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秋のアルマレス山を楽しもう



ストーリー Story


 ――知っているかい。
 秋の『アルマレス山』は、赤く色づく紅葉が見られ、幻と呼ばれるキノコが取れるらしいと。
 そのキノコの香りはカレーに似ており、味は高級キノコを超えるとか。
 一度は食してみたいという観光客や冒険者は後をたたないが、見つけられるのは一握りの者だけ。
 君たちも、この幸運をつかんでみないか。

 この季節の『トロメイア』という街は、アルマレス山への巡礼者や、紅葉狩りにと大にぎわい。
 『八色の街・トロメイア』と呼ばれるとおり、街の中心である『オクトー広場』から、八本の大通が放射線状に広がって、八種族それぞれが特色を活かして生活しているので『八色通り』とも呼ばれ、各種族ごとの持ち味もまた観光客の目を楽しませている。
「この時期は幻の『コウノダケ』さ! 味も香りも一級品、だが見つけるのは困難と来たぁー!」
「そりゃ食ってみたいものだな」
 八色通りにある宿屋で、キノコの話題に盛り上がる観光客たち。
 彼らもまた、アルマレス山へ紅葉狩りにやって来た。
 その途中で聞いたのが、幻のキノコ『コウノダケ』の存在。
「芳ばしい香りと、高級キノコ以上の味。食べてみたいねぇー」
「見つからないのだろう?」
「見つからん理由は、一年で数日しか生えていないからだ。運が良ければ見つかる。後は少し湿った場所を探すのがポイントらしい」
 アルマレス山は、食材も木材も豊富で綺麗な山。
 泉や滝もあり、観光客には打ってつけ……なのだが、問題は麓を過ぎた辺りから、ゴブリンが出現していること。
 なので、巡礼者や観光客は護衛を雇い山へと登る。
 腕に覚えのある冒険者は、単独や仲間を作って山に入るが、中にはゴブリンにやられて、怪我を負い下山して来る者も居るから困ったものだ。


 噂というものは早いもので、フトゥールム・スクエアにも、幻のキノコの噂は毎年届いている。
「今年こそは行ってみたいな」
「それは紅葉狩り? それともキノコ狩り?」
「もちろんどちらもさ!」
 授業の間の少しの時間に、噂を語る先輩たち。
「でもね、中腹は密林よ」
 先輩が言うとおり、アルマレス山の中腹は軽く木々が生い茂る密林地帯がある。
 迷路とまでは言わないが、初めて山に入る者は、道に迷ってしまう可能性があるというわけだ。
「装備さえしっかりしていれば行けるさ。後は太陽の向きを把握する。ゆうしゃには当然のことだろう?」
「新入生はどうかしら? 迷わないかしら? ちゃんと教えたほうがいいわよ」
「そーだなぁー。よし、俺の装備品を貸してやろうじゃないか!」
「なにを貸すのよ?」
「ん? 方位磁針」
「それだけー!?」
 方角は一番大切だが、果たしてそれだけで突破出来るのだろうか?
「じゃあ地図もつける、それでいいだろ」
「そうね。方角さえ間違わなければ魔物は弱いし、紅葉狩りでも、キノコ狩りでも楽しめるわ」
「俺は普通のデートスポットだと思っていた」
「言いすぎよ、もうっ!」
 そりゃ毎日『ゆうしゃ』になるための授業を受けているのだから、ゴブリン程度など敵にすらならないだろう。
 それがまたフトゥールム・スクエアの学生の一部でもあるけれど。
「紅葉を見ながら、街への貢献ってのも、学生らしくて良いだろ?」
「街のみなさんに、幻のキノコを採って来てあげるというのもあるわ」
「アルマレス山だからな。キノコの他にも、秋の味覚は沢山あるんじゃないか?」
「そうねえー。栗にアケビ、芋なんかもありそうね」
 ここで、『そうそう』と上級生は付け足しをする。
「山ブドウもね。干ブドウにすると……」
「おいおい、怖いことを言うなよ」
 山の幸に思いを巡らす上級生。
 でも干ブドウにすると、コルネ先生が飛んで来る。
 ――しかも鬼の形相で来るだろう。
「まぁあれだ。東に行けば山頂、西に戻ればトロメイアの街! それさえ忘れなければ迷うことはないさ」
「方位磁針と地図が、役にたてばいいね」
「俺は武器を持って、ゴブリン狩りだけどな」
「私は幻のキノコを探すわよ」
 どうやら上級生が、方位磁針と地図を貸してくれるらしい。
 アルマレス山の紅葉を見ながら、キノコ狩り? それともゴブリン狩り?
 あなたはどうアルマレス山を楽しむのだろうか。
 遊び尽くす方法は、あなたたち次第だ。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-10-08

