;
お花見DEバトルロイヤル


ストーリー Story


 桜も満開になりそうなほどの、春うららかなフトゥームル・スクエア学園の広大な校舎内。
 その日、学園の学生たちに、耳よりな情報が入って来た。
 情報酒場スタリウムが、今年も大々的にお花見をやるらしい。

 ――待ちに待っていた、お花見シーズン到来!
 我がスタリウムも今年も参加だぞ?
 今年のテーマは、その名も!!
 『川の上の小さなおうちでお花見ちまちょ☆』だ。
 スタリウムお手製の、梅と桜のお酒付き。
 更に、更に、舟の甲板には『こたつ』を完備!
 まだ少し寒い川の流れに身をまかせ、各自持ち寄った料理をつまみながら、名酒「梅の心」と「桜の力」で、1杯やろうじゃないか!
 なお、川流しは昼夜1回ずつ、10隻運航、各10名定員になる。以上。
――情報酒場スタリウム

「よっしゃぁぁぁぁー!! 来た、来た、来た、来たぁー! 今年も待ってたぜスタリウム。これは絶対に行かねばならん!」
 この話を聞いた上級生は、すでに行く気はマンマンの状態。人目をはばからず酒が飲めるチャンスを、みすみす逃す上級生でもないらしい。
 こんなイベントが行われる時は、学園もうるさくは言わないだろう。なにせ酒が付いているのだから。
「俺は夜に行きたい」
 周りで聞いていたルネサンスの上級生も、もふもふの耳をピクリと動かし、少々小さめで、もふっもふの尻尾がパタパタと振り回すように動いていて、このお花見に期待を込めているのが、よく分かる。
「私は昼のリリー・ミーツ・ローズの桜並木を、川から見たいわ」
 昼の運航で見られる、リリー・ミーツ・ローズの満開の桜並木を見ながら、ゆったりと料理とお酒を楽しむのか。
 それとも、夜運航での酒の酌み交わしを楽しむのか。これが一番の悩みどころ。
 だがもう1つの問題もある。
「今年もあるんだろ、あの場所取り争いが」
 そう、お花見うんぬんの前に、毎年熾烈を極める場所取り争い。
 舟は10隻、各10名定員、すなわちお花見舟に乗れる人数は100名。これはスタリウム式なのか、入れるかどうかは早い者勝ち……なのだが。
「あれはズルいわ。私たちフトゥールム・スクエアの学生は別ルートなんですもの」
 レゼントに住む街人と学生とでは、初めから5キロ以上の差があり、街人は障害物だけのルートを走破すればよいが、学生は障害物の他に、魔法トラップもあるルートを走破しなければならないという決まりがある。
「だけどな、持ち武器や魔法が使える俺たちと、なにも持たないレゼントの街人が一緒に争えば、勝敗なんて丸わかり。
「だからこそのハンデなんだろ。そりゃ仕方がないさ」
「ほんの一部だけど、僕たちと街人が交差する場所はあるんだから、公平だと思うけどなあ」
ルートの中に数ヵ所は、街人ルートと学生ルートが交差する場所があり、ケガさえさせなければ、なにをしても良いというのが毎年のルール。
 街人と言っても、冒険者なども含まれているのだから、公平と言われれば公平だと、街人も学生も思ってはいる。
「桜バトルロイヤルか、去年は知らん街人をジャンプで飛び越えた」
「ホウキは使用禁止ですもの。飛び越えるとか、すり抜けるみたいな技しか使いようがないのよね」
「攻撃魔法を使いケガをさせてしまえば即失格。毎年何人もの学生が失格しているんだよ。僕も危なかったけど」
 攻撃魔法自体は使用禁止とは言われていない。でも、それにより街人や学生にケガをさせれば、その場で捕まり失格退場。学園もしっかりと見張っているというわけ。
「障害物は自力走破だが、交差する場所に街人が大量に魔法トラップを仕掛けるのがな」
「あれは絶対に魔法符よね。学園もグルなんだから」
 確かに街人に配られている魔法符は、学園がスタリウムへ提供している物。しかも、街人は引っかからないように防御符まで渡している念の入れよう。
「俺は『危険回避』でかわしたけどな」
「僕は石をばらまいて発動させてから、安全な道を通ったけど」
 上級生たちも、このトラップ回避が最大の悩み。ケガをさせることなく、自分の能力だけでくぐり抜けなければならないのだから。
「バトルロイヤルがメインなんだか、お花見がメインなんだか……ね?」
 呆れるルネサンスの学生に、他の学生はただ笑うだけ。
「どちらも……でしょう? だってレゼント総出のお祭りみたいなものだもの。
 そのご褒美が、舟でのお花見とお酒と思えばいいのよ。私は参加するわ、今年も負けないんだから」
 それに頷く学生は多い。
 この障害物競争じみたバトルロイヤルを勝ち抜いて、優雅に川からのお花見がしたい。その気持ちはみな同じなわけだ。

