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その筆に情熱を乗せて


ストーリー Story

 『読書の秋! みんなで読書をして、読書の楽しさを再確認しよう! 読書強化月間開催中!!!』
 読書が続く、何というか……言い方は悪いが頭が弱い人が考えたような文句の垂れ幕。
 まだ暑さが残るが、肌に感じる気温の変化に、徐々に季節の移り変わりを覚える頃。
 大図書館『ワイズ・クレバー』には多くの生徒や先生が足を運んでいた。
 ○○の秋、○の中に入る言葉は数多く、垂れ幕にある読書ももちろんポピュラーなものの一つだろう。
 そんな言葉の影響か、普段よりも多くの人数が利用する図書館の広間を、重力を感じさせない佇まいで眺める生徒が一人。
 種はローレライ。いつ頃からこの学園に居るかを知る者は無く、気ままに自由に、自分の知識欲の赴くままに生活する【フィリン・アクアバイア】という存在。
 体内で溢れた魔力は水として、羽衣状にし体外で形成。
 そんな羽衣を漂わせながら、人の往来を観察していると……。
「ふむ、ここまで人が来るのならば、今回は提供側となっても面白いかも知れぬのぅ」
 赤縁眼鏡をキラリと光らせ、何やら思いついたらしいフィリンは近くを通った図書委員を捕まえて何やら話をし始めた。
 問うフィリンに応える委員。
 何やら話がついたらしく、妙にご機嫌になったフィリンは――。
「さてさて、妾はどんなものを書こうかのぅ」
 楽しそうに、というよりはちょっぴり邪悪な笑みを浮かべて。
 フィリンは静かに、図書館を後にした。

 *

「と言うわけで、暇そうなお主らを捕まえて妾の手伝いをやらせようと思ったのじゃ」
 理不尽ここに極まれり。
 と言うわけでと言われても、彼女が何かをしようとしている、と言う事しか分からず。
 しかも暇そうな、というのは彼女の主観でしか無い。
 しかも手伝いをやらせる、という半ば確定事項のように言われてしまえば、理不尽という感想を抱いても仕方が無いだろう。
「何じゃ、不満そうじゃな? 妾と共に本を作れるなぞ、気まぐれ以外では出来ぬ稀少な体験じゃぞ?」
 なるほど、図書館で考えた何かを作る、という行為は、本を作るという事らしい。
 ……が、その書いた本をどうしようというのか。
「図書館に置いて読ませるに決まっておるのじゃ。読まれなくして何が本かや?」
 何を当たり前のことを……。
 そう言いたげに生徒の顔をのぞき込んでくるフィリンは、上機嫌に続ける。
「初めは妾一人で作ろうとも思ったのじゃが、折角じゃ。共著として名を連ね、中身を愉快な本にしてみたくなってのぅ」
 彼女を知る生徒が聞けば、
「あぁ、またイタズラ心が鎌首を……」
 と納得する言葉と表情。
「どうじゃ? 読書の秋という言葉に釣られ、更には在学生徒の書いた本を手に取った者が楽しくなる内容でもよし」
 彼女の魔力で出来た水が、連れてこられた生徒の鼻先を掠める。
「納涼とは時期が遅いかもしれんが、怪談話なんかも好まれたりするのじゃ」
 別の生徒の目前を、フィリンの水が舞い踊る。
「情報、お知らせ。あるいは、勝手に創造した噂話なんかも面白いかも知れんのぅ。……どうじゃ? 妾と一緒に本を作ってみぬか?」
 興奮気味に生徒へと身を乗り出したフィリンは、晒される胸元も気にせずに、生徒へと詰めかけた。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-09-27

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-10-07

登場人物 4/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」

解説 Explan

 ひょんな事を思いついたフィリン先輩に振り回され、一緒に本を作るシナリオです。
 本にする内容に制限はありませんが、ピンクな内容や赤黒い内容はお控えください。
 フィリン先輩はどうやら『スライムに関する商品とレシピ』について書く様なので、それに寄せるも、プロローグ内で挙げられた内容にするもよしです。

