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超激戦、蚊との戦い!


ストーリー Story

 夏。
 暑い夏。
 花火や海水浴、水着鑑賞やスイカ割り、色々と楽しいことが満載の季節ではあるが、逆にやって来て欲しくもない生物の発生もこの季節に起こる。
 それは生物の血を啜り、自身の栄養とする蚊という虫の存在だ。
 とある国では、血の媒介により病気を感染させたりと、あまりいいイメージはあまりない。
 それでなくとも痒みを併発する吸血は普通に迷惑だろう。
 このフトゥールム・スクエアにおいても、その存在は確認されている。
 確認というか、毎年のように発生するのが常である。
 病気の感染を起こすものは持っていないのだが、血を吸われて皮膚を腫らすと痒いのだ。
 薬や虫よけの技術はすすんでも、完全には防ぎきれないのがこの蚊という生物である。
 寝ている時分に耳元でブーンなんて飛ばれると、寝不足になってしまうのもよくある話だ。
 ハッキリ言って魔物より厄介な存在だろう。
 ここにも蚊の被害に悩まされる少女が居る。
「アツゥイ! カユゥイ! イライラするううううううう! もう滅ぼしても良いよね? 良いよね?!」
 魔王・覇王コース専攻の少女、【フー・デストロイヤー】は、毎年の脅威に今それを思いついた。
 だが学園の中に何匹、何百匹居るかもわからない蚊に対して、戦いを挑むのは辛いものがある。
 奴等の襲撃や潜伏能力、小さく見つけ辛い奴等は、中々に能力が高い。
 一匹を探し出すのも大変なのだ。
 だからフーは頭を捻って考えた。
「そうだ、一匹に纏めて大きくしたら簡単なんじゃないのかな。メメたんなら、あるいは……」
 フーは学園の中を這いずり回り、五時間をかけて学園長を探し出したのだ。
「えー、蚊を倒したいんだってー? オレサマも蚊は嫌いだから、手伝ってやってもいいぞ♪ じゃあちょっとまってー、儀式の準備するから♪」
「私も手伝いますから、あの蚊共を殲滅しましょう!」
「じゃあお手伝いを募集しよー!」
 学園長の呼びかけに応じたのは、約千人にのぼった。
 たかが蚊であるが、されど蚊なのである。
 これ程の人数が居れば何でもできると、千人による魔法が展開された。
 千人がそれぞれに得意な能力を使い、学園の端から端まで全ての蚊がサーチされたのだ。
 そしてメルルの魔法で、校庭に学園中の蚊が集められた。
 千平方キロ以上と言われるこの学園の全てから集められた蚊の大群は、とてつもなく膨大な数が集まっている。
 もしあの中に人が入ったのなら、蚊によって全ての血を吸い取られそうなほどだろう。
「これを一つに纏めちゃえば!」
 その集められた蚊の大群は、学園長の魔法で融合をさせている。
 だがその時、何者かの干渉があった。
 そう、それは三階辺りで肥大化魔法の魔法の練習をしていた、学園の生徒達である。
 何故こんな時に、と思われるかもしれないが、参加していない生徒は授業中なのである。
 二つの魔法の干渉を受けた蚊の体は、規模にして小さな屋敷一軒分、大きな翅はその三倍はあるほどに変わってしまった。
『ギャアアアアアアアアアアアアアア!』
 余りの大きさに千人の悲鳴が上がる中、奴は翅を動かし飛び始める。
 だが、その自重により殆ど飛べず、ズーンと地面に足をつけていた。
 巨大な蚊の魔物となってしまったコレは、今直ぐに倒さなければならないだろう。
 世界を救う為にも、退治しなければならない。
「さあチミたちー♪ あの蚊を退治しちゃえば今年は蚊に悩まされなくて済むぞー! 一気にぶっ倒しちゃおう♪ 一斉射撃ー!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
 魔力弾や魔法が飛び交い、全員が蚊の怪物にダメージを与えている。
 だがその時、大きいだけでタダの蚊である奴の周りに、巨大な魔法陣が浮かび上がる。
 そしてついには空中に人間大の魔法陣が形成されたのだ。
 その魔法陣からは、大きさに見合っただけの蚊の化け物が現れる。
 肥大化魔法の影響を受けた為か、魔物と化した蚊が自身の眷属を呼び出した。
 巨大な本体とは違い、人のような大きさの蚊達は、学生達を狙い行動を起こしたのだ。
「ち、血が吸われ……かゆい、かゆいいいいいいいいいいい! ……ガク」
「うおおおおおおおおおおお、こっちへ来るなあああああ!」
「メディック! メディイイック!」
 学生達に被害が多発し、本体を倒さなければこの混乱が収まりそうもない。
「それじゃ、奴が飛ばないように押さえてるから、誰か本体をやっちゃってー♪ 学園の未来は、チミたちの手に掛かっているゾ☆ じゃああの蚊の中に転移させてみるから、ちょーっとそこにならんでね☆」
 そして、何人かの学生達が、蚊の体内に送り込まれたのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2019-07-27