 このおバカのようなイベント名とはうらはらのバトルなお花見は、あなたたちは初参加になるが、一風変わったお花見には興味を示したよう。
 学生寮で当日の料理を考えながらも、同時に己の武器や魔法を確認しだした。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-03-27

難易度 簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-04-06

登場人物 5/8 Characters
《新入生》櫻井・桜花
 ローレライ Lv10 / 賢者・導師 Rank 1
名前:櫻井 桜花(さくらい おうか) 【外見】 ピンクの腰までのロングウェーブを高く結っている 水は髪からずっと滴り落ちている ピンクのタレ目 口元右下にほくろ 細身の巨乳お姉さん 本を読み過ぎて目が悪いのか眼鏡を着用 【性格】 努力家でいつも一生懸命 ただ、ちょっとドジっ子 言葉の端々や仕草に色気がある 年下の子を甘やかす傾向にある 人に憧れ、近づきたいお姉さん 読書が趣味 マイペース 桜のリキュールのローレライなだけありお酒が大好き 【服装】 白い振り袖に制服のコートを羽織っている 帽子と手袋着用 眼鏡着用 ※アドリブ大歓迎!
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《新入生》レグルス・ロサリアム
 ヒューマン Lv6 / 勇者・英雄 Rank 1
「勇者となり世界を救う。それこそが恵まれた僕の果たすべき使命と言えるでしょう」 ●何一つ不自由のない、裕福な家庭に育った。明るく前向き。基本的には真面目で善良であろうとするものの、当然の如く突然の上から目線を発揮したり、迷わず他人やお金に頼ろうとする甘えた部分がある。ダメなときはダメと言ってあげてください。 ●入学と同時に部屋に置かれていたボロ装備に勇者への道の厳しさを痛感。いきなりの逆境に俄然やる気を出し始めた。実家が太いので精神的な余裕はかなりのもの。諦めなければなんとかなるでしょう!で実際なんとかなってきたのだ。 ●甘い物が好きで辛味や苦味は嫌い。全体的に子供っぽい好みである。 ○名前を呼ぶ際に敬称は付けない。 ○苗字には付ける。ミスター、レディ、など。英文のイメージ。 ○年上に対してお兄様、お姉様などと呼び掛ける。
《人間万事塞翁が馬》サティア・ブランシュ
 ルネサンス Lv7 / 王様・貴族 Rank 1
都会や華やかな社交界に憧れる田舎令嬢。 有名な学園で学べることを喜んでいるが、 入学してから見た洗練された級友や先輩達に衝撃を受け、 「自分は芋っぽいのでは」と言う悩みも。 形から入るタイプであり入学するにあたって丁寧な口調を 使うようにしたのだが、不慣れなのと適当な性格なため 咄嗟の時や気を抜いている時は元の口調(~だよ、~かな) で喋ることも。 基本的には人と話す時は丁寧に、独白・心情は元の口調。 【外見】 ・野兎のルネサンス ロップイヤー ・薄茶のロングヘア(背中まで) 白いリボン ・青色の瞳 たれ目気味 【性格など】 ・表情豊かで明朗快活な性格 ・自分本位な部分もあるが基本的には善良 ・物事を楽観的に考える事が多い ・あまり表には出さないがさみしがり屋で甘ったれな所も ・家族の事が気掛かりで心配している ・流行や有名人に弱く、知ったかぶるミーハーな一面も ・噂話やゴシップ好き

