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鞠りん GM 

初めまして鞠りんと申します。GMは初体験なので、何事も初心者ですが宜しくお願いします。
普段は彩華鞠の名で、なろう様や、大人のケータイ官能小説様でダラダラと活動してます。日常やロマンスなどを得意としていますが、冒険や戦闘も好きです!
GMは初です。暫くは悪戦苦闘すると思いますが、慣れます、慣れてみせますとも。
適応力と何時まででも保つらしい集中力で乗り切ります。

担当NPC


《学園教師》ユリ・ネオネ
  Lv87 / Rank 1
5歳の頃に魔物に襲われて全焼した集落の生き残り。 救助に来た当時の学生に連れられて学園に入学する事となる。 当初は村人・従者専攻であったが、魔物に復讐を果たすため 黒幕・暗躍専攻にコース変更。長い年月をかけて卒業した。 現在は学園教師として、暗躍・黒幕専攻の授業を行いつつ、 当時家族や友人を奪った魔物の行方を追っている。 現在の学園においては彼女の詳細な過去を知るものは少なく、 笑顔でキツい授業内容を行うことから、大半の学生からは 鬼教師として知られている。 彼女自身、それを気にしている様子はない。 「ユリ・ネオネ」は仕事上の名前らしいが、 本名どころか、それが偽名であることを知っている人も少ない。

メッセージ


何本かプロローグを提出させて頂きました。皆さまのお目に止まれる事を願いつつ、次のプロローグを思案中。
精一杯奮闘させて頂きます!
今度は冒険ものがやりたいなぁ……

作品一覧


迷子騒ぎは大騒ぎ!? (ショート)
鞠りん GM
「どうしましょう、あの子が学生寮に戻って来ないの」  雄大なフトゥールム・スクエア内の学生寮レイアーニ・ノホナの一角で、寮の管理者の1人である【リシリア・ミゲル】はある不安に駆られていた。  その理由は学生の1人である【ミーシャ・チャリオット】が、夕方近くになっても、学生寮に帰って来ない為である。  ミーシャは4歳にして、このフトゥールム・スクエアに入学が許された子で、この歳で幾つもの魔法が扱える天才肌の持ち主なのだが、やはりまだ4歳という年齢か、すぐに色々な事に興味を示し、フラフラといなくなってしまう子供の面も持ち合わせている。  普段は同学年になる生徒の誰かが彼女の面倒を見てくれているのだが、今日は誰もミーシャに付いて行っていないと上級生達は言っていたので、リシリアの不安は増すばかり。 ● 「ああ、あなたたち少し手伝ってくれないかしら?」  リシリアは偶然談話室の近くを歩いていた新入生たちを見付け、ミーシャの捜索をお願いした。そんな小さな子が、この学園で迷子になっていると聞けば、新入生といえども手伝わない訳にはいかない。 「ミーシャはね本が大好きなの、だから図書館にいる事も多いし、食べ盛りになって来たので食堂も好きよ。それに購買を見て回る事も、後は意外でしょうけど体育準備室も好きなのよ。ああ、もしかしたら誰かが迎えに来てくれると思い、教室にいるかも知れないわ」  リシリアはミーシャが行きそうな場所を必死に考えてくれた。広い学園内でミーシャが行きそうな場所を教えてくれるのは非常にありがたい、その場所に絞って捜索をすることが出来るのだから。 ●  リシリアは新入生たちに場所を教える為に、一度自分の部屋に戻り、話した場所に記しを付けた地図を持って来て新入生に手渡した。 「でも門限には気をつけて、破れば……分かっているわね?」  フトゥールム・スクエアは夜遅くの行動は禁止されている。そして門限を過ぎれば寮母さんたちのキツいお説教が待ち構えてもいる。  お説教だけは勘弁して欲しいのは、上級生も新入生も皆同じであり、誰もが寮母さんたちが面倒くさいと知っているせいだ。  寮内で永遠と続くお説教は、フトゥールム・スクエア内で新入生でもすぐに聞くほどの有名話。  この面倒くささを嫌がり、学生はほとんど門限を破らないのが暗黙の了解だったりする……一部で逞しい学生たちが、肝試しなどしているらしいが。 ●  リシリアは手伝ってくれる新入生たちを連れ、寮の表門に向かいながら話す。 「今日のミーシャは、フトゥールム・パレスでの共同授業だったと上級生さんが言っていたわ」  それを聞き、新入生たちは軽く絶句してしまう。  第一校舎であるフトゥールム・パレスは、高さ30階、地下40階からなる、フトゥールム・スクエアの中心的な建物で、お城か要塞かと言われるほどの巨大建造物。  その中から子供を1人探すのは至難の技なのだが、リシリアはミーシャが今日使用した教室を知っており、その場所にいる可能性だってある。 「でもミーシャですもの、簡単に違う場所には行かないと私は思うの。あれで人見知りなのよミーシャは……ミーシャから見える周りは全て歳上のせい、4歳だもの当たり前の反応よ」  それは……と、今度は口を濁す新入生たち、4歳の子供から見れば10歳の学生でも大人に見える。もしかしたらミーシャと同じ年頃の学生がいるかも知れないが、ミーシャの周りにはいないらしい。  だから人見知り、でも好奇心は旺盛なミーシャ。リシリアからの話を総合すれば、ミーシャは違う場所には行かないと考え、新入生たちはリシリアが言う5ヵ所の捜索を行う事にした。  ただ1つ問題もある。集団で探すか1人1人に別れて探すか、時間内に広大なフトゥールム・パレスを探すには、どちらを選択すれば良いだろうか? ●  表門に着き、新入生たちを心配そうに送り出すリシリア。ミーシャも新入生もリシリアに取れば大切な寮生であり、どちらも無事に帰って来て欲しいのがリシリアの思い。 「お願いよ、必ず見つけてあげて。1人ぽっちでミーシャが泣いているかも知れないから」  夕方になりかけた今の時間から、門限までにリシリアから教えて貰った場所を探してミーシャを見つけ寮に連れて来る事。それがリシリアからのお願い。  ――あなたはどこから捜索しますか?