難易度 難しい 報酬 通常 完成予定 2019-08-06

登場人物 3/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《甲冑マラソン覇者》ビアンデ・ムート
 ヒューマン Lv20 / 勇者・英雄 Rank 1
●身長 148センチ ●体重 50キロ ●頭 髪型はボブカット。瞳は垂れ目で気弱な印象 顔立ちは少し丸みを帯びている ●体型 胸はCカップ 腰も程よくくびれており女性的なラインが出ている ●口調 です、ます調。基本的に他人であれば年齢関係なく敬語 ●性格 印象に違わず大人しく、前に出る事が苦手 臆病でもあるため、大概の事には真っ先に驚く 誰かと争う事を嫌い、大抵の場合は自分から引き下がったり譲歩したり、とにかく波風を立てないように立ち振舞う 誰にでも優しく接したり気を遣ったり、自分より他者を立てる事になんの躊躇いも見せない 反面、自分の夢や目標のために必要な事など絶対に譲れない事があれば一歩も引かずに立ち向かう 特に自分の後ろに守るべき人がいる場合は自分を犠牲にしてでも守る事になんの躊躇いも見せない その自己犠牲の精神は人助けを生業とする者にとっては尊いものではあるが、一瞬で自分を破滅させる程の狂気も孕んでいる ●服装 肌を多く晒す服はあまり着たがらないため、普段着は長袖やロングスカートである事が多い しかし戦闘などがある依頼をする際は動きやすさを考えて布面積が少ない服を選ぶ傾向にある それでも下着を見せない事にはかなり気を使っており、外で活動する際は確実にスパッツは着用している ●セリフ 「私の力が皆のために……そう思ってるけどやっぱり怖いですよぉ~!」 「ここからは、一歩も、下がりませんから!」
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。

解説 Explan

目的:
 超巨大生物と化した蚊の討伐。
 心臓を破壊し、巨大な蚊を倒せ。

内部状況:
 蚊の体内は、学園長の魔法の影響か目視が出来る。
 小さな屋敷並には広いが、ただ広いだけの広場だ。
 少し行った奥に心臓が存在している。
 内部にも小さな蚊は存在している。
 無数の通常の蚊に食われればとても痒い。

 巨大化した人間大の蚊も存在している。
 名称ビックモスキート。
 思いっきり血を吸われれば干からびてしまう。
 ビックモスキートの蚊は体内では一度の出現には制限があるようで、最高三体が出現する。
 ただし、倒しても次が出現するので殲滅は無理だろう。

(注)
・心臓を護るように、キングモスキートが存在する。
 ビックモスキートのものより小さいが、サッカーボールほどには巨大である。一番動きが素早く、人の血を吸っては直ぐに離れて行く性質があるようだ。
 一回吸われたぐらいでは死ぬことはないが、痒みの効果は絶大で、一定時間動けなくなる。

・通常の小さい蚊とは別に、ビックモスキート三体とキングモスキート一体の合わせて四体を相手にしなければならない。


クエストアイテム:
 支給されるのは一人につき、痒み止めスプレーが一本と殺虫剤二本だ。
 痒み止めスプレーの効果は、一定時間の痒みの減少で、時間が経つにつれて段々効果が落ちる。
 痒み止めスプレーの使用回数は二回。
 使わないと、痒みで思い通りの行動が取れなくなる確率が増える。

 殺虫剤は、小さな蚊を倒せる。
 一本につき使用回数三回。
 小さな蚊は団体であっても噴射すれば一発で倒せる。
 倒せなかった小さな蚊は、噴射されたスプレー効果で、暫くの間逃げて行く。
 他のビックモスキート、キングモスキートには効果が薄く、逃げるほどの効果は無い。
 心臓には効果がない。

