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機百 GM 

 みなさま初めまして、私は機百と申します。
 至らぬ身ではありますが、適当にお付き合いいただければ幸いに存じます。

 得意とするシナリオは冒険ものや戦闘ものですが、もっと緩やかな感じのシナリオにも挑戦していくつもりです。
 基本的に、明確な達成すべき目標を明示したエピソードを書きますので、プランの方針は定めやすいかと思います。

 遅筆なのは……大変申し訳ありません。少しずつ改善していきます。
 いいゲーム音楽が筆を早めるのですが、何かいいものがないでしょうか?


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・私が使用するNPCの簡易的な一覧です。

○ヴィミラツィカ・サラヴィシチェ
 破滅的博愛神出鬼没悪戯好き暗躍系非常勤教師。『メモワール・ド・コスプレ』の正体。
 私が最初に書いたエピソードから出てきた女性の教師ですが、『今は名前はいらない。後で出せばいいだろう』考えていたら、出す機会を逃してしまいました。なので、『【体験】メメ・メメル誘拐じけ……んん?』にてやっと出せました。
 愛称が『ソロヴィ』なのは、学園長が姓を呼び間違えたのが広まってしまったためです。
 語尾にやや特徴があるので、私のシナリオを続けて読まれた方なら、何となく『あれ、こいつ?』と思われたかもしれません。
 どうにも不安な気分にさせられる気配や言動が多く、しかも神出鬼没な現れ方をして生徒を脅かす悪い癖を持っています。パールラミタ曰く『愛が重たい』そうです。
 エイーア大陸とは別の大陸からやってきたそうですが、詳しいことはまだよく分かっていません。唯、学園長はやや変わった忠義で繋がっているようです。後、スクレの恩師でもあります。

○ミロワール・ド・スクレ
 ちょっと勘違い系変則的純情乙女先輩。後、愉快で格好いいかもしれない頼れる怪傑。
 コスプ……もとい正義の怪傑であり学園の先輩です。我が道を突き進む普通の女の子でもあります。無論、偽名です。
 いつも何かしらユニークな衣装を着ては悪党の前に現れ、華々しく蹴散らしては煙の如く消えるという、絵に描いたような怪人です。
 華々しい活動の裏では人一倍の努力があり、学園の先輩としてはかなりの実力を持っているので、いざという時に頼りになるでしょう。
 唯、何かしら秘密を抱えているようです……?
 完全な余談ですが、入学時にヴィミラツィカに入学試験として『フラマ・インペトゥス』の火口に叩き落されたことは今で根に持っています。

○パールラミタ・クルパー
 おっとり天然ゆるふわ菩薩バブみ系合法ロリ薬師。
 学園長よりも更に幼い見た目をしていますが、薬学の教師をしています。授業や課題によっては自作した薬を生徒に渡すことも。
 兎にも角にも決して怒りません。また、人を疑うという事もしません。何もかもを優しさで受け入れようとするスタンスのようです。
 授業の際は、いつも背負っている薬箱を下ろし、その上に乗って視界の高さを確保してから始めます。この一連の行動はちょっとした名物になっているようです。
 基本的にはいい人ですが、偶にえっちな妄想をこじらせてしまう困った癖があるようです。

○ルクス・イリニ・ダヌシュ
 無口毒舌マイペースぶっきらぼう大食らい違法ロリ先輩。
 賢者・導師コースを専攻していますが、自らの背丈よりもはるかに長い弩を携えている変わり者。再装填に時間がかかるものの、その弩から放たれる魔法の矢の威力は絶大。
 言動は素っ気なく根暗なイメージを持たれがちですが、唯単純に極度のマイペースなだけです。更に普段の服装はだらしなく、居眠りの常習犯でもあります。
 よくお腹を空かせているため、何かしら食べ物を与えたらすぐに懐きます。ぶっちゃけチョロいです。

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担当NPC


《怪傑(先輩?)》ミロワール・ド・スクレ
  Lv74 / Rank 1
悪に塗れる夜なんて絶対に認めない。 明けない闇夜に祈りが募る時、星空を見せてあげる。 あたしが、悪夢を切り裂き光をもたらす千変の使者、 ミロワール・ド・スクレよ! 一応、貴方達の先輩になるのかしらね。 と言っても、この姿で学園生活しているわけじゃないわよ。この格好は所謂プライベートの一環といったところかしら。大体はあたしの手製なのよ。 どうしてよくそんな格好をしているのか、ですって? いい質問ね。それは勿論、可愛いからよ! って、なんでそんな顔をしてるのかしら。 素顔と本名が気になる? 勿論、見せないし教えてあげないわよ。 どうしても気になるなら、あたしを捕まえてみせなさい♪ こういう活動をするなら学園を卒業してからでいいんじゃないかって? 確かにその通りね。 けれども、ちょっと捜したい男がいるから卒業なんて待ってられないのよ。 出席日数? あの日から卒業までに必要な課題を前倒しで片づけたから、授業は当分は免除してもらったの。 とは言え、後輩に心配されるとは、やきが回ったものね。 それに……いいえ、何でもないわ。 っと、そろそろ時間みたいね。 それじゃ、月が明るい夜に、またね♪ ■公認NPC □担当GM:機百 『唯のムカつく鳥っぽいグータラエロおやじよ』 ★ちょっと気を付けてね♪ ・フレンド申請は気が向けば受けるけど、  こっちからはしないわ。 ・悪いけど非公式のクラブの勧誘は断ってるの。  ごめんなさいね。

メッセージ


☆New☆
 『【体験】メメ・メメル誘拐じけ……んん?』が何とか書けました。
 シチュエーションノベルの執筆と重なったため、タイトなスケジュールになりましたが、何とか期日に間に合わってよかったです。軽く腰を痛めたり口内炎を作ったりと、これもまあ名誉の負傷(?)ですね。
 参加された皆様にできる限り見せ場を作れるように頑張りましたが、ラストは……むぅ、我ながらどうにかならなかったのでしょうか。だからコスプレ仮面にあのように言われてしまったわけです。
 尚、『ヨ・スデソ・ウ水晶』ですが、リザルトでもラピ子ちゃんが言ったように、逆から読むと……?
 まだまだ悩んでいるのですが、この『メモワール・ド・コスプレ』の正体たる先生か、『パールラミタ・クルパー』のどちらかを、年明けくらいにNPCとして作成して登録しようかと考えています。
 何か思うところがございましたら、ファンレターなどで意見を送っていただければ幸いです。『前からこのキャラ好きだったよ』みたいな感じで大丈夫です。
 ……まあ、いざとなったら両方作成するという選択肢もありますけど!


 お待たせしました。EXエピソード『ドリンクミー!』のリザルトノベルが公開されました。
 リザルトノベルはレポート形式になると書いたものの、それぞれの行動にパーちゃん先生が評価するという感じに落ち着きました。尚、やたらと間延びした口調で喋る彼女ですが、連絡の文章は普通に書いています。何故なら手で書く文章に口癖や訛りを入れる人なんてそういないでしょうし、何より字数制限ががが
 自分のために使ったり、検証のために使ったり、新たな使い道を見出したり、大冒険を繰り広げたりと、個性的なプランが来たため、執筆がとても楽しかったです。また、体が小さくなるという奇異な体験を鮮明にするために、サイズ差を想像しやすいような描写を少し意識してみたのですが、如何でしょうか……?

 次はそろそろ、エルメラルダ辺りをどうにかしませんと?


 エピソード『憧れは一途で純粋で、されど彼女は憂鬱で』のリザルトノベルが公開されました。
 世情が色々とあれなこともあって、思いのほか早く書けたのは何とも言えない気分です。
 結果としては、皆様の奮戦により大成功です。唯、コメディ寄りになるかも? と自分で書いておいて、なかなかえぐいプランがきて少し困惑しました。(笑)
 こうして一つ彼女は少し成長し、また新たなお話を紡いでいくのです。
 然しその前に私が物書きとして成長せねばならないのでした。



 現在の公認NPCは【ミロワール・ド・スクレ】です。変人です。もし広場で見かけましたら適当におちょくっていただければ幸いです。
 自分で言うのもあれですが、なんでいつも服装を変えるだなんてややこしい設定にしてしまったんだろう……。


☆サンプルの非公式ショートストーリーは完全な不定期更新で、プロローグかリザルトノベル提出時に一緒に更新されているかもしれません。
 基本的に私が出したNPCによる小話が殆どです。あまり期待しないで適当な暇つぶしにちらっと見ていただければ幸いです。

