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オミノ・ヴルカで宝探し



ストーリー Story


 今日の授業は【スケール・レイフ】先生の鉱物学……なのだが、話は少々違うよう。
「――であるからして、オミノ・ヴルカ火山で活動する場合は、ワイバーンの襲撃に備え、灼熱を治す薬草作りが必要不可欠。これから薬草の作り方を教えよう」
 なぜ、こんな話になったかと言うと。
 オミノ・ヴルカ火山に住む、『フレイム・ゴート(火山羊)』が、年に1度だけ落とすフレイムホーン(角)を採取するという、課外授業の話から始まった。
 フレイム・ゴート自体は怖い動物ではない。だが名前の通り火属性で、体が炎で被われているのが厄介と言ったらいいのか。
 だからこそ、生え代わりの為に抜ける角を狙って、フレイムホーンが冷えてから採取するのが一般的である。
「オミノ・ヴルカ火山に到着する前に僅かながら草原があり、そこで必要な薬草を調達し、すり潰して灼熱でやけど状態になった場所に塗る」
 スケールの説明の最中、学生の1人が手を上げて質問する。
「先生ー  どんな場所にでも効果があるんですかぁ?」
「ああ、ワイバーン程度の灼熱ならば、どの種族、どの場所に塗っても、冷却効果を発揮し数分絶たずに、やけどの痛みは消えるだろう。便利なものだろう? 火山に入る前に、必ず作っておくように、以上!」
(必要なことは教えたが、ワイバーンに遭遇するのは確率論。遭遇しないことを祈ろう)
 授業は終わりと、スケールは教室を出はしたが、明日から始まるオミノ・ヴルカでの課外授業が気がかりでならない。
 毎年この課外授業を出し、数名は怪我をして帰って来る。それはワイバーンの灼熱だけではなく、まだ冷めてもいないフレイムホーンに触れてしまった為も多い。
 だからこそ、鉱物学とは関係のない、やけど用の薬草の作り方を毎年教えているのだが、今年は怪我なく帰って来るのだろうか? それを心配するスケールであった。


 次の日は、朝早くからグリフォン便に乗ってトルミンまで行き、そこからオミノ・ヴルカ火山手前まではホウキで移動。
 スケールに言われた、火山手前の小さな草原から、君たちの冒険は始まるのだ。
 スケールは『事前に薬草』と言ったが、腕に覚えのある学生は、薬草など作らずに、そのままオミノ・ヴルカへと足を踏み入れ。慎重な学生は、薬草の他にも道具を作り、オミノ・ヴルカへと入ってゆく。
 君たちはどちらを選択する?

 ワイバーンを警戒しながらも、フレイムホーンを探す学生たち。
 フレイム・ゴートは、そこまで繁殖をしている動物ではない。オミノ・ヴルカの過酷な自然の中で、生存競争に生き残らなければならないからだ。
 結果、この地域で確認されている数は100~200匹ほど。
 更にフレイムホーンは雄しか生えず、ある程度の時期はあるものの、いつ抜け落ちるかも分からないので、学生たちは山を歩きながら探すしか手はない。
 もし見つけても、すぐに触ろうとはせず、少しだけ手を近づけ、熱いか冷めているかを確認し、冷めていれば採取成功……と、ここまではいい。
 問題なのはワイバーンだ。
 古龍属の特性を真似て作られた魔物で、空を飛びながら獲物を探す。
 もし見つかれば、急降下をして襲って来るだろう。ワイバーンは交戦好きな生物だから。
「あ、あああー!?」
 そんな話をしていれば、早速ワイバーンの急襲を受けた学生の悲鳴が聞こえて来た。
 君たちは大丈夫なのか?
 ワイバーンは沢山いるぞ。
 無事生還することに期待する。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-07-10

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2019-07-20

登場人物 3/8 Characters
《新入生》クロード・クイントス
 ヒューマン Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
色々と考えてから行動するタイプ。 あまり感情的にはならずニッコリ笑顔を心がけている。 でも顔は笑っていても眼は笑ってない。 厳格な家庭で育ったため人間関係に疲れて孤独を好み、自立するために家を飛び出し、秘めていた好奇心をさらけて放浪癖を患う。 ※アドリブ歓迎
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。

