;
【夏祭】サマーバケーション!


ストーリー Story

 夏。
 眩い日差しに白い砂浜。
 そして目の前に広がる、透き通った海。
 海水浴には絶好のロケーション。
 実際、周囲を見渡せば、それを目当てにした観光客がちらほらと。
 場所によっては、砂浜近くに魚介類を泳がせた綱いけすが作られているので、そこで掴み取りに参加している者も居る。
 疲れたら、最近建てられたらしい海の家で休むこともできた。
 獲れたての魚介類をバーベキューにして食べることも可能で、島の名産である色とりどりの果物を味わうことも出来る。
 島の少し奥に向かえば、そこには幾つもの出店があり、お祭り雰囲気が楽しめた。

 今まで人の行き来が乏しかったボソク島は、観光名所へと生まれ変わろうとしていた。
 それは学園生達のおかげだ。
 少し前、霊玉を宿す男の子を浚うべくやって来た、魔王復活を目論む軍勢を学園生達が撃退し、事後対応もキッチリやってくれた。
 色々なアイデアが形となって島は変わり、賑やかさを見せ始めている。
「好い感じですね」
 島の発展に協力した商人、【ガラ・アドム】は満足げに言った。
「いやー、商人さん達のおかげだよ」
 ガラに返したのは島民のひとり。
「正直、巧くいくか半信半疑だったけど、お客さんも誘致してくれて助かってるよ」
「いえいえ、頼もしい後輩達が頑張ってくれたんです。卒業生としても頑張らないと」
「後輩って、あんた学園生だったのか?」
「ええ。腕っぷしよりも算盤勘定の方が性に合ってると思って、卒業した後は商売してますがね」
 ガラは、どこか機嫌好さ気に応える。
(出来の良い後輩が育ってくれてて、オジサンとしちゃ嬉しいねぇ)
 ガラは志を持って学園に入学したものの、腕っぷしでは巧くいかないと早々に見切りをつけ、いつか後方支援が出来るように商人となったので、後輩達の活躍は誇らしい。
(島の保全だけじゃなく、将来を見越して動いてくれたからねぇ)
 外部との流通も考え、商人達とやりとりをして協力を取り付けてくれたりと、巧くやってくれた。
 お蔭で、ガラの所にも話が来て、それならばと積極的に協力するようになったのだ。
(このままいけば、この島は観光名所として発展する。あとは――)
 ガラは、砂浜で遊ぶ子供達に視線を向ける。
 そこに居るのは、霊玉を宿す【テジ・トロング】を含めた島の子供達だけでなく、巨人の子供である【ガニメデ】もいた。
(問題は、あの子なんだよなぁ)
 学園生がガニメデのことを気に掛け、故郷に帰れるよう連絡を取って欲しいと頼まれたので奔走し、場所を探し当て現地に向かったのだが、そこで一悶着があった。
 山間部の奥地にいる巨人族『サイクロプス』。
 巨大な体躯と凄まじい膂力を持った種族であり、雷を操り、それを用いて鍛冶を行うことが出来る。
 その技術は神技と言っても良く、現代の技術でも追い付けないほどだ。
 もっとも、そのせいで争いごとに巻き込まれることも多く、穏やかな性格をした彼らは人里から隠れるようにして住んでいる。
 だというのに、子供であるガニメデが浚われた。
 話を聞くと、村に訪れた商人風の一団に武器を作って欲しいと言われたが断り、その後にガニメデが居なくなったというのだ。
 あとで脅迫状が来たらしいのだが、ガニメデの安否と引き換えに武器を作れという物だったらしい。
 そんなことがあったので、最初に村に訪れた時、巨人達は殺気立っていた。
 ガラは自分独りだけで巨人達の集落に残り、文字通り命がけでやり取りをし続け、どうにか交流を取れるまでにはこぎつけている。
 もっともそれは、学園生達がガニメデのことを気に掛け、相手をしてくれたお蔭でもあった。
 巨人であるガニメデを乗せて、海を渡る船を用意するのに時間が掛かったので、手紙のやりとりを特急で行い、その中で学園生達に遊んで貰ったことなどをガニメデが伝えてくれたので、巨人たちの態度は軟化している。
(後は連れて帰るだけなんだが、その前に、ガニメデの坊主には、好い思い出を土産にしてやらねぇとな)
 だからこそ――
「また学園生達に島に来て貰おうと思うんですが、いいですかね?」
「そりゃ、好い。歓迎するよ。でも、なんでだい?」
 不思議そうに尋ねる島民に、ガラは応えた。
「いえね。島の盛り上げも考えて、楽しんで貰おうと思いまして。サクラじゃないですが、楽しんでる客がいると、他の客も『ここは良い場所だ』って思ってくれるんですよ。それに、ガニメデも含めた子供達に良い思い出を残してやりたいですからね。あとは、純粋に頑張った後輩達に夏の思い出を作ってやりたくなりましてね」
 ガラの言っていることは本音もあるが、他にも思惑はある。
(ガニメデの坊主が後輩達に懐けば、色々と進められるからな)
 神代の鍛冶師とも言える巨人族、サイクロプスに色々と便利な物を作って貰えるかもしれないのだ。
(ま、そこまで行けばめっけもんだが……)
 目まぐるしく頭を回転させながら、ガラは仲良く遊ぶ子供達を微笑ましげに見詰めていた。

