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【夏コレ!】夜空の大輪に彩りを


ストーリー Story

 学園からそう離れてはいない、けれども周りには他の建物は無いような、そんな場所にポツンと建っている工房。
 特に飾りのない、言ってしまえばつまらない外見のその工房の中で、黙々と作業する男が一人。
 工房であるため、何かしらの芸術や美術品を作っているはずなのだが、彼は絵を描いていたりいているわけでは無いし、彼の周りにもまた、彼の作品と思われるものは見受けられない。
「よし……こんなもんだろ」
 作業していた手を止め、顔を上げた男は安堵の息を漏らす。
 どうやら一区切りついたらしく、それまでの張り詰めていた空気が一気に緩んだようだ。
 立ち上がった彼の手には球体が握られていて、それは祭り等の時に夜空を彩る大きな花となるもので。
「毎度毎度あいつは、思い出したようにこんな時期に仕事依頼しやがるんだから――」
 誰に向けての悪態かは分からないが、誰に聞かせるわけでも無く零れたそれは、男の素直な気持ちなのだろう。
「さって……後は色を付けるだけ――」
 棚に保管されている筈の、炎の色を決める素材へと手を伸ばした男の手が、途中でピタっと止まる。
「うっわやっべぇ。よりによって紅色がねぇじゃねぇか……。しゃーねぇ、あいつに依頼しとくか。――元はと言えばギリギリに依頼出したあいつが悪いんだ。これくらいはしやがれ」



 魔法学園、『フトゥールム・スクエア』。その日常の中で、この日はちょっぴり非日常な事が起こっていた。
 学園長である【メメ・メメル】から数人の新入生へと呼び出しがかかったのだ。
 悪いこと等はしていないのに、教員に、しかもよりによって学園長に呼び出されたとあっては、当事者の生徒達からしてみれば何を言われるか分からずたまったものではないだろう。
 そんな思いでビクビクしている新入生を前に、呼び出した本人の学園長はため息を一つ。
 思わず身構える新入生だったが、そんな様子を余所に学園長は口を開いた。
「この間、オトモダチに依頼をしてたんだけど~、そいつから材料がないーって連絡来ちゃって~」
 いきなりのそんな言葉に目が点になる新入生だが、当然学園長は気にはしない。
「なんか~、オレ様が依頼を遅れてしちゃったのが悪かったみたいでぇー? 依頼品が欲しいなら材料持ってこいって言うのー。メンドーだよねえ」
 明らかに面倒だ。という表情で言う学園長を見ていれば、自ずと言いたいことは分かってくる。
「そこで! チミたちに命じる! 材料、取ってきて~」
 自分で集めるのがめんどくさいから、新入生へと丸投げしよう。という事なのだろう。
「集める素材と場所はこの紙に書いておいたぞ~。メメたんってばやっさしー! 大サービスで採取の道具も貸したげる! なんて太っ腹~! ここまでしたんだから、もちろん――受けるよね~? 返事は『はい』か『イエス』しか受け付けないぞ☆」
 選択肢は無いようで、紙を受け取った新入生達は内容を確認し、依頼の達成の為に意見を出し合うのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-07-01