解説 Explan

●目的
 街人・学生混合のバトルロイヤルを勝ち抜いて、お花見舟での桜鑑賞と、持ち寄った料理やスタリウム特製のお酒を楽しむこと。

●行動
 まずは、バトルロイヤルに勝たねばいけません。

ルール
 一番最初に、スタリウムの係員に、参加の有無と、持ち込む料理を自己申請して下さい。
 申請した料理を無くしても失格となりますので注意が必要。
 学生は、フトゥールム・スクエア正門からスタートになります。
 (街人はレゼント内からスタート)
 ホウキは使用不可。ですが己の装備品や魔法、技能などは使用可能。
 仲間と連携して走破する、単独で走破する、その方法はさまざまだと思います。
 途中2ヶ所ほど、街人ルートと交差する地点があり、ここをどう切り抜けるかが勝敗をわけます(街人は学生に向けて、魔法符などを使うことが許可されている)
 合計100名の先着順で、参加人数は500人ほどと想定して下さい。(街人300、学生200くらいの割合)
 見事に勝ち抜けば、お花見舟で『こたつ』を囲み、持ち寄った料理にお酒を楽しみながら、川の上からリリー・ミーツ・ローズの桜並木を鑑賞することが出来ますので頑張って下さい。

●障害物の種類
 道いっぱいに広げたハードルのような物から、網縄潜り、壁登りなど、運動会の障害物競争を思い浮かべて下さい。
 これは普通に障害物をクリアーして貰います。

 更に学生には、地雷のように仕掛けられた魔法トラップがあります。
 トラップは技能や石ころ、その他発動させて引っかからなければ回避可能です。
 もし発動すれば、地に足がくっついて動けない。霞みがかって方向感覚が変になる。などの、妨害魔法を受ける事になります。
 魔法自体は可愛らしいですが、捕まると大幅なタイムロスになるでしょう。

 他人をケガさせた時点で即失格になります。武器や技能を使う時は十分に注意して下さい。


作者コメント Comment
 春です!桜です!お花見です!
 ついついコメントをしてしまい、急遽お花見エピを作った鞠りんです。
 ただお花見を楽しむ……そんなワケありません(えー!とかは思わないで)
 お花見を賭けての障害物競走。しかも街人、学生をはねのけてですよ(笑)
 席を勝ち取って、桜見物をしながら手料理やお酒を楽しんでくださいね。


個人成績表 Report
櫻井・桜花 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:49 = 16全体 + 33個別
獲得報酬:1350 = 450全体 + 900個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
花見の為に全力で走る

【行動・心情】
競争に勝てなきゃお花見は出来ないのね?
これは、どうしても勝たなきゃ、ね?
ふふ♪レグルス君も居るからお姉さん張り切っちゃうわね?

持っていく料理は「桜えびのチヂミ」よ


とりあえず、罠があるみたいだから
レグルス君の手を引いて『魔力感知』を使いながら威力を弱めた『マドガトル』で通る道を作るわね?

ふふふ、こういうのはお姉さんに任せなさい!

攻撃はNGだもの
妨害したら、駄目よ

花見が出来たらお酒飲むわよー!
(一杯飲み)

おはなキレー♪
おさけもオイシー♪
レグルス君もチヂミ食べる?
ふふふ、レグルス君ものみましょー♪
(その後男女構わずハグしてチューして回るお姉さんと化す)

レダ・ハイエルラーク 個人成績:

獲得経験:19 = 16全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
運搬
移動

◆参加時間帯


◆使用特性・技能
龍の翼
部分硬質化
立体機動
危険感知
第六感
暗視順応
お酒
息止め
水泳
変装
緊急回避
聞き耳
隠れ身
忍び歩き
跳躍
追跡
飛行
応急処置
事前調査

◆プレイング
・【事前調査】できるならしておく
・移動・回避に【龍の翼】【立体機動】【危険感知】【第六感】【暗視順応】【水泳】【緊急回避】【聞き耳】【隠れ身】【忍び歩き】【跳躍】【追跡】【飛行】を使用する
・防御には【部分硬質化】や回避系技能を使用
・【息止め】【変装】【応急処置】は場合によっては使用する可能性あり
・単独で行動する
・一般人には一切攻撃をしない
・一般人からの攻撃は基本回避(飛行含む)
・前を走る人が居たら移動系技能と【追跡】使用

ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:24 = 16全体 + 8個別
獲得報酬:675 = 450全体 + 225個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
目指せゴール!お花見を勝ち取れ!