 そして、ひとつの課題が出されました。
 内容は、ボソク島に遊びに来て欲しいとのこと。
 島を盛り上げるためにも、現地で楽しんでくれれば、それで十分らしい。
 現地には子供達もいるので、巨人の子供であるガニメデも含めて、気が向いたら遊んでやって欲しいとも頼まれました。
 この話を聞いてアナタ達は、どう動きますか?


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2021-08-26

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2021-09-05

登場人物 5/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《光と駆ける天狐》シオン・ミカグラ
 ルネサンス Lv14 / 教祖・聖職 Rank 1
「先輩方、ご指導よろしくお願いしますっ」 真面目で素直な印象の少女。 フェネックのルネサンスで、耳が特徴的。 学園生の中では非常に珍しく、得意武器は銃。 知らない事があれば彼女に訊くのが早いというくらい、取り扱いと知識に長けている。 扱いを知らない生徒も多い中で、その力を正しく使わなくてはならないことを、彼女は誰よりも理解している。 シオン自身の過去に基因しているが、詳細は学園長や一部の教員しか知らないことである。 趣味と特技は料理。 なのだが、実は食べるほうが好きで、かなりの大食い。 普段は常識的な量(それでも大盛り)で済ませているが、際限なく食べられる状況になれば、皿の塔が積み上がる。 他の学園生は、基本的に『○○先輩』など、先輩呼び。 勇者の先輩として、尊敬しているらしい。 同期生に対しては基本『さん』付け。  
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《新入生》ヒナ・ジム
 アークライト Lv11 / 勇者・英雄 Rank 1
ヒナ・ジムです!【事務雛型】 ひよこがだいすきです! おすとめすはみたらわかります! ひよこがすきすぎて、はねがはえちゃいましたあ! そしたら、にぃにが、がっこうにつれてきてくれました。 かっこいいおにいさん、かわいいおねいさんがいっぱい…! みんな、なかよくしてね! *** ガンダ村の事務職の家系であるジム家の末っ子。 ひよこを愛する普通の子であったが、村の学校で飼っていたひよこをいじめた男子にたいする怒りをきっかけに、アークライトに覚醒! 知らせを受け慌ててタスクの発案により、学園に入学することとなった。 アークライトとしての力と生き方を学び、そして外の世界を知るために…。 ひよこが大好きで、好きすぎて羽根が生えたという本人談もあながち間違いではない経緯ではある。 ひよこのオスメスの区別がつき、人間の顔と同じ精度で個体識別できる。 鶏に対する気持ちは普通で、ひよこの時から可愛がっている個体に対してはその愛着を維持する。 覚醒時のほかにも、夜店のひよこを全員脱走させ親が全額弁償などひよこに関する逸話に事欠かない。 また、覚醒前から同年代にあり得ない怪力で、祖父のお下がりのバトルアックスの素振りが日課である。 とにかく甘えん坊。誰彼構わず甘え、兄タスクをやきもきさせる。 【勇者原則】決め台詞 通常時「ヒナ、負けないもん!」 覚醒時「○○ちゃんを虐める悪い子は、絶ぇっ対に許さない!」
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。