 プランには以下をお書きください。

 1 どんな内容にするか。例:学園の七不思議(七つとは言って無い) ジャンル:ホラー等。

 2 どんな書き方をするか。 例:恐怖を感じるようになるだけ怖く。落ちを付けてコメディよりに等。

 
 皆様このエピソードのタイトル通り、プランを書く筆には情熱を乗せているとは思いますが、さらに今回は、キャラが動かす筆にも情熱を乗せていただけると幸いです。


作者コメント Comment
 フィリン先輩がフィリン先輩なのでフィリン先輩らしいエピソードを考えてたらこうなりました。
 後悔はしていません。反省もない。


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
絵画(イラスト)担当
創造は苦手だけど、皆の物語の挿絵なら自分でもできるかも…と。

●行動
皆の話に『絵画』『芸術親和』を用いて挿絵を作成。
タスクの書評やニムファーの御伽話にイメージイラストとか
フィリン先輩のならスライムに関する商品を見栄えよくイラストなど…

自分自身の作品は悩みつつ…よければ表紙か、巻頭ピンナップとしてイラストを挟ませてもらえたら。
特に物語はつけず、姉妹っぽい女冒険者コンビ2名で『二人』とだけ

●誌名について
皆で案を出して、フィリン先輩に選んでもらう形で。
フィリンからは
『ギャザリング・スクエア』
を…控えめに
(カードのアレでなく、集める・集合(転じて合同誌)の意味ですよ。あくまで)

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
好き勝手に書いた本。
で、長期在学ローレライ様はスライムの調理法と。ふーん。

そったらザコちゃんもなんか口出し…筆出し?しとこ。
内容?魔物の味はほぼ被んだろーし。そったら日記的なことする?

ってもザコちゃんの思い出におもしろ興味深いことはないからさぁ。
学園で面白かったこと一覧でも書いとこ。ザコちゃんの主観基準で書く。

魔物の味とか観察もそーだけどさ、色んなゆーしゃ様を観察したりとかもだし。
少なくとも、何事もなく過ごしてる時よか、刺激と個性は増し増しだもんね。

ただ、ザコちゃん基準だけで書くよか、幅あったほうがおもしろいし。
そこら辺のゆーしゃ様にも聞いて回ろ。それ書こ。
学園で一番自由を感じる時はー?って。

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
同人誌!なぜか心が躍りますわね。

1 ふとしたことから現代ニホーンのデッカイドーに転移してしまい、競走馬として生きていくことになってしまったユニコーンのお話。
ジャンルは異世界ファンタジーですわ。

2 全編コメディのご都合主義。

雑誌タイトルと表紙は以下のものを提案させてもらいますわ。フィリン先輩いかがでしょうか?

雑誌タイトルは、「闇鍋マガジン」
一体何を読んでしまうのかまったく不明・・そんなイメージから発想してみましたわ

表紙は私が昔見た小説雑誌の創刊号に習い、フィリン先輩のコスプレグラビアなんてどうかしら?

製本は手伝いますわ。ページ数も多くならないでしょうし中綴じでいけますね。無線綴じにしたいところだけど


タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
フィリン先輩と仲間全員、【創意工夫】で合同誌を制作。
タイトルは【合同誌フトゥールム・スクエア 不定期刊行】と直球の提案をするが、最終的にはフィリン先輩に決めてもらう

【陣地作成】【設計】で皆が執筆に集中できる環境を館内に整備

タスクは、アルチェの旅特集を企画、執筆

メイン特集は海猫のPR
学園生の協力により生まれ変わった海猫と、かつてはライバル・現在は協力店であるフォルテの魅力、両店コラボ内容を、詳しく書く。

また、館内の著者不明書棚から一冊取り上げ、書評
小説【フォルテ王国の海猫騎士団~黒騎士ジェムと白騎士グラン】
登場名詞の偶然の一致を利用し、海猫特集とのコラボ企画とする
あらすじはウイッシュ参照

アドリブA

リザルト Result

 一人の生徒は――ふと、足を止めた。
 読書の秋強化月間という言葉に踊らされ、本を借りまくっていたこの生徒は、真新しい背表紙である一冊の本に目が留まったのだ。
 背表紙であるはずなのにタイトルは記載されておらず、手に取り表紙を見ても、描かれているのは一本の道と風景だけ。
 不思議に思いながら表紙をめくり、生徒は立ち読みを始めた……。