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2019-10-18

登場人物 3/8 Characters
《新入生》クロード・クイントス
 ヒューマン Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
色々と考えてから行動するタイプ。 あまり感情的にはならずニッコリ笑顔を心がけている。 でも顔は笑っていても眼は笑ってない。 厳格な家庭で育ったため人間関係に疲れて孤独を好み、自立するために家を飛び出し、秘めていた好奇心をさらけて放浪癖を患う。 ※アドリブ歓迎
《新入生》コツン・コッツ
 エリアル Lv2 / 黒幕・暗躍 Rank 1
皆さんこんにちは。 ボクの名はコツン・コッツ。エリアル族の生き残りです。 あんまり表に出て戦うのは面倒だから得意じゃないけども、この学園に入って、一人前の魔法使いになりたいと思っています。 理想となる王を見つけて、その人を世界の王にするのがボクの夢。今までいろんな国を転々としてきたけれど、まだボクの理想は見つかっていない。 でも面倒になったらこの学園も出てっちゃうかも。それまでヨロシクね!
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。

解説 Explan

●目的
 秋のアルマレス山を楽しむこと。

●行動
 基本行動は、アルマレス山の紅葉を楽しみながらになります。
 その中で、どちらにするのか選択して下さい。

 ・キノコ狩りを楽しむ。
 アルマレス山にあるという、幻のキノコ『コウノダケ』を探します。
 キノコはジメジメとした場所を好みますので、泉や滝周辺を探してみると良いかも知れません。

 ・魔物狩りを楽しむ。
 トロメイアの麓を過ぎた辺りから、ゴブリンが出現するのを、沢山の冒険者が確認しています。
 巡礼者や観光客のために、ゴブリン狩りもいいかも知れません。

●補足
 まず先輩から、方位磁針と地図を借りられます。
 地形は、東に行けば行くほど山頂に向かっています。
(逆に西に向かえば、街に戻れます)
 山はかなり標高が高く、山頂まで行くとなれば歩いて十日ほどかかりますので、麓から中腹くらいまでが、活動範囲です。

 ゴブリンは、そこまで強い魔物ではありません。
 棒切れなど、軽い武器を手にしていることもありますが、ただ殴るだけですので、簡単に対処出来るでしょう。

 泉や滝は数多くあるので、見つけるのは苦労しません。
 『コウノダケ』を見つけられるかは、場所と運が重要になります。
 キノコが好みそうな場所を、重点的に探して下さい。

 活動時間は、早朝から夕方までとします。
 中腹は密林ですので、夜の捜索はNGとなります。


作者コメント Comment
 秋です!
 色々な誘惑がありますよね。
 食欲の秋、味覚の秋、スポーツの秋。
 それをいっぺんに楽しんじゃおう的なノリです。

 アルマレス山は、富士山を連想して下されば一番早いと思います。
 資源豊富なれど、ちょっと危ない山。そんなイメージ。
 その中で遊び尽くすにはどうしたらいいのか。
 全力で遊んでしまいましょう。
(干し……山ブドウを学園に持ち帰るのは、注意が必要そうです。……多分)


個人成績表 Report
クロード・クイントス 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:120 = 40全体 + 80個別
獲得報酬:2400 = 800全体 + 1600個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは皆に挨拶だ
「よろしくー」

トロメイアに来るのは2度目、大きく重要かと思われる町なので土地勘なんかを養うために参加、特にこの地にある遺跡群には強く興味を持っていたりする

まあそれはそれとして、学園に入学してから一応は熱心に勉学に取り組んできたつもりだが、料理の腕前だけが異常に成長しててですね
そんな中で幻の食材と聞いて!
…でも加齢臭がするとか、あぁ、この学園らしい食材だよ、まったく
カレー?、勘違いだったか、しかしカレーの香りだと料理も限られてくるな、どう料理してもカレー風の香りが、だが味は美味
この町じゃどう料理してるのかな