解説 Explan

●目的
 ワイバーンを撃破しながら、フレイムホーンを採取し学園に持ち帰ること。

●行動
 最初に、薬草を作るか作らないか選択して下さい。
 スケール・レイフ先生の授業で、状態異常・灼熱(やけど)に効く薬草作りは教わりましたから、薬草は作れるはずです。

 次に、オミノ・ヴルカに入り、フレイムホーンを探します。
 見つけた場合、すぐに採取するか、考えて採取するか、これも選択式です。

 そしてワイバーン戦ですが、見つからない手段があるのであれば、それにこしたことはありませんが、9割以上の確率で見つかってしまうでしょう。
 ワイバーンは、一度に1体しか出て来ません。複数集まると、大きな翼が邪魔になり、同じワイバーン同士で争う為です。

●ワイバーン
 古龍属の特性を真似て作られた魔物。
 空を飛び、火球で攻撃する。
 好戦的で狂暴な性格で、動く生き物を発見すると、上空から飛来し攻撃を開始します。
 特異属性・火 苦手属性・水
 火属性攻撃でも、ダメージは低いですが通りはします。
 火力は、水魔法で押し返せるレベルの威力。
 戦闘スタイルとしては、空を飛びながら、口から火球を吐き攻撃するのが基本です(地上に降りても火球は吐けます)
 知能は高くありません。攻撃以外の方法で、ワイバーンを足止めすることも可能ですが、事前の草原で準備が必要になります。
 ※火球に当たってしまうと、灼熱の状態異常になってしまうことがあるので注意。

●最後に。
 草原で作った薬草や罠の類いは、学園に帰った後、スケール先生がフレイムホーンと一緒に回収してしまいます。


作者コメント Comment
 こんにちは鞠りんです。
 冒険に戦闘と、PBWの醍醐味の1つですよね。
 今回は、ガッツリと戦闘して貰います(笑)

 ワイバーンとの戦闘を回避する手がないわけではないんですが、戦闘……したいですよね?
 カッコよく戦闘シーンを書くように頑張ります!


個人成績表 Report
クロード・クイントス 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:120 = 40全体 + 80個別
獲得報酬:2400 = 800全体 + 1600個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
夏なのに火山に登るのか、少し前まではアルチェのサビア・ビーチ楽しく涼んでいたのに

薬草、作ります
冒険者は準備を怠らない、…いや、学生で元旅人だけど

採取、ちゃんと考えて採取します
少しだけ手を近づけ確認し採取、冒険者は分りきったミスなどしない…以下同文

角探し
ぼちぼちと、ワイバーンを警戒しつつ

ワイバーン対策
高い確率で見つかるのなら対策も何も…倒して進むだけでしょう
薬草も用意したしリブーラで回復も出来る、準備万端ですな

戦闘
逃げずに足を止めて避ける感じで
装備のエンデミニオンで水属性攻撃

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
余裕があれば事前調査でワイバーンの急所を調べておきますわ

火山手前の草原についたら薬草を作って採取の準備。備えあれば憂いなし。特に前衛で戦う事の多い私には回復手段は必須ですものね

角を採取する際は先ず軽く指先で触って冷えているか確認してから採取、荷物カバンのお納めますわ。その際聞き耳を用いワイバーンの接近を警戒。現れたら火球の攻撃は緊急回避で躱し、前衛に立つと相手に向かってクイクイと指を動かし挑発。上手く頭に血が上って正面から突撃して来たら祖流還りを用い、精密行動で調べた急所に狙いを定め真中正拳突きをぶちかましますわ。相手の攻撃は心頭滅却で我慢

無事撃退出来たら薬草を用い採取続行。沢山採りますわよ♪

ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
ワイバーンを倒し、フレイムホーンを手に入れる!

【行動】
ワイバーンに見つかったら応戦。私はいつも通り剣を構えて前衛に出るよ。

部分硬質化で身を守り、視覚強化でよく見て、流水の構えで受け流してダメージを軽減。
ブレスは切り払う感じになるかな。何とか直撃だけは避けたいところだよ。
そして隙があらば、龍の翼で間合いを詰めて斬撃を食らわせるよ。
この白銀の翼は飾りじゃないよ!