参加人数
5 / 8 名
公開 2019-08-28
完成 2019-09-13
ほのぼのしたティータイムをどうぞ (ショート)
鞠りん GM
 雄大なフトゥールム・スクエアには、敷地内に様々な施設が存在します。  その中の1つである超大型商店『クイドクアム』の一角にある喫茶店で、【ユリウス・シーエンス】と【キャロライン・セイント】は、放課後に決まってティータイムをするのが大のお気に入りです。  ほら、今日も窓際の席に座り、二人はティータイムをしながらお喋りに夢中のようですよ。 「……それでねユリウス、せっかく新入生が入学して来たのだし、恒例のあれをやらない?」 「相変わらずだなキャロラインは。僕は構わないが、新入生全員は無理だぞ?」 「分かっているわよ、そんな大きい事はしないから。ただこの喫茶店に入る人数程度は集まって欲しいかな?」  お世辞にも、大人数が入れるような広さとは無縁の小さな喫茶店で、こだわり派のマスターの影響か、提供されるのは飲み物と、トーストだけというシンプル過ぎる軽食のみ。  それでもマスターの淹れる珈琲や紅茶は絶品なので、ユリウスもキャロラインも毎日通いつめていたりします。 「開くなら、この喫茶店よね」 「でも食べ物はどうするんだ? トーストだけじゃつまらないだろキャロライン?」 「そうねぇ……。マスター、持ち込みは大丈夫かしら?」  キャロラインがお願いの瞳でマスターを見つめると、マスターは渋々ながら頷いてくれた。  これで、この場所を使って新入生とティータイムが出来ると、喜ぶキャロライン。それを見てユリウスはお人好しと呆れるばかり。  でも断り切れず付き合うのがユリウスの良いところだったりもします。 「新入生だって、友好と出逢いの場所くらい欲しいと思わない?」 「……それって。まぁいいけど」 「新しい友! 新しい恋! あ、もう居たりして」 「それはいいんじゃないか。同じ学生なんだ、そんなこともあるだろう?」  全員が寮生活です。  男女別々の寮でも、授業や共有スペースがあるのだから、少なからず出逢いはあるものです。 「ちょっとだけのお手伝いもかねて……ね、ユリウス?」 「……お人好し」  とうとう口に出して言ってしまったユリウスに……キャロラインは、あぁ少しだけ怒っているようですよ。 「と、とにかく、寮に帰ったら、参加したい新入生は各自お菓子を持参で集まってと書いて貼り紙を貼るわ」 「参加希望者はキャロラインのところまでが抜けてる……」 「もちろん書くわよ。それに突っ込みを入れないでよねユリウス」 「はいはい」 「それでね、沢山集まったら私たちどうしょう?」 「どうって……僕たちは普通だろ。僕とキャロラインの仲なんだ」 「ユ、ユリウス! ここ喫茶店の中!」 「あ、ごめん」  照れ隠しのように、真っ赤になりながらも叫ぶキャロラインと、素直にあやまるユリウス。  それを見て、マスターは『知っているよ』と笑っています。  どうやらこの二人も付き合っているようですね。  そしてキャロラインは寮に帰ってから、談話室にこんな貼り紙を出してしまいます。  『新入生の皆さん、私と一緒にティータイムをしませんか?  新入生の皆さんの、楽しい放課後のひとときになればと思います。  場所はクイドクアム内にある喫茶店です。あまり広くはない場所なので、入れる人数に制限がありますから、先着順になってしまいます。  なお、来る時は、それぞれ好きなお菓子を持参して下さい、みんなで分け合って食べましょう。  飲み物はマスターの美味しい珈琲か紅茶を用意してくれますので、一緒に飲みましょうね。新入生の皆さんの参加を心からお待ちしています。  参加希望者は私、キャロライン・セイントまで直接来て下さい』  最後の一文は、ユリウスに言われた通り、取って付けたような書き方のキャロライン。  そして一緒に企画するユリウスの存在すら忘れたような、こんな貼り紙を出してしまいます。 (ティータイム当日に、急に僕が入ってもビックリしないよな?)  これでも真剣なんだから、多少のドジは見逃してやって欲しいと、キャロラインの貼り紙を見たユリウスは、当日の僕はどうしようと頭を抱えしまったようです。  さあ上級生からのティータイムのお誘いです。  新入生の皆さん、このティータイムに参加しませんか?
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-09-15
完成 2019-10-02
このホウキは誰のホウキ? (ショート)
鞠りん GM
●  広い広いフトゥールム・スクエア学園内には、通常の授業やクラブ活動まで行う校舎が、第二校舎から第九校舎まであります。  その数ある校舎の中の1つに併設されたグラウンドの中心に、放課後を楽しもうとしていた生徒たちが沢山集まっていました。  それは何故かと言われましたら、 理由はブラシの部分を下にし、立った状態で少しだけ浮遊している、不思議な1本のホウキの為です。  見るからに長い年月を過ごして来たと思われる、年期が入った渋い色をした、かしの木の棒と、それに似合わないような真新しい藁(わら)で出来ているブラシで出来たホウキです。  間違いなく誰かが使って飛んでいる、そうと思えば日々ホウキを使う学生たちは、いてもたってもいられません。 ●  ホウキという物は、魔法を使う者たちにとってみれば一般的な物で、フトゥールム・スクエアでも、学生たちはホウキ乗り場から自由に借りて使う事が出来ます。  とはいえ、ホウキに乗るには魔力が必要で、ホウキ乗り場からホウキ乗り場までの距離を飛ぶのが普通ですので、借りられるホウキも街の職人が作った、なんの変哲もないホウキがほとんどです。  それなのに目の前にあるのは、かしの木で出来た特別製のホウキなのだから、学生たちだって、めったに見れない豪華なホウキに色めき立つのは当たり前でしょう? 「よしよし、良い子にしてろよ、俺が乗りこなしてやるからな」  そんな事を言って、輪の中からホウキに手を掛けたのは、偶々通り掛かった上級生の1人……なのですが……。 「なんだこりゃ!?」  かしの木の部分を掴み、普段通りにホウキを持とうとしても、ホウキはびくとも動きません。  自分の方に棒を引っ張っても、浮遊しているのだからと棒を持ち上げようとしても、まるで石かと思えるほどに、ホウキは動く事を良しとしてくれません。  ムキになる上級生を見て新入生も苦笑いで対応はしますが、上級生がダメだったら自分たちもダメじゃん、そんな雰囲気がグラウンド内に漂います。 ● 「おい、あれはヤバいだろう」 「ああ毎年恒例のあれか? そうすれば俺たち上級生が関わるのは不味いって」 「知ってるのは毎年現場に居合わせた学生のみ。そして後から教えられるんだよ、あのホウキは学園長の物だと」 「しかも毎年違うホウキなんだよなぁ、学園長って幾つホウキを持っているんだ?」  囲みの後ろ側でコソコソと話すのは、この被害にあった事がある上級生たちです。  そうこれは学園長が毎年新入生に与える些細な悪戯という、はた迷惑な小さな恒例行事だという事に気付いたようです。  慌ててムキになる上級生を止めて、新入生に聞こえないように状況を説明し、少々強引ですがホウキから離すのには成功しました。  そこまでは良かったのですが、このホウキの意図を悟られる事なく、新入生だけを残して立ち去るにはどうすれば良いでしょう? ●  上級生たちはグラウンドの隅に移動して考えます。 「お前が手を掛けたんだから審判をやれよ」 「はぁ!? どんなからくりかも分からないのに審判なんか出来るか!」 「学園長のホウキなんだ、乗って飛ぶ事なんて出来ないさ。だからホウキが動けば良い……だろ?」  学園長のホウキです、学生たちでは魔力が足りなさ過ぎて扱える代物じゃないのは、上級生は身を持って体験済みの話です。  毎年こうして置いていますが、誰1人乗って飛んだという話も聞きませんから。そして学内至るところに悪戯を仕掛けているのもお馴染みなんです。 「というか、お前は感じないか? ホウキから風の力を」 「風??」  上級生の1人の言葉に、隅に集まった全員がホウキの魔力と捉えて見てみれば、確かに風の力を……それも妖精らしき気配を感じます。 「なあ、最近学園長が風の妖精を集めて遊んでいなかったか?」 「あー! 俺もそれは見た。ということは、ホウキを押さえているのは風の妖精なのか」 「分からん。学園長のことだ、違う仕掛けも用意しているとは思う」  上級生たちが、このホウキの問題を解決するわけにもいかず、推測だけがこの場を支配していきます。 「俺の予想だが、妖精は4~5匹といったところ」 「だから押しても引いても動かないんだ」 「ああ、妖精をなんとかするか、妖精の居ない場所を狙うか。……内緒だぞ」  これを言ってしまえば、こちらに被害が出てしまう。  だから黙って審判をやらざる負えない。上級生たちだって辛いんです。 「審判がいなければ……」 「ああ、悪戯は俺たちに来るからなぁ」  そして上級生が新入生の審判をする、これもいつもの事で、何処からかは分りませんが、学園長がしっかり見ている事も知っています。  強制では無いですよ? ですが無視をすると……学園長の悪戯が自分たちに降りかかる、上級生が嫌なのはこの一点。誰だって学園長の悪戯は勘弁して欲しいのです。 ● 「今年はオレが犠牲かよぉー!!」  話し合う中で1人項垂れるのは、先程ホウキに手を掛けてしまった【ウォルター・ビートン】です。彼は知っていたのに手を出してしましたという理由で、上級生たちから学園長の悪戯の審判を押し付けられてしまいました。  こうなれば後には引けません。ウォルターは仕方なく、まだ騒いでいる新入生の輪の中に入って行きます。その間に上級生たちはグランドの外に避難してしまいました。  残されたウォルターは覚悟を決めて新入生たちに話し出します。 「俺は分かったぞ! そこでだ、この謎解きを新入生にも体験して貰おうと思う!!」 (嘘も方便ってな。しかし本当に動くのかこのホウキ?)  ウォルター自身も一抹の不安を抱えながら、ホウキの棒を掴み、声高々と新入生たちに宣言しました。  本当に分かったのか? 新入生たちは怪しいと思いながらも、謎解きと言われて更に好奇心が湧きます。  自分がホウキを動かして、この上級生をギャフンと言わせてやるんだ! こんな時の心理は皆さん同じのようで、新入生たちは次々とホウキを動かす方法を考えていきます。  さあ貴方はこの謎解きをどう解明しますか?