それよりまずは収穫だな、湿った場所に数日生える、沢で日陰

「さて、行くか」

コツン・コッツ 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは先輩から貰った方位磁石を捨てます。方向が分かってしまっては面白くないからです。そこからは一応東に向かいます。ただただ東に向かいます。
そこで美味しそうな木の実やキノコがあれば、頂上にたどり着く前でも採取して帰っちゃおうかなと思っています。
 ※帰ってツインファミコンを遊ぼうと思っています。

あとは、他の人がもしいいキノコを見つけたら、それを横取りしようかなとも思っています。

あと、もし思い通りにはいかなくて、全くキノコが手に入らない場合は、
どこかのお店でキノコを買っちゃおうかなと思っています。

レダ・ハイエルラーク 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
・訓練
・ゴブリン討伐

◆プレイング
・【事前調査】をして、おおよその出現場所や使える地形等を【推測】
・使える一般技能は全て駆使(なるべく)
・【気配察知】【暗視順応】で索敵、戦闘中は【立体機動】【龍の翼】【飛行】等で縦横無尽に飛び回り駆け巡り、【奇襲攻撃】を行う
・レダにとってはこれはただの訓練
・【気配察知】で感知できたゴブリンは全てやる
・活動時間はできるだけ目一杯とる(夕方は帰る時間も考慮する)
・ゴブリンが出ていない間は紅葉を楽しむ

◆備考
・泡立て器は戦闘中に使用、オーパーツレンズの光を当て拡散させる(オーパーツレンズの光が強い為、泡立て器は使い捨て)
・アドリブ歓迎
・絡み歓迎

リザルト Result


 トロメイアの街にやって来た【クロード・クイントス】は、アルマレス山に入るための準備中。
 ……購入しているのは、調味料ばかりだが。
「幻のキノコとは聞き捨てならないからね。でも加齢臭がするとか、この学園らしい食材だよ、まったく」
 それを聞いて、店主はゲラゲラと笑う。
「ハハハ……。兄ちゃん、加齢臭じゃない、カレー臭だ。そんな匂いがするキノコなんか、誰も食べないだろう?」
「カレー? 自分の勘違いだったか。これは失礼」
(しかしカレーの香りとなると、料理も限られてくるな)
 どう料理しても、カレーの香りは残るだろう。
 だが味は美味。この街では、どうしているのだろうと疑問に思いながら、クロードは当りがありそうな店を覗いて歩く。