 どちらのスプレーも生徒間で手渡し可能。
 全て手渡し専用として活躍することも可能だろう。


作者コメント Comment
敵は蚊である。
無数に存在する蚊である。
人類の敵である蚊を倒せ。


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:108 = 90全体 + 18個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●作戦と分担
強襲による短期決戦。
痒み止めが切れる前に早期決着を

●行動
道中は『隠れ身』を駆使して先導し、戦闘は極力回避。
小さい蚊には『殺虫剤』で仕留め、キングと心臓への攻撃に全力。
『痒み止めスプレー』は効果あるなら事前に塗布。
ビック、キングはビアンデに頼み、自分は極力心臓へ。
もしキングの一撃離脱がこちらに来た場合、痒み止めで耐えつつの『通常反撃』。

もし辿り着いた段階で『殺虫剤』が残っていた場合、『とんでく花火』と組み合わせて囮に使用。
(花火で飛ばせなさそうなら、花火のみ囮に使用)
突入する逆方向から打ち込んで注意を引きつけ逆方向から強襲する。

撃破後は残った痒み止めをビアンデたちに分け、速やかに離脱

ビアンデ・ムート 個人成績:

獲得経験:135 = 90全体 + 45個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
●基本目的
フィリンさんには心臓の破壊という危険な役目を担ってもらうので、負担が少しでも減るように多くの蚊を引きつけます

●行動
『リター』を構えながら蚊を【挑発】
効果が薄いなら、蚊は熱に惹かれるという習性があるようなので『エンジュワカイロ』を使って引きつけてみます
寄ってきたら出来るだけ蚊を集めながら後退。頃合を見て『殺虫剤』を噴射して撃退

ビックモスキートもキングモスキートも攻撃が通ったら危険なので『リター』を使って【全力防御】と【防護魔力】の二重防御で攻撃を防ぎます
ビックモスキートが複数いる時やキングモスキートが高速で動いてる時は、防御中も【危険察知Ⅰ】で接近を察知。技能を使っての防御で対応します

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:108 = 90全体 + 18個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
どでかい蚊の体内、ねぇ。
これ超絶至近距離で構造見れる系?生きててそうそうある経験体験じゃないし、ガン見しとこ。
なんなら探索ついでに内側から肉塊切り出して持って帰ろ。剣持ってるゆーしゃ様いたらお願いしよ。蚊のステーキなんて食べられるのこれきりじゃん?ふふ。

そーいや蚊が人を噛むのって、人の呼気と体温と体の常在菌に反応してるらしーね。東の国の噂で。
だから、足の裏とか首とかなんとか、体の汗かくとこは予め【消毒液】で拭いとく。普通の蚊の理論が通じるか怪しいけど。
で、対応めんどそうな数の蚊にぶち当たり挟撃とかになったら【エンジュワカイロ】を無関係なとこにぶん投げ【投擲】しよ。普通の蚊の理論がー、だけど。

リザルト Result

 蚊の退治に為に厳選された三人が学園の屋上に集められた。
 【フィリン・スタンテッド】、【ビアンデ・ムート】、【チョウザ・コナミ】で、三人共が女性である。
 しかし屋上に到着した三人は、自分達の戦う蚊という生物を見つけて驚愕していた。
「いやあああ、かゆいいいいいい!」
「す、水分が足りない……」
「負けるものか、負けるものか!」
「誰か、手を貸してくれ。俺一人じゃ……うわあああああ!」
 屋上では生徒達と蚊との生存競争が始まっている。
「ちょっと話がちげぇ……違わない!? なんかもう戦争みたいになってるじゃない!」
 フィリンは周りで戦う生徒達を次々と見回している。
「これは緊急事態ですね。私達も参戦したいところですが、今は学園長先生の下へ急ぎましょう」
 ビアンデは、蚊の大群により混乱する中で、学園長を探している。
 ひときわ活躍していた学園長を直ぐに発見できた。
「おー、でっかい蚊が飛び交ってるわ。ザコちゃん一匹焼いて食べたいけど。まだ駄目っぽい?」
 チョウザは大きな蚊を見て食欲をわかせている。
「えぇ? あれを食べるのですか?」
 ビアンデは虫を食べることに驚いている。
 昆虫食にはあまり興味がないようだ。
「虫はあんまりおいしくな……いや、止めないけど、そういうことは後にして」
 フィリンは食べたことがあるのかもしれない。
「はいはい、了解了承。じゃあ食事の為に行こっかな? あ、でも待って、ちょっと体ふいとくから」
 チョウザは消毒液を使い、体の各所をふき始めた。
 蚊への対策なのだろう。
 そして三人は、生徒と共に戦っていた学園長を呼び止めた。


