したり迷い込んできた奴を倒したり、ノッソアントへの対応をお願いしたいんだ。毎年の依頼だから村の方も皆に色々協力してくれると思う」
 出発前に依頼を受けた勇者候補生たちへ説明を行うべく、学園の教師は黒板に描かれたアリのようなイラストをこつんと拳で小突いた。
「ノッソアントは風属性。動きはそれほど素早い訳ではないけれど、身体は中々頑丈だし噛みつかれると結構痛いよ。香木が好物ではあるけれど雑食みたいで、肉にかじりつくのに遠慮はないみたいだね。もう一つ注意してほしいんだけれど、このアリ、たまに酸を吐いてくるんだよ。ダメージが大きいってのもそうだけれど、酸が防具に触れちゃうとちょっと脆くなっちゃうんだよね。防具が劣化しちゃっても学園に戻れば修理できるから破損の心配はしなくていいけれど、戦闘中に防具が劣化して、そこを食い破られて大怪我したってケースが過去に何回かあったから気を付けてね」
 それじゃあよろしくね、と教師の声を背に朝方学園を出発し、馬車がノッソの村に到着したのが昼頃の話である。
 教師の言っていた通り村人たちは学園から応援を呼んでの対処にはもう慣れっこのようで、やってきた勇者候補生たちを歓迎してくれた。
 それだけ学園への期待値が大きいのだろうし、襲撃の頻度も高いのだろう。その証拠に簡単な自己紹介と打ち合わせを終え、村周辺の地理の把握を兼ねて軽く巡回を始めたと思ったらすぐに村人からノッソアントが共同墓地の方へと向かっていくのを見かけた、という報告を受ける。
 向けられた期待に応えるのが勇者のあるべき姿である。今いる場所から墓地へ向かう道を確認し、勇者候補生たちは一斉に走り出した。
 

 村の墓地にたどり着いた勇者候補生たちの目に映ったのは、少しばかり意外な光景であった。
 巨大なアリ――おそらくノッソアントと、黒猫が争い合っている姿だ。争い合っている、と言ってもノッソアントの方が体長も能力も勝っているのは一目瞭然で、黒猫はすでに痛々しいくらいに傷だらけである。
 それでも猫とは思えぬほど恐ろしい威嚇の声を上げてノッソアントへ飛び掛かる黒猫を前にして、一瞬だけ周辺の確認に時間を使う。黒猫の後方に木で作られていると思わしき墓標がいくつも建てられているのが見える以上、黒猫と対峙しているのは村人が報告してきた墓地へ向かったノッソアントで間違いないだろう。村の香木が好物であるというならば、墓標を餌と定めたのだと考えられる。
 だとすれば、猫さえ引き離せば墓標にかじりつくまで様子を見て、食事の瞬間の隙をつくことは出来るかもしれない。
 けれど。全身に傷を負いながらなお退く姿勢を見せぬ猫はまるで、墓標を守っているようで。その気持ちを汲んでやることも勇者には必要ではないかとも思うのである。
 
 猫と、墓標と、倒すべき魔物。どう動くべきか、各々の武器を構えながら勇者候補生たちは思考する。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-07-25

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-08-04

登場人物 7/8 Characters
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。

解説 Explan

・状況
 『ノッソ』の村に出没するアリ型の魔物を退治する依頼を受けた勇者候補生は、村人の報を受けて村の墓地へと急行する。
 その墓地では、何かを守るように猫が魔物と対峙していた。

・勝利条件
 敵の全滅
・敗北条件
 味方の全滅

・場所情報
 村の共同墓地。日当たりが良く、足場など特に戦闘に支障がある物はない。
 ノッソアントの現在地は墓地の入口。猫の背後に木製の墓標があるのを皮切りに、奥へ進むほど沢山の墓標が建てられている。

・敵情報
 魔物『ノッソアント』×2 風属性
 体長1m程度のアリ型の魔物。雑食だが特にノッソ村周辺で取れる木が大好物。
 動きは素早くないが皮膚は硬く、顎の力も強い。
(PL情報:戦闘状態のPCがいない場合、墓標となっている木を食べ始める。この時、1Tの間無防備となる)

