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闘え!! 木人拳


ストーリー Story

「木人10号、起動確認」
「よし、成功だ!」
 祭壇に鎮座している木像の瞳に赤い光が点ると、その場にいた人々の間で歓声が上がった。
 村人の1人が、用意した水晶玉に両手を乗せて念を込める。すると、デッサン人形のような見た目のその木像は、人が入っているかのような軽快な動きを見せ始めた。
「村長、これで一安心ですね」
「うむ。10体もの『木人』がこうして動いてくれるのは、皆がきちんと祭壇を管理してくれたおかげじゃな。礼を言うぞ」
 長い髭をしごきながら、村長の老人が村人達をねぎらう。
 ここは『アルマレス山』の麓にある集落の1つ、木こりと木工職人の村『ドレスト』。高級ハチミツで名高い隣村の『ハニーコーム』に比べ、村人達の暮らしぶりはごく慎ましい。
 しかし、地味で目立たないドレストの村が、10年に1度だけ大きな注目を集める日がある。
 ハニーコームとは反対側の隣村、『ルガルク』と共同で開催する伝統行事『木人武闘会』。世にも珍しい『ウッドゴーレム同士の殴り合い』を一目見ようと、各地から多くの人が押し寄せてくるのだ。
「前回は不幸な事故があったからのう。今回はそんな事のないよう、ルガルクとよく打ち合わせをして――」
「事故だと? よく言うぜ。あれはお前らが仕組んだ事だろうが」
 村長の言葉を遮り、祭祀場に乱入してきた若い男。それは、話に出たばかりのルガルク村の村長であった。
「……お主、なぜこんな所で油を売っておる?」
 ドレストとルガルク、2つの村の村長が対峙する。村の規模も生業もほぼ同じである両村は、長年に渡るライバル同士の関係にある。
「けっ、相変わらず気に食わない連中だ。この俺自ら、わざわざ報告に来てやったのによ」
 口の端を歪めながら、ルガルクの村長が言葉を吐き捨てる。
「報告じゃと?」
「ああ。耳の穴かっぽじってよく聞けよ。俺達ルガルクは、木人武闘会に生身で1名出場させる事にした。……おい、入っていいぞ!」
 ルガルクの村長に促され、1人の巨漢がのっそりと祭祀場の入り口をくぐり抜けた。天井に頭をつきそうなその大男には、強面の人相も相まって凄まじい威圧感がある。
「な、何じゃその男は?」
「傭兵の町『バルバグラード』から腕利きを1人雇った。当日はこいつに武闘会に出てもらう。お前達のせいで動かなくなった、うちの木人の代わりにな」
「お、お主。一体何を考えておるのじゃ……?」
「そんなの決まってるだろ? 俺も木人武闘会を盛り上げたいんだよ。ただ……前みたいな事故は起こるかもなあ?」
「ま、待つのじゃ!」
 制止も虚しく、大男を引き連れたルガルクの村長は、高笑いを響かせながら祭祀場を立ち去るのだった。


「――今からおよそ200年前。アルマレス山の麓に、ゴーレムの研究ばかりを行う変わり者の魔術師がいた。彼がドレスト・ルガルク両村に10体ずつ授けたのが、『木人』と呼ばれるウッドゴーレムだ。伝承によると、この2つの村の間でもめ事が起こると、人の代わりに木人を戦わせて解決を図ったのだという」
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の教師が語るのは、奇妙なゴーレムが織りなす2つの村の歴史であった。
「はっきり言って、そのゴーレムに実用性はほとんどない。数日動かすのに森の精気を10年間も充填しなくてはならない上、出せる力はせいぜい一般人と同じ程度だからな」
 それでも、魔法適性のない者が木人を操作できるよう、水晶玉に特殊な処理を施した魔術師の技量には目を見張るものがある。
 その魔術師が亡くなった後も、2つの村の人々は木人を大切に守り続けてきた。
 10年に1度しか使えないものを、実際の紛争解決に使うのは難しい。代わりの利用法として考え出されたのが、村対抗で木人達を戦わせる『木人武闘会』だったのだ。
「競技として木人達を戦わせる事が、一種のガス抜きになったのだろうな。両村は長年深刻な対立をせずに済んだのだが、前回の武闘会で事件が起こった」
 木人は頭・胴体・右腕・左腕・両脚の5つのパーツに分類される。その中で、頭だけは替えが効かないのだという。
「詳しい経緯は不明だが、ドレスト側の木人が放った突きが頭部を直撃し、ルガルクの木人の1体が故障してしまったらしい。当然、その木人を操作していた村長の息子は抗議をしたが、トラブルを恐れた当時のルガルク村長は、それ以上の追及を許さなかった」
 その時はそれで収まったものの、最近ルガルクの村長が代替わりした事で状況は変わった。
「……今のルガルク村長は、木人を操っていたその息子だ。10年も前の事なのに、まだしつこく根に持っているらしい」
 執念深いルガルクの現村長は、動かなくなった木人の代わりに傭兵まで雇い、復讐を果たそうとしている。
「ルガルクの村人達はともかく、村長の木人とその傭兵がラフプレーを行ってくる可能性は高い。状況がさらに悪化すれば、2つの村の全面衝突は避けられなくなるだろう。お前達は木人武闘会にドレスト側の選手として参加し、両村の木人を何としても守り通してくれ。木人を操るか、それとも生身で戦うか。それは各人に任せる。頼んだぞ」
 今は悪意を向けられているとはいえ、これ以上ルガルクの木人が故障するような事態は避けたい。それがドレスト村の総意であった。
 長い話を終えたその教師は、疲れた表情を浮かべながらも鋭い視線を学生達に向けるのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-10-31