※12/21 過去に書いたショートストーリーを再掲。
     完全新作はもう少し暇ができた時にでも……。


※とりあえずTwitterやってます。
 と言っても、可愛いっぽいものへのリツイートばかりですが。

作品一覧


懐疑せし迷霧の薬毒 (ショート)
機百 GM
●そいつは廊下の寒気と共に  とある冷える日の放課後のこと。  フトゥールム・スクエアのとある教室の中は穏やかな陽光が差し込み、暖かな空気が満ちていた。  そこであなたは級友と談笑していたり、またはまだ授業から抜け切れず教科書と睨み合っていたり、または物思いに耽っていたり、もしかしたら最後の授業から机に突っ伏してずっと寝ていたかもしれない。  今日もこうして解放感に満ちた放課後を過ごせている。今に至るまでの授業が大変だったりすることもあるのだが、過ぎてしまえば辛さや苦しみも忘れてしまえる。特に、まだ冬が抜けきらないこの時期は陽光が肌を撫でてくるから更に心地いい。  実に緩く弛んだ時間が流れていた。と、誰もがそう思っていたところだった。  何の前触れもなく、ピシャっと音を立てて教室の扉が勢いよく開かれ、そいつは現れた。何事かと教室の皆が思わず、扉を開けた人物を一斉に注視した。  扉を開けたのは、女性の教師だった。だが、あなたが入学してからこの教師の授業を受けたことがないような気がする。それどころか、これまでに廊下ですれ違ったことすらあっただろうか……? 「ふむ、可能性の辰星に不足はないなァ」  何故か少し愉快そうに彼女は言った。一体何を言っているのだろう。  その教師は短剣を左の手の平でくるくる玩びながら、扉にもたれかかって教室中にいる生徒の一人一人を見つめていた。それはまるで品定めのようであり、時々肉食獣のようなほっそりとした目で見つめてはほくそ笑んでいた。  あなたは思わず体が震えるのを感じた。この教師が扉を閉めないから、だけではない。彼女からは何か不穏というべきか邪というか、どこか教師に似つかわしくない異様な気配を感じるのだ。 「おっと、そんな顔をしてくれるな。喜ぶといい。可能性に満ちたお前たちに、一つ課題を与えようではないか」  残念! あなたの束の間の平穏はここで終わってしまった。 ●悩める四重苦  今、その女性教師は教壇にもたれかかりながら、異様に嬉しそうな眼差しであなたたちを見つめながら説明を始めた。尚、扉はちゃんと閉めたが、部屋が陽光で暖まるのに少し時間がかかりそうだった。 「さてお前たちには、エルメラルダにいる薬師の手伝いをしてもらう」  エルメラルダ。この大陸の東の方にある、湖に面した村だ。あの辺りは特に自然が豊かとされているが、そんなところでの薬師の手伝いとは? 「果たすことは簡単だ。村から一時間ほど歩いた先にある森で、『クレリマ草』という薬草を10株ほど集めに行ってほしい」  少々数は多いが、確かにそれなら簡単そうだ。多くの生徒が安堵しかけた時に、彼女は言葉を続けた。 「但し、この時期の件の森は濃霧に覆われる。見通しが悪く現地の者でも遭難することが偶にあるそうだ。次に、クレリマ草によく似た『似せ赤葉』というのも生えている。これは毒草だから間違えないでくれよ? 後、ゴブリンを目撃したという情報もある。何匹いるか分からないらしくてな、深追いすれば怪我では済まないかもしれないなァ?」  前言撤回。課題というにはあまりにも条件が厳しすぎた。それだけの条件を簡単なように喋るこの女性教師に、生徒たちは頭を抱えた。  それでも生真面目な生徒が、クレリマ草と似せ赤葉の見分け方を教えてください、と訊ねた。 「ふむ。クレリマ草と似せ赤葉は共にシソに似た植物で、大きいもので約45cmほど伸びる。一目でこれと分かるくらい赤い葉が最大の目印だろう。主に、リンゴの木の根元に生えやすいようだ。さて、クレリマ草と似せ赤葉の違いだが、これは掘ってみないと分からない」  掘る? 思いがけないキーワードが飛び出て、生徒たちは目を丸くした。 「ああ。傷つけないように掘って、根の臭いを嗅ぐのだ。クレリマ草なら根から微かに甘酸っぱい匂いがするが、似せ赤葉は無臭だ」  採取するにしても一手間かかるとはなかなか厄介だった。手間をかけて探したはいいが徒労に終わることもある、ということでもある。  だが、ここで一つの解決策が思い浮かぶ。  クレリマ草をリリー・ミーツ・ローズから分けてもらえばいいのではないかと、ある生徒が言った。 「残念だがそうもいかなくてなァ。かつて、リリー・ミーツ・ローズ産のクレリマ草で薬を試作したこともあったそうだが、品質はエルメラルダ産のそれには及ばなかったのだそうだ。この原因は、エルメラルダ付近の例の森という環境の違いに起因すると考えられている。それに、だな」  まだ何かあるというのだろうか。 「クレリマ草は非常に弱い植物でな。一度摘み取ってしまえば2時間ほどで傷んでしまう。言い忘れていたが、現地で採取する時もあまり遊んでられんということだな」  どうあっても現地の森でクレリマ草を採取しなければならないようだ。しかも時間制限付きときて、多くの生徒が嘆息しかできなかった。尤も、何か抜け道があるようなら課題になっていないのかもしれないが。  これだけ厄介な条件が重なっているのだ。生半可な覚悟で挑んでは、間違いなく上手くいかずに終わってしまうだろう。それだけに、あなたも少し不安を覚えてしまった。 「最も優先すべき目標は、クレリマ草を採取して村の薬師に渡すこと。ゴブリンに関しては心配無用だ。後日、お前たちの先輩が討伐を果たすだろうからな。さて、あらかた説明は終えたな? 己の力量に見合わないと思ったのであれば、この課題は辞退してくれても構わん」  ここでまさか、逃げ道をこの教師の方から出してくれるとは思わなかった。何人かの生徒が、逃げ出すように席を立っていく。だが、それを咎められる者はここにはいなかった。 「とは言え私は、お前たちの可能性に期待してみたいのだよ。眩いばかりの、可能性というヤツになァ」  さて、あなたの答えは――?
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-03-15
完成 2019-04-03
正義の怪傑参上! (ショート)
機百 GM
 相変わらずそんなことを言うのね。大きすぎるお世話だって何度も言ってるのに。  またそんなつまらないことを言うんだから。そんなんじゃ、幾らでものさばる悪がいるってものよ。  それに私には、何よりも譲れない思いがあるの。  何故ならあたしは、千変の使者にして夜の淑女。そして、みんなの希望なんだから! ●景観・風情ぶち壊し  時候は暖かき春の青空。それは学園の桜もすっかり青づいてきた頃の事。  廊下を歩けば、まだ皺のない制服を着た新入生を見かけた。自分も前まではこんな晴れた顔をしていたかもしれない。  ふと、窓から外の景色を眺めてみた。新緑芽吹く木々が目に入り、少し生暖かい風が吹き込んできた。この学園『フトゥールム・スクエア』の授業は大変だが、広大な敷地内の眺めはそんな疲れも吹き飛ばしてくれるようだ。 「退屈しているようだなァ?」  顔だ。  いきなり顔だ。  にゅっと顔だ。  逆さまの顔だ。  切れ長の目が下、三日月のような不敵な口が上についた褐色の顔が目の前にいる。  バケモノだ! ひるんだあなたは思わず跳ぶように後ずさった。 「失礼なことを考えてくれたようだがまあいい。それよりも、だな」  逆さまのそいつは、どういう手段を用いてか上の階から逆さまにぶら下がって、外からあなたを覗き込んでいたのだった。そいつはあなたがいる階に、蛇が潜り込むようにするりと入ってきた。一応人間のようだが、行動がバケモノじみている。  とんでもない出現を果たしたそいつは女性の教師だった。彼女はあなたの顔を見て不敵に笑ったが、思わず引きつってしまう。 「そんな顔をしてくれるな、些末な頼み事だ。折角だし、その辺のお前達も聞いていくがいい」  そう言って、女性教師は近くを歩いていた生徒に声を掛けた。  興味本位で素直に近付いてくる生徒や、咄嗟に逃げようとしたが、微笑まれて何故か観念してしまった生徒もいた。  奇異な状況に困惑するしかなかったが、少なくとも『今逃げる』と言う選択肢は無かった。 ●それは正義か、変人か  こうして、集められた生徒達と共に空き教室まで来てしまった。  集めた女性教師は黒板の前にもたれかかると、説明を始めた。 「さて、少し話をさせてもらおう。ある貴族から護衛の依頼が来た。怪傑『ミロワール・ド・スクレ』なる怪人から脅迫されている、となァ」  貴族の護衛。授業としてはそんなに珍しいものではない。  然し、怪傑とは? 少なくともあまり尋常な存在ではないのは確かなようだ。 「怪傑『ミロワール・ド・スクレ』。おおよそ2年前から活動している怪人だ。その活躍によって多くの名家を破滅に追い込んできた極悪人……とも言えるかもしれない。自らを千変の使者と名乗っているが、その異名の通り変装の腕前は凄まじい。かつて、30年間家に仕えてきた執事に変装して、正体を明かすまで主人にも見抜けなかったという逸話もあるくらいだからな」  女性教師は少し楽しそうに説明を続ける。そんな話の一体どこに楽しそうな要素があるのか。  けれども『怪傑』とはまるで、本か劇の中のような存在だ。なのにまさか実在するなんて、と羨望する生徒もいた。 「貴族の屋敷に、剣使いの傭兵で構成された腕の立つ用心棒が3人いるそうだ。まあ、それだけでは足りないと判断して学園に助けを求めたのだろう。ミロワール・ド・スクレはレイピアの腕も長けているからな」  変装だけでなく、戦闘技術もこの怪傑にはある。  そんなにレベルの高い存在が相手となると、自分達では足手まといになるのではないだろうか? 「貴族の館はまあそこそこに広いが、迷ったりするようなものではもない。2階と地下室がある程度だ。さて、ここまで説明したところで怪傑からこの貴族を救ってやれ………と言うのは、ずばり建て前だ」  突然手のひらを返したような言動に、誰かしら生徒が思わずつんのめった。  どういうことだ? 一体、自分達に何をやらせたいのだろうか? 「ここからは学園としての依頼であり授業の一環とする。心して聞くといい」  女性教師は懐から取り出したナイフを掌で回しながら、改めて説明を始めた。 「先に言っておこう。そもそも怪傑『ミロワール・ド・スクレ』は悪人にしか犯行を予告しない。そして、予告で指定した時間に堂々と現れては、華々しく大立ち回りをして、様々な悪事を暴いてきた。そして、私が独自に裏付けを取ったのだが――この貴族、どうも悪徳商人に賄賂を渡しているということが分かった。つまるところ、この貴族が学園に依頼してきた時点で大墓穴だったということだなァ」  『脅迫された』と言っておいて、どうやら自分に都合が悪いことは隠して、学園の生徒に護衛をさせようと考えていたらしい。  然し、どうやってこんな際どい情報の裏付けを取ったのだろうか? 「む? 黒幕・暗躍を専攻にしているなら、この程度の情報収集が出来なくては困るなァ。それはいいとして、ここまで聞いたところでお前達にやってほしいことがある。ミロワール・ド・スクレより先に貴族の悪事を暴いてやれ」  えっ? いやいや、その怪傑が善人だと言えないが、ここは怪傑と協力して貴族の悪事を暴くのが常道なのでは? 「私は彼女のような生き方は嫌いではない。むしろこれもこの学園の生徒の在り方として、寧ろ大いに肯定しているとも。だが、学業を修める上で出席日数など、学生として先立つものが色々と不足しがちでな」  ちょっと待て。  この学園の生徒ってつまり、ミロワール・ド・スクレって……!? 「あァ。何を隠そう、お前達の先輩だ。彼女は彼女らしく黒幕・暗躍コースを歩んでいるんだが、学生らしくもう少し学業にも力を注いでほしいと多くの先生に言われててなァ……気は進まないのだが、新入生のお前達が何らかの手段で出端をくじいてやって失敗させれば、少しは懲りると思ってな」  貴族が脅迫されていると思って聞いてみれば、話がおかしな方向に飛んでいってしまった。怪傑がまさか自分たちの先輩だとは。  然し、気は進まないと言いながらも、この女性教師はやはり楽しそうに話を進めているように見える。真意がまるで見えないが、こんな状況すら楽しんでいるようにも見えた。 「お前達は護衛という名目で入館が許可されている。それを逆手にとって、貴族の悪事の証拠を掴んでやれ。但しコスプレ……じゃない、ミロワール・ド・スクレが現れて、彼女が失敗するまでは誰も館から退散してはならない」  えっ、えっ? ええっ??  今、コスプレが何とかって言いませんでしたか? 「おっと迂闊だったなァ、彼女の名誉のためにあまりその名で呼ばないでやってやれ。彼女が素の怪傑の姿で活動する時は、給仕、踊り子、医者など様々な姿で現れてきた。これが本人の生き様と趣味らしいのだから仕方がないが、そんな姿勢を貫いた結果、『コスプレ仮面』なんてあだ名が浸透してしまうのもまた仕方のないことだなァ?」  何だか、話の最初の方のミステリアスな空気が遥か彼方に吹き飛んでしまった。もはや唯の不審者ではないのか。  そんな変人の出端をくじけと言われても……。 「ふざけているように見えるが、学園の先輩らしく実力は相当なものだ。今のお前達では、力では到底敵わん。だから、出端をくじくという手段に出るしかないわけだ」  少し頭が痛くなってきた。要は貴族の悪事を暴けと言う事なのだが、余分な筈の要素が妙に大きい気がする。 「では、今回も可能性の辰星に期待させてもらおう」
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-05-03
完成 2019-05-20
【夏コレ】黒雨 (ショート)
機百 GM
●嵐の前触れ  其れは、夏の全校集会より少し前の事。  どこかの裏路地にて。 「――状況は以上です」 「裏付けは取ったな?」 「舟を借りて確認しました。あれの正体は恐らく――でしょう。厄介な相手です」 「ふむン……成程、よくやったな。ご苦労」  男は情報を伝えると、すぐにその場を後にした。その場に残ったのは、背が高く、背丈ほどある薄い亜麻色の髪の女。  彼女は一応教師らしい。らしいというのは、教師の肩書を持ちながら、彼女から授業を受けたという生徒は少なく、殆どは用務員か何かだと思っているらしい。それどころか教師たちの間でも、名前は知っていても姿を見たことがないという教師もいるくらいである。  それはさておき、確か今年の新入生が近隣のアルチェの町で夏を満喫するらしい。だが今の件を放置すれば根底から台無しになってしまう。  なら単純に、新入生自身に解決してもらおう。少しばかりの助力を添えて。  彼女は頷くと、裏路地の闇に姿を晦ました。  その明日のこと。 「というわけで、状況を説明させてもらおうか。途中退出は許可しないぞ」  待て。今の状況を説明するのが先ではないのか? なぜ自分達はす巻きにされていて、埃塗れの倉庫に転がされているのだ。  記憶を遡れば確か自分は、親しき友人と共にクイドクアムで買い物をしていたはずだ。そこで、少し別行動をすることになってから……あれ、何故かここから先の記憶がない。 「細事だ、気にするな」  細くない。  そもそもこうなって途中退室などできる筈がない。何にしてもやり方が手荒というレベルを超越していた。 「まあ、きわめて緊急性の高い事態でなァ。皆の夏の思い出を守るための課題だと言っておこう」  そう言うと女性教師は、こちらの困惑や憤りを無視し、適当な木箱に腰を据えてすらりと長い足を組むと説明を始めた。 ●幽霊船は来たる 「まず、新入生達がアルチェの町へ行って遊んだりしてくるのだったな? この課題を無視すれば、夏の思い出は悪天候で外に出られぬまま終わるだろうなァ」  話を飛躍させていないだろうか。だが、どういうことだろうか? 何故課題を無視すれば悪天候になるのか。 「まず、アルチェの町はイルフィナ海に接しているが、そのイルフィナ海沖で、暗雲垂れ込める暴風雨の中に奇妙な船を見たという話が漁師達の間で囁かれている。誰も乗っておらず、マストが折れ船体が大きく破損しているにもかかわらず、荒波を漂っているわけだ。それを見た若い船乗りは『幽霊船』と呼んでいるらしいなァ」  女性教師の軽い口調とは裏腹に、急に怪談のような重く湿っぽい空気が漂ってきた。  幽霊船? いやまさかそんなものが実際にある筈が……。 「その幽霊船だが、最初は沖に漂っているだけで、誰も気味悪がって近寄らなかったため、今のところ被害はない。だがその幽霊船が暴風雨を引き連れるように、アルチェの町に少しずつ近づいてきているとしたら、どうなる?」  アルチェの町が暴風雨に見舞われるのは確かだろう。そうなっては確かに、夏の思い出など暴風雨と共に吹き飛んでしまう。  これらが幽霊船の祟り、と言ったものでないことを祈りたいが……。 「そこでお前達には幽霊船を止めてきてもらおうか。皆の夏の思い出を守るために、なァ?」  女性教師はスッと足を組みなおしつつ、にやりと笑った。 「まず『幽霊船』の正体だが、これは巨大なスライム型の魔物が難破船を巣にしながらそのまま浮き上がってきた姿だ。