 使用スキルは以下の通り。
 酸:
 お尻の毒腺から発射される強力な酸。場合によっては防具が劣化することもある。
 魔法攻撃扱い。命中した際、『がまん』/10 + 1D6 ≦ 7 で『がんじょうが』10低下する。(この攻撃による装備のロストなどは発生しない)

・NPC情報
 猫×1
 ノッソアントと争っていた黒いデブ猫。尋常じゃない気迫の持ち主であり、ゴブリンくらいだったら返り討ちにできそうな気すらする。
 が、ノッソアントやPC相手では流石に勝ち目がない。
(PL情報:猫にとってPCが敵ではないと判断された場合、戦闘から離脱する)

・備考
 猫の信頼を得た場合、称号が付与されることがある。


作者コメント Comment
 RGDです。猫の話です。マダニャイじゃありません。
 猫の目からみた世の中ってどんなもんなんでしょうね、とか考えていたらこんな話になりました。
 成功条件を満たすことも重要ですが、何故傷だらけの猫が勝てなさそうな魔物に立ち向かっているか、も考えてあげると良いかもしれません。

 世界は勇者を待ち望んでいる。皆さんのご参加をお待ちしております。



個人成績表 Report
チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
ザコちゃんお墓って存在自体嫌いなんだけどね。
他者に介入されんの嫌だから。死後まで。知り合いのお人も言ってた。

なんでもいーけどね。どーにもなんないし。
とりまザコちゃん囮やるね。舐め散らかしてるって【ハッタリ】かまして【挑発】しとく。
多少ならあの酸もへーきだしさ。
喰らいたいわけじゃなし、多少は動き【推測】して避けっけど。

それ以外のあれは【ヒ2】な【基本棒術】と【全力防御】とか、【千代古令糖の守り】でどこまで耐えられっか、って感じかなぁ。
【身代わりうさぎ】あるけど。1個だし。

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●作戦
黒猫、墓、どちらもやらせず、守り抜いてみせる!

●事前準備
曲がりなりにも墓参りなので、お供えと弔問の準備を。
墓に眠っている人について可能な限り確認し、保守の木材など利用許可を取れたら

●行動
チョウザと並んで『がまん』高いので(67+27で第2位)、積極的に前衛で盾役。
防具破損ははかまわず、数を減らして安全を確保する速攻狙い。

黒猫がノッソアントと戦う姿を見たら、ピンチの時は割り込みカバー。
ただ逃すのでなく誇りある墓守とみなして撤退を促すことはしない。
同時攻撃などタイミングを合わせてやったり庇ったりと、共に戦う姿勢で。

●戦闘後
黒猫と合わせて墓石の手当。
綺麗に整え、消えかけた名前は直してやりたい

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:猫の友
何で猫と蟻が対峙してるかはわからないが依頼は蟻退治だったし猫は基本無視でいいな?
ってことで蟻と墓の間に陣取るために特攻しよう
千代古令糖の守りで守りを固めて、動作察知、二段ジャンプ、緊急回避で被弾を少なくしたり最短距離で移動する

攻撃できるようなら基本鎌術、切り落とし、ウィズマ・アーダで近距離攻撃
マドで遠距離攻撃を試みるが、他の人の作戦が有効ならそっち優先だな

陣取る場所に無事移動出来たら猫に対して特級薬草を渡すが他の人が渡すのであればタイミングをずらしたしたり渡すのをやめたりする

基本、墓の防衛を考えて動くが蟻に対して攻撃が有効なら積極的に動いていこうと思う

アドリブA 絡み大歓迎

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:97 = 65全体 + 32個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
さ~て、ありんこ退治ね。まずは【事前調査】で地形を確認しておいてっと。
この時、この黒猫のこともわかればいいわね。