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-07-11

登場人物 5/8 Characters
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《新入生》クロード・クイントス
 ヒューマン Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
色々と考えてから行動するタイプ。 あまり感情的にはならずニッコリ笑顔を心がけている。 でも顔は笑っていても眼は笑ってない。 厳格な家庭で育ったため人間関係に疲れて孤独を好み、自立するために家を飛び出し、秘めていた好奇心をさらけて放浪癖を患う。 ※アドリブ歓迎
《ゆうがく2年生》アリア・カヴァティーナ
 アークライト Lv14 / 村人・従者 Rank 1
 幼い頃から聞かされてきた英雄譚に憧れて、いつしか勇者さまを導く人物になりたいと願ってきた。  その『導き』とはすなわち、町の入口に立って町の名前を勇者様に告げる役。  けれども、その役を務めるということは、町の顔になるということ。この学校でたくさん学んで、いろんなことを知ることで、素敵な案内役になりたい!  ……それが自分の使命であると信じて入学したけれど、実のところ勉強よりも、花好きが高じた畑いじりのほうが好きだったりする。そのせいで、実はそこそこの力持ちだったりする。  たぶん、アークライトの中ではかなり変人なほうなんだと思うけれど、本人はあんまり気にしていない模様。  基本的に前向き……というか猪突猛進なところがある、かも。
《ゆうがく2年生》リベール・ド・ヴァンセ
 ヒューマン Lv11 / 勇者・英雄 Rank 1
リベール・ド・ヴァンセ。 聞き取り辛いなら名札か手帳を読みなさい。 ……わざわざ言うべきことはないの。
《新入生》リア・カレット
 ヒューマン Lv4 / 勇者・英雄 Rank 1
リア・カレットといいます。 幼いころは孤児院で生活していました。 実は、とある絵本の物語に興味を持っているんです。 その登場人物に憧れ、冒険家になることが私の夢です。 勇者や英雄なんて私には恐れ多いですから(汗 お掃除やお洗濯は任せてください!大の得意なので!! ==========以下プロフィール詳細========= 身長:154cm 体型:細身でややある(C) 髪:焦茶色のミディアム 前髪の左目上の部分に髪留めをしている 性格:優しく真面目だが初対面相手だとよくテンパる (自分1人の時は必ずと言っていい程) 趣味:家事全般(特に掃除と洗濯が大得意) 好物:ホットミルク 寝る前によく飲んでいる 苦手なもの:虫全般 ハチに襲われたことが原因 見たり聞いたりするだけで動転し、特徴を事細かに説明する 装飾:鳥の片翼の形をした銀の髪留めをしている 物心ついた時からつけていたらしい 服装:授業時は基本制服 戦闘が発生しない授業や放課後は私服を着用 出生:物心ついた時から孤児院で生活。捨て子か孤児かは不明。孤児院は年若いシスターが院長を務め、幼児から青年までの男女が共同で生活していた。学園に入学すると決めた時は皆が応援してくれた 口調:年齢差関係なく「~です」「~ですね」の丁寧口調 二人称:英名の場合はファーストネーム、 和名の場合は名前 年齢差関係なく、どちらも「さん」を付ける

解説 Explan

 花火に色を付ける素材が尽きてしまったらしく、それを採取するのが目的です。
 採取場所は学園内にある活性火山『フラマ・インペトゥス』で、採取する素材はストロン石という鉱物です。
 地中に埋まっているためスコップなどの道具を言われたとおり学園長から借りていくのがいいでしょう。

 ストロン石
・火山の中腹に存在する柔らかい鉱物です。
・非常に密度が高く、少量でも重量があるため、体力や強さのパラメーターが低いと持ち帰るのに時間がかかってしまいます。
・柔らかい為、ストロン石が埋まっている部分に立つと足場が沈み込むようです。

 花火完成のため、なるだけ早く素材を採取してあげて下さい。


作者コメント Comment
夏に欠かせないものなので今のうちから準備しておく必要がある、と思いこんなエピソードを書いてみました。
学園内での行動になるので敵は出ませんが、活性火山という自然を相手取った冒険になりますので、気を引き締めて下さい。
……山を舐めてはいけない(戒め)


個人成績表 Report
朱璃・拝 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:210 = 75全体 + 135個別
獲得報酬:6750 = 2500全体 + 4250個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
事前に学園長先生にスコップと人数分の水筒、それと借りられるなら荷車をお借りいたしますわ。それと石のある場所への地図等あればそれも

荷車を借りられなかった時は道中適当な木があればある程度の太さの枝を魔牙で切り取りロープで束ねて持っていきますわ

鉱脈が見つかったら沈み込まないようその淵から慎重にスコップで掘り出してみましょうかしら。ある程度採取出来たら、借りれていたら荷車に乗せ運んでいきますわ。荷車が無い時は荷物カバンに石を入れロープを結び、採取した枝をコロとして使って運んでいきますわ。少なくとも平地ならこれで体力をそう使わず運べる筈ですわ

お仕事の後、出来れば花火に色を付ける作業を見学したいですわね

クロード・クイントス 個人成績:

獲得経験:112 = 75全体 + 37個別
獲得報酬:3750 = 2500全体 + 1250個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
まず、鉱石がどれぐらい必要なのか学園長に質問、採取道具を借りて皆と火山へ
安全対策としては必要ならGOゴーグル着用、ヘルメット等は購買部に売ってなかったし


鉱石はリアさんに見つけてもらって我々が掘る
「なるべくはやく」という事なので最低限必要な分を先に運び、後に量を持ち帰るのがベストだろうか

あと、必要な時に気力・体力の回復に魔法を使いましょう

「旅で色々な所へ行ったけど活性火山へ登るのは初めてだよ、普通は危険な所には近づかないからねぇ」

「もうここまでくると学生というより冒険者だね」

アリア・カヴァティーナ 個人成績:

獲得経験:90 = 75全体 + 15個別
獲得報酬:3000 = 2500全体 + 500個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
沈み込みかたでストロン石の在り処がわかるなら、重いものを持っていったほうがいいですわ!
皆さまと比べると軽いわたくしは、カンバンにその辺の石を乗っけて、頭の上に乗っけて持っていきますわ!
もちろん、ストロン石を見つけたら、石をそちらに入れ替えますけれど…

でも、さしものわたくしも、常時それでは疲れてしまいますわ!
ですので…ジャン!
ただでさえ山歩きにいいという羽つきブーツの中に布を詰めたりして靴を足の形に合わせておけば、歩き疲にくくなるはずですわ!
あとはバテないようにこまめに水筒の水を飲んで、たくさん歩き回るだけ!
忍耐には自信がありますわ!

帰りは…石をカンバンごと斜面を滑らせ落としたらダメでしょうか!

リベール・ド・ヴァンセ 個人成績:

獲得経験:90 = 75全体 + 15個別
獲得報酬:3000 = 2500全体 + 500個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
主に掘るべきは紅色の石か。依頼主に確認はしておくこと。
掘り出したストロン石から砥石で軽く土など余計な物を落とし、軽量化を計る。石そのものを削らないためにあくまで軽く。
運ぶのに体力が要るのなら、リーラブで回復すれば作業量を増やせるだろうか。
ひのきの杖はリーラブ用だが登山杖も兼ねている。
かばんに重い石を詰めなければならないので、荷物は可能な限り最低限に。大小のスコップと水筒、砥石と水筒、そして弁当。弁当は箱に入れず紙などで包み、かさばらないように。

リア・カレット 個人成績:

獲得経験:90 = 75全体 + 15個別
獲得報酬:3000 = 2500全体 + 500個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
ストロン石を採取しに行きます。

【行動】
・出発前
ストロン石の色や形といった特徴を学園長に確認しておきます。

・採取場所の探索
事前情報をもとに、ストロン石が埋まっている場所を探します。
さらに「地質学」を用いて、浅い場所に埋まっている場所を探し、
その場所で採取するよう提案します。

