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ドキドキ魔法薬学実習!(初級)


ストーリー Story

 魔法学園『フトゥールム・スクエア』内にある、第一校舎『フトゥールム・パレス』。
 地上三十階。地下四十階という馬鹿げた広さを持つ学園の目玉とも言える施設。
 その一室では、これから始まる授業について説明する教員が一人。
「座学なんてずっとやっててもつまらないし、僕の授業は全部実習をするからね。目で、肌で、鼻で、耳で、感じたことを忘れないように好き勝手にやろう!」
 おおよそ先生とは思えない内容を熱弁する人物は、魔法薬学の先生である【エルリッフ・パウラス】という『人間(ヒューマン)族』である。
 薬の研究も教員業の傍らに行っており、その服装は白衣。
 短く整えられた髪型に、眼鏡という特に特徴の無い見た目なのだが、その特徴の無さ故に、生徒達からは簡単に名と姿を覚えられたという。
 熱弁をしながら、彼は教卓の上にいくつかの物を置いていく。
「今日は、魔法薬学という授業では、必ず行わなくてはならない、「調合」という行為について授業しようと思うんだ!」
 何かの種と、何かの葉っぱ。何かの粉に、薄く黄色い瓶入りの液体。
 合計四種のアイテムを置いた彼は、順にソレが何なのかを説明する。
「この学園の施設の一つ、『リリー・ミーツ・ローズ』植物園から失敬してきた『白露菊(しらつゆきく)の種』と『日惑(ひまど)い草』」
 まるで興奮した子供のように、材料の説明だけで鼻息を荒くする彼からは、本当に魔法薬に関することが好きなのだということが窺える。
「生物園の『アニパーク』からは『砂漠サイの角の粉末』と『大ガマの油』を貰ってきた」
 ガマの油という単語に一部の生徒達から悲鳴が上がるが、エルリッフは大丈夫と手を振るジェスチャーをし、
「全員にこの素材をそれぞれ全部渡すけど、調合に使う使わないは自由。魔法薬のベースはもう用意してあるから、そこに好きな素材を好きな種類入れて魔法薬を作ってみよう!」
 と説明する。
 続けて、
「素材は全部初級魔法薬を作る素材だし、危険な薬が出来る組み合わせは無いから全部混ぜても、一種類だけにしても構わないよ」
 と説明した上でただし、と付け加える。
「せっかく自分で作った薬なんだから、自分で飲んでみようね。今言った通り、危険になるような組み合わせは無いから安心して」
 それこそが魔法薬学の醍醐味だ、と満面の笑みで言うエルリッフは、生徒達の目の前で自分の調合用の壺に魔法薬のベースであろう空色の液体と先ほど悲鳴が上がった大ガマの油を入れ――、
「んー……そうだなー」
 お菓子を目の前に、どれか一つだけと言われ悩む子供のように手をフラフラと宙に彷徨わせ、
「これにしようか」
 砂漠サイの角の粉末を手に取り壺に入れ、ゆっくりとかき混ぜる。
 何やら香ばしい香りが教室に漂ってき始めた頃、エルリッフは壺を持ち上げ一気に呷った。
 生徒達がどうなるのかと固唾を飲んで見守る中、飲み干したエルリッフは――。
「それじゃあみんな! 楽しい実習の始まりだよ!」
 ヘリウムガスでも吸ったように高く高くなった声でそう宣言し両手を横に大きく広げて。
 生徒達の目の前の机に魔法薬のベース、調合用の壺と撹拌棒、魔法薬の素材である四種をそれぞれ浮遊させ配るのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 3日 出発日 2019-05-02