解説 Explan

●目的

ボソク島に行って遊ぶ。

現地に行って泳いだり食べたりして下さい。
楽しんでくれた、と思えるプレイングの内容でしたら成功以上になります。

●ボソク島

魔王復活を目論む軍勢に襲撃されたが、学園生達の尽力により退けた。
その後、学園生が現地の片付けなどをしてくれたので、観光名所として歩み始めている。

綺麗な海と砂浜が広がる南国の島。
砂浜には海の家があり、新鮮な魚介類のバーベキューが楽しめます。
海の家でゴロゴロしてもオッケー。
もちろん水着で海水浴もできます。
海辺には、魚介類を泳がせている綱いけすがあり、そこで魚介類を捕まえて食べることも出来ます。
料理は、海の家でしてくれますし、自分でバーベキューにするも良し。

少し奥地に行くと、お祭り広場があります。
食べ物の屋台や、射的などのゲーム屋台もあります。

コテージも建てられましたので、そこで一泊して帰ることも出来ます。

島では、自由に動けます。
楽しみましょう。

●NPC

子供達

霊玉を宿す4歳の男の子【テジ・トロング】を含めた10数人。
巨人の子供であるガニメデもいます。

全員、素直な好い子です。
遊んでやると喜ぶでしょう。

商人

ガラ・アドム

学園卒業生。腕っぷしよりも、算盤勘定と交渉で後方支援をするタイプ。

学園生達の島での活躍を知り、手助けをするために関わるようになった。

エピソード【メイルストラムの終焉】White、の結果によって出て来るようになった『お助けNPC』です。今後も、学園生達への支援目的で出てきます。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回のエピソードは、【メイルストラムの終焉】White、の結果により発生したものです。

商人達に話を付けたり、巨人の子供ガニメデを気に掛けて貰えたので、お助けNPCが出てきたり、巨人関連のエピソードルートも発生してます。

今回のエピソードも含めて、結果によって、その後のストーリーを変えていく予定です。

また、他のエピソードとも関わって来たりする予定です。

それはそれとして、夏の時期なので、純粋にPCの皆さんには夏を楽しんで欲しい、というエピソードになってます。

楽しんでいただければ幸いです。


個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:105 = 70全体 + 35個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:1
獲得称号:---
本土からボソク島へ行くまでの町や村で交易・視察・観光を募り
ガイド兼護衛として同行
ボソク島の観光や流通ルートを太くすることを目的に行動

娯楽として観光を行える裕福層はそう多くはいないと思うので
メインは内陸部の農・畜産物を島の海産物などと交換する交易・流通を活発にして
交易路や宿泊地を確立させてから、利益の出た交易商人などの観光や行楽需要を見ながら
各種産業を伸ばして行くことを目指す

今回の主なターゲットは農家・畜産業者、交易商人など
ボソク島の豊富な海産物を内陸の農作物や畜産品と取引する事を勧める

アルチェなど他の海産物の名産地とグルメバトルを開いて
町おこしや食料・イベント需要も喚起できると提案

アドリブ歓迎

シオン・ミカグラ 個人成績:

獲得経験:84 = 70全体 + 14個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
せっかくですし、私はビーチを楽しみましょう
子供たちも誘って、みんなといっぱい遊びます!
背中を隠す水着を持参して、それを着用して海に向かいます

また、みんなに息継ぎや泳ぎ方を教えてあげたりもしましょう
支えてあげて、動きをレクチャーします
子供が万が一沖に出ないよう、しっかり注意も払っておきますよ

それで、いっぱい遊んだらおなかも空いてきちゃいますよね
なので泳いだ後は海の家でバーベキューをやります
みんなの分を焼いてあげたり、取り分けてあげたりします
もちろん!私もいっぱい食べますよー!

