;
正義の怪傑参上!



ストーリー Story

 相変わらずそんなことを言うのね。大きすぎるお世話だって何度も言ってるのに。
 またそんなつまらないことを言うんだから。そんなんじゃ、幾らでものさばる悪がいるってものよ。
 それに私には、何よりも譲れない思いがあるの。
 何故ならあたしは、千変の使者にして夜の淑女。そして、みんなの希望なんだから!

●景観・風情ぶち壊し
 時候は暖かき春の青空。それは学園の桜もすっかり青づいてきた頃の事。
 廊下を歩けば、まだ皺のない制服を着た新入生を見かけた。自分も前まではこんな晴れた顔をしていたかもしれない。
 ふと、窓から外の景色を眺めてみた。新緑芽吹く木々が目に入り、少し生暖かい風が吹き込んできた。この学園『フトゥールム・スクエア』の授業は大変だが、広大な敷地内の眺めはそんな疲れも吹き飛ばしてくれるようだ。

「退屈しているようだなァ?」

 顔だ。
 いきなり顔だ。
 にゅっと顔だ。
 逆さまの顔だ。
 切れ長の目が下、三日月のような不敵な口が上についた褐色の顔が目の前にいる。
 バケモノだ! ひるんだあなたは思わず跳ぶように後ずさった。
「失礼なことを考えてくれたようだがまあいい。それよりも、だな」
 逆さまのそいつは、どういう手段を用いてか上の階から逆さまにぶら下がって、外からあなたを覗き込んでいたのだった。そいつはあなたがいる階に、蛇が潜り込むようにするりと入ってきた。一応人間のようだが、行動がバケモノじみている。
 とんでもない出現を果たしたそいつは女性の教師だった。彼女はあなたの顔を見て不敵に笑ったが、思わず引きつってしまう。
「そんな顔をしてくれるな、些末な頼み事だ。折角だし、その辺のお前達も聞いていくがいい」
 そう言って、女性教師は近くを歩いていた生徒に声を掛けた。
 興味本位で素直に近付いてくる生徒や、咄嗟に逃げようとしたが、微笑まれて何故か観念してしまった生徒もいた。
 奇異な状況に困惑するしかなかったが、少なくとも『今逃げる』と言う選択肢は無かった。

●それは正義か、変人か
 こうして、集められた生徒達と共に空き教室まで来てしまった。
 集めた女性教師は黒板の前にもたれかかると、説明を始めた。
「さて、少し話をさせてもらおう。ある貴族から護衛の依頼が来た。怪傑『ミロワール・ド・スクレ』なる怪人から脅迫されている、となァ」
 貴族の護衛。授業としてはそんなに珍しいものではない。
 然し、怪傑とは? 少なくともあまり尋常な存在ではないのは確かなようだ。
「怪傑『ミロワール・ド・スクレ』。おおよそ2年前から活動している怪人だ。その活躍によって多くの名家を破滅に追い込んできた極悪人……とも言えるかもしれない。自らを千変の使者と名乗っているが、その異名の通り変装の腕前は凄まじい。かつて、30年間家に仕えてきた執事に変装して、正体を明かすまで主人にも見抜けなかったという逸話もあるくらいだからな」
 女性教師は少し楽しそうに説明を続ける。そんな話の一体どこに楽しそうな要素があるのか。
 けれども『怪傑』とはまるで、本か劇の中のような存在だ。なのにまさか実在するなんて、と羨望する生徒もいた。
「貴族の屋敷に、剣使いの傭兵で構成された腕の立つ用心棒が3人いるそうだ。まあ、それだけでは足りないと判断して学園に助けを求めたのだろう。ミロワール・ド・スクレはレイピアの腕も長けているからな」
 変装だけでなく、戦闘技術もこの怪傑にはある。
 そんなにレベルの高い存在が相手となると、自分達では足手まといになるのではないだろうか?
「貴族の館はまあそこそこに広いが、迷ったりするようなものではもない。2階と地下室がある程度だ。さて、ここまで説明したところで怪傑からこの貴族を救ってやれ………と言うのは、ずばり建て前だ」
 突然手のひらを返したような言動に、誰かしら生徒が思わずつんのめった。
 どういうことだ? 一体、自分達に何をやらせたいのだろうか?
「ここからは学園としての依頼であり授業の一環とする。心して聞くといい」