猫さんの漢気?に尊重して墓標を守ってあげたいわね。まずは同じように墓標に回りこみたいわね。
猫さんには【信用】【生物騎乗】【心理学】あたりで信頼を得たいところだけど、まぁお守りレベルね。こちらの邪魔さえしなければいいわ。
基本戦術は弱点になりそうな節を狙うのが良さそうね。
蟻酸に関しては運だよりね。ただ私に顔射してくるなら同時にその発射毒腺を相打ち上等で切り込みたいわね。
毒腺の発射口捻じ曲げてしまえば、こちらに当たる確率下げることができそうだし。

ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【戦闘】
【ダガーステップ】と【立体機動】で敵の攻撃を食わないように
回避性能を高めつつ、接近戦の【通常反撃】で手数を増やす。
刃が通りにくい場合は【動作察知】で蟻が口が開いた所を狙って『マカロンボム』を投げ込む。敵の酸攻撃やマカロンボムの爆発やらが墓標に被害が及びしそうな場合は身を呈して庇う。

パーシア・セントレジャー 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:195 = 65全体 + 130個別
獲得報酬:6000 = 2000全体 + 4000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:猫の友
◆目的
墓標の損害回避
個人的には猫の安全確保も

◆事前調査
元々、数日滞在する予定で、村人との打ち合わせの最中に敵襲って流れだし、敵襲前の打ち合わせ時に、魔物学、農業学を活かし「敵の性質を利用するために歪んだり割れたりして使えない香木材があれば譲って欲しい」と申し入れを試みる

◆会敵
うまく香木材を入手できたら、それをアントの目の前に放り投げ、アントの気を逸らして
それでも気が逸らせない、香木材を入手できなかった場合は、号令の鞭で強引にこちらに注意を向ける

うまく敵の注意を引いて、私達が狙われるなら猫と墓所から敵を引き離すよう徐々に動き、墓所への被害を少しでも減らして

墓所、猫が狙われたらダード、鞭で牽制

レーネ・ブリーズ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
装備してる楽器「天使の歌」で職業技能「演奏」をつかって
「味方」のたいりょくを回復します。