 学園長の下へ到着した三人は、痒み止めスプレーと殺虫剤を支給され、早速転移魔法により蚊の体内へと移動した。
 転移で侵入した蚊の体内は、地面も壁も黒色の景色となっている。
 何処かから聞こえる心臓の音、それに混じることなく聞こえる、体内にも飛び交う蚊の羽音。
 耳元にブーンと飛んでいる音を聞くと、三人の体がむず痒くなってくる。
 手で払うも、また別の蚊がやって来てキリがない状態だった。
「う、痒いです。早く対策を」
 ビアンデは腕をポリポリと掻いている。
「私も痒くなって来たわ。痒み止めスプレーを使うから、皆固まって」
 フィリンが支給されていた痒み止めスプレーを取り出した。
「ザコちゃんの所にはあんまり来ないや。消毒液効果あり?」
 チョウザの近くにはあまり蚊が寄って来てはいない。
「じゃあ使わないのね?」
 フィリンはチョウザに聞き返す。
「いやいや使うよ?」
 フィリンの指示に、三人は体を近づけスプレーを吹きかける。
 三人の体から痒みが引き、急ぎ行動しようとしたのだが。
「と、その前に、今の内にこの辺りの肉を採取してこっかな。ゆうしゃ様、剣貸して?」
「え? ああうん、どうぞ。あんまり汚さないでね」
「あいよー」
 チョウザはフィリンから剣を借り、足元の肉を切り始めた。
「お肉ゲットー」
 黒色の肉が採取されると、チョウザは満足げに布に包みこみ、それを懐にしまい込んだ。
「じゃあ行きましょう。スプレーの効果も何時まで続くか分からないから」
 フィリンは先へ進む指示を出す。
「そうですね」
 ビアンデは頷いた。
 しかしチョウザは二人を止めた。
「もうちょい待って。心臓部? まで一直線ぶち当たりかどーかはわかんないじゃん? ちょい調べる」
 チョウザは心臓の位置を探ろうとしていた。
「そっか、じゃあ任せたわ」
「お願いします」
 二人もチョウザに任せる。
 そしてチョウザは蚊の体内をガン見して物音を聴き、敵の位置を探っている。
 余り遠くではない位置に、大きな音を立てるビックモスキートを三体発見する。
「大きいのがあっちに居るからあっちじゃね?」
 チョウザはその場所を指さした。
「分かったわ、じゃあ行きましょうか二人共、そこら中黒いから蚊の位置には気を付けて」
「はい、分かりました。お二人共行きましょう」
 そういってビアンデは首元をカリッと掻いた。
「じゃあ前進で、行こっか」
 チョウザも飛んでくる蚊を手で払いつつ言った。
 進みだした先には、小さな蚊の大群と、ビックモスキートの三体を見つけた。
 もう少し遠くには、黒色の心臓が見えている。
「ほいっと、エンジュワカイロをぶん投げよ」
 チョウザは、エンジュワカイロを遠くへぶん投げた。
 蚊の大群とビッグモスキートは、エンジュワカイロの熱に引き寄せられて行く。
「お二人共、進む前に、今の内にもう一度痒み止めスプレー掛けておきましょう。そろそろ痒みが……」
 ビアンデは体をカリカリ掻いている。
「じゃあ私のを使うから、二人共集まって」
 フィリンは、持っていた痒み止めスプレーを使い果たした。
 三人はビックモスキートが動き出す前に心臓部に向かい到着する。
 ドクンドクンと脈打つ心臓の前には、ビックモスキートよりも一回り小さな蚊が存在していた。
 ビックモスキートよりも素早く、頭にある金の冠が特徴的だ。
 このフィールドを創る巨大な蚊が姫であるなら、護りにつくこの蚊は王であるのだろう。
 三人は足を進めて行くと、心臓を周回しつづけるキングモスキートが、正面に陣取るように動きを変えた。
 これ以上近づけば襲い掛かって来るだろう。
 そしてキングモスキートに従うように、エンジュワカイロに引き寄せられていたビックモスキートまでも向かって来ている。
「蚊に気付かれた! もうこのまま行っちゃいましょうか」
 フィリンは突撃を指示する。
「支援物資も限りがありますから賛成いたします!」
「ザコちゃんは、ゆうしゃ様に従うよ?」
 ビアンデとチョウザもそれに頷き、突撃が開始される。
「お二人共、私が敵を引きつけます。フィリンさんは心臓部の破壊をお願いします」
 ビアンデが敵の防御を買って出た。
「任されたわ、スタンテッド家の……同じ、盾の勇者の名にかけて!」
 その言葉に、フィリンは同じ盾の勇者として、シンパシーを感じている。
「へーい、ゆうしゃ様」
 チョウザは軽く返事をして、自分の相手になるであろうビックモスキートの一体に向かう。
 フィリンは心臓部へと突進を仕掛け、ビアンデはフィリンに襲い掛かろうとしたキングモスキートを防御した。