この魔物は青色の巨大な粘液の肉体を持つが生命力が低い。それを補うために沈んだ難破船などに入り込み、脅威から身を守っていると考えられている。奴は雷雲や雨雲を好み、それを見つけると船と共に浮き上がってくる。そして、何らかの魔力によって雲を自分のいる場所に停滞させる、というわけだなァ。これは繁殖のための行動と考えられているが、所詮推測の域だ」  この奇妙な習性と、前例を知らない船乗りの想像力が幽霊船の噂に繋がったのだろうな、と女性教師は付け足した。それを聞いて何人かの生徒はほっと胸をなでおろした。 「このスライムの魔物、『メデューズ』の倒し方だが、先も言ったように難破船を殻の代わりにしているため、傷んでいるとは言え外からの攻撃は通じないと考えろ。そもそも何処に奴がいるのか分からなければ徒労に終わるだろう。だから難破船に乗り込んで直接、コアを叩くしかない。先ほど生命力が弱いと言ったが、この手の魔物としては珍しく物理的な攻撃がそこそこ通じるから、その点は安心していい。だが奴は船の破損個所からゲル状の触手を伸ばして不意討ちしてくる。痛いでは済まないかもなァ?」  敵の体に直接張り付いて戦えということである。リスクはあまりにも大きいが、それ以外に手がないとすればやるしかないだろう。 「メデューズだけではない。難破船のあちこちに、奴と共生しているフジツボ型の魔物の『カタラク』が張り付いているそうだ。こいつは個々で戦うなら大した相手ではないが、狭い箇所にびっしりと密生していることが多いから、数の差で苦戦するだろう。こいつの攻撃手段だが、毒を含んだ海水を吐き出したり、殻の一部を飛ばしてくる」  メデューズだけでも厄介な存在というのに、こんな魔物とも戦わなければならないとは。  正攻法で攻めると消耗が激しくなるだろう。だが、どんな搦め手を使えば少しはマシに戦えるだろうか? 「難破船の規模だが、全長は大体、学園の小規模な屋外練習場のトラックに匹敵する。全幅は、その運動場の三分の一にも満たない程度だろうか。少なくとも迷うことはあるまい。中の様子は分からないが、外観や規模から察するに貨客船だったと推察される。客室と乗組員室のデッキと貨物室のデッキがあるとみて間違いないな。後、長い間海に沈んでいたから結構傷んでいるだろうが実際に貨客船だったとすれば、大きく傷んでいる個所をわざと踏まない限り踏み抜くことはないだろう」  多分、船の最深部まで行けば奴を叩けるだろう、と女性教師は言葉をつけ足した。  問題は、メデューズ本体がいるその最深部まで出来る限り負傷しないで行く方法だが……。 「今のお前達では道中でかなり消耗させられることだろう。そこでだ、助っ人を二人呼んでおいた。クスギリ、ダヌシュ。来るがいい」  女性教師が指を鳴らすと、二人の生徒が入ってきた。一人は、山刀のような大太刀を背負ったローレライの剣士の青年。もう一人は、弩というには長すぎる得物を肩に担いだ、小柄なルネサンスの術師の少女だった。 「ああやっぱり、今年もまたこんな……皆さん、本当にうちの先生が済みません!」 「生徒に謝らせてる」  ローレライの青年がす巻きになっている皆に必死に頭を下げ、ルネサンスの少女は女性教師をジトっと見つめていたが、女性教師は全く意に介さず話を続けた。 「この二人はお前達の先輩だ。今回は一人だけお前達に同行させよう。上手に使ってやれ」  女性教師が再びにやっと笑ってもう一度指を鳴らすと、す巻きにされている生徒全員の縄が独りでに解けた。  生徒達は目を丸くし、恐る恐る立ち上がる。 「説明は以上だ。挑んでくれると信じているよ。あぁそうそう、課題を果たしたら一日だけアルチェの町での自由行動を許可しよう。勉学に努めるのもいいが、夏の楽しみを先取りするのも一興だろう」  奇妙な事態と厄介な課題で不安になった生徒達だが、この一言でやる気が漲った。
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-06-23
完成 2019-07-11
悪意伏せし修練場 (ショート)
機百 GM
●悪意なき誘い 「キミー、ねーねーちょっとだけいいかなぁー?」  午後の授業が終わった後、誰かが背後から呼んできた。思わず耳が蕩けるようなゆるゆるでふわふわしたスローテンポな声調に聞き覚えはなかった。  誰だろうかと振り返って見下ろしてみると、そこにいたのは、先の口調に違わずどこか眠たそうに見える桜色の髪の幼女。まごうことなき幼女だった。  耳がとがっていることからエリアル族のエルフに違いないが、しかしそれにしても随分と幼く見える。  それはさておき、ここの生徒だろうか? そんな彼女が自分に何の用だろうか? 「キミは遺跡の探索って、興味ある方かなー?」  また妙な事を聞いてくる。事情は多々あれ、この学園に入った一生徒として、それなりに関心はあるつもりだ。 「ふふーそれならよかったんだねー。明々後日に学園の敷地内にある『初心者の遺跡』に集合するんだよー。そこで授業をするから、一人でも多く来てくれると嬉しいんだよー」  『初心者の遺跡』とは何だろうか? だがその名前と、学園敷地内にあるということから察するに、そう危険な場所ではなさそうだ。  それにしても何だか眠たくなってきた。この幼女の声には眠りの魔法でもかかっているのだろうか。 「来れそうなら来てねー? じゃあねー」  幼女はそう言うと、すぐに別の生徒を勧誘しに行った。  何なのだろう? 不安な授業だから付いてきて欲しいとか、そういう事なのだろうか? それならちょっとでも力になってあげるのも悪くはないかもしれない。  その前に、『初心者の遺跡』というのがどこにあるのか調べなければ。 ●善意の舗装  あの幼女に誘われたらしい生徒と共に、石造りの岩屋のような遺跡にたどり着いた。 「ふふー来てくれたんだねー? 嬉しいんだよー」  声の先には、三日前にゆるゆるふわふわな声で呼びかけてきたあの幼女がおり、遺跡の石段に腰を下ろしていた。彼女の脇に少し大きな木製の箱が置いてあるが、あれは何だろうか。 「ボクの名前はー【パールラミタ・クルパー】って言うんだよー。気軽にパーちゃんとか楽しく呼んでくれると嬉しいなー? でも、クルクルパーだけはダメーなんだねー。ボクは本当なら医学と薬学を教えているんだけどー【ソロヴィ】先生が急用だからー、この授業はボクが代行するんだよーみんないーいー?」  彼女のセリフで多くの生徒がどよめいた。まさかこの幼女が『教える側』の立場だとは想像できなかった。  あの合法ロリな学園長より更に若い、と言うより幼い。それだけにこの衝撃は不意を打たれるなんてものではなかった。 「しずかにーしずかだよー。ダメーなんだよー?」  少々時間がかかったが、パールラミタが生徒達をゆるくなだめたことでようやく授業が始まった。曰く、見た目こそとても幼いが、それなりに長く生きているらしい。年齢は秘密とのこと。 「改めて言うけどー、ここは『初心者の遺跡』っていうんだー。主に新入生に、遺跡やダンジョンの探索の基礎を学ばせるために造られたといわれてるんだねー」  成る程、だから『初心者の遺跡』なのか。これまでに学園内で色んな場所や施設を見てきたが、こんな建造物もあるとは。  パールラミタはまったりと話を続けた。 「ここでみんなにはー、地下三階にある緑色の宝珠を取りに行ってもらうんだねー。でもでもー、中はゴブリンがいたりー、多くの罠でいっぱいなんだー。特にー、ここは罠の攻略を目的に造られた場所だからー、罠に気を付けるんだよー」  要となるのは魔物ではなく罠の方らしい。そうなると、武器よりも道具の方が重要になってくるかもしれない。  ここである生徒が遺跡の中について訊ねてきたため、パールラミタが答えた。 「中は石造りの通路が主体でー、純度の高いキラキラ石を照明にしているからあまり暗いということはないよー。中は通路が主体の迷路のようになっているけどー、そこそこ広い部屋も幾つかあったと思うよー? 後、万が一ね、体力魔力気力が尽きて倒れたりー、ギブアップを宣告したりー、一定回数罠にかかったら入口まで自動的に転移されるからそこは安心してねー。もし怪我をして戻ってきたらー、これでばっちり治しちゃうからねー?」  そう言ってパールラミタは傍にあった木製の箱をポンと叩いた。やや大きいものの、どうやら薬箱らしく、中から膏薬や包帯などを出して見せつけてきた。  アフターケアもあることだし、これなら気楽に挑むことが出来そうだ。他の生徒達もそれほど緊張した様子はない。  ところがここで、パールラミタは深く考えこむような顔をして説明を続けた。 「そうなんだけどねー? この遺跡は毎年の恒例でー、ソロヴィ先生が新入生の為に専用の罠を仕掛けるんだー。今年は、従来のものより怪我しにくいものに変えたと聞いたんだけどー、気をつけて進むんだよー?」  ソロヴィ先生と言うのが誰かは知らないが、一体どのような感じに手直ししたというのだろうか。本来のものより怪我しにくいとは言うものの、気を付けるに越したことはない筈だ。 「宝珠を取ってこれたらーボクがご褒美をあげるねー。みんな頑張るんだよー?」  褒美までついてくるのかと考えながら遺跡の入り口を見やると、物干し竿のように細く長い木の棒が側に何本も立てかけられていることに気がついた。  見たところ武器ではないようだが、あれは使ってもいいのだろうか? 「んー? おー、あんなのがあったんだねー。多分いいと思うよー?」  パールラミタはそれに今気がついたらしく、ぽやんと見つめていた。  確かこの手の長い棒は探索の必需品だと授業で習ったことがある。怪しい場所や宝箱などを棒の先端でくまなくつついて罠の有無を調べたり、先端に小さい鏡を括り付けて曲がり角の先の様子を見たりと、脅威から常に一定の距離を取りながら安全を確保する為に用いるのだ。  成る程、思ったよりもやりやすい授業じゃないか?  他の生徒たちも乗り気だ。パパッと終わらせてしまおうじゃないか。 「でもー……あんな棒、普段から置いてあったかなー?」  木の棒を手に取って肩に担ぐ生徒を眺めつつ、パールラミタは不思議そうに首を傾げていた。
参加人数
5 / 8 名
公開 2019-08-10
完成 2019-08-29
水際に佇む古強者の意地 (EX)
機百 GM
「フン、今度はお主か」  かつての古強者が海を見ていた。それは怨敵を見つめる鋭い目であり、その貌は鬼のように歪みきっていた。  その先に見えているもの。今は日が沈む大海原でしかないが、彼には怨敵が見えているようだった。 「恩師に大した言い草だな。昔はからかい甲斐があって可愛かったのになァ?」 「……フン」  古強者は振り返らない。振り返ってはならなかった。  私はきっと暖かかった過去だ。故に、過去にすがりそうになってしまうのだろう。 「耳を貸す気は、無さそうだなァ?」 「無論じゃ。まだ去るつもりはない。邪魔立てするなら、お主とて従では済まさぬ」 「荒んだなァ。お前は鬼になれる男ではなかったと思っていたが?」  彼から全てを奪ったもの。それがこの時期に、あの海の向こうからやってくる。  けれど、彼の命の火はもう消えかかっている。だからこそ、ここで皆の後を追うつもりなのだろう。 「今のお前でどうにかなるなら何も言わんよ。そうならないから、少々お節介を用意させてもらうが」 「要らぬ! 心に生きる皆が儂に頼んでいるのだ、奴らを討てと哭き叫んでな……!」  全く、あの頃から頑固さだけは変わっていないようだ。  故に私は彼を止めない。止める権利も理由もない。それは間違いなく復讐だが、それを果たすことだけが、今の彼の全てなのだから。 「そうか……お前は優等生ではなかったが、確かに模範的な勇者だった。またな」  それだけに、そんな悲劇的な最期が似合う男ではない。らしくないことが似合うわけがない。  踵を返すも、古強者はやはり振り向かなかった。 「……守れなかった勇者など、何の意味があろうか」  古強者の頬をつたう涙に、夕日が溶けるように煌めいた。 ●彼が生きる理由  あなたは赤い手紙を持って学校の校門前に向かっていた。道中で同じ手紙を持った生徒を見つけ、言葉を交わすことなく互いに頷いた。  自室の机の上に、いつの間にかこの赤い手紙が置かれていたのだ。  内容はこうだ。 『特別な課題を受けたい者は、明々後日の下校時刻に学園正門右側へ行け。断ったら後の授業がもっと楽しくなると思えよ。 В.С.』  白いインクでそのように書かれていた。どうやら課題の案内らしいが、断った後が理不尽だった。  『В.С.』とやらが何者か分からないが、とりあえず不気味な赤い手紙に従って指定された場所まで行くことにした。  目的地である学園正門の右側には、大太刀を携えたローレライの学生が立っていた。顔立ちや服装が中性的で、百合の花のように華やかながら落ち着いた雰囲気を放っていた。 「おやあなた達が……自分は【クスギリ・カテツ】と申します。以後、お見知りおきを」  カテツは赤い手紙を持った一同に気が付くと、自己紹介しながら恭しく一礼した。その動作は流麗ながらも無駄がなく、これだけで彼が只者ではないと何人かの生徒が見抜いた。 「恐らく、赤い手紙の特別な課題について聞きに来たのでしょう。これから説明を始めますので、聞いてください」  カテツは集まった生徒の顔を一目見てから話し始めた。 「まず課題を行う場所は、エイーア大陸の西の果てにある、小さな漁村だった場所です」  だった、とということは今は違うのだろうか。カテツは集まる視線で疑問を察知し、説明を続けた。 「一年前にその漁村は、ある魔物によって滅ぼされてしまいました。交通の便が悪かったため復興されることもなく、廃墟として打ち捨てられましたが、今は唯一の生き残りが住んでいます」  学園のすぐ近くは平和でも、少し離れれば幾らでも魔物の脅威がやってくる。その漁村はそんな犠牲者ということだろう。  だが、生き残りとは? そんな場所に一人で住んでいるとは一体何者なのだろうか。 「彼の名は【サロス・ペトラケファリ】。六十年程前にこの学園を卒業した人です。卒業した後は、ずっと故郷の漁村を一人で守ってきました」  フトゥールム・スクエアを卒業したからと言って、理想を実現したり、大願成就出来るとは限らない。だが彼の様な生き方もまた、この学園の卒業者ならではのものである。少なくとも、故郷の人々には慕われていたに違いない。  彼の故郷の漁村が廃墟になった原因は、やはり魔物の仕業なのだろうか? 「はい。彼が用事で村を出ていた間に、ある魔物達が村を襲いました。村は魔物達によって大火に覆われ、誰一人生き残ることができませんでした。その中に、サロスさんの息子さんとお孫さんも含まれていたそうです。それからサロスさんは、廃墟となった漁村に一人で住み続けているのです……魔物達への復讐の為に、です」  珍しいことではないとはいえ、それはあまりにも痛ましい話だった。自らの境遇と重ね、彼に共感する生徒もいた。  だが同時に疑問も湧いてくる。今は彼が一人で住んでいるとは言え、廃墟になってしまった場所に再び魔物達が襲いに来るという確信があるのだろうか? 「サロスさんはその魔物達とずっと戦い続けてきたため、習性を熟知しています。魔物の名は『火鷸(カシギ)』。別の大陸から海を渡ってやってくる、渡り鳥の姿をした魔物です。サロスさんは毎年、一人で火鷸の群れと戦って村を守っていたそうですが、去年は例年より早く――まるでサロスさんがいないのを見計らっていたかのように襲ってきたそうです」  運が悪かったというべきなのだろうか。だがそれだけに、彼が抱いた無念と後悔は計り知れない。  村を襲った火鷸という魔物の特徴は何か、訊ねてみることにした。 「火鷸は、翼を広げた時の大きさが四メートル程の巨鳥で、翼の両端の風切羽と嘴が常に炎に覆われています。局所が炎に覆われていますが、魚を捕食するために短時間海に飛び込むこともあるそうです。主な攻撃方法は、嘴で突いてきたり、炎の息を吐きかけてきたり、足の鉤爪で掴みかかってきたりします」  空を飛ぶだけでも十分に厄介なのに攻撃手段が多彩ときた。炎の攻撃による灼熱状態も懸念すべきだろう。  カテツは更に説明を続けた。 「一番厄介なのは、常に群れで行動することと、それで巧みに連携を取って行動することです。集中狙いをしようにも横槍を入れてきたり、別の火鷸を囮にしてフェイントを挟んできたりします。この連携と知能の高さこそが火鷸の最大の武器と言っても過言ではありません」  狡猾に動く敵に真っすぐ向かえば苦戦は必至だろう。こちら側も何か工夫する必要がありそうだ。 「火鷸の討伐が今回の課題の目標となります。でもできる事なら……サロスさんを助けて頂けないでしょうか? 彼は重度の病を患っており、このままでは火鷸に勝てたとしても先は長くないでしょう。病は学園くらいの設備がなければ治すことができません。ですが、彼は意地でも村に居残ろうとするでしょう。どうか皆さんも説得していただけないでしょうか?」  待て。彼はそんな状態でそんな厄介な魔物と戦おうとしていたのか。  それでは幾ら大先輩であるとは言え、火鷸相手に勝てる見込みなど無いのでは? 「そうですよね。これは自分の勝手な思い込みですが、サロスさんはもしかしたら……死の先に魅入られているのかもしれません。復讐の成否にかかわらず、亡くなった村人達の後を追いたいのだと――そのように思えるのです」  カテツは青ざめた顔を小さく俯きながらそう答えた。  火鷸を倒すだけならそれ程大変ではないが、彼を死なせないとなると難題になる。  それ故に、後悔のない最善の選択を望むべきだろう。
