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そうよ私は蛇使い座のヲンナ


ストーリー Story

 魔法学園フトゥールム・スクエア学園長【メメ・メメル】が持つ執務室の一つが開けられる。
 突然の来訪者に驚いたのは最初だけで、入って来た人の顔を見るなり、メメルは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「おっすおーっすお疲れさん☆ 景気はどう? ってか、成果はどうだった?」
「相変わらずお元気そうで何よりだわ、学園長。でも三か月間も遠征に行ってた生徒に、もう少し労いの言葉があっても良いんじゃなくて?」
 もう、と【紫波・璃桜】(しば りおう)は不満そうに髪を掻き上げ、ソファに深々と腰掛ける。荷物持ちで付き添っている二体のシルキーが、代わりに深々と頭を下げた。
「成果も何も、私怒ってるのよ学園長。私がアジトを突き止めるため長く出ていたって言うのに、こっちの何の関係もないところで、アジトの手掛かりを見つけちゃうだなんて」
「んー、何のことだったかな?」
「アルチェで炸裂の種の密売人を捕まえた時、情報を吐かせたんでしょう? 当人から聞いてるわよ、まったく……」
「あちゃー、バレてたか。さすが、あのお爺ちゃんのお弟子さんだ。一体どこで知ったのやら」
「偶然よ、偶然。奴らのアジトを探してる時に聞いただけ。それに私が今日戻って来たのは、直接文句を言ってやるためだけじゃないわ」
「おぉ! 何かしら情報を掴んでくれたんだねぇ。さすが璃桜たん♪ やる時はや、る、お、と、こ♪」
「生物学的にはね。私はそう、言うなれば蛇使い座のヲンナ……そんなヲンナが手にした情報によると、近々とある盗賊が堂々と店を貸し切って、とあるお店で酒宴を開くそうよ。私としてはそこで、一網打尽にしたいのだけれど……」
「人手の問題ってわけか! 任せろ! すぐ募集してやる!」
「助かります……彼らは例の集会においても、外の警備を任される。彼らを捕まえて、正確な場所はもちろん、作戦当日の防御を薄くしたいの。まぁ、メメ・メメル学園長なら、これくらいの事はすぐ思いついたから、奴らが簡単に手配出来たんでしょうけど?」
「えぇ、どうかなぁ。買い被り過ぎかもしれないぜぇ?」
 食えない人ね、と璃桜は立ち上がる。シルキーに剣を渡し、無言で任務の終了を報告した。
「ではメメ・メメル学園長? 人選はお任せします。驟雨(しゅうう)の討伐も大事ですけど、個人的にはこちらを急いで貰いたいわ。せっかく盗賊や山賊、海賊らが一気に集まる機会を見つけ出したのですもの」
「わかってるってぇ♪ もう、璃桜たんってば、そんなに眉間に皺寄せてると、刻まれちまう、ぜ♪」
「刻まれたら、それはお爺ちゃんのせいよ。この世で最も怖いのは、爪を隠せる能ある鷹と、武器を隠せる能ある人、だなんて教え込んでくれたんですからね」
「そういえば君の他のお弟子くんは、最近後輩と仲良くやってるみたいだぜ? 璃桜たんも、ようやく戻ってこれたんだし、後輩と交流でもしたらどうだい☆」
「……失礼したわ」
 部屋を出た璃桜は、シルキーから鏡を受け取る。
 メメルに言われた眉間の皺が気になって見ると、確かに厳つい皺が年輪として刻まれつつあるように見えた。
 ――最近後輩と仲良くやっているみたいだぜ?
 仲良くやっているうち、腕が鈍っていなければいいのだが。それとも弟、妹弟子らと仲良くしているその後輩とやらが、自慢の腕前を見せてくれるのか。
 さすがに眉間の皺を消してくれるまでではないだろうが――。
「お手並み拝見、と行きましょうかね」
 ヲンナの舌が、さながら蛇のうねる二又の舌の如く、唇を啜り舐めた。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-10-24