 ビアンデはキングモスキートを相手に立ち回っていた。
 隙をつき、場に陣地を作るよう殺虫剤を連続発射し、一本を使い切る。
 残りの一本は次の機会に温存した。
「フィリンさんの所へは行かせません!」
 ビアンデは、眩しく白い盾リターを構えキングモスキートの進行を邪魔していた。
 盾を大きく振り回し、時にガンと音を立て、襲い掛かれる隙を作り、敵を引きつけている。
 更にエンジュワカイロを自分の位置に使うと、向かって来ていたビックモスキートの二体を呼び寄せた。
 その三体が襲い掛かって来ると、ビアンデは残してあった殺虫剤を噴射する。
 直撃した三体の蚊だが、嫌がるそぶりを見せて、一度距離を開けるだけにとどまる。
 三体の蚊は、また挑発をするビアンデに向かい、攻撃を続けて行く。
「ここは全力で防御します!」
 強烈に迫る三体の攻撃に、ビアンデは体を硬化させ攻撃を受け止める。
 巨体に押され、踏ん張った足がずり下がるも、必死に耐え続けていた。
 キングモスキートのくちばしが血を吸う動作を見せると、ビアンデは踏ん張るのを諦め後ろに下がる。
 そして殺虫剤を取り出し、飛び出して来たキングモスキートの口の中へ思い切って噴射した。
 死ぬことはなさそうだが、多少のダメージはあったのだろう。
 殺虫剤をまともに吸い込んでしまったキングモスキートは、混乱するように飛び回っている。


 チョウザはビックモスキートの一体を相手にしているが、近くに小さな蚊の大群も寄って来ようとしていた。
 しかしそれを防ぐように殺虫剤を噴射し、ビックモスキートを手早く倒そうと奮戦する。
「今の内にやっちゃうよ? 倒さないと帰れないし」
 チョウザは六角棒の先端を相手に向けて、来るタイミングを見計らい突きを放つ。
 黒い体に穴を穿つも、関係なしに突っ込んで来て居る。
 巨体を持つビックモスキートのくちばしが、チョウザを狙っていた。
「ちょっ、嫌だっての」
 六角棒を離すことなく身を反らし、ギリギリの所でやり過ごす。
 躱した所で反撃の一撃を食らわせて、ビックモスキートの一体を叩き潰した。
「もう一体ひきつけよっかなー」
 ビアンデが相手をしていたビックモスキートに、チョウザは背後から六角棒で叩きつける。
 しかし引き付けようとしたその一体は、一撃で潰れてしまった。
「おー、やったじゃん」


 フィリンは心臓部の周りに殺虫剤を使い、小さな蚊を退治する。
 そして小さな蚊が寄って来なくなると、全力で攻撃を始めた。
「さあ、退治するわ!」
 フィリンは純白の光を宿した光輝の剣を持ち、巨大に脈打つ心臓に一撃を加えた。
 その力強い一撃でも、小さな傷をつけるにとどまる。
「このぐらいで、私をナメんな! たああああああああああ!」
 心臓部への連撃を続けるフィリン。
「フィリンさん、気を付けてください! キングモスキートが接近しています!」
 そこにビアンデの注意が飛んだ。
「!?」
 ギリギリで対応が間に合ったフィリンだが、混乱していたキングモスキートの体当たりが襲った。 
「ぐあっ」
 それでもフィリンは、ダメージを受けながら反撃を叩きこむ。
 まだ倒れずフラフラと飛んでいるキングモスキートに、フィリンは、とんでく花火に火をつけた。
 十秒でキングモスキートに狙いをつけ、バチ―ンと直撃する。
 心臓部よりも先にと、フィリンはキングモスキートの背後から強襲をした。
「これで、どうだあああああ!」
 背後から食らわせた一撃で、キングモスキートは地面にぶつかりまた空をただよう。
「クソが! これでも駄目なの!? やっぱり心臓部を先に攻撃を」
 フィリンは、動き回るキングモスキートを気にしながら心臓部に斬りつけた。