 *

「フィリン先輩、私は文章では無く挿絵や表紙を――」
 フィリンという自分と同じ名前である学園の先輩に釣られた【フィリン・スタンテッド】は、おずおずと挙手をして、そう自分の意思を伝えた。
 創造は苦手。――だが、少しは覚えのある絵に関してならば、人様に見せられる物にもなるはず。
 そう意図しての発言だったが――。
「何じゃ? 絵のみか? ふむ……よし、面白い。どうせじゃ、絵のみで物語を作って載せてみようぞ。本だから、と文章が必須な訳でもあるまい? どうじゃ?」
 名案が浮かんだ! と手を鳴らしてそう提案した【フィリン・アクアバイア】は、自分の意見を肯定するかの如く何度も頷いた。
「あ、そしたらさー、ザコちゃん箇条書きとかで書いても認め許される? そこんとこ長期在学ローレライ様的にはどんな感じ?」
 すると、常識に囚われぬのならば、と挙手した【チョウザ・コナミ】は、自分の書く内容についての是非を年長のフィリンの方へと尋ねる。
 長期在学、と濁しているので大丈夫であろうが、彼女に年齢に関する言及は厳禁というのが学園内生徒の暗黙の了解になっていたりいなかったり。
「なるほど、そちらの者は箇条書きとな。良かろう良かろう。唯一無二の本なのじゃ、絵のみが許されるというのならば、表であっても構わぬし、極論、読者に記載させるというのも奇抜で面白いのぅ」
 チョウザの中で、ひょっとすると……面倒だから、という意思が働いたのかも知れない『箇条書き』という提案だったが、年長フィリンは目を輝かせて構想を広げていく。

 *

 本を開いたというのに、立ち読みをし始めた生徒の目に入ってきたのは、一枚の絵。
 まるで、表紙の絵の、道から続く景色のような、そんなシーン。
 絵の奥の方には、ぼんやり、何かの建物が影だけを覗かせていて。
 そのページの一番上に――こう、書かれていた。
 『この学園に入学してきたときの心境は?』……と。
 それ以外には何も記されていないページにさよならをし、次のページへ。
 今度は、
 『最初の授業、あるいは課題を終えての感想は?』という質問と。
 ようやく外観を表した建物の絵。
 それは、紛れも無く今居る『フトゥールム・スクエア』そのもので。
 校門に当たる部分には、二つの人影が見て取れた。
 『一番記憶に残る課題は?』、『初めて先輩と行動したのは?』、『怒られてしまった行動は?』。
 文章は無く、問いかけと絵のみで綴られるこの物語は……まだ未完成。
 時折、『スライムを触ったときの感想を述べよ』や、『スライムを食べたことのある者は味の感想を。ない者は想像で記すがよい』と、妙に上からの口調な質問も含まれていたが、全ての質問に共通するのは、誰もそこに記入していないということ。
 そんな本当に本か? と疑いたくなるような内容の最後のページには、こう――記されていた。
 『自由記入』と。

 *

「やっぱり創造なのですから、突拍子も無い話が書きたいですわ! ……そうですわね。ジャポーンとかいう架空の国をでっち上げて、そこにデッカイドーとかいう地域も作って――生き物でレース! こんなのいかがでしょう!?」
 何やらどこかで聞いた事があるような無いような。
 そんな地名をでっち上げた【ニムファー・ノワール】に対して――。
「面白い! 面白いのじゃ! 許す! 妾が許す! 如何様(いかよう)にも混沌と化す事を許す! その奇っ怪な物語を書いてしまうのじゃ!!」
 お腹を抱えて爆笑しながら、二つ返事で許可を出した年長フィリン。
 ニムファーは黙って力強く頷くと、早速執筆へと取りかかるのだった。

