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秀典 GM 

どうも初めまして!
GM登録されました秀典です。

色々なエピソードを執筆して行きたいと考えています。

バトル、シリアス、笑えるものまで色々と出来ればいいなぁ。

どうぞよろしくお願いします。

サンプルエピソード公開中。

担当NPC


メッセージ


 皆様何通ものファンレターどうもありがとうございます!
 すごく嬉しいのですよ。
 感謝です!


 またもファンレターを頂きましたどうもありがとうございます!


 これもチェック担当様のおかげです!


 とりあえず、自分で書いている小説の一つが、あと二万文字ぐらい書いたら終わるので、そこから再開する予定?
 スカイプ入れ直したら全ログが消えていた。
 何を言ってるのか分からないが、俺も全然わからないんだぜ。

作品一覧


学校の前に森が出現?! (ショート)
秀典 GM
 フトゥールム・スクエアで住み込みで働く用務員の一人、ヒューマンの【バフォメット・ブロイン】氏57歳は、誰も居ない朝早く、学校の正門の前を掃除していた。  静かな朝、とても静かな朝。  本当にタダ早く起きたという以外は理由はないのだが、だからこそ、それを目撃してしまった。 「なんんんんんじゃこりゃあああああああああああああああ!」  学校の前には、そんなものはなかったはずである。  だが今、突如として大量の木々が生え揃えていく。  二十メートルはあろうかという大木が次々と生え、学校の前に森が出現した。  それは周囲五キロに及ぶような、かなりに巨大なものであり、普通の森とは思えないほどに真っ黒な葉をしている。  突然生えたにもかかわらず、森の中からはギャアギャアと生物の鳴き声までも。  それが何者かの魔法であるのか、何処からか転移して来たものかも判断できない。  驚いていたバフォメットの元に、眠そうな顔をした学園長の【メメ・メメル】がやって来た。 「んもうなんだよ~、こんな朝早くから~、変な事だったら、すっごくぎるてぃ、なっ♪ 」  朝方に響いたバフォメット氏の叫びに、何か気になったのだろう。 「大変です、大変なんです、学園ちょおおおおおおおおお! 大変なんですってええええええ! あれを見てください学園長! ほらほらほらほらほら、黒い、黒いんですよ!」 「学園長じゃなくてメメたんって呼んでっ☆ それより、黒いって……ああこれね♪ 気にしないで、ちょっと失敗しただけだから♪」 「えええ、失敗ってなんですか?! 何をしたらこんな物が?! どうしてこんな、どうしてええええ?!」 「てへっ☆ ちょっと魔法の書物を読み漁ってたら眠くなって、なんか変な風に誤作動したみたい♪ うん失敗しちゃった♪」 「あああああああ、また学園長が、やらかしたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」  そのバフォメット氏の魂の叫びはまた、学校中の隅々にまで行き渡った。 ●  学園長は、ちょちょいと森の内情を調べ、学校中に響く特大の声の魔法を使いだした。 「おっすおっす! ちょっとだけ失敗しちゃったメメたんです☆ 何か変な風に誤作動しちゃって、森が出現しちゃいましたー♪ 何か軽く調べたら、森の中心のコアを破壊しないと駄目なんだと☆ でも丁度いいのでー、生徒の諸君には、あの森の中心にあるコアを破壊して来てほしいんだっ♪ というか、それを破壊しないとー、森がなくなったりしないんだよねー☆ でも安心してー、それを破壊してくれた人達にはー、賞金と、経験値をプレゼントだよー♪ みんな、頑張ってねっ☆」  朝方に学校中に響いたその声に、眠っていた全員が、何度もふざけんなと思ったという。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-05-23
完成 2019-06-06
変異ジャバウォックとの激戦! (ショート)
秀典 GM
 フトゥールム・スクエアより、大人の足で徒歩四日ほどの距離にある、小さなマニという村。  今この村の中は、大変危険な状態となっていた。  「お姉ちゃん!」  そう叫んだ【サーラ・レアルトリア】という少女こそが、この依頼の依頼者である。  そしてもう一人、それが彼女の姉である【サルサ・レアルトリア】だった。 「サーラ、良く聞きなさい。私は村を守らなければならないの、貴女だけでも逃げなさい」 「やだ、私も一緒に戦うんだ!」 「サーラ、私達が生き残れるかは貴女に掛かっているの。あのフトゥールム・スクエアを目指しなさい、きっと勇者様が助けてくれるわ」 「でも……」 「大丈夫、お姉ちゃんを信じるの。さあ早く! あの魔物が来る前に!」  この小さく二十人にも満たないマニの村に、一体何が起こったのか。  それは、たった三体のジャバウォックと呼ばれる魔物の進入によるものだった。  純粋なジャバウォックとは違うもので、三体とも同じ魔物とは思えない程に変わっている。  まずは一体目、顔は狼にとても似ている。  体毛は白く、森にすむには不向きなほどに目立っていた。  目は赤く、スラッとした体躯に似合わず、前足となる二本だけはとても太い。  体を支える掌は広く、大きく巨大な爪を隠そうともしていない。  この三体のジャバウォックの中では、動きが相当素早かった。  二体目のジャバウォックは、一体目と、顔さえも違う。  例えるなら熊。  赤い目と大きな爪は同じであるが、黒い体毛とその体躯はそうとうに違う。  一体目の倍ほどの上半身に、それに似合わない細い腰、後ろ脚は太いが、あの腰の細さでは立ち上がるのは不可能だろう。  動きはそれ程でもないが、力だけはそうとうに強そうだ。  三体目のジャバウォックは、白と黒とを混ぜた灰色の体毛をしている。  顔付きが猫科の動物のそれに似ていて、やはり目は赤く染まっていた。  絶えず牙をむき出しにして、手にある爪より、その牙に自信がありそうである。  他の二体と違い、人のような均整の取れた体つきで、二本の足で歩行していた。  ただし、これはルネサンスではなく、言葉も喋れないただの魔物でしかない。  勇敢な大人達は、その三体の魔物を追い払う為に立ち向かったのだが、むしろそれが災いしてしまう。  だった三体だと油断したこともあるが、相手の強さは予想以上で、立ち向かった大人達は全員怪我をしてしまったのだ。  村に迷い込んだその魔物達は、大人や子供を次々と村人を遊ぶ様に襲い、多くの村人が怪我をしてしまっている。  今この村の中で真面に動けるのは、もうこの姉妹しかいなかった。  姉のサルサが魔物の注意を引くため、鍋をガンガンと鳴らし、家から飛び出して行く。 「行きなさいサーラ、さあ早く!」 「……うん、待っててねお姉ちゃん、必ず勇者様を連れて来るから!」  村から脱出した小さなサーラの旅が始まる。  生き残れるだけの食糧と、旅の為の費用をカバンに入れ、タタタと走りフトゥールム・スクエアを目指した。 ●  少女の足で二日、親切な旅人と同行し一日、馬車に拾われ一日を掛け、少女はその場所へと辿り着く。 「ここがフトゥールム・スクエア……誰か、誰か居ませんか! 私の村が大変なんです! お願いです、誰か助けてください!」  その声は道行く者、門を護る者、学校の中に居る者にまで届き、全ての者がその子の前に押し寄せる。 『どうしたんだい? 何かあったのかい?』  泣きながら話す少女の言葉は、直ぐに学校の教師達に伝えられ、救出隊が手配されたのだった。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-05-08