難易度 とても簡単 報酬 なし 完成予定 2019-05-12

登場人物 4/8 Characters
《新入生》クロード・クイントス
 ヒューマン Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
色々と考えてから行動するタイプ。 あまり感情的にはならずニッコリ笑顔を心がけている。 でも顔は笑っていても眼は笑ってない。 厳格な家庭で育ったため人間関係に疲れて孤独を好み、自立するために家を飛び出し、秘めていた好奇心をさらけて放浪癖を患う。 ※アドリブ歓迎
《新入生》ウェルカ・ラティエンヌ
 アークライト Lv15 / 王様・貴族 Rank 1
■身長:152cm ■実年齢:14歳 ■髪形:腰までのストレートロング ■容貌:ややたれ目気味の目元の、大人しそうな容貌の美少女 ■体型:身長は小柄ながら、バストやヒップはかなり大きく、非常に発育は良いが、ウェストや手足等は細めの、極端な体型 ■性格:基本的には内向的で大人しく、穏やかな性格だが、金銭面には非常に厳しく、利害が絡むと冷酷になる面も ■コンプレックス:桁違いに豊満な上、未だに発育途上の胸/[誕生日]の時点で、既に120cmに届くとのこと ■体質:体重が増えるときは、その殆どが胸に集まり、痩せるときは他から痩せるタイプ ■服装:背中の開いたドレス/色は特に決まっておらず、気分次第で変えている ■特技:経営・商売に関連する豊富な知識/一通りの礼儀作法/実は家事全般
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《比翼連理の誓い》オズワルド・アンダーソン
 ローレライ Lv22 / 賢者・導師 Rank 1
「初めまして、僕はオズワルド・アンダーソン。医者を志すしがないものです。」 「初見でもフレンド申請していただければお返しいたします。 一言くださると嬉しいです。」 出身:北国(リゼマイヤ)の有力貴族の生まれ 身長:172㎝ 体重:60前後 好きな物:ハーブ、酒 苦手な物:辛い物(酒は除く) 殺意:花粉 補足:医者を志す彼は、控えめながらも図太い芯を持つ。 良く言えば真面目、悪く言えば頑固。 ある日を境に人が触ったもしくは作った食べ物を極力避けていたが、 最近は落ち着き、野営の食事に少しずつ慣れている。 嫌悪を抱くものには口が悪くなるが、基本穏やかである。 ちなみに重度の花粉症。 趣味はハーブ系、柑橘系のアロマ香水調合。 医者を目指す故に保健委員会ではないが、 保健室の先輩方の手伝いをしたり、逃げる患者を仕留める様子が見られる。 悪友と交換した「高級煙管」を常に持ち、煙草を吸う悪い子になりました。

解説 Explan

 四種の素材を好きに調合し、魔法薬を作ってみる。という授業になります。

 ●使用する素材
 植物系の素材を使うと見た目に関する変化が、動物系の素材を使うと先生のように見た目では分からない部分に変化が現れるようです。
 動物系も植物系も使用した場合は一体どうなってしまうのでしょうか。
 
 ●使用する素材の数
 動物系の素材二種類を使用した先生は、普段から使う「声」に変化がありました。
 種類を増やすと目立つ部分に効果が出てくるのかも知れません。

 ●薬の掻き混ぜ方
 先生はどうやら普通に掻き混ぜたようですが、速く、遅く、あるいは全く掻き混ぜないことで効果が変わるかも知れません。

 ●その他
 素材は使う使わないに関わらず四種とも配布されますので少量ずつ魔法薬のベースを使用すれば二回~三回の調合も可能ですが、一回の量は少なくなるため、効果が弱い、あるいは全く実感できない、という事が起こる可能性がありますので、多くても二回程度の調合がいいです。


作者コメント Comment
 ファンタジーでしか出来ないだろう授業と言うことで魔法薬の調合というものを考えてみました。
 どのような効果を持つ魔法薬が出来上がるのか。自分のキャラならどんな調合にするのか。
 どのくらい魔法薬に興味を持っているのか、等キャラの掘り下げのネタの一つにでもなれればと思います。
 では、不思議で楽しい授業の始まりです。


個人成績表 Report
クロード・クイントス 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
「サイの角…確か熱さましの効果があったか、ガマの油なら治癒系?」
「白露菊…菊なら確か花は眼に薬効があったな。でも種だとどうかな?」
「日惑い草…名前からして混乱系の効果か」
と予測しつつ、

実験その1、白露菊
予測が合えば眼に変化が?
白露菊の1種のみ普通に攪拌

実験その2、角と油
先生の手本では声が高く、なら効果を薄くすれば?
サイの角とガマの油の2種、入れただけで攪拌せず

実験その3、油と草
薬効果を最大に出そうと思えば惑いの草とガマの油かな?
日惑い草とガマの油の2種、十分速くに攪拌

予測当たり
「料理の知識が役に立ったか(ニッコリ)」

予測ハズレ
「これは知識やレピシがないとだな…」

そしてスキル魔法薬学Lv1取得!