 *

 舞台は異世界の国、ジャポーン。
 敵に襲撃され、命からがら転移魔法を発動させることに成功させたユニコーンは――しかし。
 大事な詠唱中に口の中に入ってきたスライムのせいで、その詠唱は不完全。
 結果、転移の座標は大きく――どころか世界線を越えることに。
 降り立ったのはみすぼらしい牧場。
 そこで、自分とよく似た……けれども角の生えていない生き物の身体を、ブラシで擦る少女に心を奪われた。
 しばらく眺めていると、やることを終えたのか振り向いた少女と目が合ってしまい……。
 目が合った事で、このユニコーンは少女の胸中を理解してしまう。
 自分が降り立ったこの牧場が資金難であること。
 そして、どうすればその問題を解決できるか――を。
 ……選択肢は、無かった。
 角を魔法で隠し、惚れた少女のために、ユニコーンは……『イキンダラヘーデル号』と名前を変え、日夜調教に励んだ。
 名前の意味は……知らぬが仏であろう。
 そして、そもそもが同じ生物ですら無い角無しユニコーンなど、イキンダラヘーデルの敵では無く。
 文句なしのぶっちぎりを続けていよいよ借金返済間近! という所まで来たときに――起きてしまった。
 事件が。
 騎手の乗り変わりが。
 ユニコーンの性質上、『乙女』意外はそもそも乗れず。
 だからこそ、イキンダラヘーデルの主戦騎手は当然のように『乙女』であった。
 が、借金返済をより確実にしようと、実力のある騎手(乙男)を乗せようと決まったらしい。
 これからどうなってしまうのか。
 ドキドキしながら生徒がページを捲ったその先には――。
 『自由記入欄』。
 あ々無情。
 思わず慟哭をあげた生徒は、そのやり場の無い思いを何とか晴らすべく、ページをもの凄い勢いで捲った。

 *

「僕は……こんなのを書いてみたいなーと」
 そう言って【タスク・ジム】は年長フィリンに、一冊の本を差し出した。
「? ……旅行記かや? これをどうしたいのじゃ?」
「旅行記というよりは、紹介の場にしたくてですね……」
 どうやら、旅行した風を装って、紹介したいところがあるらしい。
「別に構いはせぬが、ちと普通じゃな。……そうじゃ! 旅行記なのに、紹介なのに一切の地名を書かぬというのはどうじゃ? 読んだ読者にどこの事を書いたのか、実際に自分の足で赴いて確認させるように仕向けるのじゃ!」
「なるほど! 固有名詞無しの旅行記(紹介)ですか! 面白そうです! それを書かせていただきます!!」
 元気にそう宣言したタスクは、参考に……と広げた旅行記とにらめっこをしながら、執筆していくのだった。

 *

 お預けを食らった心を癒やすのは、旅行記の様な文章。
 そう、旅行記の『様な』文章なのである。
 しかし、普通の旅行記にあってしかるべきはずの、『どこ』を旅行したのかには一切触れず。
 その場所の魅力だけを伝えていた。
 旅行の舞台が夏と言う事で、最初に記されていたのは、さんさんと太陽が照りつける白い砂浜。
 その砂浜に出来る渚を、仲睦まじいリア充がキャッキャウフフするような、そんなビーチ。
 思わず、
「爆発しろ!!」
 と叫んで本を閉じそうになる生徒だが、旅行者も一人であることを妄想し、何とか思い留まる。
 もし二人……等と書かれていれば、一体どうなっていたであろうか。
 そんなビーチに長居したくなかったのかは知らないが、直ぐに次の場面へと移った。
 お次は――川だ。
 何と学ばない。夏に水辺に来てしまえば必然的にカップルと出会ってしまうではないか!
 と、生徒は嘆くが、そこに書かれていたのは別方向からの攻撃だった。
 釣り上げた新鮮な川魚を調理して貰う、や、せせらぎと燃える薪の音をBGMにしたバーベキュー、更にはキンッキンに冷えたスライムというような、字面ですら美味いと思わせる文字の羅列は、生徒の胃袋を直撃したのだ。
 そして、川魚から関連を付けての漁港の紹介や、バーベキューからの飛躍でキャンプ場の紹介と、向かう場所に筋道が立っているのもニクい所。
 そして、ここまで詳細に書かれていれば、その場所を訪れたことがあるならば、そこを発想すること請け合い。
「そういや、課題でしか行ったこと無かったな……。今度ゆっくり巡ってみるか……」
 と、思い当たる節があったらしい生徒は、そう呟いて――。
 『自由記入欄』。
 という予測可能回避不可能のページを目撃し、生徒はがっくりと項垂れて……。
 そこまで言うなら、と懐からペンを取り出すのだった。