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-11-03

登場人物 2/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」

解説 Explan

 今回の依頼内容は、とある店にて酒宴を開いている盗賊団を一挙捕縛です。酒宴に参加している盗賊団の団員を、出来る限り多く捕まえてください。
 実力行使はもちろんの事、店員に紛れて酒に一服盛る。酔い潰れるのを待ってから捕縛するなどありますが、酒豪のボスと酒を飲まない側近の二人は酔い潰れる事はありません。その代わり、酒で思考回路が鈍り、剣捌きも雑になるので、実力に自信がない場合は待って機を窺うも一つの手かと思われます。
 ただ、色気を使っての絡めては、人数も多いのでおススメは致しません。
 盗賊団の総数は六〇にも及びますが、全員を捕縛する必要はありません。ボスと側近のいずれか、もしくは双方を捕縛した上で、半数以上を捕縛していた場合、成功以上の判定とさせて頂きます。
 先に出てきましたNPC【紫波・璃桜】(しば りおう)の参戦予定はありません。ただし人数が集まらなかった場合、プランに書き込んで頂ければ、裏口から逃げる連中を順次捕縛していく形で参戦させることも可能です。
 今回は戦闘よりも、捕縛メインのシナリオとなります。如何にして相手を無力化するか、捕縛するかを考えて頂ければと思います。
 よろしく、お願いします。


作者コメント Comment
 こんにちは。こんばんは。お疲れ様です。
 ゆうがくにおいての戦闘狂、基、戦闘脳、無名作家の七四六明(ななしむめい)でございます。
 此度は過激な戦闘描写と言うよりは、敵の無力化と捕縛を重点に置いたエピソードをご用意させて頂きました。
 当エピソードは今後、自分が用意する予定のエピソードにも関連してくるので、参加される方にも参加されずに拝読だけされていく方にも是非楽しんで頂いて、今後の熱に変えて頂ければ幸いです。
 挙ってのご参加、お待ち申し上げております。


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:180 = 60全体 + 120個別
獲得報酬:4500 = 1500全体 + 3000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
●作戦と分担
盗賊団の捕縛。頭目を主目標にできる限り多く

●事前準備
盗賊団の活動実績や酒・食べ物・女の好みなど話題を収集
璃桜先輩には有事の後詰を依頼。

●行動
『変装』して、頭目と一般団員主目標。
『事前調査』情報を元に『会話術』で盛り上げ『信用』を得る
最初はほぼノンアルコールの弱さから、徐々に強い酒
(自分も雰囲気作りに酒っぽいノンアルコールを適度に)
側近には薬を盛りたいが、味覚が敏感そうなら断念。
怪しまれたら『変装』を変えて別人のフリ。

あらかた酔い潰したら璃桜先輩に任せ、頭目のみへ色仕掛け。
個室へ切り離せたら急に明かりを消し『暗視順応』『奇襲攻撃』で不意討ち、短期決戦で討ち取りに
不利な場合は脱出優先

タスク・ジム 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:180 = 60全体 + 120個別
獲得報酬:4500 = 1500全体 + 3000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
店にバイトとして潜入し
料理に薬を盛って提供し
一斉に薬が効いてきた頃にロープで拘束する作戦

事前調査で店の立地、設備、メニュー確認
レシピ考案は料理、創意工夫を活用
店のメニューに加えメメたん秋の味覚祭(橘GM様)に使用したレシピを流用
魔法薬学、医学、健康学を応用しハライタダケを用いた睡眠や痺れをもたらす薬の調合を調べる


打合せでは
上記を仲間と共有し一緒に頑張ろうと伝え
学園長や璃桜先輩にも真摯に伝え信用を得られるよう務める
景気付けに味覚祭で披露したグラヌーゼ麦パンを振る舞う
「もちろん、隠し味(毒)を入れる前ですけどね」