 ビアンデとチョウザの二人は、ビックモスキートを相手に戦いを続けている。
 なんとかキングモスキートを引き付けたいと動くが、ビックモスキートが邪魔をしていた。
「フィリンさんの邪魔をしないでください!」
 叫んでも挑発しても、キングモスキートは挑発に乗ってはくれなかった。
 まだ混乱が続いているのだろう。
 しかし、相手が減ったのは丁度良いと、狙っているのがチョウザである。
 ビアンデが引き付けている間に、ビックモスキートに打撃を与える。
「いよっと」
 バキィっとぶつけられた六角棒により、最後の一体が倒されたかに思えた。
 しかし遠くの方から、ビックモスキートの羽音が聞こえてくる。
 この場に向かって来ているのだろう。
「うは、また来てるし」
 チョウザは、ビックモスキート二体の存在を確認している。
 そのうちもう一体も復活するだろう。
「私が二体を引きつけますから、キングモスキートをお願いします!」
 ビアンデはビックモスキートを倒しても無駄だと気づき、チョウザにキングモスキートを任せた。
「はいよー、ってその前に、痒み止めスプレーを掛けとくか。ザコちゃん痒いの嫌だし?」
 チョウザはビアンデの近くで痒み止めスプレーを使うと、フィリンの下へ行ってプシューっと吹きかけた。
 空になった痒み止めスプレーを投げ捨て、ユラユラと飛んでいるキングモスキートを六角棒で狙う。
「ほっと!」
 チョウザはキングモスキートを六角棒で叩きつける。
 大きな翅がちぎれ飛び、地面に落ちた。
 もはや行動は出来ないだろう。
「ちょっと食べてみたいけど、まあ肉あるし、いっか」
 チョウザはキングモスキートを容赦なく倒した。
 更に襲い来るビックモスキートを相手に奮戦を続ける。


 キングモスキートが倒され、楽に攻撃が出来るようになったフィリン。
「心臓のくせにカッチカチ過ぎじゃないの!? このクソおおおお!」
 真っ直ぐに放った突きが、心臓の表皮へと突き立てられた。
 ガッチっとぶつかり一ミリにも満たない傷が残った。
「これでも駄目!? でも私は諦めないから! たあああああああ!」
 フィリンの二度目の突きは、同じ傷へとぶつけられる。
 また駄目かと思った瞬間、バリィィィィっと硝子が割れるような音が響く。
 心臓部の表面には円線状のヒビが奔り、ダメージのほどが見て取れた。
「次で、終わらせる! はああああああ!」
 フィリンは大きく剣を振り上げ、傷の中心を打ち付ける。 
 今まで攻撃を受け付けなかった心臓は、表面を破片のように飛び散らす。
 そしてフィリンの剣は、心臓の壁を切り裂き、剣は地面にトンと落ちた。
 ……力強く活動を続けていた心臓は、鼓動をゆっくりと止めて行く。 
 完全に停止した心臓と同時に、ビッグモスキートも活動を停止した。
 あとはこの巨大な蚊の中からの脱出だけだが、三人は強烈な揺れを感じている。
 この強大になってしまった蚊という生物が、地に沈もうとしているのだろう。
 このままでは地面に叩きつけられる。
 そう思った三人だが、浮遊感を感じると共に、その体が掻き消えた。
 気が付いた時には、もう誰も居なくなった学園の屋上だった。
 見下ろせば、自分達が入っていた大きな蚊が見えている。
 安全となった蚊の体に学生達が集まり解体作業が進められていた。
 その内跡形も残さず消えてしまうだろう。


「もっ、いっかなー?」
 学園から帰ってきたチョウザは、持ち帰った肉を焼き、あるいは煮て、味わおうとしている。
 パクッと食いついた肉には臭みもない。
 しかしジャリっとした舌ざわりが口の中に広がっていく。
「マズ」
 噛む度に広がる血の味に、チョウザはペッと吐き出した。



課題評価
課題経験:90
課題報酬:2000
超激戦、蚊との戦い!
執筆:秀典 GM


《超激戦、蚊との戦い!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 1) 2019-07-24 06:18:37
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。

ハエ玉ならぬ蚊玉の対処、対ビックモスキート、対キング…やる事は多いわね。
対キングは速度、ビックは防御が重要そうで、後はスプレーの使い方次第…?