ウェルカ・ラティエンヌ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
[魔法薬の調合]ですか。
元々興味のある分野ですし、楽しみですわね。

一先ず、先生の使わなかった[植物系の材料]2種類は使ってみることに致しましょう。
これに『砂漠サイの角の粉末』を混ぜてみますわ。
[混ぜる速度]だけではなく[順番]で効果が違う可能性も有りますし、『白露菊の種』→『砂漠サイの角の粉末』→『日惑い草』の順で、一つ入れるごとに少しずつ混ぜ、最後にしっかりと混ぜてみますわ。
実際に飲んでみてどうなるか、楽しみですわね。

終わりましたら、先生に[答え合わせ]をお願いしてみますわ。
たった4種類の材料でも、[材料][速度][順番]等、考えられるパターンは膨大になりますから、しっかり学びたいですわね。

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
魔法薬の味見しに混ざってるだけのモブ。
ってかつくづく、お薬作って飲んでーって、お薬関連の法律的にいーの?いーの。
ふーん、そっか。そったらいーけど。

全員に全種類の材料渡され配布なんじゃん?使う使わないにしろ。
ならザコちゃんとりまぜーんぶ味見しーとく。
混ぜて味変わったのしかわかんなかったらつまんないし。変化あったとしても分かんない終いになり得るし。
基礎になるお薬の液体?薬液?も、1口飲んどこ。苦そ。意外と無味かもだけど。

で、味見してみて美味しかったやつだけてきとーに混ぜよ。量?ある分全部。んでもってぐびっと。
不味いのを何回も飲むほどの被虐的いたぶられな趣味なんて、少なくともザコちゃんにはないしぃ?


オズワルド・アンダーソン 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【心情】
医者見習いとして、魔法薬の勉強は個人的に楽しみにしておりました。
でも、薬は自分で飲まなければいけないんですよね。
……どうしましょうかね、


【行動】
先生は動物系2種類の素材を使って「声」を変化させていました。
普通にかき混ぜていたので先程の2つの材料で「ゆっくり」かき混ぜてみようと
先生が飲んだ時よりどう変化するかを期待。
また、同じ材料で実験をしている方がいるようであれば観察させてもらい
「羊皮紙」に書き取りましょうか。

残った植物の素材は1種類ずつ調合。
「普通」にかき混ぜて飲みます。
またそこから2種類入れたらどうなるか推測し、
植物2種類をかき混ぜている方がいれば、その様子を見て答え合わせします。