もし、みんなが疲れて寝てしまったら、一緒に添い寝してあげましょう
手でさするほかに、尻尾で撫でたりして寝かしつけます

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:105 = 70全体 + 35個別
獲得報酬:3000 = 2000全体 + 1000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:1
獲得称号:---
エリカ部長さんの島旅行・見学者募集とガイド・護衛の補助に回る

【事前調査】で旅行の最適ルートを考案
全校集会で実際に見聞きした島の様子に
大図書館でボソク島の特性を調べた情報を補足して
島の魅力がたっぷり伝わり
住民さんとも程よい距離感で交流もできそうなルートを設計

旅のしおりにも凝り
分かりやすい旅程と調べた魅力を見やすく詰め込み
美味しそうな魚の絵は写法術で飛び出す仕掛けに

上記準備と【信用】で参加者の心を開き
【勇者原則】の雰囲気を出して道中の安全をアピール
護衛中は周囲に警戒して有事の際はしっかりガード
万一の戦闘は必殺技を駆使して確実に撃退

農家商人海運と
島の漁師商人が
互いに利益があり
また心を開けるよう
尽力

ヒナ・ジム 個人成績:

獲得経験:84 = 70全体 + 14個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
「ヒナ・ジムです!あそびにきたよー!
みんなにあいたーい!ガニメデちゃんによじのぼりたーい!
シオンおねえちゃま、いっしょにあそびましょ!よろしくね!!」

子供たちとの再会を心から喜び、全力で遊ぶ
無意識に【勇者原則】的なオーラが出てしまう影響もあってか、滞在中はだいたい子供たちの中心にいる

【事前調査】として
全校集会や【終焉white】で遊んだ遊びの、反応の良し悪しを【思い出手帳】に記録している
それを元に人気の高い遊びをどんどん提案する

ガニメデちゃんには、前回に引き続きめっちゃ可愛がり、めちゃめちゃよじ登る!

シオンおねえちゃまには、【終焉white】のとき果物がおいしかった御礼を力一杯述べる!

レーネ・ブリーズ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:156 = 70全体 + 86個別
獲得報酬:4200 = 2000全体 + 2200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
商人のアドムさんに相談してみたいです。

わたくしはボソク島の復興、にはなんにもしてない、ぜんぜん無関係です。
「そういう無関係な立場」でやりたいことがあります。

「すでに復興から発展にむかってあるきだしてるボソク島」に投資をしたいです。

まず、「ゴールド袋:八千」ふたつ、金貨一万六千G用意してみました。
全校集会とかでがんばってもらったお金です。
もちろん商人さんには、たいした額じゃないでしょうからこれからも追加します。