ワイバーンが弱ってきたら、大技で一気に畳み掛けるよ。
龍の翼で間合いを詰めてから渾身の勇者之斬で叩き切る。
龍の紛い物なんかには負けない!本当の龍の力、見せてやるんだ!
だぁぁぁぁーーーーっ!!チェストォォォォーーーーーーーーッッ!!!!

リザルト Result

 【スケール・レイフ】先生の授業に出ていた学生全員が、オミノ・ヴルカ火山手前に少しばかりある草原に集まった。
 そのまま火山へと入る者、先生の授業通りに薬草を作る者、【クロード・クイントス】も、先生の話を聞いていた中の一人である。
「夏なのに火山に登るのか。少し前までアルチェのビーチで楽しく涼んでいたのに」
 そんな愚痴を溢しながら、必要な薬草の素材を探し摘んで歩く。
 素材自体は、そこまで難しい物ではない。
 ただし集めた後にすり潰し混ぜなければいけないのが、手間といえば手間だ。
 「冒険者は準備を怠らない。火山に近づけば幾らでも石や岩はあるんだよね、少々場所をお借りして、薬草を作ればいいだけだよ」
 集め終わった素材を手に、クロードは手早く薬草を作ることを選んだようだ。

 その向こうで、同じく素材を集めているのは【ビャッカ・リョウラン】で、彼女はその場に座り込み薬草を作っていく。
「薬草は作らなきゃだよね。備えあれば憂いなしだよ」
 夏のオミノ・ヴルカは、周辺も含め最高気温40度を超える猛暑なのは有名。そこで少しでも涼しいこの草原で薬草を作ることにした。
 そんなビャッカに追いついたのが【朱璃・拝】。ビャッカの様子を見て、朱璃もこの場所で薬草を作ることにしたよう。
「きみもここで薬草を作るんだね」
「えぇ、火山に入ってからでは暑いですわ。草原で薬草をしっかりと準備するのが一番、備えあれば憂いなしですわ」
 朱璃の話を聞いて、ビャッカがクスリと笑う。
「それ、私も同じことを考えたんだよ。備えあれば憂いなしってね。そうだ一緒に薬草を作ろう?」
「それは嬉しいですわ!」
 ビャッカが素材をすり潰し、朱璃が薬草を混ぜていく。
 それぞれ薬草を手に入れ、三人はオミノ・ヴルカに足を踏み入れた。
 
