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ほのぼのしたティータイムをどうぞ


ストーリー Story

 雄大なフトゥールム・スクエアには、敷地内に様々な施設が存在します。
 その中の1つである超大型商店『クイドクアム』の一角にある喫茶店で、【ユリウス・シーエンス】と【キャロライン・セイント】は、放課後に決まってティータイムをするのが大のお気に入りです。
 ほら、今日も窓際の席に座り、二人はティータイムをしながらお喋りに夢中のようですよ。

「……それでねユリウス、せっかく新入生が入学して来たのだし、恒例のあれをやらない?」
「相変わらずだなキャロラインは。僕は構わないが、新入生全員は無理だぞ?」
「分かっているわよ、そんな大きい事はしないから。ただこの喫茶店に入る人数程度は集まって欲しいかな?」
 お世辞にも、大人数が入れるような広さとは無縁の小さな喫茶店で、こだわり派のマスターの影響か、提供されるのは飲み物と、トーストだけというシンプル過ぎる軽食のみ。
 それでもマスターの淹れる珈琲や紅茶は絶品なので、ユリウスもキャロラインも毎日通いつめていたりします。
「開くなら、この喫茶店よね」
「でも食べ物はどうするんだ? トーストだけじゃつまらないだろキャロライン?」
「そうねぇ……。マスター、持ち込みは大丈夫かしら?」
 キャロラインがお願いの瞳でマスターを見つめると、マスターは渋々ながら頷いてくれた。
 これで、この場所を使って新入生とティータイムが出来ると、喜ぶキャロライン。それを見てユリウスはお人好しと呆れるばかり。
 でも断り切れず付き合うのがユリウスの良いところだったりもします。
「新入生だって、友好と出逢いの場所くらい欲しいと思わない?」
「……それって。まぁいいけど」
「新しい友! 新しい恋! あ、もう居たりして」
「それはいいんじゃないか。同じ学生なんだ、そんなこともあるだろう?」
 全員が寮生活です。
 男女別々の寮でも、授業や共有スペースがあるのだから、少なからず出逢いはあるものです。
「ちょっとだけのお手伝いもかねて……ね、ユリウス?」
「……お人好し」
 とうとう口に出して言ってしまったユリウスに……キャロラインは、あぁ少しだけ怒っているようですよ。
「と、とにかく、寮に帰ったら、参加したい新入生は各自お菓子を持参で集まってと書いて貼り紙を貼るわ」
「参加希望者はキャロラインのところまでが抜けてる……」
「もちろん書くわよ。それに突っ込みを入れないでよねユリウス」
「はいはい」
「それでね、沢山集まったら私たちどうしょう?」
「どうって……僕たちは普通だろ。僕とキャロラインの仲なんだ」
「ユ、ユリウス! ここ喫茶店の中!」
「あ、ごめん」
 照れ隠しのように、真っ赤になりながらも叫ぶキャロラインと、素直にあやまるユリウス。
 それを見て、マスターは『知っているよ』と笑っています。
 どうやらこの二人も付き合っているようですね。
 そしてキャロラインは寮に帰ってから、談話室にこんな貼り紙を出してしまいます。

 『新入生の皆さん、私と一緒にティータイムをしませんか?
 新入生の皆さんの、楽しい放課後のひとときになればと思います。
 場所はクイドクアム内にある喫茶店です。あまり広くはない場所なので、入れる人数に制限がありますから、先着順になってしまいます。
 なお、来る時は、それぞれ好きなお菓子を持参して下さい、みんなで分け合って食べましょう。
 飲み物はマスターの美味しい珈琲か紅茶を用意してくれますので、一緒に飲みましょうね。新入生の皆さんの参加を心からお待ちしています。
 参加希望者は私、キャロライン・セイントまで直接来て下さい』

 最後の一文は、ユリウスに言われた通り、取って付けたような書き方のキャロライン。
 そして一緒に企画するユリウスの存在すら忘れたような、こんな貼り紙を出してしまいます。
(ティータイム当日に、急に僕が入ってもビックリしないよな?)
 これでも真剣なんだから、多少のドジは見逃してやって欲しいと、キャロラインの貼り紙を見たユリウスは、当日の僕はどうしようと頭を抱えしまったようです。

 さあ上級生からのティータイムのお誘いです。
 新入生の皆さん、このティータイムに参加しませんか?