 *

「言われるままに書いたけど、こんなんでいーの?」
「私も、絵は描けましたけど……」
「書けたわ! いいえ、書けてしまったわ!! これは読んだ人全員が頭を抱えること間違い無しですわ!!」
「僕も書き終わりました! やっぱり、難しかったですけど……満足出来る内容です!」
 それぞれ創りたい内容を年長フィリンに伝え、その悉(ことごと)くを許可された、年下フィリン、チョウザ、ニムファー、タスクの四人は、ほぼ同時に自分の出した案に則ったものを完成させた。
「おお、出来たか。では見せて貰うのじゃ」
 記念すべき最初の読者は、ここに四人を集めた年長フィリン。
 読みながら、何も知らない生徒、あるいは先生がこの本を手に取り読んだ反応を想像し、イタズラっぽく笑みを浮かべ。
「うむ! 良い出来なのじゃ! 突発的な思いつき。かつ、適当な者に声をかけたつもりじゃったが、いやはや思いの他面白かった。良き暇潰しになったのじゃ」
 そう感想を述べた。
「完成したはいーけど、それってこれからどうする予定な考え?」
「? どうするも何も、創ったのは本じゃぞ? 読ませる為に大図書館『ワイズ・クレバー』に置くに決まっておろう」
「え!? 大図書館に置いちゃうんですか!?」
「当たり前じゃ。読者が多くなければ、自由記入欄が埋まらぬであろう」
 完成した本を弄ぶ年長フィリンに質問したチョウザは、それ以外に何が? という表情で返されて。
 その内容に驚くタスクには、当然では無いか、と返答する。
「フィリン先輩、タイトルはどうします? 中身の内容、バラバラですけど……」
 そう尋ねる年下フィリンに、
「タイトルのぅ。……そもそも自由記入欄が埋まって完成なのじゃ。『未定』と言う事で、タイトルの記載無しじゃな」
 少しだけ思案して、自分の考えを押し通す年長フィリン。
「そう言えば、フィリン先輩の書いたものが無いですわ。これに関しては?」
 そして、気付いてしまったニムファーに、
「安心せい。最後に付け足そうと決めておったのじゃ。くふふ、じゃが読ませぬぞ? 妾が何を書いたのか知りたければ、この本を借りて読んでみることじゃな」
 子供のような笑みを――無邪気で、そしてちょっぴりイタズラ心を含んだ笑いをしたその意味を。
 四人は借りて見て知ることになる。
 誰も宣言していない、各部分にねじ込まれたスライムの描写が誰の仕業かは、火を見るよりも明らかだった。

 *

 さて、この本が、年長フィリンの言う『完成』となった時、果たしてどのような内容になっているのか。
 答えは――混沌(カオス)以外の何ものでも無いのは明白だろう。
 が、この未完成のまま大図書館に置かれ、読者の手によって『完成』となったこの本を四人が再び読んだとき。
 それは……年長フィリンすら意図しなかった結果をもたらした。
 『自由記入欄』。そう謳ったページには、びっしりと文字が書き加えられ。
 箇条書き部分にはその質問が、あるいは読者同士の交流が書かれ、ユニコーンの物語には、感想や、独自に考えられた物語の続きが。
 そして、旅行記には、どこの事なのか。そして、そこに実際に赴いた人たちからの感想や、追記として魅力が書き足され。
 最後に、年長フィリンが追加した、『本を読んでみての感想』という項目には――。
 『イラスト素敵だった!』、『読者に問いかけて書かせる本なんて斬新だな! 楽しかったぜ!!』、『気になる場所で切りやがって! お陰で続きのストーリーが湧いてきちまう!!』、『絶対どこの場所を紹介してるのか、この足で出向いて確認してみせるんだからね!!』と言った感想が、わんさと書かれていた。
 書くだけで終わりではなく。
 読まれることが最終でもなく。
 感想までを伝えられて、初めて創作の輪というものが出来上がる。
 そんな、『完成』を果たした本の名は――未だに空欄のままであった。



課題評価
課題経験:13
課題報酬:360
その筆に情熱を乗せて
執筆:瀧音 静 GM


《その筆に情熱を乗せて》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 1) 2019-09-22 22:16:59
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。
フィリン先輩…えー、名前に反応したら捕まっちゃって…
えーと、みんなで一冊の本にするなら、ある程度内容はまとめた方がいいのかしら?