参加人数
2 / 8 名
公開 2019-05-17
完成 2019-05-29
星降る夜に愛を語ろう (ショート)
鞠りん GM
●  そこは学園内にある湖『スペル湖』の畔。星降る夜にある男子学生が、同じく学生の彼女を学園から連れ出し、この場所まで来ました。  彼は彼女に向かい、自分の想いを切り出します。 「君が好きだ、付き合って欲しい。出来れば一生僕と一緒に居てくれれば、きっと素敵な人生になると思うんだ」  連れ出した彼氏の懸命な告白に、彼女は彼を見て答えを返します。 「はい……はいっ! 私で良ければ喜んで!」 「やったぁー! 星降る日の願いが本当に叶った。ずっと大切にするよ君を、だから一生僕を見ていて欲しい」 「私と貴方の約束ね」 「約束だ、この星降る大空に誓う」  震える手で彼女に触れて、見つめ合い誓いのキスを交わす。それを見ているのは、沢山の星が降る空だけでした。 ● 「……という噂なんだけど、みんな知っている?」  昼休みの教室で、この話を熱く語るのは、新入生である【シャロン・シーリー】というヒューマンの女性です。  彼女の話を要約すると、まずは星降る日の夜に、何人でも良いのでスペル湖で愛について語り合うと、後々愛しい人が出来て告白されるという噂話のようですね。 「噂でしょう?」 「信じてるのシャロン?」  それを聞いていた教室の仲間たちは半信半疑です。噂話だけで、実際はあり得ないのではないか? そんな雰囲気が教室中に漂います。 「本当に付き合い出した上級生が居たって聞いたもん! 彼氏が愛を語り合った後に彼女と出逢い、願いを込めて同じ星降る日の夜に告白したって!」  シャロンは必死に訴えたけど、仲間たちは少し違うよう。 「聞いただけじゃぁーね、真実はなんとやらと言うよ?」 「そこまで言うんだったら、実際にやってみようよシャロン。そうすれば噂か本当か分かるんじゃない?」 「実際に……ああー! 星降る日って後数日じゃないのー!?」  仲間に実際にと言われて、シャロンは数日後に迫った星降る日を思い出します。  星降る日は珍しいものではありません、月に数回程度あるのです。今回は偶々シャロンが早めに気付いただけ。  それを口に出した途端に次の授業の時間になってしまい、話は一旦そこまでになりました。 ●  時間は放課後に変わり、シャロンと彼女の話に興味を持った仲間だけが教室に残りました。 「語り合うはいいけど、夜に寮を抜け出すの? 夜は外出禁止じゃない、怒られたいのシャロン?」 「うっ……。分かってる、分かってるわよ! でも密かに外出している先輩だっているじゃない。私たちが抜け出しても良いんじゃないのかな」  確かにシャロンの言う通り、夜に寮を抜け出している上級生はいます。勿論後で寮母さんに見付かり、しっかりと怒られてもいますが。  しかしシャロンはそれに目を付けて、一緒に寮を抜け出そうと促しているわけです。 「でもスペル湖までは遠いでしょう」 「夜に箒やグリフォン便は使えるかな?」  確かに夜ともなると、街の人が学生たちにレンタル箒を貸してくれたり、グリフォン便に乗せてくれるかは怪しいかぎりです。 「うっ……。や、やれば出来るんじゃない?」 「シャロン、やればと簡単に言うけど、そしてもし夕方に箒を借りたとしても、スペル湖までは遠くて一気には飛べないのよ」  フトゥールム・スクエアから直結している居住区『レゼント』までは歩いては行けます。  ですがスペル湖となると、箒に乗っても休憩を挟み、魔力回復しなければ飛べない距離なのです。 「箒だったら、夕方のうちに借りてしまうことも出来るよ、でも凄く効率が悪いよね? ねぇみんな、他に手はないかな?」  仲間の意見を聞きながらも、見つからない安全策を選ぶのだったら、箒が一番いいと思うシャロン。  ――でもと、シャロンは考えます。  リスクのある箒よりも、街でグリフォン便に乗ることが出来れば、すんなりとスペル湖に着けるのではないかと。 「ねぇ、グリフォン便に乗ったほうがいいと思わない?」 「だから学生の私たちでは、街で乗せてはくれないわよシャロン」 「そうそう、学園の制服は目立つから」  制服が目立つ? じゃあ私服は?  私服だったら、街の人と同じく扱ってくれるのではないのでしょうか。  そう閃き、シャロンは今考えた脱走方法を仲間に提案してみることにしました。 「寮からレゼントまでは箒か歩くかして、街でグリフォン便に乗ろうよ!」 「何度も言うけど乗れないでしょう」 「乗れる手はあるわ。レゼントに着いてから、私たちが私服に着替えればいいのよ」  普通の街人としてスペル湖行きのグリフォン便に乗り、帰りも同じ方法をとれば学園内に戻れる。  ――なんて素敵な考えなのでしょう!  残る問題は、寮母さんの目を盗んで学園の外に出ること。  でもそれは大丈夫、上級生が教えてくれます。だって、いつもやっていることだもの。 「もしものために、箒は確保しようねシャロン?」 「ついでにお説教の覚悟も必要だよね……嫌だけど」 「うっ……。お説教より、みんなで愛を語るのよー!」  シャロンも寮母さんのお説教は苦手ですが、噂の興味のほうが勝り、みんなと夜に抜け出す約束をしました。  あなたたちは寮を抜け出し、最速な移動手段を確保して、無事スペル湖に辿り着けるのでしょうか。  そしてスペル湖で、どのような愛の理想を語り合いますか。
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-08-07
完成 2019-08-24
新入生の切実な願いコンテスト!? (ショート)
鞠りん GM
●  フトゥールム・スクエア学園で、毎年の恒例行事……というか、一部の学生たちに人気の催しがある。  それは新入生限定のコンテスト。  実行委員の上級生たちは、今年も大々的に開こうと画策中で、先生たちから許可を取り、放課後のファンタ・ブルーム大講堂を借りきった。  ファンタ・ブルーム大講堂は、学園の中心部にある5万人ほど収用出来る巨大講堂で、学園行事からクラブ活動まで、様々な事に利用されている。 「やっぱり今年もあれか?」 「年々多くなるよな告白の叫び」 「彼氏彼女が欲しい叫びも増えてるだろ」  実行委員たちが言うように、初めは男女どちらでも容姿や歌をアピールする新入生が多かったのだが、いつの頃からかお笑いから、果てには好きな子に告白する新入生が増えていき、今ではこのコンテストの事は『新入生の切実な願いコンテスト』と、影で呼ばれている始末。  まあ、上級生も手の届かない容姿端麗の男女新入生を見るよりも、おどおどしながら告白をする方が面白味があり、それに強烈なヤジを飛ばすのも恒例になりつつあるのが学生らしい。 「去年も面白かったよな、『マッハで彼女が欲しいー!!』って叫んだやつ、あの後ヤジはあったが、本当に彼女が出来たらしいぞ?」 「コンテストで叫べば願いが叶うなんて、変な噂が出たからだ」 「実際に高確率でカップリングが出来ているだろ、あながち噂だけじゃないのさ」  フトゥールム・スクエアで愛を叫ぶですよ。