リザルト Result

 配られた素材、並びに魔法薬のベースを眺めているのは【チョウザ・コナミ】。
 フラフラと手を宙に漂わせ、何か考えているらしいが――。
「まずは味見一択っしょ」
 と独り言を呟き、まずは魔法薬のベースに指を浸し、指に絡みついた液体をペロリと舐める。……どうやら、何から味見するかを迷っていたらしい。
 ――と。
「ゲホッ! ゴホッ! ……これ酢? むせるくらい喉にくるんだけど……」
 口に含んだ瞬間に咳き込んだチョウザは、不機嫌そうに味の感想を口にする。
 それを受け、真似してみようとしていた周りの生徒の手が止まった。
 けれどもそんなことはお構いなしに次なる味見へと移行するチョウザ。
 白露菊の種をほんの一摘まみ。口に運んで、
「お、ほんのり甘い。これはイケル」
 と感想を漏らし、日惑い草を一枚口に放り込んで、
「こっちは香草の類い。ちょっと匂いキツめかなー」
 と一言。
 角の粉末を舌に塗り、
「無味。……まぁそうだよね」
 と妙に納得し、油を舐めて、
「まんま油。インパクトは無いかなー」
 と一通り味見を終えたところで、
「んじゃあまぁ、美味しかったし? こいつとこいつを混ぜちゃおうっかなー」
 と、お気に召したらしい白露菊と日惑い草を配布されただけ全部壺に入れ、ベースを流し込む。
 特に壺の中身を確認せず、気分に従い適当に混ぜ合わせ……。
 ついでに、とポケットに手を入れ、その中の持ち物を勝手に混ぜようとしたところ、
「先生が配布した素材以外は混ぜないようにね。先生だって何と何を混ぜたらどうなるか、なんて把握できてないんだから、変な行動はしちゃ駄目だよ」
 と既に声の戻った先生に目ざとく見つかってしまい、ポケットに入れた手を渋々と引き上げる。
 そして、これまた中身を確認せずに一気に、グビッと、壺を逆さまする勢いで飲み干し――。
「ンゴク……ンゴク――ンブフッ!?」
 途中で一回驚愕のためか吹き出しそうになりつつ。
「ケホッ! なぁんであんな酸っぱかったのに、ここまでべらぼうに甘くなんの……。甘すぎて火が出るかと思ったわ」
 飲み干した壺をテーブルに叩き付け、そんな感想を口にした。
 と同時に、体の一部に変化が起き始める。
 壺を持つその手。その末端。
 爪が異常な速度で伸び始めたのだ。
「うっわ本気(マジ)ぃ? ザコちゃんこんな身体的特徴要らないんだけどぉ?」
 口ではそう言いつつも、どこか余裕のあるチョウザを観察し、満面の笑みの【エルリッフ・パウラス】。
 まるで我が子でも見守るように、優しい視線を投げかけていた。――――魔法薬の方に。
「心配いらないよ? ちゃんと安全な組み合わせしか無いって言ったでしょ? どんなに長くても数分で元に戻るはずだから」
 結局チョウザの爪は、その言葉通り五分足らずで時が巻き戻るが如く、音も立てずに元の長さへと戻る。その様子を見て、
「おー……すご」
 とチョウザは声を漏らすのだった。

 *

 授業の材料が配られた【クロード・クイントス】は、せっせとベースになる液体を三等分にしていた。どうやら、何回かに分けて様々な魔法薬を調合するつもりらしい。
「まずは菊だけでやってみるか……菊の花だと眼にいいと聞いた事がある気がするけど」
 と呟きながら恐る恐る白露菊をベースの中へ。変な掻き混ぜ方をせず、ごくごく普通に混ぜていくと、僅かに壺の中から音が聞こえてきた。
「? 妙な変化をしている……とかはないよね?」
 若干の不安を覚えつつも、変な組み合わせは無いという先生の言葉を信じ、薬を呷(あお)る――と、口内に妙な刺激を覚え少しだけ吹き出してしまった。
「げっほッ!? 何で炭酸水になってるんだよ……」
 恐らくはそうなってなかったはずのベースは、白露菊を混ぜたことにより炭酸水へと変貌していた。
 そして――、
「ん? 妙な違和感が……」
 何やらくすぐったさを覚え、顎に手を伸ばすと……。
 モサッ。
 慣れない感触が、そこにあった。
「おわっ!?」
 いつの間にか生えていた立派な髭は、どう考えても薬の効果だろう。
 しかし、少量しか飲まなかったからか、触っている間に見る見るうちに巻き戻しが行われ――時間にして三十秒。
 薬を飲む前と何ら変わらないクロードの姿に戻っていた。
 効果を実感し、少し楽しくなったのか、先ほどとは打って変わり戸惑いが消え、
(今度は先生と同じ配合を試して見よう。先生は掻き混ぜてたから、攪拌しないで見るとどうだ?)
 と、実験結果を予想しつ角の粉末と油を壺に入れ、そのままに飲み始めた。
「ゴクッ……ゴクッ……!? げふっ!!」
 何口か飲み込んだが、途中で吹き出してしまうクロード。
「とンkoつ味ナンte想zouしてナイよ……」
 魔法薬の味の感想を口にすると、自分の口から出てきたのは声の高低どころかイントネーションすらも意識したものとは違う自分の言葉で。
「攪拌しないと材料が混ざりきらないからか、効果があべこべになっちゃうんだよね」
 そんなクロードを見ながら先生が嬉しそうに言う。
(なんてデタラメな……)
 先生へ苦笑いを返しつつ、クロードは最後の薬の調合へ入る。
 少しだけ考え、日惑い草と油を壺に入れ、今度は早く攪拌してみる。
 念のため音を聞き、無音。出来上がった薬をゆっくり口に含むと――味はお茶。
 これならと意を決し、壺を傾けて一気に飲み干して……。
「えぇと……コレは?」
 自分の体に起こった効果を確認し、思わず困惑して先生へと尋ねた。
「冷光、と言ったかな? 熱を伴わない発光、かな」
 そう、クロードの体は光を発していた。どう考えても薬の影響で。
「自分で色々予想を立てたりしていたんですけど、中々思うとおりになりませんね」
「そう! そこが魔法薬学の面白い所! もっと上の薬になると湿度とかでも効果が変わっちゃうのもあるんだよ!!」
 光りながら苦笑し、先生へと声を掛けると興奮気味に語り出す。
 その光を次第に弱めつつ、クロードは魔法薬学の醍醐味を、ほんのちょっぴりでも味わったのだった。