 女性教師は懐から取り出したナイフを掌で回しながら、改めて説明を始めた。
「先に言っておこう。そもそも怪傑『ミロワール・ド・スクレ』は悪人にしか犯行を予告しない。そして、予告で指定した時間に堂々と現れては、華々しく大立ち回りをして、様々な悪事を暴いてきた。そして、私が独自に裏付けを取ったのだが――この貴族、どうも悪徳商人に賄賂を渡しているということが分かった。つまるところ、この貴族が学園に依頼してきた時点で大墓穴だったということだなァ」
 『脅迫された』と言っておいて、どうやら自分に都合が悪いことは隠して、学園の生徒に護衛をさせようと考えていたらしい。
 然し、どうやってこんな際どい情報の裏付けを取ったのだろうか?
「む? 黒幕・暗躍を専攻にしているなら、この程度の情報収集が出来なくては困るなァ。それはいいとして、ここまで聞いたところでお前達にやってほしいことがある。ミロワール・ド・スクレより先に貴族の悪事を暴いてやれ」
 えっ? いやいや、その怪傑が善人だと言えないが、ここは怪傑と協力して貴族の悪事を暴くのが常道なのでは?
「私は彼女のような生き方は嫌いではない。むしろこれもこの学園の生徒の在り方として、寧ろ大いに肯定しているとも。だが、学業を修める上で出席日数など、学生として先立つものが色々と不足しがちでな」
 ちょっと待て。
 この学園の生徒ってつまり、ミロワール・ド・スクレって……!?
「あァ。何を隠そう、お前達の先輩だ。彼女は彼女らしく黒幕・暗躍コースを歩んでいるんだが、学生らしくもう少し学業にも力を注いでほしいと多くの先生に言われててなァ……気は進まないのだが、新入生のお前達が何らかの手段で出端をくじいてやって失敗させれば、少しは懲りると思ってな」
 貴族が脅迫されていると思って聞いてみれば、話がおかしな方向に飛んでいってしまった。怪傑がまさか自分たちの先輩だとは。
 然し、気は進まないと言いながらも、この女性教師はやはり楽しそうに話を進めているように見える。真意がまるで見えないが、こんな状況すら楽しんでいるようにも見えた。
「お前達は護衛という名目で入館が許可されている。それを逆手にとって、貴族の悪事の証拠を掴んでやれ。但しコスプレ……じゃない、ミロワール・ド・スクレが現れて、彼女が失敗するまでは誰も館から退散してはならない」
 えっ、えっ? ええっ??
 今、コスプレが何とかって言いませんでしたか?
「おっと迂闊だったなァ、彼女の名誉のためにあまりその名で呼ばないでやってやれ。彼女が素の怪傑の姿で活動する時は、給仕、踊り子、医者など様々な姿で現れてきた。これが本人の生き様と趣味らしいのだから仕方がないが、そんな姿勢を貫いた結果、『コスプレ仮面』なんてあだ名が浸透してしまうのもまた仕方のないことだなァ?」
 何だか、話の最初の方のミステリアスな空気が遥か彼方に吹き飛んでしまった。もはや唯の不審者ではないのか。
 そんな変人の出端をくじけと言われても……。
「ふざけているように見えるが、学園の先輩らしく実力は相当なものだ。今のお前達では、力では到底敵わん。だから、出端をくじくという手段に出るしかないわけだ」
 少し頭が痛くなってきた。要は貴族の悪事を暴けと言う事なのだが、余分な筈の要素が妙に大きい気がする。
「では、今回も可能性の辰星に期待させてもらおう」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-05-11

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-05-21

登場人物 6/8 Characters
《今を駆ける者》ダケン・ヴァルガー
 ルネサンス Lv15 / 魔王・覇王 Rank 1
「姓はヴァルガー、名はダケン。故郷は知れず、世間が呼ぶには流しの無頼。ま、よろしく頼むぜ」 「……って、駄犬じゃねぇ!?」 #####  狼系ルネサンス。  若い頃から正々堂々、スジを通して道理を通さぬ荒くれ者として世間様に迷惑をかけてきた年季の入った無頼。  本人は割とイケていたつもりだったが、ある時襲った貴族の娘から 『獣臭い』『薄汚い』『さっさと死んでくれないかな?』  と容赦ない口撃を浴びて脱落(リタイア)  一念発起して系統立った悪の道を修めるべく、学園の門を叩く。 ◆性格・趣味嗜好  一言で言って『アホの二枚目半』  前提知識が足りない系アホの子で脳筋単細胞。悪人ではないが、パワーオブジャスティス。  ひらめきや発想は普通にあり社交性も悪くないため、決められる場面では最高に二枚目。  いざという時以外は基本三枚目。足して二で割って二枚目半。  脱ダサ悪党を目指して清潔感は増したが、服装センスが致命的でやっぱりダサ悪党。   ◆外見補足  顔立ちは濃いが造りは悪くなく、黙って無難な服を着ればワイルド系イケメンおっちゃん。  服装センスの悪さは『イモっぽい』『田舎もの』といった類。  気合が入ると脱いじゃう系の人。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《ゆうがく2年生》アリア・カヴァティーナ
 アークライト Lv14 / 村人・従者 Rank 1
 幼い頃から聞かされてきた英雄譚に憧れて、いつしか勇者さまを導く人物になりたいと願ってきた。  その『導き』とはすなわち、町の入口に立って町の名前を勇者様に告げる役。  けれども、その役を務めるということは、町の顔になるということ。この学校でたくさん学んで、いろんなことを知ることで、素敵な案内役になりたい!  ……それが自分の使命であると信じて入学したけれど、実のところ勉強よりも、花好きが高じた畑いじりのほうが好きだったりする。そのせいで、実はそこそこの力持ちだったりする。  たぶん、アークライトの中ではかなり変人なほうなんだと思うけれど、本人はあんまり気にしていない模様。  基本的に前向き……というか猪突猛進なところがある、かも。
《新入生》ウェルカ・ラティエンヌ
 アークライト Lv15 / 王様・貴族 Rank 1
■身長:152cm ■実年齢:14歳 ■髪形:腰までのストレートロング ■容貌:ややたれ目気味の目元の、大人しそうな容貌の美少女 ■体型:身長は小柄ながら、バストやヒップはかなり大きく、非常に発育は良いが、ウェストや手足等は細めの、極端な体型 ■性格:基本的には内向的で大人しく、穏やかな性格だが、金銭面には非常に厳しく、利害が絡むと冷酷になる面も ■コンプレックス:桁違いに豊満な上、未だに発育途上の胸/[誕生日]の時点で、既に120cmに届くとのこと ■体質:体重が増えるときは、その殆どが胸に集まり、痩せるときは他から痩せるタイプ ■服装:背中の開いたドレス/色は特に決まっておらず、気分次第で変えている ■特技:経営・商売に関連する豊富な知識/一通りの礼儀作法/実は家事全般
《不屈愛の雅竜天子》ミサオ・ミサオ
 ドラゴニア Lv18 / 魔王・覇王 Rank 1
「ミサオ・ミサオ。変な名前だろう。 この名前は誰よりも大切なあの子からもらったんだ。」 名前はミサオ・ミサオ。無論本名なわけがない。 外見年齢は20代、本年齢は不明。 本人曰く100越えてんじゃないの、だとか。 職業はギャンブラー。 学園に入る前は彫刻師、薬売りなどいくつか手に職を持っていた。 魔王コースを選んだのは、ここが楽だと思ったからだそうだ。 遠慮なくしごいてくれ。 性格はマイペースで掴み所がなく飄々としており、基本滅多に怒ることがない。 面白そうなことや仲の良い友人が居れば面白そうだとついて行き、 好きな人や大切な人にはドロドロに甘やかし、自身の存在を深く刻み付け、 飽きてしまえば存在を忘れて平然と見捨てる外道丸。 いい子には悪いことを教えたり賭け事で金を巻き上げ、 そして悪友のオズワルドや先輩先生にこってり絞られる。 恋愛したい恋人欲しいと言っているが、一途で誰も恋人を作ろうとしない。 たくさん養ってくれる人大好き。 趣味は煙草と賭け事。 特技は煙草芸、飲み比べ、彫刻。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け