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-09-23

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-10-03

登場人物 3/8 Characters
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《未来を願いし者》エトワール・フィデール
 ヒューマン Lv8 / 教祖・聖職 Rank 1
私は恵まれている、愛されている。だから…今度は私が愛を返す番です ーーーーーーーーーーーーーーーー 容姿 ・緩くミツ編みにした腰まである長い黒髪、丸い大きな青い目にうっすらと紅い頬。何処か人形めいた容姿に柔らかく穏やかな表情が人間味を与えている。 ・学園の制服以外では孤児院を出る際にマザーとシスターから貰った修道服を着て過ごしている 名前 ・教会のマザーにつけてもらった。愛称はエト ・姓は孤児院のものである 【PL】 ・友達申請ご自由に
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。

解説 Explan

●目的
 キャロラインとユリウスと一緒に、ティータイムを楽しむのが目的です。

●行動
 持参するお菓子は何でも構いませんが、1人1つとします。勿論キャロラインとユリウスも1つずつ持って来ます。
 お好きなお菓子をプランに書いていて下さい。プランに書かれていないと、マスターのトーストになってしまいますので注意して下さい。

 ただし、みんなで仲良く食べるので、見た事も聞いた事も無いようなお菓子はNGとします。
 ドラゴンの鱗入りクッキーとか、火トカゲのファイアケーキなど、創作系は全員で食べれませんので、実際にあるお菓子にして下さい。
 喫茶店に入り切らないようなお菓子もNGです。渋い顔のマスターに怒られてしまいます。

●補足
 ほのぼのな親交を目的とした、小さなホームパーティー形式です。先輩だからとガチガチにならないで気楽に参加しましょう。
 パーティーはくれぐれも時間厳守ですよ?


作者コメント Comment
●マスターより
 新入生歓迎親睦会とでも言いましょうか、面倒見の良いキャロラインは毎年こうしてティータイムを開いているようです。
 そしてユリウスも多少文句を言いながらもキャロラインに毎年付き合っています。
 あ、新入生に対してユリウスは文句は言いませんから安心して下さい。文句を言うのはキャロライン限定です。

 プランは文字数いっぱい書いて下さると、話を書きやすく大変助かります。更にセリフを書いて下さると泣いて喜びます。
 ほのぼのした親睦会ですので、肩肘を張らず気楽に参加して下さい。
 新入生の皆さんへの少しのサポートですが、どうぞ宜しくお願いします。


個人成績表 Report
ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
先輩とティータイム、楽しまなきゃ損よね。
飲み物は飲みなれた紅茶でお願いします。
そして持参するお菓子は「ププランツリー」
えっこれって「クロカンブッシュ」じゃないの?
うふふ、これはね、その原型とされている古典菓子なの。
違いは、シュー生地の中には何も入ってないし、積み上げるための接着剤は蜂蜜を使っているわ。
普通に取り分けて食べるのもいいんだけど、どうせならゲーム感覚で楽しもうと思って少しアレンジしてみたわ。
シュー生地にクリームが入っているものは大当たりよ。
そして大外れは・・・うふふ、ご想像にお任せするわ。
まぁ、あまり変なものは入ってないから安心してね。





エトワール・フィデール 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
お茶会で皆さんと交流する

【持ち込むお菓子】
手作りのひと口サイズのスコーン(プレーン)

【行動】
お茶会が始まってそうそうに両手を組んでいつものお祈りを
お誘いを受けた側であるが癖でついつい給仕にまわり勝ち
【空気察知Lv2】【料理Lv3】
恋愛ごとには疎い様子


ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:40 = 13全体 + 27個別
獲得報酬:1080 = 360全体 + 720個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
お菓子…もといお茶会を楽しむ。

【行動】
らぴゃたみゃくたらたたららた!(挨拶代わりに名乗りながらジャーンと登場)
(グルメとの)出会いを求めてあちきが来たのじゃ!
あ、マスターもこんにちはなのじゃ。今日は世話になるのじゃ。

あちきは、ハチミツ(チューブ入り)とホイップクリーム(タッパー入り)を持ってきたのじゃ。
それをこのまま…ではないぞ?
マスターのトーストを頼むのじゃ。
出てきたトーストを手早く切り分けて、バターを塗って、ハチミツをたっぷりかけて、仕上げにホイップクリームを乗せるのじゃ。
完成、お手軽ハニートースト風なのじゃ!
やはりこれは焼き立て作り立てが至高…さぁ、冷めぬうちにどうぞなのじゃ。

リザルト Result

 集合場所の喫茶店で先に待つのは、このティータイムを企画した【キャロライン・セイント】と【ユリウス・シーエンス】の仲良し二人組。
「それで? 貼り紙を見て誰か来たのか?」
「えぇ、集まってくれたわ。そろそろお菓子を持参して来るころよ」
「僕たちもだろ?」
「もしもの場合のために一応……ね」
 ――さて、どんなお菓子が飛び出すのやら。

 二人が待って少し経った時、控え目に『チリン』と、扉が開く鈴の音が響く。
 入って来たのは【エトワール・フィデール】。
 小さな箱を抱えながら、キャロラインとユリウスを見つけ、聖職者らしい慈愛の笑みをもらした。
「ごきげんよう。今日は素敵なお誘いを、ありがとうございます」
「待っていたわ、エトワールさん」
 キャロラインが気楽に話かけると、エトワールは穏やかに笑う。
「今日この日、この時を与えて下さった、主と精霊に感謝致します」
(あぁ、なんて聖女らしい!)
 ユリウスがそう思ったのは、周りには内緒。
「そうね、出会いは縁と導きだもの。さ、座って」
 『はい』とエトワールが二人の居るテーブルについた時、次のメンバーが扉を開けて訪ねて来た。
「こんにちは、お招きありがとうございます。【ニムファー・ノワール】十七歳です! ニムファーは呼びにくいので『ニミィ』と呼んで下さいませ」
 これはまた……入って来た途端に弾丸のような自己紹介が炸裂。
 本人が考えたのか、虎の絵が入った服を身に纏ったアークライト。それがニムファー。
「来てくれてありがとうニミィさん」
 学園内はこんなタイプも多いので、驚くこともなく挨拶を返すキャロライン。
「こちらに座りませんか?」
 エトワールも、にっこりと笑い自分の隣の席に誘っている。
 聖職者たるもの皆等しく。この神格的な精神が根付いているらしい。
「そうさせて貰いますね」
 大きめの箱を持ったニムファーがエトワールの隣に座り、待つのは残り一人。
 そう思っていたら、『バン!』と扉を開け放つ大きな音がし、そして……。
「らぴゃたみゃくたらたたららたー!」
 明るい大声と共に飛び込んで来たのは、【ラピャタミャク・タラタタララタ】。
 前衛的な独特のきわどい衣装と、その瞳が特徴的なカルマの彼女。
 楽しいと面白いが大好き、それが彼女の個性。
「(お菓子との)出会いを求めて、あちきが来たのじゃ!」
 この場に居る全員が『!?』と驚く中、ラピャタミャクは腰に両手をつけ、格好よく楽しそう。
「よく来てくれたわね。えーと……ラピャタタタ?」
「長い名なので『ラピ子』でよいのじゃ」
「ではラピ子さん、あなたも座ってね」
「そうさせて貰うのじゃ! あ、マスターもこんにちはなのじゃ。今日は世話になるのじゃ」
 座りながらも、ラピャタミャクはマスターにご挨拶。
「お、おう」
 存在すら忘れられていたようなマスターが、ここで初めて声を出した。
 いや、もう一人忘れていないかい。
「……僕も居るんだけど」
 キャロラインの隣で小さくなっているユリウス。女性のパワーに負けている……とは言いにくいらしい。

