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我思う、故に我あり。


ストーリー Story

 夏の日差しが落ち着き、夕方には涼しい風も吹くようになった頃。
 教室はいつにも増して賑やかだ。それもそのはず。なんとこんな時期に転校生ならぬ、新人教師がやってくる、というのだから。
「どんな先生かなぁ」
「男かな、女かな?」
「種族は何だろう?」
「どんな授業をするんだろう?」
 ワクワクが止まらない。新しい出会いというのは、季節関係なく心浮き立つものだ。
 ホームルームの鐘が鳴る。生徒たちは一斉に着席し、教室の扉が開くのを待つ。

 ――ドクン!

 急激に重苦しい空気が教室に満ちた。重苦しい――いいや、違う。これは、殺気だ。全てをねじ伏せる、圧倒的な力。国王に拝謁するような煌びやかな緊張ではなく、全てを力で支配する、その圧力。
 冷や汗が噴き出す。全身が凍りついたように動かない。急に喉を締め上げられたように、呼吸がうまくできない。
 ある者は両手を握りしめ、ある者は全身が震え、ある者は今にも気絶しそうだ。
 教室の扉が開く。それは律儀に扉を閉め、重いブーツの足音が教壇に上がった。誰もが机の上に視点を固定していた。とても頭が上げられない。
 それは畏怖だ。圧倒的な力の前に、それに抗う術など、今の生徒たちは持ち得なかった。
 永遠にも等しい数十秒。それは始まりと同様、唐突に消え去った。

「ほう……なかなか骨のある者たちのようだ」

 ドッと緊張の溶けた教室に、男の声が響いた。なんとか視線をやれば、そこには漆黒の髪が美しい男が立っていた。
 古木のような威厳のある二本の角。ゆったりと閉じられた漆黒の翼。陶器のような肌には、龍の鱗。光を透かしたルビーのような真紅の瞳。ゆったりとしたマントにも見える外套で全身を覆っている為か尻尾は見えないが、間違いなくドラゴニアだった。
 蒼白な顔をした生徒たちを見やり、男は淡々と口を開いた。
「我が名は【エイデン・ハワード】。本日から魔法学園『フトゥールム・スクエア』魔王・覇王コースを主に担当する」
 淡々として、それほど大きな声を出しているとは思えないのに、教室中に響く声。反発心よりも崇敬を抱かせるようなその存在感に、生徒たちは直感した。
 ――魔王。
 ドラゴニアのエイデン・ハワードは、魔王・覇王コースを専攻する者に、魔王のなんたるかを間違いなく伝える存在となるであろう。
「私のことは『ハワード先生』と呼ぶように。軽々しく名で呼ぶ輩を、私は生徒として認めない。私を名で呼べるよう、日々精進するが良い。それでは、授業を始める」
 言うや否や、ハワードは漆黒の翼を広げた。ただそれだけなのに、教室の空気が一段重くなる。顔を上げていられる分、初めの威圧よりは随分と楽なような気もする。

「これから行うことは、己の魂を解放することである。魔王・覇王、及び勇者たりうる者、どんな威圧の前でも堂々と立ち、己の真実を語り、体現する力を持たねばならない。答えよ。己が何のために、その力を得んと欲するか?」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2020-09-28

難易度 普通 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-10-08

登場人物 2/8 Characters
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《枝豆軍人》オルタネイト・グルタメート
 リバイバル Lv15 / 魔王・覇王 Rank 1
■性別■ えだまめ(不明) ■容姿■ 見た目:小柄で中性的 髪:緑のショートヘア 目:深緑色 服:生前の名残で軍服を好む。 あとなぜが眼帯をしてる。 ※眼帯に深い理由はない。 ■性格■ 元気(アホの子) 意気揚揚と突撃するが、結構ビビりなのでびっくりしていることもしばしば。 ■趣味■ 枝豆布教 ■好き■ 枝豆(愛してる) ■苦手■ 辛いもの(枝豆が絡む場合は頑張る) ■サンプルセリフ■ 「ふはっはー!自分は、オルタネイト・グルタメートであります。」 「世界の半分を枝豆に染めるであります!」 「枝豆を食べるであります!おいしいのであります!!怖くないのであります!」 「これでも軍人さんでありますよ。ビビりじゃないであります!」 「食べないで欲しいでありますー!!自分は食べ物ではないであります。」