楽器効果:射程内の自分を除く味方全員のたいりょくを30回復する。

そのために「敵」と「味方」の位置や状況を「視覚強化Ⅰ」で確認して動きます。

また、敵の攻撃は「動作察知Ⅰ」でながれを把握し、
避けたり、防具をじょうずにつかったりしてふせぎます。

「味方」のたいりょくをみて回復に余裕があるなら
「全力攻撃」にわたくしの種族特性「フド」をかさねた「複合攻撃」を
魔物にたたきつけますね。

リザルト Result


 猫をいたぶるのにも飽きた様子を見せたノッソアントが前足で傷だらけの猫を弾き飛ばし、その喉笛に牙を突き立てようとした瞬間、双方の間に割り込むように『何か』が飛んできた。
 その何かからほんのりと発せられる香りに、ノッソアントにも猫にも覚えがあった。
「義理ニャン情に痩せ我慢……そういうの大好きだ。助太刀するぜ」
「この猫は基本的に無視で良いな?」
 香りに気を取られた一瞬で、二者の間に割り込む影がいくつか。虚を突かれながらも勢いのままに猫へ躍りかかろうとしたノッソアントを武器を振るい制止した【仁和・貴人】(にわ たかと)と【ヒューズ・トゥエルプ】。
 勢いを削がれたノッソアントが不機嫌そうに唸り声を上げる。
「ザコちゃんお墓って存在自体嫌いなんだけどね」
「まあそう言わないの。わたくしは猫さんの漢…? 漢気?に尊重して墓標を守ってあげたいわ」
「なんでもいーけどね。どーにもなんないし」
 突然の乱入者に威嚇するように牙を鳴らすもう一匹を警戒しつつ猫の様子を窺う【ニムファー・ノワール】と挑発するようにずいと前へ出る【チョウザ・コナミ】。
 無警戒ともいえる足取りで寄ってくるチョウザが尺に障るのか、彼女の視線の先のもう一匹の表情は読み取れないが、それでも強い敵意を向けてくるのが分かる。
「流石に無我夢中で食らいつく……とは行かないね」
「こうやって割り込む隙が出来れば十分よ。黒猫も墓も、どちらもやらせず守り抜いてみせる!」
 四人から少し遅れてやってきたのは【パーシア・セントレジャー】と【フィリン・スタンテッド】だ。二人の手元には何枚かの木片がある。それは先ほどノッソアントの虚を突いた『何か』――ノッソ特産の香木だ。
 これが好物、という事前情報から廃材をいくつか村人から用意してもらっていたが、それが早速役に立つ形となった。こうやって会敵してしまえばもう注意を逸らす用途に使うのも難しいだろうが、フィリンの言の通り猫への攻撃を防ぐことが出来た時点で用意の意味はあっただろう。
「そうですね。このねこさんも『味方』ですから」
 最後に一同へと合流した【レーネ・ブリーズ】がそう呟いて、静かに手元のラッパに息を吹き込んだ。
 天使がいたらこんな音で歌うのだろう。そんな風に思わせる音色が墓地に響き渡り、一同を、そして傷ついた猫へと癒しを与える。
 魔物から大切なものを守りたい――そんな意思をレーネは、あるいは他の勇者候補生たちも感じていたのかもしれない。だからこそ彼らは猫とノッソアントが争う現場へ即座に飛び込む選択肢を選んだ。
 その意思はきっと、猫にも伝わっていたのだろう。レーネの奏でる音色によって体力の戻った猫はゆっくりと起き上がる。それを認めて貴人は懐から取り出しかけた薬草をしまい込んだ。動けるならばもうそれ以上は不要だろう。
 状況を窺うように猫は周辺をぐるりと見渡した。墓標、ノッソアント、勇者の卵たち。
「行ける?」
 フィリンの問いかけに猫は『なぁ』と小さく鳴いて、一同の後ろへ下がると墓標の前で座り込んだ。