「マスター、皆さんにウェルカムティーをお願いね」
 全員が集まったからというキャロラインの言葉に、マスターはメンバーを見て考える。
「そうだなぁ、一番始めはアールグレイなんてどうだ?」
 漸く俺の出番だと言わんばかりにマスターが動き出す。
 茶葉の入ったポットにお湯を注げば、店中に香料の良い香りに包まれだした。
「マスターさん、私もお手伝いしますね」
 エトワールが人数分のカップと、アールグレイが入ったポットを持ちテーブルへと運ぶ。
 世話焼きエトワールは、じっとしているよりも自分から率先して動くほうが好きなよう。聖女は孤児院の経験からもてなすほうに慣れている。
「もう少し蒸らしてから淹れるんだぞ」
「はい、わかりました」
 マスターが最後にエトワールに渡したのは砂時計。
 この砂が落ちきれば飲みごろ……そうマスターは言いたいらしいが、口下手なのが玉に瑕なだけ。
「……時計の砂がなくなったのじゃ」
 そわそわと砂時計を見ていたラピャタミャクが声をだし。
「もういいですわね」
 続いてニムファーも落ち着かない様子でエトワールを急かす。
「では淹れますね」
 カップに注げば一層香りが強くなる。
「では、主と精霊に感謝しましょう」
 エトワールが両手を組んで主にお祈りした後、全員がアールグレイの香りを楽しんでから、一口飲んでみた。
「……美味しいです」
「まあ! 思ったほど香料がキツくなく、いい味わいですわ」
「美味なのじゃ!」
 初めてマスターこだわりの飲み物を口にした、エトワール、ニムファー、ラピャタミャクの素直な感想。
 それを聞いて、キャロラインとユリウスは、にっこり笑っている。
「マスターは茶葉から加工する、こだわり派なんだ」
「あなたが言ってどうするのよユリウス」
「……なんで僕だけ」
 仲がいいユリウスに、キャロラインは容赦なし。
 それだけユリウスを信用しているのだけど、愛情の裏返しとでも言うべきなのだろう。
「つ、次はみんなが持ち寄ったお菓子にしましょうね」
 照れ隠しのように、先に進めようとするキャロライン。
 きょとんとしているエトワール。ははーんと、二人を見つめるニムファーとラピャタミャク。
 感じ方は人それぞれ。でも揃って『二人は仲がいい』なんて思ったのは間違いない。