 *

 運ばれてくる材料が、体の中で大きく突出した部分に当たって机から落ちてしまい、先生の元へ取りに行く事になってしまった【ウェルカ・ラティエンヌ】。
 豊満で自己主張の激しいワガママボディは、どうやら先生にとっても予想外だったようだ。
「そんなこともあるんだねぇ。はい、替えの素材達だよ」
 そんなこと、なのかは疑問ではあったが、特に突っ込まずに素材を受け取ったウェルカは、今度こそ、と調合を開始する。
(どうせなら先生が使わなかったものを使いたいですわね)
 との思いからまずは植物の二種に視線を移す。
 どちらから入れようかと迷ったところでふと、
(入れる順番で効果が変わるなんて事は……無いとは言い切れませんわよね?)
 との考えに。
 迷ったあげく、まずは白露菊の種を摘まんで壺の中へ。
 ベースを流し込んで掻き混ぜていく。
 続いて手にしたのは――、
(植物ばかりだと効果が偏りそうですわね。……ガマの油はご遠慮したいので、砂漠サイの角の粉末を入れてみますわ)
 との考えから角の粉末を壺へ。
 また掻き混ぜると、何やらゴポゴポと嫌な音が。
 流石にこのまま飲みたくは無いし、何よりエルリッフが使わなかった植物系の素材を入れようと決めていたため、慌てて日惑い草を投入。
 掻き混ぜる内に妙な音が止み、胸を撫で下ろして――いざ!
 勢いよく……とはいかず、躊躇いながらもゆっくりと壺を口元へと運んでいき――。
 まずは一口、味を確かめるために口に含んで……。
(……? どこかで飲んだような…………!? これ牛乳ですわ!?)
 全くもって薬とは思えない味に驚き、そのままゆっくりと飲み干していくウェルカ。
 ――本人は自覚していないのだが、既に変化は起こっていた。
 服が徐々にはだけていき、周りにいた男子生徒が思わず手を止めて凝視しているように。
 ウェルカが薬を完全に飲み干す頃にはウェルカの身長……いや、全体的に二回りほど小さくなっていた。
 けれども何故だか効果の後と前でも変わらない体の一部があり……。
 そして、その凹凸のお陰で『謎の光』が急遽出勤するような事にはならなかった。
 飲み干し、いつ変化が起きるかとワクワクしていたウェルカは、少し時間をおいてほんの数秒前の景色と違うことに気が付き――。
「なっ!? えっ!!? えっ!?」
 困惑しながら胸でずり落ちるのが止まった衣服を持ち上げ露出を減らす努力をする。
「おー、珍しい。体全体に効果が出るなんて、余程効果の強い組み合わせを引いちゃったかな?」
 そんなウェルカに気付き、先生が発した第一声は、ウェルカの作った魔法薬に関する感想。
「そんな事より! 先生! これいつ戻りますの!?」
「そんなに長く効果は出ないはずだよ。もうそろそろ……」
 とりあえず今の状況をどうにかしたい、と先生に強い口調で言ったウェルカに対し、大して慌てずに先生が答えていると、その通りにウェルカの体が徐々に元の大きさに戻って来た。
「び、びっくりしましたわ……」
「いやぁ、珍しい。そこまで効果を強くする組み合わせはかなり限られてる筈なんだけど、よく引いたね」
「混ぜる順番や、掻き混ぜ方は影響するのでしょうか?」
 まさか生徒が引き当てるとは、と目を丸くするエルリッフに質問するウェルカ。
「もちろん! 順番に入れるタイミング、掻き混ぜ方に速さ。全てが影響するのが魔法薬というものだよ!」
 その質問に、興奮気味にそう答えるエルリッフ。
 一つ、知識を得たウェルカは、満足そうに先生へと微笑んで――。
 恨めしそうに自分の飲み干した壺を睨み付けた。
 ……尚も周りの男子生徒の視線は、ウェルカに釘付けである。