・採取
学園長から借りたスコップで地面を掘って採取します。

・運搬
「荷物カバン(大)」に背負って移動出来る量のストロン石をいれて運びます。

【その他】
高温による脱水症状を防ぐために「水筒」に飲み水を入れておきます。

リザルト Result

 さんさんと太陽の降り注ぐ中、学園長からの拒否できぬお願いをされた生徒達は山を登っていた。
「それにしても、まさか荷車まで借りられるなんてね」
 荷車を引きながら、今回の学園長被害者の中で、唯一の男性である【クロード・クイントス】が言う。
 荷車に人数分のスコップを乗せ、山道を移動するのは女性に任せられないと、自ら荷物持ちとして立候補した。
「物は試し、何でも言ってみるものですわ! ……けど」
 クロードの歩みに合わせながら、荷車を借りられないかと提案した【朱璃・拝】が胸を張る――が。
「まさか学園長が採取するアイテムの特徴を知らなかったのは予想外です……。一応、柔らかい鉱石である、という情報だけはありましたけど」
 同じく歩みを合わせながら、色や大きさ、形などの情報が無かった事に項垂れる【リア・カレット】。
「むしろ、だからこそ私達に丸投げしたんじゃないかしら。……段々とそんな気がしてきたのよね」
 自身の持つひのきの杖を登山杖代わりにしながら歩く【リベール・ド・ヴァンセ】がリアに続いて言うが、真相は学園長にしか分からないだろう。
 もしかして、ひょっとすると……万に一つくらいの確率で、少ない情報から希望されたアイテムを採取する練習をさせているのかもしれないが、如何せん日頃からの学園長への信頼が低すぎた。
 一応、学園長から、
「大体あの辺」
 と目測で指を指された場所に来た生徒達だが、見る限りは山の斜面。
 どこにもそれらしき素材は見受けられない。
「と、とりあえず柔らかそうな場所を掘ってみましょう! 何事も行動あるのみですわ!」
 山登りと言う事で、羽つきブーツの中に綿を詰め、自分なりの登山ブーツを履いた【アリア・カヴァティーナ】が一瞬漂った重い空気を吹き飛ばすように元気に言う。
 悩んだところで、考えたところで何も変わらぬのならば、行動してみるに限る……と。
「確かにそうだね。とりあえず、ソレっぽいのが見つかるまで、適当に掘ってみようか」
「それしか無さそうですわね。では、私はあちらの方を掘ってみますわ!」
「では、私は向こうを探してきますね」
「じゃあ、私はこの辺を。見つけたら全員に知らせて頂戴。情報は少しでも共有しましょう」
「では、張り切って、レッツマイニング! ですわ!」
 各々が掘る場所を勝手に決め、荷車からスコップを取り出して掘り始める。
 果たして、最初にストロン石を掘り出すのは誰になるのだろうか……。

 *

「結構、暑いですわね……。夏だからと言えば当然なのでしょうけど」
 動かしてきた手を止め、手の甲で額の汗を拭った朱璃は、持ってきた水筒で喉を潤す。
 掘り始めてしばらく経つが、出てくるのはただの土と石。
 時折珍しそうな石も出てくるが、柔らかくはなく、依頼のストロン石とは違うようで、肩透かしを食らっていた。
「何か変化があった方はいらっしゃいませんの?」
 痺れを切らして、というよりは縋るような思いで。
 そう尋ねた朱璃に返って来たのは、他の生徒達の首を振る仕草だけ。
 一つため息を吐いて、掘り進めようとすると……。
「ん? 今の感触は?」
 とリベールが首を傾げた。
 土へと入れたスコップから、例えるならばアイスにスプーンを入れたときのような、柔らかく、粘り気のある感触が伝わってきたのだ。
 彫り上げた土の断面を確認し、一部に銀白色の何かを見つけたリベールは丁寧に銀白色の周りの土を払っていく。
 ほんの小粒程度のソレは、確かめるように当てた指をゆっくり静かに飲み込む程度に柔らかく。
「これじゃないかしら?」
 唯一の情報とも言える柔らかさをクリアした鉱石を、皆へ見せようと声を掛ける。
「意外と小さい? 全部が全部このサイズだと花火用にどれだけ集めればいいんだろう」
 のぞき込んだクロードの口から出てきたのは懸念。
 時間が掛かりそうだと心配する感情。
 しかし、そんな心配よりも、
「ようやく情報が出てきましたね! ふむふむ、こんな色で形状なんですね! この情報を組み込んで、地質学を元に周囲を調べてみます!」
 素直に情報が増えたことを喜び、その情報を元に自らの技能を活用するリア。
「どの位の深さから出てきましたの? ……なるほど。なら、広範囲をその深さまで掘ってみるのが効率が良いかもしれませんわね。早速やっていきますわ!」
 ルネサンスだからか、はたまた武神・無双コースだからか、身体を動かしての効率化を目指す朱璃。
「リベールさま! わたくしにも見せて――きゃっ!?」
 リベールから一番遠い場所で採掘をしていたアリアが、リベールの掘り出したストロン石(仮)を確認しようと寄ってくると……。
 急に足を取られて転んでしまった。
「だ、大丈夫か?」
 思わずクロードが声を掛けると、アリアはスクッと立ち上がり、
「へ、平気です! けど、一体何故……」
 転んだ原因が分からないと振り返って……。
 アリアの足跡分、きっちりと沈んだ地面を発見し、思わずリベールと顔を見合わせる。
 指で押して沈む柔らかさの鉱石。
 その鉱石が地面に埋まっていれば、人の重さによって沈むのも必然。
 つまりは――、
「皆さま! ここに一杯埋まっているみたいですわ!!」
 と言う事だった。
 ほぼ全員がアリアの足跡が出来た場所付近へと駆け寄る中、朱璃だけが恐る恐る、まるで何かを確認するかのように、忍び足で近付いてくる。
(あー……)
 女性陣が納得したように心の中で頷いて。
 未だにゆっくりと近づいてくる朱璃の心境は、些かヘヴィなものだった。
(ア……アリア様でも沈んでしまうんですもの。もし私が沈んでしまったとしても仕方無い筈ですわ……)
 誰に言い訳するでも無く、自分に言い聞かせているような朱璃を、むしろ触れないことが優しさだと理解した他のメンバーは、黙ってスコップを振るう。
 触れないことも、時にはダメージになることに、目を瞑りながら。

