;
お菓子な魔法薬


ストーリー Story

 空には冬の雲が掛かっている。
 通り過ぎて行く人々の会話は、近づいては遠ざかる。
 雪に地を覆われる日々を迎え、人々は寒風に携わりながら過ごす事が増えていく。
「むむっ。最近、『レゼント』に訪れる人が減った気がする」
 カフェの窓から降りしきる雪を眺めながら、エリアル――エルフタイプの妖精族の女性は声高に懸念材料を口にする。
 泡砂糖でできたお菓子のようにふわふわしたストロベリーブロンドの長い髪に、零れ落ちそうなほど大きな瞳はアクアマリンの輝きを放っていた。
 そして、何やらコミカルだが苦悶に満ちた表情を刻んだゾンビのぬいぐるみを大事そうに抱きしめている。
 外を見つめる彼女の視線の先には、まだほとんど踏み荒らされていない雪が煌めくばかりだった。
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』。
 ここは、学園施設に直結している居住区域『レゼント』。
 学園が居住と商売を保証している特別区であり、いわゆる学園都市だった。
 レゼントの新歓企画運営委員長であった女性――【ミミル】は学園を卒業した後、様々な過程を経て魔法学園の職員になっている。
 しかし、ミミルは現在、ある事実に直面していた。
 彼女が学園を卒業してから、レゼントを訪れる人は年々減り続けている。
 その事実を危惧したミミルは学園を卒業してからも、多くの人達がレゼントに訪れるように尽力していた。
「……うんうん。この魔法薬で、さらに多くの人達を楽しませる事が出来そうだよ」
 ミミルは新たな志を胸に抱いて意気揚々と語る。
 その時、彼女の居るカフェを訪れたあなたは、そこで予想外の出来事に遭遇した。

 がっ、がたたっ、ばったーんっ。

 カフェを出ようとしたミミルが派手に転び、持っていた魔法薬が店内へと降り注ぐ。
「わわっ……今のなし!」
 顔を上げたミミルはそう叫んだが、既に遅かった。
 魔法薬が降り注いだ店内は大混乱に陥る。
 しかも、その魔法薬の効果は思いもよらない、厄介な影響を及ぼす代物だったようで――。


エピソード情報 Infomation
タイプ マルチ 相談期間 6日 出発日 2022-03-19

難易度 とても簡単 報酬 通常 完成予定 2022-03-29

登場人物 2/12 Characters
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《新入生》ウィトル・ラーウェ
 エリアル Lv9 / 黒幕・暗躍 Rank 1
不思議な雰囲気を漂わせるエリアル どちらつかずの見た目は わざとそうしているとか 容姿 ・中性的な顔立ち、どちらとも解釈できる低くも高くもない声 ・服装はわざと体のラインが出にくいものを着用 ・いつも壊れた懐中時計を持ち歩いている 性格 ・のらりくらりと過ごしている、マイペースな性格 ・一人で過ごすことが多く、主に図書館で本を読みふけっている ・実は季節ごとの行事やイベントには敏感。積極的に人の輪には入らないが、イベント時にはそれにちなんだコスチュームを纏う彼(彼女)の姿が見れるとかなんとか ・課題にはあまり積極的ではなく、戦闘にも消極的 ・でも戦闘の方針は主に「物理で殴れ」もしかしなくとも脳筋かもしれない 「期待しすぎるなよ、ぼくはただの余所者だ」 二人称:きみ、あんた 相手を呼ぶとき:呼び捨て 「ぼくのことは、ラーウェと呼んでくれ。ウィラでもいいぞ。前にちょっと世話してやった家出少年はそう呼んだよ」

解説 Explan

 学園の職員であるミミルの作った魔法薬が店内に降り注ぎました。
 様々な効果が店内に及んでいます。
 あなたの目の前で起こった現象は、どんな内容だったのか、アルファベットをプランに記載して下さい。