参加人数
2 / 8 名
公開 2019-09-18
完成 2019-10-05
【優灯】お化け盗賊をやっつけろ! (ショート)
機百 GM
●鏡と白い何か  秋晴れの朝。あなたは小さくあくびしつつ、洗面所に立った。  まずは水を口に含んで、軽くすすいでから吐き出す。次に自分のコップの中に立てた歯ブラシを取り、ブラシに適量の歯磨き粉をつけて歯磨きを始めた。  鏡に映る自分は、少し顔色が悪い。今日は空気に寒気が混じりつつあり、風邪をひきかけているのかもしれない。  もうじき十一月で、冬の入り口に差し掛かっている。ハロウィンの時期でもあるが、どうもおかしな話をよく耳にする。多くの人が記憶を無くし、魔物の大軍を引き連れた奇妙な三人組が現れたという話だが――。  考え事をしながら歯磨きをしていると、何の前触れもなく、パカッと鏡が開いた。  思わず目をむいてしまう。『鏡』が扉のように開いたのだ。  そしてその向こうには、狂気的な気配を瞳に宿した、女性教師の顔があった。 「やあ、おはよう。いい朝だなァ?」  思わず口の中身を吹き出してしまった。この女性教師の褐色の顔にかかってしまうが、それどころじゃない!  さらに歯磨き粉が喉に飛び込んで、ついむせて咳き込んでしまった。  なんて朝だ! 「おおっと……顔に遠慮なくぶちまけるとは、なかなかいい素質だなァ?」  何が!? 訳が分からないよ! と言うか分かりたくもない!!  女性教師はこっちが咳き込むのを無視して、水場の蛇口を開けて自分の顔をさっと洗い流すと二タッと笑い、 「そんな事よりもお前に課題を与えよう。放課後に呼んでやるからな」  一言だけ伝えると、鏡をパタンと閉じていなくなった。まるで、最初から自分しかいなかったかのようだった。  こっちがやっと落ち着いたらこれである。女性教師が言ったことは一応理解できたが、今はそんなことを考えられなかった。  この鏡、少し調べてみたがどうやっても開けることができなかった。念のため、接着剤を縁に塗っておこうか。 ●脱力して真剣に聞いて困惑して  そんなこんなで、例の女性教師は放課後の教室で説明を始めた。 「さて? ここ最近、ハロウィンが怖いものになっていると評判らしいなァ? その影響なのかどうか分からないが、エルメラルダで面白い話を耳にした」  ろくでもない事のような気もするが、一応聞いておこう。 「夜間、エルメラルダ近辺の森でキャンプをしていた隊商が、奇妙な盗賊に襲われた。そいつらは何と、揃いも揃ってお化けの恰好をしていたらしい」  何それ。  それは確かに奇妙な盗賊というほかない。盗賊達もハロウィンを楽しむ気は……いや、それはないだろう。 「どうもこの盗賊達、巷でハロウィンが恐ろしいことになっていることに便乗して、お化けの恰好をして悪事を働くことで相手の戦意を喪失させているらしい。なかなか冗談のような話だが、これまでに二回も被害が出たそうだ。だが盗賊に襲われたものの、魔物に襲われたという報告はなかった。偶然だろうが、例の三人組の魔物はあの辺りに出没しないようだ。故に盗賊だけに専念してくれ」  こうして話を聞く分にはまさに冗談のようにしか聞こえないが、逆に言えば例の三人組による影響がそれほどまでに大きいと考えるべきだろうか。  何にしても、そんな卑劣な盗賊は成敗しなければならない。 「ここで注意してほしいのだが、盗賊達は奥の手として『眠りの粉』を持っている。それほど珍しい道具ではないが、簡単に手に入るものでもない。これを顔面に振り撒かれると、戦闘中だろうと簡単に眠ってしまうからしっかり対策しろよ? だが、ここにちょっと引っかかる点があってなァ……」  するとこの女性教師は小さく眉間にしわを寄せて目を瞑りながら話し始めた。  眠りの粉を塗されるなら、少々値は張るが購買で売られている道具で対処できるだろう。それでは駄目なのだろうか。 「そうではなくてだな、この盗賊達が使う眠りの粉で眠らされた者は、全員がとてもひどい悪夢にうなされたそうだ。悪夢の内容は様々だが、起きた時には疲労でガタガタになるほどの恐ろしい悪夢だったと証言している。一般に出回っている眠りの粉に悪夢を見せる効果はない筈なのだがな? それを確かめるためにも、奴らが持つ眠りの粉を、使われる前に一袋だけでも確保してきてくれないか?」  やるべきことはそれほど難しくはない。だが、話が奇妙な方向に向かってきていると思った。  ただの偶然とは思えないが、どういうことなのだろうか? 盗賊達を捕らえれば分かるのだろうか? 「お前達には、エルメラルダ行きの隊商に同行してもらう形で護衛してもらうぞ。盗賊の強さはまちまちだが、こちらの数が余程少なくない限りは苦戦することはないだろうな。だが安心するといい。【ミロワール・ド・スクレ】が盗賊達を討伐すると予告状を出したのでなァ」  ミロ……えっ、何だって? 「大陸中の多くの悪人の悪事を暴いてきた、一定の姿を持たない正義の怪傑だ。まだ卒業はしていないが、一流の腕を持つお前達の先輩でもある。見た目はアレだが、頼りになるはずだぞ。尤も、何を目的とし、どんな姿で現れるかまでは私にも分からないがなァ」  また話が妙な方向に進み始めた。ミロ……何とかさんは、本当に頼りにしていいのだろうか? 「今回の課題の一番の目的は、仮装盗賊の討伐だ。眠りの粉の件は、なるべくといったところだ。説明はこんなところだなァ」  女性教師は生徒達をちらりと眺めて、そう締めくくった。
参加人数
5 / 8 名
公開 2019-10-12
完成 2019-10-29
薬師は悪夢の密林に (ショート)
機百 GM
●薬師の課題 「はいはーいみんなー聞いて聞いてー課題ですよー。話だけでもー聞いてってほしいんだよー?」  ある日の放課後に生徒たちは退室前に【パールラミタ・クルパー】に呼びかけられた。受けるかどうかは別にして、話だけでも聞いてみることにしよう。 「大陸の北東にーエルメラルダという村があるのはーみんな知っていると思うんだねー? そこでーここ暫くー不思議なことが起きているんだよー。それはねー住民たちがほぼ毎日ー悪夢に悩まされているんだよー。内容は色々だけど―、起きた時にーすごく衰弱しちゃうくらい深刻なものらしいよー? しかもーお天道様が高い間にもー強い眠気に襲われることがあるらしくてー変な話だねー?」  確かにそれは奇妙な事態である。エルメラルダで何が起きているのだろうか。そしてこれに対して自分たちに何をしてほしいのだろうか。 「そこでー課題だよー。エルメラルダにーまずはこの練香をー村に届けてほしいんだー。これはー夢見香を参考にボクが調合した魔よけの練香でー、強くない魔物とー外因性の悪夢を退ける力があるんだよー。これを香炉に入れてー特定の位置に置いてー香りの魔法陣を村全体に築いてほしいんだねー」  香りの魔法陣を築く? 言葉ではどうにも今一つイメージが湧かないが、そうするとどうなるのだろうか? 「この練香ねー。本当なら各家に1個ずつ配りたいんだけどー材料が足りないしー香炉も必要になるからーそれだけの数を持っていくとなると相当大掛かりな荷物になっちゃうんだねー。だから練香を置いてとってもおっきな魔法陣を描いてから焚くことでー香りが魔法陣によって増幅されてーエルメラルダの村全体にいきわたるようになるんだよー」  どうやら、大がかりな儀式を用いてエルメラルダの人々から悪夢から清めるということらしい。だがそれ程の事をするとなると、高度な技術や知識が必要になるのではないだろうか? 「そうだねー。だからーエルメラルダに【ノーチェ・ヴェルディ】っていうーボクの弟子がいるからー頼ってねー? 後ねー課題に参加する生徒はーあらかじめ練香の香りを浴びていってもらうよー。そうすればー1日はーあっちで悪夢を見たりー急に眠たくなることはなくなるはずだからー安心してー」  事前準備に関しては把握したが、パールラミタの弟子であるノーチェの姿は簡単に思い浮かばなかった。子栗鼠を想起するような童女である彼女に師事する光景は、どう想像してもコントでしかなかったからだ。まあ何であれ、協力者がいてくれるのは頼もしい。 「もしー上手くやってのけられたらー先生がみんなをなでなでしてーいっぱいぎゅーってしてあげるんだよー」  いえ、それは遠慮しておきます。  とりあえずはそんなに難しいことではなさそうだった。事前の準備はほぼ万端だし、戦闘もないだろう。  今はそう、思っていた。 ●サフィロの密林  穏やかな寒風が時と共に流れ、馬車に乗った一行はやがてエルメラルダに到着した。  ここは青々とした大森林に囲まれ、更に大きな湖に面した村で、ローレライ・エリアル・ルネサンスが多く住まうという、自然豊かにしてのどかさと安寧に満ちた場所のはずだった。  だが、住人達の様子は明らかにおかしかった。目の下に隈を作る者、力なくフラフラと歩く者、それどころか道の真ん中で伏せって眠る者までいる始末だった。悪夢と睡魔に悩まされているとは聞いていたが、確かにその光景は異常と言う他なかった。  ひとまずはパールラミタの弟子のノーチェに会おう。そう思い、ノーチェの家を尋ねると、酷く切羽詰まった様子のローレライの女性が飛び出してきた。 「学園の生徒さんですか!? どうか助けてください、先生が……!!」  唐突な事態に思わず目をむいたが、ローレライの女性はすぐにフラフラとして倒れてしまい、すぐに寝息を立ててしまった。だがその表情は引きつり、安らかな夢を見ているようには見えなかった。  奇怪な状況が連続して狼狽えそうになるが、ひとまずは彼女をノーチェの家で休ませることにした。  どうやら、このローレライの女性はノーチェの助手らしい。  彼女をベッドに休ませて暫くすると、彼女は目を覚ますと同時に上体を勢い良く起こした。が、すぐにめまいを起こして布団に突っ伏してしまう。無理をしないようにと言い聞かせ、徐々に気力を取り戻した彼女から話を聞いた。 「先生は悪夢で衰弱する人々を救うため、3日前にサフィロの密林へ薬草を採取に出かけられました。そこは片道で2時間ほどで着く場所なのです。ですが先生はそれから消息を絶ってしまわれたのです」  そのノーチェの行動は勇敢と取るべきか無謀と取るべきか。だが、ノーチェが何の策もなく出ていったのだろうか? 「この異常事態ですから、先生はあらゆる事態を想定してあらゆる道具や薬に装備も入念に選び、重装備をして行かれました。ですがそれでも帰ってこないのです……あぁ先生、どうか無事でいてください」  ノーチェの身に何があったのだろうか? 村で起きている異常事態と関係あるのだろうか? 少なくとも今は皆目見当もつかない。  その時、ふとドアからノックが聞こえてきた。来客かと思う間もなく、そのまま誰かが無遠慮に入ってきた。 「……先客?」  背の低い山猫のルネサンスの少女だった。だが、大男でも扱えないような巨大な弩を肩に担ぐその姿は、唯の少女ではないことを物語っている。更に、少女が纏う黒緑色の戦闘服の左の袖に巻いてある青いリボンは学園の階級章だったはずだ。  ノーチェの助手は少女の姿を見てハッとした。 「ルクスちゃんなの!? お願い、あなたも先生を助けて!」 「待って、話が見えない」  【ルクス・イリニ・ダヌシュ】は助手に詰め寄られて困惑していた。どうやら二人は互いに知り合いのようだが、今は余計な言葉を挟まず静観した方がよさそうだ。  やがてノーチェの助手はルクスにも状況を説明したが、ルクスは目を瞑って俯き、考え込んでしまった。 「困った。ルクスにも課題があるのに」 「そんな……!」  ルクスがエルメラルダを訪れた理由はそれだという。ノーチェの家を訪れたのは、知り合いとしてのノーチェへの軽い挨拶だったらしい。然し、ルクスは明らかに葛藤していた。自らの課題を果たすべきか、或いはノーチェを助けるべきか。  ところでルクスの課題とは何なのだろうか? とりあえず聞いてみることにした。 「仲間と唯の魔物退治。サフィロの密林までの道で2種類遭遇したって聞いた」  それはどういう魔物なのだろうか。 「片方は大きい鳥に腕や足を石にされたらしいから、多分コカトリス。でも数が多い。もう片方は、随分気が立った光る神様っぽいのが1体で……名前何だったっけ……ブレなんちゃら?」  コカトリスは単体なら新入生でも渡り合えるが、多いとなるとその限りではない。後者は漠然とした嫌な予感がする。  再び悩んでいるルクスを後目に、ノーチェの助手は再びこちらに深々と頭を下げてきた。 「このような事態にあなたたちを巻き込んでしまうことをお許しください……こちらとしても万全な準備を致しますので、どうか、先生を助けてください!」  奇妙なことになったが、何にしてもノーチェを頼らないことには練香の魔法陣を設置できず、自分たちも課題を達成することができない。だが不確定な要素が多いため、迂闊な行動は危険が伴うのも確かだ。  さて、思わぬ難題にぶつかってしまったが、どうしたものだろうか?
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-02-27
完成 2020-03-17
憧れは一途で純粋で、されど彼女は憂鬱で (ショート)
機百 GM
「いーやー! 助けてくださいましぃぃぃぃぃ!!」 「誰かこのガキを黙らせろ!!」 「ひぃっ、どうかやめてくださいまし! このようなことをしてタダで済むとお思いですの!?」 「どうやら俺達がどれだけ冷酷か知らないようだな? お前がどこの誰だろうと、知ったこっちゃねえってことだ」 「まさかあなた達、わたくしに『ピー!』や『ズギャーン!』や『ア~ン♪』をする気なのでしょう! このいたいけで清廉なわたくしに向かって! このむくつけきケダモノ共!」 「しねえよ! てめえのような貧相なチビガキなんざ俺らから願い下げだ!」 「いいえ、わたくしには分かります! あなた達が品性下劣にして低俗で卑しい畜生共だから、わたくしを攫ったのだと簡単に分かりましたわ!」 「だから誤解だっつーの!! 何処のガキか知らねえが、俺らをこそこそ嗅ぎまわりやがって……!」 「嗅ぎまわるだなんてそんなはしたない! わたくしが追っているのはスクレ様のミステリアスにしてかぐわしき薫香だけ! あなた達の汗や垢に塗れた汚臭なんて死んでもご免ですわー!!」 「何だとこのクソガキ!!」 「いやー! きゃーー『●●●●』されますのーー!!」 「畜生っ、もう嫌だ!! やっぱりこいつで身代金の要求なんて無茶ですぜ!!」 「やはりそのようなことをお考えなのですね! あなた達の悪事なんて、スクレ様が必ずや暴いて蹴散らかします! 嗚呼、どうかスクレ様、早くわたくしを助けてくださいまし……! そしてわたくしとあのようにして、このような……ぐふふふふ……」 「ダメだこいつ、完全に自分の世界にイッてやがる……」 「そして高ぶってきたフィナーレにはスクレ様の……きゃーーーーーっ!!」 「だからやかましいっつってんだろ!!」 「きゃーっ助けてくださいましぃぃぃぃぃスクレ様ぁーーーー!!!」 ●緊迫しづらい一大事 「ということらしい。くくくっ」  いや、どういうことだってばよ。  昼食時。のどかな時間を過ごしつつご飯を口に運ぼうとしたら、何の前触れもなくぬるっと褐色肌の女性教師が現れたのだ。しかもこちら側が問いかける隙も許さず、一方的に語り尽くして勝手に笑ったのだから開いた口が塞がらない。  一体何なんだこの人は。つまらない漫談だったら他所でやってくれないだろうか。 「いやいや。もうちょっと掘り下げて説明するとだなァ、【コルデ・オペレッタ】という貴族のご息女が、盗賊のアジトに使っている廃墟に捕らわれているのだ。今のところ無事なのは間違いない」  それは一大事じゃないのか。とりあえずご飯を口に運びながら話を聞いてみる。 「興味を持ってくれて何よりだ。まず、事の始まりは【ミロワール・ド・スクレ】が、ある商人に予告状を出したことから始まるわけだ。この商人、盗賊と結託して盗品を売りさばくというなかなかの悪党でなァ。まあそっちの方はどうでもいいんだが」  どうでもいいと言われて一瞬こけそうになったが、貴族のご息女が盗賊に捕らわれているのならそっちの方が大事だろう。 「そこでだなァ、ミロワール・ド・スクレの応援団がその噂を嗅ぎつけて、彼女が現れそうな場所を嗅ぎまわったわけだ」  はい? 明らかにおかしい単語が出てきたぞ。  応援団ってどういうことですかね? しかも嗅ぎまわっているって何? 「くく、或いは非公認なファンクラブというべきだろうか。彼らは彼女のためなら驚異的な行動力を発揮し、独自の情報網を駆使して活躍する彼女の姿を生で見るべく活動している大した連中だよ。今回は例の商人が予告状を受け取ったことや、盗賊と結託していることまで割り出したわけだなァ」  エイーア大陸は広しと言えとそんな珍妙な連中がいるとは。ファンクラブと言っても迷惑な類とみて間違いない。  