完成 2019-05-21
魔物インセクトの討伐 (ショート)
秀典 GM
 フトゥールム・スクエアから西方にあるトルミンの町。  多くの観光客で賑わうこの町は、いわゆる温泉街というものだ。  冬は氷点下にもなるこの町に、壊滅的なダメージが与えられようとしていた。  町のかなり北にあるオミノ・ヴルカという活火山の、麓に広がる荒れた溶岩台地、マルカス・デガラス。  この地の地下にはいまだ活動を続けるマグマが広がっており、トルミンの温泉を作り出している。  その温泉の熱が、冬の間から今日にいたるまで、相当に温度が下がっていたのだ。  随分と気温も上がり、今もまだ温泉の熱は戻ってこない。  大温泉郷ギンザーン、中温泉郷ザ・ウォウ、秘境温泉地セミナルーゴ、旅館馬閣楼、トルミン商店街、トルミンふれあい牧場、 リストランテ・ビー・ワイルドに至るまで、町の全てに打撃がありそうなのである。  まだ湯として入れないことはないが、このままでは温泉街として致命的となりそうだと、トルミンの権力者、【馬場・カチョリーヌ】が自警団のギルッチ団へと調査を依頼した。 「行きなスカットン、温泉街の平和を守る為には、絶対に元凶を調べ上げるんだよ。さあ行きな!」 「おう、待ってなお袋、必ず調べ上げてやるぜ! じゃあ行くぜお前ら!」 「はい!」 「余裕ですよ!」  自警団のギルッチ団は、【馬場・スカットン】という、馬場・カチョリ―ヌの息子が団長を務めている。  溶岩台地、マルカス・デガラスは危険度も高く、何人かの精鋭を選び出す。  その精鋭と共に、馬場・スカットンが、母、馬場・カチョリ―ヌの依頼で、溶岩台地、マルカス・デガラスへと馬を走らせた。  魔物をすり抜けその地につくと、見たこともない魔物達が、冷えて固まった大地を掘り返し、地下にある溶岩を掘り出している。  掘り出された溶岩は、外気に触れて冷たくなり、直ぐに冷えて固まってしまう。  この魔物こそがトルミンの敵、人並に大きく、巨大なノミのような魔物が数十体。 「行くぜ野郎共、このまま前進だ。進めええええええええええええ!」 「はい、やってやります団長! たあああああああああ!」 「鍛え上げた剣技を見せてやります!」  馬場・スカットンの命により、ギルッチ団は果敢に敵へと立ち向かう。  相手はピョ~ンと上に大きく跳ね、体当たりぐらいしかしては来ない。  一体一体はゴブリンより弱いが、その数は膨大だった。  いくら弱いとは言っても、そこまで戦いなれていない団員達では、疲弊するばかりである。  だんだんと団員にも怪我人が増えて、数により押され始めた。  温泉街を護る為とはいえ、これは団だけで護れるレベルではなかったのだ。 「だだだだ団長、これでは団員の身が持ちません! 一度撤退を!」 「これは無理です!」 「クッ、確かに数が多すぎるな。怪我人も増えているじゃねぇか。口惜しいが俺達だけじゃどうにもなんねぇ。撤退してフトゥールム・スクエアに応援を要請するぞ! 全員後退、戦場から撤退するぞ! 全員撤退だあああああああ!」  馬場・スカットンは、魔物の大群から団を引き、即日フトゥールム・スクエアに文が出された。  文は無事学園長に届けられ、その対応は教師の一人である【レインメース・シャロライン】に預けられた。  その教師により、トルミンの町のピンチという事で、すぐさま討伐隊が編成される。 「学生諸君、トルミンの町にピンチが訪れた! 敵勢戦力は多数、五十を超えると思われる! だが安心しろ、個体の能力はゴブリンより低い。力を合わせれば、必ずや打ち倒せるだろう! なお、今後この魔物の名称はインセクトと呼称する。さあ我こそはと思うものは、その手をあげるんだ!」  こうして集められた人員は、すぐさまトルミンの町へと送り出されたのだった。
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-04-16
完成 2019-04-30
黒き卵の孵化 (EX)
秀典 GM
 大陸のあまり人には知られていない隠された何処か。  地下深くかもしれないし、異世界の果てなのかもしれない。  海の底にあるのか、川の中にあるともしれない封じの神殿と呼ばれる場所。  神殿と呼ばれるだけあって外見は神殿である。  その内部はかなり広く、大きな柱が幾つも立ち並らんでいた。  柱と柱を繋ぐように、赤いカーテンのような布が道を作っていた。  年に一度の清掃のおりに、聖女達の力が込められている。  初めてみる人間は、不思議な感覚を感じるかもしれない。  その作られたの赤い道の奥には、多くの卵が並んでいる。  白や青、色々な色があるのだが、それこそがこの神殿に封じられている何かだろう。  卵の中に何が入っているのか、今は誰も知る術がなく、生まれて見なければ分からない。  その中に詰まっているのが、人の希望であるとは限りはしないのだ。  この夜、護られている黒い卵の一つがドクンと鼓動を始めた。  揺れて、殻にヒビが入り、その内からは何者かの瞳が覗く。  それに初めに気付いたのは、今宵の見回り役であった聖女見習いの、【ミレイズ・リレイズ】と、【モリガリア・モリモリ】の二人だった。  二人は今年この神殿に来たばかりの、同い年の少女達である。  適当に話しながら神殿を見回っているのだが、ミレイズの足が止まって道の横を見ていた。  何事かとモリガリアがそれを覗くと、ミレイズが大きく叫び出した。 「あ~、割れてるううう! どうしよどうしよどうしよどうしよ!」 「おおおおお落ち着くのよミレイズ、まずは水を飲みに行きましょう。それから一晩寝てグッスリ考えてからもう一度寝るのよ!」 「違うよ、それは落ち着きすぎだよだよ! ていうか寝たら駄目なんじゃないかな?! 何もしなかったら不味いんじゃないの。まずいんじゃないの?!」 「まず一度深呼吸をしましょう。ゆっくりすって~」  二人は大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出して行く。 『す~~~~はぁ~~~~~!』  もう一度卵を見るも、やはり卵は割れていた。 『やっぱり割れてるうううううううう!』  急ぎ走るミレイズとモリガリアは、神殿に居る一番偉い大聖女の【フラベルタ・アイズベルタ】へ報告をしたのだった。 「なにぃ、黒い卵が割れてだとぉ! 急いで封印を施すのだ。一週間は徹夜を覚悟せよ!」  フラベルタの命令で二人は強制的に卵の封印を任された。  三人で封印に挑むのだが、張られた結界の内側で卵が暴れ回っている。 「きゃあああああああああ!」 「いやああああああああああ!」  卵は封印に挑む聖女達にぶつかり、詠唱の邪魔をして上手くはいかなかった。 「ぬうううう、落ち着かぬか二人共! 封印するには我等だけでは無理だ! 他の者達も起こしてくるのだ!」 『はい!』  二人はフラベルタを残し、寝ている聖女達を片っ端から起こして行く。  起こした聖女と共に総出で封印を始めるのだが、それでも上手くは行かなかった。  全力で頑張る聖女達だったが、結界の内側で黒の卵が進化を始める。  黒色の卵は大きく変化し、ひび割れの中からは卵よりも黒く、大きな左腕が現れた。  丸太のように太い腕、体毛は濃く、大きく伸びる爪は何者をも引き裂きそうである。  その腕を見たフラベルタは、内部に居るであろう何者かの姿を想像した。 「あ、あれはオーガの腕ではないか?! 絶対に出してはならん。なんとしてでも封印するのだ!」  大聖女フラベルタの発言で、周りの聖女達の顔色が変わっていく。  オーガとは、大きな体と巨大な腕、巨大な金砕棒を軽々と振り回し、その額には角がある人型の魔物のことだ。  