「さて行くか」
 ほどほどに納得がいく物を手に入れ、クロードはアルマレス山の道をたどる。
 街で借りた箒で、一気に中腹手前まで行く予定だ。
 その道筋で見えるゴブリン。観光客が沢山訪れる山なのに、魔物が出現するのが、この世界の現実。
「綺麗な紅葉なのに魔物が居るとは……。そのために、自分たちのような『ゆうしゃ』が居るんだよ」
 今回のクロードはキノコ狩りが目的。視界に入るゴブリンには目を瞑り、中腹の密林手前で箒から降りた。
「学園から出る前に貰った、地図と方位磁針によれば、この場所から東に行くと泉や滝があり、更に日の当たらない地形だから『コウノダケ』を探すのには打ってつけだよね」
 秋色深まる密林を楽しみながら、キノコがありそうなポイントを多数見つけ捜索する。
「香りがカレーなんだから、近づいたら匂いがするはずだよ」
 くまなく探したが、『コウノダケ』は見つからず。
「幻だからね、簡単には見つからないか」
 他のキノコは沢山あるので、持ち前の植物学の知識を駆使して、食べれるキノコだけを採取。
「慌てないことも『ゆうしゃ』の鉄則だよ」
 次にクロードは、長くしなやかな枝と細いツルを見つけ、手頃な泉で釣りをすることに決めた。
「キノコと魚って合わないかな? ……おっと来たな!」
 グググと木の竿がしなり、持つ手が重くなる。
 早速魚が食いついたようで、クロードは思いっきり木の竿を引いてみた。
 『パシャ!』と魚が跳ね、クロードの元にやって来る。
「これはヤマメだね。アルマレス山は凄い自然豊かだ」
 ――こんな簡単に、魚が釣れてしまうのだから。
 小一時間ほど釣りをすれば、十匹以上の魚が釣れた。
 ヤマメ、イワナ、カジカ、マス、その種類も豊富。
「んー。これだけあれば、なにか作れそうだね」
 スイートクッキングで魚をさばき、街で購入した調味料をプラス。
 山の中なので、こだわったものは作れないが、枯れ木を集め『マド』を一つ放ち火を点け、魚とキノコを焼いている間に、少し大きめの木をくりぬいた器を作り、泉の水と調味料と、焼いたキノコと魚、最後に熱々になった石を器に入れれば、簡易版鍋の出来上がり。
「上出来」
 始めは、残してあった焼き魚をパクリ。
「旨い! 塩加減と、焼き目の芳ばしさがいい」
 紅葉と泉の音を聞きながらのサバイバル料理は、クロードの心を癒してくれるよう。
「次に鍋は……」
 同じく木を削り作ったスプーンで、鍋のダシを味見してみると、
「これも美味しく出来上がったね。自分は料理人もできる?」
 鍋はキノコと魚が混ざり合い、絶妙な味に仕上がっていて、クロードはお腹がいっぱいになるまで、焼き魚と鍋を堪能した。
「でも、幻のキノコがみつからないんだよ」
 もう少し探してみようか? そう思った時、強化された嗅覚がある『香り』をとらえた。
「……これは」
 香りに誘われるように歩くと、クロードが居た場所から少し奥に進んだジメジメとした密林に、『コウノダケ』の群生地が広がっていた。
「あはは……。こんな近くにあったなんて、全然気づかなかったよ」
 年に数日しか生えない幻。一面カレーの匂いが漂う不思議。
 その中でクロードは、街に持って帰ろうと『コウノダケ』を、できるだけ摘み取った。
「そうだ。街で調理場を借りて料理を作ろう。仲間もお腹を空かせて帰って来るはずだからね」
 学園のマントいっぱいに『コウノダケ』を詰め込んで、クロードはトロメイアの街に戻るために、西へと歩き始めた。


「ボク、方位磁針なんていーらない!」
 アルマレス山の登山口付近で、先輩から貰った方位磁針を投げ捨てた【コツン・コッツ】。
 理由としては、方位が分かったら面白くないため。
「地図一枚で足りるだろう?」
 その黒髪と漆黒の瞳で辺りをキョロキョロと見回し、とりあえず真っ直ぐ……東に向かって歩くことに決めた。
「紅葉は綺麗だし、魔物はボクが風の違いを見分けて回避すればいいことだし、問題なんてなにもないんだ。あ、美味しそうな木の実がある!」
 四歳で国を出て、流浪の旅を続けたコツンは、サバイバルも苦手ではない。
 色々失敗もしたけれど、食べられる草や木の実くらいは見分けられる。
「別に幻のキノコじゃなくてもいいだろ。これも秋の味覚なんだ」
 六歳と皆には言っているが、本当はもっと若いはず。でも、皆以上に世の中を知っている。
 冷たいこと。
 大人たちの反応。
 どうすれば生きられるか。
 コツンはずっと見て体験してきた……世の中の暗い部分を。
 そんな経験から、コツンは面倒ごとを嫌い、表に出て戦うことを嫌う。
 だからゴブリン退治もしないし、幻のキノコを探すこともしない。
 ただ綺麗な紅葉を眺めながら、『食べられる物』を探すだけ。
「あーあ、帰って遊びたいなぁー」
 寮で仲間と遊ぶのが、最近のコツンの楽しみ。
 ――嫌なことを忘れていられるから。

「山頂に行かなくても、木の実やキノコはあるんだ。というより山頂まで十日? そんなのムリだろう」
『日没までに街に帰ること』
 これは学園でも、トロメイアの街でも言われたこと。
 コツンの歩きだと、中腹まで行くのも難しい。
「やっぱり適当に採取して帰ろう。まだ東に歩けば泉くらいはあるだろうし、そこでキノコを採ればいいだろ」
(まぁ、他の人がいいキノコを見つけたら、それを横取りすれば済むんだ。それまでボクは安全な場所でお昼寝だ)
 少し向こうに森が見えるから、ひと寝してから、面倒だけどキノコを採って帰ればいい。
 風をよく読み、隠密で気配を隠して、コツンは大岩の上でお昼寝を決め込むことにした。