解説 Explan

新人教師【エイデン・ハワード】
種族:漆黒のドラゴニア
担当:魔王・覇王コース

●今回の授業について:
ハワード先生は魔王たる威圧を放っています。その前で起立し、自己紹介をしてください。

「これから行うことは、己の魂を解放することである。
魔王・覇王、及び勇者たりうる者、どんな威圧の前でも堂々と立ち、
己の真実を語り、体現する力を持たねばならない。
答えよ。己が何のために、その力を得んと欲するか?」

あなたの答えを、語り尽くしましょう。
印象深い、又は意識が変化したなどのエピソードや体験があれば、なぜそれによって意識が変わったのかなどを書き添えてください。

「重要な根幹だけれど、これは口に出さない」という部分がある場合は、明記してください。
特に指定がない場合は、すべて口に出して良い発言だと解釈します。


《エピソード特殊ルール》
今回の授業は、教室における座学なので、
武器を必要とせず、攻撃ではない技能を使用することが可能です。

ハワード先生の威圧に対し、どのように対処するかを記載してください。
本ルールは、強者を前にした際の応用力・発想力を試すためのものです。

技能そのものの効果を判定値に反映させるのではなく、
どの技能を、どのように応用・発想したかによって、プラン値に影響が出ます。

つまり、
技能を使用したとしても(しなくても)、【日常判定】にて判定を行います。


作者コメント Comment
はじめまして、こんにちは。
鶴野あきはる(つるの・あきはる)と申します。

はじめてのシナリオは、ど定番の自己紹介です!
生徒たちがどのような思いを胸に日々学園生活を過ごしているのか、ぜひぜひ教えてくださいね。
その思いによって、ハワード先生の授業内容が変わるかもしれません。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。


個人成績表 Report
朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:29 = 19全体 + 10個別
獲得報酬:900 = 600全体 + 300個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
「武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。ハワード先生」

自分の番が来たら気力を振るい起こして立ち上がりそう名乗り

「私が力を欲する理由、私の目標は世界一の拳士になる事ですわ。私には兄がおりました。私よりも強くて優れた兄でした。子供の頃共に拳を学んでいた頃はきっと兄様は世界一になる、だから私は2番になろう、と思っていました」

俯くな、顔を上げろ

「その兄は私を護って事故で亡くなりました。その時兄が言ったのです。私ならきっと世界一になれると。だから私は世界一を目指すのですわ。私を信じてくれた兄様の思いが間違ってはいなかったと、それを証明する為に。何より今は私の夢ですから!」

そう最後まで語ります

オルタネイト・グルタメート 個人成績:

獲得経験:29 = 19全体 + 10個別
獲得報酬:900 = 600全体 + 300個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
心情:例え、どんな状況であっても、自分は自分の思いに忠実であります!

行動:どんな状況だろうと、名を名乗るのであれば、【楽園楽土Ⅰ】【説得】【会話術】を使用
いつもは、敵に対して使うが、それは、先生とて同じ
枝豆の素晴らしさをいろいろな人に伝えるべく口上を述べる
「ふはっはー!先生、初めましてであります!
自分は、オルタネイト・グルタメート!いずれ自分は、世界の半分をこの枝豆に染める所存!
なぜって自分は秘密結社『えだまめん』の総統でありますから!
それに自分は、リバイバル!一度は死んだ者。なぜ復活したかは覚えていないでありますが…
自分は、大好きな枝豆を広めるために…枝豆で人々を笑顔にしたいであります!」