解説 Explan

 ある町にある貴族の館に護衛に行くという名目で、その貴族の悪事を速やかに暴いてください。
 プロローグで説明していますが、賄賂の可能性が示唆されています。その辺りを留意してみましょう。
 館はそこそこの広さですが、迷子になるようなことはありません。飾りの甲冑や高そうな壺や絵画などがあったりするくらいで、特に変哲のないお金持ちの家と考えていただければ幸いです。また、2階と地下室が存在しますが、そこが怪しい場所になるかはあなたたちのプラン次第です。
 唯一注意すべき点は、腕の立つ3人の用心棒の存在でしょう。悪事を暴こうとあまり露骨な行動をとると、流石に不審に思われます。少しばかり工夫した行動をとって対策してみましょう。
 問題の怪傑ミロワール・ド・スクレですが、ほぼ説明したとおりです。変装とレイピアの達人で、多くの悪事を暴いてきた義賊で、フトゥールム・スクエアの生徒で、あなた達の先輩です。彼女がどのように動くかは殆ど分かっていません。色々な事態を想定してみましょう。断定できるのは、一定時間が過ぎれば悪事を暴くべく大胆な大立ち回りを始めることでしょう。彼女より先に悪事を暴くなど何らかの理由で懲らしめることができれば、いいことがあるかもしれません。
 今回は一回だけ、女性教師に何でも質問することができます。とは言え目的がはっきりしているので、難しく考えなくても大丈夫でしょう。質問をせず、プランをより練りこむのもありです。


作者コメント Comment
 どうもです。機百です。
 誰もが一度は憧れる、素顔を隠した正義の味方が参上です。然し、シナリオの傾向はまるで王道ではありませんね。
 もっと気楽なエピソードをと考えてみたものの、どうにもおかしな感じになってしまいました。どうにも、明確な達成目標を作らないと気が済まない性分なので。
 目的は貴族に悪事を暴くことですね。工夫した行動が書かれていれば高評価につながります。
 然し、個人的にはふざけたつもりのシナリオなので、寧ろふざけた方が思わぬいい結果に転ぶかもしれません?


個人成績表 Report
ダケン・ヴァルガー 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
『出席日数などが不足してる』『学業にも力を』
の部分に絞り、無茶は承知で両得狙い
スクレとは仲良くなりたいし、失敗より力を認めさせたり穏便に説得で復学させたい


●連携など
参加の皆とは定期的に情報交換
プラン外の部分は他と合わせ臨機応変

●行動
大衆の耳目を集め大々的に悪事を暴露できる機会、場所は限られるはず
『事前調査』『推測』で幾つか有力そうな日時場所にヤマを張り、その場に仕込みが可能な人間を逆算しスクレの正体を追う
『コスプレ仮面』の話とか、食いつきそうな話題をだしたり(正体がつかめたら謝罪)
正体が掴めても最初は自分のみで説得、教師が心配してると話を伝え、一度戻ってやれと説得、信用を得られるように

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
合法的にくそ貴…わるぅいお金もちボコしに来ただけ。
ってもコ…怪盗先輩様が解決壊滅ーってのも面白そーだし、ぶっちゃけそれ眺め拝見しててもいーんだけど。

とりあえず何が悪いのかってのきっかりハッキリしろーってこと?
そったらとりあえず、利用活用できっかもな用心棒様達にちょっかいかーけよ。

そーいやその前に。
結局教官様に質問何聞くかーってあんまり定められなかった感。
もし誰もなーんにも聞かない感じだったら、ザコちゃんがその悪い商人に献金的なことしてる理由とかわかるー?って聞いてみよ。誰かが他になんか聞いてるならいーけど。

分かれば証拠物集められっかもだし。
骨董なり、人脈なり。なんらか物であんじゃん?たぶん。


アリア・カヴァティーナ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは村人・従者コースの生徒らしく、依頼の間、使用人として働かせてほしい、とお願いいたしますわ!
その理由は、

・相手は変装の達人なので、既に屋敷の使用人に成り代わっているかもしれない
・もし既に何かが仕掛けられていても、掃除を装って取り除ける

ですわ!
わたくし自身が怪盗ではないことは…貴族さまの言いつけを何でも守ることで信用してもらうしかありませんけれど!

ある程度屋敷内を見て回りつつ信用された頃、貴族さまに尋ねますわ!
「怪盗の狙いに心当たりがあれば、念のため調べさせて貰いたいですわ!」
もし「この部屋を頼むが、○○には近づくな」みたいに命令されればアタリですわ!
同行の皆さまにも、命令をお伝えしますわ!