それだけ新入生も本気モード全開で挑んで来ますから。勿論コンテストの本来の目的であるプロポーション自慢や歌自慢も少ないわけでもなく、今は『お題は自由』という方針で、実行委員たちは計画を立ててはいる。  でも恋ネタが一番最後まで残りやすいのは確か。理由的には面白いから、これに限るでしょう。実行委員たちも盛り上がりを狙っているので、予選で恋ネタを優先的に通過させ、コンテストを盛大にしようという意図が丸分かりだが、これはこれでいいような風潮もあったりする。  自由なフトゥールム・スクエアらしいイベントである。 ● 「受付はこっちだ! まずは発表する内容を、この紙に書いて欲しい。人数が多い場合は抽選式で選ぶからなー!」  コンテスト前日、クラブ棟で受付を開始した実行委員たち。今年も沢山のエントリーがあり、例に漏れず愛を叫ぶ内容も多数。 「予想通りだな」 「さて、これから何人選ぶべきか」  机の上に広がった、内容を記した紙は30枚ほど。大講堂の借り受け時間を考えれば、10人以下に落とさなければならない。 「叫び系は……ああ、あるある。だがな、他のも多少入れなければ不公平になるだろ」  コンテストで全員が愛を叫ぶのは、あまりにも不自然と、普通の内容も入れる予定の実行委員たち。 「……よし、これで本決まりだ。最終まで残った新入生に、明日の段取りの説明は手分けした方がいいだろう」  決まれば早いと、早速動き出した。  そして、実行委員がやって来たのは、あなたのもと。 「最後まで残ったぞ。明日の放課後に大行動に来てくれ、その頃には舞台は出来上がっている」  あなたが『分かりました』と、声をかける暇もなく、次があるからと、実行委員はさっさと行ってしまった。  次の日の放課後。言われた通りに大講堂に来たあなた。でもそこには観客と称した上級生が多数大講堂内に集まり、コンテストが始まるのを、今か今かと待ち構えている。  こんな中でやるのかと、愕然とするあなただが、出ると言った以上やらないと、実行委員たちの目が怖い。  ……そしてあなたは舞台の上に立つ。  自分が書いたコンテスト内容をお披露目する為に。  ――ええぃ! 後はどうにでもなれー!!
参加人数
2 / 8 名
公開 2019-07-25
完成 2019-08-10
オミノ・ヴルカで宝探し (ショート)
鞠りん GM
●  今日の授業は【スケール・レイフ】先生の鉱物学……なのだが、話は少々違うよう。 「――であるからして、オミノ・ヴルカ火山で活動する場合は、ワイバーンの襲撃に備え、灼熱を治す薬草作りが必要不可欠。これから薬草の作り方を教えよう」  なぜ、こんな話になったかと言うと。  オミノ・ヴルカ火山に住む、『フレイム・ゴート(火山羊)』が、年に1度だけ落とすフレイムホーン(角)を採取するという、課外授業の話から始まった。  フレイム・ゴート自体は怖い動物ではない。だが名前の通り火属性で、体が炎で被われているのが厄介と言ったらいいのか。  だからこそ、生え代わりの為に抜ける角を狙って、フレイムホーンが冷えてから採取するのが一般的である。 「オミノ・ヴルカ火山に到着する前に僅かながら草原があり、そこで必要な薬草を調達し、すり潰して灼熱でやけど状態になった場所に塗る」  スケールの説明の最中、学生の1人が手を上げて質問する。 「先生ー  どんな場所にでも効果があるんですかぁ?」 「ああ、ワイバーン程度の灼熱ならば、どの種族、どの場所に塗っても、冷却効果を発揮し数分絶たずに、やけどの痛みは消えるだろう。便利なものだろう? 火山に入る前に、必ず作っておくように、以上!」 (必要なことは教えたが、ワイバーンに遭遇するのは確率論。遭遇しないことを祈ろう)  授業は終わりと、スケールは教室を出はしたが、明日から始まるオミノ・ヴルカでの課外授業が気がかりでならない。  毎年この課外授業を出し、数名は怪我をして帰って来る。それはワイバーンの灼熱だけではなく、まだ冷めてもいないフレイムホーンに触れてしまった為も多い。  だからこそ、鉱物学とは関係のない、やけど用の薬草の作り方を毎年教えているのだが、今年は怪我なく帰って来るのだろうか? それを心配するスケールであった。 ●  次の日は、朝早くからグリフォン便に乗ってトルミンまで行き、そこからオミノ・ヴルカ火山手前まではホウキで移動。  スケールに言われた、火山手前の小さな草原から、君たちの冒険は始まるのだ。  スケールは『事前に薬草』と言ったが、腕に覚えのある学生は、薬草など作らずに、そのままオミノ・ヴルカへと足を踏み入れ。慎重な学生は、薬草の他にも道具を作り、オミノ・ヴルカへと入ってゆく。  君たちはどちらを選択する?  ワイバーンを警戒しながらも、フレイムホーンを探す学生たち。  フレイム・ゴートは、そこまで繁殖をしている動物ではない。オミノ・ヴルカの過酷な自然の中で、生存競争に生き残らなければならないからだ。  結果、この地域で確認されている数は100~200匹ほど。  更にフレイムホーンは雄しか生えず、ある程度の時期はあるものの、いつ抜け落ちるかも分からないので、学生たちは山を歩きながら探すしか手はない。  もし見つけても、すぐに触ろうとはせず、少しだけ手を近づけ、熱いか冷めているかを確認し、冷めていれば採取成功……と、ここまではいい。  問題なのはワイバーンだ。  古龍属の特性を真似て作られた魔物で、空を飛びながら獲物を探す。  もし見つかれば、急降下をして襲って来るだろう。ワイバーンは交戦好きな生物だから。 「あ、あああー!?」  そんな話をしていれば、早速ワイバーンの急襲を受けた学生の悲鳴が聞こえて来た。  君たちは大丈夫なのか?  ワイバーンは沢山いるぞ。  無事生還することに期待する。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-07-02
完成 2019-07-17
翼の杖ケリュケイオン (ショート)
鞠りん GM
●  本日も快晴! フトゥールム・スクエアは平和なり! ……と、思ったら、少し様子が違うよう。  放課後になる夕方、1人の街人が学園の門を叩いた。 「……依頼ですか?」 「はい。『トロメイア』、百神殿街から来ました。私たちではダメなんです。どうか、どうか、勇者様を……お力をお貸し下さい!」  その必死な形相に、学園の事務員は彼を応接室に通すことに決めた。 「では、お話をお聞かせくださいませんか?」 「は、はい」  彼はフェアリータイプのエリアル【スペンサー・フロックハート】という名前で、『トロメイア』にある百神殿街で観光業を営んでいるようだ。  百神殿街とは、街の東側に広がる遺跡群のことで、アルマレス山に集うという百の聖霊それぞれを祭った神殿が集められている、古代より続く落ち着いた雰囲気を感じられる地域のこと。 「――ほとんどの神殿や神殿跡は、その大部分が調査を終了しており、施設として使用されております」  神殿とは言うものの、神官などはおらず建物だけが残っていたり、スペンサーのような商人が買い取り、観光地化をしているところも多いのが、今の百神殿街の現実である。 