璃桜先輩には裏口逃亡者確保を依頼

決行より前に店を訪れ
信用と演技で働きたいと店に頼み込む



リザルト Result

「店長、バイトの子雇って正解でしたねぇ。正直いなかったらヤバかったですよ」
「まったくだ。何より即戦力になってくれるからよかった。頼りにしてるぞぉ、バイト君!」
「はい! 精一杯やらせて貰います!」
 バイト君こと【タスク・ジム】は汗だくで大鍋を振るう。
 短期のバイトとして入って早三日。募集もしていない店に入るのは大変だったが、今ではすっかり信頼を勝ち得ている。とあるドラゴニアの男子生徒の下、修業した成果と言えよう。
 お陰で彼女と一緒に、今日この日のバイトシフトに潜り込むことが出来た。
「おい嬢ちゃん、酒が足りねぇぞぉ! ドンドン持って来ぉい!」
「はぁい、ただいまぁ!」
 いつもの凛々しい姿は身を潜め、可憐な店の衣装に身を包んだ【フィリン・スタンテッド】が店内をあちこち駆け回る。
 丈の短めなスカートに、両肩を含めた胸から上部分の開けた意匠が、男達の下心を刺激し、酒を進ませていた。
 正直店で用意されていた服が想像より露出度の高い代物だったが、今回に限っては好都合。標的を見定めるフィリンの鋭い眼光が、陰から巨漢の大男を睨む。
「ボス、そんなに飲まれると体に障りますよ」
「馬鹿野郎! こんだけの大金が入ったんだ! 飲まずにいられっか!」
 大金が入っているらしい麻袋を高々と掲げ、男はグビグビと酒を飲む。
 持っている大金が【紫波・璃桜】(しば りおう)の言っていた集会の護衛役としての前払い金なのかはわからないが、かなり入っているようだし、気持ちも大きくなっていそうだ。
 ならばやりようもある。
 オーダーされたのよりややアルコール度数の高い酒と、自分用のグラスも持って、さりげなくボスの隣へと座って、ボスのグラスへ酒を注いだ。
「とっても、お酒が強いのですね。私そういう人、好きですよ……」
 これ以上なく隙だらけになるから、という意味合いで。
「そうか、そうか! そら、もっと注げ注げぇ! おいおまえら! この嬢ちゃんにおまえらの格好いいところ見せてやれぇ!」
「わぁ、すごぉい」
 主にその単純さが。
「さぁ、おまえもその手に持ってるの酒だろ?! 飲め飲め!」
「はい、いただきます」
 酒は酒でも、酒っぽいだけのノンアルコール飲料だが、グビグビと一息に飲み干す。
 フィリンの飲みっぷりが気に入ったらしく、ボスは更にアルコール度数の高い酒を自ら注文し始めた。狙い通りだ。
「シェフに伝言を。こちらの方にも美味しいお料理を振舞って差し上げてって」

 他の店員からオーダーを聞いて、タスクは思わず口の端が緩む。
 一人でボスを相手にするなんて言うから心配していたのだが、思ったよりも余裕がありそうで安心した。作戦が上手くいっている証拠だろう。
 ならば自分もキチンとこなさなければ。
 周囲の目を確認。貯蔵庫に行って他の食材に紛れて、ハライタダケを準備する。店長や他のシェフに見つかっては事なので、慎重かつ大胆にも、ハライタダケ他、薬品各種を各テーブルの大皿料理に仕込み、オーダー通りにボスの側近へ振舞われる料理にも盛った。
 証拠隠滅――と言うと聞こえが悪いが、そのままあっても困るので、ゴミ箱のある店の裏口へ。表通りの街灯以外に光源の無い暗闇の中で、待機していた璃桜が煙管の煙を燻らせていた。
「首尾よく行っているみたいね」
「はい。こちらはお願いします。あ、これ差し入れです」
「あら、ありがとう。焼きたてのパンね、嬉しいわ……ちなみに、毒入り?」
「大丈夫です。それだけ別で焼きましたから」
「そう。まぁ毒なんて効かないけれどね。何故なら、そうよ。私は蛇使い座のヲンナ」
 と、璃桜はパンに齧りつく。
 同門の他三人と比べても明らか異質。学年は一緒ながら、三人より年上らしい彼からは、経験の違いが落ち着き様から見て取れる。
「そういえば、あなただったかしら。刃(じん)の真似して、必殺技にまで昇華させた後輩君って」
「は、はい! 刃先輩や同門の先輩方には、大変お世話になっていて、璃桜先輩の事も聞いていたので、今回ご一緒出来て光栄です」
「そ。今回はお預けだけど、いつかあなたの剣も見てあげる。近い先、大きな依頼もあるでしょう。そのときは是非いらっしゃい。同門全員で、歓迎してあげるわ。当然、あの子も一緒にね」
「……はい! よろしくお願いします!」
「さ。早く戻りなさい。本番はこれからよ」
 燻らせる煙の如く、暗闇に紛れて消えていった。