「こっちの邪魔さえしなければいいわ」
「だな。元々の依頼は蟻退治だ」
 無理に戦闘に割って入っても邪魔にしかならないという判断なのか、あるいは己が最終防衛線になるのだ、とでも言いたいのだろうか。その意図が何であれやることは変わらない、と。貴人とニムファーがそう結論付けて改めてノッソアントへ向かい合うと、残った五人もまた各々の武器を構えなおした。
 猫の視線を背に受けながら、勇者候補生たちとノッソアントとの戦いの火ぶたが落とされる。


 言語が通じる訳でもないだろうが、ノッソアントの一匹は小ばかにするようなチョウザの動きを挑発と見たか彼女へ狙いを定めた。
 飛び掛かってるノッソアントをチョウザは手の中の六角棒を盾に受け止める。ぶつかり合う衝撃は相当なものであるが、凍らせた菓子のイメージを全身に流し込む。脳内で施される暗示が軟な人体を彫像のように硬化させ、魔物とのぶつかり合いに退かぬ頑丈さを生む。
 相手の強靭な咢も流石に鉄でできた棒を食い千切るには至らない。相手方としては一度離れて口を自由にしたいがチョウザが距離を詰めるように棒を押し込んでくるのだからたまったものではない。苦し紛れに前腕を振り回すが単調ともいえる動きをチョウザは読み切っている。水平に構えていた棒を垂直まで回転させれば拮抗していたバランスが崩れ、その勢いに負けたノッソアントが宙を滑るように地面に倒れ込む。
「流石ザコちゃんだ。割り込ませてもらうぞ」
 その瞬間を見逃さず貴人が言葉と共に魔力を帯びた鎌を振り下ろし両断を試みるが、前情報の通り流石に硬い。命を刈り取る刃は鋼鉄のような表皮に阻まれ振り抜くまでには至らない。ノッソアントが抵抗するように身体を振り回し、毒腺のある尻を貴人のいる方向へ向ける。
 それを認識した貴人は素早く射線上から逃れようとし――、飛び退ることが出来ないと判断したか片手で庇うようにしながら放たれた酸をその身に浴びる。
 着ているスーツが劣化している様子はないがそれ以前の話として単純に酸が痛い。酸に触れた腕が焼けるような熱を持つ感覚に仮面の下で貴人が表情を歪めているとすかさずレーネが駆け寄って。
「大丈夫ですか? 今、回復を」
「……っ、すまない」
 その隙に体勢を立て直したノッソアントは立ちはだかるチョウザを前に迂闊に攻め入ることが出来ず、睨み合うように膠着状態に入っている。
 奏でられるラッパの音を背中で聞きながらチョウザはちらと後ろに意識を割いて、一人納得する。そもそもノッソアントの挙動に気づいたタイミングを考えれば彼に回避が出来ぬはずがない。いくつかの授業を共にしたことのある仁和貴人という人間を彼女はそう評価している。
 ならば何かしらの理由があって然るべきであり、その答えは貴人の背後にある墓標に違いあるまい。酸の射程は不明であるが、勢いが良すぎれば墓まで酸が飛ぶ可能性も確かに考えられた。
 猫など無視していても良い、と口にしておきながらそれが守りたかった物を無視できない様子は卵とは言え流石勇者というべきか。
 軽口が飛び出しかけたがチョウザは意図して表情を消して口を閉ざした。本人が無視していいと口で言っていたならあえて触れぬのはモブの嗜みだろう。
「魔物の生活習慣にどうこう言うつもりはないんだけどもさぁ。死後も他人に介入されるのザコちゃんも嫌いだよ。知り合いのお人も言ってた」
 だから、と。チョウザは手の中の棒を持ち直し、改めて常の通りのふざけたような半笑いを浮かべた。
「他のゆーしゃ様たちが来るまではモブの根性、見せちゃおっかな?」