 *

「ふぅ……。とりあえず一杯にはなったけど……」
 荷車にわんさと積み込んで、ふと、生徒達の頭に疑問がよぎる。
 ――果たしてどれだけの量が必要なのか、と。
 依頼したのは花火職人なのだが、それは元はと言えば学園長の依頼。
 である故に学園長から依頼の内容を聞いたのだが、その内容は前述の通り。
 何一つ無い情報の中に、必要量すらも入ってない事に今気が付いたのだ。
 見つけるための、採取するための情報に意識を向けすぎていたために……。
「とりあえず、もう積み込めないし、一旦学園に戻ろうか」
「構いませんけど、もし必要量に足りなかった場合はどうしますの?」
 少し悩んだクロードが提案すると、朱璃が懸念を口にした。
 もう一度往復するハメになる、と。
「でも、これ以上荷車には積めませんわ。後は皆さんがお持ちの鞄などに詰めるしか……」
 それを何とか打破しようとアリアが口にするが、クロードとリベールが首を振る。
「帰りは斜面で足場が悪い。そんな中で重い物を背負うなんて怪我の元だよ」
「そのまま転がり落ちるなんていうのも考えられるわ。荷車がある以上、避けるべきだと思うわ」
「では……その……。全員で行って戻ってくると言うのは……」
 リアが提案するが、これも首を振られ、
「そうすると、この量で足りなかったときにまた全員で山登りするハメになる。体力の無駄だよ」
 と言われてしまう。
「では、どうするおつもりでありますの?」
 朱璃がクロードに尋ねると、答えたのは横に居たリベール。
「この中で唯一の男性のあなたが身体を張ってくれる。そう言っているのでしょう?」
 と。
「でもそれでは、クロード様が疲れてしまいますわ」
「流石に申し訳無いです」
 驚いた様子で言う朱璃とリア。
 けれどもクロードの意思は変わらないらしく、すでに山を下りるべく荷車を持っていた。
「でしたら、わたくし達は引き続き、足りなかった時のためにストロン石を掘っていますわ!」
 であるならば、と自分たちに出来ることを模索し、クロードに伝えるアリア。
「量が足りてようがいまいが、どっちにしろまた登ってくるから、もしどれだけあっても困らないって言われたらそれも持って下りちゃおう。……じゃあ、行ってくるね!」
 爽やかな笑顔を向け、山を下り始めたクロードを見送り、再びストロン石を掘り始める女性陣。
 先ほど沈み込んだ場所を掘り終えた後、リアの地質学でストロン石の埋まっている大まかな場所に見当を付け、その辺りを歩いて沈み込むかを判断材料にし、順調にストロン石を掘り進めて行くのだった。
 あまりに順調すぎて、先ほど荷車に積んだ量と同じ位を掘り起こした女性陣は、クロードが戻ってくるまでの間、岩陰にて休憩を取り始めた事は、ストロン石を積んだことで重くなり、でこぼこの山道と相まって制御に苦しむクロードは知るよしもない事だった。
 