わたくしのおかねはすくないけど、でも、それでわたくしは示したいんです。

ボソク島は、いま、「同情」とかじゃなく、「期待」の対象だと。

それこそがあのたたかいの勝利だとわたくしはおもいますから。

リザルト Result

 ボソク島へ訪れる前、【レーネ・ブリーズ】は卒業生でもある商人【ガラ・アドム】に会いに来ていた。

「後輩が会いに来てくれるたぁ、嬉しいねぇ」
 笑顔を浮かべながら、ガラは飲み物を出す。
「それで、今日は何の用だい?」
 いま2人が居るのは、ガラの商会の来客室だ。
 こじんまりとしているが質の良い調度品が揃えられ、もてなしに気配りしているのが伝わってくる。
 そんな中で、レーネは持って来ていたゴールド袋をふたつ、どさりとテーブルに置いた。
「今日は、アドムさんに相談があって来ました」
「お、好いね」
 乗り気な雰囲気を出してくれるガラに、レーネは計画を口にした。
「わたくしはボソク島の復興、にはなんにもしてない、ぜんぜん無関係です。『そういう無関係な立場』でやりたいことがあります」
「情や義理を挟まない、第三者の立場ってことかい?」
「はい」
 レーネは頷くと、続けて言った。
「『すでに復興から発展にむかってあるきだしてるボソク島』に投資をしたいです」
「ふむ」
 視線で先を促すガラに、レーネは続ける。
「今この場に出したお金は全校集会とかでがんばってもらったお金です。金貨一万六千G用意してみました。追加で、八十万G以上積み増すことも出来ます。もちろん商人さんには、たいした額じゃないでしょうからこれからも追加します」
「まだ用意があると?」
「はい」
 視線を合わせながら、レーネは自分の考えを口にする。
「わたくしのおかねはすくないけど、でも、それでわたくしは示したいんです」
「何をだい?」
「ボソク島は、いま、『同情』とかじゃなく、『期待』の対象だと。それこそがあのたたかいの勝利だとわたくしはおもいますから」
 島の自立を考え、レーネは言った。
「投資対象となる事業についてわたくしがもとめる基準はただひとつ、『長期的視点で発展がみこめること』、これだけです。わたくしは『紐付きじゃない自由な発展への取り組み』をしたいです」
「そいつは、楽な道じゃないぜ」
「そう思います。それでも――」
 レーネは、信じるように言った。
「島のみなさんがこまっちゃうような『かたよった発展』にならないように、島のみなさんとよりそう商人のアドムさんの手腕をかりて。もちろんおてつだいできることがあるなら『完璧主義』でがんばります」
 自分の考えをレーネは言い切った。
「これでさらなる投資の呼び水になりたいです」
「強欲だねぇ」
 にやりと、ガラは笑みを浮かべる。
「だがそれが好い!」
 ガラは卒業生としてではなく、商人として応えた。
「その考え、乗った! その上で、この金貨。こいつは要らねえ。ただし、一筆書いてくれ」
「なにを、ですか?」
「資金として百万Gを投資する、て証書だ。担保は、アンタが持って来た金貨袋で良い。仮に事業がこけても、そっちには被害が行かないようにする」
「そんなことが出来るんですか?」
「任せな。金を担保に金を作ってやる。債権化やらの手順が要るが、そいつは俺がやる」
「それなら、余計にお金は必要なのではないですか?」
「心配すんな。こいつは商人の魔法だ。普通の魔法は魔力を消費するが、商人の魔法に必要なのは『信用』だ。アンタが身銭を切って生み出した『信用』を消費して、金をぶん回してやるよ。だから、手伝い頼むぜ」
「もちろんです」
 頷くレーネに、ガラは笑みを深め言った。
「頼りにしてるぜ。でだ、島の自立を考えるなら観光以外にも柱が居る。そっちに関しちゃ、アンタの仲間が出してくれてる」
 そう言うとガラは、厚みのある用紙の束を出す。
 それは【エリカ・エルオンタリエ】の企画書と、【タスク・ジム】の提案書。
「アルチェやらの名産品も使ったグルメバトルの企画書を貰ったから、こいつを今回作り出す資金で運用していく。あとは観光関連について詰めてくれているから、それを元に、スポンサーやらになりそうなのを島に連れて行くから、対応頼むぜ」
「はい」
「おっ、好い返事だね。それに驚いてもねぇし、こうなると予想してたかい?」
 これにレーネは、笑顔を浮かべ応える。
「はい。『理念による取り組み』は、ほかのみなさんがしてるとしんじていましたから」
 仲間を信頼する様に、レーネは言った。

 そんなやり取りがあった後、スポンサーやらも連れて、皆はボソク島に船で向う。
 道中、島の発展を考えていた学園生達がアピールする。

「航海の安全は任せて下さい!」
 タスクが胸を張り、船に乗ったお客を安心させるように言った。
「航海中は、学園生が皆さんの快適な旅をお約束します!」
 お客が疑念を抱かないよう、勇者原則を口上するように、堂々とした態度を見せた。
 タスクの様子に、お客から安堵するような空気が産まれる。
 今回のお客は、エリカが足で稼ぎ参加を促した人達が多い。
(エリカ部長の頑張りを無駄にしないためにも、僕も頑張らないと)
 単なる学園生としてだけでなく、個人的に好意を寄せているエリカの頑張りを見ていることもあり、タスクの意気込みは強い。
「到着までしばらく掛かりますが、快適な船旅になることをお約束します」
 道中の退屈を減らすことも考え、島の案内もしていく。
「ボソク島は、綺麗な砂浜と美しい海が広がり海水浴も楽しめますが、食もお勧めの物はたくさんあります」
 そう言うと、事前に用意して配っていた旅行のしおりを広げて貰う。
「海老やタコ以外にも、豊富な魚が名物になっています」
 説明に合わせて、写法術を使い魚を描き、お客に見せるパフォーマンス。
 聞くだけでなく目で楽しめるので、お客の反応は上々だった。