勇者ではないのにその行動力は凄いのか凄くないのか……もっと有効利用すればもう少し平和になるだろうと思う。 「正義や義務といった大義名分よりも、良くも悪くも己の欲望に従った方が人は遥かに動くというものだぞ。それで、応援団の1人でもある例のご息女が、商人と結託している盗賊を追っていったら捕まってしまった、というわけだ」  それはまた……迂闊というべきか、怖いもの知らずというべきか。  だが気になる点もある。貴族のご息女たる人物がこうも気軽に動けるものなのだろうか。例えば側に護衛などは付いていないのだろうか? 「それがまァ面白いことに、家にどれだけ見張り番をつけても警備を増やしても、煙のように綺麗に脱出してしまうという神がかった特技を持っていてなァ。ご両親はもう諦めてしまったそうだ。後これは私の勘だが、彼女はミロワール・ド・スクレに助けてもらうためにわざと捕まったのではないかと考えている」  本当にそうだとしたら実に迷惑な話である。どうか勘違いであってほしいが……。  少し気が滅入ってきたが、それに構うことなく女性教師は説明を続けた。 「そこで本題だ。盗賊退治とご息女の救助を課題として与えよう。盗賊はここから南東の方角にある、トロメイアよりはもう少し北にある廃墟の町をアジトにしている。普段はスラムのような感じで身を隠してきたわけだなァ。盗賊は全部で18人。規模は、迷うほどではないがやや入り組んでいて少し走りにくそうだな。盗賊自体はさほど苦労する相手ではないが、屋根の上からボウガンや魔法銃を使う盗賊が幾らかいるようだ。少し気を付けてほしいのは、体力回復の効果を持つを竪琴を使う盗賊が1人いることだろう。そして、ご息女は町の中心の見張り櫓の近くの家に捕らわれている。2人の盗賊に監視されていて、大体は先に話した通り、賑やかだ。基本的な情報は大体そんなところだなァ。流石に全員捕らえるのは少し難しいだろうから、半分は捕らえてほしい。それが最低限の合格点だ」  応援団だのなんだのはともかく、盗賊のアジトを攻略するのは少し骨が折れそうだ。  ところで、ここまで説明されて気になることもある。ここまでに何度も名前が出てきた『彼女』の事だ。 「ミロワール・ド・スクレか? くくっ、大慌てで盗賊にも予告状を出したと聞いたぞ。どのように現れて活躍するかは分からんが、少なくともお前達の邪魔をすることはあるまい。唯、お人好しな苦労性ではあるがなァ」  女性教師は可笑さゆえに咽ぶように笑う。しかしそれはどういう意味なのだろうか? 「そのまんまの意味だ。説明は以上だ。この課題、受けるなら予定した時刻に教室に集合してくれ。あまり彼女に手柄を取られないように、な?」  そう言うと女性教師はのらりくらりと後にした。  気が付けばすっかり昼ご飯が冷めてしまっていた。話を聞くことに専念しすぎて、つい手が止まっていたのだ。  唐突に与えられた課題を受けるかどうか考えつつ、冷めた昼ご飯を口に運んだ。 ●??? 「頭が痛くなれるわね」  彼女はレイピアの刃を磨きながら独り言ちた。  ある意味では自業自得と取れなくもない事態だが、それでもため息ばかり出てしまう。いずれはこのような事態が起こることは分かっていた筈なのに。  とは言え、彼女に見捨てるという選択肢などありはしなかった。 「あたしだって憧れたんだもの」  新作の衣装に袖を通しつつ、彼女は決意を固めた。
参加人数
7 / 8 名
公開 2020-04-20
完成 2020-05-06
ドリンクミー! (EX)
機百 GM
●エプロンドレスの少女の好奇心 「はいはーい。みんなー集まったんだねー今日の課題なんだよー」  魔法薬学の教室に入ってきた【パールラミタ・クルパー】は、教卓の前に自前の大きな薬箱を下ろすと、よいしょとその上に登った。  パールラミタはエリアルのエルフだが、その背丈は一般的なフェアリー種より気持ち高い程度だ。だからこれは、大人と同程度の視界を確保するという、いつもの恒例行事なのだ。  それはとにかく、パールラミタは懐から何かの液体が入ったガラス瓶を取り出して生徒たちに見せつけた。 「これはー体がーちっちゃくなっちゃう薬なんだー。と言ってもー若返るとかじゃーなくてー、全体的にちっちゃくなっちゃってー小人になるというものなんだよー」  これはまた妙な代物を出したものだ。その薬はパールラミタが作ったものなのだろうか。 「ボクがー基本的なものにー色々と改良を加えてーほぼ確実な安全性を添加したものだよー。使用すれば服ごと小さくなるしー効果は1時間で切れるようになっているしー何か危害が及ぶようになったらーすぐに効果が切れて元に戻るしー、とても狭いところで効果が切れてもー近くの開けた場所に転送される優れものなんだねー」  えっへんと意外とある胸を張るパールラミタ。とりあえずは技術的に凄いらしいことは分かった。  つまるところ、その薬を自分たちに使ってくれという事なのだろうか? 「うんーそうー。みんなにはーこの薬を使ってー、体を小さくしてー色々なことをーやってもらいたいんだねー。体がーちっちゃくなるっていうのはー基本的にはー有利な事じゃないんだねー? ゴブリンやー餓鬼とだってーまともに戦えなくなっちゃうからねー」  そう言われると、何だかとても恐ろしいことのように思えてくる。不思議な体験を行うには違いないが、普通に戦えば雑魚になる敵とすらまともに渡り合えなくなるのは確かに尋常ではない。  だが、小人が主人公のおとぎ話や英雄譚だって幾らかある。その小さな体躯を逆に活かし、何もかもが大きな世界で様々な冒険をしたり、自分より大きな怪物を倒すといった物語は語り継がれてきたものだ。  つまり、この課題の目的とは即ち? 「そうだねー。小人になってーこんなことをやってみたんだよーって、来週までにーレポートを作ってきてほしいんだー。例えばークローゼットの裏に落ちてたー小銭を取ってきたーとかーそんな感じでいいんだよー」  大冒険などをしなくても、その程度の内容でもいいらしい。それならあまり難しく考えなくても何とかできそうだ。 「でもー出来る事ならーアイデアを振り絞ってー思いがけない使い方を考えてみてほしいなー?」  パールラミタとしてはいいアイデアを募るようだが、どうしたものだろうか。  ところで、この薬を使うとどの程度の大きさまで小さくなってしまうのだろうか? 「大体ーその人の親指くらいかなー? それだけにー使いどころにはー十分注意してほしいんだねー」 ●悪魔の囁き  学生寮の自室にて、パールラミタに手渡された小人の薬をぼんやり見つめる。  無難に『こうしてみた』というレポートを書くのも悪くはないが、どうせなら変わった使い方をしてみたい。 「ほぅ、面白い薬を持っているなァ?」  褐色肌の女性教師がノックもなしに扉を開け、堂々と部屋に上がり込んできた。いやちょっと待て、鍵はしっかり閉めたはずなのにどうやって入ってきたのだ。  然し女性教師はずかずかと上がり込んで近づくと、例の薬をスッと取り上げ、手のひらで放ってはキャッチして弄び始めた。 「悩んでいるようだから、簡単な助言でもと思ってなァ。簡潔に言おう。悪いことに使おうと考えた方が、いいアイデアが出てくるかもしれんぞ?」  いや、流石にそれはどうなんだろうか。  それにもし悪用してしまったら叱られたり減点されるかもしれないし……。 「その点は安心していい。他の先生なら怒ることでも、彼女は純粋な発想力で公正に評価するからなァ。去年も同じ課題を出していたが、ちょっと悪いことに使っていた生徒を高く評価していたぞ。ついでに言えば彼女が怒るという事は、コルネ先生に干しぶどうを渡して拒否されるくらいあり得ない話だぞ」  ある意味では安心できたが、後半の例え話は何なんだ。凄いのか凄くないのか少し判断しかねる。  それでも悪い方向に使うのはちょっと憚られてしまう。然し、そう言われるとやっちゃってもいいような気もしてくる。  すると女性教師はニタァと笑うと、薬を返して腕を組み、説き伏せるように語り始めた。 「道具や技術に魔法。そういったもの全てが、純粋な善意で生み出され、使われてきたものだと思うか? 私はそうは思わんなァ。例えばそういった体を小さくする薬や魔法は、遥か昔のある国では王侯貴族への恥辱刑に使われたそうだ」  こんな薬で刑罰? 恥辱刑などとは、そんな発想には至らなかった。  その国では一体、どういう使い方をしてきたのだろうか? 「そういった薬で罪人の体を小さくして籠に閉じ込めて、広場など目立つ場所に無造作に置いて衆目の晒し者にしたのだなァ。自分より立場の低い者に虫けらのように見られるというのは、さぞかしプライドをずたずたにされたに違いない。更に死刑が確定した場合には……それはもう、無残な有様だったそうだ」  急に話が血なまぐさくなってきた。その罪人がどんな最期を迎えたか、想像しかけて気分が悪くなった。  然し、そんな気が滅入る話を何故教えたのだろうか? 「悪い方向でのアイデアの一例だ。人の悪意がそんな使い方を生み出したという事を理解してほしくてなァ。後、私は悪い事に使おうとする生徒への見張りを任されている。自由を優先して大目に見たいところだが、あまりにやり過ぎるなら、ちょっとお仕置きしなければならんのでなァ」  そう言うと、左手で何かをキュッと握り潰すような仕草を見せ、くすくすと咽ぶように笑いながら女性教師は扉から部屋を出ていった。鍵をかけていたかなど、とても気にしていられなかった。  何だかとんでもない課題を受けてしまったような気がする。パールラミタに薬を返して課題をやめてもいいが、少し変わった経験を得るのも悪くないような気もする。  さて、どうしよう?
参加人数
4 / 8 名
公開 2020-05-27
完成 2020-06-16
【体験】メメ・メメル誘拐じけ……んん? (マルチ)
機百 GM
●???  ある日の学園長室にて。  そこではあどけない容姿をした銀髪の小柄な少女が執務を執り行っていた。  彼女の名は【メメ・メメル】。見た目こそ女の子だが何を隠そう、この学園の学園長を務める才媛である。 「んー……今日も穏やかでいいのだが、少し退屈だな」  そんなことを言って、メメルがゆったりと背もたれに身を逸らし、うんと背筋を伸ばしたその時だった。 「それじゃァ、少し遊んでみるか?」 「およ?」 ●そいつはやってきてしまった  それは、少しばかり肌寒さを感じてきたある日の事だった。  その教室では新入生の歓迎を終えたばかりだった。志を持って学園に入った新入生と、少しばかり先輩になった生徒達が交流していたが、日も沈む時刻となってそろそろ解散しようと思っていた。  その時だ。  何事にもそれなりに前触れというものはあるものだが、それは唐突にやってきたのである。 「大変だよ! 学園長が『メモワール・ド・コスプレ』という怪人にさらわれちゃった!!」  ……えっ?  ちょっと何を言っているか分からない。  飛び込むように教室に入ってきた【コルネ・ワルフルド】は肩で息をしながらそれを伝えに来た。気さくで優しく、またよく新入生のお世話をしてくれる、素敵な狼のルネサンスの先生である。そんなコルネの狼狽え方は尋常ではなかった。  だがちょっと待て。どうか落ち着いてもう一度言ってほしい。 「だから、学園長がメモワール・ド・コスプレにさらわれたんだって!」  ……。  彼女は何を言っているのだろうか。学園長がさらわれるなど……いや、過去にそんな話があったような、そうでもないような? どっちにしろその時はそんな大した話ではなかった筈だ。  それに『メモワール・ド・コスプレ』とは何だ。  聞いた話では確か怪傑を自称する、よく変な格好をして現れるおかしな先輩がそんなのではなかったか? 「あれは【ミロワール・ド・スクレ】で、出たのはメモワール・ド・コスプレだって! こっちもあまり詳しい事情は知らないんだけど、えっと、学園長室にそういう内容の置手紙があって、実際に変な格好をした怪人に小脇に抱えられる学園長を見たっていう教師がいたの!」  何かしら奇妙な格好をした人物の小脇に抱えられる学園長を想像してみる。うん、実にシュールな光景だ。  だがそれはつまり、学園長でも手も足も出せない相手という事なのだろうか? いや、流石にそれはにわかには想像しがたい。何か逃げ出せない理由があるのだろうか?  また、そのような存在が、学園長をさらった理由とは何なのだろうか? 「置手紙には、こう書いてあったんだよ」 『学園長は私、メモワール・ド・コスプレが誘拐した。ふふふ、生徒たち諸君の驚く顔が目に浮かぶようだ。だが、私が求めるのは学園長ではない。この学園のどこかにあるとされるヨ・スデソ・ウ水晶を持ってくるがいい。さすれば学園長を返してやろう。はっはっはっ、楽しみにしているぞ!』  なんとツッコミどころだらけの文面だろうか。笑い声なんて紙に書かないだろうに。少々うんざりしそうだが、とりあえずこの怪人の目的は分かった。  然し、コルネは怪訝とした様子で首を傾げながらこんなことを言った。 「けど、ヨ・スデソ・ウ水晶なんてもの、アタシも初めて聞く代物で……初めから悪党に渡すものなんてないけど、知らないものは渡しようがないんだよね……」  無論、自分達もそんなものは聞いたことがない。コルネが知らないとなると、教師たちでも一部しか知らないような貴重品なのだろうか?  すると、ここで新たな小さい人影が教室に入ってきた。見た目はとても幼い少女で学生の一人のようだが、実際には薬学の先生をしている【パールラミタ・クルパー】だった。 「はーい聞いて聞いてーボクが説明するんだねー。その水晶はー学園の敷地内にある『初心者の遺跡』にーあるんだよー」  パールラミタの発言に、コルネも思わず目を丸くした。確かに何故、パールラミタが例の水晶の事を知っているのだろうか? 「そうだねー『初心者の遺跡』はー主に僕も管理している施設でー、なんて言うかなー物置というか倉庫みたいな風にも使っててーそこにヨ・スデソ・ウ水晶がー保管されているんだよー。でもー今は閉鎖してるからーボクも一緒に行って開けるんだねー」  それを取りに行けば、怪人と接触することができそうだ。それにパールラミタがついてくるなら、遺跡の中でも他でも頼りにして良さそうだ。  だが、学園長がさらわれるという非常事態だ。これは本当に自分達に手に負える事態なのだろうか? 経験を積んだ上級生や先生達に任せればいいのではないか?  するとコルネ先生は首を真横に振りながら答えた。 「それが、メモワール・ド・コスプレは正体不明の多くの配下を従えてて、学園長を助けに行こうとした上級生たちやアタシ達教師はその配下の迎撃に追われていて、助けに行けないんだよ! だから……その、いざって時に頼りにならなくてごめん! だからお願い、みんなで学園長を助けて!」  事態は思った以上に深刻なようだった。まさかコルネ先生を始めとする学園の教師まで動員する事態になっているとは。  だが、ここで狼狽えているだけでいいのだろうか? ここで自分たちが必要とされているなら、将来の勇者として助けに行くべきではないだろうか。  無論諦めて傍観していてもいいが、さて、どうする? ●その一方  夜の第一校舎『フトゥールム・パレス』の広場は、沢山の生徒がクラスやコースの垣根を越えて談笑・交流する憩いの空間である。  つい先ほどまでは生徒達で談笑する平和な空間だった。だが今は、怪人の配下が唐突に現れたことで、事態は混迷を極めていた。  逃げ惑う大勢の生徒、武器を持って侵入者を迎え撃つ少数の生徒の喧噪だけがこの広場を支配していた。 「……」  その刹那、広大な広場の一角で無数の銀の閃きが奔った。血潮を噴き出すことなく、悪しきものだけを貫く正義の一閃が、奇妙な格好をしている怪人の配下を容赦なく貫いていった。  その剣筋の主は激怒していた。それはもう、顔を仮面で隠しているにもかかわらず、近くにいる他の生徒を怯ませるほどに。 「あ……あの、幾らベタな真似をされたからって……」  大剣を携えた生徒が震えた声で、『彼女』に話しかける。  だが、 「真似って、あんなふざけた女とあたしとが、どこがどう似ているのか、詳しく説明してくれる?」  そう言って、倒したばかりの適当な配下をヒールでぐりぐりと踏みつけながら彼女は言った。そんな彼女の黒いツインテールが隙間風にゆらりとそよぐ。  溢れんばかりの怒気に大剣の生徒は怯み、下手な事を言えないまま沈黙してしまった。どうやら彼女の怒りの矛先は、怪人の配下とは別に向いているようだ。  誰もが取り付く島がないと思っていたその時、窓の外から明らかに場違いな嬌声が聞こえてきた。 『くははははっ、学園長はここだぞ諸君!!』 『キャーイヤーダメーたーすけてー☆』  片方はここにいる生徒達には聞きなれた声で、そして少なくとももう片方は、おそらく学園の誰もが知っている銀髪の少女の声なのだが、誰もが聞かないふりをした。生徒と教師だけでなく、何故か侵入者たる配下すらも諦観の面持ちになっていた。 「……ちょっとぶちコロがすくらいで済ませられるかしらね?」  その一方でツインテールの彼女は、声が聞こえてきた方向の窓の手すりを握りしめ、深くひびを入れながら独り言ちた。
参加人数
13 / 16 名
公開 2020-11-13
完成 2020-12-20