ウェルカ・ラティエンヌ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:180 = 60全体 + 120個別
獲得報酬:4500 = 1500全体 + 3000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
中々に変則的な状況ですわね。
さて、どうしましょうか。

取り敢えず、まずは[貴族の方]や[護衛の方々]に質問ですわね。
[何処を/何を守ればよいのか][警備の配置/方針]等は、普通に[護衛]の為にも必須の情報ですし、自然と尋ねられる筈ですわ。

その後は、[護衛の為の下見]ということで、お屋敷の中を色々と見て回りますわ。
[隠れ易い場所]は[怪傑の逃亡時]に利用される、[物を隠し易い場所]には[怪傑の変装道具]等が隠されている可能性が考えられますから、細かく見て回るのは当然ですわね。

怪しい[書類]や[帳簿]等が見つかりましたら、しっかり場所を覚えておきますわ。
折を見て拝見し、【経済学】確認してみますわね。

ミサオ・ミサオ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
心情:
こういう依頼は面白いよねぇ!
しっちゃかめっちゃかにしたくなるよぉ。
…もちろん、あの貴族と怪盗の2人さ。

行動:とりあえずまずは、貴族さんと酒でも飲みましょか。
大丈夫大丈夫、オレ1人が潰れても他の優秀な人材がいますからぁ。
と、ダメなやつを演じましょうか。
貴族さんとお酒を楽しみながら飲み比べます。
相手が少し気を許したかなと思ったところで捜索…はしない。

用心棒が自分に集中させるよう挑発やハッタリを掛けてみたり、目立つ行為をします。
もし、用心棒が自分や仲間に危害を加えるようであれば
威圧感で怯ませましょうかね。

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
①出発前【事前調査】と先生から貴族の好物や趣味趣向の情報を仕入れる。

②ミサオさんが貴族に酒を入るなら、それに便乗し【説得/演技/心理学/人心掌握学】で①で得た情報を元に色仕掛けで懐柔する。

③懐柔し警戒心を薄れさせた貴族を《二人きりになれる場所》で、更に深い関係になる。
そして、自分に貢がせるように仕向け、その流れでさり気なく金の話…賄賂に触れて貴族自身の口から喋らせる。

④後は貴族が皆の動きに気づかないよう誘惑し注意を逸らしたり、護衛の建前で常に傍で行動を誘導する。

⑤最後は、先輩が登場した時に煽て『出席日数がヤバイけど先輩カッコイー!』とか褒めより貶しが入っている声援で出端をくじく。

リザルト Result

●前
「解散の前に質問を一つだけ聞こうか」
「それなら、例の貴族の好物や趣味趣向を教えてくれますか?」
 いの一番に【プラム・アーヴィング】が声を上げ、女性教師は感心したように頷いた。
「なかなかいい質問だなァ。好物は、食べ物なら肉類全般だ。好きな事や趣味なら、博打と狩猟だろうな。特に狩猟だが、数が減ってきている希少な獣も狩っているようだが、何故か地元の猟師は黙っているらしい」
「なるほど。フフ、分かりました」
 女性教師の答えに、プラムは納得したようだった。
 更に、直接役に立つ情報ではなくとも、そういったところからお金の動きに繋がることもある――と、女性教師は言葉を足した。
(とすると、賄賂の正体はその辺りぃ?)
 プラムが訊ねなければ自分で質問しようと思っていた【チョウザ・コナミ】だったが、女性教師の言葉を基に推測してみた。商人が権力者に賄賂、ならよく聞く話だが、逆のパターンは少し珍しい。推測の域ゆえに断定はできないが、探りを入れるなら狩猟に関するものを調べるべきだろうか。

●起
 それから色々と事前準備を終えた生徒達が、館にて応接間にて貴族と面会しに来たのはいいのだが……。
「これで護衛だと? ふん、学園も落ちたものだな」
 【ダケン・ヴァルガー】の頭から『プチリ』と音が聞こえたが、すぐに自分の顔面を殴り飛ばした。
 今は何があっても我慢しなければならない。特に、彼女に会うまでは。
(堪えろよ、俺)
 貴族がダケンの一連の様子を見て呆れていたところ、【ウェルカ・ラティエンヌ】は咳払いをして自分に意識を向けさせた。
「幾つか質問しても宜しいですか?」
 咳払いと同時に、プリンのように弾む豊穣すぎる双子の実り。場違いにも感じる規格外の母性の象徴がそこにあった。
 貴族もどうしようもなく男であったため、彼の視線が一瞬でそこに固定されてしまった。
「う、うむっ、何なりと聞くがいい」
「では。【ミロワール・ド・スクレ】の事は伺っておりますが、何処を、或いは何を守ればよいでしょうか?」
 露骨な視線を感じて、添えるように左腕で双子の実りを隠しながら訊ねた。隠しきれてはいないものの貴族は諦めて、ウェルカの顔を見て答えた。
「むぅ……護衛対象だな? それは吾輩自身と、吾輩の部屋に地下倉庫だ。吾輩をあの怪傑と名乗る不届き者から守り、特に吾輩の部屋と地下室には何も入れてはならぬ」
「承知致しましたわ。では次に、警備の配置や方針などを……」

 一通り話し終えたところで、貴族当人の護衛には【ミサオ・ミサオ】とプラムの二人と、用心棒の一人が付くことになった。
 このまま貴族は自分の部屋に戻ろうとしたが、ミサオは懐から何かを取り出して見せつけた。
「ちょっといい酒を持ってきたんで、少し気晴らしでもしないかぁ?」
「いい酒だと?」
 貴族は、ミサオが見せつけた葡萄酒に惹かれるも、然しすぐに真顔に戻った。
「飲んどる場合か! あの不届き者がいなくならぬ内は酔える気がせんわ!」
「大丈夫大丈夫、オレ1人が潰れても他の優秀な人材がいますからぁ」
 ミサオは駄目なやつを演じて酒宴を開いて貴族や用心棒達の目を引く、という建前でただ単純に飲みに来ただけだったのだが、流石に無理があっただろうか。
 するとここでプラムが言葉巧みに便乗してきた。
「いやいや逆ですよ。こういう時だからこそ酒の力を借り、気を昂らせてどんと構えるんです。それよりも色々と伺ってますよ、前に博打で大儲けした時の話を聞かせてくれませんかね?」
「お、あの大勝を知っているとはなかなか見どころがあるな貴様! そうだな、それなら酒の一本もなければ話にならん。おい、酒蔵から一本持ってこさせろ!」
 用心棒は呆気にとられたような表情をしながらも、彼は応接間を退散した。ミサオは貴族の背後からぐっと親指を立てて見せた。
「なら、まずはオレの酒で前祝といくかぁ」
 そう言いながらミサオは、きゅぽんと葡萄酒の栓を開けた。然しこの音が破滅の先駆けになろうとは誰が予想できたであろうか。
 ミサオとプラムは『ちょろいぜ』と考えていたに違いない。