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-11-10

登場人物 2/8 Characters
《イマジネイター》ナノハ・T・アルエクス
 エリアル Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
フェアリータイプのエリアル。 その中でも非常に小柄、本人は可愛いから気に入っている。 明るく元気で優しい性格。天真爛漫で裏表がない。 精神年齢的には外見年齢に近い。 気取らず自然体で誰とでも仲良く接する。 一方で、正義感が強くて勇猛果敢なヒーロー気質。 考えるよりも動いて撃ってブン殴る方が得意。 どんな魔物が相手でもどんな困難があろうと凛として挑む。 戦闘スタイルは、高い機動性を生かして立ち回り、弓や魔法で敵を撃ち抜き、時には近接して攻め立てる。 あまり魔法使いらしくない。自分でもそう思っている。 正直、武神・無双コースに行くかで迷った程。 筋トレやパルクールなどのトレーニングを日課にしている。 実は幼い頃は運動音痴で必要に駆られて始めたことだったが、 いつの間にか半分趣味のような形になっていったらしい。 大食漢でガッツリ食べる。フードファイター並みに食べる。 小さな体のどこに消えていくのかは摩訶不思議。 地元ではブラックホールの異名(と食べ放題出禁)を貰うほど。 肉も野菜も好きだが、やっぱり炭水化物が好き。菓子も好き。 目一杯動いた分は目一杯食べて、目一杯食べた分は目一杯動く。 趣味は魔道具弄りで、ギミック満載の機械的な物が好き。 最近繋がった異世界の技術やデザインには興味津々で、 ヒーローチックなものや未来的でSFチックな物が気に入り、 アニメやロボットいうものにも心魅かれている。 (ついでにメカフェチという性癖も拗らせた模様)
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。

解説 Explan

プロローグの情報と、プロローグに書き切れなかった情報を纏めます。

【課題の目的】
 ドレスト・ルガルク両村が共催する『木人武闘会』に参加し、『両村の』木人を1体も故障させずに祭りを終了させる。

【木人について】
 全長約160センチ。頭・胴体・右腕・左腕・両脚の5つのパーツで構成される。
 指は無く、物を掴むことはできない。
 胴体に一定のダメージを受ける事で、KOされたと見なされ動かなくなる。
 他のパーツは替えが効くものの、頭部はダメージを受けすぎると故障してしまう恐れがある。
 木人が故障した時点で課題は失敗となる。(本エピソードでの木人の修理は不可とする)

【木人武闘会について】
 10対10のバトルロイヤル方式で、各村に1体の大将を設定する。大将をKOした時点で試合終了。KOした村の勝利となる。
 大将機の胴体には目印のペイントがされるため、目視での確認が可能。
 武闘会には木人又は生身で参加する。ただし、武器の使用及び武器に依存する技能の使用は禁止とする。
 戦いの場となるのは遮蔽物のない原っぱで、20体の木人が駆け回るのに十分な広さがある。

【傭兵について】
 身長190センチを超える巨漢。見た目通りのパワータイプで、その拳が木人の頭部に一発でも当たれば故障の可能性がある。
 内心この祭りを馬鹿馬鹿しいと思っており、適当に暴れ回ってさっさと終わらせるつもりでいる。フトゥールム・スクエアを嫌っているため、こちらの説得に応じる可能性は低い。