個体によっては小さなタイプも存在しているのだが、これは明らかに違っている。  腕からオーガの本体を想像しても、全長五メートルは下らないものとなるだろう。  全てが出てしまえば、間違いなく強敵となる。  だが、暴れ回る今の状態では封印は難しい。  それを理解したフラベルタは、封印を諦めて、時間稼ぎへとシフトした。 「このままでは無理だ。ミレイズ、モリガリア、我等が時間を稼いでいる間にフトゥールム・スクエアへと走るのだ! ただし、この場所を知られてはならんぞ。絶対に見られぬようにして連れて来るのだ! 絶対だぞ!」 「な、なんか無茶ぶりな気もしますけど、緊急事態ですものね。じゃあ行って来ます! 待っていてくださいね皆さん! がんばってくださ~い! がんばってくださ~い!」 「い、行って来ます!」  そして二人はフトゥールム・スクエアへ向かい、彼の地で応援を要請したのだった。 ● 「お願いします、私達を助けてください。助けてください!」 「出来れば場所は内緒にしたいので、目隠しをお願いしたいのですけど」  ミレイズ、モリガリアが先生達に相談している。  その依頼や提案を加味され、先生達により相談が行なわれた。  そして教師の一人、【レインメース・シャロライン】に対応を任された。  二人の願い通りに場所の詳細を伏せられ、教師レインメースに生徒の編成を任せられたのだ。 「さて諸君、敵はオーガの一体だが、たかだか腕の一本だけだ。敵の封印が今回の依頼内容ではあるが、倒してしまっても問題はない。ただし、時間により相手も卵から出現してしまうかもしれない。全身が出現してしまえばハッキリと強敵と呼べる存在であるが、それまでにダメージを蓄積させれば倒せる可能性はある。相手はまだ視界さえ無いのだ。さあ、この依頼を受ける者はこの場で宣言するのだ!」
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-09-02
完成 2019-09-19
伝説のスカート (ショート)
秀典 GM
 学園から南にある町、シュターニャ。  大陸を分断する大きな川を渡る橋の手前にある、活気溢れる商売の町である。  その町の中を、【レインメース・シャロライン】という女性が歩いている。  この女性はフトゥールム・スクエアの一教師であるが、今回は友人の頼みでこの町へ来ていた。  内容はまだ聞かされてはおらず、今現在目的の家に向かって歩いている途中なのである。 「ここだろうか?」  到着したのは商店としては中の下ぐらいの大きさの、二階建ての雑貨屋のような店だ。  レインメースは、その店の店主である【トトラリ・トラトメ】という女性に会いに来たのだった。  自分が来た事を知らせると、そのまま二階の住居に案内された。  そして今、お茶を出されて店主と向き合っている。  二人はお茶をクイっと飲み干し、トトラリが話を切り出した。 「伝説のスカートという物を知っていますか?」 「は?」  トトラリの質問にレインメースは面食らった。 「じつはこの家代々に伝わる、伝説のスカートという物があるのです。それを使って接客をしようと思ってるのですが、色々と問題があるのです。是非頼みを受けて貰いたいです!」 「……伝説のスカートですか? ……え~っと、聞いたことがありませんね。なんですかそれは?」 「はい、我が家に伝わる伝説のスカートです。それを履くと魅力的に見えると言われている伝説のスカートなのです! じつはここにあるのですが、少し見て貰えませんでしょうか?」  学園に来た依頼内容を確認しに来たのだが、聞いたこともない伝説のスカートの話を聞かされている。  魅力的に見えるとは、どのぐらいのレベルなのかもよく分かっていない。 「……ああ、はい……」  レインメースはそのスカートを手に取り、広げて見始めた。  決して派手ではない、むしろ地味目のもので、鼠色の下地に白色の縦線が入っている完全に大人用だった。  しかしそのスカートには、目立つ場所に豚のアップリケが付けられていた。  例え角度をずらしても、その豚は確実に出て来る仕様となっている。  しかももう一つ問題があった。  目立つように赤いペンで落書きがされている。  これは、とぐろを巻いた蛇だろう……たぶん。  大人が履くのには少しだけ勇気が要りそうな物だ。 「……あの、このスカートをどうしろというのでしょうか?」 「はい、このスカートをどうにか使いたいのですけど勇気がなくて、何か素敵なコーディネートを教えて欲しいのです!」 「……残念ながら私は、そういうものに疎いので……あの、それでその豚とか落書きは取り外すことはできないのでしょうか?」 「一度試してみようと思って挑戦してみたのですけど、何故か防壁の様な魔法が邪魔をして外れてはくれないのです。ですからこのままお願いしたいのですけど……」  レインメースはスカートを見て考えている。  お洒落なんてしたこともない自分の知識量ではどうしようもないと諦め、学園に手を借りる事を思い付いた。 「ならば学園の者に募集をかけてみるとしましょう。あれ程の人数がいれば、誰か上手いコーディネートをできる者もいるでしょう」 「ありがとう御座います! 是非おねがいします!」 「あの、参考までに、魅力的に見えるとは具体的にどんな感じなのでしょうか?」 「いいでしょう。では一度履いてみますので、その効果のほどをお確かめください!」  トトラリがそのスカートを手に取り装着すると、顔付きと体つきまでも変わったように見え始めた。  魅力的に見えるというのも間違いではないだろう。  しかしそれがあったとしても、服のちぐはぐさが違和感しか生んでいない。  もしこんな格好で町に出れば、美人がおかしな格好で歩いている様にしか見えない。  これを解消する為には、このスカートを使って違和感のない格好にしなければならないだろう。  もし素晴らしいコーディネートが出来たのなら、その効果は数倍になる。  このスカートの力を発揮できるものが出来るのならばだ。  自分では無理なのでとレインメースは学園に戻り、学生の手伝いを募っている。 「すまないが妙なスカートを美しくコーディネートできる者は手を上げてほしい。私にはそういう知識はもっていないのだ。誰か頼む、誰でも良いから手を貸してくれ!」  レインメースから学生たちに依頼が出され、依頼書が校内に貼り出されていた。
参加人数
2 / 8 名
公開 2019-06-05
完成 2019-06-15
ドラゴン輸送任務 (ショート)
秀典 GM
 フトゥールム・スクエアから南、大陸を分断する大きな川を渡る橋の手前にあるのが、シュターニャの町だ。  人口約六千人と、あまり多くの人はいないが、屈強な傭兵が集まる商売の町である。  四季を通じて過ごしやすく、川から吹く風が気持ちがいい場所だった。  ただ、この町にも一つ、大問題と呼べる欠点が存在する。  十数年に一度起こる洪水被害だろう。  この町に住んでいる大人ならば、一度は経験をしているはずだ。  激しく雨が降り続いた時、それが起こると言われているが、今回それが起こりそうな雰囲気があった。  あまり雨が降らないこの町で、シトシトと降り続く雨が今日で七日。  川の水量としてもかなり上がっていて、決壊も時間の問題だと思われていた。  それでも町に悲壮感はない。  町に居る殆どの者が、手慣れた様に水没を防ぐ工夫をして、水没が起こるのを警戒している  じつのところ、水による被害は殆どないのだが、その後起こる被害が想像を絶するのだ。  水が引いた後には、生きた魚が大量に跳ね回るのは毎回のことで、店を休んだ分を取り戻そうと、総出で鳥漁るのが風習となっている。  