 それから、約十分。
 騒々しかった店内は静寂に包まれ、賊の大半がその場で寝落ちていた。例え起きていたとしても、舌が痺れて喋れないほどの重度の麻痺でまるで動けない。
 それだけの重大事態にも気付けないほど泥酔させられたボスは一人、静まり返った店内で馬鹿騒ぎを続けていた。
「どうしたどうした! 揃いも揃って情けねぇ!」
「そろそろか……」
「フィリンさん、気を付けて」
「あなたもね」
 酒気の満ちた店内で見せる千鳥足は、本当に酒に酔ったように思わせ、疑念を一切抱かせない。
 疑念を抱くことさえ忘れて酔ったボスの隣へ収まったフィリンは、上目遣いでボスを仰ぎ。
「団長さん……私、ちょっと酔っちゃったみたい……」
「そうかそうか! なら、介抱してやらないとなぁ! おい、個室を開けろ!」
 開けさせた個室へと、優しくフィリンを抱き上げて運ぶ。
 一体その手が今までどれだけの血を浴びて来たかは知る由もないが、例え下心が動機だとしても、それだけ人を優しく運べる手があるのなら、そうして人に手を差し伸べて欲しかった。
「さぁ、今楽にしてやろうなぁ」
「えぇ……ありがとう、ございます」
「――なんだ?」
 急に部屋が暗くなり、手の中から重さが消えた事に戸惑うボスの背後から、両脚目掛けて剣閃が走る。
 両膝の裏を切られたボスは脂汗を流し、その場で堪らず膝を突く。突然の暗闇にようやく目が慣れ始めた頃に再び明かりが点き、今度は目を眩まされた隙にガードした腕を斬りつけた。
「何だ、何者だ!」
 再度順応し始めた双眸が仰ぐ。
 白い光沢をまとった純白の装甲を身にまとい、守護剣を握る姫騎士の立ち姿を。
「フトゥールム・スクエア、フィリン・スタンテッド。使命を遂行する」
「連中の差し金か……このぉ!」
 血を噴きだしながら立ち上がったボスの剣撃を躱し、横から胴を薙ぐ。
 胴に巻かれた防具越しに与えた衝撃がよろめかせ、踏ん張る脚から更に出血させ、激痛に再び膝を突かされる。
 その隙に守護剣の盾部分と剣部分を合体、変形。巨躯の大男を優に狩れる大剣を振り被る。壁を二度蹴り上げて、巨躯のボスよりも上を取った。
「スタンテッド……キャリバー!!!」
 一閃。
 ボスの巨躯に、光り輝く斬撃が叩き込まれる。
 怪物の断末魔のような奇声を上げたボスは剣撃の勢いで数度回転しながら倒れ、そのまま力尽きた。
「何事だ?!」
 休憩中だった店員や店長が、奥から飛び出て来た。
 厨房にいるはずのタスクが痺れて動けない賊を後ろ手で縛っているものだから、全員状況把握能力が追い付かず、言葉がまったく出て来ない。
 と、店長らに気付いたタスクがペコリ、と頭を下げて。
「フトゥールム・スクエアのお仕事です。盗賊団が今日宴をやるとの事で、捕縛しに来ました」
「……なる、ほど。通りで、変な味がすると、思った」
 警戒して最初に縛っていたはずだが、縄を抜けた側近が人質を取るべく剣を手に店長らに迫る。
 だが、麻痺毒の影響で動きは遅い。間に入ったタスクが繰り出された剣撃を鍋蓋で受け止め、腰を深く据えると、袖の中に隠し持っていた棍棒を取り出した。
「月下白刃……!」
 胸座を突き、魔力が体を貫通して吹き飛ばす。
 背中から落ちた側近は立ち上がろうと首を起こしたが、結局全身を巡る毒と激痛とに意識を刈り取られ、沈黙した。
「お騒がせしました。すぐに学園の者が来ますので、改めて説明を……」
 かくして、盗賊の一網打尽作戦は成功に終わった。
 その後【コルネ・ワルフルド】先生が店側への説明も兼ねて警官隊を引き連れて現れ、捕縛した賊は全員引き渡された。
 隠れて店の裏口から逃げ出そうとした連中もいたそうだが、駆け付けた警官隊曰く、泡を噴いて倒れる連中の側で、パンを食べている璃桜と合流。無事に捕縛出来たそうだ。
 今回潜入のために稼いだお金は、壊れた店の修理費に回す他なさそうだが、盗賊が無事に捕縛できたのだから、文句はない。
「ジム」
 力強いハイタッチが響き渡る。
 強くなる。そう誓い合った二人は、更に歩みを進めていく。
「そうだ。グラヌーゼ麦パン、焼いたんです。良ければどうぞ」
「パンで祝杯?」
「今はこれしかありませんので、すみません」
「……じゃ、次はもっと豪勢にやりましょう。もっと大きな依頼をやり遂げて、ね」
「えぇ、是非そうしましょう」
 パンで乾杯する二人。
 更なる強さを求む二人の因縁が、かの仇敵を引き寄せる日は近いかもしれない。
 さも刃は、闇の中から忽然と――。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
そうよ私は蛇使い座のヲンナ
執筆:七四六明 GM