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●ある昼下がりの食堂にて
「『青い蓮』ですか」
 【クスギリ・カテツ】はランチの味噌汁を啜り、目の前の友人の話を聞いていた。
「そう名乗る不審者が現れたって話よ。逆らえば不幸にするとか何とか言って、実際に宣告された人がどんどん不幸になっていったらしいわ」
 そのツインテールの黒髪の友人は、机から身を乗り出しながら話した。その勢いにカテツは『近い近い』とジェスチャーした。
「へふふ。ふほうほはひほうは?」
 カテツの隣でちびちびとご飯を口に運んでいた【ルクス・イリニ・ダヌシュ】が訊ねるも、口が食べ物で一杯だった。
「飲み込みなさい。後、さん付け」
「もぐもぐ……ごくん。ペルルさん、どんな不幸?」
 きちんとご飯を飲み込んだルクスの問いに【ペルル・コルキュドラル】は答えた。
「聞いた話では、急に身に覚えのない借金を抱えることになったり、街中にもかかわらず魔物に襲われたり、不意のバナナで転んだりしたらしいわ。バナナは兎に角、借金と魔物は宣告通りらしいのよ」
 カテツとルクスは食事の手を止めて思案する。
 不審者というには大それたことをやってのけるものだ。少なくとも、適当な悪党にできる芸当ではない。
 思考が行き詰ったカテツはペルルに一つ訊ねた。
「不審者に関する情報の出どころは何処でしょう?」
「例によって例の如くソロヴィ先生よ。不審者度ならあの先生も結構なものだと思うわ」
「あー……」
「やっぱり」
 妙な沈黙が三人を包んだ。カテツは顎に手を添えながら俯き、ルクスは再びもしゃもしゃとご飯を頬張った。
 三人とも例の先生との付き合いは長く、多分気に入られている。出される課題はきついものばかりだが、そのお陰で赤い階級章でいられた期間は短かった。そういう意味では感謝すべき存在かもしれないが……。
 暫しの沈黙を破ったのは、口の中身が無くなったルクスだった。
「不審者……『青い蓮』、捕らえるの?」
「そういう課題なのよ。全く、いい気晴らしだわ」
 ペルルは口の端を釣り上げ機嫌をよくしたが、カテツは一つの懸念をぶつけた。
「気晴らしはいいのですが、レポートは大丈夫なんですか? 四か月分なのでしょう?」
「半分終わっているわ。だから、ちょっと『おかわり』を要求して、向こう二年分の出席日数を一切免除するということで話をつけてきたわ」
 無茶苦茶なことを簡単に述べたペルルに、カテツは嘆息することしかできなかった。どんな裏技をやれば一か月でそんなに進められるのか。
 しかも、自分でそんなものを追加しに頼むだなんて正気とは思えない。不審者がどうと言ったが、ペルルも相当なものだとカテツは思った。
「と言うわけで、明後日の正午に校門前で集合ね♪ 二人とも、行けるかしら?」
「ええ、構いませんよ」
「ん」
 こうして三人は、『青い蓮』なる人物を捕らえるという課題を受けた。