【その他の情報】
 ドレスト側の木人の内、学生が操作しないものは村人が担当する。複雑な内容でなければ、村人にある程度の指示を出す事は可能。
 ルガルク側は大将である村長の木人1体・村人操作の木人8体・生身の傭兵1人の編成。
 両村の村人達には、特に戦いの心得はない。そのため、目の前の敵をひたすら殴る行動を取るものとする。


作者コメント Comment
 正木猫弥です。
 
 前回に引き続いての戦闘エピソード……のはずなのですが、今回も何だか変則的なエピソードになってしまいました。

 前回がゆうがく世界のVRなら、今回登場する『木人』は、さしずめゆうがく世界のロボットという事になるでしょうか。木人と共に、是非とも2つの村の危機を救ってください。

 皆様のご参加、お待ちしております。

※ちょっとしたお遊び要素として、正木が過去に公開したエピソードに関わる地名をチラホラ登場させています。ストーリーとは直接関係ないので、過去作を知らなくても問題なく参加が可能です。


個人成績表 Report
ナノハ・T・アルエクス 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
ルガルクの村長に勝て

■行動
木人を操縦して参加。
敵大将に挑むよ。

ボクシングのように拳を構えて接近。
まずは防御や回避を重視した立ち回り。
頭や胴を腕でブロックして直撃を避け、ステップで攻撃を回避。
時に攻撃を腕を使って捌いて弾くパリングで、相手のリズムを崩す。
そして隙あらば、ボディを殴ってダメージを与えたり、ローキックで相手の体制を崩す。
ラフプレーなんかに負けるもんか!僕は真っ向から戦うんだ!

決め時には、迷わず攻撃。この一撃に掛ける!
深く腰を落とし、強く脚を踏み込み、真っ直ぐ拳を突き出して、相手の胴を貫くような一撃。
僕の想いを!木人の拳を!僕達の全力全開を見せる!チェストォォォォーーーーッ!!

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
私は生身で参戦。ルガルク側の傭兵の相手をいたしますわ

武闘大会が始まったら、とにかく傭兵がドレスト側の木人を攻撃しないよう挑発を行って私に攻撃してくるよう仕向けますわ。上手く挑発にのり私を狙ってきたら、その攻撃は見切りを使って攻撃を回避。もしくは急所に当てられないようにだけ注意

武器が無い以上向こうも拳か蹴りの攻撃でしょうから、精密行動を用い相手の攻撃に半拍ずらして出してくる拳や足を攻撃。もし相手が嫌がって一旦下がったらチャンスとばかりに祖流還りを用い能力強化、縮地法で相手が下がった所へ一気に懐へ踏み込み鳩尾へ一撃を加え気絶させますわ。その際相手が攻撃してきたら心頭滅却と新陳代謝で耐えきりますわね

リザルト Result

 豊かな自然に囲まれた、名峰『アルマレス山』。
 その麓の大半は森林であり、一度に多くの人々が訪れる機会などそうあるものではない。
 先祖代々受け継いできた森を細々と守り、暮らしてきた『ドレスト』『ルガルク』両村にとってもそれは同様。しかし、10年振りのこの日ばかりは様相が異なる。
 『木人武闘会』――その奇妙な伝統行事を一目見ようと、多くの観光客がちっぽけな2つの村に押し寄せていたのだった。


「――えい! たあ! はあはあ……えへっ」
「おっと、あまり今動かし過ぎると……」
「はっ!? そ、そうだよね。魔力を残さないと」
 武闘会開催まであと数時間に迫った、ドレスト村側の控室テント。
 指導役の村人に声をかけられ、すっかり操作に夢中になっていた【ナノハ・T・アルエクス】が我に返った。
(それにしても、本当に凄い技術だよね)
 改めて、ナノハは巨大なデッサン人形のようなその木像――『木人』を見返した。
(本当ならじっくり調べてみたいけど……今はこの事態を何とかしないと)
 魔道具弄りを趣味とするナノハにとって、木人には好奇心がかき立てられる。だからこそ、この不思議なゴーレムが争いの火種となってしまった事が残念でならない。
「ん? どうかしたか?」
 考え込んだ様子のナノハに気付いた村人が声をかける。
「違和感、って程ではないけど……。この木人、僕に『チューニング』させてもらえないかな?」
「……ほう」
 ベテランの木工職人であるその村人は、ナノハの意図を正確に理解した。
「頭部以外は、壊れればすぐに差し替えてきたのが木人の歴史だ。この木人は、確かに関節回りが少し荒い。まさか嬢ちゃんがそれに気付くとはな」
 荒いといっても、動きに深刻な影響を与える程ではない。遊んでいるだけに見えて、実はしっかり木人を観察していたナノハの眼力に、村人は素直に感心していた。
「どうやら俺は、あんたの事を見くびっていたらしい。悪かったな」
「気にしないで。今日の相棒になるんだから、整備は万全にしておかないとだよ♪」
 村人にそう答えながらも、ナノハの頭の中はチューニングの事で頭が一杯だった。