A、店内にある物がひとりでに動き始める
 店内の食べ物やカップなどが勝手に動き出します。
 和気藹々と談笑している物達もおれば、逆に険悪な雰囲気の物達もおります。
 どちらがお客様に人気なのか、チョコレートケーキとショートケーキがいがみ合っていたり、メニュー表が当店のお薦めメニューを語ったりと、店内にある様々な物がひとりでに動いております。
 
B、夢の世界に迷い込む
 魔法薬が店内に降り注いだ途端、あなた達は不思議な夢の世界に迷い込んでしまいました。
 あなた達が迷い込んだ夢の世界では、このような現象が起こっております。

●空からお菓子が降ってくる
 空から雪の代わりに、様々なお菓子がリズム感溢れる音楽と共に降ってきます。
 音楽に合わせてステップを踏んだりする事で、お菓子が降ってくるスピードを調整することが出来ます。
 早くステップを踏むと、お菓子の降るスピードは速くなり、逆に遅くするとお菓子の降るスピードは遅くなります。

●学園内が迷路に
 学園内の構造が、時間が経つ毎に変わっていきます。
 学生寮『レイアーニ・ノホナ』の共有スペースにある施設、炊事場が別の場所に移動していたり、先程まで存在していた箒乗り場がいつの間にか、別の施設に変わっていたりと、学園内の構造が迷路のように次々と変わっていきます。

・学園内を彷徨っていると、いつの間にか夢から覚めて元のカフェに戻っております。

●NPCキャラ
・ミミル
 魔法学園の職員の一人。
 可愛いぬいぐるみを集めている。
 今は、レゼントを盛り上げる企画を考案している。


作者コメント Comment
 こんにちは、お久しぶりです。
 留菜マナと申します。
 人出が少なくなったレゼントを活気付けるようと奮闘するミミルの騒動に巻き込まれたエピソードになっております。
 A、B、どちらでも、ミミルと一緒に行動する事が出来ます。

 どうぞよろしくお願い致します。



個人成績表 Report
アンリ・ミラーヴ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:162 = 67全体 + 95個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
現象:B
頭上からお祭りのような楽しい音が聞こえ、見上げるとお菓子が降り注いでいる。
受け取ろうと歩き回るうち、ステップで速度が変る事に気付く。
お菓子を上手く取ろうと工夫してステップするうち、音楽のリズムの乗って踊るように動き、楽しくなって祖流還りⅡで馬に変化、降るお菓子を口で咥えていくようになる。

ウィトル・ラーウェ 個人成績:

獲得経験:81 = 67全体 + 14個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
想像以上に愉快なことになってんな
お言葉の甘えて堪能させてもらうか

A、ケーキたちの井戸端会議を聞きに
やれフルーツは大きい方がいい、クリームは多いだの
チョコこそ至高だの……
どれも美味しいじゃんって言ったら怒られそうだから静観しておこう
これはこれで面白いけどね、甘味は疲れた時にいいし