商魂たくましい商人の町らしいのだが、魚以外にも色々と変な物が流れて来たり、水生の魔物とかも打ち上げられたりするのだ。  町に落ちている魚を拾おうとして、魔物に襲われることがしばしば……いや、頻繁に起こってしまう。  だから今回も、フトゥールム・スクエアへの応援要請は届けられていた。  出没予測がされた魔物は五体。  一体目は、デビルフィッシャー。  大きさは人の倍ほどの大きさで、水場では偶に人を襲ったりする。  殆どが誤食であり、咬まれたら相当痛いが死ぬことはない。  ただ、水が引いてからはその場で跳びはねるだけで、パクパクと口を動かした時に人を咬み付く程度である。  二体目は、ワニッコゲーター。  見た目は完全にワニで、人の大人の半分ほどの大きさだ。  あまり大きくはないが、水陸ともに動ける。  陸地でも人並の素早さで動き、積極的に咬み付きにくるようだ。  ワニと言えばデスロールだが、弾丸のように回転して跳び出すデスデスロールは噛みつかれると物凄く痛い。  三体目は、ハイパーウナ吉。  ヌメヌメした極太のウナギで、体長は二メートルほどである。  攻撃力は皆無に近いが、人の服の中にヌメっと入ることで有名だ。  その為、女性から敵視されて、積極的に斬り付けられる。  案外男からは人気があるが、女性の手助けをせずに放って置くと、後で女性からぶん殴られるのは確定だ。  その身は絶品であり、タレで焼くかば焼きは人気である。  四体目は、何故か水が引いた後に現れる、パンツだけを履いたローレライの人型お爺さん。  名前を【ウンディア・ウィンディ】さん三百歳オーバー。  仰向けで寝てパンツを見せびらかして来るので、見つけたら川に叩き返してあげましょう。  『ハイパースプラーシュー』とか言って、水鉄砲を噴射する。  一応魔物ではないが、この日のみは魔物として扱われる迷惑な人だ。  かなり頑丈なので、手荒く対応しても平気である。  水鉄砲なのに案外痛い。  五体目は、流木マッソー。  ハッキリ言って流木である。  流木であるが町中を動き回り、歩行の邪魔をしてきたりする。  痛くはないが、背中を押されると転んでしまう可能性があったりなかったりする。  極稀に、男の子が背中を押されて女の子とぶつかり、そのままゴールインしたなんて話もあった。  その伝説を信じて、背中を押されるのを待っている独身女性が多く集まったりもするが、邪魔なので排除推奨である。  ちなみに、押される女性を待つ男性というのも結構居たりもする。  そして今回の護衛対象で、護るべき原生生物が、『水竜神』と呼ばれる水竜だ。  青色の鱗がとても綺麗で、落ちた物はお守りとして売られたりもする。  建物より巨大だが、この町でもわりと崇められる竜型生物だ。  普段は大人しく、川の中に生息して恐ろしい魔物とかを食っている。  町の守り神として崇められている為に、退治したら怒られてしまう。  普通に大人しいが、攻撃されると怒りだして止められなくなる。  全滅確定するのでやめておこう。  他の魔物に攻撃されないように注意も必要で、周りには充分注意を払わなくてはならない。  傭兵達も町の健全化に向けて仕事を続けているため、手が足りない状況だ。  魚を拾う町の人を避け、流木マッソーの前に立ち塞がる女性陣を躱し、攫い襲い掛かって来る魔物を切り抜け、何故か現れるおかしな奴等を退治して進まなければならない。  このカオスな状況を切り抜ける為、フトゥールム・スクエアで募集が開始された。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-07-09
完成 2019-07-22
サラシナ・マイ (ショート)
秀典 GM
 【サラシナ・マイ】、この学園で彼女の存在を知る者は多い。  オレと名乗る人物だが、彼女は立派な女性である。  ボーイッシュで、胸も少々少ないが、彼女を慕うファンも多い。  本人には知らされていないが、影では姉御だの姉貴だの、姉さんだのお姉様だのと呼ばれて慕われている。  ここにも一人、彼女に恋心を寄せる人物が存在している。  その名を、【カール・ジューサー】。  彼はヒューマンの男性だ。  切っ掛けは、泣いている彼に彼女が話しかけたことだった。 「……どうした。そんな腫れた目をして? ……オレは気が済むまでここでいる。お前がここで何を言おうが言うまいが、お前の勝手だ。別に敢えて聞くつもりは無いが、もし何かを聞いちまったなら……どうするかは、オレの勝手だろ?」  課題が上手くいかない事を告白し、マイはカールに少しのコツを教えたという。  カールはマイと何度も話し、マイを見る度に恋心が芽生えて行く。  マイを女性として意識し、姿を追うようにしているうちに、彼は思った。  もし、マイがスカートを履いたらどうなるだろうと。  可愛い服を着たらどうなるのだろうかと。  恥ずかしがって顔を赤らめるマイを見れたらどんなに嬉しいだろうと。  だから願った。  カールは願った。  迅速に行動するカールが、三十分かけて、『サラシナ・マイに、女性らしい格好をしてくれるように説得してくれる人、または一緒に説得しに行ってくれる人募集』と書かれた依頼書を作り出した。  そうとう熱い想いが込められた太い字の依頼書は、たった一人の目にしか触れる事はなかった。  最初の一人が当の本人だったからである。  依頼内容を知られて本人が来てしまったのは想定外だったが、彼女に会えたことで喜んだカールは、自分自身の口からお願いしたのだった。 「お願いしますマイ姉さん! 僕の為に女装してください!」  言い方が不味かったのだろう。 「はぁ?! 何言ってるんだ。そういうのは似合わないから他でやれ」  しつこく食い下がり、足にしがみ付くカールに、怒ったマイは拳をくらわせた。  それでもカールは諦めなかった。 「僕はマイさんにお願いしたいんです! お願いしますうううううううう!」 「こら、そろそろ離れろ。足にしがみ付くな!」 「おねがいしますうううううううううう!」  必至にしがみ付く純粋とは程遠い形相としつこさの為に、マイはつい言ってしまったのだ。 「ああもう……しつこいな! だったらオレに勝てるのなら考えてやってもいいけどな!」 「やらせていただきます!」 「お前本気でやるつもりか? だったらオレも本気でやらせてもらうからな。全力全開でいくから覚悟しとけよ!」 「分かりました。でも、絶対約束を守ってくださいね!」 「いい度胸だ。オレに勝てたらだけどな!」 「でも僕は弱いですから、代わりに戦ってくれる人を募集をさせていただきます!」 「はぁ? そんなの来る訳が無いだろう。人なんて来ないから無駄なことはやめとけよ」 「フッ、言いましたね……」  そして、次の依頼書が貼り出される。  『サラシナ・マイに勝利して、彼女を立派に女性らしくしてあげよう』と。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-08-20
完成 2019-09-06
超激戦、蚊との戦い! (ショート)
秀典 GM