 もう一匹のノッソアントも勇者候補生たち相手に攻めあぐねているようであった。
 頑丈な表皮が即座に倒れることこそ防いではいるが、四人からの間断無き攻撃の前に中々攻めに転じることが出来ないのだ。
「気を付けてヒューズさん、そっち行ったわよ」
「ああ。当たらなければ、どうってことは無い」
 舞う様な軌跡で振るわれるニムファーの双剣から逃れるようにヒューズへと向かうノッソアントに、彼が慌てる様子はない。前腕で体勢を崩して牙で噛み砕く意図の見える動き。ヒューズはノッソアントの射程外に逃れるのではなく打ち合うことを選んだ。双剣で突き出された前腕の軌道を逸らし、噛み砕きにつながる突撃に合わせるように踏み込む。交錯、その瞬間に斬り付けられたノッソアントの関節部から血が噴き出す。
「――ッ!」
 ならば、とノッソアントは尻を横に薙いで酸を周囲にばら撒いた。狙いなど付ける様子もない、誰かに運よく当たれば良い、程度のやぶれかぶれの動作。
 墓標へ被害が飛ばないようにフィリンは盾で酸を受け止める。しゅう、と小さな音を立てて焼ける愛用の武器と、頬に触れた飛び散った酸の痛みに一瞬で頭に血が昇る。学園生となって一年が経過しかなりの経験を積んだ自負はあるが、地は中々矯正できるものではない。三つ子の魂百までという奴である。
 けれど、開いた口から飛び出たのは罵りの言葉ではなかった。
「動物相手に言っても仕方ないけれど……そこには大事な人たちがいる。やらせない」
 そこに墓標があるということは、それまでは存在したはずの誰かがいなくなってしまったということだ。憧憬を抱く少女が眠る場所に、フィリンを名乗る娘は今は近づくことが出来ない。けれど、その場所を無暗に暴こうとする輩がいるとすれば、相手が何であろうとあの黒猫のように立ち向かうことを選ぶのではないかと思うのだ。
「フィリンさん、左へ」
 背後からのパーシアの声に従い、フィリンは反射的に左へ飛ぶ。刹那、フィリンが先程までそこに居た空間から蛇が生えた。パーシアの振るう鞭だ。彼女から見てノッソアントの右半身を狙った鞭の軌跡を相手は転がるように回避してしまうのだが、それは想定通り。
 むしろ相手に回避させるように振るわれた鞭が敵を動かした事実に一同はパーシアの意図を察した。回り込むよう、円弧を描くように立ち位置を動かせば、側面を取られることを良しとしないノッソアントもそれに従い体の向きを一同が移動した分だけ変えて。
「……うん。これでお墓を庇いながら動く必要がなくなる」
 満足げなパーシアの声。改めて彼我の立ち位置を確認すれば、いつの間にかノッソアントは墓地と並行になるような向きで一同と向き合っている。
 言ってしまえば単純な話である。酸が墓を傷つける心配があるのならば、向きを調整してやることでそれが届かぬようにしてやれば良い。ノッソアントに墓標をあえて狙うような知性があれば話はまた別だっただろうが、そこまで小賢しいことができるとは考えにくい。
 現に立ち位置が変わったとてノッソアントが取る行動は変わらなかった。近場にいるフィリンやヒューズ、ニムファーを狙っては上手く捌かれ、苛立たしげに酸をまき散らす。それすらも避けたことによる悪影響が考えられない状況を作ることが出来てしまえば最早有効打とはなり得ないだろう。
 自身の動きに手ごたえを感じたパーシアはもう一匹を相手取っていた三人にも指示を飛ばそうと視線を向けるが、言うまでもなくフィードバックは行われていた。
 チョウザの頑丈さが生む均衡は回復に専念していたレーネが攻めに転じる余裕すらも生み出していたようで、パーシアが視線を向けたのは三人がかりでの攻勢がもう一匹のノッソアントを誘導し、酸の射線から墓標を外していた後だった。
 流石、と感嘆の声が口をつく。後はどちらかの組がノッソアントを撃破しきることさえ出来れば戦況は揺るがないだろう。
 この瞬間を機と見たかニムファーが一気に距離を詰める。迎撃するようにノッソアントが毒腺から彼女目がけて酸を放つが、それを織り込み済みの行動だったのか彼女に怯む様子は見られない。
「顔射の瞬間、無防備になっちゃうわよね?」
「顔射とか言うなよ」
 おい17歳。ヒューズの冷ややかな視線もどこ吹く風。放たれた酸を左腕で振り払うニムファーの光輪と翼はすでに実体を持っていた。アークライトの切り札ともいえる覚醒だ。
 ほんのわずかな合間、己の能力を飛躍的に上昇させる札の使いどころをこの瞬間に選んだのはひとえにまき散らされる酸の厄介さだろう。防具の劣化以上に触れた場所を焼く酸の威力は想像以上に強力だ。だが、毒腺という特有の器官を介さねば放てぬのはそう身体の機能が作られている以上曲げることの出来ない世の中の摂理だ。
 すなわち、その器官を破壊してしまえばノッソアントは酸を放つことが出来ないということ。ノッソアントへ刃が届く位置に風のように接近したニムファーは、酸で焼けた皮膚に構うことなく毒腺に右手の刃を突き立てた。
 ノッソアントの唸り声に苦悶の色が混じった。その声色で毒腺を破壊したと確信したニムファーはバックステップで一歩、二歩、三歩と距離と置いて。
「お願いね?」
「ええ。スタンテッド家の名にかけて、使命を遂行する!」
 入れ替わるようにフィリンが攻勢に出た。ヒューズがそれに続く。妙に身体が軽い。その意を問うように二人はニムファーへ視線を。向けられた視線に彼女は頑張ってね、と言わんばかりにひらひらと手を振った。
 食えない女だ、と思わず苦笑が浮かぶ。漲るこの力が光の精霊王ことオールデンの加護をニムファー越しに与えられた物であることは何となく分かる。そして、わずかな間とは言え精霊王が与えた力、使わなう手はあるまい。
 真正面からノッソアントの外皮を貫くのは難しいが、関節部を狙えばその限りではないことはヒューズが証明済みだ。
 左右から迫りくる二人にどう対応すべきかノッソアントが迷う瞬間に、既に双方が懐へと潜り込んでいた。脳が順序だてて迫る二人の処理を行えないノッソアントは混乱の最中、それでも何とか二人ともまとめて対処しようと前腕を横薙ぎに振るおうとして。
「あまり目の前のことばかりに意識が行くのは良くないわよ?」
 攻め込む二人から僅かに立ち位置を動かしてノッソアントの正面から外れていたパーシアが放つ闇の弾丸がその前腕に炸裂し、爆ぜる。炎に焼かれたように燻る前腕にフィリンが迷うことなく刃を走らせ断ち切って。
「ほれ」
 苦悶の叫びをあげるノッソアントの口内へ、ヒューズが何かを放り込んだ。数秒の後にノッソアントの身体の中で何かが爆ぜる音、そして何やら甘い匂い。ノッソアントの口に放り込まれたのは小型の爆弾だ。いくら表皮が頑丈であろうと体内までそうだとは限らない。その目論見通り体の中から強烈な衝撃を叩き込まれたノッソアントは、なす術もなくその場に倒れ込むのだった。
 