●違和感
「どうしたものかしらね」
「自分には分かりかねますね」
 ペルルとカテツは、ある街に潜伏しているという『青い蓮』を追跡していた。戦闘になっても騒ぎにならないような場所まで追いかけ、そこで取り押さえる。その手筈だった。
 だが今、何故かペルルとカテツは荒くれ者達に取り囲まれていた。
 しかもこの荒くれ者、
「俺たちのシマを荒らそうたぁ、いい度胸だな?」
 などと言ってきたが、無論、ペルルとカテツの二人に全く覚えのない話だった。
 二人の実力なら、雑多な荒くれ者達を無力化する事は容易い。しかし問題は、この出来事で『青い蓮』を見失ってしまったことだ。
「シマなんてどうでもいいんだけど……誰に言われたの?」
「へっ、灰色のローブを被った奴が親切に教えてくれたんだ」
 ペルルの問いかけに荒くれ者達の男が拳を鳴らしながら答えた。
 が、その荒くれ者の言葉にペルルとカテツは顔を見合わせると、疲れたように溜息を吐いた。
「悪いけどモブに構ってられないの」
「済みません。極力痛くしませんのでご容赦を」
 ペルルは鞘に納めたままの剣を構え、カテツは大太刀を抜き払い、柄を回して峰を荒くれ者達に向けて構えた。