「ですが最近、未だ調査中であった神殿の一つに、地下空間の存在が発見されたのです」  調査隊が発見した地下空間に、街も百神殿街に残る神官たちも色めいたが、現実問題として誰が地下空間を捜索するかは揉めたのだと言う。  最終的には神官たちに押し切られ、街の方で調査を行う事になった。 「街を代表して、私たちが中に入りました。地下は迷路で迷うこともあり、何日もかけて漸く最奧まで辿り着きはしました」  ですが……と、スペンサーは続ける。  最奧まで行き着いたが、部屋の前の両脇には石のゴーレムが守っていて、部屋に入ろうとすれば動き出し攻撃するというのだ。 「ゴーレム?」 「ええゴーレムです。人と同じ形をしていますが、高さは私の倍近くあり、1歩でも近づくものなら、動き出し石の腕を振り下ろして来ますので、私たちでは手に負えません」  スペンサーに対応している学園の事務員は思う。古代に作られた神殿のゴーレムが、今も動くものなのかと。 「新しく置かれた可能性はありませんか?」 「それはあり得ません。あの神殿跡は、最近まで半分土に埋もれていましたから。そして古い噂があります」 「噂……ですか。あらゆる知識がある、このフトゥールム・スクエアでも、百神殿街にまつわる噂は少ない」  古すぎて埋もれてしまった記憶は、フトゥールム・スクエアをもってしても、なかなか事実関係の裏は取れないもの。  それなのに、街に伝わる噂があったのかと、事務員も少しだけ驚いている。 「――『百の神殿のどこかに、当時の権力者が使用していた杖、ケリュケイオンが眠っている』。今までの発掘調査では杖は見つかっていません。もしかしたら、ゴーレムが守っている部屋の向こうにあるのではないか。そう私たちは考えています」  ケリュケイオンとは、古代の魔法の杖の1つで、杖の頭部には翼が飾られ、柄には二匹の蛇が逆方向に巻き付いているという噂だけある品なのは、学園の書物で判明はしている。  ただし今まで誰も見たことはないが。  それを別の部屋で聞き耳を立てて聞いていた学園長こと【メメ・メルル】は、『欲しい、欲しい、その杖が欲しいー!』と大騒ぎ!?  ついには勇者活動として、百の神殿の調査を学園長権限で断行してしまった。  周りの先生たちは『またか』とは思うものの、学園長の決定には逆らえず……。  そこで勇者活動と課外授業を兼ねて、あなたたちをトロメイアへと出すことに決めた。 ●  トロメイアは、西側の商業地域であるオクトー広場と、街の東側になる百神殿街で構成されている。  あなたたちは、まずオクトー広場で探索の下準備を整えた後、案内役をかって出たスペンサーと共に、まずは一緒に神殿地下に入った街のメンバーに会うことにした。 「俺は覚えている。あの迷路は『右・左・左・右』に行けばいいんだ」  だが、隣にいた他のメンバーが言う。 「お前はゴーレムに驚き、闇雲に逃げただろ。そんな奴の言うことなんか信じられるか!」 「だが行くときは冷静だった!」 「なんだとぉ!」  あわやケンカになるところを、慌て仲裁に入った、あなたたちですが、彼の言った『右・左・左・右』が本当に合っているのかは怪しい限りとは思う。 「意外に逆じゃないのか? 必死だった時の方が記憶に残るからな」  最後の1人が呑気なことを言う。  さて、どれを信じていいのか……これは困った。  困りながらもスペンサーの案内で、目的の百の神殿跡に来たあなたたち。  これから迷路を走破し、ゴーレムを倒して、最奧の部屋に本当はな何があるのか確かめなければならない。  期待と不安を抱え、あなたたちは地下への一歩を踏み出した。
参加人数
6 / 8 名
公開 2019-12-09
完成 2019-12-27
お花見DEバトルロイヤル (ショート)
鞠りん GM
●  桜も満開になりそうなほどの、春うららかなフトゥームル・スクエア学園の広大な校舎内。  その日、学園の学生たちに、耳よりな情報が入って来た。  情報酒場スタリウムが、今年も大々的にお花見をやるらしい。  ――待ちに待っていた、お花見シーズン到来!  我がスタリウムも今年も参加だぞ?  今年のテーマは、その名も!!  『川の上の小さなおうちでお花見ちまちょ☆』だ。  スタリウムお手製の、梅と桜のお酒付き。  更に、更に、舟の甲板には『こたつ』を完備!  まだ少し寒い川の流れに身をまかせ、各自持ち寄った料理をつまみながら、名酒「梅の心」と「桜の力」で、1杯やろうじゃないか!  なお、川流しは昼夜1回ずつ、10隻運航、各10名定員になる。以上。 ――情報酒場スタリウム 「よっしゃぁぁぁぁー!! 来た、来た、来た、来たぁー! 今年も待ってたぜスタリウム。これは絶対に行かねばならん!」  この話を聞いた上級生は、すでに行く気はマンマンの状態。人目をはばからず酒が飲めるチャンスを、みすみす逃す上級生でもないらしい。  こんなイベントが行われる時は、学園もうるさくは言わないだろう。なにせ酒が付いているのだから。 「俺は夜に行きたい」  周りで聞いていたルネサンスの上級生も、もふもふの耳をピクリと動かし、少々小さめで、もふっもふの尻尾がパタパタと振り回すように動いていて、このお花見に期待を込めているのが、よく分かる。 「私は昼のリリー・ミーツ・ローズの桜並木を、川から見たいわ」  昼の運航で見られる、リリー・ミーツ・ローズの満開の桜並木を見ながら、ゆったりと料理とお酒を楽しむのか。  それとも、夜運航での酒の酌み交わしを楽しむのか。これが一番の悩みどころ。  だがもう1つの問題もある。 「今年もあるんだろ、あの場所取り争いが」  そう、お花見うんぬんの前に、毎年熾烈を極める場所取り争い。  舟は10隻、各10名定員、すなわちお花見舟に乗れる人数は100名。これはスタリウム式なのか、入れるかどうかは早い者勝ち……なのだが。 「あれはズルいわ。私たちフトゥールム・スクエアの学生は別ルートなんですもの」  レゼントに住む街人と学生とでは、初めから5キロ以上の差があり、街人は障害物だけのルートを走破すればよいが、学生は障害物の他に、魔法トラップもあるルートを走破しなければならないという決まりがある。 「だけどな、持ち武器や魔法が使える俺たちと、なにも持たないレゼントの街人が一緒に争えば、勝敗なんて丸わかり。 「だからこそのハンデなんだろ。そりゃ仕方がないさ」 「ほんの一部だけど、僕たちと街人が交差する場所はあるんだから、公平だと思うけどなあ」 ルートの中に数ヵ所は、街人ルートと学生ルートが交差する場所があり、ケガさえさせなければ、なにをしても良いというのが毎年のルール。  街人と言っても、冒険者なども含まれているのだから、公平と言われれば公平だと、街人も学生も思ってはいる。 「桜バトルロイヤルか、去年は知らん街人をジャンプで飛び越えた」 「ホウキは使用禁止ですもの。飛び越えるとか、すり抜けるみたいな技しか使いようがないのよね」 「攻撃魔法を使いケガをさせてしまえば即失格。毎年何人もの学生が失格しているんだよ。