「先日も火山に行ったばかりなのですが、よくよく縁があるのでしょうか?」
 なにかと火山に出合うのは何故と小首をかしげ、その大きな耳をピクピクと動かしながら朱璃は山の中を歩く。
 上空を確認しながらフレイムホーンが落ちていないか辺りを見回す。
「そう簡単にあるわけありま……ありましたわ!」
 まさかという思いを胸に駆け寄ってみれば、そこには確かに白く長い立派な角が転がっている。
「これはラッキーですの?」
 見た感じ炎などは一切ないので、朱璃がとった行動は指でチョンと触れてみること。
「……熱っ! 大丈夫だと思いましたのに、まだダメでしたわ」
 痛みを伴う指を見れば、赤く腫れ火傷をしている状態。
 見た目は大丈夫そうだったのにと思いながら、朱璃はカバンから先ほど作った薬草を一つ取り出し指に塗りつけた。
「まさかワイバーンの灼熱ではなく、火傷に使うことになるなんて。スケール先生は、これも想定していたのかしら?」
 朱璃がしげしげと指を眺めているうちに薬草は効き始め、数分もしないで痛みも腫れも引いてしまった。
「朱璃どうしたの? その薬草、ワイバーンに襲われたんじゃ……。でも近くにワイバーンは居なかったよね」
 ボーっと立っている朱璃を心配して、ビャッカは朱璃の元へと来たが、彼女はまだワイバーンには遭遇していない。
「違うのですわ。これはうっかりフレイムホーンに触れてしまい火傷をしてしまいましたの」
「大丈夫? まだ薬草は要る?」
「いいえ、少量ですぐ治ってしまいましたわ。スケール先生の薬草学は的確ですわね」
 ビャッカに指を見せれば、そこにはもう火傷の痕すらなく、朱璃の綺麗な指が薬草によって更に白く見えているよう。
「自分はまだ使っていないけれど、いい効果を発揮してくれるようだね」
 たまたま近くに居て、朱璃とビャッカの話が聞こえていたクロードも合流。
「少しだけ手を近づけて熱の有無を確認し採取。これが一番安全な方法だね」
 クロードがフレイムホーン採取方法の再確認を朱璃とビャッカに示す。
「そうだね。手を近づければ熱さは伝わるから、ちゃんと冷めているか確認してから採取することにするよ」
「ですわね。私としたことが失敗してしまいましたわ」
 ビャッカと朱璃はクロードの意見に同意し、三人揃ってもう少し付近で捜索してみることにした。
「最初に見つけた一本きりだね。もう少し山を登ったほうがいいのかな?」
 もっと奥で捜索したいと言うビャッカ。だけど。
「行けば行くほど、ワイバーンは多くなりますわ」
 朱璃が見つけたフレイムホーンは後で回収することにし、次のフレイムホーンを探しているのだが中々見つからない。
「フレイム・ゴートは個体数が少ないとスケール先生が言っていたよね。この広いオミノ・ヴルカで、角だけを発見出来る確率は少ないんだよ。だけど手分けして探せばワイバーンの餌食」
 遠くもなく近くもない距離に、ワイバーンが飛び交っているのは皆見えている。
「ここで探していても見つからないんだから、思い切って奥に行ってみる? あんな龍の紛い物になんか負けない! 本当の龍の力を見せてやるんだ!」
 ワイバーン。それは古龍を真似て作られた紛い物の魔物。
 ドラゴニアであるビャッカは、我が物顔で飛び回るワイバーンが許せない。
「この白銀の翼は飾りじゃないよ!」
「そうですわね。あんなのは一撃で倒して差し上げますわ」
 狼のルネサンスの朱璃には、ワイバーンなど餌に等しい。……数が多すぎるが。
「君たち二人が良くと言うのなら自分も行くよ。数は数で勝負……だね」
 多少気乗りはしないものの逃げる気もなし。あえて戦うことを選んだクロード。
 三人は奥へと進む。ワイバーンが待ち受けるオミノ・ヴルカの奥地へと。