 その一方で。
「わたくしをここで働かせて下さいませんか?」
「駄目ではないですが、怪傑の話は聞いてないのですか?」
 【アリア・カヴァティーナ】は、館の従者長を濁りのない真っすぐな瞳で見つめていた。何とアリアは護衛ではなく、敢えて屋敷の使用人として雇われることで館に入ろうとしたのだった。
「承知の上ですわ」
「そ、そうですか? まさかとは思いますがお嬢さんが例の……」
「そんな筈はありませんわ! 幾らでも身体検査して頂いても構いませんし、あらゆる言いつけだって聞いて守ります!」
 少し鼻息を荒くしてアリアは心意気を説いた。大袈裟なような気もするが、それこそがアリアが提示した信用だった。
 そんなアリアの熱意に折れ、従者長はため息交じりに答えた。
「そこまで言うのなら仕方ありません。早速ですけど、お仕事を与えましょう」
「はい、何なりと!」

●承
 葡萄酒の栓をあけてからというもの、応接間はすっかり宴会場になり果てていた。
「んく……ぷはっ、なるほど。これもいい酒だなぁ」
「そうだろうそうだろう。シュターニャの十五年ものだから当然だ」
 ミサオと貴族はすっかり意気投合し、高いお酒を次々に空にしていた。
 更に、
「ね・え? あの宝石が欲しいなぁ~なんて思ってるんだ・け・ど?」
「はっはっはっ、怪傑を無事に追い払った暁に幾らでもやろうじゃないか!」
 貴族にすり寄り、金品をねだるプラム。貴族もすっかり出来上がって安易な口約束をするが、『護衛の後』と言う辺りまだ完全に正体をなくしていなかった。
「もぉ~オジサマの、イ・ケ・ズ」
 然しプラムは、できる事なら二人きりになってより深いところまでいく予定だった。だが、貴族がウェルカの実りを凝視していたことから考えると、男色の気はないのだろう。関係が進展せず、甘い言動と裏腹に内心苛立っていた。
 尚、用心棒は応接室の外で警護を続けていたが、その表情は疲れきっていた。
 彼はこの状況を打開すべく、ウェルカに言付けを頼んだ。

「初めまして、ウェルカと申しますわ。学園から護衛に参りました」
「ん、お前さんが学園から例の?」
 貴族の部屋の前で退屈そうに扉に凭れる用心棒にウェルカは挨拶すると、貴族の護衛をしていた用心棒が呼んでいた事を話した。
「何があったんだ? まあいい、暫くはここを任せる」
 そう言って貴族の部屋の用心棒は立ち去った。ウェルカは周囲に人がいないことを確認すると、廊下の掃除をしているアリアを呼び寄せた。
「あまり余裕はありません。手分けして探しましょう」
「ああっ、しがない使用人に過ぎないわたくしがご主人さまの不正を暴くなんて、何とおこがましくも大それたことを!」
 アリアは従者長に命じられて廊下の掃除をしていた。掃除をしつつ何かおかしなものがないか捜索していたが、なかなかそれどころではなく、本物の使用人になりかかっていた。だが、仲良くなった使用人から聞いたところによると、貴族の部屋は限られた使用人しか入れないのだという。ここに何かがあるのは間違いない。
 扉を開け、二人は貴族の部屋の捜索を始めた。
 賄賂の証拠となるもの。例えば、書類か帳簿などが見つかればいいのだが……。
(これも、違いますね……!)
 ウェルカは書斎机を重点的に調べていたが、それと思わしきものは見つからなかった。あまり時間はかけられないのに焦りが募る。
 その一方でアリアは、貴族のベッドの周りを掃除しながら捜索していた。ちゃんと捜索はしているものの、使用人として掃除も欠かせない。確か『ベッドの周りの掃除には特に注意せよ』と聞かされていた。それを守るべくアリアがベッドの下を覗き込むと、何か黒い装丁の本が見つかった。
「こ、これはいわゆるベッドの下のお宝! まさかわたくしがご主人さまの禁忌を暴いてしまうなど……あれ?」
 アリアは躊躇いつつそっと本を開いたが、想像したような絵など一枚もなく、大きな桁の数字の羅列が書き連なっていた。
 ウェルカは、アリアの後ろからその本を覗き込んでみた。よく見れば奇妙な取引のやり取りが記されていた。
 これこそ賄賂の証拠となる裏帳簿だろう。
「何ということですの、唯の使用人風情がご主人様の罪を暴いてしまうなんて……!」
「アリア様……すっかり、なりきってますわね」
 それにしても、こんなものをベッドの下に隠すとは。ここは思春期の少年がアハンな本を隠す事が多いとされる場所らしい。ある意味では盲点になる場所かもしれないが……。
 アリアは不思議そうに首を傾げ、ウェルカは少し頭が痛くなった。

「ふぅーん、やっぱりねぇ」
 チョウザは地下倉庫を探していた。ここも用心棒が警護していたが、軽いハッタリと話術で言いくるめてから退けた。尚、チョウザのハッタリに用心棒は少し顔を青くしていた。
 貴族の趣味は狩猟。貴族が使っている道具なら見つけたが、狩った獲物を扱う部屋がないことに違和感を覚えた。二階にもそれらしい部屋がないとなると、後は地下倉庫しかなかった。
 地下倉庫には様々な道具や家具が置かれていた。だが隅にある机に、無数の獣の角、はぎ取られた毛皮、刺激臭のする奇妙な薬などが置かれていた。
 様々な形の角が置かれているが、詳しい人物に見せれば何の獣のものか分かるだろう。
(賄賂と、猟師が黙る理由に繋がるかねぇー?)

