;
ふわふわを捕まえて!


ストーリー Story

 ふわっ。
 目の前を、ふわふわした何かが横切っていく。気のせいかな、と目を擦ってみたけれど。
 ふわふわ、ふわわっ。
 どうやら、気のせいじゃないようだ。白くてふわふわした何かが、空中を浮遊している。

 ふわふわふわふわ。
 次から次へと目の前を横切っていくふわふわ。ふわふわでゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。
 思わず目を回しそうになっていた時、近くの教室から先生が慌てた様子で顔を出した。
「ちょうどよかった! 誰でもいいから、それを捕まえるのを手伝って!」
 先生の手には、虫取り網と虫かごが握られている。そして、虫かごのなかにも、やっぱりふわふわ。

 先生曰く、白くてふわふわした何かの正体はケサランパサランとのこと。
 ケサランパサランとは、おしろいが好物で、幸せを運ぶなんて逸話もある、特に害もない、よく分からない謎の生き物。よく分からないから、学園で飼育して研究中だったのだ。
 大切な研究材料が消えてしまうのは、学園としても困る。だから、至急捕まえなければならない。
 捕まえる時の注意点はふたつ。
 ひとつ、強い衝撃に弱いこと。ふたつ、密封した場所に入れると消えてしまうこと。
 そのふたつだけを気をつければ、捕獲は簡単。手でも、虫取り網でも、ふわっと捕まえられるそうだ。
 ただでさえ賑やかな学園だ。何かのトラブルに巻き込まれて、すべて消える前に捕まえなければ!


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-05-26

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-06-05

登場人物 3/8 Characters
《ゆうがく2年生》樫谷・スズネ
 ヒューマン Lv14 / 勇者・英雄 Rank 1
「ただしいことのために、今の生がある」 「……そう、思っていたんだけどなぁ」 読み方…カシヤ・スズネ 正義感の強い、孤児院生まれの女性 困っている人には手を差し伸べるお人好し 「ただしいこと」にちょっぴり執着してる基本的にはいい人 容姿 ・こげ茶色のロングヘアに青色の瞳、目は吊り目 ・同年代と比べると身長はやや高め ・常に空色のペンダントを身に着けており、同じ色のヘアピンをしていることも多くなった 性格 ・困っている人はほっとけない、隣人には手を差し伸べる、絵にかいたようなお人好し ・「ただしいことをすれば幸せになれる」という考えの元に日々善行に励んでいる(と、本人は思ってる) ・孤児院の中ではお姉さんの立場だったので、面倒見はいい方 好きなこと おいしいごはん、みんなのえがお、先生 二人称:キミ、~さん 慣れた相手は呼び捨て、お前 敵対者:お前、(激昂時)貴様
《新入生》ロスト・ナンバー
 カルマ Lv8 / 黒幕・暗躍 Rank 1
いちいち動きがキビキビしている軍人口調のカルマ。 大半の記憶を失い、現代の常識から今までに至る歴史まで再学習中だが年齢相応の振る舞いはできる様子。 人に紛れる為に、しっかりと生物の五感は備えているので魔法陣さえなければ人と区別がつかない。 過去の自爆の影響か、敵国の修復の際に生じたものかは不明だが、無いに等しかった自我がめきめき芽生えてきている。 しかし、まだまだ表情や声の抑揚はぎこちない。 【容姿】 髪:黒髪のソフトモヒカン。デコ出し短髪。 目:瞳が漆黒すぎてハイライトがない。所謂死んだ目。 服:中世ヨーロッパの風の軍服。マント着用。黒地に金の装飾が   施されている。カッチリめ。 魔法陣:右手の甲と喉仏に黒と赤色の魔法陣。 眉と目が近く、目は死んでいるが意志の強そうな軍人らしい精悍な顔つき。体系も細マッチョと男らしさを感じさせる。 【口調】 一人称:小生、自分 「小生はロスト・ナンバー。黒幕・暗躍専攻のカルマであります。よしなに。」
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。

解説 Explan

●目的
 逃げ出したケサランパサランを捕まえる
 誰かが1匹でも確保できたら成功です

●ふわふわケサランパサラン
 白くてふわふわしたよく分からない生き物。好物はおしろい。サイズは片手にふんわり乗るサイズ。
 授業のため学園で飼われているものですが、ふわふわっと逃げちゃいました。
 逃げ出した数ははっきりとは分かっていませんが、20匹程度。
 攻撃力は一切ありません。鼻の付近を飛ばれるとムズムズするかも。