 *

 クロードが山を下りてしばらく、流石に自分らだけ休憩するのは悪いと思った女性陣は、戻って来たときに何かしてあげようと相談していた。
 とはいえ水筒は各自持っているし、体力回復のリーラブの魔法はリベールしか使えない。
 他に候補が思いつかず、
「まぁ、感謝の言葉を言ってあげましょう。何かをして欲しくて彼もあんな事言いだした訳じゃないと思うわ」
 というリベールの意見が採用された。
 すると、
「戻って来たみたいですわよ?」
 朱璃の言うとおり、指さした先にはゆっくり登ってくるクロードの姿。
「依頼状況の確認ありがとうございました! ……どうでしたか!?」
 と駆け寄るアリアと、
「身体張ってくれてありがとうね。……リーラブ」
 とりあえず回復魔法をクロードへと使用するリベール。
「感謝致しますわ! 私達、休憩もさせて貰いましたもの。クロード様は平気かしら?」
 休憩の事を伝え、クロードを案じる朱璃に、
「ありがとうございました! あれだけストロン石は確保しましたが、いかがでしたか?」
 と自分たちの状況を報告するリア。
 それを受けて、
「ありがとう。……とりあえずなんだけど、さっき持って下りた量で学園長が依頼した分の花火の素材は集まったらしい」
 回復魔法のお礼を言い依頼の達成を報告したクロード。
「では、このストロン石は無駄になってしまったのですね……」
 その報告を聞いて、脇に積まれて山になっているストロン石を見ながら肩を落とす女性陣。
 しかし、
「けど、他の花火分にもなるし、可能な限り持ってきてくれるとありがたいって花火師さんが言ってたんだ。だから、掘り続けてくれていた分を積んで下りようかと思って」
 とクロードが言ったことで、全員の表情が明るくなった。
 自分たちの行いが無駄にならず、どころか口ぶりからして人の役に立てると分かったのだから。
 かくしてウキウキ気分でストロン石を荷車に積み込んだ生徒達は、登った時よりもハイテンションで山を下りた。
 ……途中、テンションからスピードを出しすぎ、荷車をひっくり返して泣く泣く積み直したりしたが、それでも山を下りきる頃には、夕日に赤く照らされた横顔は笑顔が見え、満足感で一杯だった。
 
 *
 
「ストロン石、確かに受け取ったぜ!」
 山を下り、学園へと向かうと、門の前に二人のシルエットを確認。
 近付くにつれ、その片方は学園長だと判別できた。
 と言う事は、学園長と一緒にいるもう一人は……。
「お! 戻って来たみてぇだな! さっきと同じぐれぇの量か? 助かる助かる」
 ストロン石を見ながらそう言う辺り、花火師――依頼主で間違い無いらしい。
「ふっふ~ん。どうだね~? 流石オレサマだろう?」
「生徒に丸投げしといてよく言うぜ。柔らかい石って情報だけで、しっかりストロン石を持ってきたこいつらが優秀だっただけだろうに」
 学園長相手にため口なのだが、当の学園長は気にした様子も無く、それが二人の仲の良さを物語っている。
「さて……と。どうやらしっかり情報が伝わって無かったみてぇだし、今更じゃああるが、どうやってこの銀白色の石が、色を出すか見たくねぇか?」
 突然の提案に一瞬呆気にとられるも、知るための、学ぶための学園に来ている生徒達が断るはずもなく。
「よーく見てろよ!」
 生徒の期待に応えようとストロン石を一つ手に取った花火師は……。
「せいやっ!!」
 大きく振りかぶって真上へとぶん投げた。
 すると……。
『おー!』
 上空でバヂリッと音がしたかと思えば、紅色の閃光が発生する。
 そのまま紅色の煙を出しながら落ちてきたストロン石は、花火師の頭上スレスレで弾けて霧散した。
「とまぁこんな風に、魔力に反応して赤く光るんだ。花火には予め模様を描いておいてな、そこにストロン石を敷き詰めて、さっきみたく上空で弾けさせてるって寸法さ」
 初めて学ぶ花火の知識。さらに、
「このストロン石ってのは柔らかければ柔らかいほど上質でな。聞けば嬢ちゃんが足を取られる位に沈み込んだって話じゃねぇか」
 品質についての情報も新しい情報で、結果的に生徒達は品質のいい素材を納品したことになる。
「あんたらのお陰で花火はもう完成したも同然。しばらく待ってな。この学園の上空に、綺麗な紅い大輪を、満開で見せてやるからよ!!」
 ガハハと声をあげて笑いながら、荷車ごとストロン石を持ち上げた花火師は、ゆっくりと自分の工房へと戻っていった。
 夏の風物詩とも言える花火。
 その花火に色を付けた――命を吹き込んだという達成感は、この学園長の無茶振りを、『はい』又は『イエス』と答えた生徒達にしか、味わえぬものであった。