【行動】
夜運航狙いで。
持っていく料理は「唐揚げ」。荷物カバン(小)に目一杯詰めて行くよ。

基本はランニングの要領で走って移動。普段から剣術で鍛えた体力を生かすよ。
視覚強化で前方を確認して、危なそうなところは避けていくよ。

街人ルートと交差する地点は、龍の翼で空を飛んで乗り越える。
空中を襲う仕掛けがないかを注意しながら、カバンを落とさないように安全にね。

そしてゴールが近くなってきて、残りの気力で十分足りると思ったら…ラストスパートだよ!
カバンを落とさないように肩掛けしたまま両手でしっかり抱き込んで、
龍の翼を広げて全速力でゴールまで空を駆け抜けるよ。

レグルス・ロサリアム 個人成績:

獲得経験:19 = 16全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
夜桜を見てみたいので夜の部に参加します。

持ち込む料理は『手まり寿司』。
お弁当用に蒸したり調味料に漬けたり酢締めした魚介で作ってあるものです。僕が作ったわけではありませんが。
これはカバンに入れておいて落とさないよう斜めがけに。

怪我をさせないように妨害を仕掛けるのは……難しそうですね。
罠や妨害を回避して、速く進むことだけを考えましょう!

障害物を通過するのに邪魔になりそうなので槍は寮に置いてきました。
代わりにその辺の木の棒を持ってきましたので、怪しい場所に投げてみて罠が発動しないかチェックするのに使いましょう。

直接的な妨害を受けそうなら立体機動で撹乱します。
厚手の布は水や油を拭うのに使います。

サティア・ブランシュ 個人成績:

獲得経験:19 = 16全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
・夜の部に参加
・持ち込む料理はクイドクアムで買ったロールケーキ
他の新入生とは出来る範囲で協力する

出発前にバトルロイヤルについて更に有益な情報が
得られないかスタリウムで情報収集
聴覚強化Ⅰした聞き耳でそれとなく聞いたり
余裕を見せている先輩方に直接尋ねてみる
必要があれば空気察知しつつハッタリなどで交渉

道中は多少遅れても先頭は走らず、誰かしら先輩の
後について走るように心がけ罠を用心
夜目が利かないような箇所があればランタンを使用

街人との交差点では基本回避Ⅰ、やせーの勘で
攻撃を避けつつ祖流還りⅠで脱兎の如く走り抜ける

勝ち抜けた場合は新入生達と夜桜、料理を楽しむ他
お世話になった先輩が居ればお礼を言いに行く

リザルト Result


「――ふむ」
 お花見当日の早朝、【レダ・ハイエルラーク】は、大がかりな仕掛けならば事前準備をしているだろうと、まだ人気もまばらなレゼントにやって来ていた。
「障害物は普通だろう、問題は道筋にある魔法符と交差する部分は……まだなにも仕掛けられていない?」
 ということは、この場所はバトル開催後に街人が仕掛けるのかと、レダは考える。
「――??」
(少し上に魔法符の波動?)
 よじ登り確かめてみれば、2メートル以上の高さに魔法符が貼られているのを、レダは発見した。
「なるほど。空を飛べば魔法符が発動し妨害する。これは地道に走るしか手はないだろう」
 この聞かされていない情報を、学生たちと共有しなければと、急ぎレゼントから学園に戻るレダだった。