 移動は空中をふわふわ浮遊して移動します。移動速度はゆっくりめ。
 静かで落ち着いた場所が好きなようで、気に入った場所があるとそこにふんわり滞在します。ぱっと見るとただの埃のように見えます。
 プロローグにもあるように、強い衝撃と密封した場所に弱く、あまりに弱ると消えてしまいますので、ご注意を。

●場所
 場所はフトゥールム・スクエア学園内です。生徒が入れない場所にはいません。
 時間は放課後。学園がしまる時間までに見つけてください。

●補足
 学園のルールは程よく守りましょう。
 ケサランパサランの捕獲に、虫取り網や虫かごを使う場合は学園が貸してくれます。
 プランは作戦や行動のみでなく、台詞などもあるとたいへん助かります。


作者コメント Comment
 閲覧頂きありがとうございます。あまのいろはです。
 はじめてのエピソードとなりますが、宜しくお願いします。

 ふわふわした謎の生き物と戯れる楽しい時間。の、はず。
 皆様の楽しいプランを、お待ちしております。


個人成績表 Report
樫谷・スズネ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:36 = 12全体 + 24個別
獲得報酬:630 = 210全体 + 420個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
ええと、ケサランパサラン?…不思議な生き物だな
とはいえほっとく訳にもいかない
頑張ろう、うん

・準備
道具を借りる(虫とり網と虫かご)
密封した場所はダメだと聞いたのでな
手ではうっかり潰すかもしれないし、基本は網での捕獲

・行動
基本的には聞き込み
宙を舞う白い埃のようなものを見なかったか
どの方向に向かったか等を通りすがりの生徒に聞く
同じ参加者には情報を共有

静かで落ち着いた場所が好きとのことなので
基本的に人が多い場所にはいないのでは?と考察
「図書館にもいそうだが、あそこは…迷う!」
図書館か植物園かで悩んで植物園へ

見つけた場合は後ろからそっと近づき
あまり勢いをつけすぎないように虫取り網で捕獲

ロスト・ナンバー 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
■全身全霊でケサランパサランを捕獲するであります!

静かで落ち着いた場所とおしろいを好む…。
ならば、スペル湖の付近に【化粧品セット】の【おしろい】を仕掛け、まるで夏休みの少年が蜂蜜で虫を捕まえるが如く、ケサランパサランを虫取り網と虫かごで捕獲するであります。

移動中にも【気配察知】【視覚強化】で捜索を試みる所存。

また、ケサランパサランは繊細である様子。
【隠密】【隠れ身】【忍び歩き】でそっと近づき、さっと捕獲。

もし、ふわふわと逃げて行った場合には【立体起動】で空中でも捕獲し逃がさない様励むであります。

■アドリブ度:A

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
訳わかんない…魔物?原生生物?植物?カビ?かなんかがいるって聞いたから、野次馬ちょっかいかけにきたモブ。
見に来ただけだし、別に必死こいて捕まえる気もないんだけどぉ…やらなきゃ系?えー、めんどい。見っけたら検討思考してもいーけど。検討だけ。
ところであれって何味?研究材料ってなら、毒の有無に味の感想とかも重要肝要になんじゃん?
ザコちゃん味見していーい?端っこかじ…舐めるだけだって。ほんとに。

教官様に伺い拝聴の限り、なんか衝撃と密閉とに弱いらしいじゃん?
ってなるとカバンとかにぶち込んだ衝撃でお陀仏しそうだし、捕まえたってその衝撃でもイチコロな可能性だし?
だからザコちゃん、さっき言ったとーり追わない。

リザルト Result


 ふわふわ。
 何も言われなければ、気付かず通り過ぎてしまいそうな白いふわふわした何か。
 実際、学生たちはその存在に気付かず、通り過ぎていく。
 ひとの動きにあわせて、あっちへふわふわ。こっちへふわふわ。
 空中をふわふわ浮遊するそれは、ケサランパサランという生き物。おしろいを食べるというから、きっとたぶん、生き物なのだろう。
 その、ケサランパサランが逃げ出した。分からないことが多いからと、学園で飼育・研究されていた、大事な資料だ。
 すべて失ったら、学園にとってちょっと困ったことになる。だから、それを捕まえるため、学生たちが集められたのだった。