 木人武闘会は、ドレスト・ルガルク両村が共有している広場で行われる運びとなっている。
 普段は原っぱでしかないこの場所も、今や多くの露店が立ち並び、それを目当てにした無数の人々でごった返している。
「ひっく……」
 そんな人波を、酒をラッパ飲みしながら眺める1人の男。それは、ルガルク村長の依頼を受けた件の傭兵であった。
(ちっ、面倒くせえ)
 男からすれば、『武闘会』といっても単なるお遊びとしか思えない。傭兵として名の知れた男からすれば、今回の道化のような役回りは屈辱だった。
「……ん?」
 何とはなしにドレスト村側の控室テントを眺めていた傭兵だったが、中から現れた1人の少女に目を奪われた。

「よお。あんたも木人武闘会とやらに出るのかい?」
 眼前の巨漢に酒臭い息を吹きかけられ、【朱璃・拝】は思わず眉をひそめた。
「……それが貴方に何の関係がありますの?」
「俺もそれに参加するんだよ。お互い災難だよなあ。こんな下らない祭りに出る事になってよお」
 下卑た笑顔を浮かべて距離を詰める傭兵の態度に、朱璃の表情はさらに険しくなる。
「木人とやらは、俺がぶっ壊してやるからよお。どうだい? この後、俺と一緒に――ぐ、あああ!」
 傭兵がその言葉を全て言い終える事はなかった。力づくで抱き寄せようとしてきた傭兵の腕を掴んだ朱璃は、そのまま素早く背中に回してみせたのだ。
「な、何しやがる!?」
「……木人を壊すなら、その前に私を倒して御覧なさいませ」
 蔑んだ視線と共に、男の腕を解放する朱璃。対する傭兵は、すっかり酔いが醒めた表情で朱璃を睨みつけた。
「て、テメエ! ぶっ殺して――」
「焦らなくても、後で幾らでも相手して差し上げますわ。それとも、女性に負けるのが怖いのでしょうか。図体は大きいようですが、気は小さいみたいですわね♪」
「……上等だ。首を洗って待ってやがれ」
 あまりの屈辱に、却って冷静さを取り戻したらしい。殺気をみなぎらせて立ち去る傭兵を見送った朱璃は、これから待ち受ける戦いへの警戒を強めるのだった。


 かくして、いくつかの波乱を含みながらも、木人武闘会は開催される事となった。
 楽団が奏でる賑やかな音楽の下、ドレスト・ルガルク両村の木人が登場する。
 さらには今回の目玉として、朱璃と件の傭兵が生身で参加する事が司会から告げられると、広場に詰めかけた大勢の人々からどよめきが上がった。
 『武闘会』と銘打たれているものの、本来このお祭りはコミカルな木人達の動きを楽しむ、ほのぼのとした催しである。殺気立った巨漢が現れた事に、違和感を持った者も少なくなかった。
 しかし、その異様な空気は『フトゥールム・スクエア』の2人の学生達によって吹き飛ぶ事になったのである。


「このアマ! 覚悟しやがれ!!」
 木人には目もくれず、溜まりに溜まった怒りを爆発させる傭兵。
(挑発は大成功ですわね。好都合ですわ)
 傭兵の動きは単調そのもの。であれば、朱璃には十分対処が可能であった。
「お、おい。見ろよあれ!」
 攻撃を最低限の動作で躱しながら、その拳や足に半拍ずらしたタイミングで打撃を与える。朱璃の神業に気付いた観客の間から、徐々にどよめきが起き始めていた。
「!? く、くそ……」
 拳とすねに鋭い痛みを感じ、思わず後退してしまった傭兵。その隙を、朱璃が見逃すはずもなかった。
「……そんな攻撃では、蠅も殺せませんわね」
 『祖流還り』で狼の力を得た朱璃が、目にも止まらぬスピードで傭兵の懐に飛び込み、鳩尾に深々と拳をめり込ませる。
「が……!!」
 朱璃の挑発を聞くことすらできず、傭兵は地響きを立ててあっけなく倒れた。
「や、やりやがった!」
「きゃー! カッコイイ!!」
 鮮やかな朱璃の手際に、固唾をのんで見守っていた観客から惜しみない拍手が送られる。
(……実の所、危うい所でしたわね。恐るべき馬鹿力でした)
 傍目からは楽勝に見えただろうが、挑発に乗ってこなければもっと苦戦しただろう。観客に手を上げて応えながらも、内心で傭兵を称える朱璃であった。