 館の廊下を巡回することになったダケンは、行きかう使用人たちを見ながら警戒心を強めていた。
(然し、なかなか見通しは立たねぇ)
 ダケンは事前に『ミロワール・ド・スクレ』の正体を調べ、それを突き止めていた。黒幕・暗躍コース専攻で出席日数が危うい女生徒の先輩なんて限られそうなものだが、思いのほか多くおり、調査は難航した。
 それでも諦めず、ミロワール・ド・スクレや『コスプレ仮面』の名を出し、またその噂を持ち出したりした結果、彼女の友人だという先輩と接触することができた。曰く、ミロワール・ド・スクレは三日前から既に館に潜入しているという。彼女が学園にいる間に先手を打っておきたかったが、彼女の友人に会えただけでも収穫だ。そこで、彼女の本名や身の周りの話を聞いた。
「法(ロウ)より流儀(コード)。そういう生き方、嫌いじゃあねぇが……」
 ダケンはミロワール・ド・スクレの在り方や考えに大いに共感していた。義賊として、正道では裁けない悪を裁き人を救う。それは間違いなく格好いい事だと思う。
 然し、出席日数など学生として為すものがある以上、ちゃんと学業も両立して欲しい。その為にも彼女をここで説得する。
 近くをすれ違った使用人を見やりつつ、改めて誓った。

●転
 すっかり日が暮れてきた頃。誰もいない客室にて、ウェルカは情報を整理して考えこんでいた。
 見つけた場所はアレだが、確実に決定的な証拠を確保した。これさえあれば貴族の悪事を暴ける。
 だが、もう一つの問題はミロ……もうコスプレ仮面でいいや。そのコスプレ仮面だが、こちらの方はなかなか進捗しなかった。
 変装用の道具を隠している可能性を考え、アリアと共に屋敷中の色々な場所を念入りに探してみたが、見つからなかった。そういった道具を隠しているのが上手いのか、或いはそもそも初めから無いのか。
 怪傑の足取りを掴めず、悩んでいたところにチョウザが入ってきた。
「あーちょっといーぃ?」
「チョウザさん? どうしました?」
 背後からの声にウェルカが振り向き、チョウザを見た。
「例の貴族の手掛かりは掴めたぁー?」
「ええ、無事見つけましたわ。チョウザ様は如何ですか?」
「悪いけど、それっぽいのはまだかねぇー? ところで、どんなのが見つかったぁー?」
「帳簿を確保しましたわ。これは確実な証拠となるでしょう」
 それを聞いて、チョウザは不思議と納得したように頷いた。
「いちおーザコちゃんにも確認させて? もうちょっと手掛かりが欲しーし」
「そうですの?」
 ウェルカは懐に入れていた裏帳簿を渡すと、チョウザはさっと内容を確認した。
 すると、
「それじゃ、ちょっと借りてくねぇー?」
 そう言うとチョウザは素早く身を翻し、客室から出ていった。
「重要な証拠ですわよ!? 待ってください!!」
 チョウザの思いがけない行動に動きが少し遅れてしまった。まさか、彼女がそのような行動に出ようとは思わなかった。
 だが、この不自然な行動が一つの結論に結びついた。それを確かめるべく、ウェルカは客間から飛び出ると廊下を見渡した。だが、チョウザの姿は既になく、まるで幻のように消えてしまった。
 一瞬途方に暮れた時、廊下の左側からチョウザとアリアが並んでやってきた。
「どーしたのぉー?」
「ウェルカさま! チョウザさまも見つけてこられたそうですわ!」
 アリアの言葉を聞いてウェルカはハッとした。今、アリアと共にいるチョウザは、悪事の手掛かりを見つけてきたということだ。先のチョウザは見つけられなかったと言っていた筈だ。
 そんなチョウザに成りすますことができる人物は、今知る限りでは一人しかいない。だが、まさか今日来たばかりのチョウザにも変装できるとは流石に想定できなかった。
「チョウザ様、アリア様! 先ほど私の前に怪傑が現れ、帳簿を盗んでいきましたわ!」
 ウェルカの言葉にチョウザとアリアは思わず目を丸くした。
「ウェルカさま、こちらには誰も来ませんでしたわ!」
 それだけ聞ければ十分だった。怪傑は廊下の右側へ行った可能性が高い。
 何も言わず、ウェルカが廊下の右側へ駆けようとした時、館のエントランスホールから、聞きなれない女性の声が響いてきた。
「悪しき野望の雲が夜空を覆いし時、人は切なる希望を祈るわ。幾重の祈りは光となって暗雲を貫き、星煌に満ちた夜空を晴らすの。あたしこそが人々の祈りの光たる者、万物を映す鏡より出でし闇夜を切り裂く千変の使者。ミロワール・ド・スクレ、参上よ!」
 長い口上だなぁと三人は思いつつ、エントランスホールに急いだ。

●結
 無論、エントランスホールでは大騒ぎになっていた。
 何しろ、大量のリボンやフリルで飾ったセーラー服を着た仮面の女が、エントランスホールのシャンデリアを落としながらやってきたのである。
 真っ先に駆け付けたダケンが、コスプレ仮面に立ちはだかった。
「来ちまったか。出来ればもっと早く会いたかったぜ」
「あら、まるで告白みたいね?」
 挑発するような口調で言われてダケンは思わず赤面するが、すぐに気を取り直した。
「そ、そうじゃねぇ! それより俺の話を聞け。俺だってあんたのような生き方はいいと思ってる。けどよ、学業にも力を注いだ方がいいぜ」
「なっ……!」
 コスプレ仮面が思わず動揺するも、ダケンは説得を続けた。
「教師だけじゃねぇ。スクレのダチも心配していた。一度戻って安心させてやれよ」
「はぁ、あんたもあいつと同じことを言うのね。あたしの周りにはお節介焼きばかり集まるのかしら?」
「確かにお節介かもしんねぇ。けど、そんなお節介焼きでも心配かけさせんのは良くねぇと思う」
「貴方も心配なの?」
 ダケンは心を見透かされた気持ちになって驚いたが、
「そりゃ、少しはよぉ……」
「ふぅん?」
 するとコスプレ仮面はレイピアを鞘に納めた。それを見てダケンは胸をなでおろす。
「退いてくれんだな」
「違うけど?」
「えっ」
 ダケンの目の前に鞘の先端が迫ったと思えば、一瞬の鈍痛と共に目の前が暗転した。
「全く、いい後輩で困っちゃうわ」