「では私からでいいでしょうか?」
 エトワールが出したお菓子は、一口サイズに作られたスコーン。
「スコーンを持参しました。……私の作ったものなので、お口に合うかわかりませんが」
 テーブルに置き箱の中から取り出した、可愛いバスケットに入れられたスコーン。
「旨いのじゃ!」
 すぐさま手に取り、ポイっと一口食べた途端、ラピャタミャクが満足そうな声を上げる。
「食べやすく、プレーンなのがまた良いですわね」
 マスターが次に淹れてくれたロイヤルティーとともに、甘すぎず口に入りやすいスコーンは大人気。
「そう、ラピ子さんはなにを持って来たの?」
 店に入った時、ラピャタミャクは小さな袋しか持っていなかったと疑問に思うキャロライン。
「よくぞ聞いてくれたのじゃ! マスター、トーストを注文するのじゃ」
「トーストで……いいのか?」
 確かにここにはトーストしかメニューが無いけれど、本当にそれでいいのだろうか。エトワールとニムファーの胸に不安がつのる。
「トーストだ。だがこれだけだぞ?」
「十分じゃな。あちきが考えた通りの厚さ大きさ、これで出来るのじゃ」
 ラピャタミャクが袋から取り出したのは、ナイフとフォーク。
 熱々のトーストに備えつけられたバターを乗せ、溶け出したところで素早くカット。
「あちきが持参したのは、ハチミツとホイップクリームじゃ。後はわかるじゃろ?」
 綺麗に溶けたバターにハチミツをたっぷりとかけて、仕上げにホイップクリームを乗せれば出来上がり。
「完成。お手軽ハニートースト風なのじゃ!」
 シンプルなトーストが見事に変貌し、美味しそうなスイーツに変身。
「やはりこれは焼き立て作り立てが至高。……さぁ、冷めぬうちにどうぞなのじゃ」
「トーストがこのように変わるなんて凄いです」
「熱さと甘さのハーモニー。ラピ子さん、貴方の思いつきが羨ましいですわ」
「あちきは世界中の美味しいモノが大好きなのじゃ」
 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノを。これがラピャタミャクの価値観。
 このハニートースト風も、長の旅の中で身につけたもの。
「最後は私でいいかしら? 面白いお菓子を用意して来たのよ」
 ニムファーが取り出したもの、それはシュークリームが山盛りに積まれたお菓子!?
「ププランツリーと言いますのよ。シュークリームの原型とも呼ばれる古いお菓子ですわ」
「今はクロカンブッシュと言ったほうが通る。まぁ、中身のないシュークリームを積み上げたと思ったほうがいいだろう」
 さりげないマスターのフォローに、ニムファーはニヤリと笑う。
「マスターは博識ですわね。これを普通に取り分けて食べてもいいんだけど、どうせならゲーム感覚で楽しもうと思って、少しアレンジしたわ」
 ゲーム、アレンジ、楽しむと聞いて、皆の目が輝く。こんなところは学園の『ゆうしゃ』としての気風をしっかりと受け継いでいるよう。
「シュー生地にクリームが入っているものは大当たりよ。そして大外れは……ふふふ、ご想像にお任せするわ。まぁ、あまり変なものは入っていないから安心してね」
 『変なもの』。
 学園内に変なものというか、ヤバいものは数多ある。
 それを想像すると……エトワールとラピャタミャクの選ぶ目に力が入った。
 なにがなんでも回避しようとしているのが丸わかり。
 ニムファーの言い分からして毒はないようだが、不味い薬草などは多分にありそう。
 中身を知っているニムファーはともかく、差し出されたメンバーのほうは真剣そのもの。
「……私からいきますね。主と精霊よ、大当たりを引くご加護を与えたまえ」
 積み上げるために、ハチミツを使ったププランツリーの真ん中辺りを摘まみ、エトワールは恐る恐る一口食べてみる。
「甘いクリームが……。大当たりのようです。あぁ、主と精霊よ感謝致します」
 そこまでか! と言いたくなるくらいに、両手を組み祈りを捧げるエトワール。
 でもニムファーの攻撃は終わらない。
「シュー生地はまだ沢山あるわ。次はラピ子さんね?」
「あちきは、こういうのに弱いのじゃ!」
 ギャンブルは確実に負けるラピャタミャク。とてもじゃないが大当たりを引ける自信は……ない。
「い、いくのじゃ」
 一番下のシューを取り、食べればなにも怖くないと言わんばかりに、一気に口の中にほうり込んだ。