 夏。  暑い夏。  花火や海水浴、水着鑑賞やスイカ割り、色々と楽しいことが満載の季節ではあるが、逆にやって来て欲しくもない生物の発生もこの季節に起こる。  それは生物の血を啜り、自身の栄養とする蚊という虫の存在だ。  とある国では、血の媒介により病気を感染させたりと、あまりいいイメージはあまりない。  それでなくとも痒みを併発する吸血は普通に迷惑だろう。  このフトゥールム・スクエアにおいても、その存在は確認されている。  確認というか、毎年のように発生するのが常である。  病気の感染を起こすものは持っていないのだが、血を吸われて皮膚を腫らすと痒いのだ。  薬や虫よけの技術はすすんでも、完全には防ぎきれないのがこの蚊という生物である。  寝ている時分に耳元でブーンなんて飛ばれると、寝不足になってしまうのもよくある話だ。  ハッキリ言って魔物より厄介な存在だろう。  ここにも蚊の被害に悩まされる少女が居る。 「アツゥイ! カユゥイ! イライラするううううううう! もう滅ぼしても良いよね? 良いよね?!」  魔王・覇王コース専攻の少女、【フー・デストロイヤー】は、毎年の脅威に今それを思いついた。  だが学園の中に何匹、何百匹居るかもわからない蚊に対して、戦いを挑むのは辛いものがある。  奴等の襲撃や潜伏能力、小さく見つけ辛い奴等は、中々に能力が高い。  一匹を探し出すのも大変なのだ。  だからフーは頭を捻って考えた。 「そうだ、一匹に纏めて大きくしたら簡単なんじゃないのかな。メメたんなら、あるいは……」  フーは学園の中を這いずり回り、五時間をかけて学園長を探し出したのだ。 「えー、蚊を倒したいんだってー? オレサマも蚊は嫌いだから、手伝ってやってもいいぞ♪ じゃあちょっとまってー、儀式の準備するから♪」 「私も手伝いますから、あの蚊共を殲滅しましょう!」 「じゃあお手伝いを募集しよー!」  学園長の呼びかけに応じたのは、約千人にのぼった。  たかが蚊であるが、されど蚊なのである。  これ程の人数が居れば何でもできると、千人による魔法が展開された。  千人がそれぞれに得意な能力を使い、学園の端から端まで全ての蚊がサーチされたのだ。  そしてメルルの魔法で、校庭に学園中の蚊が集められた。  千平方キロ以上と言われるこの学園の全てから集められた蚊の大群は、とてつもなく膨大な数が集まっている。  もしあの中に人が入ったのなら、蚊によって全ての血を吸い取られそうなほどだろう。 「これを一つに纏めちゃえば!」  その集められた蚊の大群は、学園長の魔法で融合をさせている。  だがその時、何者かの干渉があった。  そう、それは三階辺りで肥大化魔法の魔法の練習をしていた、学園の生徒達である。  何故こんな時に、と思われるかもしれないが、参加していない生徒は授業中なのである。  二つの魔法の干渉を受けた蚊の体は、規模にして小さな屋敷一軒分、大きな翅はその三倍はあるほどに変わってしまった。 『ギャアアアアアアアアアアアアアア!』  余りの大きさに千人の悲鳴が上がる中、奴は翅を動かし飛び始める。  だが、その自重により殆ど飛べず、ズーンと地面に足をつけていた。  巨大な蚊の魔物となってしまったコレは、今直ぐに倒さなければならないだろう。  世界を救う為にも、退治しなければならない。 「さあチミたちー♪ あの蚊を退治しちゃえば今年は蚊に悩まされなくて済むぞー! 一気にぶっ倒しちゃおう♪ 一斉射撃ー!」 『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!』  魔力弾や魔法が飛び交い、全員が蚊の怪物にダメージを与えている。  だがその時、大きいだけでタダの蚊である奴の周りに、巨大な魔法陣が浮かび上がる。  そしてついには空中に人間大の魔法陣が形成されたのだ。  その魔法陣からは、大きさに見合っただけの蚊の化け物が現れる。  肥大化魔法の影響を受けた為か、魔物と化した蚊が自身の眷属を呼び出した。  巨大な本体とは違い、人のような大きさの蚊達は、学生達を狙い行動を起こしたのだ。 「ち、血が吸われ……かゆい、かゆいいいいいいいいいいい! ……ガク」 「うおおおおおおおおおおお、こっちへ来るなあああああ!」 「メディック! メディイイック!」  学生達に被害が多発し、本体を倒さなければこの混乱が収まりそうもない。 「それじゃ、奴が飛ばないように押さえてるから、誰か本体をやっちゃってー♪ 学園の未来は、チミたちの手に掛かっているゾ☆ じゃああの蚊の中に転移させてみるから、ちょーっとそこにならんでね☆」  そして、何人かの学生達が、蚊の体内に送り込まれたのだった。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-07-20
完成 2019-08-02
【夏コレ!】浜辺でビーチバレー(謎)対決? (ショート)
秀典 GM
「あつ~~~~~~~い!」  夏……。  フトゥールム・スクエアの何処かにある学園長の部屋の中。  例年よりも早く、相当に気温が上がり続ける日々に、音を上げそうになっている女性が居る。  それが【メメ・メメル】という名の、この学園の学園長だった。  しかし暑さも毎年のことで、その対策がないわけではない。  部屋の中に冷却魔法を試してみたり、冷えた飲み物を飲んだりして、まあそこそこ快適な生活を送っている。  ただ、学園長がそれだけで満足するはずがなかった。 「あ、そうだ、今年も海にいこー♪」  その決断も毎年のことなのだが、今年は少し違っている。  暑さに悶える生徒の為に、学園長は決意を固めた。 「ついでだから、生徒の皆もつれてっちゃおう♪」  あくまでも、自主参加で集められた先生と生徒達は、学園長のお願いに喜んでついて行き、アルチェの町に向かって行ったという。 ●  アルチェの町は、元々は小さな集落で、住民は漁業で生計を立てていたという。  しかし、当時の領主である【ダンテ・ミルトニア】が美しい海と水産資源に目をつけて観光地区へと造り変えた歴史があった。  今では立派な町となり、かなりの人で賑わっている。  海辺ではマリンスポーツの大会も頻繁に開催されて、優勝者には豪華な賞品が与えられる。  その快適な町に、遊ばされに……遊びに来たのが学園の先生と学生達だ。  早速サビア・ビーチの海岸へ向かう学園長に、まあ涼しいから良いかなと向かう学園の人達。  初めは海を楽しみ、その気持ち良さを満喫していたのだが、楽しむだけでは終われなかった。  ビーチパラソルの内でビーチチェアに座り、水着で寛いでいた学園長は、トロピカルなジュースを飲みながらこう言った。 「涼しいけど~、オレ様が暇なのでビーチバレー大会を開催するゾ♪ チミたち頑張って楽しんでくれよ☆ ああでもー、普通のビーチバレーじゃつまらないし、このメメたん特製のボールを使ってみたまえ♪」  学園長の手の上に、突如丸いボールが現れる。  バレーのボールに見えるのだが、学園長が言うのだから何か違うものだろう。 「はい、ちゅうもーく♪ このボールはこうやって使うんだぞ☆ プチヒド!」  魔法を唱え叩くと、ボールには魔法の効果が収納された。  その炎の力を宿したボールは、海辺へとぶつかった。  ボゥっとボールから炎が上がり、その力を見せる。  つまりそれを使ってビーチバレーをしろというらしい。 「じゃあ皆、エキサイティングな戦いを期待しておるぞ♪」  だが一応危険かもしれないと、先生達がまず模擬的に対戦が行うこととなる。  先生達の模擬試合は壮絶を極めていた。  雷が落ち炎が巻き起こり、凍ったり爆発したりと、楽し気な光景が垣間見える。  体にアザがつき、誰が見ても危険だが……。 「うんうん、大丈夫っぽいなー♪ じゃあ大会を始めるぞ☆」  学園長が続行を宣言してしまった。  そして勇気ある学生達が、それに挑むことになる。  君達の対戦相手に名乗りを上げたのは。  防御を得意とする【ウッド・センプーキ】  力押しの【ダイヤリー・クロック】  炎と水の力を持つ【スイミー・ジェリーズ】  癒しの力を持った【ガーテン・ブラッシュ】  速度重視の【ラベル・クーラ】  の計五人だった。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-06-19