 奥へ……山に登れば登るほど、道は険しく草木が生えることのない溶岩台地が学生たちを襲う。ここに来た学生たちにとって、フレイムホーン探しは自然との戦いである。
「不思議ですわ。多数のワイバーンが空を飛んでいるのに、一部だけ岩や山の上のほうに留まり動かないワイバーンが居ますの」
 朱璃の耳が捉えたのは、動かず息を殺すようにたたずむワイバーンの存在。
「隠れるように居る気配を自分も感じるよ。それも一ヶ所に数匹は固まっているんだ、どうしてだろうね?」
 クロードも感じている。こちらの動向を監視するようなワイバーンの嫌な気配を。
「この緊張の中でフレイムホーンを探さなきゃいけないなんて……。いつ私たちを襲って来てもおかしくない状況だよ」
「それでもフレイムホーンを探さなくてはいけませんわ」
(一本でも多くのフレイムホーンを見つけて、良い成績を上げなくてはいけませんの。……兄様のために)
 ぐっと拳を握り気合を入れ、初心を思いつつ捜索する朱璃。
「逃げず折れず諦めず、だよ!」
 ずっと剣を構えながら歩くビャッカは、フレイムホーンを探しつつもワイバーンの行動から目を反らさない。
「……! 来るよ!」
 いち早く見つけたクロードの声に、体を震わせる朱璃だが。
「あれ、フレイムホーンですの」
「それもまとまって落ちているよ。でも今はワイバーンのほうが先だよね」
 ワイバーンが自分たちに向かって来るのを、それぞれのやり方で察知し、攻撃態勢を取るが、いかんせん相手は空の上。
「空飛ぶトカゲ如きが私を倒そうなど、ちゃんちゃらおかしいですわ」
 ワイバーンに向かって『ほら来い』のように、指をクイクイと動かして挑発する。
 一匹が急降下し、朱璃に向けて火球を吐き出した!
「こんなものですの?」
 火球をひらりとかわし、降りてきたワイバーンの懐へと全力で走る。
「私の祖流狼よ応えて!」
 ふっと消えたかと思うような素早さを発揮し、一瞬で懐に飛び込み朱璃は渾身の一撃をワイバーンに放つ。
「はぁぁーー!!」
 ザシュという音と共に、付け根を攻撃されて飛べないワイバーン。
 だが動きを止めただけ。その口を開けば現れる火球。
「これしき……耐えてみせますわ!」
 かわす行動をとったものの、距離が近すぎて完全に回避することが出来ずに熱い炎を受けてしまったが、敵を倒しきるまで朱璃の猛攻は止まらない。
「これで! トカゲなんて私の餌ですのよ!」
 拳に力を込め、正面からの一撃!
 数倍はある巨体を軽々と吹っ飛ばされ、ワイバーンはその動きを止めた。
 ――だが。
「次が来るよ!」
「朱璃、君はこっちで灼熱の手当てだ!」
 クロードが朱璃を庇いながら後方に下がり、今度はビャッカが前面へと立つ。
「一回に一匹、それは羽が邪魔をするからだよ。同じ空を飛ぶ者として、私には分かるんだよね」
 ドラゴニアだから、空を駆け回る種族だからこそ分かる。
 接近し団体では飛べない、その羽が当たってしまうことを怖れて。
「一匹ずつだったら、冷静に対応すれば勝てるはずだよ」
 朱璃はクロードが薬草を使って灼熱の治療中。二人に近づかせてはいけないと、ビャッカは白銀の翼をはためかせ、空へと舞い上がる。
「羽がなければただのトカゲだよね。龍の紛い物なんだから……。だぁぁぁぁーーっ!! チェストォォォォーーーー!!!!」
 剣を構えたまま、翼の勢いを使いワイバーンに急接近。
 不意をつかれたワイバーンは、ビャッカの上昇を許してしまい……そして振り下ろされる剣。勇者らしい正面からの一撃!
 羽を狙われバランスを失ったワイバーンは、地上に叩きつけられるように落下。
 ビャッカも地上に降り、剣を掲げてガッツポーズ。
 ――でも。
「これで終われば苦労しないと思うよ。ワイバーンは山と待機しているんだからね」
 朱璃の治療を終えたクロードが、杖を構えて周囲を見回す。
「ビャッカ、君は回避行動は得意?」
「?? 大丈夫だよ」
「自分が攻撃するから、君はフレイムホーンを集めて来てくれるかな」
「分かったよ。タイミングを合わせるんだね?」
 小柄で飛べるビャッカだからこそ頼めること。
 クロードや朱璃では、フレイムホーンにたどり着くまでに、ワイバーンに攻撃されてしまうおそれがあるから。
「不幸を避けようとすれば、知らずのうちに幸運も逃がしている、だな」
 ワイバーンの襲撃を怖れていては、目の前にあるお宝は手に入らない。
 戦闘はしたくないが……逃げてばかりでは、この幸運を掴むことが出来ない。
 だから、クロードは愛杖エンディミオンに魔力を込める。
「いけぇ! 連続マド!」
 杖の力を借り無属性魔法を水に変え、また飛来するワイバーンに連続発射。
 弱点である水属性攻撃に倒れるワイバーン。だけどクロードにも魔力生成の限界はある。
「もう大丈夫、私いけますわ」
「ムリはするものじゃないよ」
「クロード様の攻撃が当たったトカゲを優先に倒しますので、心配無用ですわ」
 灼熱から回復した朱璃だが、祖流還りを使ったためにその気力は弱い。
「この程度であれば、普通に倒せるレベルでしょう。私、そこまで弱くはありませんわ、クロード様は攻撃を続けてくださいね」
「勿論だよ」
 ワイバーンの火球とクロードの魔法。その中を駆け抜けとどめを刺す朱璃。
 連携攻撃でワイバーンの気が二人に向いている内に、龍の翼を使い、フレイムホーンを拾い集めるビャッカ。
「全てのワイバーンを倒せるわけじゃないんだ、フレイムホーンを手に入れたら撤退しよう」
「仕方ありませんね」
 多数存在するワイバーン全てを倒すことは無理に等しく、目的の物さえ手に入れば撤退するしかないのは、三人とも理解している。
「フレイムホーンを回収したよ!」
 カバンに入りきらずに、両腕にも抱えて、ビャッカがクロードと朱璃の元に戻って来た。
「自分が牽制で魔法攻撃を続けるから、二人は麓まで走って欲しい。自分も最後に追いかけるよ」
「分かったよ!」
「分かりましたわ」
 残る力を振り絞り、今以上に魔法を連射するクロードを合図として、山道を走り出すビャッカと朱璃。
 どちらともに体力も気力も限界で、もう走ることしか出来ない。
「自分も逃げなきゃだよね」
 目眩まし的に大量のマドを放ち、クロードも山道を駆け降りる。
 クロードの考え通りであれば、ワイバーンは追って来ない、そう信じて。