《甲冑マラソン覇者》 ビアンデ・ムート (No 2) 2019-07-24 19:36:35
勇者・英雄コースのビアンデ・ムートです。よろしくお願いします

私は盾役として動く……つもりでしたが、痒みで動けなくなるというのが少しネックですね
参加する方が増えればいいのですが、もしフィリンさんと二人だけで対処するなら、私が囮になってフィリンさんが心臓を破壊するという短期決戦で挑む事も考えるべきでしょうか……

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 3) 2019-07-24 21:42:09
よろしく、ビアンデ。
そうね…二人で盾構えていても仕方ないもんね…

殺虫剤は大型には小型専門と割り切って…
痒み止めスプレーはどうする?
突破役の私が使うのが定石かもしれないけど、
ビアンデが引き付けてくれるなら、私の分も渡して、防御集中してもらうのもありかなって思うけど…

《甲冑マラソン覇者》 ビアンデ・ムート (No 4) 2019-07-25 21:14:41
それもひとつの手ですが……私も敵を全部引き付けられるとは断言できないので、万が一フィリンさんが動けなくなったら詰んでしまいかねません
ですから、痒み止めスプレーはフィリンさんも持っておいた方がいいかなとは思ってます

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 5) 2019-07-25 23:52:24
2人でカチ込むのはめんどいから加勢ー。
って言っとけば体裁いーんだろーけどさぁ。嘘はつけないし。
あのサイズならステーキ大に身切り出して遊…焼いて食べれっかなって。そういう。
てかわざわざ心臓狙わなくたって、体の内側ならその辺に刃物突き刺して身体裂いたら良くない?ダメ?

ザコちゃんいつもはハッタリかまして気引く存在物体になりがちだけど。
今回はやらない方が良さげ案件なのかな。たぶん。配分割り振り的に。
っても今回何やれっかなー、ってとこもあるにはあるんだけど。デカめの蚊はぶっ叩けばいーけど、
ちっちゃいのはスプレー切れたらどーにもならないし。ザコちゃん魔法なんて使えないからねぇ。使う気もない。

でもって、東の国の少年が、蚊を引き寄せるのは足の裏とか首とかの常在菌が影響してるーって発見して、
体【消毒液】で拭いといたら寄ってこなくなるらしいじゃん?持ってこ。普通の蚊の理論が通じるか怪しいけど。
あと蚊って熱を感知して寄っていくらしいじゃん?【エンジュワカイロ】持ってこ。普通の蚊の理論が通じるか怪しいけど。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 6) 2019-07-26 07:45:18
よろしく、チョウザ・コナミ。
虫食はあんまりおいしくな…あ、いえ、気味悪いし、いやかな…。
中からの攻撃は…どうなのかしら?
巨大蚊の中で自由に活動できる私たちって、人間模と蚊よりサイズ比大きくない?
それこそ『蚊に刺されたようなもの』ってなりそうな…

>ビアンデ
そうね…この人数と作戦なら余もあまりないし、痒みと止め、殺虫剤は個人持ちがいいかな。
私は攻撃重視で、あとチョウザの囮案にも何か協力できないか探してみるわ

《甲冑マラソン覇者》 ビアンデ・ムート (No 7) 2019-07-26 19:19:13
チョウザさん、よろしくお願いします
えっと、やっぱり独特な物を食べようとするんですね……

う~ん……一応身体の中ですからよっぽど深く広く傷つけたらダメージにはなりそうですが、そうでなければさほど効果はなさそうな気がしますね

熱感知で寄ってくる、ですか……敵の気を引く役目なのでちょっと利用してみます
普通の蚊もいるようですし、多分有効だと思いますし

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 8) 2019-07-26 22:35:38
別に美味しさは一欠片も求めてないからだいじょーぶ。おもしろさ求めてる。
だって見たことないもんは見てみたいし、食べたことないもんは食べたい、でしょ?そんだけ。

あんましこれ以上顔出せっか怪しいから、言い投げとくけど、【聴覚強化】の【聞き耳】とか、【気配察知】とか使って、
さっさ心臓部行けるように試みたりはするつもり。持久戦は圧倒的にこっちの不利みだしね。3人だし。