「訳わかんない……魔物? 原生生物? 植物? カビ?」
 虫取り網を手にザコちゃんこと【チョウザ・コナミ】がぽそりと洩らす。野次馬がてらちょっかいをかけにきただけだったのに。
「見にきただけだったんだけどぉ……。やらなきゃ系?」
 騒ぎを聞き付けてひょっこり顔を覗かせたら、あれよあれよと虫取り網と虫かごと押し付けられて、今に至る。
 チョウザは、はあーっと深く重い溜息を吐く。見っけたら検討思考してもいーけど。検討だけ。確かにそう言ったのに。
 クセが強い学生ばかりの学園は、先生もクセが強いのです。
 そんなわけで、面倒だけれど道具を押し付けられたからには、先生の前では探す素振りくらいはしておこう、なんてぼんやり考える。
「あーあ、こんなことなら覗きに行かなきゃよかったー。してやられた感じじゃん?」
 がりがりと頭を掻けば、ぼさぼさと赤い髪が跳ねる。チョウザは気だるげに、校舎内をふらりふらりと巡りに出る。

 虫取り網と虫かごを携えて。【ロスト・ナンバー】が先生へ、びっと敬礼をした。その手には、カルマの象徴である魔法陣が刻まれている。
「全身全霊でケサランパサランを捕獲するであります!」
 敬礼をした格好のままで。そう高らかに宣言するロストを見て、先生も思わずピシッと身を正す。そんな気迫が彼にはあった。
 ロストはくるりと踵を返すと、カツカツとヒールを鳴らして校舎を後にする。
 彼が目をつけたのは、スペル湖。
 ケサランパサランは静かで落ち着いた場所を好むらしい。となれば、賑やかな校内を闇雲に探し回るより遭遇する確率は高いと考えたのだ。
 スペル湖についたロストは、ごそごそと何かを取り出す。ロストの手には、てのひらサイズのちいさな箱。
 ロストがそっと蓋を開ける。なかには白い粉が詰められていた。
 そう、それは化粧に使うおしろい。先生に聞いた、ケサランパサランの好物だ。
 ロストはおしろいをスペル湖の側におくと、近くの茂みに隠れて様子を伺う。
「必ず小生が捕まえて見せるであります!」
 ロストのはきはきとした声に、茂みの草が揺れる。ロストははっとして、すぐに口を押さえたのだった。

 【樫谷・スズネ】(かしや スズネ)は、まず校舎内を巡って情報収集。
「宙を舞う白い埃のようなものを見なかったか」
 何事もまずは、しっかりとした事前準備から。すれ違う生徒たちに声を掛けて回る。
 その結果、多くはないがケサランパサランらしきものを見たという情報がいくつか集まってきた。
 使われていない教室の前、階段の踊り場、基本的に静かな図書館、おだやかな気候の植物園。
 それが本当にケサランパサランだったのかは、実際に見に行ってみなければ分からない。
 どうせケサランパサランを届けなければいけないのだし、校舎内は後に回してもいいとして。スズネは考える。ならば、すこし校舎から離れよう。
「図書館にもいそうだが、あそこは……」
 大図書館『ワイズ・クレバー』、あそこは目当ての本を探すのすら一般人には至難の業と言われるほどの図書館だ。
「うん、迷うな!」
 ケサランパサランを探すつもりが、自身が探されることになったら目も当てられない。
 スズネは植物園『リリー・ミーツ・ローズ』へ向かうことにした。
 向かう途中で誰かにあったら、大図書館にもいることを伝えようと心に決めて。