「ふぅ。凄く走ったね」
「私、まだ走れますが……疲れましたわ」
 ワイバーンの気配が無いことに安心し、草むらに座り込んでしまう。
 そんな二人に、後から走ったクロードも追いついた。
「逃げる途中でフレイムホーンを二つ見つけて来たよ。思ったよりあっさりあったのには驚いたね」
「でもあんなに固まってあるなんて思わなかったよ」
「ワイバーンの邪魔さえなければ、まだまだ探せましたのに」
 クロードはずっと考えていた仮説を口にする。
「そりゃワイバーンに近づいて探さないもんな。いやまさか毎年恒例だから、知っていてワイバーンはフレイムホーンの側に居る?」
 フレイム・ゴートが角を落とすのは毎年のこと。
 その習性をワイバーンが理解し、罠として集めて置いていたのではないか。
 そう考えると、全ての辻褄が合うじゃないか!
「なるほど。危険を伴う授業が行われるのは、そこからしか学べないことがあるからか」
 確かに学ぶべきことは沢山あった。
 探すこと。戦うこと。撤退する勇気。
 闇雲に戦うことなかれ。スケール先生はそう言いたかったのかも知れない。
「謎は解けましたし、フレイムホーンも手に入れましたわ。それにしても流石に今日はもう熱い物は遠慮したいですわ。晩御飯は冷麺にしましょう」
「それ私も賛成ー! デザートに、かき氷もつけたいよ」
「お腹壊すだろう?」
 課外授業を解決し、思いを馳せるのは冷たい晩御飯。
 今日の食堂は、冷たい物が山と並びそうだ。
 そんなたわいもない話をしながら、クロードたちは学園に帰るべく、トルミンの街へと再び歩き出した。



課題評価
課題経験:40
課題報酬:800
オミノ・ヴルカで宝探し
執筆:鞠りん GM


《オミノ・ヴルカで宝探し》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2019-07-06 12:54:36
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

薬草はやはり作った方がよいでしょうか。

《新入生》 クロード・クイントス (No 2) 2019-07-06 19:36:11
あ、拝さんお久しぶり。
最近一緒に火山に登ったばっかりだね、そしてまた火山に登るという、もう夏なのにね。

薬草は、作るのに時間はかかるからねー。
でも必ず作るようにというスケール先生からのお達しだし急がないのなら無難に作っていくと良いと思うよ。
自分は作っていくよ。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 3) 2019-07-08 20:25:04
クロード様、こんばんは。そういえば確かに先日も火山に登りましたわね。熱中症にならないよう気をつけましょうね。

そうですわね、では私も薬草を作ることにいたしますわ。習ってもすぐ実践しないと忘れてしまいそうですし。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 4) 2019-07-08 23:31:26
ちょっとギリギリなタイミングだけど参加。
勇者・英雄専攻のビャッカ・リョウランだよ。今回もよろしくね。

薬草は私も作ろうと思うよ。備えあれば憂いなしというからね。
後は、フレイムホーンの採取は冷めていることを確認してから行うつもりだよ。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 5) 2019-07-09 00:41:02
と、そういえばワイバーンとの戦い方に関して言ってなかった。

私はいつも通り前衛に出るつもりだよ。
直撃しないように受け流しつつ、隙あらば飛んでって切り付ける感じ。
後はトドメの勇者之斬。うん、いつも通りだね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 6) 2019-07-09 19:58:00
ピャッカ様、こんばんは。よろしくお願いいたしますね。

私も前衛でしょうか。とはいえ飛ばれるとどうしようもないので、こちらを攻撃しようと近づいて来た時にカウンターを合わせるとかでしょうか。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 7) 2019-07-09 23:32:09
プラン送信っと…上手く行くといいな。