 バトルの参加登録のために並ぶ学生たち。その中で【ビャッカ・リョウラン】は、カバンに料理を詰め、参加にサインをしようとしたら。
「ん、未成年者か? 酒抜きになるがいいのか」
 ああ、やっぱりと思うビャッカ。毎回この外見で子供と思われるのは、お馴染みの話なのが痛い。
「私、子供じゃないよ、ちゃんとお酒が飲める年齢。ほら見て」
 ビャッカが提出したのは、フトゥールム・スクエアの学生証。スタリウムの店員も、それを見て納得顔でビャッカに微笑んだ。
「こりゃ悪かったな。酒もOKだ、頑張ってこい!」
「はい!」
 そのやり取りに聞き耳を立てていたのは【サティア・ブランシュ】で、前の日にスタリウムに情報収集に行ったが、有益な情報は得られず、参加登録のこの時間を狙っていたのである。
(さて、誰にしようかしら?)
 サティアの目的は、前にも参加したことのある先輩を捕まえ、秘策を教えて貰うか、後ろをついていくために、良さそうな先輩を探し中なのだが。
(思った感じの先輩は……いませんわね)
 大概はチームかコンビを組んでおり、サティアの入る隙間なんてない。
 でも、先輩たちが組んで走るということは、そのほうが効率がいいということを示している。
 残る手段は……目の前いるビャッカと一緒に走ることと、サティアはビャッカに話しかけてみた。
「ビャッカさま、できましたらご一緒しませんか?」
「え、私? 1人だから大丈夫だよ」
「では仲良く走りましょうね。絶対に勝ち残ってお花見ですわ」
 聞けばビャッカも夜の選択だという。これはいいパートナーを見つけたと思ったサティアである。

「学生たち、集まったか? ――ではスタート!!」
 正門前に集まった学生たちにむけ、『パァーン!』と魔法で花火が上がる音が響き渡り、学生たちのお花見バトルがスタート!
「レグルス君、私から離れないでね」
「はい! 桜花お姉様」
 開始早々【レグルス・ロサリアム】の手を引いて走るのは【櫻井・桜花(さくらい おうか)】のコンビで、かなり早い順番で障害物ゾーンに突入。
「ハードルくらい簡単よぉー」
「桜花お姉様、ポンポン飛ぶのはいいですが、手に持つ料理は落とさないで欲しいです」
 そう、料理を失くしても失格なのだから、レグルスは片手に持ちハードルを飛ぶ桜花に不安がつのる。
「大丈夫よ。水で料理の入れ物をくっつけているからね」
 レグルスは事前にカバンに入れて斜め掛けにして走っていたが、まさか桜花がローレライの特性を生かし、水を使っているなんて気づいてもいなかった。
 その後も、網縄をくぐり抜け、高い壁をよじ登り一気に落下しても、手に持つ料理はブレることすらない。
「桜花お姉様がご一緒してくださるから心強いです!」
(お、桜花お姉様もやりますね)
「ふふふ、こういうのはお姉さんに任せなさい!」
 負けてはいられないと、繋ぐ手を握り返すレグルスは、桜花の期待に応えたいと強く思ったのである。

 上手く隠れ身を使い、障害物をなんなくクリアーし、問題の交差地点にやって来たレダだったが。
「――人も魔法符もすごい量だ」
 『うおぉぉぉぉぉ!!!』と、怒号が飛び交う300人にもなる街人たちの大群衆は予想済み。
 ただ学生たちの先をいく街人が、走るたびに交差部分に次々と魔法符を地面に置いていく。まさか、これほどだったとはと、レダとてこれは予想の範囲外。
(少々面倒だが魔法符は回避出来る。攻撃出来ない街人……。そうか、この手がいいだろう)
 思い付き取り出したるは、腰に差している泡立て器!!
 そして日の光を確かめ、持ち手ではなく泡立てるほうを持ち、レダは振り回しながら走りだした。
「なんだ?」
「くっ、まぶしい!?」
 持ち手のほうが、光を受ける割合は大きい。
(料理が冷めないように素早く素早く)
 それを逆手に取ったレダは、光の反射に一瞬怯んだ街人の中を素早く移動。あまりにも魔法符が多い場所は、泡立て器を持ちながら飛ぶことで回避する。
「低く飛べば魔法符は発動しない。いい案だった」
 街人も学生すらも唖然とする中、1人交差地点を抜けだしたレダだった。