僕も危なかったけど」  攻撃魔法自体は使用禁止とは言われていない。でも、それにより街人や学生にケガをさせれば、その場で捕まり失格退場。学園もしっかりと見張っているというわけ。 「障害物は自力走破だが、交差する場所に街人が大量に魔法トラップを仕掛けるのがな」 「あれは絶対に魔法符よね。学園もグルなんだから」  確かに街人に配られている魔法符は、学園がスタリウムへ提供している物。しかも、街人は引っかからないように防御符まで渡している念の入れよう。 「俺は『危険回避』でかわしたけどな」 「僕は石をばらまいて発動させてから、安全な道を通ったけど」  上級生たちも、このトラップ回避が最大の悩み。ケガをさせることなく、自分の能力だけでくぐり抜けなければならないのだから。 「バトルロイヤルがメインなんだか、お花見がメインなんだか……ね?」  呆れるルネサンスの学生に、他の学生はただ笑うだけ。 「どちらも……でしょう? だってレゼント総出のお祭りみたいなものだもの。  そのご褒美が、舟でのお花見とお酒と思えばいいのよ。私は参加するわ、今年も負けないんだから」  それに頷く学生は多い。  この障害物競争じみたバトルロイヤルを勝ち抜いて、優雅に川からのお花見がしたい。その気持ちはみな同じなわけだ。  このおバカのようなイベント名とはうらはらのバトルなお花見は、あなたたちは初参加になるが、一風変わったお花見には興味を示したよう。  学生寮で当日の料理を考えながらも、同時に己の武器や魔法を確認しだした。
参加人数
5 / 8 名
公開 2019-03-19
完成 2019-04-03
【夏コレ!】海だ! 川だ! 魔物だぁー!? (ショート)
鞠りん GM
●  観光と漁業の街『アルチェ』。  夏になると、海水浴などが目的で、アルチェの『サビア・ビーチ』は多くの人で賑わい騒がしくなるのが、この辺りの人々の楽しみになっているよう。  そんな夏の日差しに当てられたアルチェを抜け、少し離れた場所に『エスト川』という川があり、アルチェから上流へ向かえば向かうほど、その水量が増し流れは激しくなる。 「……この辺りで良いかしら?」  エスト川の下流近くで、穏やかな川の流れを眺めているのは、フトゥールム・スクエアの教師【ユリ・ネオネ】だったりするのだが。  でも、どうして彼女がここに?  それは、夏のイベントを、更に盛り上げるために決まっているでしょう! 「ああ居たわ。水と言ったらこれよねぇ」  ユリが見つけたのは、一匹の見た目が美人な……魔物なのか!? 「ふふふ、これでもっと楽しめるわよ」  見つけた魔物に、少しだけ細工をし、ユリは学生たちが居るアルチェへと戻る道を辿る。  ――一体何をしたんだ、ユリ先生!!  一方、学生たちはというと、新入生にとれば入学初めての夏、しかも観光地アルチェということで、みんな期待と解放感に、ビーチで泳ぐだの、露店で食べ歩きをするだの大はしゃぎ。  普段は真面目に授業に取り組んでいる学生だって、海に来れば騒ぎたくもなるでしょう?  水着に着替えビーチに……。ほとんどの学生が、そう行動しようとしていた、そんな中。 「貴方たち、海も良いけれど、川で急流下りを楽しまない? 勿論私が引率してあげるわよ」  学生たちの前に現れたのは、レースの目隠しはそのままに、黒のワンピースタイプの水着と王道なのだが、胸の部分が紐状に縛られていて、その大きな膨らみを存分に誇張されているユリ先生が、腰に手を当てて佇んでいるではないか。  男子学生は『うおぉぉー!』と驚き、女子学生は、そんな男子たちを白い目で見る……のは、いつもの光景なのだから、目も当てられない。  一つ残念なのは、腰から下は膝丈ほどの紫のビスチェで見えないという点。  でも、上だけ……特に胸でも見られただけでも、海に来たかいがあるってものだと、男子たちは思っているらしい。  ――青春だねぇ。 「それで? 私が用意した、急流下りに行く生徒は?」 「ユリ先生、急流下りということはボートですよね。危険ではないんですか?」  質問した学生の意見はごもっとも。  一般的にボートといえば木製。それで急流と言うほどの川に出れば、途中に激しい水流や岩などが想定出来、下手をすればボートは木っ端微塵に……なるかも知れない。 「その心配は少ないわ、事前にボートには風の魔法をかけてあるもの。貴方たちが協力して岩を回避すれば、多少岩に当たっても風のクッションがカバーするわよ」  流石ユリ先生!  鬼教師なんて言われているけれど、考えるところは考えてくれている。  そう喜び、急流下りに名乗りを上げる学生が続出したのは……言うまでもない。  なのにユリは、 「そうそう、武器はちゃんと用意することね」  『どうして?』と、質問する学生たちが多い中、ユリは一言、 「この世界は、どこにでも魔物は居るものよ」  ……それだけしか答えてはくれなかった。 ●  ユリと学生たちは、川の上流を歩いて目指す。  それにしても、ユリは先ほどの水着のままの姿で、しかも足は踵が高いサンダルなのに、全く気にならないような素振りで山を歩いている。  黒幕・暗躍コースの先生ともなると、この程度の山道は、普通に歩くのと同じなのだろうか?  そんな学生たちの素朴な疑問は絶えない。  どんどんと流れが早くなる川を見ながら、山道を歩くこと30分以上、ユリは顔色一つ変えずに歩くが、学生たちはそこそこに疲れを感じて来ている……と、思っていたら、ユリが漸くその歩みを止めた。 「着いたわよ。ここから下流に一気に下る。絶好の場所じゃなくて?」  ボートを出せるほどの広い草むらがあり、川幅も大きいベストポジション。  これ以上進めば、ボートが出せないか、水圧が高過ぎてボートは簡単に壊れてしまうだろう。  ここまで歩かせるなんて、やっぱり鬼だ。  そう思っていた学生たちも、ユリの的確な判断は納得出来るもの。  ……先に言って欲しいけど。 「さあ、思いっきり楽しんで来なさい。そうね、無事にアルチェまで帰って来れたら……ご褒美くらい出すわよ?」  無事!?  何気ないその言葉に、一抹の不安が学生たちの間を駆け抜けるが、今は目の前の楽しそうな急流下りが先と、それぞれユリが用意していたオールを手に持ち、全員一緒のボートに乗り込んだ。 ●  学生たちを見送り、一人上流に残ったユリ。  目はレースで見えないが、その顔は笑っているようにも見える。 「ふふ……。私が出した夏の課題を、どうクリアーしてくれるかしら? ……楽しみね」  学生たちが……ボートが下流に着けば、先に仕込んだ魔物を抑えている『影縫い』が解け、学生たちに向かって襲いかかる。  だからこその武器持参、これもユリの計算の内。 「私からの夏のプレゼントを受け取って頂戴。でも本当にクリアーしたら、ご褒美を用意して、アルチェで待っているわよ。……頑張りなさいな」  そう独り言を呟き、ユリは凄いスピードで山を下り出す。先回りして、学生たちのご褒美を用意するために。  ユリ先生が出した課題をクリアー出来るのか?  それは、みんなの協力にかかっている。  さぁ! 川と魔物との夏を満喫しようしゃないか!