 タスクが盛り上げて、お客の空気を暖めた所で、エリカが引き継ぐように次の出し物をする。

「島で獲れた魚介類を使ったアヒージョです。島に着く前に、少し味わってみてください」
 島の名産をアピールするため、事前に獲っておいて貰った海老やタコを一口サイズに切り分けてアヒージョにした物を、お客に配る。
 凝った料理だと船の上なので難しかったが、アヒージョなら出来るので、サンプルを兼ねて食べて貰う。
「島で獲った物を本土まで輸送した物を使っています」
 エリカは、娯楽として観光を行える裕福層はそう多くないと判断し、内陸部の農・畜産物を島の海産物などと交換する交易・流通を活発にすることをメインに考えている。
 そのため現地で食べるだけじゃなく、輸送したものを使っても価値があると思わせるため、船上の試食会を開いていた。
「観光業だけでなく、海産物が島を支えるメインになると考えています。近い内にアルチェで行われるグルメバトルでは、今出させていただいた物以上の食材の提供をお約束させていただきます」
 エリカは、島の特産を使った貿易促進のためにもグルメバトルを提案していたのだが、それは実現する方向で動き始めている。
 それはレーネの投資行動が大きかったが、実現するために各地を回ったエリカの労力も大きい。
 実際、今回の船のお客の中には、グルメバトルに出るという料理人も参加していた。
 その内の1人、【ガストロフ】が尋ねてくる。
「魚介も好いが、この玉葱も島で採れた物なのかい?」
(玉葱?)
 そう言えば、島で採れた玉葱も使っていたように思う。
 南国の風土であるボソク島では野菜が育ち辛く、玉葱ぐらいしか採れないと言っていたので入れていたのだ。
「はい。島で採れた物を使っています」
「ほぅほぅ……となるとこいつは――」
 すでにメニューを考え始めている料理人を見て、グルメバトルが盛り上がりそうだと思うエリカだった。

 エリカとタスクの尽力もあり、船旅は快適に進む。
 お客がリラックスした様子で楽しんでいるので、ひとまず警戒に当たっていたが、【シオン・ミカグラ】と【ヒナ・ジム】、そしてレーネが交代してくれる。

「エリカ先輩、お疲れさまです。交代します」
「うん。エリカぶちょおさん、にぃにも一緒にきゅうけいするね」
 何故かタスクのことを話題にするヒナだったが、エリカは意図には気付かず笑顔で礼を返す。
 そして、ガラの居場所を尋ねる。
「ガラさん、どこに居るか分かるかしら?」
「アドムさんなら、商人さん達との話が終って、あちらで海を見てました」
 レーネに教えて貰い礼を言うと、彼に会いに行き、気になっていることを尋ねた。
「サイクロプスの里との連絡は、巧くいってますか?」
 ガニメデも含めて、巨人との交流に心を砕いているエリカは、可能ならば交易商人やグリフォン便なども利用して密に連絡を取り合えるよう頼んでいた。
 エリカの問い掛けに、ガラは応える。
「心配しなさんな。そっちが気にしてたことは全部、問題なく執り行ってるからよ」
「好かった……それで、里に帰してあげる目処は付いたんですか? 可能なら付いて行ってあげたいんです」
「近い内に、巨人を乗せても大丈夫な船の手配が終わる。それから連れて行く予定だ。そん時は、学園生にも護衛で付いて来て欲しいから、よかったら頼む」
「ええ、機会が合えば」
 笑顔で頷くエリカだった。