 それからコスプレ仮面は、貴族がいる応接間の前に着いた。
 いざ参上したはいいが、使用人に化けていた時からここにはあまり近づきたくないと思っていた。理由は語るまでもない。
 状況が改善されている事を祈りつつ、そっと扉を開けて覗いてみると。
「なんだぁ、もう潰れたのか?」
「お、おろろろ……」
 酒を進めるミサオと、耐え切れず吐き出す用心棒。
「もうやってらんねえよ!」
「ぐぅぅ……むにゃ」
 管を巻いている、貴族の部屋を守ってた用心棒に、いびきをかいて眠る地下倉庫の用心棒。
「やめてくれ、尻は、尻はぁッ――!!」
「そんなつれないこと言わずに、さっ!」
 そして、貴族のズボンを引っ張るプラムと、這いつくばって逃げる貴族。
 まるで地獄の釜を覗いたようだった。どんな勇者でも、ここに入るのは流石に躊躇うことだろう。
 コスプレ仮面はそっと扉を閉めようとしたが、僅かな物音にプラムが気付いて声をかけた。
「おっ、コスプレ仮面参上かな? 出席日数がヤバイけど先輩カッコイー!」
「放っときなさい、付き合ってらんないのよ!」
「がんばえーコスプレ仮面~! 出席日数もがんばえ~!」
 幼女のような調子で裏声を上げてまくし立てるも、バタンと派手な音を立てて扉が閉められた。プラムはもう少し煽りたかったが、まあそこそこ挫くことができただろう。
 程なくしてウェルカ達が追い付いてきたが、応接間の扉の前に裏帳簿が置かれており、コスプレ仮面は既に窓から脱出して館を去っていた。

●後
 後日、貴族は尻を押さえながら蹲って震えている状態で拘束された。
 ウェルカが見つけた裏帳簿と、チョウザが見つけた獣の角と毛皮が証拠となり、賄賂と密猟の容疑で逮捕された。商人に渡していた賄賂の使い道だが、密猟に気づいた猟師を商人が経済的圧力をかけて黙らせていたという。この商人の逮捕も時間の問題だろう。
 コスプレ仮面だが、あれからちゃんと出席する日が増えたらしい。不足した出席日数の埋め合わせとして、四か月はかかるレポート作成の課題を与えられたが、何故か晴れやかで涼しい顔をしていたそうだ。

 それからアリアは女性教師の元を訊ねた。
「わたくし……村人・従者コースの生徒に相応しい振る舞いができておりました!?」
 女性教師は少し考えてから答えた。
「判断に悩むなァ。一つ言えるのは、やる事となる事の違いを理解出来ていたか、だ」
 少し難しく感じる言葉だったが、先日の課題を振り返ってみようとアリアは思った。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
正義の怪傑参上!
執筆:機百 GM


《正義の怪傑参上!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-05-06 00:10:36
合法的に典型的くそ貴…わるぅい貴族様ぼこせるって聞いちゃったら、来るしかないよねぇ。ふふ。
ただのモブだから、周りがボコるなら乗っかり便乗しちゃうしかない生き物。そんなもん。

とりあえずー、悪いことの内容は、悪いことしてる商人への献金的な?
東の国だと犯罪幇助とかっていうんだっけ、こーいうの。

具体的にどんな商人にどんな内容見返りでーなんかが分かってないから、
そこを聞くのも選択肢としてあるのかな。教官様に。
それこそ具体的な商人の卸す品物とかがわかんなら、置いてある調度品から探れるかもだし。

なんせよ、どーいった視点思考から、わるぅい部分を炙り出し浮き立てすんのか、を決めないとかな。

《ゆうがく2年生》 アリア・カヴァティーナ (No 2) 2019-05-06 00:38:52
アリア・カヴァティーナ、お力になりに参りましたわ!

怪傑ミロワール・ド・スクレの得意技が変装ということは、使用人の誰かと入れ替わっている可能性がありますわ!
ですので……わたくしは、使用人として屋敷で働かせてもらうつもりでおりますの! 貴族さまが、わたくしを信じて悪事の証拠の近くを任せてくださるか、逆にわたくしを遠ざけるか……いずれにせよ、調べるべき場所のヒントになりますわ!

《新入生》 ウェルカ・ラティエンヌ (No 3) 2019-05-06 17:27:51
皆様ご機嫌良う。
王様・貴族コース専攻のウェルカ・ラティエンヌと申します。
宜しくお願い致しますわ。


>貴族について

[悪徳商人に賄賂を渡している(=[受け取っている]ではない)]のが、少々不思議ですわよね。
すぐに思いつくのは、このあたりでしょうか?

・本来[競売]等に流れる品を優先的に回してもらっている
・[購入に不都合のある品]を、隠れて売ってもらっている/[盗品][違法な品][あやしい趣味の品]等

考えられるパターンが多いですし、[質問内容]を[具体的な取引内容]にするのは、良いと思いますわ。


>炙り出し方

一つに絞ると[その手段が外れた時]が怖いですから、幾つかの形でわかれたいところですわね。
考えられるのは『[取引の証拠]を探す』『[品]を当たる』『ボロを出させる』あたりでしょうか。
出来れば、[外の証拠/証言]も欲しいところでは有りますが、今回は『ミロワール・ド・スクレが現れて、彼女が失敗するまでは誰も館から退散してはならない』とのことですから、そのあたりは難しそうですわね。
【事前準備】を使えば、多少は得られるでしょうか?