リザルト Result

●【朱璃・拝】(しゅり おがみ)の場合
 ピリピリとした空気が教室内を支配している。
 少しでも気を抜けばすぐにでも突っ伏してしまいそうな圧倒的なプレッシャーに、朱璃は伏してしまいたくなる耳を震えながらピンと立てた。
 ――これが、魔王・覇王というものですか……!
 漆黒の翼を広げ、教壇の上から生徒たちを睥睨(へいげい)する【エイデン・ハワード】先生の姿は、ただ屹立しているだけにも関わらず、その威厳を示している。
 教室の生徒たちは、肩を震わせる者、歯の根が合わぬ者、拳を握りしめる者、ハワード先生を睨み付けることでプレッシャーに打ち勝とうとする者――様々だ。
 重苦しい空気の中で、生徒ただ一人の声が響く。震えている。
 けれど。
 この重苦しい空気に打ち勝たなければ。勇者ならば、それでも進まなくてはならない。決して屈することなく、ただ前を向いて、己の信じる信念のために。
「――次」
 ハワード先生の声が響き、朱璃は自分の番が来たことを知る。
 ――兄様。
 赤い瞳を一度つむり、拳を握る。朱璃は逃げたくなる気持ちを押さえつけ、気力を奮い起こして立ち上がった。
「武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。ハワード先生」
 銀の髪を揺らし、まっすぐとハワード先生の真紅の瞳を見返した。
「私が力を欲する理由、それは、世界一の拳士になることですわ」
 ハワード先生の表情は変わらない。
「私には兄がおりました。私よりも強くて優れた兄でした。共に格闘術を学んでいた子ども時代、きっと兄様は世界一になると私は思っていました……だから、私は二番になろうと思ったのです」
 憧れていた。兄は、朱璃の自慢で、誰よりも優しく、強い人だった。
 瞳を閉じれば、今でもありありと思い出せる。共に格闘術を学んだ日々を。兄にはきっと敵わない、けれど、兄の次に強い自分でありたいと、無邪気に思っていた自分。それなのに。
「その兄は、ある事故で――」
 血に塗れながらも、自分に微笑んだ兄。泣き叫んだ自分。
 あの時、自分に力があったなら、兄は死なずに済んだのだろうか――その後悔。
 瞬間、ズンとプレッシャーが重くなり、朱璃は顔を上げる。
 ハワード先生の真紅の瞳が光っているように見えて、朱璃は血の気が引くのを感じた。
(――怖い。逃げ出してしまいたい)
 強烈なプレッシャー。体が震える。呼吸が浅くなり、今にも尻尾を丸めてしまいたくなる。
 けれど、ここで逃げ出したら、逃げ出してしまったならば、二度と兄の思いを胸に抱くことも、世界一を目指すこともできなくなる。そして、そう。勇者ならば――進まなくてはならない。
 拳を握りしめ、ハワード先生の瞳を見返す。
「ある事故で兄は、私を護って亡くなりました。その時、兄が言ったのです。私なら、きっと世界一になれると」
 怖い。怖いけれど、進むと決めたのだ。あの時に。
「だから、私は世界一を目指すのですわ。私を信じてくれた兄様の思いが間違ってはいなかったと、それを証明する為に」
 信じてくれた兄の為に、怖くても進む。朱璃が前を向き、世界一を目指し、それを手にしたら、きっと兄は笑ってくれるだろう。よくやったと褒めてくれるだろう。兄に守られた命を、兄が朱璃へと託した思いを、決して無碍にはしない。
 そして――、
「何より今は、私の夢ですから!」
 恩返しだと思い、鍛錬を積んできた。けれどそれはいつしか、朱璃自身の目標となっていたのだ。
 恩返しには違いないだろう。兄もきっと褒めてくれるだろう。けれど、その為だけじゃない。
 朱璃は朱璃の為に、世界一を、武の道を極めるのだと決めたのだ。
「――よろしい。着席したまえ」
 ハワード先生が言い、朱璃は崩れるように着席した。思い出したかのように体が震える。
「君のこれからの活躍に期待しよう。世界に君の名が轟く日を」
 朱璃は一瞬何を言われたのか分からなかった。
 世界に朱璃の名が轟く。
 けれど確かに、それが朱璃が世界一の拳士になった時だろう。
「はい……はい! ハワード先生」
 朱璃の拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる日まで、彼女の修行は続く。