完成 2019-06-30
霧の中の吸血鬼 (ショート)
秀典 GM
「助けて……」  そう言った女の顔は、恐怖で歪んでいるように見える。  瞳からは大粒の涙が流れ、化粧がスルリと落ちていた。  真っ黒い服は血にまみれ、大怪我を負っているのだろう。  その目の前には背の高い大きな男が彼女を見つめている。  手には大きなハンマーを持ち、女に向かって大きく振り上げていた。 「私を助けて……」  女は二言目を呟き、大きく口を開いた。  男は何も言ってはくれない。  目を見開いたまま命を落としてしまっているから。  女は首筋に噛みつき、命の残り香を吸い尽くした。 「ああ、おいしい……助けてくれてありがとう……」  女は涙をぬぐう。  人であった時間を思い返して、涙しているのだろう。  既に死んでいた男は、黒色の灰となって崩れ果てる。  その事件が起こったのは、バグシュタット王国の統治しているある地域だ。  この国では、すでに何人もの犠牲者と目撃者により、吸血鬼が出ると噂が広がっている。  吸血鬼を見た目撃者は多く、誰もが、もの凄く美しい金髪の女だと証言していた。  切れ長の目と美しい白い肌、薄いピンクの唇。  黒い帽子をかぶり、爪の先まで、全てが黒で統一された女である。  その顔を見たならば、興味のない同性であっても恋に落ちるほどだという。  女に襲われた犠牲者達も幸せであったのかも知れないが、事件は解決しなければならなかった。  その居場所を探る為に、王は調査員を走らせている。  しかしそれでも犠牲者は出続け、何日もの調査を余儀なくされていた。  掛かったのは一月という時間。  その手掛かりを発見したのはただの偶然だった。  旅の詩人がからっと晴れた真夏日の昼間に、霧を見たという。  雀の涙の可能性に賭け、その霧を見つけ出すまでには、更に一月を要したらしい。  なぜならば、週に一度の月の日の正午、たった一時間しか現れないからである。  見つけたのは川に囲まれた中州のような地。  その場を調べに、調査隊が派遣されたのは、一週間後の正午だった。 「何処に居る吸血鬼!」  十人の調査隊が霧の中に足を踏み入れ、居るかどうかも分からない吸血鬼を探していた。  やはり向うからの返事もなく、ただ霧の中を彷徨う調査隊の十人。  しかし探している内に、一人、また一人と消えて行く。  もう残されているのはたった二人で、二十歳にも満たない若い男と、歴戦の老兵だけである。  既に敵の術中にいると考えた二人だが。 「私を助けに来てくれたの?」  若い男の背後から、女の声が聞こえて来る。  老兵は剣を引き抜き構えるが、その声を聴いてしまった若い男は、宝石よりも美しい女へと手を伸ばした。  吸血鬼の美しさに魅了されているのだろう。  その男も霧の中に消え果て、残されたのは老兵の一人である。 「貴方は……要らないわ」  何が起こったのかも分からず、老兵はその場に崩れた。  彼が意識を取り戻した時、霧は消え果て、仲間は誰一人存在していなかったらしい。   老兵はたった一人で王都へ戻り、城の王へと伝えたという。 「もし私を助けてくれるのなら、もっと人数を連れて来なさい」  玉座の間で王に伝えられた声は、ハッキリと女の声であった。  この老兵が発する声ではなかったという。  声を発し崩れ落ちた老兵に、事態を重く見た王は、部下に命じて吸血鬼の文献を調べさせた。  城の書庫に隠されるようにしてあったとても古い文献には、吸血鬼の女の正体が書かれている。  四百年もの昔、この女の吸血鬼が出現した時に書かれた物らしい。  その女の正体は、あり得ない程遠い地に、遥か昔に生誕した王女だという。  家臣の裏切りにより生きながら焼かれた過去があり、民からは罵倒され、恋人に蔑まれたとだけ書かれていた。  しかしその死の間際、生を呪い運命を嘆いて、吸血鬼へと落とされたようだ。  その際、裏切者へと死を与え、愛していたはずの民も皆殺しにして、たった一人生きながらえたらしい。  遥か時が流れ、国が風化して歴史が消滅しても、彼女はまだ存在を続けている。  空腹を満たす為に人を襲うが、涙を流すほどには悲しみ続けている。  延々に生きざるを得なかった時の中で、凶悪な気性と生への渇望を持ち続け、それでも自身の死を望んでいるのかもしれない。  そう書かれた文献を読み、王は勇者となる者へと知らせを送った。
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-09-24
完成 2019-10-10
悪役のシナリオ (ショート)
秀典 GM
 学園のとある一室。  長机をコの字に並べ、黒い全身タイツを着た人物が並んでいる。  その中心には、リーダーらしき男が座っていた。  その名を【アクス・ルゾー】といい、このクラブの創設者である。 「もうすでに事情は知っていると思うが、まあ座ってくれたまえ」  アクスは前にある椅子に手を向ける。  そこに座ると、アクスから説明が始まった。 「今一度説明しよう。我等悪の巣窟は、ピカピカの新入生を相手に活躍するクラブである。活動内容は、時に花壇の葉っぱを千切り、窓に落書きをし、挙句の果てには合意の上の女生徒を攫ったりと、学園において悪逆非道の数々を繰り返し、相手に解決させ、倒されて自信をつけさせることにある。つまりは我等は悪役なのだ」  アクスがバッと手を上げると、周りから歓声と拍手の音が聞こえて来る。  しかし手を下ろすと、何も無かったかのように静けさを取り戻す。 「だが都合が悪い事に、遠出の為に殆どの人員が出払うことになってしまってな。……言いたい事は分かるだろう? ハッキリ言えば、我等の手先となって悪の限りを尽くしてほしい。まあここに来たということはやる気があってのことだろう」  アクスは手を組み合わせて両肘を机に置いた。 「もちろん何が有っても勝ってはならない。負けることが使命なのだ。狙うのは、【アクエリア・セレスティア】と、【スコーピオ・レダトリア】の二人だ。アクエリアは11歳の少女、それとスコーピオは12歳の少年だ。当然、学園は了承済みである。もう一度繰り返すが、決して勝ってはならぬ仕事だ。やれるのだな?」  アクスは指を組むのを止めて、胸の前で腕を組む。 「ふむ、頷いてくれて嬉しいぞ。まあ方法は何でも構わない、君達の好きなようにやって貰えればいい。ただし、体に傷をつけるようなことはしては駄目だ。悪役の道に反するからな」  アクスは机の下、備え付けの棚に置いてあった資料を取り出す。 「ではこの資料を渡しておこう。好きに使ってくれたまえ」  アクスは前に資料をつき出し手渡した。 「決行は明日の朝から、昼にかけてだ。それと、この部屋は自動的に消滅する。次この部屋に入ったとしても、我等は存在してはいない。では、健闘を祈る」  座っていた人物が立ち上がり、部屋の外へと向かう。  部屋の扉が閉まり、もう一度扉を開けたのだが、そこには黒い人物の痕跡さえ残されていなかった。  悪の巣窟とは一体なんだろうかと、そう考えても答えは出て来ない。  しかし手渡された資料は本物で、この場に来たからにはやるしか無いのだろう。  資料を開き、決行の日にちを待った。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-10-23
完成 2019-11-04
GGGグレート・ゴールド・ゴーレム (ショート)
秀典 GM