 そうして船は島に到着。
 お客を案内し、あとはそれぞれ好きに回りたいということで、学園生達も楽しむことにする。

「うみだー!」
 服の下に水着を着ていたヒナは、パパッと着替え、島の子供達と遊びに行こうとする。
「あそびにきたよー!」
 ヒナの呼び掛けに元気に応える子供達。
 そのまま走り出そうとして、シオンに声を掛ける。
「シオンおねえちゃまも、いっしょにあそびましょ!」
 これにシオンは笑顔で返す。
「はい! 水着に着替えたらすぐに行きますから、先に遊んでて下さいね」
 子供達にも声を掛けると、笑顔が返ってきた。
 シオンも笑顔で手を振って見送ると、海の家に備え付けられている着替え室に向かう。
 個室もあったので、そこに入り、念のため鍵も閉める。
 しゅるりと衣擦れの音をさせながら服を脱ぐと、腰から背中までが見えないような水着に着替える。
 万が一にも、水でぬれて僅かでも透けないよう水着の上に、見た目の可愛いフード付きの羽織りものを着て、子供達のいる場所に向かった。
「遅くなりました!」
 笑顔で声を掛けると、水辺で水を掛け合っていた子供達も、笑顔を浮かべてシオンを迎え入れる。
「あーそーぼー!」
 子供達の笑顔に迎え入れられ、どこか温かな気持ちになりながら、一緒に遊び始める。
「みんな、泳ぎが巧いんですね」
 子供達は島生まれということもあり、みんな泳ぎが巧い。
 シオンに褒められて、子供達は照れたように笑顔を浮かべると、シオンの手を取って一緒に海に入る。
「もぐりっこしようー!」
「いいですよ」
 子供達に危険が無いよう気遣いながら、シオンは一緒に遊んでいく。
 ひょいっと海に潜って、海の中で子供達に手を振ると、子供達は笑顔で手を振り返す。
 ぷくぷくと水中で息を吐き、我慢できなくなったら顔をあげる。
 それだけで、子供達は楽しいのか笑顔を浮かべていた。
「おねーちゃん、つぎはわたしー」
「はい」
 子供達に囲まれ遊んでやりながら、どこかシオンは救われたような気持ちになる。
(……こうして誰かのために動いていると、なんだか救われます)
 子供達の笑顔に包まれながら思う。
(以前、ユリ先生が言ってくれました。人間の価値を決めるのは血筋じゃなくて行動だって。私はその言葉を信じ続けたい)
 だからこそ、子供達と一緒に過ごすのだ。
 それはヒナも同じだ。
「ガニメデちゃん、一緒に泳ごう!」
「うん」
 大きいが子供なガニメデは、ヒナの呼び掛けに笑顔で応じる。
 ガニメデは大きいので、泳ぐというより海の中を歩いていく。
 それを子供達と一緒に追い駆けるヒナは、途中でガニメデの身体によじ登る。
「うんしょ、よいしょ」
 それを見ていた子供達もガニメデによじ登り、少しばかり深い所まで進む。
 とはいえガニメデは巨大なので、足が海底に届く。
 肩から上だけを水面から出し、両腕を横に広げ、それに子供達がくっつく。
「たのしいね!」
「うん、たのしい」
 笑い合う、子供達とガニメデだった。

 ひとしきり海で遊び、お腹が空いたのでバーベキュー。

「食べたいものがあったら、教えて下さい」
 シオンが面倒をみる形で、子供達にバーベキューを焼いてあげる。
 甲斐甲斐しく世話をしてくれるシオンに、ヒナが礼を言う。
「シオンおねーちゃん、ありがとー! まえの果物も、おいしかったよ!」
 子供達やガニメデも、次々にお礼を言って、笑顔で受け入れるシオンだった。

 子供達もガニメデも、シオンもヒナも一杯食べたあとは、お昼寝。

「疲れたら、休みましょうね」
 シオンは添い寝をしてあげて、手で擦ったり、尻尾で撫でてやると、すぐに眠りに就く子供達だった。

 そうして皆が遊ぶ中、タスクはエリカを誘い島を回っていた。

「あのとき以来ですね」
「あのとき?」
「ええ。サーブル城にフィールドワークに行った時も、2人きりだったじゃないですか」
 そこまで言うと、自分を勇気づけるような間を空けてから言った。
「……また、今度は課題以外でも一緒に過ごせたら素敵だと思うんです」
「? そう?」
 不思議そうに首を傾げ、エリカは返した。
「課題以外って、部活でいつも一緒じゃない」 
 笑顔を浮かべながら続ける。
「仲間なんだから。これからも一緒よ」
 屈託のない、他意の感じられない彼女に、タスクは意気消沈。
 けれど彼女の笑顔を見ていると、彼女のためにありたい、という気持ちになる。
(傍で支え続けよう)
 それは大図書館で人気の戦記の中に出て来る、中々くっつかない人間と妖精コンビの様に。
 そうあろうと、タスクは心の中で誓ったのだ。