●【オルタネイト・グルタメート】の場合
「――次」
「ふはっはー! 先生、始めましてであります! 自分は、オルタネイト・グルタメート! いずれ自分は、世界の半分をこの枝豆に染める所存! なぜって自分は秘密結社『えだまめん』の統括でありますから!」
 教室にいた誰もが、ポカンと彼を振り返った。
 ピリピリと張り詰めた空気に穴が開くような、あまりにあっけらかんとした呑気な声。
 というか、秘密結社なのに名前も統括なのも明かしちゃうの? と突っ込める人物は、この教室内にはいなかった。
「お子様のおやつに! ビールのお供に! ビバ! 枝豆!!」
 深緑の瞳がキラキラと輝き、握った拳は枝豆への愛のために震えている。
 細身で小さな体の全身全霊で、オルタネイトは枝豆を愛していた。学園の隅っこにあった空き教室を、こっそり改造して枝豆を栽培し、枝豆の布教活動をするほど――いや、枝豆を布教する為にこの魔法学園『フトゥールム・スクエア』へ入学し、『えだまめん』を結成したと言っても過言ではない。
「なぜなら自分は、リバイバル! 一度は死んだ者。なぜ復活したかは覚えていないでありますが……自分は、大好きな枝豆を広めたいであります!」
 オルタネイトは信じている。
 自分は生前も、きっと枝豆が大好きだったであろうことを。
 ゴブリンだろうが、リザードマンだろうが、先輩だろうが、先生だろうが、敵だろうが、味方だろうが、ただただ枝豆を広めたい。その一心のみで、きっとリバイバルになったのだろうと。
「そもそも枝豆というのは、成熟すれば大豆として食べられるものでありますが、未成熟のままでも美味しい! つまり大豆より早く食べられるのであります! 今では大豆として適したもの、枝豆として適したものが別個に存在するという、摩訶不思議な、けれど最高に美味しい食べ物なのであります!」
 塩茹では特にビールと合う(らしい)。オルタネイトは未成年なので合わせたことはないが、定番と言われるほどなのだから、それはそれは美味しいに決まっている。
 そもそも、大豆にはタンパク質などが豊富に含まれており、アルコールの分解を助けてくれる。こんなに理にかなった、しかも美味しい食べ物があるだろうか? いや、無い!
「枝豆は生のままでは硬いでありますが、炙ったり煎ったり、漬物にしたりしても美味しいであります! 茹でた枝豆を潰して餡にした『ずんだ』も最高なのであります!」
 豆なのに子どもに人気な食べ物である、ということも忘れてはいけない。
 すり潰してスープにしたり、もちに入れたり、煮物の具材としても使える枝豆。鮮やかなグリーンは目をも楽しませてくれる。それはつまり、食卓で光り輝く存在!
「豆としては未熟な状態であるにも関わらず、エネルギー、脂質、良質なタンパク質に恵まれ、ビタミン、食物繊維、カルシウム、鉄分など多くの栄養素を含んでいるであります! しかも大豆には少ないビタミンCなどを枝豆ならば含んでいるというのも、枝豆の素晴らしい点であります!」
 もはや自己紹介というより、枝豆紹介である。
「先生ならば、すでにお気付きでありましょう! 自分は枝豆を広め、皆が枝豆を好きになって欲しいであります!」
 オルタネイトの枝豆愛は止まらない。
 あまりに愛が深すぎて、オルタネイトの周囲には何かキラキラとしたエフェクトすら掛かっているのではないかという錯覚に陥る。
「枝豆を広め、世界の半分を枝豆に……そして、」
 オルタネイトは無邪気に笑い、まっすぐハワード先生の赤い瞳を見つめる。
「人々を笑顔にしたいであります!」
 それが本心。それが本音。
 周りからはどう見られたって構わない。無様に見えても、構わない。
 ただ枝豆を愛し、枝豆のことだけを考え、何者にもまっすぐにぶつかるだけ。
 それが理想。それが本望。オルタネイトがオルタネイトである理由。
 枝豆の素晴らしさを全ての人が知ってくれれば、世界の全ては笑顔になると信じている。
「枝豆で世界を笑顔にするか……面白い」
 ハワード先生は、喉の奥でクツリと笑った。
「これから私が担当する授業では、経営などについても触れる。君がどんな手法を取っていくのか……楽しみにしていよう」

 ハワード先生がバサリと翼を折りたたむ。
 教室中に満ちていたプレッシャーは消え、そこにはただ静かに佇む漆黒のドラゴニアがいる。
「皆の魂、確と受け取った。慢心せず、ただ邁進せよ。それだけが己が道を照らす光となる」
 魂を磨き、己の欲望と向き合うこと。
 己の欲望をどう体現するか考えること。
 体現したそれがいつか、誰かの世界を照らす光となる。
「本日の授業は、以上とする」



課題評価
課題経験:19
課題報酬:600
我思う、故に我あり。
執筆:鶴野あきはる GM


《我思う、故に我あり。》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2020-09-26 11:08:53
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね

《枝豆軍人》 オルタネイト・グルタメート (No 2) 2020-09-27 19:14:42
駆け込みオルタネイトでありますぞー!