「う……う~ん……」
 目が覚め、太陽の傾きを見れば、もう少しで日が傾く時間。
 どうやら数時間は眠っていたらしい。
「外が気持ちよくて寝すぎた。さっさとキノコを回収して街に帰ろう」
 ポンっと大岩から飛び降りて、森に向かうコツン。
 マイペースなのか、面倒ぐさがりなのか、誰にも分からないが、コツンの行動には信条がある。
 だって、きちんと採取して帰るのだから。
 森にわけ入り、ジメジメとした場所だけを探して、数種類のキノコを見つけることは出来た。
 ――『コウノダケ』は見つからなかったが。
「木の実とキノコ、これで十分だろ。後は帰るだけだ」
 日の向きからして西はこっちと、コツンは迷いなく歩く。
 迷ったらまた日か星を見ればよい。
 それが旅を続けたコツンの知恵。誰も教えてくれなかったから、自分で身につけた生きる方法。
 だからこそ学園で力をつけ、一人前の魔法使いになりたいと思う。
 ゆくゆくは、理想となる王を見つけ、その人を世界の王にするのがコツンの夢。
 ……でも理想とはなんだろう?
 色んな国を転々としたコツンだが、まだコツンが理想とする人物は見つかっていない。
 ……いつか見つかるのだろうか?
「人生は長いんだ。気楽にだろう?」
 自分に言い聞かせ、コツンは見えてきたトロメイアの街に入った。


「ふむ、地図によれば中腹は密林か。この辺りが一番魔物が潜みやすいだろう」
 アルマレス山に魔物が出ると聞き、訓練のためにやって来たのは【レダ・ハイエルラーク】。
 トロメイアの街で、事前調査として魔物が出現しやすいポイントを聞いて回り、いざ魔物狩りに出発。
 地図での推測と共に、魔物が出現するであろう場所を捜索してみるつもりだ。
(登山口には魔物は居ない。もう少し上だろう)
「それにしても、紅葉が綺麗だ」
 山が燃えるように紅く色づくこの時期、魔物が現れない間は、目に飛び込む秋の山を楽しむのもいいかも知れないと思っていたりする。
(あれはイチョウ、向こうはモミジ、ナナカマドにブルーベリー……は、止めといたほうがいいだろう)
 植物学の知識で、色づく木々は理解できるが、ブルーベリーは些か危険過ぎる。
 学園に帰るまでに干ブドウになっていれば……後は考えなくても分かること。そんな中……。
「ゴブリンが居るが一匹? もっと沢山と聞いていたんだが、はぐれたのだろうか? それとも仲間と合流だろうか?」
 どうせ倒すのであれば、一網打尽が理想的。レダは見つけたゴブリンをすぐには倒さず、追跡することを選択した。
 隠れ身と忍び歩きで、ゴブリンを追うこと数分、やって来たのは遺跡のような、洞窟のような不思議な場所。
(確かアルマレス山には、古代の遺跡が残ると、考古学でやっていた)
 そう考えれば、ここは洞窟を使った遺跡。しかも人の姿はなく、魔物たちの巣窟になっているのだろう。
 そう結論すれば納得できるものがある。
「……行ってみるのが一番いいだろう」
 ゴブリンが完全に見えなくなってから、レダも洞窟の中へと入った。
 明かりなどなくとも、目は暗闇に順応する。
 目が慣れたレダが見たものは、どれほど存在するのか分からないほどのゴブリンの群。
(正面突破は都合が悪い。回り込んでからの奇襲攻撃がいいだろう)
 レダが見える範囲内に、特殊なゴブリンは居ない。
 学園で習った魔物学では、このサイズのゴブリンならば、少し訓練した人間でも簡単に倒せる程度の戦闘力と記憶している。
 更に言えば、学園でしっかりと知識を身につけたレダには、相手にすらならないほどだが、いかせん数が多い。
「ふむ、これが使えるか?」
 頭に着けているゴーグル。これは一度きりだが強力にビームを放てる物。稼働時間内に、もっとも効率よく使うには?
「やはりこれだな」
 腰の泡立て器に触れ、レダはニヤリと笑う。
 そのまま龍の翼でゴブリンたちの背後に回り、身を隠しながら一番近づける場所にまで移動し、一気に躍り出る!!
「訓練も、これだけ揃えばいい手応えだ」
 持ち前の運動神経で、不意を突かれたゴブリンが集まる中心まで跳躍し、着地した瞬間『オーパーツ・レンズ』からビームを放つ。
 ビームはレダの持っている泡立て器に当たり、光線は屈折し四方八方へと飛ぶ。
『ギャー!?』
 暗闇の中での目映い光りと、身を焼く魔法ビームに、次々と倒れるゴブリンだが、当たらないヤツや避けたヤツも存在する。
 素早く溶けた泡立て器から、スイートクッキングに持ち替え、踏み込み様に二段攻撃を開始。
「はぁぁー!!」
 戦闘用に改造された二本のナイフをひと振りすれば、狭い洞窟で固まっているゴブリン数匹にヒットし、バタバタと倒れていくのが面白い。
 少数は、こん棒などを持ちレダに反撃を仕掛けるが、ヒラっと龍の翼で回避し、その勢いのまま次の攻撃体勢を整え急降下。滑空しながら双剣のナイフを振るう。
「はぁ……。これで全滅か? ……いや、僅かだがまだ居る」
 精神を張りつめれば、ゴブリンの気配が残っているのが丸わかり。
 一呼吸してから、レダは隠れているゴブリンに向かって歩き出しゴブリンを殲滅。
「この洞窟のゴブリンはここまでだろう。体感的にはまだ時間が残されている。次の密集地を探すのも悪くない」
 外に出れば、日はまだ真上を通り過ぎたばかり。
 出来ることなら、後二~三ヶ所ほど見つけ、訓練に磨きをかけたいところ。
「また、はぐれゴブリンを見つければ当たるだろう」
 地図を取り出し、潰した洞窟にバツ印をつけ、縄張りが被らない方向へと向かう。
 迷うことはない。先輩が持たせてくれた方位磁針が、正確に山頂と街の方向を示しているのだから。