 青春の一幕がありつつ、楽しい時間は過ぎる。 
 島から帰る前、ヒナは【テジ・トロング】の手を取り言った。
「まけないで! こまったときはヒナをよんで! ぜったいたすけにくるから!」
 仮面に操られそうになった時のことを思い出しながら、前を向くように宣言する。
「このまえは、しっぱいしちゃったけど。もっとつよくなるから!」
 ヒナの言葉に、テジは――
「うん。ぼくもがんばる」
 同じように、前を向くような言葉を返した。

 そして帰路につき、帰りの船で、今後の打ち合わせをするタスクとエリカの裾を掴んで頼む。

「にぃに、エリカぶちょおさん、ヒナに『ゆうしゃ』をおしえてください! もっとつよくなりたいの!」
 ヒナの願いに、笑顔で応える2人だった。

 かくして島での一日は終わりを見せる。
 楽しみつつ、島の自立のために尽力した学園生達であった。



課題評価
課題経験:70
課題報酬:2000
【夏祭】サマーバケーション!
執筆:春夏秋冬 GM


《【夏祭】サマーバケーション!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2021-08-20 00:51:58
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

せっかくだから、本土からボソク島へ行くついでに
道中で観光客や視察隊を募って、ガイド兼護衛として向かおうかと思うわ。
うまく行けば、ボソク島の観光や流通ルートを太くする事ができるかもしれないし。

あとはやっぱりガニメデさんの不安解消と、サイクロプスの里との友好関係の構築も忘れちゃいけないわね。

《光と駆ける天狐》 シオン・ミカグラ (No 2) 2021-08-22 19:40:21
教祖・聖職コースのシオン・ミカグラです。よろしくお願いします。
私はせっかくなので、海で子供達と遊ぼうと思っています。
遊んだあとはバーベキューで、みんなと楽しくお食事できたらいいなーと。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 3) 2021-08-22 22:05:35
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします!

部長さん、ガイドツアー案すごく良いですね!
サイクロプスさん関係も含めて、良ければ作業(文字数)を
うまく分担出来ればいいな、と思ってます!

子供たちとも遊んであげたいけど、文字数次第ですね。
色々考えてみますね!

《新入生》 ヒナ・ジム (No 4) 2021-08-24 18:05:13
ヒナ・ジムです!あそびにきたよー!
みんなにあいたーい!ガニメデちゃんによじのぼりたーい!
シオンおねえちゃま、いっしょにあそびましょ!よろしくね!!

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 5) 2021-08-25 06:16:00
芸能・芸術コースのエルフ、レーネです。
アドムさんとおはなししたいなっておもってきました。
よろしくおねがいします。

《光と駆ける天狐》 シオン・ミカグラ (No 6) 2021-08-25 13:24:34
はい!ヒナちゃんもよろしくお願いします!
こちらは折角の機会なので、あまり難しいことは抜きに、海を楽しみたいと思います。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2021-08-25 13:51:06
レーネさん、よろしくお願いいたします!

僕は旅程の考案と護衛をメインに書いてますが、
ガラ・アドムさんとの交渉をすっかり忘れたまま、
文字数が足りなくなってしまったもんですから、
大変助かります!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2021-08-25 18:48:40
いよいよ今夜出発ですね!

皆さんの動きを簡単におさらいしておきましょう。

・観光・視察対応 エリカ部長さん、タスク
・ガラ先輩(OB)対応 レーネさん
・子ども達と遊ぶ シオンさん、ヒナ

楽しくなりそうですね!!

なお、妹のヒナの文字数が余り気味らしいので、
何か、協力できることがあれば、ぜひご相談ください!

《新入生》 ヒナ・ジム (No 9) 2021-08-25 18:56:58
しつれいねー、そんなにあまってないもん!(先ほど埋まった様子)

でも、なにかあったらいってね!ヒナ、がんばっておてつだいするよ!

なにかをするときには、なにか(文字数)をけずらなくてはならない・・・

とれーど・おふ、っていうんだよね!ヒナしってる!!
(何かを聞きかじったらしい)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 10) 2021-08-25 22:23:38
少し早いのですが、これ以降こちらを覗くのが難しくなるため、
これにて、最後のご挨拶といたします。

皆さん、ご一緒いただきありがとうございます!
楽しい思い出を作り、出来れば成果を持ち帰られますように!