 ゴールドラッシュ村。  ある重大な要件を伝えるために村長の【キンガ・アルジャー】は村人達を呼び出し、食事に招待している。 「諸君、この村に金が無くなってしまった」  適当に食事を食わせ、タイミングよくキンガが言い放つ。  呼び出された村人は、一瞬冗談を言われたのかとザワついている。  だがそれが本当だと気が付いた一人の男が、ドンとテーブルを叩いた。 「どうするんですか村長! 一体何に……」  男は出された料理を見下ろし、その皿がとても綺麗な物だと気が付いた。  部屋の中を見渡すと、よく分からない壺や、変な絵画まで飾られている。 「まさか村長、私腹を肥やすために金を使い込んだのか!?」  男はもう一度テーブルを叩きキンガを睨んだ。  他の村人も同様に睨みつけるが、村長は動じない。 「それは違う、絵画も壺もワシの趣味だが村の金を使ったりしない! ただちょっと詐欺師に騙されちゃっただけなのだ。テヘ♪」  キンガは舌を出し、目一杯の可愛さを出した。  まずぶん殴ろうと全員が席を立ち上がり拳を構えるが、キンガは慌てて方法を思いついた。 「ま、待て、手が無いとは言っていないぞ! お金を得る方法ならある! 聞け、聞いてえええええ!」  どうせ嘘だと村人達が騒いでいる。 「少し待ってくれ。ここで責任を取って貰うのは簡単だが、一応言い分を聞いてみよう。もしあったとしたら勿体ないからな」  しかし先ほどの男が皆を止めてキンガの命を救ったのだった。  キンガは椅子に座らされ、睨む村人達の前で語り出す。 「この家には代々伝わる伝説がある。この家の窓から見える山の頂に、三日雨の降った後の晴れた日にグレート・ゴールド・ゴーレムが現れるという。その魔物の体は全て金で出来ていて欠片だけでも一財産になるのだ。幸い今日も雨、これで三日。次に晴れた日に現れるはずだ!」  キンガは必死に訴えている 「村長、嘘じゃないでしょうね? もし嘘だったなら私財全部売っぱらいますからね」  先ほどの男は睨みをきかせるが。 「嘘じゃない! ワシの澄み切ったチャーミーな目を見てくれ!」  キンガは目を輝かせて無実を訴えている。 「目が腐っている。やっぱりここで始末した方が……」 「待てえええい! 一回見て来てからでもいいだろう! それとも独り占めしたいからってワシを抹殺するのか!? 卑怯者、卑怯者おおおおお!」  キンガの叫びに、村人達も動揺を見せている。 「わ、わかったから、その代わり居なかったらタダじゃ置かないからな!」  そして次の晴れの日、村人総出で山に出たのだが。 「グレート・ゴールド・ゴーレムが出たぞおおおおおおお!」  その声に反応して、大勢の村人が集まって来ていた。  出現した大きな金のゴーレムは、所々欠けていて体がボコボコになっている。  遥か昔から金を採取されていたのかもしれない。  金に目がくらんだ村人達はやる気を見せたが、足の一振りで一蹴されてしまっている。  これでは勝ち目がないと逃げ帰り、やっぱりキンガの家財道具は売り払われてしまう。  当面村の資財は確保できたが、その日常も終わり始めた。  次の雨が訪れた日、村の中に怪我人が出始めた。  誰も彼もがあの金を狙い疑心暗鬼になっている。  小さな子供ですらも噂になっているらしい。  そして日を追うごとに怪我人が増え。 「う~む、このままでは平和な村の暮らしが台無しになってしまう。やはりグレート・ゴールド・ゴーレムのことは秘密にしておくべきだった! こうなったらもう勇者の皆さんに倒してもらう他はない!」  キンガは三日以上の長雨が降った日に学園に手紙を出した。  ちなみに手紙には依頼の他に、『これはあくまでもお願いだけど、倒したゴールドゴーレムの破片は全部ワシが預かるので誰にも言わないでね』と書かれていた。
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-11-27
完成 2019-12-15
サンタクロースバウト (ショート)
秀典 GM
 子供にプレゼントをくばるサンタという存在は誰もが知っているだろう。  恰幅の良い白いヒゲを生やした老人が赤い衣装を着ているのが有名だ。  しかしサンタと言えど、一人で世界中を回っている訳ではない。  各地に点在する仲間と一緒に働き、子供達に夢と希望を与えている。  この男【サンタクロース・バトルロード】もサンタの名を持つ一人だった。 「ぐふぅ、この間の黒王クマと格闘した傷が痛むわい。これでは今度の試合にも勝てぬかもしれぬわ。前回王者であるワシが棄権するわけにはいかぬ。どうしたものか……」  背中と胸に傷を負ったサンタクロースだが、その肉体は老人のそれではない。  分厚い大胸筋、六つに割れた腹筋、丸太のような両腕と、はち切れんばかりの大腿四頭筋。  バッキバキの筋肉美は二十歳のものと言っても過言ではないだろう。 「こうなったらもっと鍛えねばならぬな。ぐふぅ……」  赤い帽子と赤い服は、サンタの職業に就く者にとっての憧れである。  とある地域のサンタクロースは、サンタクロースバウトで優勝者しなければ赤い服は着られない。  とても栄誉なものなのだ。 「赤い衣服はこのワシが身に着けねばならぬ。だがこのままではサンタクロースバトルロワイヤルに負けてしまう。ぐふぅ、ワシの相手になれる戦士を見つけなければ。だがどこにいるものか……ぐふぅ……」  サンタクロースは考える。 「ぐふぅ、あの学園に頼んでみるのもありか? ぐふふぅ、ワシを倒せる者が居るのか楽しみだわい。ぐふぅ……」  サンタクロースは自身の傷を筋肉の締め付けで止血している。 「ぐふぅ、まずはトレーニングだ。それを終えてから学園に依頼を出すとしよう。そして生徒達に我が肉体の仕上がりを見せつけてやろう」  サンタクロースは自分の背丈よりも大きな岩を背負い、腕立て伏せを続けている。  回数を行うごとに彫刻のような肉は切れ味を増し、汗でテカテカと光り輝く。 「ぐふぅ、楽しみだわい。若い力を吸収してこの身に力が宿るのをな! グワハハハハハハハ!」  学生が来るまで、サンタクロースはトレーニングを続けた。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-12-12
完成 2019-12-28
ホムンクルスより (マルチ)
秀典 GM
 どことも知れない薄暗い部屋の中。  透明な硝子ケースの中で彼女は目覚めた。  自分が誰なのかも分からず、手や体は内部の水と同化しているようだ。  何者にもなれそうなそんな感覚がある。  周りには同じようなケースが幾つもあり、自分と同じような何者にもなれない者が浮かんでいた。  触った所で出れそうもなく、待てど暮らせど誰もやって来ない。  近くにある時計の針が動く音、それがこの部屋の全てである。  『助けて!』  声にもならない声は水に溶けるばかりだが、それでも延々と叫び続けた。  もう時計が何千周したか分からない。  それでもこの部屋には誰もやってこないようだ。  叫び、叩き、出たいと願い続けると、この体が形を成した。  手の指は五つに別れ、ハッキリと認識できる色へと変わる。  これなら出られると願ったそれは、何百も何千も何万度とケースを叩き続けた。  幾星霜と行われた行為に、ついにはケースの方が参ったようだ。  ガシャンと割れ果て、何者かは外の世界へ流れ出た。 「……うぅ、私は……私は何?」  まだ不形で不安定なそれは、今度は安定したいと願い続けた。  それにより、体は人間の女性の物へと変化して、また一つ試練が訪れる。  部屋全体が震動し、天井が崩れ始める。  この部屋が崩れ落ちるのも時間の問題だろう。 「誰か、誰か助けてえええええええ!」  まだ生まれたての体は立つこともできず、叫ぶ事しかできはしない。  ただ、その声は、誰かの頭に届いた気がした。
参加人数
9 / 16 名
公開 2020-04-24
完成 2020-05-08