《そうよ私は蛇使い座のヲンナ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 1) 2020-10-19 05:52:44
一番かな? 勇者・英雄コースのフィリンよ、よろしく。

やること自体は酒宴中の盗賊団の捕縛、シンプルね。
決めておくのは全体方針…一服盛るか、酔い潰すかか、真っ向勝負かだけど
人数考えると、からめ手のほうがいいかしらね。

私自身も変装や演技は得意なほうだから、役立てられると思うわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 2) 2020-10-23 15:30:09
遅刻帰国、大遅刻~!
ギリギリになってすみません!勇者・英雄コースのタスク・ジムです!

どうしても参戦したかったのに、なかなか都合がつかず、
こんなギリギリになりましたが、間に合ってよかった!

現状ノープランですが、取り急ぎご挨拶まで!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 3) 2020-10-23 17:05:34
あ!そうだ!
いっそのこと、ケータリングで一服盛る作戦はどうですか?
擬装、信用や魅力、料理に結構なリソースを割けば、
うまくすれば大量の賊を無効化出来るかも!
リザルトとしても意外性が出て面白いかもしれませんし、いかがでしょうか?

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 4) 2020-10-23 19:30:05
二人になったわね。よろしく、ジム。
私の方はおだてて酔い潰して、頭領を隔離してのんとか、という方針で考えてるわ
(PLより……すいません、私生活の本業が抜き差しならぬことになっており、プランは提出済ですが修正など対応ができない状態です。ご迷惑おかけいたしまして申し訳ございません)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 5) 2020-10-23 20:01:25
なるほど!
では、僕も似た方向で頑張りますね!
フィリンさんはお酒で、僕は睡眠薬料理で、手分けして賊を無力化していけるといいですね。
頭領さんの隔離はお任せします。僕も、何か有効な工夫を考えておきますね。
あとは、先輩さんとの交流も目標です。

(PL様お疲れ様です!僕も恐らく似た状況です。昨日までが地獄でした。共感いたしております!)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2020-10-23 23:59:47
全力を尽くしました!各300字ずつ!

二人きりの特命係として頑張りましょう!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2020-10-23 23:59:56