 少し後に、サティアとビャッカも交差地点に差し掛かった。
「障害物は普通に走って抜けましたけど、これは凄いですわね」
「人が……いっぱい。私は空を飛べばいいけど君は?」
 ビャッカの言葉に、サティアはピクリと反応する。
「待ってください。先ほど上にも魔法符があると言っていましたわ。空を飛ぶのは危険ではないかしら」
 そう、あの参加登録の喧騒の中で、サティアは上にも罠があると、その大きな耳で聞いていたのだ。
「そっか。じゃあ回避しながら低く飛ぶのは?」
「それは大丈夫だと思いますわ。わたしは祖流還りで、脱兎のごとく走り抜けますわ」
「今は2手に分かれたほうが得策だよね」
 野兎のルネサンスのサティアと、ドラゴニアのビャッカは、お互いの種族の特性を発動させ、交差部分に突進しだした。
「わたしの足について来られるかしら?」
 もっふもふの耳としっぽをはためかせ、兎特有の後ろ足ジャンプを使い四つ足で着地。その繰り返しで高速で移動するサティア。魔法符は、やせーの勘で、怪しい場所を察知し回避して突破する。
 ビャッカもカバンを大切に抱きかかえ、サティアに言われた通りに低空飛行。途中で街人に落とされそうにはなったが、ヒラリと素早い身のこなしで街人の手をギリギリ避けて、無事に切り抜けたよう。

 それを見ていた、桜花とレグルスは『うーん』と考える。
 先を走っていたはずの2人だが、レグルスよりも桜花の体力が保たず、少し後方になってしまったのは致し方ない。
「私たちは出来ないわねー。レグルス君は街人の妨害を察知して? 私は魔法符を引き受けるわよ」
「分かりました桜花お姉様、本当に危ない時は『お姉様』と呼ぶでいいですね」
「ええ、行きましょう」
 手を繋いだまま、交差部分に飛び込む桜花が、大量にある魔法符の中から、数少ない何もない場所を察知し選び走り、レグルスはすれ違う街人の様子をうかがう。
 そうすれば、魔法符に乗せようと動く街人に、レグルスは気が付いた!
「お姉様!!」
「レグルス君まかせて! いけぇー『マドガトル!』」
 威力を最大まで弱めた、乱撃魔法を桜花が発動。数打ちゃ……ではなく、魔法の玉で街人を驚かせ目をくらませるだけ。桜花の魔法は、街人に動揺が走るという効果は十分にある。
「桜花お姉様だけじゃないです!」
 レグルスは持っていた木の棒を、怪しい場所に投げてみて、罠が発動しないかチェックし、魔法を発動中の桜花を誘導。
 更にレグルスの予想を超える俊敏な動きで、街人を撹乱したのもあり、2人は手を繋いだまま、無事に交差地点を抜けることに成功した。
 
「やっとゴールが見えてきたよ!」
 走りに走って、ゴールに張られている白いテープが、ビャッカの視界にも入ってきた。
「私、空を飛んでゴールに入りたい。いいよね?」
 それにはサティアもニッコリと微笑む。
「ええ、ここまで来れば、もう大丈夫ですわ。ビャッカさまのお好きでいいのではないのかしら」
「そう? じゃあ先に行くね」
 龍の翼を広げ、低空飛行ながら全速力を出し、ゴールまで空を駆け抜けるビャッカは気持ちよさそう。
 その少し後に、サティアもゴール。『お疲れ様』と言い合う2人の後ろには、先にゴールしていたレダがたたずんでいることは、誰も知らない。
 
「残り5人だぞー!」
 スタリウムの店員が、ゴール地点で大声を張り上げたのを聞いて、桜花とレグルスもラストスパート!
「レグルス君、急ぐよ」
「勿論です、桜花お姉様」
 最後の枠を勝ち取るために、2人は残る力を振り絞って、学生たちを数人追い抜くように走破し、なんとか枠内でゴールすることができた。
「ギリギリだったけど、よかったねレグルス君」
「桜花お姉様のおかげです」
「そんなことないわよ。最後にはレグルス君の体力に助けられちゃったわ」
 ゴールを過ぎてもなお、レグルスの手を離さない桜花に、レグルスは苦笑い。
(いつまで握っているのかな、桜花お姉様?)
 桜花は桜花で、いっぱいレグルスの手を握れて大満足していた。