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-06-15
完成 2019-06-28
秋のアルマレス山を楽しもう (ショート)
鞠りん GM
●  ――知っているかい。  秋の『アルマレス山』は、赤く色づく紅葉が見られ、幻と呼ばれるキノコが取れるらしいと。  そのキノコの香りはカレーに似ており、味は高級キノコを超えるとか。  一度は食してみたいという観光客や冒険者は後をたたないが、見つけられるのは一握りの者だけ。  君たちも、この幸運をつかんでみないか。  この季節の『トロメイア』という街は、アルマレス山への巡礼者や、紅葉狩りにと大にぎわい。  『八色の街・トロメイア』と呼ばれるとおり、街の中心である『オクトー広場』から、八本の大通が放射線状に広がって、八種族それぞれが特色を活かして生活しているので『八色通り』とも呼ばれ、各種族ごとの持ち味もまた観光客の目を楽しませている。 「この時期は幻の『コウノダケ』さ! 味も香りも一級品、だが見つけるのは困難と来たぁー!」 「そりゃ食ってみたいものだな」  八色通りにある宿屋で、キノコの話題に盛り上がる観光客たち。  彼らもまた、アルマレス山へ紅葉狩りにやって来た。  その途中で聞いたのが、幻のキノコ『コウノダケ』の存在。 「芳ばしい香りと、高級キノコ以上の味。食べてみたいねぇー」 「見つからないのだろう?」 「見つからん理由は、一年で数日しか生えていないからだ。運が良ければ見つかる。後は少し湿った場所を探すのがポイントらしい」  アルマレス山は、食材も木材も豊富で綺麗な山。  泉や滝もあり、観光客には打ってつけ……なのだが、問題は麓を過ぎた辺りから、ゴブリンが出現していること。  なので、巡礼者や観光客は護衛を雇い山へと登る。  腕に覚えのある冒険者は、単独や仲間を作って山に入るが、中にはゴブリンにやられて、怪我を負い下山して来る者も居るから困ったものだ。 ●  噂というものは早いもので、フトゥールム・スクエアにも、幻のキノコの噂は毎年届いている。 「今年こそは行ってみたいな」 「それは紅葉狩り? それともキノコ狩り?」 「もちろんどちらもさ!」  授業の間の少しの時間に、噂を語る先輩たち。 「でもね、中腹は密林よ」  先輩が言うとおり、アルマレス山の中腹は軽く木々が生い茂る密林地帯がある。  迷路とまでは言わないが、初めて山に入る者は、道に迷ってしまう可能性があるというわけだ。 「装備さえしっかりしていれば行けるさ。後は太陽の向きを把握する。ゆうしゃには当然のことだろう?」 「新入生はどうかしら? 迷わないかしら? ちゃんと教えたほうがいいわよ」 「そーだなぁー。よし、俺の装備品を貸してやろうじゃないか!」 「なにを貸すのよ?」 「ん? 方位磁針」 「それだけー!?」  方角は一番大切だが、果たしてそれだけで突破出来るのだろうか? 「じゃあ地図もつける、それでいいだろ」 「そうね。方角さえ間違わなければ魔物は弱いし、紅葉狩りでも、キノコ狩りでも楽しめるわ」 「俺は普通のデートスポットだと思っていた」 「言いすぎよ、もうっ!」  そりゃ毎日『ゆうしゃ』になるための授業を受けているのだから、ゴブリン程度など敵にすらならないだろう。  それがまたフトゥールム・スクエアの学生の一部でもあるけれど。 「紅葉を見ながら、街への貢献ってのも、学生らしくて良いだろ?」 「街のみなさんに、幻のキノコを採って来てあげるというのもあるわ」 「アルマレス山だからな。キノコの他にも、秋の味覚は沢山あるんじゃないか?」 「そうねえー。栗にアケビ、芋なんかもありそうね」  ここで、『そうそう』と上級生は付け足しをする。 「山ブドウもね。干ブドウにすると……」 「おいおい、怖いことを言うなよ」  山の幸に思いを巡らす上級生。  でも干ブドウにすると、コルネ先生が飛んで来る。  ――しかも鬼の形相で来るだろう。 「まぁあれだ。東に行けば山頂、西に戻ればトロメイアの街! それさえ忘れなければ迷うことはないさ」 「方位磁針と地図が、役にたてばいいね」 「俺は武器を持って、ゴブリン狩りだけどな」 「私は幻のキノコを探すわよ」  どうやら上級生が、方位磁針と地図を貸してくれるらしい。  アルマレス山の紅葉を見ながら、キノコ狩り? それともゴブリン狩り?  あなたはどうアルマレス山を楽しむのだろうか。  遊び尽くす方法は、あなたたち次第だ。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-09-30
完成 2019-10-17
波乱のBaby狂奏曲 (ショート)
鞠りん GM
 『ふぎゃーふぎゃー』と学園長こと【メメ・メメル】が乗り飛ぶ箒から、不思議な子供の泣くような声が聞こえる。  しかもメメルの懐の中から、その声は聞こえるよう。 「よーし、よーし。もう少しだからな、大人しくしちくり~」  片手で箒を掴み、もう片方の手は大事そうに己の懐を支えながら、メメルはフラフラと空を飛ぶ。  年明け早々、メメルは何をしているのだろう?  フトゥールム・スクエアにたどり着いたメメルは、一目散に学生寮に飛び込む。  ……そう、懐の中に居る『なにか』を、学生たちに預けるために。 「チミたち聞くんだ~!!」  急に現れたメメルに、学生たちもビックリ! ……と思いきや、いつものことなので、驚くのは半々。それだけメメルが、毎回学生寮に飛び込んでいるということ。 「ほ~ら見て見て~、新しい新入生なのだ~!」  軽くざわつく学生などお構いなく、メメルは懐に抱いていた、その『新入生』を優しく表に出した。 「……はぁぁー!?」 「こ、これは!」  お騒がせに慣れた学生たちが驚くのは無理もない、メメルが『新入生』と言ったのは幼子。しかも産まれて数ヵ月であろう赤ん坊だった。 「少々ワケがあり、オレサマが連れて来た。チミたちは、この子の面倒を見る、OK?」  いきなり幼子を渡されても、学生たちだって赤ん坊の面倒の見方など分かりはしない。  『ムリ~!』と、不服を言う学生たち、だがメメルは、 「メメたん超多忙で、面倒はちょームリって感じぃ~。だから……ほ~い!」  渡すというより、赤ん坊を空高く飛ばしてしまったメメル。 「うっわわわーー!!??」  ポーンと宙を舞う赤ん坊を落とせば、怪我では済まないと、右往左往する学生たち。  だが、赤ん坊にはメメルの魔法がかけられており、赤ん坊は近くに居た学生の腕の中にフワフワと収まった。 「じゃあ頼んだよチミたち。あぁ、この子はライオンのルネサンスだ~か~ら~、力には注意なのだぁ~」  意味深な言葉を吐き、寮から出て行ってしまうメメル……と思ったら? 「その子はまだ名前すら無いのだ。チミたちが名前をつける。フトゥールム・スクエアの赤ん坊ってイメージで、超いいカンジぃ~♪ ではではなのだぁ~!」 『………………』  今度こそ本当に行ってしまったメメルと、赤ん坊を託されたまま唖然と残された学生たち。  ちょっと待て! 現実問題を忘れていないか? 「私、幼子の面倒なんてみたことがないわ」 「それよりミルクとかオムツとか、どうするんだよ?」 「誰があやして眠るの?」 「名前すらない赤ん坊。なんて呼ぼう」  次々と沸き起こる疑問質問。それに答えをくれそうな者も居なく、その場に残された学生たちは途方にくれるしかない。  だけど……。 「ふ……ふぁぁぁ~ん!!」 「……へ!?」  突然泣き出した赤ん坊。  泣くということは、なにかを欲求するサイン。  そこまでは分かる、そこまでは。 「ミ、ミルクかな? それともオムツ? ど……どうしたんでちゅかー?」  ――人というものは、なぜ赤ん坊相手になると自分も赤ちゃん言葉になるのだろうか? 「ふぁぁ~ん! ふぁぁ~ん!」  赤ん坊の心は理解しがたい。……そんなことを思っていた、メメルから赤ん坊を受け取った男子学生。  とりあえずオムツかと思い、赤ん坊が包まれている布を解こうとしたその時! 『ボスッ!!』 「……は? うあぁーー!?」 「危ないっ!」  な、なんと、赤ん坊の小さな拳が男子学生にヒットした途端、男子学生は赤ん坊を放り投げながらも壁まで飛ばされた。そのあり得ないほどの赤ん坊の一撃!  これに慌てた女子学生がスライディングで飛び込み、落ちる赤ん坊をギリギリでキャッチし事なきを得る。  ……しかし今のはなんだ!? 「これって……祖流還り?」  黄金の髪と耳。新たに背中は金色の毛に覆われ、爪は鋭く長い。 「確かライオンのルネサンスだと……。だけど赤ん坊でこの力は凄い」  メメルは言った。『ライオンのルネサンスだから力に注意』と。  これがその理由? そしてフトゥールム・スクエアに連れて来られた原因? 「この種族って、どうなっているんだ?」  壁に飛ばされた……幸いにも魔法で激突だけは避けた男子学生が、茫然とつぶやく。 「ルネサンスの細かい種族までは、流石に分からないわ。この子だけが特別かもしれないわよ?」 「誰が分かる人は居ないだろうか?」  泣く赤ん坊を慎重にあやしながらも、寮内に居る学生たちに重い空気が走る。  この種族に通じる人。その人が居ない限り手に負えないのではないかと。 「……そうだ! フィンブル先生だ!」 「フィンブル……あぁー!」  学生たちが言うのは【フィンブル・リディル】先生。  魔王・覇王コースの教員であり、この子と同じライオンのルネサンス。 「でもフィンブル先生は、いつも鍛練でどこに居るか分からないのよね」 「授業はしているんだから、学園内には居るはずだ」 「探すといっても、赤ん坊を連れてだぞ? 俺たちだけでは手が足りない」  そこに通りかかったのは『あなたたち』。  ちょっとパワフルな赤ん坊を連れながら、フィンブル先生を探し出す。そして赤ん坊の名前もつけて欲しいと、面倒ごとを一度に頼まれてしまった。 「……どうするのよー!」  誰かの叫びが木霊する。  上手く赤ん坊をあやしながら、鍛練大好きフィンブル先生を探し、なおかつ名前も決めてあげなければいけない。  小さな赤ん坊に、メメルが託した想いを実行するのは君たちしかいないのだ。  赤ん坊を抱いて、学園中を駆けめぐれ!