 *

 素材が送られてくるまでの間で、先生の調合した素材と、先生に起きた変化を羊皮紙に書き記していた【オズワルド・アンダーソン】は、目の前に来た素材を前に動かずにいた。
 過去に毒を飲まされた経験があり、例え先生が保証しているといえど、得体の知れない薬など飲みたくなかったのだ。
 結果、周囲を観察し、自身の行おうとしていた調合と同じ配合で調合する生徒を観察していたのだ。
(とはいえ、先生が目の前で飲んでいましたし、まずは先生と同じ材料で試して見ますか)
 慎重に、というよりは怯えながら、ゆっくりと角の粉末と油を壺に入れ、これまたゆっくりと掻き混ぜ……。
「とンkoつ味ナンte想zouしてナイよ……」
 オズワルドが観察していた一人、クロードが同じ材料で調合を行い、そんな感想を漏らした。
 掻き混ぜる手を止め、その結果を同じく羊皮紙に記し――いざ、自分の番。
 警戒し匂いを嗅ぐも無臭。ならばと豚骨味であることを覚悟し薬を口へ。
 クロードの感想通りの豚骨味。そして効果は先生もクロードも声。
 ならば声を出してみなければ効果は分からない。
「ど゛う゛な゛った゛ん゛だ゛ろ゛」
 ……結果は、驚くようなダミ声へと変化していた。
 思わず自分の声にずっこけそうになったが何とか堪え、その結果も羊皮紙へ。
(先生と違った所と言えば掻き混ぜる速度……? それだけでここまで差が出るものですか……)
 感想も含め、羊皮紙へ残したオズワルドは次の調合へ。
 先生が使わなかった素材である植物系の二つ。
 白露菊の種のみの調合を、また恐る恐る行えば、クロードと同じく髭が一気に生えてきた。
 ただ、やっぱりいきなりの炭酸水は不意を突かれるのか、吹き出してしまったため持続時間はクロードと変わらず三十秒程度であった。
(じゃあもう一つの植物だけなら? 先生が体毛に作用する素材を持ってきていたりしないでしょうか?)
 効果がなくなったことを顎を触って、割と念入りに触って確認したオズワルドは思考を巡らす。
 日惑い草のみで調合し、念入りに掻き混ぜて口に運んだオズワルドは――。
「んぶっ!!? げほっ! ……ワサビ!?」
 全く想像していない味にやっぱり吹き出してしまう。
 と、一気に視界が塞がった――――自身の前髪で。
 髪をかき分け確認してみると、前髪どころか髪の毛全部が異常とも言える長さまで伸びており、少なくとも自分の体全てを覆い隠せる程度には伸びていた。
 ――そして元に戻った。
(効果が現れるのも戻るのも早すぎますね。……いや、わざとそんな効果になるようなのを選んでいるんですかね)
 材料と効果を書き記しつつ、魔法薬の効果に驚いたオズワルドは、エルリッフの配慮に気が付いた。
 授業として、効果が顕著に表れなければつまらないし、何より授業が終わっても効果が続いてしまっては生活に支障が出てしまうかもしれない。
 それらを全てクリアするために、このような瞬間的に効果が出て、かつ持続時間が短い調合をいくつか見繕ったのだ。
 なによりインパクトがあり、少しでも興味を引けるような、そんな調合を。
(毒は薬になる、と言いますが、では薬……魔法薬にはどれだけの可能性があるんでしょうか)
 少しだけ目を閉じて考えていたオズワルドは、最後に一つ、予想を立てた。
 今自分が別々に混ぜた植物系の材料二つ。
 これを混ぜた場合の薬の効果を。
(髭と、髪の毛を伸ばす。……二つが混ざると、全身の毛が伸びる? ――いや、伸びる効果と伸びる効果がぶつかり合ってむしろ逆に毛が無くなるのでは?)
 何だか恐ろしい効果に考えが行き着いてしまったが、周りにその調合を試している者が居た。
「うっわ本気(マジ)ぃ? ザコちゃんこんな身体的特徴要らないんだけどぉ?」
(なるほど、伸びる効果は変わらず、効果が及ぶ場所が変わるんですか……)
 一人妙に納得し、羊皮紙に書きまとめたオズワルドは、少しだけ魔法薬に対する考えを変えることが出来たかもしれない。