 一匹目のノッソアントを撃破した四人はもう一匹を留めている三人の援護に向かうのだが、そちらもすでに片が付こうとしていた。
「やー、モブの根性見せよっかなーって思ってたんだけどもさ。こっち担当の二人がちょーと火力マシマシっていうか? まあこっち回復手厚かった事情もあんだけどね?」
 仕事は済んだとばかりに肩をすくめるチョウザが向ける視線の先、貴人が振るう魔力を帯びた鎌がノッソアントの足関節を過たず薙ぎ払い、倒れ込んだノッソアントが見せた無防備な腹部目がけてレーネが全力の風魔法を叩き込んでいる姿。
 荒れ狂う風の弾丸が周辺の木々を揺らし、それが収まる頃にはもう一匹のノッソアントもまた、もう動くことが無くなっていた。
「ふう……これでひとまずやるべきことは済んだ、ということで良いでしょうか」
 ノッソアントが動かなくなったことを認め、周囲にも新たな敵がいないことを確かめてから確認するようにレーネが一同にそう問うた。他にノッソアントの姿も見えない以上、レーネの認識で問題ないだろう、と一同は頷き、思い出したように墓標の前にいた猫へと視線を向ける。
 気づけば猫は、一同の足元まで近寄っていた。間近で推し量るように七人を見上げていたが、やがて尾を尻の下に敷くようにして腰を下ろすと、凛と背筋を伸ばした姿勢で視線を僅かに下げた。その様子はまるで、礼を言っているようで。
「居なくなっても、守ってくれてるのね」
 懐から煮干しを取り出し、パーシアがそう声をかける。右手で差し出された煮干しを口にくわえた猫はそんな大層な事をしている訳ではないと言わんばかりに首をゆるりと横に振り、当初ノッソアントから守るように陣取っていた墓標の前に伏せると静かに目を閉じた。
 一同はその様子をしばし見ていたが、まだ村でやるべきことがあることを思い出す。ただ、戦闘で荒れてしまった墓地を少し整理してから戻ろう、とニムファー、フィリン、パーシアが提案し、特に拒む理由も無く他の四人もそれに倣った。墓標に刻まれた名前は経年劣化でもう満足に読めないが、それも村人に聞けばわかる所だろう。逆に墓地の整備を村人に促しても良いかもしれない。
 一通りの片づけが終わり、勇者候補生たちの誰かが黒猫の頭を一撫でし、また誰かが同じことが起きたら無理せず呼べと言葉を残し、黒猫を残して墓地を去っていく。その背中を黒猫は薄目を開けて見送っていたが、一同の姿が見えなくなってから大きく一つ欠伸をした。
 彼らが村の人間ではないことくらいは黒猫にもわかる。話ぶりから恐らくはある程度の期間この村に滞在しているのだろう。
 ならば、と。静けさの戻った墓地で瞼を閉じて黒猫は思う。
 