「いい花見酒ねー」
 街人も同級生も先輩も、他の新入生たちをもくぐり抜け、見事にお花見の参加を勝ち取った学生たち。
 しかも全員が夜桜選択で、みんな一緒のお花見舟に乗り込み、仲良くコタツを囲んで、川の上からの夜桜鑑賞になった。
「夜の桜は風情がありますわね」
 リリー・ミーツ・ローズの桜並木は、魔法で灯されたランプが無数に並び、明かりが差した満開の桜は圧巻の一言。それを舟から見る楽しみは、何物にも変えられない春の景色。
「夜桜に酒。肴は私からでいいか? なるべく早いほうがいいんだ」
 レダがコタツの上に置いたのは、フォンデュバケット。
 バケットを一口サイズにし、溶かしたチーズにくぐらせたものを、カマドで軽く焼いた、お酒のお供らしい肴。
「これ美味しいよ。私は唐揚げにしたんだよね」
 フォンデュバケットを食べながら、ビャッカは自分が持って来た香ばしい匂いの唐揚げもパクリ。
 もちろん待望のお酒も……。梅の心に桜の力の大盤振る舞い!
 スタリウムが名酒と謳っているだけあり、香りも味も最高にいい感じと、ビャッカはご機嫌モード。一番の理由は、この外見でも止めない仲間たちのおかげ……とは言ってあげないと、ビャッカは少しだけ思っている。……恥ずかしいから。
「わたしはロールケーキですわ。お酒の肴としては……ですけど、先輩に教えてもらった、美味しいものですわ」
 サティアが置いた、クイドクアムのカフェで買ったロールケーキを、今度はレグルスがパクリ。
「うーん、果物が入っていて美味しいですね。僕は手まり寿司にしたんです」
 赤や黄色に橙など、色とりどりの酢〆た魚たちが乗る、可愛い手まり寿司は、食べやすくて酒の肴にはもってこい。
「そう、桜花お姉様は?」
「私? 桜えびのチヂミよぉぉー!」
 ドン! と綺麗な桜色のチヂミを置いたはいいが、なんとなく桜花の様子がおかしい?
「おはなキレー♪ おさけもオイシー♪」
「待て、すでに酔ってないか桜花は?」
 レダがそう指摘するも、琥珀色と桜色のお酒を持った桜花は止まることを知らず。
「レグルス君もチヂミ食べる? みんなもぉー!」
 積極的……いやいや、かなり強引にチヂミを進める桜花を見て、その場にいる全員が『桜花は絡み酒だ』と思う。
「ふふふ、レグルス君も飲みましょうょー!」
「え、僕? お酒はまだムリって……うわっ! 桜花お姉様!?」
 お酒を片手に、桜花はレグルスを強烈にハグし、そのやわらかい頬にチュー!!
「わ、わ、いけませんよ、桜花お姉様!」
(ハグは親愛として受け入れますが、まさかチューされるなんて……!)
 レグルスが茫然としているうちに、桜花のご乱行はエスカレート!
「んーチューだけじゃないのぉー! でもレグルス君だけじゃあね?」
「ま、まて!」
「私は女だよお!?」
「きゃっ! なぜ、わたしまで……桜花さま!!」
 レグルスだけじゃない、その場にいた全員にハグ&チューを仕掛ける桜花に、みんなタジタジ。荒ぶる桜花は、もう誰にも止められず手におえず。
「……桜花お姉様、破廉恥です!」
 そうレグルスが叫ぶも、酔った桜花に敵うものなし。いや、敵う酒豪がいたら見てみたい。

 でも、ただ1人サティアだけは密にコタツから抜け出し、船べりで流れる桜を楽しむと決め込んでいた。
「もう! せっかくの舟遊びで貴族っぽいと思ったのに……。だけど、こうしていると、わたしも貴族っぽくなれた気がするかしら?」
 周りのどんちゃん騒ぎを尻目に、のんびりと夜桜を楽しむサティアだった。

 そして……どこからか聞こえる怪しい声。
「私はショタコンじゃなぁぁぁぁいーー!!」
 ――多分に全員が無視を……した、はず。
 その真偽のほどは……定かではない――。



課題評価
課題経験:16
課題報酬:450
お花見DEバトルロイヤル
執筆:鞠りん GM


《お花見DEバトルロイヤル》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《新入生》 櫻井・桜花 (No 1) 2019-03-23 08:53:54
挨拶が遅れてしまってごめんなさいね?