「……ない? 変なものはなかったようじゃな。あちきにすれば大当たりじゃ」
 どうやらシュー生地だけのを選んだようで、シューの芳ばしさだけがラピャタミャクの口中に広がっている。
「じゃあ私ね」
「その次は僕だな」
 キャロラインとユリウスが次々と選び、二人ともクリーム入りのシューを引き当てた。
 ニムファーは気楽に選んで頬張り、ププランツリー戦二周目に突入。
「外れてしまったらどうしましょう。どうかご加護を」
 また一つシューを摘まみ、少しだけ噛ってみる。
「……普通です」
「では、あちきが外れを引くのか!?」
 ラピャタミャクも、再び選び食べてみるが……中身は普通。
 残り少なくなったププランツリー。この中にはまだ恐るべき外れが潜んでいる?
「ふ……ふふふ……」
 そんな中、ニムファーだけが突然笑い出した。……なぜだろう。
「わたくしはゲームと言ったはずよ。本当はね、この中に大外れは無かったの。みんな楽しんだでしょう?」
 『えぇーー!?』と店中に皆の大声が響いたのは、言うまでもなく、マスターはカウンターで肩を震わせて笑う始末。
「だ、騙されたのじゃ」
「やられましたね」
「こういうのをフェイクと言うのじゃ。エトワール、汝もわかるであろう?」
「えぇ、見事なフェイクでした。それと、私もエトでいいです、ラピ子さん」
「ニミィ、エト、ラピ子、みんな愛称で呼び合うのはいいですわね」
 思わぬゲーム大会となったが、エトワール、ニムファー、ラピャタミャクに堅い友情が生まれたともいう。
 ――緊迫感があると、時に人の絆をより強固にする。
 そんな一説もあるようなので、三人の絆は確かなものになるだろう。
「みんながお菓子を持ってきてくれたお礼に、私たちはこれよ」
 キャロラインが持って来たのはチーズケーキ。
「僕はこれ」
 ユリウスが出したのは……綿菓子!?
「これもお菓子じゃが」
 あまりの素朴さに、呆然と見てしまったラピャタミャク。
「これもありでしょう」
 温かい目で見るエトワール。
「コーヒーに入れたら美味しそうですわ」
 新たな発想のニムファー。
「ちょっと待って、違うの。私とユリウスで一つのお菓子なのよ」
『???』
 意味がわからないという顔の三人の前で、キャロラインはチーズケーキの上に、綿菓子を乗せてしまった。
「これじゃつまらないわよね? でも、こうすればどう?」
 取り出したのは教材用の杖。これを綿菓子に向け、ユリウスは魔力を込める。
「表れよプチヒド」
 小さな魔方陣が展開され、火の玉が一つ浮かび上がる。
 それを綿菓子に点ければ、熱でどんどんと溶け、チーズケーキと一体になってしまった。
「どう? 焼きチーズケーキ、素敵でしょう」
 とろけるチーズケーキに、綿菓子を焼いた芳ばしさがプラスされ、なんとも美味しい味わい。
「わぁ! さすが上級生になると考えが違いますわ」
「えぇ、これも主と精霊のお導きです」
「美味じゃのう。あちきもいつかはやってみたいのじゃ」
 それぞれ持ち寄った美味しいお菓子を食べ、最後にマスターがお疲れ様の意味で淹れてくれたハイビスカスティーを飲み、夕方過ぎまでお楽しく騒がせなティータイムは続いた。



課題評価
課題経験:13
課題報酬:360
ほのぼのしたティータイムをどうぞ
執筆:鞠りん GM


《ほのぼのしたティータイムをどうぞ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 1) 2019-09-18 06:14:44
お菓子かぁ、何がいいかなぁ。
タイガーロール!は惣菜パンっぽいしお茶会にはちょっとね。
なにか面白そうな物、探してみようかしらね

《未来を願いし者》 エトワール・フィデール (No 2) 2019-09-18 22:42:08
ごきげんよう
素敵なお誘いの張り紙を見つけたので参加希望を出してしまいました。

お菓子の持ち込み…そうですね……久しぶりにひと口サイズのスコーンを焼いて持って行きましょうか

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 3) 2019-09-21 03:17:49
らぴゃたみゃくたらたたららた!

ふむ、各自で菓子を持ち込みとな…
ただ持っていくのもアレじゃし、マスターのトーストにちょっと手を加えてみるかの。