課題評価
課題経験:75
課題報酬:2500
【夏コレ!】夜空の大輪に彩りを
執筆:瀧音 静 GM


《【夏コレ!】夜空の大輪に彩りを》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2019-06-26 20:59:52
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

採取の道具は借りられるのですわよね?スコップ・・・PLさんが関西人なのでスコップと言うと小さい物を連想するのですが、関東の方の大きい物という事でしょうかとどうでもいい事で少し悩んでしまいますが、それは借りて行った方が良いでしょうか。荷車等も借りられるのでしょうか?

《ゆうがく2年生》 アリア・カヴァティーナ (No 2) 2019-06-27 12:04:50
ストロン石! 確かに、なんだか赤くなりそうなお名前ですわ!

アリア・カヴァティーナ、ストロン石について学びに参りましたわ!
皆さま、よろしくお願いいたしますわ!

ちなみに規格によると『スコップは足をかける部分がないもの、ショベルはあるもの』だそうですわ! でも、「道具は貸す」とのことですしきっと校長先生はどっちも貸してくださいますから、あんまり気にする必要はなさそうですわ!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 3) 2019-06-28 00:08:59
そうですわね、あまり気にすることもありませんか。それでは道具は借りていくとして、どう運ぶかですわね。仮に台車を借りられたとしても、石がかなり重いのであまり沢山積むと動かなくなりそうですし少量ずつこまめに運んでいくという事になりますか?

運ぶのにもかなり体力を使いそうですし、掘るのと運ぶのを交代しながら作業していきますか?

《新入生》 クロード・クイントス (No 4) 2019-06-28 09:20:41
遅くなりましたが、賢者・導師専攻のクロードです、よろしく。

ストロン石、どれぐらいの量が必要なんでしょうね。
着色用なら大量に必要とも思えませんが、まあこれは出発前に確認するという事で。
背負うとすれば負担がかからない程度だと10~15キロぐらいかな?
御米10キロ担ぐぐらいを目安で、ぐらいでどうでしょうか。
でも移動距離など不明な点もあって臨機応変にいかないといけませんけどね。

あと火山に登るなんて始めてなんですよ、注意点などあれば御教示頂ければ幸いです。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2019-06-28 20:26:05
私も火山に登るのは初めてですわ。なんとなく暑そうなので水筒があれば持って行っておいた方がよいかも。石を運ぶ際にも体力を消費するでしょうし、水分補給は必至だと思いますわ。これも借りられるようなら借りておいた方がよいかも。

>量
そうですわね、一先ずクロード様の仰る量を目安として、でよいのではないでしょうか。

《ゆうがく2年生》 リベール・ド・ヴァンセ (No 6) 2019-06-29 00:43:38
勇者・英雄コースのド・ヴァンセよ。はいかイエスとか言う割にまっとうな仕事で、無難に稼がせてもらいましょう。

……とはいうものの、もう基本的な事は大体言われてるから、私がわざわざ言うべきことはそうなさそうね。
体力が要るってことは、リーラブ(体力回復)が役立つのかしら。

《新入生》 リア・カレット (No 7) 2019-06-29 09:16:06
勇者・英雄コース専攻のリア・カレットです。よろしくお願いしますね。

ストロン石が埋まっている場所を探す際に「地質学」を試してみようと思います。
なるべく早く採取できるように浅い所に埋まっている場所を探してみます。

>出発前の確認
特徴はいくつか挙がっていますが、どういった色か、どんな形かについてはわからないですね。
色や形に特徴があるのであれば、量と一緒に確認した方がいいかと思います。


《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 8) 2019-06-30 20:11:12
プランは提出しましたわ。荷車を借りられなかった時の為に一応道中適当な枝を何本かとって行こうかと思いますわ。コロとして使えば少なくとも平地では運びやすくなるかもしれませんし。山なので下りだと使えるかどうか解りませんけれど