 ロストがケサランパサランの入った虫かごを手に、校舎内に戻ってきていた。
 結果はまずまずだった。
 おしろいの側で暫く見守っていたら、確かにケサランパサランは現れた。
 けれど、スペル湖は校舎外だ。ロストが持てる技能を使ってどんなにこっそり近付いても、風に煽られて、ふわふわと舞い上がってしまう。
 そのため、捕まえるのがなかなか難しく、時間が掛かってしまったのだ。
 だが、それでもケサランパサランを捕まえることが出来たのは、ロストの努力の賜物だろう。
 捕まえたケサランパサランが何かの事故で潰れたりしないよう、一度ケサランパサランを教室へと届けたロストは、ふうと一息。
 そんなロストの目に、虫かごと虫取り網を携えた濃い茶色の髪を持つ女性が階段を降りていく姿が映った。
 確か、彼女も先ほど一緒に話を聞いた、ハズ。自分とよく似た瞳の印象が強く、よく覚えている。
「………ええと、樫谷、殿?」
 名前を呼ばれたスズネがぱっと振り向いた。声を掛けられたことを不思議そうに、ぱちぱち、瞬いて。
「…………ロストさん、だったかな」
 光のない青い瞳が、ロストを捉える。彼女が持つ、底のみえない瞳の暗さに思わず怯みそうになるロスト。
「ええと、その。捕まえることは出来たでありますか?」
「これから植物園に行こうと思っていたところだ。あそこにいると聞いたんだ」
 よければ一緒にどうだろう、とロストに問いながら、スズネは微笑んでみせた。微笑んでも、やっぱり彼女の瞳に光はないのだけれど。
「よろしいでありますか! では、共に」
 誘いに乗って、並んで植物園へ向かうふたり。歩きながら、他愛もない雑談を、ひとつ、ふたつ。
 スズネはロストとの会話を楽しんでいたが、ロストは会話以上に彼女の光のない目が気になって仕方がない。
(表情は変わるでありますが、目に余りにも生気が感じられな……)
 そこまで考えて、ハッと気付く。―――彼女はもしや、精巧に作られた高性能高精密な次世代カルマなのでは、と。
 同じように光のない目の自分のことは棚に上げて、盛大な勘違い。でもロストはカルマだから、目が死んでいても仕方ないよね。うんうん。
(カルマということであれば、カルマ同士親睦を深めたいものでありますが……)
 種族をカルマではなくヒューマンと偽っているのだ。きっと何か、ひとには言えぬ深い事情があるに違いない。
(よし、小生は事情に気づかない素振りで接するであります)
 ロストがそんな決意を固めた横で。スズネもスズネでロストの過去に想いを馳せていた。
(会話には応じてくれるけれど……。なんだか、目が暗いような……)
 そこまで考えて、スズネもハッと気付く。―――目の光を失うほど、何か深い深い悩みを抱えているに違いない、と。
(それならほっとけないし、力になりたい)
 目の光についてはともかく、本来スズネは心のやさしい少女なのだ。誰もが笑っているほうがいい。困っているひとがいるなら助けになりたい。
 そんな彼女なのだから、彼のために何かしたいと思うのは当たり前だから仕方ないよね。うんうん。
 こうして、ふたりの間でお互いに盛大な勘違いが生まれたわけで。
 かたや、相手をカルマと思い込む少年。かたや、暗い過去があると思い込む少女。
「………ロストさん、何かあったら話を聞きますからね」
「お心遣い感謝するであります。樫谷殿を頼ることがあるかもしれません」
「それは良かった。私が誰かの力になれるなら嬉しい」
「いえ、樫谷殿にしか出来ないでありますよ」
 ふたりともそんな勘違いに気付かないのだから、まあ、会話が噛みあうハズもない。
 スズネはロストの悩みを聞こうとしていて、ロストは高性能高精密なカルマの秘密を聞こうとしているのだ。
 けれど、なんとか会話が出来るのは、お互い、思い込んでいる部分に触れないからだろう。
 ――――ああ、思い込みの力っておそろしい。
 ふたりの勘違いがとける日は、来るかもしれないし、来ないかもしれない。