「ちっ、役立たずめ!」
 あっという間に倒された傭兵に、ルガルクの村長は人目をはばからずに毒づいた。
 10年前、自分が操作していた木人が壊された屈辱は、村長になった今でも忘れる事はない。
(あれ以来、俺は村の笑い者だ。親父が死に、俺が村長になってからも……!)
 あの出来事が故意か否かは、もはやルガルク村長にとってはどうでも良い事であった。
 ドレスト村に借りを返し、村長としての威厳を示さなければ、自分は前に進めない。そんな思い込みと執念が今の原動力となっている。
 どす黒い感情を抱えたまま、相手を求めて木人を操るルガルク村長。そんな彼の前に立ちはだかったのは、ナノハが駆るドレスト村の木人であった。

「大将機発見!」
「な、何だ!?」
 異常に軽いナノハ機のフットワークに、村長の木人は全く対応ができない。村長機の突きや蹴りは、ことごとく空を切った。
(動きに迷いが見える。もしかして……)
 パーツ各部を入念に目視し、強度や操作性を確認し、関節部にやすりをかける。木人に真摯に向き合ったナノハだからこそ、木人を通じてルガルク村長の屈折した思いを感じ取れたのかもしれない。
「くそっ! やってやる!」
 自暴自棄となった村長機の拳が、ナノハ機の頭部に迫る。それは期せずして、10年前に村長の木人を故障に追い込んだ突きとよく似た軌道を描いていた。
(ダメだ! そんなラフプレー間違ってるよ!)
 村長機の一撃は、ナノハ機にあっさり防御された。
 攻撃が防がれた事で、村長機の体勢が大きく揺らぐ。それにより、腹部へのガードがぽっかりと開いた。
「僕達の全力全開を見せる! チェストォォォォーーーーッ!!」
 ナノハの想いを乗せた木人の拳が、村長機のどてっ腹に炸裂する。武術の達人さながらの正拳突きの前に、ルガルク村長の木人はKOを余儀なくされたのだった。


「……何の用だ」
 武闘会が終わった後の会場。観客達が引き上げていく中、ナノハと朱璃はルガルク村長との面会を果たしていた。
「僕が言うのも何だけど、村長さんの木人操作は見事だった。だから、少し話しておきたくて」
「同情はよせ。馬鹿な真似をしたのは、俺が一番分かってる。笑いたきゃ笑えよ」
「笑わないよ。僕は絶対笑わない。僕と村長さんって、多分似た者同士だと思うから」
「……ふん。勝手にしろ」
 木人を通してではあるが、拳を交わして分かる事もある。背中を向けて立ち去る村長の口に、微かに笑みが浮かんでいたのをナノハは見逃さなかった。
「行ってしまいましたわね。村長様も反省して下さるとよいですが」
「大丈夫だと思うよ。だって……木人好きに、悪い人はいないと思うしね♪」
 村長を見送りながら呟いた朱璃に、ナノハはそう答えながらウインクするのだった。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
闘え!! 木人拳
執筆:正木 猫弥 GM


《闘え!! 木人拳》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《イマジネイター》 ナノハ・T・アルエクス (No 1) 2020-10-26 23:18:27
賢者・導師コースのナノハ・T・アルエクスだよ♪

とりあえず、木人を操って大会に参加するってことは決まったよ。
立ち回りは他の参加者次第かな…

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2020-10-28 19:27:04
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

私は生身で参加しようと思いますわ。傭兵が木人を壊さないよう彼の相手をしようかと思っておりますわ。

それにしても木人拳と聞けば某カンフーアクションスターのあれを思い出しますわ・・・。

《イマジネイター》 ナノハ・T・アルエクス (No 3) 2020-10-29 00:53:33
なら、僕は敵大将機(ルガルクの村長)の相手をしようかな。
木人には木人で挑まないとね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 4) 2020-10-29 19:22:21
了解しましたわ。こんかい武器は使えませんので、武器使用前提のスキルも使えませんから他のスキルでどう立ち回るか悩みますが何とかやってみましょう。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2020-10-30 19:56:25
ひとまずプランは提出。なんとか傭兵に木人に手を出させないよう頑張りますわ

《イマジネイター》 ナノハ・T・アルエクス (No 6) 2020-10-30 22:44:53
僕もプラン提出っと…うん、お互い頑張ろう!