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 2) 2019-09-23 00:09:51
ザコちゃんあんまし分かってなさみなんだけど。

これって各々が好き勝手自由な本を一緒に作業で作るって意味?
それとも各々が分担して一冊の本作るーって意味?
どっちなのかあんまし読めなみなんだけど。

前者ならそもそも無意味のあれなんだけど、
もし後者だとしてもこう、なんてーの?色んな内容のある…雑誌的な…
(手近な辞書をぱっさぱっさとめくり)
そうそう、合同誌ってーの?そんな感じで、やりたいこと勝手に書いて1つの本にして良くない?
製本系の手間も多少は分担されるだろーしね。長期在学ローレライ様の一緒に本の著者にー、も解決だし。

ザコちゃん?なんか好き勝手に書くけど。面白さは期待しないでくれていーよ。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 3) 2019-09-23 15:49:38
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ

小説家気分で何か書けばいいのね。そうねぇタイトルは「お伽の庭・・ゲフンゲフン
もといユニコーンの話しでも書いてみようかしらね。

さてせっかく書いたんだからやっぱり手に取ってもらいたいわね。
表紙を芸術・芸能コースの先輩にインパクトのあるイラスト書いてもらえればいいんだけど・・・難しいかしら?

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 4) 2019-09-23 22:51:27
あー、合同…アンソロ、っていうのかしら?
そういうのね。なら何となくイメージできてきたわ。
ありがとう、チョウザ。

ニムファーもよろしく。
ユニコーンの話、いいわね。
イラストは…うーん、誰か捕まえられるといいんだけど、絵画ってなかなかいないのよね。
写生的なのでよければ、私も多少は心得あるけど…

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 5) 2019-09-25 17:56:51
遅刻遅刻~♪
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします!
フィリン先輩のお困りごと…じゃなくて暇つぶ…げふんげふん
そう、読書推進企画に、協力いたしましょう!

合同誌ということなら、僕はアルチェの旅行ガイド記事として、
最近注目のお土産やさんを特集してみたいと思います。

もうひとつ、図書館の「著者不明書棚」からお薦め本の書評を。
【フォルテ王国の海猫騎士団~黒騎士ジェムと白騎士グラン】
そう、偶然にも、件のお土産やさんや商品と名前が一致しています。
そこで、どうせならコラボ企画にしてしまおうと思っているんです。

(前者は他エピソード関係、後者は他ゲーム出典なので、載るか載らないかは
GM様のご判断にお任せする気持ちでいます。
特に、後者はウイッシュ案件と思っています。)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2019-09-25 18:01:07
あとは、一番肝心な、雑誌タイトルを決める必要がありますね。

この会議室で協議して決定しますか?
それとも、各自案をプランに記載して、フィリン先輩に決めていただきますか?

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 7) 2019-09-26 06:09:35
雑誌タイトル!すっかり忘れてましたわ。
そうねぇ、ドラゴンマガ・・・いえ、なんでもないわ。おほほほ
時間も迫ってますしプラン記載でフィリン先輩に丸投げ、いえ決めて頂いてよいかと個人的には思ってますわ。

フィリンさん
表紙も同じ感じで丸投げでどうでしょう?

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2019-09-26 15:53:55
おおっ!異世界の文芸雑誌にそういうのがありましたね!
ロールアンドロ…コンプティー…挙げればきりがないですけれど。

僕はド直球ですが、【合同誌フトゥールム・スクエア 不定期刊行】というのを提案してみますね。

フィリン先輩と仲間全員による合同誌であること、
みんなで誌名を提案し、先輩に決定していただくことについても、プランに書いてみました‼

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 9) 2019-09-26 21:19:02
>雑誌の名前
ギャザは『集める』『会合』みたいな意味があるからいけなくもないわね…(何事)
アウトそうでセーフなところだと『スクエアマガジン』とか?
プランで思いつく限り、私もあげてみるわね

デザインとかレイアウトはからきしだし、拍子はフィリン先輩に…が、いいかしらね

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 10) 2019-09-26 22:28:21
ギャザとは、フィリンさんもまた懐かしいことを(笑)

異世界の文芸トークはさておき、スクエアマガジンはいいですね!

プランは大体完成しました。
結局、アルチェの旅企画にも力を入れてみたところ、
夏コレを振り返るような内容になり、これはこれで、学園にとっても有意義な雑誌に仕上がりそうな予感です。

その他の行動としては、【陣地作成】【設計】で、執筆しやすい環境整備を頑張ってみましたよ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 11) 2019-09-26 22:48:41
そろそろ出発ですね。
どんな雑誌になるか、学園の皆さんに読んでもらえるか、楽しみですね!

ご一緒いただきありがとうございました。
楽しかったです!