「ふ、わ、あ」
 ふたりがそんな勘違い会話を繰り広げているころ。チョウザは広場の椅子に身体を預け、おおきな欠伸をひとつ。
 彼女は校舎内を探し回ることはせずに、広場でダラダラと過ごしていた。
 けれど、彼女とてただダラダラと過ごしていた訳ではなかった。ちゅ、と人差し指を口に含んでから、ついっと顔より高く持ち上げる。
 チョウザは、風の流れをみていた。湿った指は、風の流れをより分かりやすくする。
「うん、おっけー。風向きに変わりナシ」
 風向きを確認したチョウザは、だらりと身体の力を抜いて、また広場の椅子に身体を預ける。
 そもそも巻き込まれただけだし。必死に探すのめんどいし。来なかったらそれはそれでダラダラ出来ていいし。あっち側から来そうなところで待機していればいいと彼女は考えたのだ。
「来るかねー。来たらザコちゃん面白いし、損しなくていーんだけどお」
 そんなことを呟くチョウザの鼻先に、何かの気配。
 けれど、チョウザが顔を上げるより先に、ふわりと何かが鼻先を掠めた。くしゅんとクシャミをひとつ。
 慌てて顔を上げることはせずに、ゆるりと視線だけ動かせば、ふわふわした白い何かが浮いている。
(らっきーぃ。これはザコちゃんの日頃の行いがいーからかねえ?)
 言葉にはせずに。チョウザは心のなかで呟くと、にまにま歯を見せてわらう。
 さて、どうしたものか。
 捕まえて、とは言われたが、捕まえた衝撃で消えてしまったら困る。
 先生は捕まえたときの話はしてくれたけれど、消えてしまった場合の話はしていない。何か責任を取ることになるのは、まっぴらご免だ。
 チョウザはモブの中のモブとして、ゆーしゃ様の近くでただ直立突っ立ってるモブとして生きていきたい。
(カバンとかにぶち込んだ衝撃でお陀仏しそうだし、捕まえたってその衝撃でもイチコロな可能性だし?)
 そういえば、とチョウザは思い出す。虫取り網と虫かごと一緒に、おしろいも押し付けられていたのだ。
 チョウザはおしろいの蓋を取ると、自らの側にことりと置いた。後は、近くを通り掛かる生徒にお願いして先生を連れてきてもらおう。
 追いかける必要もない。捕まえる必要もない。うっかり事故が起きることもない。カンペキな作戦だ。
 ケサランパサランがおしろいに向かって、ふわふわと近付いてくる。
 チョウザの顔の前を横切る瞬間、チョウザはぺろりと舌を出した。
 ケサランパサランがチョウザの舌に触れて。ぴっと驚いたようにまた空へと浮かび上がっていく。
「うーん、味しないね? 結局コレ、なんなのか分からないじゃん?」
 ぺろり。チョウザは舌を舐めると、首を傾げるのだった。


 ケサランパサランを捕まえた籠をぶら下げて。植物園から、スズネとロストが戻ってくる。
 ふたりが教室へ入ろうとすると、なかからチョウザが出てきた。さんにんの視線がばちりとぶつかる。
「チョウザさ……ザコちゃんって呼ばないといけないのか」
 喉もとまで出掛かった、どこかで会った? という言葉をスズネは飲み込む。こんなに個性的なひとを忘れるハズがない。人違いだろう。
「うん。ザコちゃんだよお、どーぞよろしくねえ」
 チョウザはにこりと笑顔を浮かべる。
 実は出会ってはいるけれど、と思いつつも口には出さない。知らないほうがいいこともあったりするものだ。
「ザコちゃん殿も捕まえてきたでありますか?」
「んー……。あーしというか、教官様がー? でもザコちゃんもバッチシ協力したけどぉ」
 へらりと笑いながら、ぴーすぴーすと手をちょきちょき動かす。
「ふたりもバッチシじゃん? 教官様大喜びだね、きっと」
 こうして、さんにんの協力のおかげで、大切な研究材料が消えることなく無事戻ってきた。
 逃げ出したケサランパサランは、どこかで誰かにしあわせを届けているだろう。
「それにしても、この生き物? は、なんなのでありますか?」
 虫かごのなかでふわふわ動くケサランパサランを見ながら、ロストが首を傾げる。
「味はしなかったけど?」
「ザコちゃん、食べた、の……?」
「ひみつう」
 顔をまじまじと見詰めるスズネを見て、チョウザはにまにまとわらった。虫かごのなかで、ケサランパサランが何かを言いたそうにふわふわ揺れていた。



課題評価
課題経験:12
課題報酬:210
ふわふわを捕まえて!
執筆:あまのいろは GM


《ふわふわを捕まえて!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-05-21 23:41:32
見たことないのいるっぽいから見に来た系のモブ。
これって魔物?原生生物?植物?その他?っても分かってないから調べてんのかもだけど。

ザコちゃんはだらだらしてるだけ。別に必死こいて捕まえる気は無いけど、暇つぶしに見には行く。
…ついでに味見できないかな。

《新入生》 ロスト・ナンバー (No 2) 2019-05-24 22:33:15
締め切り間近での作戦会議への参加で申し訳ありません!
何かこう、気の利いた作戦をと思っていたのでありますが、全身全霊で追いかける外思いつかず不甲斐無い思いであります。

味見とはチョウザ殿一体…。