リザルト Result

●ケーキパラダイス
 カフェ内は騒然としていた。
 カップ達が和気藹々と和む中、メニュー表達が当店のお薦めメニューを語りながら華麗に舞う。
「この魔法薬で、さらに多くの人達を楽しませる事が出来そうだよ」
 【ミミル】が先程、告げたとおり、店内だけではなく、外にいた者達も巻き込んだ騒動は活気に満ち溢れていた。
 混沌としたカフェ。
 中でも不穏な空気を漂わせているのは激しい剣幕で言い争うケーキ達だ。
 様々なケーキ達がいがみ合っている一触即発な状況は、店が直面する窮状を訴えかけている。
「想像以上に愉快なことになってんな。お言葉に甘えて堪能させてもらうか」
 【ウィトル・ラーウェ】はケーキ達がいがみ合う状況を見守っていた。
 店を訪れた客も、注文を聞いていた店員も、突然動き始めたケーキ達を前にして驚愕している。
 店内に漂う混乱と動揺をよそに、ケーキ達の争いは次第に苛烈さを増していく。
「あら、フルーツは大きい方がいいわよ!」
「我のクリームは多い!」
「何を言っている! チョコこそ至高だ!」
 チョコレートケーキがここぞとばかりに宣言すると、それぞれのケーキ達はきっぱりと異を唱えてみせた。
 お店で出されているケーキは、味も見た目も洗練されたお店独自の拘りのあるお洒落なものが多い。
 だが、それぞれのケーキが自身こそが店内で一番幸せな美味しさだと主張する。
(やれフルーツは大きい方がいい、クリームは多いだの。チョコこそ至高だの……)
 ケーキ達の井戸端会議を聞いていたウィトルは思う。
(どれも美味しいじゃんって言ったら怒られそうだから静観しておこう)
 ケーキ達の情熱は魔法薬を作ったミミルにも勝るとも劣らない。
(これはこれで面白いけどね、甘味は疲れた時にいいし)
 目を向ければ、ケーキ達の争いは新たな局面を迎えていた。
 様々なケーキ達が作戦の算段を講じている。
 剣呑な雰囲気を醸し出し、互いに一歩も譲らない。
 様子を窺っていたウィトルは投げやりに言う。
「そこまで言うなら、それぞれいいとこアピールしたら?」
「……おおっ、なるほど!」
「アピールね!」
「よーし、それなら我は負けぬ!」
 ウィトルが示した提案は、鬼気迫っていたケーキ達の心を掴む。
 予想外の盛り上がりを見せる店内に、周囲の者達は唖然とする。
「まずは俺からだ!」
 チョコレートケーキを筆頭に、店内のケーキ達がウィトルに注目する。
「俺達の熱意がこもったアピール、是非とも聞いて下さい!」
(なんでだ)
 ケーキ達の謎の勢いに押されて、ウィトルはたじろぐ。
 嫌な予感を感じたウィトルに構う事なく、チョコレートケーキは怒濤の勢いで語り出した。
「ケーキは至高のチョコだ。とろけるような味わいは食べた者を魅了するからな」
「あら? ケーキは風味がぎゅっと詰まったフルーツよ。甘酸っぱい味わいで、特に旬の果物とクリームの相性が抜群ね」
「ケーキは魅惑のクリーム。雪解けのようなふわとろ食感は素晴らしいと言えよう」
 ケーキ達は思う存分、自身の良さを語り尽くす。
 やがて、まるで争いの雪が溶けたように、ケーキ達は穏やかな春のような声音を滲ませて語り合っていた。
 先程とは別の意味で盛り上がりを見せる店内。
 意気投合したケーキ達はやがて、一つの結論に達する。
 それは――自分達を食べてもらう事で、店一番のケーキを決めようというものだった。
 誰からともなく、期待の声が上がる。
「我らを食べてほしい!」
「私達を食べて!」
「まずは至高のチョコからだ!」
 満場一致で、ケーキ達は様々な方面からウィトルへ声を掛けた。
 一致団結したケーキ達の挙動はさらにエスカレートする。
 ウィトルは必死に拝み倒すケーキ達を避けながら店内を立ち回っていた。

●降り注ぐお菓子
 【アンリ・ミラーヴ】は落ち着いた雰囲気のカフェで過ごしていた。
 店内の者達は学園やレゼント内の話を持ち込み、会話に花を咲かせている。
 アンリはレゼントには時々、買い物で訪れていた。
 ミミルが居るカフェに来たのは、授業で良い評価を貰えた自分へのご褒美だ。
 アンリが席でくつろいでいると、思わぬ光景が目に入った。