 夜までには、クロードも、コツンも、レダも、トロメイアの街の宿屋に戻って来ていた。
「自分は食材集めをしていたから、これを使って料理を作るよ」
「私も手伝っていいだろうか?」
「ボクは料理なんて出来ないから、食べる専門だ」
 クロードとレダが調理場に向かうのを、横目で見ていたコツン。
(あの香り、『コウノダケ』を見つけたんだろう。あまったら拝借して、街で売れば儲かるだろうね)
 計算高いコツンらしい考え。
 お金は幾らあっても困ることなんてない。
 いつか……学園から出る時に役立つ資金くらいは作りたい。
 面倒くさがりのコツンは、学園が面倒になれば、また旅に出るつもりなのだから。

「出来たよ。皆さんもどうぞ食べてください」
 クロードとレダが作ったのは、キノコとカジカの天ぷら、魚のムニエルバター醤油風、そして山で作った鍋。
 沢山採って来たので、宿屋に居る全員に行き渡るほどの量がある。
 この日、三人が泊まった宿屋は、『コウノダケ』パーティーが密かに開かれた。
 街人も、観光客も、幻の『コウノダケ』を食し、『旨い旨い』と、涙を流した者まで出たとか出ないとか。

 その後『コウノダケ』が食せる店と、この宿屋が有名になったのを、クロードたちは知らない。
 学生は学園に帰るものである。
 ――コツンは? 拝借出来たのか?
 それはコツンのにこやかな顔を見れば分かることである。



課題評価
課題経験:40
課題報酬:800
秋のアルマレス山を楽しもう
執筆:鞠りん GM


《秋のアルマレス山を楽しもう》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《新入生》 クロード・クイントス (No 1) 2019-10-03 09:53:00
うーん、キノコ探しかなぁ。

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 2) 2019-10-07 17:45:56
たまにはそうだな…。
魔物を狩ってこよう。