 ――少なくとも彼らがいる間は、ゆっくり眠ることも出来るだろう。
 それは歓迎できることである。主の墓標を守った者達への感謝の念を小さく鳴き声に乗せ、黒猫はまどろみへと意識を投げ出した。

(了)



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
隣の黒猫
執筆:RGD GM


《隣の黒猫》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 1) 2020-07-20 08:32:02
王様・貴族コースのパーシア。よろしくお願いします。
とりあえず、必須事項は敵の全滅だけど、猫が傷ついたり墓所を荒らすのは避けたいわよね。

準備する時間があるなら、村の香木の新品の板なんかを手にいれて、それを囮に敵を誘うこともできそうだけど、今回はそこまでの時間はなさそうかしら。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 2) 2020-07-20 08:42:51
>事前準備
今回の流れは、元々、数日滞在する予定で、村人との打ち合わせの最中に敵襲……って流れみたいだし、敵の性質を利用するために歪んだり割れたりして使えない材があれば譲って欲しい……って申し入れを、打ち合わせでしておくことって無理かしら?

事前調査と生物学、農業学辺りでこじつけてみようかと思ってはいるけど。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 3) 2020-07-20 11:25:27
(学生証と課題詳細を見比べて指折り仕草)
…ザコちゃん、あれくらいの酸なら(1D6無しで÷10がまん基礎値が8のため)よゆーでへーきかも。たぶん。
うっかりのぱやぱやで平気じゃなかったとしても、死ぬもんじゃないし。
多少ちょっとの無理はできっかな。…ザコちゃんいっつも囮くない?目立つからしゃーなしかもだけどぉ。

てかあれ、猫はなんでもいーけど。お墓荒らしはなんてーか、ねぇ。
あー、お墓を荒らすのはいーんだけど。墓標食べんのも魔物の文化じゃないんだから無知ってんだろーしいーよ。
でもちょっとやなこと思い出すからやだ。うん。ザコちゃんの気分のお話。
…他者に死後まで介入されるなんて、ほんと不愉快だっただろーからさ、あの人も。

なんせよ死んだら後からめんど…ザコちゃんお心大海原だから猫に【特急薬草】貼り付けるとしてー。
近づけないか、その後はずっとザコちゃん囮になるだろーから。そんな感じのあれで。
細かなどーのこーのはゆーしゃ様のやることきーてから考えっけど。2匹とも押し付けてくれていーよ。
へっぽこ1モブの被害位はあってもなくても誤差でしょ?ふふ。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 4) 2020-07-20 22:33:20
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ

木が大好物なんてまるでシロアリね。もっともシロアリはアリの仲間じゃないけど。

パーシアさんの村の香木を囮に使うのはいい案だと思うわ。うまく使いたいところね

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 5) 2020-07-20 22:58:51
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。
虫の本能といえ、墓を荒らすのはほおっておけないわね。

>酸
私も…うん、よほどでなければ耐えられるわね(※がまん67+27)
場合によっては庇いに回らせてもらうわ。

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 6) 2020-07-21 03:56:34
芸能・芸術コースのエルフ、レーネです。楽器で範囲回復とかかんがえてます。よろしくおねがいします。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 7) 2020-07-21 08:56:37
>アント
固いけど鈍くて、攻撃力高そうで酸を使うねえ……誰かが囮になるなら、その隙に関節や体の節なんかの隙間を狙えたら、体表よりはダメージ与えられるかも。

あとは弱点の属性の魔法で攻めてみるとか?

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 8) 2020-07-21 08:58:06
と、途中で切れたけど、アントは風属性なら火が弱点かしら?

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 9) 2020-07-21 22:32:38
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。

隙間というか相手の弱所を狙うのはいいと思う。
部位破壊、切り落としあたりが有効か?

猫についてはザコちゃんと同じく薬草や回復魔法等かけて放置がいいじゃないか?
それだけなら信頼はされないだろうが一先ず蟻退治では共闘できるだろうし・・・

あぁ、勿論猫に対して何かしたいって奴はすればいいと思うぞ?
ただ、治療のために退避させようとしてもそのままじゃしないんじゃないかとは思うが。

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 10) 2020-07-22 22:49:12
黒幕・暗躍コースのヒューズだ。
よろしく頼むぜ。

墓にうっかり火が掛からねぇように、気を払わないとな。