 がっ、がたたっ、ばったーんっ。

 突如、カフェ内に響き渡ったド派手な音。
 店内の視線を一身に集めたミミルがうつ伏せにすっ転んでいた。
「わわっ……今のなし!」
 顔を上げたミミルが手を伸ばしたが、既に手遅れだった。
 持っていた魔法薬は水飛沫が飛び散るように店内へと降り注ぐ。
「大丈夫――」
 アンリはミミルを助けようと立ち上がる。
 その途端、青空がアンリの目の前に広がり、足元がふわふわした雲へと変化する。
 麗らかな青空。
 足元の雲はまるでふわふわした綿花のような雰囲気を醸し出していた。
「おーい、そこの君!」
 そこにゾンビのぬいぐるみを抱きかかえたミミルが駆け寄ってくる。
(……良かった。怪我は……無いみたい)
 アンリはほっと胸を撫で下ろす。
 ミミルは派手に転んだ時も、身の危険を顧みずゾンビのぬいぐるみを守っていた。
 もしかしたら怪我をしているかもしれないと思ったのだ。
「初めまして、私、ミミルっていうの。学園の職員で以前、レゼントの新歓企画運営委員長だったんだよ」
「初めまして」
 満面に喜色を湛えたミミルに応えるように、アンリが自己紹介する。
「俺はアンリ・ミラーヴ。学園の生徒です」
「……その、巻き込んでしまってごめんなさい」
 場が温まってきた所で、ミミルはアンリに謝罪した。
 そして、目の前の不思議な現象の原因が自分の作った魔法薬の影響だという事を説明する。
 事情を把握したアンリはミミルが抱えているゾンビのぬいぐるみに目を向けた。
「こんにちは」
 ぬいぐるみが好きなアンリは、ゾンビのぬいぐるみに声を掛ける。
「えへへ、こんにちは」
 ミミルはアンリの挨拶に応えるように、ゾンビのぬいぐるみを掲げた。
 その時、頭上からお祭りのような楽しい音が聞こえてきた。
 軽快な音色の隙間に挟む軽い調子の音が、まるで小太鼓のような響きで小気味良い。
 アンリ達が空を見上げると、色鮮やかなお菓子が次々と降り注いできた。
「よーし、お菓子を集めよう!」
 ミミルの突飛な発案。
 その意図を察したアンリはミミルと手分けして、お菓子を受け取ろうと歩き回る。
 空からひっきりなしに降り注いでくるお菓子。
 やがて、アンリはステップを踏む事でお菓子の降る速度が変わる事に気付いた。
(うん、やっぱり速さが変わっているみたいだ)
 アンリはお菓子を上手く取ろうと工夫して、軽やかにステップを踏んでいく。
 そのうち、音楽のリズムに乗って踊るように動いた。
 次第に楽しくなってきたアンリは祖流還りで馬に変化。
 馬に変身したアンリは空から降るお菓子を口で咥えていく。
「馬のルネサンスなんだねー」
 お菓子を咥えるアンリを見て、ミミルは声を弾ませた。
 二人が集めた数多のお菓子。
 色とりどりのお菓子の色彩がアンリ達を包み込む。
 繊細で美しく、煌めきを帯びたお菓子の数々にアンリとミミルは感嘆の吐息を零す。
 まるで宝石みたいだった。
 アンリとミミルが再び、お菓子を集めようと空を見上げたその時――。
 いつの間にか夢から覚めて、二人は元のカフェに戻っていた。
 アンリ達が夢の世界から戻った事で、店内を騒がせていた魔法薬の効果も失っていた。
「いろいろあったけれど楽しかったね」
「はい」
 ミミルの嬉しそうな様子に、アンリも嬉しくなる。
 不思議で楽しい一日を過ごしたアンリとミミルだった。 
 
 まるで希望の光明をもたらすように、春の息吹が空を舞う。
 レゼントの活気に繋がる希望の萌芽は、いつしか芽を出すはずだから――。



課題評価
課題経験:67
課題報酬:0
お菓子な魔法薬
執筆:留菜マナ GM


《お菓子な魔法薬》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 1) 2022-03-14 23:52:36
教祖・聖職コース、アンリ・ミラーヴ。よろしく(尻尾ぶんぶん)
行動、これから考える。