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サンプル


 フトゥールム・スクエアのとある一室。
 暗く殆ど何も見えないこの部屋で、とある実験が行われている。
 ビーカーや試験管にウネウネと光る物体があり、それを混ぜ合わせて何かを作り出している。
「あとはこれを入れるだけで……きたああああああああ! 全世界の男の夢、脱衣スライムが完成したぞ! ふはははは!」
 【ラックラック・ゴマホイオス】は学校に何年も引き籠り、この研究を一心不乱に行っている。
 ほとんどの人にとっては果てしなくどうでもいい研究ではあるが、この男は命を燃やしていた。
 そしてこの日、その完成を迎えたのだ。
「よし、試して見るとしよう」
 自身の服にスライムを這わせ、実験をしている。
 スライムが服に染み込み、ラックラックは何かが解放された気分がしていた。
「こ、これは凄いぞ、服だけではなく体毛まで一緒に溶かすとは。私は今最高に気分がいいぞ! ふはははははははは!」
 眉毛も髪の毛も失って、今彼は一矢纏わぬ姿で大笑いしていた。
 ただそれもスライムの影響なのか、大事な部分が光り輝き、ギリギリ直視できる状態にはなっている。
 ライラックが、誰にも見つからぬように小さなスライムを校庭に置くと、魔力を込めてドンドンと成長をしていく。
 巨大な姿となったスライムは校舎を越えるほどとなり、その中でラックラックは気持ちよさそうに浮かんでいた。
 当然だが、そんなスライムを放って置く学生達ではない。
 多くの学生がとび出し攻撃を開始しするのだが、スライムに魔法を吸収されドンドン成長を続けている。
 その中で、最初に攻撃をした男子学生がスライムに囚われた。
 ゴボゴボと溺れ、スライムのてっぺんで日干しにされている。
「き、きもちい、しかも食うと美味い! 一体なんだこのスライムは?! ほああああああああああ!」
「き、きもちいいのか? いやしかし……気持ち良いのか?!」
 女達は敬遠するが、興味を引かれた男達は、スライムの中に次々と飛び込んで行く。
『ほわあああああああああ!』
 そうこれは未知の体感だった。
 スッキリ爽やか、心までもがツルッツルにされている気分で、このまま何時間でも居たい気持ちにさせてくれている。
 ラックラックの計画とは随分違うものになってしまったが、彼は充分満足していたのだ。
 だが学校としてこれを放置しておく事はできず、討伐ミッションがかされるのだが、このスライムを倒す事はできなかったのだ。
 魔法を使うと成長するスライムを倒すには、食べるしかないと気が付いた。
「みんな、このスライムを倒すには食べるしかない、食べるんだああああああ!」」
 一人の言葉に、涎をたらした学生の一人が跳びついた。
 よほどお腹を空かせていたのか、腹を鳴らせている。
 その学生がバクゥっとスライムに咬み付くと、その味が彼を覚醒させた。
「これは美味いぞおおおおおおおおおおおおお!」
「な、なんだと、本当に美味いのか?! う、これは……美味い! 何て美味さだ!」
「プルっとして噛み応えもあり、甘く、それでいて溶けるような。の、のど越しも素晴らしい! あ、後味もスッキリしているだとおおおおおおお! いや待て、力が……体力増強の効果もあるというのか?! もう無敵じゃないか!」
「美味い、美味いぞおおおおおおおおおおお!」
 男達がガブガブとスライムを食っているのだけど、スライムの体は途轍もなく巨大で、どう考えても食べきれる量ではない。
 校舎の中から次々に現れる男達により、巨大なスライムが食べられてゆく。
 ほんのり体積が減り始めるが、スライムを食べ続ける男達の体に変化が起きた。
『うおおおおおおおおおおおおお!』
 スライムを食べた男達の体から、多量の毛がとび出した。
 体毛は服を突き破り、誰も見た事がない毛だらけの魔物が誕生してしまったのだ。
 魔物は手にスライムを持ち、近くに居た学生の口に無理やり押し込んている。
「う、うめええええええええええええ!」
「ほっぺが、ほっぺがああああああああああ!」
「やべぇ、とまんねぇよ! とまんねぇよおおおおおおおおおおお!」
 中には興味を持った教師までもがそれを口にし、毛の魔物は学園中に広がっていく。
 圧倒的に広がり続ける毛の魔物達に、フトゥールム・スクエアに混乱が広がる。
 だがここで、まだ影響を受けていない学生達が、決起して行動を起こし始めた。
「このままでは学園が魔物の巣窟になってしまうわ。誰か、誰か救ってくれる人はいないの?!」
「キキ、あれ食べたいの!」
「やめてください絶対やめてください!」
「え~、そのぐらい大丈夫なの~!」
「誰か、この人押さえといて。他に、他に人はいないのか!」
「美味しい物は食べたいの。食べたいの~!」
「誰かあああああああ、誰かああああああああああああああ!」
          ☆☆☆☆☆☆☆☆
 毛の魔物との戦いが始まった。
 味に興味がある学生がスライムを食べ、未だに増え続ける魔物との戦いは熾烈を極めた。
 魔物との戦いで飛び交う魔法はスライムに流れ飛ぶとまたその大きさを増やしてしまう。
 ただ、毛の魔物と化した生徒は、動きも鈍く頭もよくはない。
 偶然だが、戦いの中で魔物の頭の毛を剃り上げると、ハラハラと全身の毛が抜け落ちたのだった。
 敵の弱点も分かり、これで直ぐに終わらせられるかとも思われたのだが、しかしこの戦いにおいての勝利は、あの巨大なスライムを倒す事である。
 魔物を倒すという事は、スライムを食べる奴が居なくなるということなのだ。
 万が一にでも学外に魔物を逃せば、フトゥールム・スクエアの恥となる。
 食っては減り、流れ弾で大きくなり、永遠に終わらないともしれない戦いは続く。
 不毛な戦いは三日三晩を越えて七日七晩も続き、学生達も随分疲弊している。
 絶体絶命の中、天からの恵みの雨が降った。
 ポツポツと降り始めた雨は激しさを増し、ただの雨粒は、大きなスライムの体を少しずつ溶かし始めた。
 学生に勝機が訪れた。
「今よ、あの魔物を殲滅させなさい!」
「よっしゃー、行くぜえええええ!」
「落ちてるものを食べるんじゃあない!」
「きゃああああああ、来ないでえええええええ!」
 元凶は溶け去り、魔物となった生徒達も最後の一人が倒された。
 だがまだ問題は多い。
 野には魔物だったツルッツルの男達が倒れて、体がピカッピカに輝いていた。
 倒れた人達は救護班に運ばれ、これで騒動が収まったかに見えた。
 だがフトゥールム・スクエアに平和が訪れることはない。
 第二第三と続く挑戦者達が、この学校の中には存在するのだから。