>個人の予定

私は、今回は[護衛を求められている]わけですから、[何処を/何を守ればよいのか]を[貴族の方]に尋ねたり、[分担]の為に[警備の方針]を[用心棒の方]に尋ねるのは自然なことと思いますので、そこから情報を得たいと思いますわ。
例えば、「[○○の部屋]を守ってほしいが、中は貴重な品が多い為、入らないでくれ」等の回答が得られれば、或る程度[怪しい場所]を絞れますわね。
少々甘い想定とは思いますが、相手は[自ら墓穴を掘りに来た方]ですから、間の抜けた部分が有ると思われますので、誘導すれば情報源になり得ると思いますわ。

《今を駆ける者》 ダケン・ヴァルガー (No 4) 2019-05-07 05:55:55
魔王・覇王ルートのダケンだ。よろしく頼むぜ。

>個人の予定
ちょっとまだ検討中だな。
怪傑ミロワール・ド・スクレとやらには興味がある。
こっちから気づけるなら…って考えるところもあるが。
何か頼みたいことがあるようなら引き受けるぜ。

【事前準備】【推測】頼るだけでもある程度情報は得られそうだが
あまりアテにしすぎてもアレだし…もともと戦闘寄りだし、騒ぎを起こす、騒ぎに関わる方向で攻めてみるかなぁ

《不屈愛の雅竜天子》 ミサオ・ミサオ (No 5) 2019-05-07 12:31:42
わぁ~オレこういう悪いことするのだぁいすきぃ。(舌なめずりしながら)
同じく魔王・覇王専攻雑魚担当のミサオ・ミサオだ。
初めましての方はどうぞよろしくねぇ。

個人の予定:オレぁ怯ませるか、ハッタリ掛けるくらいしかできねぇなぁ。
あとちょこっとだけ酒が強いってことだなぁ。
だから、あのお貴族さんに近寄って【飲み比べ】でもしようかねぇ!
いやー。仲間に任せて自分はお酒飲んでのんびりしたろとか思ってないからぁ。
ほんとにそんなこと思ってないよぉ。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 6) 2019-05-07 23:40:38
悪徳貴族が食えると聞いて推参!
賢者・導師専攻プラム☆アーヴィング
…あ?違う?そうかよ。

とりあえず、今回も対人スキルで貴族本人を突撃お前が晩御飯しようと思ってるんだけど…
ウェルカさんは相変わらず頭の回転が速くて尊敬するな。
皆の予定を邪魔しない程度に、時に協力してやれたらと思ってる。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 7) 2019-05-08 00:06:27
一日で大人気課題になってんじゃん。解答人気なのか、貴族人気なのかはてさて。

んー、ザコちゃんどーすっかなぁ。
微妙に思い考えてんのは、雇われてる護衛ってのが腕利き役立ちーってのはわかんだけど。
商人絡みの後ろ暗ぁい護衛なのか、それとも諸々を学園の依頼の時みたいに伏せて投げてる正規の傭兵なのかな、的な。
ほら、正規の傭兵ってなら、そんなわるわるの存在を護る依頼ーって気付いたらやる気も護る気失せない?
ザコちゃんならむしろどさくさ紛れ混ざりで楽しむ方向に移行するけど。あっち様がどーかは別として。

そこ聞くか分かるかするなら、その辺利用できないかなーって。
っても商人への側だったとしたらそれはそれで、悪事暴くーって本来の目的の情報収集に利用活用じゃん?たぶん。

《新入生》 ウェルカ・ラティエンヌ (No 8) 2019-05-08 18:51:21
確かに、参加者が増えておりますわね。
改めまして、宜しくお願い致しますわ。

プラム様、有難う御座いますわ。
最近、「考え過ぎて穴に嵌りかけている」状態に入りつつある気がしてきておりましたので、ご評価いただけるのは、とても嬉しいですわ。


>個人行動
皆様、流石ですわね。
見事な手段が出揃っておりますわ。

であれば、現状[場所]や[物]の方から調べる方が少ないみたいですから、先述の[質問]の後、[防戦の為の下見]と称して、色々と見て回ろうと思いますわ。
[隠れ易い場所]は[怪傑の逃亡時]等、[物を隠し易い場所]には[怪傑の変装道具]等が隠されている可能性が考えられますから、じっくりと見て回るのは当然ですわね。
その上で、[怪しい書類]が見つかりましたら、[タイミング([何処かで騒ぎが起きる]等)]をはかって【経済学】で確認してみますわ。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 9) 2019-05-09 00:45:11
別にそんな深いかんがえにずぶずぶしなくたって。
商家の天使様がやりたいよーに、自分らしくいられるよーに。
そんな感じでいーと思うんだけどねぇ。ザコちゃんは。

結局、しなくちゃ強要なのは悪事を暴く、だもんねぇ。
方向性いっぱい準備用意しとくのはいーよねぇ。なんせよ。
やってることが悪いー、にしても。繋がりが悪いーにしても。なんだったら性格が悪いーとかでも。
槍玉にあげてやれーって課題ってなら、使えそーなんだし。

《新入生》 ウェルカ・ラティエンヌ (No 10) 2019-05-09 17:50:18
チョウザ様、有難う御座いますわ。
そう考えますと、「やり過ぎなくらい検討する」のが私らしい、という結論になって来ましたので、このままの形で進めてみますわね。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 11) 2019-05-10 15:45:10
おっと、今日までが提出期限だね。
各々でばらけて動く感じかな~?
その方が先輩も対策しにくくて厄介かもね。

俺は最初に言ったように、貴族本人にアタックしてみるね~。

《ゆうがく2年生》 アリア・カヴァティーナ (No 12) 2019-05-10 20:24:00
皆で自分の得意分野を使いつつ、たまに情報交換をしながら情報を絞り込んでいけば十分だと思いますわ!
調査の際、『誰にもバレないように調べるか、それが護衛のために必要なことだと納得させる理屈を考えておく』とだけ注意していれば、不審がられることはないはずですの!

わたくしの方針も当初と変わらず、「使用人として行動して、貴族さまが怪しい反応をしたならば皆さまに情報をお伝えする」ですわ!