 *

「んじゃあ本日の授業はここまで。みんな、魔法薬の魅力は少しでも伝わったかな? ちょっとでも興味が沸いた人は、今後も僕の授業や他の先生の魔法薬の授業もしっかり受けてね~」
 まるでアトラクションに乗った後の子供の様な表情で生徒達に告げたエルリッフは、授業中に作ったのであろう魔法薬をどこからともなく取り出して、一気に飲み干し……。
「それじゃあみんな、また今度にゃん♪」
 と、男がすると身の毛もよだつポーズを取りつつ、学園長そっくりの声でそう告げて。
 授業終了を伝えるチャイムが、学校中に響き渡った。



課題評価
課題経験:0
課題報酬:0
ドキドキ魔法薬学実習!(初級)
執筆:瀧音 静 GM


《ドキドキ魔法薬学実習!(初級)》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2019-04-29 00:25:31
魔法薬の味見に来たただのモブ。まずそう。

今回は協力とかそーいうのは別になさそうだけど。なんかやるんならよしなにぃ?
ザコちゃん?てきとーに飲んでる。

《新入生》 クロード・クイントス (No 2) 2019-04-29 05:42:02
賢者・導師コースのクロードです、よろしく。

お久しぶりです。
ちょっとリアルが忙しくて離れていたんだけどね、休みで戻ってこれたよw

《新入生》 ウェルカ・ラティエンヌ (No 3) 2019-04-29 16:43:38
現状、初めてお会いする方はいらっしゃらない様ですわね。
皆様ご機嫌良う。
王様・貴族コース専攻のウェルカ・ラティエンヌと申します。
宜しくお願い致しますわ。

クロード様は、お久しゅう御座いますわ。
お帰りなさいませ。

私は現状、[3種類を混ぜてみる]予定ですわね。
組み合わせは、もう少し検討してみますわ。

《比翼連理の誓い》 オズワルド・アンダーソン (No 4) 2019-05-01 19:01:55
挨拶がギリギリで申し訳ありません。
顔見知りが多いですが軽く挨拶を、オズワルド・アンダーソンです。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。

材料は
『白露菊(しらつゆきく)の種』
『日惑(ひまど)い草』
『砂漠サイの角の粉末』
『大ガマの油』
の4点ですね。


サイの角と大ガマの油で声に変化があるようですが、
かき混ぜ方によって変わるみたいですし、
ゆっくりかき混ぜて遊んでみたいです。

あと1種類でも可能みたいなので
1種類だとどう変わるか気になるので植物系はそれだけにしようかと。