 その一方で、少し高めの家屋の屋根に登って辺りを見回していたルクスは、目標となる『青い蓮』を見つけていた。万が一、ペルルとカテツが失敗しても単独で狙撃できるようにしていた。
 だが、弩を構えようにも『青い蓮』はこちらにとって絶妙に死角となる場所や人通りが多い場所ばかりを歩いていた。ペルルとカテツの追跡を撒くならまだ分かるが、明らかにこちらの狙撃を避けるような動きに違和感を覚えた。
(作戦が筒抜け?)
 三人で内密に考えた作戦だから考えにくい。然し、現に『青い蓮』はこちらの行動の対応している。
 作戦が何らかの形で発覚した? それとも『青い蓮』は高度な読心術でも持っている?
 分かっているのは、敵にこちらの作戦が通じないということ。
 そんなことを考えながら目標を観察していたが、『青い蓮』が妙な飾りを付けた右耳に手を当てているのが見えた。そして、不自然に小さく口を動かしていた。
(……一旦合流しよう)
 何かに気づいたルクスは辺りを見渡すと、屋根から裏路地へ飛び降りた。

 ペルルとカテツが荒くれ者達を片づけた後、ルクスが合流してきた。
「なんで持ち場を離れたの!」
「それどころじゃない。多分『青い蓮』は、こっちの作戦を把握している」
「何と、詳しく聞かせてください」
「多分――」
 ルクスは物陰に寄るように手招きし、二人に説明を始めた。

「――ということだと思う」
「合点はいくわね」
「では、自分がそれに対処しましょう。ペルル、『青い蓮』はお願いします」
「任せて頂戴♪」
「おー」
 カテツの言葉と同時に、三人は分散して行動を開始した。

●鷹の目潰し
 それからペルルは、再び『青い蓮』を追跡した。
 この追跡自体は前の作戦とあまり変わらない。だが、同じ轍は踏まない。
 何故なら今度は『青い蓮』の動きがおかしくなったからだ。明らかにうろたえているのをペルルは見逃さなかった。
 『青い蓮』は慌てて裏路地の方へ逃げようとした。
「――!」
 だが、足の速さならペルルが上だった。『青い蓮』がペルルに気づいて逃げようとするも、すでに手遅れだった。
 ペルルの左手が『青い蓮』の首根っこを掴むと同時に、鞘の先端で頭を小突いてすぐに失神させた。
 ぐったりとする『青い蓮』。その耳には奇妙な耳飾りが付けられており、ペルルはこれに喋りかけた。
「確保したわ」
『お疲れ様ですね』
 すると、耳飾りからカテツの声が聞こえてきた。この耳飾りは言葉を伝達する魔法の道具だったのだ。
 ルクスは、ペルルとカテツの追尾だけでなく、自らの狙撃まで綺麗に特定されることに疑問を覚えた。それで周囲を見渡した結果、町の時計塔の上部に、不自然な人影を見つけた。
 ここでルクスは、『時計塔の上部に監視役がいて、『青い蓮』と何らかの手段で連絡を取り合っている』と考えた。別れた後、カテツが時計塔を登っていくと、双眼鏡等の道具を持つ不審な連中を見つけたため、彼らを無力化した。
 これで監視役を失った『青い蓮』は、容易くペルルに取り押さえられたのである。
 唯一分からないことは、何故このような厳重な体制を敷いていたのかだった。これではまるで、自分が狙われることを最初から知っていたようだった。
「こいつは、何者なの?」
 ともあれ、ペルル達は何とか『青い蓮』を捕らえ、課題を解決したのだった。

 その後『青い蓮』は何故かすぐに釈放されたが、程なくして何者かに殺害されたという。