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-01-01
完成 2020-01-19

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サンプル


【日常サンプル】
 4月1日から5月31日までの長い期間開催されるイースター(復活祭)
 復活を記念したお祭りですが、漸く訪れた春を祝うお祭りでもあるのですよ。

「第2の人生を末永く謳歌しますように」
 そう願うのは『オスター・フラーデン』と呼ばれる、1人のリバイバルです。
 彼は少し変わった人生を持ち、親は知らぬが『ミュラーの木』から産まれたと言われ、人々から春を呼ぶ男神として、小さな村の神殿で大切にされていました。
 ですが、平穏な日々はオスターが21歳になった時に、突如として消え去ったのです。
 叛神論者たちがオスターの住む村を襲い、神論の奥深くに隠れていたオスターを見つけ出し、彼を悪しき神を名乗る者として処断してしまいました。

 ――と、ここまでは数は多くはないけれども、この世界ではよくある話の1つ。
 オスターの本当の数奇な運命は、ここから始まったのです。
 死んだと思ったオスターが、次に目を覚ましたのは、見渡す限り花が咲き乱れた草原。そしてその中心には1人のきらびやかな女性が佇んでいました。
 その女性が言います。
「神々である我が、オスターそなたを見初めたのじゃ」
 そう、叛神論者を使いオスターを死に追いやったのは、冥界と春の女神であるプロセルピナでした。
「た、例え女神であろうと、私はあなたに従う気はありません」
「では、その気になるまで死者として地上をさ迷うことになろう。絶対にそなたを逃す気はないぞオスター、100年でも1000年でも待とうではないか」
「それでも私の気持ちは変わることはないでしょう」
「好きにすればよい、時は無限じゃ」
 プロセルピナがそう言った途端、オスターの居る場所に真っ黒な穴が開き、オスターの体は穴の中に吸い込まれて行きました。

 ――それがオスターの半生。
 リバイバルとして地上に戻ったオスターは、歳を取る事もなく、そして変わらぬ姿を怪しまれないように、彼方此方を放浪して歩き、自身もどれくらいの年月をさ迷ったか分からないほどに、世界中を旅しました。
 そして放浪の末にたどり着いたのは、かつてオスターが住んでいた村の近く。
 今は街になり昔の面影は殆どありませんが、唯一朽ち果てたとはいえ神殿だけは残っていたのです。
 その場に留まり、イースターの季節にだけ街に出ては『実に復活』と、人々に春の訪れの声をかけるのが、オスターの数少ない楽しみ。
 今日もまた小さな子供に声をかけ、その美しい姿で笑いかける姿が人々の目に留まります。
 
 いつの頃からか、オスターのことが風の噂になり『アネモネの使い』と称されるようになったのです……昔話ですね。
 ――いいえ、オスターはあなたの近くに居るのかも知れませんよ?


【戦闘サンプル】
「僕が突入するから、ミューは後方に」
 そう言うのは、東邦の剣士である『響新(ひびき あらた)』。
 そしてミューと呼ばれたのは、兎耳族の魔法使い『ミュー・リンリン』。
「せめて身体強化の魔法を……。『エナジーバーニング……アースプロテクト……クイックターン』」
 次々と響に魔法をかけるミュー。響は接近戦型なので、必然的にかけ合わせる魔法は、防御や俊敏性が多くなることを、ミューは知っている。
「ありがとう。後は後方支援でね。僕は突っ込むよ」
「はい。範囲魔法と回復は任せて下さい」
 ミューとは距離を取り、響は盗賊のアジトの中を窺うが、盗賊たちは襲われることはないと思っているのか、酒を酌み交わし緊張感などまるでない。
(5?いや6人だけど、これだけ気が抜けていれば、素早い対応なんて無理。早く片付けて、ミューとご飯にしよ)
 スラリと引き抜くのは、響が東邦から持って来た愛刀『一乃太刀』。東邦では刀は珍しい物ではないが、この地域では先ずお目にかかれない代物。
 その一乃太刀を正面に構え、響は盗賊のアジトの扉を蹴り破った!
「悪いけどさ、褒賞金の為にやられてよ」
 一方的な言い分だとは思うが、その気十分の響は止まらない。
「はぁぁぁー!」
 上がった俊敏を生かした高速移動で、一番手前に座っていた盗賊を、左から右への袈裟斬り。
「こいつ、強いぞ!」
「誰も逃がさないよ」
 斬った勢いで下に向いた刃をきり返すような斬り上げを繰り出した後、少し離れた盗賊へと間合いを積め、胸を一閃する払いで、盗賊を一撃。
「響さん!」
「!!」
 ミューのテレパス能力で、響の頭に直接声が聞こえた瞬間に飛び引けば、ミューの遠距離魔法、ファイアーブラストが二人固まっていた盗賊を包むように、煉獄の高い炎を上げた。
「残り一人!」
 一番奥に要るのは、この盗賊たちを束ねる頭領だろう。手前の盗賊を相手にしている内に剣を持ったが、響には遅いとさえ感じてしまう。
「これで……終わり!!」
 飛びかかるような瞬発力で、一乃太刀を真っ直ぐに構えながら盗賊に直撃。
 勢いと手入れされ抜かれた一乃太刀は、頭領の体を深々と貫いた。
「き、貴様……賞金稼ぎの……ぐはっ」
「賞金稼ぎの響&ミュー、覚えておいて……って、もう無理かあー」
 突入から制圧まで5分弱。でもこれが響とミューの生業。
 そう、二人は名うての賞金稼ぎである。
 こんなのは日常で、響は「さあ褒賞金でミューとご飯にしよう」と、にこやかに笑っていた。