私は賢者・導師コース所属。
桜のリキュールのローレライさん。
櫻井 桜花よ。

ふふ♪おこたでお酒を飲みながら花見ができるなんて素敵ね♪
やっぱり春はお花見だわ♪

ただ、あまり体力に自信がないから走り切れるかどうか…ちょっと自信は無いわね。

でも、お花見の為ですもの!
お姉さん頑張っちゃうわね♪

あ、持っていくお料理…何にするか迷ったのだけれど。
『桜えびのチヂミ』にしようかと思ったの!
覚めても美味しいし、なにより持って行きやすいかなって思って♪

皆、宜しくね?

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 2) 2019-03-23 22:16:57
黒幕・暗躍のレダだ。よろしくな。

料理はフォンデュバケットにする予定だ。

技能をフル活用して移動に特化しようと思う。
攻撃は禁止らしいからな。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 3) 2019-03-23 22:25:34
勇者・英雄専攻のビャッカ・リョウランだよ。
皆、よろしくね。

料理は唐揚げを持っていくよ。
色々考えたけど、結局シンプルなのがいいかなと思ってね。
とにかく頑張るよ!

あ、そういえば…昼運航と夜運航があるみたいだけど、皆はどっちに行くのかな?
私は…まだ考え中だよ。

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 4) 2019-03-24 10:26:23
昼間の桜ではよく見える分、相手からも良く見える。
そういった事を想定した対策が必要だろう。

逆に夜はよくは見えないだろう。
灯りはあるだろうが、それでも昼間より周囲を確認する事は難しいかもしれない。
できる事なら【視覚強化】【暗視順応】辺りが必要になるかもしれないな。

《新入生》 櫻井・桜花 (No 5) 2019-03-24 22:29:38
ふふ♪レダさんもビャッカちゃんもはじめましてね♪
こちらこそ、宜しくお願い致します!

>運航
迷ってはいたんだけど、夜桜って、素敵だと思うから。
私は夜の運航に参加しようと思っていたわ。

>夜は見えずらい
そうよね。んー、ランタン辺りを持って行こうかしら?
でもランタンって確か30分しか明るさを保てないんだったかしら?
私は『魔法感知』はあるから罠は大丈夫だと思うんだけど…余り見えないと困るかもしれないわね。

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 6) 2019-03-24 23:02:58
途中2ヶ所ほど、街人ルートと交差する地点があり、ここをどう切り抜けるかが勝敗をわけます(街人は学生に向けて、魔法符などを使うことが許可されている)

この情報を見る限りでは、ランタンを使うと目印にされるかもしれないな…。
尤も、前回に使用された妨害の情報が断片的にしかないから、何とも言えないが。

昼の部か、夜の部か。
どうしたものかな…。

《新入生》 レグルス・ロサリアム (No 7) 2019-03-25 20:42:47
レグルス・ロサリアムです。
みなさん、よろしくお願いいたします。

僕も夜の舟に乗ってみたいと思っていますので、桜花お姉様はよろしくお願いしますね。
敵と戦うわけではないので、頑張って回避しながら進むことになるでしょうか。

持ち込む料理はなにがいいのか悩んだのですが……。
比較的持ち運びが容易で華やかな手まり寿司にしようかと思います。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 8) 2019-03-26 20:15:41
>運航
夜が多いみたいだから、私も夜運航にするよ。

《人間万事塞翁が馬》 サティア・ブランシュ (No 9) 2019-03-26 20:38:40
皆さまごきげんよう。
王様・貴族専攻のサティア・ブランシュですわ!
お初にお目にかかる方もどうぞよろしくお願い致しますわね。

滑り込みになりましたが折角のお花見、楽しみたいなと…
わたしも夜の部の方にお邪魔させて頂きますわね。

持ち込む料理はこの前先輩に教えて頂いたロールケーキが良いですかしらね。
…買ったものでも大丈夫ですわよね?